Ⅰ . 緒言
移行は,社会学を起源とする,well-being のような健 康な機能の結果として捉えられる概念である。特に,母 性看護学・助産学は,親になることを支えるケアを提供 する上で,対象者をウエルネスの視点で捉える。そのた め,移行の概念を用いて,対象を理解し,実践を行うこ とが効果的であると考える。移行には 4 つの種類があり, 母性看護学・助産学のみならず,移行を用いて現象を捉 えることができる。そこで,本稿では,様々な看護実践 の場で活用可能な移行について概説する。Ⅱ . 移行
1. 移行の定義 移行は,社会学,危機理論を起源とする概念であり1), 発達理論,ストレス理論,適応理論において知られてい る概念である2)3)。移行は,ライフスパンや社会的役割 の中の変化,移住といった地理的なこと,疾病状態にな るというような身体的変化などの間に認められる。 Golan4)は,「移行とは,慣れ親しんだこれまでの世界 を離れ,未知なる新たな世界に飛び込むことで,比較的 安定した状況から新しい安定した状況への通過点であ り,それは未知と不確実さの間にいる」と定義した。また,移行
Transition
小林 康江
KOBAYASHI Yasue要 旨
移行は,状況的移行,発達的移行,健康−疾病移行そして組織的移行の 4 つに分類される。状況的,発達的, 健康−疾病移行は個人,組織的移行は集団を対象にしたものである。多くの看護実践の活用可能な移行の概 念は,まだあまり看護の中では取り上げられてない。そこで,多くの看護実践の場で活用がなされるよう, 本稿では,移行の概念について概説した。 キーワード 看護,ウエルネス,役割,母親になること Key Words Nursing, Wellness, Role, Becoming a Mother受理日:2009 年 7 月 30 日
山梨大学大学院医学工学総合研究部 成育看護学:
I n t e r d i s c i p l i n a r y G r a d u a t e S c h o o l o f M e d i c i n e a n d Engineering (Maternity Nursing and Midwifery), University of Yamanashi 移行は一つの状態や状況から他の状態,状況,場所へ移 ること,その人の時間と活動の両方を含み,変化と経験 した時間を結合する2)3)。そして,移行の完了は,人が より大きな安全な期間に到達したときにおこる2)。つま り,移行は時間と共に生じる過程である5)。そのため移 行の経験を理解するためには,縦断的比較研究および長 期的な横断的研究が必要であるといえる。 移行は,病的,失機能的にとらえるストレスモデルと は異なり,well-being のような健康な機能の結果として 捉えられている1)。そして,Meleis ら6)は,移行に対す る看護介入を示唆するために,移行のプロセス,特性, および指標について包括的な枠組みを示している(図 1)。 2. 移行の種類 Meleis は移行を役割の変化という観点でとらえ,4 つ の種類に分類している。それは状況的移行,発達的移行, 健康−疾病移行2)3)7)∼ 9),そして組織的移行である3)7)8)。 状況的,発達的,健康−疾病移行は個人,組織的移行は 集団を対象にしたものである。これらの移行に含まれる 役割移行は,「役割関係の変化,期待,能力の変化を表し, 新しい知識を取り入れ,行動を変え,それによって社会 的な背景における自己の定義を変えていくことを必要と する」7)ものである。 1) 状況的移行 状況的移行は相互的な役割からなるやや安定した群 に,役割を新たに足したりひいたりすることで生じるも ので,焦点は個人である。状況的移行の例は,未亡人や 家族介護の始まり3)9),妊娠,出産10)など家族状況の変 化などがあげられる。 1980 年代,父親になること,母親になることは状況
的移行とされていた2)7)。しかし 1991 年以降の文献を見 てみると状況的移行は,家族状況の変化に焦点が当てら れるようになり,親になることは親役割の獲得として, 発達的移行として取り扱われるようになった3)9)。 2) 発達的移行 発達的移行はライフサイクルの各ステージにおける成 長発達過程に対する役割移行であり,対象は個人である。 発達的移行の代表例は母親になること,父親になること, 親になることである。その他には,思春期のボディイメー ジの変化や子どもが成人し巣立つ更年期などが該当す る2)3)7)9)10)。 3) 健康−疾病移行 健康−疾病移行は,健康と疾病の状況によって起こっ てくる役割の移行であり,入院,退院などによって生じ てくる2)3)7)9)10)。健康−疾病移行は 2 つに分類できる。1 つは前述した疾病に関連する移行であり,もう1つは疾 患に対するヘルスケアシステムのケアのレベルによるも のである。後者の例には,入院治療から外来治療,在宅 治療という場合や,リハビリセンターから病院施設があ る3)9)。 4) 組織的移行 組織的移行は環境における移行であり,組織内にいる 人やクライエントに影響を与える移行である3)9)。つま り組織的移行の対象は集団である。組織的移行は社会的, 政治的,経済的環境の変化や,構造的・動的な組織内の 変化により促進される。例としては,新しい政策,手順, 技術,プログラムの導入や,新しい職員配置や組織替え などである3)9)。 3. 移行の特性 移行は,複雑で多次元的であるが,本質的な特性があ る6)。「過程(Transition time span)」,起こっている変 化 に 気 づ く「 気 づ き(Awareness)」,「 取 り 組 み (Engagement)」,「 変 化 と 相 違(Change and
difference)」,「臨界点と出来事(Critical point and events)」という普遍的特徴がある。 1) 過程 移行には「過程」があり,移行の変化の中で示される特 徴があるので,移行の始まりから終わりを区別すること を容易にする3)。移行の特徴である「過程」は,「2 つの 比較的安定した状況の間にある時期」2)を意味する。そ れは始まりと終わりの境界があること,つまり,ある状 況から他の状況への移動を含んでおり,1つの安定した 状態から別の状態への時間を超えた動きと継続性が含ま れる2)。移行の始まりや終わりの境界線は明確である場 合と明確で無い場合もあり,全体の期間は短期で終わる ことも長期に渡ることもある2)。その期間は,最初に移 行を予測したときから,新しい状況の中で新しい同一性 が生まれるまでを示しており,古い役割を捨てて新しい 役割を修得する間の時間でもある9)。つまり,「過程」は, 変化の予期,知覚から始まり,変化の実際の中で感じる 不安定性,混乱,苦悩の終わりを通じ,結果として生じ
移行の性質
移行の状態:
促進因子と抑制因子
反応のパターン
タイプ
状況的 発達的 健康−疾病 組織的個人
意味づけ 文化的信条と態度 社会経済的な地位 準備性と知識プロセス指標
つながっている感覚 相互作用 位置づけと置かれた境遇 自信と対処方法の発達アウトカム指標
熟達 アイデンティディの 流動的な結合コミュニティ
パターン
単一 複数 連続的 同時 関連 非関連特性
気づき 取り組み 変化と相違 過程 臨界点と出来事社会
看護治療学
図1 移行: Meleis(2000)による中範囲理論る新しい始まり,あるいは安定性のある結末までの特定 可能な期間を意味する6)。 2) 気づき 「気づき」は,起こっている変化に気づくことであり2), 起こっている変化を個人が意識しなければ,移行にはな らない6)。移行は,自己の再定義をすることになるが, そのためには,変化が起きていること,移行にあること に気づくことが必要である。つまり,「気づき」は,移行 の結果である自己の再定義に重要である。 3) 取り組み 移行の過程における「取り組み」は,人が移行に内在す るプロセスへの関与を説明する程度として定義される。 取り組みの例は,情報を探し出し,役割モデルを使用し, 積極的に準備しており,率先して活動の修正を行う。「気 づき」のレベルは,「取り組み」が「気づき」なしでは起こ らないかもしれないという点で「取り組み」のレベルに影 響を及ぼす。物理的,情緒的な変化,あるいは社会環境 上の変化に気づいている人の「取り組み」のレベルは,変 化に気づかない人と異なる6)。 4) 変化と相違 「変化と相違」は移行の本質的な特性である。移行は, 変化と変化の結果の両方である。移行は変化を含んでい るが,変化は移行を含まないため同義ではない。移行の 過程を充分に理解するために,変化の本質,時間的広が り,知覚された重要性もしくは厳しさ,個人,家族そし て社会の規範と期待を探索することが必要である。また, 相違は,予測と現実の違いによって感じる,違ったよう に感じる,あるいは満たされていないという感じであ る6)。 5) 臨界点と出来事 いくつかの移行は,誕生,死,ある疾病の診断のよう に,特定の出来事に関係している。そして,ほとんどの 移行が重大な転機あるいは出来事を含んでいる。臨界点 は,移行経験に対処する際に「変化と相違」が増加する意 識,あるいはより活発な「取り組み」に関係している。さ らに最終の臨界点があり,それは新しいルティーン,技 術,ライフスタイル,セルフケアの活動での安定化の感 覚によって特徴付けられる。その間には,動揺,絶え間 ない変化,混乱を伴った不確実性の期間があり,不確実 性と不安を経験する6)。 4. 移行の段階 移行は,それまでの安定していた段階が終わりとなる ことから始まる。安定していた段階の終わりに伴い,慣 れ親しんだそれまでのネットワークやサポートからの断 絶が起こり,対処不能な状態になる。そしてその結果, 苦痛を感じたり,喪失感,無意味さを感じる段階に移る。 その後,今の現実を受容する段階,自分の行っているこ との意味や先のことを見いだす,あるいはコントロール 感を得る段階,何かをしようとするといった新しいもの ごとの始まりという段階がある3)6)9)。 5. 移行の状態に影響する要因 移行は,今まで安定していたことが不安定になる状態 から安定するまでの状態のことである2)。不安定になる 状態は,その個人のコントロールの範疇を越えている場 合に起こる。移行の出来事に対して,どのようにしたら コントロールできるのであろうか。そして,移行が成功 していると判断される,主観的な幸福感,役割を習熟し ていること,人との関係性の安寧3)9)に到達することが 出来るのであろうか。 移行の状態に影響する要因には,個人の状態,地域, 社 会 の 状 態 が あ る。 個 人 の 状 態 で は,「 意 味 づ け (Meaning)」,「見通し(Expectation)」,「知識と技術の レ ベ ル(Level of knowledge/skill)」,「 環 境 (Environment)」,「計画性(Level of planning)」,そし て「情緒的・身体的安寧(Emotional and physical well-being)」3)6)があり,「文化的信条と態度(Cultural beliefs
and attitudes)」,「社会経済的地位(Socioeconomic status)」といった文化的,社会的状況がある6)。 1) 意味づけ 「意味づけ」は,移行にある人が移行の出来事をどのよ うに意味づけするかということである。これは,予測さ れたもしくは経験された移行の主観的な評価に関連す る。移行が望むもの,望まないもの,個人の選択の結果 であろうとなかろうと,移行に対する意味づけは,肯定 的,中立的,否定的なものである3)6)。 2) 見通し 「見通し」は,それまでの経験によって影響され,見通 しがわかっているときは移行に関連したストレスは緩和 される。つまり変化の予測は,それまでの経験に左右さ れ,経験があることで今後何が起こるか予測できる。さ らに,予測できることは準備できる期間があることにつ ながり,移行に伴うストレスを緩和させる可能性を持 つ3)。 3) 知識と技術のレベル 不確かさを伴う移行では,対応するために「知識と技 術のレベル」である新しい知識や技術が必要であり,移 行に関連した知識と技術のレベルは,健康上の結果に影 響を及ぼす。不確かさは,移行の重要な側面として新し い知識や技術の発達の必要性を生み出す3)。これは新た な役割を明確にし,役割のモデル作りを行う役割補足プ ログラムにあたる9)。 4) 環境 「環境」は,移行にある個人の支援体制として重要であ る。その人の「環境」としての支援者は,家族員,パート
ナー,友人,そして同じ体験をしている人々,看護職で ある。人が移行を経過する際に,有効な支援が得られる ことは,移行の経過を円滑にする3)。 5) 計画性 「計画性」は,個人が移行の出来事を知覚し,その目的 を確認することから始まり,「環境」と同様,移行の経過 を円滑にする。移行が起こる前,最中の「計画性」は,移 行の成功に影響する他の状態である。完璧な計画は,移 行を円滑に健康的にすることを助ける3)6)。 6) 情緒的・身体的安寧 「情緒的・身体的安寧」は,移行は情緒反応として不安, 恐れ,自尊心の低下などを引き起こす3)6)。 7) 文化的,社会的状況 移行による体験が,その文化によってどのように捉え られているかが移行を促進するか否かに関係する。また, 移行を体験している人の社会経済的地位により,移行は 影響される3)6)。 6. 反応のパターン どのように移行の現象を受け止めるかには個人差があ り,それゆえ受け止めかたは,出来事に対する反応や応 答に影響をする。移行は,個人がどのように移行を知覚 するかにより,その意味づけが異なるその人の体験であ る2)。 移行は個人によって異なった経験であるが,反応のパ ターンには共通性がある。移行の期間には,ネットワー クや社会的支援の喪失,意味のある目標の見失い,慣れ 親しんだものが変化し,予測不能となる,そして今まで に対処していた知識・技術の修正を迫られるといった事 態を感じる2)9)10)。これらは,過去の同一性や物事の対 処にとらわれている場合や,新しい対処方法の選択がで きないこと,決定したことを実行に移すことが困難な場 合に起きる9)。 上述のような事態が起こっている間に個人が示す反応 には,認められるものとそうでないものがある。認めら れるものとしては,移行の中で起こる変化と,その変化 に伴い示す反応がある。移行の中で起こる変化には,役 割の変化に伴う葛藤や,自己概念の変化,自尊感情の低 下,人間関係の変化などが含まれ,それらの変化に伴っ て,まごつかせる,苦痛,おこりっぽくなる,不安,抑 うつ状態2)3)7)∼ 9),孤独感,高揚感,新たな意味を見い だすこと7)9)という反応が見られる。 7. 移行が成功している指標 移行が成功していると判断する指標は,1)主観的な幸 福感,2)役割を習熟していること,3)人との関係性の安 寧2)3)6)∼ 9),4)自己同一性の再形成6)である。 1) 主観的な幸福感 移行にある人に対する看護は,「健康感(Sense of well-being)を強めるために,移行を促進すること」である8)。 主観的な幸福感は,うまく移行が起こっている間,安寧 の気持ちに変わるというものである3)9)。主観的な幸福 感には,効果的なコーピング,情緒が個人で管理できる こと,また仕事や結婚,役割に対する満足感などが該当 する。 2) 新たな役割の獲得 役割を習熟する役割獲得は,うまく役割行動がとれる ことであり,新しい状況に必要な行動を伴った心地よさ を示す3)9)。そして役割の達成に至るまでの過程を役割 修得といい,役割修得は「新しい役割または修正された 役割の行動,感情および目標のある修得度合いに至るま での過程であり,既存の役割に新しい役割を統合するこ と,もしくは役割の喪失の場合はその役割から離れるこ と」7)である。つまり,移行が成功している指標には, 個人が新しい状況,環境を管理するために必要とされる 技術や行為の熟達感を得ることである6)。 3) 関係性の安寧 関係性の安寧は,家族の適応,結合,意味のある相互 関係という点から概念化されている3)9)。関係性の安寧 は,移行の出来事に家族を巻き込んでいる場合,意見の 相違などで家族の分裂が起こるかもしれないが,良い結 果に向かってプロセスが動いているときには,家族関係 の安寧は回復,促進される。さらにより広い社会的ネッ トワークと地域を伴う統合も移行がうまくいっている指 標であり,社会からの分裂を予防する点で重要である。 つまり関係性の分裂を和らげ,新しい関係性の発展を促 進することを目標とすることである。また,組織レベル での望ましくない移行の結果は,まとまり不足,争いの 増加,あきらめなどを示し,一方スタッフ間の協力,効 果的なコミュニケーション,チームワーク,信頼は移行 が成功していることを反映している。 4) 自己同一性の再形成 移行の経験は,同一性の再形成に帰着する。このこと は,結婚,妊娠,その個人あるいは家族の疾病,雇用状 態の変化というような発達的移行,状況的移行,健康− 疾病移行によって引き起こされる6)。 8. 移行期にある人への看護 移行は,変化と適応の過程である5)。つまり人生のあ る状況や関係が変化する場合,移行の過程が始まる。移 行は,安定した生活からの混乱,崩壊に結びつくため, 移行を促進する看護介入の重要性が指摘されている11)。 移行の過程で重要なことは,対象者がどれだけ移行に あるかを認識することである。つまり移行にある人がそ の経過と影響を評価し,それに対処する計画を立てられ るだけの認識力があるかどうかということである9)。そ
れを支える看護は,「移行にある人の経過と健康に配慮 するものであり,その結果として健康と幸福感がもたら される」ものである8)。 移行は,個人レベル,家族レベル,また単一の移行だ けではなく,それらが複数生じている移行がある。看護 者は,個人や家族の 1 つの特定の種類の移行にのみ注意 するのではなく,個人あるいは家族の生活の中における, すべての重要な移行のパターンを考慮する必要があ る6)。 移行にある人の経験を理解するために,健康な移行の 達成を促進すること,あるいは阻害する個人や環境の要 因を除外することが必要である。個人,地域,社会の条 件は,移行の過程あるいはアウトカムを促進するかもし れないし,阻害するかもしれない6)。また,移行経験を 評価する際に,看護者はクライエントの移行の過程を考 慮すること,さらにクライエントの心地よさと統制感の 程度を考慮することの重要性が指摘されている6)。 「移行の状態に影響する要因」をもとに,移行期にある ケアの受け手であるクライエントへの看護を検討する と,1)デブリーフィング,2)情報を提供する,3)役割の 明確化という 3 点が考えられる。 1) デブリーフィング 移行の状態に影響する「意味づけ」に対しては,移行に 関連する体験を語るプロセスである「デブリーフィング」 が有効であろう9)。クライエントは,話をすることでそ の時の感情の想起や,認識していることの語り,状況の 説明をすることがある。さらに,その出来事に対する意 味や自己についての解釈や自己の感情を吐露することが ある9)。移行の特徴の項でも述べたように,ここでは個 人が移行をどのように捉えているかが大切であり3),そ れにより移行の結果は肯定的にも否定的にもなる。移行 の意味づけは,人の健康の帰結と同様に,経験の理解の 本質である。移行を経験している人の視点から,その人 の体験している移行を理解する重要さにつながる9)。 2) 情報の提供 情報を提供することにより予測し,「見通し」を持つこ とを支援することができる。情報提供は,個人に対する 場合と,同じ体験をする,あるいはしている集団を対象 にする場合がある。情報を与え,期待を抱かせるように することで,新しい目標の設定と,移行に対処する方法 の修得ができるようになる9)。 また予測するためには,知識や体験が必要である。情 報の提供により,どこに行ってどういう情報が得られる のかを知っていることつまり,アクセスを知っている, 持てることにつながる。 3) 役割の明確化 役割の明確化は,「知識と技術のレベル」で新たな役割 を明確にし,役割のモデル作りを行う役割補足プログラ ムにあたる9)。専門職人への移行に対しては,支援する プリセプター,メンター,役割モデルをとる人の存在が 移行の経過を円滑にする。同様に,看護者がクライエン トの必要とする知識・技術を提供することで,役割を習 熟するための支援を提供することができる。人が移行を 経過する際に,有効な支援が得られることは,移行の経 過を円滑にすることができる3)。役割モデルを示すこと, ガイドし導くこと,情報や方法を知らせることが経過を 円滑にする5)。
Ⅲ . 終わりに
以上,移行について述べてきた。看護実践の状況は, 移行の 4 つの種類のいずれかに該当すると考える。つま り移行は,様々な看護実践の場で活用可能な概念である。 その際には,クライエントがどのように移行の過程を認 めているのか,結果として何を期待しているかを理解す ることが大切である。 また,移行の完了は,人がより大きな安全な期間に到 達したときにおこる2)。これは,移行の出来事が肯定的 であることを意味しない。移行の理論的背景には,発達 理論が含まれるため,移行の前より成長するという意味 で肯定的に捉えることを忘れてはならない。 尚,本論文は聖路加看護大学大学院博士後期課程に提 出した博士論文の一部である。 文献1) Walker LO (1992) Ch.10 Parent-Infant Nursing Research on the transition to parenthood. Parent-Infant Nursing Science: Paradigms, Phenomena, Methods. F. A. Davis Company, Philadelphia, pp195-207.
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concept in nursing. Journal of Nursing Scholarship, 26(2): 119-127.
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10)Meleis AI (1991) Ch.6 The Discipline of Nursing and Its Domain of Knowledge. In Theoretical Nursing: Development & Progress. Lippincott, New York, pp 97-114.
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