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小学校理科におけるオンライン授業の実施記録 新型コロナウイルス感染症流行による臨時休校期間中の取り組み

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小学校理科におけるオンライン授業の実施記録

-新型コロナウイルス感染症流行による臨時休校期間中の取り組み-

長 田 朋 之 (光塩女子学院初等科教諭)

要 旨

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界規模の流行の影響により、光塩女子学院初等科では 2020 年 3 月から 5 月末までの約 3 ヶ月間にわたって臨時休校となり、2020 年 6 月に登校が再開した が、校内の混雑を避けるために一部の児童のみを順番に登校させる方式だったため、完全に通常の登 校に戻ったのは 2020 年 9 月であった。その間、児童の学びの機会を保障するため、全校をあげて「ま なびは止めない&つなごう心のリボン」をキーワードに、全学年・全教科の授業をビデオ会議システ ムや授業支援システムを利用したオンライン授業に切り替えて実施するなど、可能な限りの対応を行 った。本論文では、6 年生の理科のオンライン授業における取り組みを中心にまとめた。

キーワード

小学校、理科、オンライン授業、ビデオ会議システム、授業支援システム、 新型コロナウイルス感染症、COVID-19、臨時休校、在宅勤務

1.はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と呼 ばれるウイルスが、中国の武漢市にて世界では じめて人間への感染が確認[1]されてから、瞬く間 に世界中に感染が広がり、その数ヶ月後には日 本国内でも同ウイルスが流行しはじめた。2020 年 2 月 27 日(木)の夕方、日本の安倍 晋三首 相は全国の小学校などを対象に、3 月 2 日(月) から春休みまでの臨時休業を要請した[2]。私の勤 務校である東京都杉並区にある私立小学校「光 塩女子学院初等科」(以下、「同校」とする)に おいても、首相の要請を踏まえ、2 月 29 日 (土)を最終登校日として臨時休校が開始され た。 同校の当初の予定では、首相の要請通り 2020 年 3 月のみを休校とし、4 月からは通常通りの活 動に戻す予定であった。そのため春休みの期間 を除くと実質的に約 2 週間の休校であり、授業 内容に大きな遅れは出ないものと判断して、夏 休みと同程度の課題を各教科で設定して臨時休 校がはじまった。 2020 年 4 月までに国内の感染症流行は収まら ず、同校では新学期開始を延期して事態を見守 った。4 月 7 日(火)に、首相より東京を含めた 地域に対して 5 月 6 日(水)までの緊急事態宣 言が発令された[3]。同校はこれらの状況を踏ま え、4 月の通常登校を断念するとともに、5 月以 降の見通しとして事態が好転する可能性が低い

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- 15 - ことから、ICT を用いたオンライン授業を実施す ることを決断した。 4 月 17 日(金)より、ビデオ会議システムを 用いて、全学年・全児童を対象に家庭と学校を 映像で双方向につないでのホームルームを開始 し、4 月 24 日(金)からは同システムを利用し た授業も開始した。 5 月 4 日(月)に、首相は緊急事態宣言の 5 月 31 日(日)までの延長を発表[4]したため、同校 は緊急事態宣言が解除された 2020 年 6 月 1 日 (月)まで、2020 年 3 月 2 日(月)から約 3 ヶ 月間にわたっての臨時休校となった。 6 月 1 日(月)からは登校再開となったが、通 常の登校方式ではなく、校内の混雑をさけるた めに学年の児童の半分ずつが順番に登校する方 式(以下、「分散登校」とする)となった。この 方式は入学式や終業式などを除き、8 月末まで継 続され、通常の登校方式に戻ったのは分散登校 が開始した 6 月から約 3 ヶ月後の 2020 年 9 月か らであった。

2.オンライン授業システム

これまでの同校では、登校できることを前提 とした教育システムによって活動が行われてき たため、臨時休校期間と分散登校期間に児童が 登校しない状態で授業を受けられるように、新 しい教育システムが必要となった。この新しい 教育システムの根幹となったものが ICT を活用 した「オンライン授業システム」である。1 年生 から 6 年生までの在籍する全児童が滞りなく使 用でき、国語や算数などの主要教科だけでな く、音楽や体育も含めた全教科が対応できるよ うに設計した。 東京 23 区内の公立の小学校においては、2020 年 4 月~5 月末までの緊急事態宣言の期間中、学 校に児童が行き、自宅学習のための教材などを 配付したり回収させたりした学校もあった[5]。し かし、同校は私立小学校であるため、公共交通 機関を利用して登校する児童がほとんどであ り、公共交通機関の利用を控えるように呼びか けられている緊急事態宣言の期間中に、児童を 学校に登校させて課題を配付するといったこと はできなかった。教科書などの教材は 4 月 10 日 (金)に学校から各家庭に宅配便で送ったが、 発送には図 1 のように膨大な作業をしなければ ならないため、頻繁に教材を発送することは不 可能であった。また、緊急事態宣言の趣旨に照 らせば、教員の学校への出勤も可能な限り控 え、在宅勤務に切り替える必要があった。つま り、児童も教員も原則として自宅にいる状態で 1 ヶ月間以上にわたって小学校の機能を維持しな ければならない状況であった。そこで、同校で はすべての教育システムをオンラインに切り替 えて実施することとなった。 オンライン授業システムは、「ビデオ会議シス テム」「授業支援システム」「在宅勤務システ ム」の 3 つのシステムから構築されている。 図 1 学校から全家庭に教科書などの教材を 2020 年 4 月 10 日(金)に宅配便で発送 2.1 ビデオ会議システム 教室で行う授業のように、児童が一堂に会し て、教員との双方向のやり取りをするために使 用した。同校では、2019 年度までに「Skype」 「FaceTime」といったビデオ通話システムを遠 隔授業に用いたり教員同士の打ち合わせに利用

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- 16 - したりといった経験があったので、初期の検討 段階では利用実績のあるビデオ通話システムの 利用を考えた。しかし、ビデオ通話システムは 1 対 1 もしくは少人数のグループでの利用を目的 に設計されているため、教員と学級の合計人数 が 40 名を超えることがある同校の環境では、ビ デオ通話システムの利用は不適当であった。 そこで、40 名以上が同時参加することを前提 に設計されたビデオ会議システムを検討した。 ビデオ会議システムは 2020 年 4 月の時点では、 「Zoom」「Microsoft Teams」「Hangouts Meet」 (現「Google Meet」、以下「Google Meet」とす る)などが主要なリアルタイムビデオ会議シス テムであったため、これらの中から Google Meet を選択した。

当時の Google Meet は Zoom と比べて機能が少 なかったが、学校機関向けの機能が当初より搭 載されていたため選択した。児童ごとに個別の アカウントを学校が発行し、ビデオ会議に参加 する者を同校のアカウントを所有する者に限定 できるので、当時問題になっていた部外者がビ デオ会議に侵入して授業を妨害される可能性が 限りなく低い点を評価した。また、会議を主催 したり録画したりする権限を児童には割り当て ないように制限できる点も優れていた。 Microsoft Teams は、当時は大人数の参加者の 全員の顔を一覧で確認できなかったことに加 え、ビデオ会議以外にもチャットや VoIP 音声通 話などの多数の機能が統合されていて、このよ うなツールを児童に使わせた場合に、学校側で 使用方法を制御することが困難なため、オンラ イン授業への利用を見送った。 2.2 授業支援システム 通常の授業では、教員が黒板に書いたり口頭 で説明したりする以外に、印刷した資料を配付 したり、紙の教材に書き込ませて回収したりす るが、オンライン授業でも同様のことができる ようにするため、文書・写真などの教材を配 付・回収・返却することができる授業支援シス テムを使用した。 同校では、2019 年度の時点で既に導入してい た授業支援システムの「MetaMoJi ClassRoom」 がそれらの機能を有していたため、継続して使 用した。 なお、MetaMoJi ClassRoom は文書・写真を扱 えることに加えて、録画した動画の配信も行う ことができる。保護者の都合などによりリアル タイムでビデオ会議システムの授業に参加でき ない児童のために、図 2 のように、その授業を 録画した動画を MetaMoJi ClassRoom にて配信す るためにも使用した。 図 2 Google Meet で行った 1 年生のオンライン 授業の録画を MetaMoJi ClassRoom にて配信 2.3 在宅勤務システム ビデオ会議システムや授業支援システムによ って、児童だけでなく、教員も原則として学校 に出勤せずに授業を行う環境は整備できたが、 個 人 情 報 保 護 の た め ぼかし使用

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- 17 - 学校の教育活動を維持するためには、授業以外 の業務も在宅勤務で行える必要があった。 同校では、2019 年度の時点で VDI 型シンクラ イアントが導入されているといった先進的な教 員用の ICT 環境が整備されていたため、在宅勤 務に必要な追加のハードウェアやソフトウェア の購入はわずかであった。 在宅勤務でオンライン授業をするための主な 機材として、カメラ・マイクが搭載された Windows10 ノートパソコン、iPad mini、Apple Pencil を使用した。ノートパソコン、iPad mini のいずれも Google Meet と MetaMoJi ClassRoom に対応しているが、Google Meet を使用する場面 ではノートパソコンの方が使い勝手がよく、 MetaMoJi ClassRoom にて児童が提出した課題に コメントを手書きするような場面では iPad mini と Apple Pencil を組み合わせた方が使い勝手が よかったため、これらの機材が用いられた。 教員間の打ち合わせが必要な学年便りの発行 など、教員が単独では行えない授業以外の業務 は、ファイル共有システム、スケジュール共有 システム、ビデオ会議システム、VoIP 音声通話 システムなどを使用した。これらのツールのほ とんどは、2019 年度の時点で導入済みだったた め、大きな混乱はなく使用することができた。

3.理科のオンライン授業の特性

登校できなかった期間の理科の授業は、3~6 年生のすべてでオンライン授業に切り替えた。 オンライン授業は、Google Meet によるビデオ会 議と、MetaMoJi ClassRoom による課題の配付や 回収などを組み合わせて行った。 表 1 は、これまでの理科の授業で行っていた 主な活動を、ビデオ会議システムと授業支援シ ステムのどちらで実施したかをまとめたもので ある。重複しているものは、どちらのシステム でも行ったものである。 図 3 Google Meet による理科の授業の様子 個 人 情 報 保 護 の た め ぼかし使用 表 1 理科の授業活動の分類と実施結果 活動の分類 ①教員から児童全体への説明や発問 ②教員から個別児童への説明や働きかけ ③児童から教員への返答や質問 ④児童同士の意見交換や発表 ⑤教員による演示実験や標本の提示 ⑥課題の配付・回収・返却 ⑦教員による児童の評価 ⑧児童による実験や観察 ビデオ会議システムで実施:①③⑤ 授業支援システムで実施:①②③④⑤⑥⑦⑧

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- 18 - 3.1 教員から児童全体への説明や発問 Google Meet は、図 3 のように、教師からは参 加している児童全員の表情を一覧で見ながら説 明や発問を行えるため、その場の雰囲気で補足 の説明を加えたり、発問の仕方を変化させたり できるので、教員の立場としては説明や発問が 行いやすかった。一方で、授業支援システムを 利用した場合は、PDF の文書による説明に加え て、ビデオ会議システムの授業と同じように説 明を動画で撮影して挿入できるため、児童の立 場としては同じように映像で見ながら教員の説 明を聞くことができる上、児童は何度でも同じ 説明を繰り返して確認できる利点があった。 3.2 教員から個別児童への説明や働きかけ ビデオ会議システムにおいても不可能ではな いが、授業支援システムを利用した方が、多く の場合で適していた。通常の授業であれば、あ る程度まとめて行える説明や働きかけは、個々 の児童に話しかけて行うよりも、授業の中で一 斉に行った方が手早く効率がよいが、授業支援 システムを利用している場合には、同様の説明 や働きかけをコピーして複数人に同時に行える ため、ビデオ会議システムの利用中に全体への 説明を止めてまで個別児童への対応をしない方 が効率的なことが多かった。 3.3 児童から教員への返答や質問 ビデオ会議システムを使っても、授業支援シ ステムを使っても、積極的に返答や質問を行う 児童と、そうでない児童は、通常の授業のとき とあまり変わらないように感じた。ただし、通 常の授業のときと比べて、ビデオ会議システム の方が、声の小さい児童の発言内容がよく聞こ え、挙手の様子も判別しやすかった。 授業支援システムと比べて、ビデオ会議シス テムの方がお互いにリアルタイムに受け答えが できるので、その場ですぐに返答が欲しいもの はビデオ会議システムの方が適していた。 授業支援システムでは、お互いにリアルタイ ムのやり取りではないため、児童からの質問に 対して教員はじっくりと時間をかけて丁寧に対 応することができた。 3.4 児童同士の意見交換や発表 ビデオ会議システムで児童同士が自由に意見 交換をしたり、お互いに発表し合ったりする場 面では、学級の全員が 1 つの会議室に入って行 うのは困難であった。4~8 人程度の少人数のグ ループに分割して、それぞれの会議室を作った 方が発言しやすいだろうと感じた。休校期間中 の Google Meet では、少人数グループの会議室 を容易に作成する機能が搭載されていなかった ため、少人数グループによる児童同士の活動 は、ほとんど行わせなかった。 授業支援システムの MetaMoJi ClassRoom に は、児童が教員に提出したものをクラス全員が 閲覧できるようにする機能があるので、その機 能を利用して児童が調べたものをお互いに発表 させた場面もあったが、印象としては、教室の 掲示板に児童の作品を掲示したような雰囲気で あった。 3.5 教員による演示実験や標本の提示 どちらのシステムでも可能だったが、主に授 業支援システムを使用した。ビデオ会議システ ムの利点はリアルタイムに双方向のやり取りを できることであるが、演示実験や標本の提示と いう場面では全く必然性がなく、授業支援シス テムの繰り返し確認できることの方が利点とし て大きかった。 演示実験や標本の提示は、教員が在宅勤務し ていたため、必ずしも教員自身が行ったもので はなく、NHK for School※1の実験動画などを活

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- 19 - 用した。NHK の動画は、一般社団法人授業目的公 衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)に届出を行 うなどすれば、法令で認められた範囲におい て、オンライン授業でも使用できる[6]ので、大変 有用だった。 3.6 課題の配付・回収・返却 授業支援システムが大いに活躍した。教員が 在宅勤務を行っていたため、オンライン授業が はじまる前の 4 月に宅配便で送ることができた 教科書などの教材もあったが、ほとんどの教材 はオンラインで配信する必要があった。 MetaMoJi ClassRoom は PDF を直接配信できるた め、在宅勤務している教員は、パソコンで PDF の教材を作成し、必要に応じて説明の動画を挿 入し、児童に配信した。課題として配信した PDF は、授業支援システムの提出機能を用いて教員 が回収し、確認した上で返却した。図 4 のよう に、児童は紙の教材に書き込むのと同じよう に、オンラインで書き込み、そのままデータで 提出することができる。 6 年生になると、多くの児童はキーボードによ る文字入力ができるようになるため、図 4 で は、「水色やピンク→課題を書く色」「グラデー ション→自分のメモ」「式 300÷10=30」とい った部分を児童自身が入力している。一方で、 児童は手書きも利用している。丸を付けるとい った作業や分数の式などは、キーボードでは入 力がしづらいので、その場面に適した入力方式 を使用しているようであった。 理科のオンライン授業では行わなかったが、 国語の漢字練習など、紙のプリントに書いた方 が良いものについては、PDF を各家庭で印刷する ように保護者に依頼し、写真で撮影して、授業 支援システムで提出する方法をとった。 図 4 MetaMoJi ClassRoom にて配付した課題を 児童が行ってオンラインで提出したもの 3.7 教員による児童の評価 評価はオンライン授業のみでも可能であっ た。課題への取り組みなど、授業支援システム で提出されるというだけで、通常の授業と変わ る点はなかった。 ただし、知識の定着や理解を測定することは 行わなかった。技術的に不可能ということはな かったが、オンラインで児童の評価を行うこと は当時の優先順位では低く、必要とされなかっ た。 3.8 児童による実験や観察 実施する単元によってはオンライン授業で可 能なものもあったが、不可能な実験も多かっ た。授業支援システムから配信した課題の中で 実験を紹介し、各家庭で行う余裕があれば実施 する方法とした。

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4.理科のオンライン授業における実験・

観察に適する単元と適さない単元

ここでは例として、同校が使用している啓林 館の検定教科書「わくわく理科」[7]の 6 年生用に 掲載された主要な単元で扱われている実験・観 察について、各家庭で児童による実験が可能な ものかを示す。なお、実験操作は 6 年生の児童 が家庭で単独に行い、実験に必要な器材などは 保護者が購入し、学校からは発送しないものと する。 4.1 ものが燃えるしくみ 家庭で実験させることは不可能である。 ろうそくなどを燃焼させる実験があるが、児 童に家庭で行わせることは危険である。また、 酸素ボンベや石灰水といった薬品類、気体検知 管などの実験器具も一般家庭では準備すること ができない。 4.2 ヒトや動物の体 家庭で実験することは一部不可能であるが、 おおむね可能である。 消化を確認する実験で、澱粉が沃素液に反応 することを確認する場面では、沃素系のうがい 薬でも代替できる。 呼気と吸気の成分の違いを確認する実験は、 石灰水や気体検知管を一般家庭では準備するこ とができない。 4.3 植物のつくりとはたらき 家庭で実験することは可能である。 蒸散作用などは容易に観察することができ る。また、光合成した葉に含まれる澱粉が沃素 液に反応することを実験で確認する場面では、 沃素系のうがい薬でも代替できる。 4.4 生物どうしのつながり 家庭で実験することは不可能である。 微生物の観察ためにはある程度の性能のある 生物顕微鏡が必要であり、一般家庭では所有し ていない。 4.5 水よう液の性質 家庭で実験することは不可能である。 指示薬として冷凍ブルーベリーを用いたり、 塩酸の代替として酸性洗剤などを使用したりす れば、教科書の実験と近い活動をすることは可 能であるが、それらの準備を保護者に依頼する には複雑すぎるため現実的でない。 4.6 月と太陽 家庭で実験することは可能である。 自由な時間が取りやすいオンライン授業の方 が月や太陽の観察は実施しやすい。 4.7 大地のつくりと変化 家庭で実験することは不可能である。 実験そのものの操作は容易であるが、適切に 配合された砂や泥などの混合物が必要であり、 それらの準備を保護者に依頼するには複雑すぎ るため現実的でない。 4.8 てこのはたらき 家庭で実験することは可能である。 実験用てこは工夫して代替する必要があるも のの、不可能というほどではない。 4.9 発電と電気の利用 家庭で実験することは不可能である。 手回し発電機などが入手できないためであ る。ただし、個人用教材として数百円で販売さ れているものもあるため、学校で一括購入して いる場合などは、各家庭に届けられれば実験は 可能である。 また、プログラミングに関する活動は、実際 のセンサーを使っての実験はできないが、啓林

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- 21 - 館が作成したプログラミングシミュレーターを 使用したり、Scratch などのオンラインの教育プ ログラミング環境を利用したりすれば体験は可 能である。 4.10 自然とともに生きる 家庭で実施することは可能である。 調べ学習が単元の中心であり、実験・観察は ない。

5.理科のオンライン授業で実施した内容

理科の授業を構成する 8 つの活動のうち、ほ とんどの活動はオンライン授業でも支障なく実 施できる。一方で、実験や観察の中にはオンラ イン授業では実施が困難であったり不可能であ ったりするものも複数ある。 小学校の理科教育においては、文部科学省が 発行している学習指導要領に示されている通 り、「(2)観察,実験などを行い,問題解決の力 を養う。」ことが教科の目標のひとつ[8]であるた め、単元で扱うべき実験や観察ができない授業 では、その目標を達成することができない。す なわち、小学校の理科の授業をオンラインで行 うにあたっては、実験や観察ができるかどうか という点が、実施することの適切性を判断する 上で重要な基準となる。 上記をふまえ、緊急事態宣言による同校の登 校自粛期間中の 6 年理科のオンライン授業で は、「植物のつくりとはたらき」「てこのはたら き」などの家庭で実験が可能なものを中心に行 った。 また「水よう液の性質」は 6 月の分散登校が 開始してから、登校時の授業とオンライン授業 のハイブリッドで実施した。児童の登校時には 水溶液を用いた実験を行い、オンライン授業で は実験後の結果の確認などを行った。

6.理科のオンライン授業による

知識の定着と理解に関する評価

2020 年 4 月~7 月までの 1 学期の期間は通常 の登校を全く行うことができなかったが、6 年生 は卒業までにすべての単元の学習を修了させる 図 5 2017 年度実施の筆記試験問題(正答率 78%) 図 6 2020 年度実施の筆記試験問題(正答率 92%) A B C D E F G H I J K L 1つ 10gのおもりを図のように5つ 下げました。ここに、おもりを1つ加 えて水平にするには、おもりを A~L のどこに下げればよいですか。記号で 答えなさい。 A B C D E F G H I J K L 1つ 10gのおもりを図のように4つ 下げました。ここに、おもりを1つ加 えて水平にするには、おもりを A~L のどこに下げればよいですか。記号で 答えなさい。

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- 22 - 必要があることから、6 年生の学習単元の順序を 入れ替え、オンライン授業や分散登校でも滞り なく行える単元を 1 学期の期間に割り当てた。 そのため、例年と変わらない進度で 6 年生は 1 学期を終えることができた。ビデオ会議システ ムを使った授業での児童の様子や授業支援シス テムに提出される課題の取り組み状況を見て も、順調な様子であった。 しかし、児童が例年と同程度の知識の定着と 理解が行われているかという点は、1 学期中に確 認する機会がなかったため、2 学期がはじまって 通常登校になった 9 月に、1 学期に学習したすべ てを範囲とする筆記試験(100 点満点)を行っ た。過去に出題したことのある問題を少し変更 するなどして出題することで、難易度が例年と 変わらないようにした。 この筆記試験の結果を 10 点区切りの階級で度 数分布表にしたところ、階級 90 点以上 100 点ま での度数が最大となり、次が階級 80 点以上 90 点未満、3 番目の大きな度数が階級 70 点以上 80 点未満となった。 また、図 5 と図 6 のように、前年度までに出 題した問題の中から、若干の変更を加えた類似 問題を出題し、当時の児童の採点記録から求め た正答率と 2020 年度の正答率との比較も行っ た。例えば、図 5 の 2017 年度の正答率は 78%、 図 6 の 2020 年度の正答率は 92%であった。 筆記試験の詳細や分析の詳細は同校のトレー ドシークレットが含まれるために明かさない が、このような分析を行った上で、筆記試験を 通して把握できる児童の実態としては、2020 年 度の 6 年生の理科の知識の定着と理解は例年と 比較して十分に達成できていると結論付けた。

7.おわりに

ビデオ会議システムと授業支援システムを組 み合わせた理科のオンライン授業によって、通 常登校の場合の授業と遜色なく知識の定着と理 解をさせることができる単元もあることがわか った。一方で、オンライン授業では行えない実 験や観察も多くあり、小学校の理科の内容のす べてをオンライン授業に移行することはできな いこともわかった。 本論文では、6 年生の理科のオンライン授業の 実施内容を中心に扱ったが、同校の臨時休校期 間中は、1~6 年生の全学年・全教科がオンライ ン授業に切り替わっており、2 学期が終わった 2020 年 12 月の時点で、学習内容の大きな遅れな どはいずれの学年からも報告されていない。つ まり、1 年間のうちの限られた期間であれば、オ ンライン授業に切り替えても、悪影響を出さず に通常登校の授業に近い学習効果を発揮できる 可能性が高い。 ただし、児童の気持ちの面ではオンライン授 業は必ずしも優れていると言えない。通常登校 再開後に児童に口頭でアンケートをとったとこ ろ、「オンライン授業の方が他の児童の私語で邪 魔されることもなく集中しやすい」という意見 を述べる児童も少数いたが、半数以上の児童が オンライン授業よりも通常授業の方が楽しいと 答えた。 再び臨時休校とならないことを願うが、校内 で集団感染が発生したり、災害が発生したりと いった理由で予期せず臨時休校とせざるを得な い状況が起こる可能性は否定できない。オンラ イン授業は、学びの機会を保障する切り札とし て、常にシステムを利用できる状態に維持して おくことが望ましい。同校ではオンライン授業 に必要なシステムを常に稼働させ、臨時休校へ の備えとするとともに、平常時からの積極的な 活用をしている。 ビデオ会議システムは、出席停止などの理由 で欠席が必要な児童が授業に参加するために利 用したり、保護者会や保護者面談などに保護者 がオンラインで参加できるようにしたり、教員

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- 23 - の朝礼や会議を在宅勤務でも参加できるように したり、といった平常時の場面で有効である。 また、同校では 1 年生から 1 人 1 台の個人持 ち iPad の環境が整備されているため、授業支援 システムは校内で使用するだけでなく、家庭で 宿題をするような場面でも使用され、日常的な 利用がされている。 ビデオ会議システムも授業支援システムも、 2020 年度の前半は臨時休校中のオンライン授業 のための利用が中心であったが、今後は通常の 授業の中における活用を中心としてより一層の 実践を重ねていきたい。

謝辞

本研究の実践のために光塩女子学院初等科の 先生方と関係者の皆様には多大なるご協力をい ただきました。ここに改めて感謝の意を表しま す。

参考文献

[1] 世界保健機関(WHO)「SARS-CoV-2 の起源」 https://extranet.who.int/kobe_centre/si tes/default/files/20200507_JA_Origin_SA RS-CoV-2.pdf (2020 年 12 月 29 日取得) [2] 内閣官房内閣広報室「新型コロナウイルス 感染症対策本部(第15回)」 https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/acti ons/202002/27corona.html (2020 年 12 月 29 日取得) [3] 内閣官房内閣広報室「新型コロナウイルス 感染症対策本部(第27回)」 https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/acti ons/202004/07corona.html (2020 年 12 月 29 日取得) [4] 内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推 進室「新型コロナウイルス感染症緊急事態 宣言の期間延長」 https://corona.go.jp/news/pdf/kinkyujit aisengen_gaiyou0504.pdf (2020 年 12 月 29 日取得) [5] 東京都中野区教育委員会「教育長からのメ ッセージ(2020 年 5 月 20 日更新)」 https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/654600/d028873.html (2020 年 12 月 29 日取得) [6] 日本放送協会(NHK)「教育・研究目的での NHK番組の利用をお考えの方へ」 https://www.nhk.or.jp/nijiriyou/kyouiku .html (2020 年 12 月 29 日取得) [7] 石浦 章一,鎌田 正裕,大隅 良典,粟生 ,青 木 浩幸,赤尾 綾子,秋吉 博之,阿部 治,有 馬 武裕,阿武 智之,石川 聡子,伊東 明彦, 糸乗 前,入月 俊明,内山 裕之,畦 浩二,衛 藤 巧,尾崎 浩巳,長田 朋之,小澤 良一,梶 山 正明,金子 美智雄,神山 真一,川真田 早 苗,木村 憲喜,香西 武,島 善信,菅井 啓之, 杉澤 学,鈴木 盛久,大黒 孝文,高久 元,髙 橋 隼,髙山 裕一,田口 哲,武村 重和,田島 操,谷岡 義高,塚田 庸子,辻本 真治,出口 明子,土井 徹,永田 敬,中西 史,中野 直人, 中林 健一,林 武広,久田 隆基,平田 辰弥, 藤井 浩樹,藤本 勇二,松本 伸示,松山 明 道,三木 勝仁,宮田 新作,宮本 純,三好 美 織,向 平和,村上 忠幸,柳本 周治,矢野 英 明,山本 智一,山本 吉延,山森 美穂,笠 潤 平,立古 英之,渡邉 重義,株式会社新興出版 社啓林館編集部「わくわく理科」株式会社 新興出版社啓林館,6 年,pp4-5,2020 [8] 文部科学省「小学校学習指導要領(平成 29 年告示)」 https://www.mext.go.jp/component/a_menu /education/micro_detail/__icsFiles/afie ldfile/2018/09/05/1384661_4_3_2.pdf (2020 年 12 月 29 日取得)

参照

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