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山梨大学における情報処理基礎教育の歴史と現状 利用統計を見る

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山梨大学における情報処理基礎教育の

歴史と現状

林英輔

有泉均

高橋健

(昭和54年8月31圓受理)

History and the Situation of Education of Groundings

in Information Processing in Yamanashi University

EisukeHAYASHI HitoshiARIIZUMI TakeshiTAKAHASHI

       Abstruct     .  Since 1972, we have given lessons of‘‘ApPlied Mathematics II”as an education of elem・ entary information processing to students in all classes of faculty of engineering in Yamanashi University. We survey the development of the education, arrange experiences and report the present situation, that is substance of lecture, method of exercise and educational computer systems adopted in this education etc. /

1・はじめに

 山梨大学工学部の授業科目として応用数学第二を開 講してから,今年で7年目になる。この科目は,情報 処理基礎教育の一環として,工学部の各学科の学生に 共通に,数値計算の基礎的な学力と,これを実行する ための計算機プログラミング技術を習得させる目的で 開設された。講義と演習実習を含む授業で,週4時限 で,1学期間行われる(2単位)。計算機科学科を除 く全学科に対し,クラス(学科)単位で開講されてい る。教育学部数学科の学生も受講している。開設当 時,この科目は,情報化社会の到来に備えるという社 会的要請を考慮した教育の一つの形式であったが,そ のやり方については,他に参考にすべき経験や定形も なく,実習の道具となる計算機の技術の発達の速度も 速いため,独自で企画し,実行し,その中で内容を改 善してゆく道筋を通ることになった。ここでは,これ までの経過を振り返り,種々の経験を整理し,現在の 到達点を明らかにするための総括を行う。 2・応用数学第二の歴史的経過  2・1 開設までの状況  大学において,計算機の技術開発を行う専門家以外 の一般の研究利用者が電子計算機を利用するようにな ったのは,世界的にみても1960年代に入ってからであ る。アメリカでは,1961年(昭和36年)から,1964年 (昭和39年)の間に,ハーバード大学等の主要な大学 に計算センターが設置され,電算機の学内研究利用が 開始された。日本では,昭和38年に,日本学術会議に よる勧告「学術研究用大型計算機の設置と共同利用体 制の確立について」1)が出され,昭和40年には,東京 大学大型計算機センターが,全国で初めての共同利用 施設として開設された2)。その後,京大等に大型計算 機セソターがつぎつぎに開設されている8)。  計算機の教育利用については,アメリカでは,1967 年(昭和42年)に,それまでに行われていた教育利用 の試行を踏まえて,「電子計算機教育の基本構想(Co・ mputer in Higher Education)」4)が大統領科学諮 問委員会から出されている。日本では,昭和45年度か 一123 一一

(2)

ら,国立大学に,情報処理専門学科が,本学を含めた 5大学を皮切りに,毎年いくつかの大学に設立されて きている。昭和47年には,文部省が開催した情報処理 教育に関する会議において,情報処理教育振興の基本 構想5)が発表された。この中で,大学における情報処 理専門学科の教育とは別に,学生一般に対する,一般 的情報処理教育の推進を図るべきことが指摘されてい る。情報処理教育センターの計画指針も6),ここで発 表されている。同じ年には東京大学教育用計算機セン ター一が開設され7),翌48年からは,上記の基本構想に 基づいて室蘭工業大学に情報処理教育セソターが開設 され8),以後1年に1校程度,この種のセンターがで きている。  本学で応用数学第二の開設を準備したのは,ちょう 度,この昭和47年であった。しかし,この準備時期 に,上記の基本構想を,一般的傾向の中の一現象とし ては受け留めていたものの,意識してこれに基づいて 考えたわけではなかった。翌48年に授業を開講してか ら担当者の中で段々とこの指針を意識し,これによっ て考え方を整理してゆく傾向が生れた。  昭和45年度以前,本学工学部では,やはり基礎科学 科目として「計算機器」が数年間開講されていた。こ れは,計算尺,手動計算機から電子計算機に至る種々 の計算用機器による計算の基礎知識と,利用法の習得 を内容とすると授業であった。当時,学内には,現在 1号機と呼ぼれている電算機(FACOM 231)が学内 共同利用機として稼動していたが,計算機システムの 処理能力は研究利用の需要を満たすのに夜間も運転し ていたような状況であり,設備予算の趣旨も教育利用 は考慮されていなかった。計算機器は,担当者の移動 により昭和46年度より閉講されていたが,「応用数学 第二」は,カリキラムの上では,この後を引き継ぐ形 で出発した経緯をもつ。  2・2第1期(昭和48∼51年度)  開設を準備した期間,工学基礎教室の物理系に属す る担当者の間で,授業の内容とやり方について検討を 重ねた。具体的には数値計算のテーマの選択,数値計

算とFORTRANプPグラミングの授業内容を半年

の授業の中でどのように関連づけ,配置するか,実習 のやり方,演習の内容,テキストの作成等について検 討がなされていた。応用数学第二の主な授業内容とし ては,以下のことが決まった。  (1)数値計算のテーマ:実験値の整理,補間法と関 数近似,代数方程式の根,数値微分と数値積分,行列 と固有値,常微分方程式の数値解法,モンテカルロ 法。

 (2)プログラミング言語FORTRANの文法と使

い方を数値計算の各テーマの例題説明と関連させて説

明する。したがって,FORTRANの内容を各テー

マの例題に配分し,数値計算とプログラミングの説明 を同時に進行させる。  (3)実習は,カード穿孔機2台(後に3台)をレン タルで設置し,パンチカードで各学生に実習ジョブを 作成させる。作成したジョブは,授業担当者がまとめ て,学内2号機(FACOM 270−30,容量は16kW. 後で32kW)に,研究利用が混んでいない時間帯に 入力し,出力結果を添削して,学生に返す。設備と予 算の制約上,1回の授業で実習ジョブを作成する学生 数は1クラスで10人程度にする。  (4)授業は,講義,演習,実習に時間配分し,演習 は数値計算の他に実習を補う内容の練習をさせる。  (5)授業は,クラス別に開講し,1コマ2名で担当 する(担当者は全員8名)。

 テキストは上記の数値計算のテーマにFORTRAN

の解説と文法仕様やカード穿孔機の使用法等を加え, 担当者が分担執筆し,プリソトの製本等も共同作業で 行った。  昭和48年4月に応用数学第二を開講した。選択科目 であり,実習量にも制限があるので,名クラス共定員 (60名)の半数を少し上回る程度の申告があり,実習 は各クラスごとに3∼4グループに分け,1回に1グ ループの交替制で行ったため,学生各人は10テーマ程 度の講義を聞いて精々4テーマの実習を体験するにと どまった。それでも年々担当者が指導に慣れるに従っ て実習量は徐々に増加した(図一1)。昭和51年度まで 件数 12000 10000 く 8000 野 言

 6000

曇 謹・… 2000 48 49 ・50 51 52 53年度 図一1 実習プログラム件数の推移 一124 一

(3)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 (週) EZZ(・)・・RTRANプ・グ…グ[コ(・)数値計算

       図一2 授業内容の配置

はこのようなやり方で継続されたが,授業内容の検討 とテキストの改訂を毎年行った。  2・3第2期(昭和52年度以降)  昭和51年度の概算要求で本学のデータ・ステーショ ン(リモートバッチ・ステーション)の設置が認めら れ,学内共同利用計算機の更新が決まった。新しい計 算機(3号機)の機種選定委員会が設けられ,選定に あたって,「リモート・ステーションの3つの目的 (リモートバッチ,情報処理基礎教育,ローカル・ミッ チ)を能率よく遂行できること」が方針の中に掲げら れた。これは,学内共同利用計算機の教育利用が,初 めて正式に認められた意義をもつ。新計算機システム としては,ACOS NEAC 300が選定され,東京大学 大型計算機と専用回線で接続して行うリモートバッチ 処理のための入出力および伝送受信処理(RJE処理) と,教育ジョブおよび研究用ジョブのローカルバッチ 処理の多重並行処理が可能であるハードウェアとソフ トウェアをもつ,従来より数段能力の高い計算機シス テムが導入されることになった。同じ年,教育方法等 の改善の予算要求として提出していたマークカード読 取装置の要求が認められ,マークカードとパンチカF・一 ドの双方の読取りができるカードリーダを購入し,新 システムと接続することになった。また,カード穿孔 機を2台購入した。以上のような設備上の改善によ り,実習を大幅に強化することが可能となり,これに 基づき授業計画の再編成を行い,第2期を迎えること になった。  この授業計画の特徴は次のようであった。 (1)授業内容の再編成:従来プログラミング解説(以

下Aと記す)と数値計算(以下Bと記す)を関連

づけて一学期間にわたり並行して説明するやり方を変

更し,最初の3,4週にAを集中的に行い,以後B

を主として説明し,Aを漸減してゆくやり方を採る ことにした(図一2)。数値計算のテーマを再検討し, 学生の専攻学科によって興味や必要度が異なることか ら,各クラス共通のテーマとクラスごとに選択するテ ーマに分類した(表一1)。 (2)マ・…クカt・一一ドを利用して実習量を増加させる:各 表一1 数値計算のテーマ 各通 クの ラテ ス1 共マ 選 択 テ | マ (1)データの整理 (2)代数方程式 (3)補間法 (4)数値積分 (1)フーリエ解析 (2)関数近似 (3)常微分方程式の数値解法 (4)連立方程式 (5)行列の固有値問題 (6)統計的推定と検定 (7)モンテカルロ法 学生は講義で聞いたテーマのすべてについて実習を行 う。 (3)実習方法の変更:新しい計算機システムでは,研 究用ジョブと教育用ジョブはジョブクラスを分けて管 理することができ,利用方法は,利用者によるセルフ サービスで入力と出力結果の持ち帰りを行うカフェテ リア方式を採ることになり,教育利用もこの方式で行 う。 (4)実習状況の把握と管理のための計算機利用。  昭和52年度からはこの新しい計画に基づいて授業が 行われた。しかし,実際の運用に入ってみると,実習 のやり方には,種々の手直しが必要であることがわか った。中でも最大の問題は,カフェテリア方式に従っ て各学生が銘々で各自のプログラムを一つのジョブと して入力する(この方式を方式Aと名付ける)と, システムの入力用の待行列ファイルには数十ジョブが 並ぶことになる。教育用のジョブの個々は短かいプロ グラムであり,システムも多重処理を行っているとは いえ,各ジョブごとに必要となるシステムの受付け等 の処理(システムオーバヘッド)のためのシステムの 負担が大きくなり,中型計算機システムの能力に対し て処理量のバランスがとれず,処理効率の低下が起こ る。その結果,同じ時間帯に入力している研究利用の ジョブを含めて,処理が渋滞する事態がみられるよう になった。これに対して対策が検討され,運用上の措 置も採られたが,メーカーから納入された計算機シス テムの標準的使用法の下では,十分な対処はできなか った。そこで,独自で実習用プログラム・データ群の 集団処理を可能にするソフトウェアの開発が開始され た。昭和52年前期から53年後期へかけて,まず方式

B,続いて方式C,最後に方式Dと名付けられた

FORTRANプログラムの集団処理方式のソフトウ

ェアが,つぎつぎに改善を重ねて開発された。これら の方式では,実習時に学生のプログラムを10∼20個を

一125一

(4)

調

翌35 蓼・・ ミ25 長2・ 課、5

.      i

 ・人当りの実習徽の1 ・

 (全体についての)平均値 ! ∠._一.一)−T._一⊥_一一_一一        }’°        フ                |   1クラスの平均受講者数1

         \i ’

   30    40    50    60 (人)         クラス受講者数 図一3 各クラスの受講者数と1人当たりの実    習件数(昭和53年度) まとめて1つのジョブとして入力し,集団処理された 結果は,各プログラムごとにまとめられ,一括して出 力される。応用数学第二の授業実習でこの方式を採用 すると,実習利用も含めて全体の利用におけるシステ ムの負担の軽減がもたらされる結果,当初の困難な状 況は克服された。現在では,主として方式Dが採用 されている。  各クラスでは,実習においては10人程度のグループ に分け,各グループでは班長がプログラムをまとめ, ジョブデックを構成して入力し,プログラムと出力結 果を分配する。班長は交替でつとめるようにしている のが現状である。第2期においては,実習プログラム 数は前期に比べて著しく増加し,年々増加している (図一1)。実習における活気が増す一方,学生の間の相 対的な個人差も顕著に現れる傾向にある。一方,各ク ラスの実習の状況を図一3に示す。この図では,各ク ラスの受講者数とそのクラスについての1人当たりの 実習プログラム件数を示したものである(昭和53年度 のデータ)。1クラスの受講者の平均は51.5名,1人の 受講生の平均の実習件数(全体についての平均)は 28.60件である。クラスの受講者数と1人当たりの実習 件数の間の相関係数は一3.2×10“4であり,両者の 間に相関はないとみてよい。つまり,実習件数の受講 者数のための頭打ち現象はみられない。しかし,1人 当たりの実習件数は未だ十分であるとは言えない。現 在大半のクラスは3年次で,また一部のクラスは4年 次でこの授業を履修している。このため,一部のクラ スでは専門科目の実験や卒業研究と平行して,この授 業の学習を行うことになっているので,課外の準備や レポート作成を考えると相当大きな負担になっている 場合も考えられる。この点から考えると,現行より一 年早く受講できるようになることが望ましい。  2.4 情報処理基礎教育としての応用数学第二  工学部の授業として,一般学生(情報処理専攻コー ス以外の学生)の情報処理の基礎的な教育の必要性を 考えると,次の二つの要素がある。一つは,全学の学 生に共通する問題として,多様な形での情報化の進展 が著しい社会の要請にこたえる大学教育として,情報 処理の基本的な知識と考え方を一般教養として修得さ せるための教育の必要性であり,他の一つは,工学の 種々の分野で行われている数値解析やデータ処理に応 用できる基礎知識の修得や応用のため訓練の必要性で あり,これはしぽしぽ卒業研究ですぐ役に立つように 教育して欲しいという要求の形で出される。この二つ の必要性に基づく教育の性格は,その差異を強調して 区別するならぽ,前者は広汎な対象に広い知識を教授 するものであり,後者は工学技術の分野での応用にね らいを定めた理論と方法の学習と訓練であると言える だろう。設備・人員の条件が許されるならぽ,一般教 育として前者の必要性に応じる授業(例えぽ情報処理 概論)を初学年で履修した後,学部内の学科共通の 授業として後者の必要性に応じた授業を行い,さらに 必要のある学科では専門教育へとつながっていくカリ キュラムを持つことが望まれる。しかし,全学の中で 情報処理の基礎教育を専門コース以外の学生に開講 しているのは,応用数学第二のみである現状において は,入門から始める教育であることと,工学部の学科 共通の授業であることから,可能な限り双方の役割を 同時に1つの授業の中で担うことになっている。半年 の授業であるという時間的枠から考えても双方の内容 を系統的に説明することは不可能である。そこで,プ ログラミング,簡単なデータ処理,数値計算のそれぞ れの内容の中で具体的に情報処理の基本的な知識や概 念の説明を行い,一方,実習の強化によって計算機利 用の体験を積むようにしている。したがって半年の授 業としては比較的内容も多く準備されており,各クラ スごとに計画的な授業の進行と,実習状況からの学生 の理解度の判断による計画修正へのフィードバックの サイクルを繰り返して教育効果を上げるよう設定して いる。このサイクルを効果的に完結させるには,教え る側の努力と学生の意慾と自主性が最も重要であり, 準備されている教材をどこまでやるか,合格者の水準 を具体的にどう設定するかは各クラス担当者の判断に よっている。

3.教育システム 1−FORTRANプログ

  ラム集団実行方式 前節で述べたように,学生が作成する実習課題の 一126 ・一

(5)

FORTRANプログラムの1つ1つは小さい。平均と

しては,プログラムステップにして50以下であろう。 しかし,実習時間帯に計算機システムに入力される数 は多く,連続して数十個も投入される。マークカード で入力されこれらのプログラムデータ群を効率よく処 理することが集団処理の目的である。一方,ACOS NEAC 300計算機のオペレーティングシステム(OS・ 名称はACOS−4)9)の管理の下では,個々のマークカ

ードで入力されるFORTRANプログラムのジョブ

は,標準として,図一4に示す流れを経て処理され, 結果が出力される。処理効率の向上に関する説明を分 かり易くするため,次の2つの処理を前提とし,説明 を他の処理にしぼる。第1は,マークカードコP−.ドの 変換処理(前処理と考える)であり,1つのジョブに 含まれるすべてのデータについて1度に行うことがで きるので,これを前提にする。第2は,教育的見地か ら管理指導のため,実習の状況,すなわち,各学生に ついて各プログラムごとの処理状態の情報を収集する 必要があり,このためにファイルシステムを活用した 教育管理情報収集処理が必要である。この収集された データは,後で管理表として出力されなけれぽならな いo

 さて,通常,入力されたFORTRANプログラム

のジョブは,図一4に示されるように,インプットリー ソース プログラム JCL フア イル インプツト リーダ 拓/−・・.1.° −Cル

乏口〕一匡コ

SYSIN フアイル

ジ{〕㌶

コンパイルユニット ライブラリ ロードモジュール ライブラリ

SYSOUT

フアイル  結果        処理の流れ         ===⇒ ゲータの流れ        ジョブステップ         〔]        、記述域 図一4 Acos・4システムの処理の流れ ダによる受付け処理(ジョブ・スケジューリソグ), コンパイラによる翻訳処理(コンパイル,以下Cと 記す),リンケージ・エディタによる結合編集処理 (リソク,以下Lと記す),そして実行処理(以下G と記す)を経て,アウトプットライタによる出力処理 により出力される。集団処理方式として開発した各方 式を比較のため,標準的方式Aの方式を含めて以下 で説明する。ここでは,実習時として多数の実習課題 の(主)プログラム群が入力されている状況を想定す る。

 3.1方 式 A

 これはACOS−4の管理9)の下での単独ジョブの標 準的なバッチ処理の方式であり,処理の流れは図一4の とおりであるが,他の方式との比較のため,主要部を 図一5のように表す。ここで「始」は受付け処理,「終」

は出力処理を示す。方式Aでは1つのプログラム

(この場合,1つのジョブ)は,これら5個の処理単 位を経るし,プログラム群はこの5個の単位を循環す るループを経て処理される。各処理単位は,OSが管 理(関与)するジョブステップを構成している。

 3.2方 式 B

 この集団処理方式は,プログラム群を1つのジョブ にまとめて入力し,図一6に示すように,「始」処理と 「終」処理はそれぞれ一括して行う。個々のプログラ ムについては,C, L, Gの3個の処理単位を経る。 プログラム群は,この3単位を循環するループを経て 処理される。したがって,方式Aに比べると全体と して処理単位の総数が減少し,これが処理効率の向上 に寄与する。

 3.3方 式 C

 C (コンノxeイル)  G(実行) 図一5 方式Aにおける処理の流れ 図一6 方式Bにおける処理の流れ 終 始 C L G 図一7 方式Cにおける処理の流れ 一一@127 一

(6)

 この方式では,方式Bと同様にプログラム群を1 ジョブにまとめて入力し,「始」処理と「終」処理も ほぼ同様に一括して行う。個々のプログラムに対する 処理は方式Bと異なり,まずCの処理をプログラム 群に対し循環的に一括処理を行う。つまり,1処理単 位で済ませる。つぎにLの処理についても同様に行 う。さらに,Gについても循環的処理する。ただし,

OSの関与についてみるとGの処理は1単位にはな

らず,プログラム数だけの処理単位を経ることにな る。しかし,全体としては方式Bに比べてさらに処 理単位の総数を減少させているので,これが処理効率 の一層の向上に寄与する(図一7)。

 3・4方式Dlo)

 方式BとCは,方式Aに比べると実習ジョブの処

理において処理効率を高め,実習運用の円滑化に役立 った。これらの方式は,ACOS−4システムが備えて いる諸機能(特に,ジョブ制御言語系とファイル管理 系)を最大限に活用し,処理単位の総数を減らすた め,処理単位の配置に工夫を凝らしたものである。こ のことは,方式BとCでは汎用として設計されてい る標準のコンパイラとリンケージエディタを使用する ことでもある。汎用性を重視し,機能も高いこれらの 処理を経ることは,実習時に入力されるような小規模 で,高い機能を必要としないプログラム群のジョブに 対しては処理効率を低くする。例えぽ,標準のコソパ ラでは,大きな作業用の補助入出力ファイルを必要と する。また,処理単位ごとにOSが関与する。したが って,実習時間帯におけるシステム効率の一層の向上 はこの点に対し対策を立てる必要があった。そこで方 式Dとして実習ジョブ処理に必要なだけの限定され

た機能を標準機能としてもち,FORTRANプログ

ラム群に対し循環的に「コソパイル・アンド・ゴー」

型の処理を行う常駐型のFORTRAN処理システム

が開発された。もち論,これはOSの下で動作し得る ものであり,OSの関与について言えぽ多数のプログ ラムから成る1個のジョブが,全体として1個の処理 単位となっている。独自開発によるこの方式のための システム作成作業の主要な部分は,応用数学第二の実 習に即したインタプリタ型のコンパイラの作成であっ た。設計目標は以下のようであった。 (1)この方式による実習ジョブは,ACOS−4標準処 理として行われる研究用ジョブのローカルバッチ処理 および東大大型計算機のリモートバッチ処理のための RJE処理と並行して処理され得るものであること。 (2)授業時間内に200個程度学生の実習プログラムの 図一8 方式Dにおける処理の流れ ソース プログラム

      ㌻⑳・

         コンパイル・          アンド・ゴー

      )⑳

         アウトプット          ライタ

    囲/

図一9 教育用FORTRANシステムの処理の流れ

  インプット   リーダ 処理が効率よく進行すること。 (3)マークカードとパンチカードが混在して入力され るデータに対しても処理が容易であること。 (4)ジョブ処理状況が自動的に把握できること。 (5)打切り時間,打切り頁の指定ができること。 (6)オプション追加が可能なこと。 (7)文法エラー,実行エラーの指摘が明解であること。 (8)FORTRAN JIS 3000の機能を目標とし,再帰 形式11)や各種数値計算ライブラリの使用が可能である こと。 (9)システム記述が平易で,ジョブ制御文が少ないこ と。 (10)システム開発が短期間であること。 (11)仕様の変更,追加が簡単であること。  方式Dによるジョブ処理の流れは図一8と9に示し てある。現在,前節でも述べたように,実習において は,方式Dを採用しており,実習ジョブを入力して から結果が得られるまでの時間(ターンアラゥソドタ イム)は大幅に短くなり,同時に計算機システム全体 としても運用効率が向上した。例外的に大きな実習ジ ョブに対しては方式Cを準備し,使用している。  3.5 各方式の評価

 基本的なFORTRANプログラムを20個用意し,

これをマークカードで入力したテストにおいて,処理 時間効率は表一2に示すようであった。ここで,方式 Aを100とした。 一128 一

(7)

表一2 各方式による処理時間効率

方司

A

B

C

D

時間比11・・

90 45 4

罐\

/方式A

/方式B

   方式C

  /

\  /拭D

  \_

       効率 図一10 各方式の機能と効率の関係  一般に,同一の計算機システムではプログラムが持 つ機能(システムが保証するとして)と,処理効率の 間には一方が向上すると他方が減少する傾向をもつ。 これは,例えぽ,精度と処理速度の関係のように数値 計算などについても言えることである。現時点で,数 値計算用プログラムの処理について前述の4つの方式 の機能・効率関係を図式的に表すと,図一10のように なる。ここで,効率とは単位時間中に処理される学生 の課題用プPtグラム数に当たる。したがって,方式の 選択は「教育効果」の観点から決められるべきであ り,FORTRANプログラミソグと数値計算の双方を 内容とする教育実習においては混用する場合もある。 4・教育システム 2一授業の運用  4・1授業のやり方  現在1クラスの授業に対し,担当者数は3名である (講師以上1,助手2)。講義と実習は教室で行う。教 室はこの授業用のパンチ室に近く配置されているが計 算機とは別の建物にある。マークカードにマークする 仕事とプログラムを作成する仕事は,学生各人が課外 時間でも行うことができることを考慮して,授業時間 の冒頭で学生は課外時間に作成したプPグラムのカー ドを提出し,担当者の1人がこれをジョブデックに構 成し,計算室へ行き入力する。カード提出が終わると 講義が開始され1時間から1時間半続行する。講義が 終了すると実習が開始される (2時間以上)。実習が 開始されるまでには,先程提出したプログラムの結果 は教室に戻っている。実習時間中は必要に応じて全体 に対する説明を教壇から行う。また,個々の質問に対 しプログラム相談に応じる。学生1人1人には全部異 なる実習問題がテーマごとに与えられており,この時 間帯では新しいテーマについてのプログラム作成と, 既に先週までに作成したプログラムの修正(ディバッ グ)を行い,得られた結果についてはレポートを作成 して提出する。ジョブの入力はグループの班長がプロ グラムをとりまとめてジョブに構成し,計算機室のカ フェテリア利用室へ出掛けて入力し,出力を待って結 果を教室へ持ち帰る。各グループの班長はこの時間帯 に計算機室との間を数回往復することになり,班長は 1週間交替で順番に勤める。授業終了後(翌日),担当 者は教育日報用プログラムを起動させてその授業につ いての教育日報を出力し,実習状況を把握する。  4・2教育用サブプログラムライブラリ  数値計算のテーマによっては,応用上観点からは重 要であっても初心者が短期間にプログラムを作成する にはやや難しいものもある。このようなテーマの実習 については,教育的配慮がなされたサブプログラムラ イブリの使用が望まれる。この観点から,教育用サブ プログラムラィブラリ「EDPAC」を作成し,システ ムに登録してある。この作成に当たって配慮した点は 以下のようである。 (1)能率よりは数値計算の原理,アルゴリズムがわか り易いこと。 (2)教育配慮から多くのエラーメッセt−一一ジを含むご 表一3 教育用サブプPグラムライブラリ    (EDPAC) No. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 サフフロ グラム名

FURCT

FRTSF

SWEEP

DETM

SWEEPX

EDJACB

SSAMP

SBMC

DETRMT

EVECTR

DETNF

ARTHM

計  算  目  的 フーリエ係数の計算 フーリエ積分 n元線形連立方程式 行列式の値 拡大行列の掃出法 ヤコビ法による行列の固有値・固有 ベクトル モンテカルロ法による積分(層別サ ンプリング法) モンテカルロ法による積分(制御変 数法) 行列式の値(精度改良型) 掃出法による行列の固有ベクトル 永年行列式の値 行列式関数を用いる代数方程式の根

一129一

(8)

と。 (3)繰返し計算等では,途中の様子がわかるように引 数の指定によって中間出力が可能であること。 (4)能率や精度向上のためのアルゴリズムの学習が有 意義と認められるものについては,原理重視のサブプ ログラムとは別にこのようなサブプログラムを用意 し,学生自身で比較できるようにすること。 (5)ライブラリを引用した場合でも実習課題の1つの プログラムの実行のCPU時間は5秒以内に納まるよ うにすること。  現在ライブラリに登録されているサブプログラムを 表一3に示す。これらはすべての方式で利用すること が可能であり,ソースプログラムおよびコンパイルユ ニットのいずれの形式でも引用できるが,現在は,後 者の形式で使用している。今後もライブラリの内容を 順次追加していく予定である。  4.3 教育管理プログラム  前節でも述べたように,実習用ジョブの処理におい ては各学生について各プログラムごとに処理状態のデ ータがファイル上に収集される。このデータを1次デ ータとして,種々の教育管理プログラムによって種々 の管理表や統計表が作成される。教育管理プログラム としては,以下の種類が作成されている。 (1)教育日報プログラム:各クラスの授業の終了後, 登録してあるこのプログラムの処理を行い,その授業 で行われた実習の状況を,各学生のプPtグラムごとの 状況データ(学籍番号,問題番号,処理時刻,終了コ ード等)の一覧表,エラー統計表,各学生の累計表と して出力し,授業担当者はこれによって実習の進行と 学生の習得の状況を把握する。方式Aとその他の方 式とでは別のプログラムになっている(前者はシステ

ム導入当初NECに作成依頼したもの,後者のB−D

方式共通のものは独自で作成)。 (2)教育週報プログラム:これは計算機室の週末処理 時に応用数学第二の担当講座が起動し,ジョブ単位の 情報による全ての教育利用に関する週報を作成する。 全体としての授業の進行状況の把握のために用いられ る。 (3)教育データ保存用プログラム:教育日報作成に用 いられた1次データは,各クラスごとに用意されてい るシステム常駐ファイル(磁気ディスク)に格納され ているので,2週間に1度位の間隔で,一括して磁気 テープ(マージ用ファイル)に移して保存する。 (4)教育統計プログラム:上の磁気テープファイルの データを用いて各種の統計表を作成する。

5・おわりに

 以上において,応用数学第二の授業として行ってき た学部規模の情報処理基礎教育の経過を報告し,現状 について説明した。この教育の一層の改善のために現 在努力するべき問題は次のようである。 (1)教材の整備 まず当面の作業として,数値計算と データ処理についてのプリントを整理,修正して改善 されたテキストにまとめること,ついで,プログラミ ングの解説書,実習の手引書の整備を行う。 (2)実習の規模は,第2期当初に計画した規模に,実 習件数の総数としてはほぼ達しようとしているが,各 クラスの現状からみると各クラスごとにさらに一層努 力して実習量を増加させることと,クラスの中での個 人差の縮小,落後する学生の対策を行う必要がある。 (3)教育システムを維持している各種のソフトウェア の改善と整備。  最後に,次の三点について指摘しておく。  第一は,情報処理基礎教育本来の内容からみると, 応用数学第二を通じての教育内容は,その一部を満た しているに過ぎない。情報処理の考え方,データ処理 の手法等の入門的な知識を,この授業の中にできるだ け取り入れる努力はしているが,半年の時間の中では 荷が重い仕事となる。将来,カリキュラムの問題とし て情報処理基礎教育全般の問題として検討され,応用 数学第二もその中で適当に位置づけられ必要があるの ではなかろうか。  第二としては,この教育の中では実習が大変重要で あることは言うまでもないが,これは当然利用する計 算機システムに依存する。われわれの場合,教育専用 の計算機ではなく,学内共同利用のデータステーショ ンを利用している。これは一つの特色であるかもしれ ないが,同じシステムを利用する他の利用,特に研究 利用との均衡と調和が運用上の重要な課題である。デ ータステ・・一・ションの利用が増加している現在,この課 題は決して容易ではない。  第三としては,この授業は多くの担当者の集団的な 協力と努力によってなされてきた。成果があったとす れぽ,このチームに帰すべきものである。現在までの 担当者は,鶴田伝重,高橋市郎(現岐阜大工),安井 勝,古川進,大藤晃義(現木更津工専),松本道男, 石川千春(退職),水口義久,竹内智,横内滋里,室 田敏行の諸氏と著者達である。 一 130 一一

(9)

謝 辞  この授業のための教育システムの作成に当たって は,日本電気株式会社情報処理官庁システム事業部シ ステム部の方々に御援助をいただいた。特に千葉友夫 氏には多くのことを教えていただいた。心からお礼申 げる。この授業が軌道に乗るまで,各学科および工学 上基礎教室の多くの先生方に御援助と御協力いただい た。また,一貫して授業の準備や教材の作成の仕事を 担っていただいている同教室物理系のスタッフの方々 の努力によってこの教育が支えられてきた。ここで感 謝の意を表したい。 1) 2) 3) 4) 文 献 この勧告及びこれに関する資料は次の文rd 2 の51頁∼60頁に資料として収められている 東京大学大型計算機センター:10年のあゆみ (東京大学大型計算機センター,昭和51年) 京都大学大型計算機センター一に関しては,京 都大学大型計算機センター設置準備委員会・ 建築本部 広報 No.1−6(1968年)

COMPUTERS IN HIGHER EDUCATION

President’s Science Advisory Cominittee Report(U.S. Government Printing Of五ce, 5) 6) 7) 8) 9) 10) 11) 1967) 文部広報549号(文部省大臣官房,昭和47年) 情報処理教育の振興について (第二次中間報 告)(文部省大学学術局技術教育課,昭和46 年) 情報処理教育センター計画指針(文部省大学 学術局技術教育課,昭和47年) 東京大学教育用計算機センター:教育用計算 機センター報告 No・1(1973年) 室蘭工業大学情報処理教育センター (案内) (1974−10) AC6S4システム説明書(マニュアル, DCZ O1−2)(目本電気株式会社 昭和50年)ACOS 4システム管理・システム管理説明書(マニ =アル,DDZ O1−2)(日本電気株式会社 昭 和52年) 有泉均・横内滋里:山梨大学工学部研究報告 30号8頁(昭和54年) サブプログラムの中で自分自身をコールする こと。これはACOS−4の言語処理における スタヅク機能がハードウェアとファームウェ アによって処理されるため,リカーシフルコ

ールが可能であることに立脚して,FORTR

ANで再帰形式利用を可能にする。従来FO

RTRANではこの利用は難しいとされていた

例えぽ,中西正和:bit 11巻529頁 (昭和54 年) 一一@131−・

参照

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