平 成24年4月1日
肺癌術後の再発に対するベバシズマブの使用経験
山梨大学医学部附属病院
内 田 嚴 、松 原 寛 知 、第二外科
奥 脇 英 人 、宮 内 善 広 、 市 原 智 史 、松 岡 弘 泰 、松本雅彦
要 旨:非 小細 胞肺 癌 術後 の 再発 症例 にっ いて は 、現時 点 で確 立 され た化 学療 法 は存 在 しな い。現
在 、切除 不能 非 小 細胞 肺癌 に 対す る1次 治療 に お いて有 用性 が 示 され て い るペ メ トレキセ ドを含
むプ ラチナ ダ ブ レッ トの併 用 療 法に 、ベ バ シ ズマブ を加 えた レジメ ンを 、肺癌 術 後 の再 発症 例 に
対 して使 用 したの で報 告 す る。 当院 にお い て肺 癌手 術施 行 後 に、再発 を き た した患 者 でPSOの3
例 に対 して シスプ ラチ ン、ペ メ トレキセ ド、ベ バ シ ズマ ブの3剤 併 用療 法 を施 行 した。結果 と し
て全例 画像 診断 上明 らか な腫 瘍 の縮 小 を認 めた。 副 作用 はいず れ もGradelの 食 欲 不振 、 全身 倦
怠感 を認 めた のみ で あ った。肺 癌術 後 再発 症例 に対 して シ スプ ラ チ ン、ペ メ トレキセ ド、ベ バ シ
ズ マブ の3剤 併 用療 法 を施 行 し、良好 な結 果 を得 られ た。長期 的 な予 後 につ い ては今 後 も検 討 が
必要 で あ る。
キ ー ワ ー ド:非小 細胞 肺癌 、
シ ス プ ラ チ ン 、 ペ メ ト レキ セ ド、ベバ シズ マブ
は じめ に
肺 癌 はが ん死 の原 因第一 位 で あ り、2006年
に は約62000人
が肺 癌 に よ り死 亡 してお り1)
そ の後 も患者 数 は増 加 して い る。 治 療成 績 が
他 臓 器 の癌 に比 して満 足 で き る よ うな もので
な く、 予 後不 良 で あ る理 由 には発 見 時 に切 除
可能 な状 態 で見 つ か る こ とが 少 な い こ とと、
術後 の 再発 率 が 高 い こ とが理 由 と して 挙 げ ら
れ る。しか し、肺 癌術 後 の再 発症 例 に対 して、
現時 点 で は確 立 され た 化 学療 法 の レジメ ンは
存在 しな い。 そ こで、 当科 で は術 後 再発 症 例
に対 して 、切 除 不能 非 小 細胞肺 癌(非 扁 平 上
皮癌)に 対 す る1次 治療 につ いて有 用性 が 示
され てい るペ メ トレキセ ドを含 むプ ラチナ ダ
ブ レッ トの併 用 療 法 にベバ シズ マブ を加 えた
レジ メ ンの使 用 を始 めた。3例
とま だ使 用 開
始 して 間 もない 状況 で あ るが 短期 的 に は 良好
な結 果 が得 られ て い るの で これ を報告 す る。
症 例
症 例1:55歳 、 男 性 。 主 訴:特 に な し。 既 往 歴:右 肺 上 葉 腺 癌 に 対 して 右 肺 上 葉 切 除 後(病 理 病 期TlbNOMO、EGFR遺 伝 子 変 異 は 陰 性)。 現 病 歴:2009年9月 右 肺 上 葉 切 除 後 、 術 後 補 助 化 学 療 法 と してUFTを 内 服 し て い た が 、 2010年10.月 よ り徐 々 にCEAの 上 昇 を認 め た 。 精 査 の 結 果 縦 隔 リ ン パ 節 の 再 発 と 診 断 し 、 2011年8月 よ り化 学 療 法 を 開 始 す る 方 針 と な っ た 。 入 院 時 現 症:血 圧125/79㎜Hg、 脈 拍60bpm、 体 温36.5℃ 。 血 液 生 化 学 所 見:特 記 事 項 な し 。CEAは 36.6ng/m1と 上 昇 を 認 め て い た 。 治 療 前 画 像 所 見:図1左 で 示 す よ う にCTで 気 管 分 岐 下 の リ ン パ 節 腫 大 を 認 め た 。PETで も 集 積 を認 め て い た 。 化 学 療 法:シ ス プ ラ チ ン(CDDP)75mg/㎡ 、ペ メ 一29一山 梨 肺 癌 研 究 会 会 誌25巻2012 ト レ キ セ ド(PEM)500㎎/㎡ 、 ベ バ シ ズ マ ブ (Bev)15mg/kgの3剤 併 用 療 法(以 下CDDP +PEM+Bev)を4コ ー ス施 行 し た。 化 学 療 法 開 始 後 経 過:腫 瘍 マ ー カ ー は 低 下 を 認 め 、 図1で 示 す よ う に 気 管 分 岐 下 の リ ン パ 節 は 明 らか に 縮 小 を 認 め 、効 果 判 定 はPartial Response(PR)だ っ た 。 副 作 用 はGradelの 食 欲 不 振 と全 身 倦 怠 感 だ っ た 。 症 例2:56歳 、 男 性 。 主 訴:特 に な し。 既 往 歴:右 上 葉 肺 癌 に 対 して 右 肺 上 葉 切 除 術 と胸 壁 合 併 切 除 後(病 理 病 期T3NlMOEGFR遺 伝 子 変 異 は 陰 性)。 現 病 歴:2008年7月 の 術 後 補 助 療 法 と して 局 所 放 射 線 照 射 施 行 し た 後 、 外 来 に て 経 過 観 察 され て い た 。2011年4月 のCTで 肺 内 転 移 を 疑 う所 見 を 認 め 、 増 大 傾 向 認 め た た め 多 発 肺 転 移 の 診 断 に て9月 か ら化 学 療 法 を 開 始 す る 方 針 と な っ た 。 入 院 時 現 症:血 圧107/57㎜Hg、 脈 拍62bpm、 体 温36.6℃ 。 血 液 生 化 学 所 見:特 記 事 項 な し 。CEAは 26.9ng/mlと 上 昇 を 認 め た。 治 療 前 画 像 所 見:図2左 で 示 す よ うにCTで 肺 野 に 微 小 結 節 影 を 多 数 認 め た 。 化 学 療 法:CDDP+PEM+Bev3剤 併 用 療 法 を3コ ー ス 施 行 した。 化 学 療 法 後 経 過:腫 瘍 マ ー カ ー は 低 下 を 認 め 、 結 節 影 は 縮 小 あ る い は 消 失 を 認 め 、 効 果 判 定 はPRだ っ た 。 副 作 用 はGrade1の 食 欲 不 振 と 全 身 倦 怠 感 だ っ た 。 症 例3:50歳 、 女 性 。 主 訴:特 に な し。 既 往 歴:右 肺 上 葉 腺 癌 に 対 して 、 上 葉 切 除 術 後(病 理 病 期TlN2MOEGFR遺 伝 子 は 変 異 陰 性)。 現 病 歴:2007年2月 術 後 補 助 化 学 療 法 と し て カ ル ボ プ ラ チ ン+タ キ ソテ ー ル4コ ー ス施 行 した 。外 来 に て経 過 観 察 中 、2011年8月 のcr で 多 発 肺 転 移 と診 断 され10月 か ら化 学 療 法 開 始 の 方 針 と な っ た 。 入 院 時 現 症:血 圧131/78㎜Hg、 脈 拍96bpm、 体 温35.5℃ 。 血 液 生 化 学 所 見:特 記 事 項 な し 。CEAも 1.5ng/mlと 正 常 範 囲 内 で あ っ た。 治 療 前 画 像 所 見:図3左 で 示 す よ う にCTで 肺 野 に 微 小 結 節 影 を 多 数 認 め た 。 化 学 療 法:CDDP+PEM+Bev3剤 併 用 療 法 を4コ ー ス 施 行 し た。 化 学 療 法 後 経 過:転 移 巣 は 縮 小 、消 失 を 認 め 、 効 果 判 定 はPRだ っ た 。 副 作 用 はGrade1の 食 欲 不 振 と 全 身 倦 怠 感 だ っ た 。 考 察 当科 の 肺 癌 術 後 再 発 症 例 に 対 す る 治 療 方 針 はEGFR遺 伝 子 変 異 とPSの 検 討 に よ っ て 決 定 す る。EGFR遺 伝 子 変 異 が 陽 性 の 場 合 は ゲ フ ェ チ ニ ブ の 使 用 を 考 慮 す る。 一 方 で 陰 性 で あ る 場 合 、今 回 の よ うな 症 例 で はPSが 良 好 で あ れ ば 殺 細 胞 性 抗 癌 剤 の 使 用 を 検 討 す る。 殺 細 胞 性 抗 癌 剤 の 内 容 は 、 扁 平 上 皮 癌 で あ れ ば 、 カ ル ボ プ ラ チ ン+タ キ ソ テ ー ル 等 を 考 慮 す る。非 扁 平 上 皮 癌 で あ れ ば 、CDDP+PEM+Bevの3剤 を 考 慮 す る。 こ れ は 、Bevと プ ラ チ ナ ダ ブ レ ッ トの 併 用 療 法 が 扁 平 上 皮 癌 を 除 く進 行 ・再 発 非 小 細 胞 癌 に 対 す る1次 治 療 に お い て2つ の 第m相 試 験(EooG45992)、AvAiL試 験3))で 有 用 性 が 示 さ れ て お り、 さ らにPEMに つ い て も 扁 平 上 皮 癌 を 除 く進 行NSCLCに 対 す る1次 治 療 と維 持 療 法 に お い て 有 用 性 が 示 さ れ て い る 4)5)6)から で あ る 。 プ ラ チ ナ 製 剤 と して カ ル ボ プ ラ チ ン で は な くCDDPを 選 択 す る の はCDDP の 方 が 効 果 の 優 れ る 可 能 性 が あ る こ と が 示 さ 一30一
平成24年4月1日 れ て い る7)8)か らで あ る。以 上 の エ ビデ ン ス を も と に 今 回 、CDDP+PEM+Bevの3剤 併 用 療 法 を 施 行 した 。 い ず れ も転 移 巣 に 対 し て 良 好 な 結 果 が 得 られ 、 重 篤 な 副 作 用 の 出 現 も認 め られ な か っ た 。 当 科 で は 今 後 維 持 療 法 と してPEM+Bevの2 剤 を 使 用 して い く方 針 で あ る 。 こ の2剤 併 用 の 維 持 療 法 に よ りPEM単 剤 よ り もPFSが 延 長 さ れ る こ と は2011年 欧 州 臨 床 腫 瘍 学 会 に て AVAPERL試 験 の 最 終 解 析 結 果 と して 示 され て い る。 今 回 使 用 した 化 学 療 法 に つ い て 長 期 的 な 予 後 は 不 明 で あ る が 、 当科 で 施 行 した3例 は 良 好 な 結 果 を 得 られ て い る 。 今 後 も慎 重 に 使 用 して い く必 要 が あ る が 、CDDP+PEM+Bevの3剤 併 用 療 法 は 術 後 再 発 症 例 に 対 す るlstlineと して 有 用 で あ る と 考 え られ る。 ま と め 肺 癌 の 術 後 再 発 に 対 してCDDP+PEM+Bevの 3剤 併 用 化 学 療 法 が 有 用 で あ っ た 。 引 用 文 献 1)正 岡 昭 、 藤 井 義 敬 、 矢 野 智 紀 、 他. 呼 吸 器 外 科 学 改 訂 第4版.東 京:南 江 堂; 2009:144.
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Paclitaxel-Carbop;atin
Alone
or
with Bevacizumab
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3)Reck M, von Pawel J, Zatloukal
P, Ramlau
R, et al. Phase m trial
of cisplatin
plus
gemcitabine
with
either
placebo
or
bevacizumab
as
first-line
therapy
for
nonsquamous non- small-cell
lung cancer:
AVAil. J Clin Oncol 2009; 27:1227-1234.
4)Scagliotti
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The differential
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of pemetrexed
according
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5) Tudor Ciuleanu
, Thomas Brodowicz
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Maintenance
pemetrexed
plus
best
supportive
care
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plus best supportive
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for
non-small-cell
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Phase
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RG7160 (GA201), the first
glycoengineered
monoclonal
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receptor,
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山 梨 肺 癌 研 究 会 会 誌25巻2012