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マグネトロンプラズマCVDによるグラフェンの成長と基板材料の効果

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Academic year: 2021

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1 459 平成29年 8 月17日 第58回真空に関する連合講演会で発表 1 京都工芸繊維大学(〒6060962 京都府京都市左京区松ヶ崎) a) E-mail : hayashiy@kit.ac.jp 1 459 ―( )― Vol. 60, No. 12, 2017 第回真空に関する連合講演会論文集

マグネトロンプラズマ CVD によるグラフェンの成長と

基板材料の効果

野々村秋人

1

・川上

栞生

1

・石徹白

智

1

河村

侑馬

1

・林

康明

1,a)

Synthesis of Graphene by Magnetron-Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition on

DiŠerent Substrate Materials

Akito NONOMURA1, Kansei KAWAKAMI1, Satoshi ISHIDOSHIRO1,

Yuma KAWAMURA1and Yasuaki HAYASHI1,a)

1Department of Electronics, Kyoto Institute of Technology, Matsugasaki, Sakyo-ku, Kyoto-shi, Kyoto 6060962, Japan

(Received August 16, 2017, Accepted October 1, 2017)

Graphene was synthesized by radio-frequency magnetron-plasma-enhanced chemical vapor deposition on Si and SiO2substrates along with on Cu substrate. Although the incubation period was longer and the nucleation density was smaller than the growth on Cu substrate, graphene was grown on Si and SiO2substrates. It was speculated that the incubation period and nucleation density depend on the density of carbon precursor on substrate that is aŠected by the desorption speed of carbon or hydrocarbon.

. は じ め に グラファイトから剥離した十層程度のグラファイト膜を用 いて電気的特性を調べる研究は,すでに1970年代に行われ ている1).また,単原子層のグラファイトを Ni などの遷移 金属表面から析出できることが分かっていた2).しかし,結 晶性グラファイトの一層分となる六員環ネットワークのシー トの電子物性は測定されていなかった.2004年になって, HOPG(高配向熱分解グラファイト)からスコッチテープを 用いて引き剥がすという極めて簡便な方法で単層のグラフェ ンをシリコン酸化(SiO2)膜上に転写し,それの持つ量子ホー ル効果や驚異的なキャリア移動度が実験的に示されて,世界 の注目を集めるようになった3).その後,デバイスとして利 用するために基板上へ成長する方法の研究が進められ,ニッ ケル基板上での炭素の固溶析出触媒反応,続いて炭素を固 溶しない銅基板上での表面反応を利用した熱 CVD 法による グラフェンの成長技術が開発された4,5).さらに,プラズマ CVD 法を用いて,熱 CVD 法よりも低温でグラフェンを銅 基板上へ成長することが可能となった6) CVD 法でグラフェンを作製する場合,基板の炭素との相 互作用が重要となる.ニッケルは炭素の溶解度が大きく,一 旦,表面近くの基板中に溶解した炭素が低温で析出する過程 においてグラフェンが成長する.一方,銅では炭素の溶解度 は小さく基板表面で反応が進行するが,基板材料としての役 割もあるようである.このように,金属材料の特性が表面で グラフェンの成長に何らかの影響を与えている.電子デバイ スの材料として用いる場合,半導体や絶縁膜上へ触媒金属を 用いないでグラフェンを直接成長することは重要であるが, 実施例は少ない7,8).そこで,現状では,デバイスの試作に おいて,別の基板上に成長したグラフェンを転写して用いて いるのが一般である.一方,絶縁基板材料と触媒金属の間に グラフェンを成長し,その後,触媒金属を取り除いて基板上 にグラフェンだけを残す方法もあるが9,10),デバイスとして の性能を損なう不純物の残留を極力防ぐためや作製プロセス の単純化のため,触媒金属を用いない作製方法の探索も必要 である. そこで,本研究では,銅(Cu)基板上と比較しながら, シリコン(Si)や SiO2膜上でのグラフェンの CVD 成長に ついて調べた.グラフェンの成長には,これまで銅基板につ い て 行 っ て き た , マ グ ネ ト ロ ン プ ラ ズ マ CVD 法 を 用 い た11,12).プラズマ CVD 法では,ラジカルを気相で生成する ため,その分の熱エネルギーを必要とせず,基板温度を低温 化できる.しかし,グラフェンの六員環ネットワーク形成は 基板表面での反応であり,熱緩和のための温度上昇は必要で ある.そこで,熱 CVD では基板温度1000°C前後で成長が行 われるのに比較してやや低温の,700°C以下の基板温度で成 長が行われる.一方,プラズマと基板との間にシースが形成 され,その間で加速された正イオンが形成されつつある六員 環ネットワークを多かれ少なかれ破壊する影響があり,一般 にドメインサイズは小さい.また,初期には基板に平行にグ ラフェンが成長を始めるものの,その後はシース中の電界が 基板に対して垂直方向へ成長を促し,ナノウォールが成長し やすい1113).後者については,成長方向が基板面に水平か ら垂直に成長が変化する前に条件を変えてシース電界を小さ くするなど,成長を二段階で行う工夫が必要となる. プラズマ CVD 法でグラフェンを成長する場合,イオンダ メージを抑えるためプラズマ源と基板との間の距離を離して 低電子温度の条件とし,かつプラズマ源近傍で生成するラジ カルを拡散により基板上に到達できるよう高密度プラズマ源 が用いられている.本研究でも,高周波プレーナマグネトロ ン方式による高密度プラズマ源を利用し,グラフェンの成長

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2 460

Fig. 1 Schematic of RF magnetron plasma system for graphene growth.

Fig. 2 Raman spectra of ˆlms deposited on Cu and Si. Two spectra were obtained under the same measurement condi-tions. 2 460 ―( )― J. Vac. Soc. Jpn. を行った. . 実験装置と実験方法 . マグネトロンプラズマ装置 Fig. 1に,用いたプレーナマグネトロンプラズマ装置の 概略を示す.上部電極にネオジウム系の永久磁石(磁極側面 積1.5×3 cm2)を 6 個,六角形状に組み込み,その中にリン グ状の鉄製ヨークを置いている.電極表面の平行磁束密度 は,約2700ガウスである.この電極に13.56 MHz の高周波 を印加した(RF 電極).RF 電極下部のシースを挟んだプラ ズマ中に,直径約 5 cm のリング状のマグネトロンプラズマ が生成する.電極中心軸上の電極下 3 cm および 5 cm にお いて,圧力10 Pa の水素プラズマの密度をラングミュアプ ローブを用いて測定したところ,それぞれ,8×109/cm3,5 ×109/cm3であった. 基板は下部の接地電位の電極上に置いた.両電極間の距離 は 5 cm とした.この接地電極の内部にはヒーターと熱電対 が組み込まれており,実験中は熱電対の温度で680°Cになる ように制御した. ロータリーポンプとドライポンプを用いて真空槽の排気を 行い,コンダクタンスバルブの調整により,反応槽内の圧力 を5.5~10 Pa の一定値に保った. . 実験方法 グラフェン成長の前に,基板表面を水素プラズマによる前 処理を行った.条件は,基板温度680°C,水素(H2)の圧力 10 Pa,RF 電力100 W とし,処理時間は 5 分間とした. その後,直ちに気体を反応ガスに切り替え,グラフェンの 成長を開始した.反応ガスには水素希釈のメタン(CH4)を 用いた.CH4および H2の流量をそれそれ,6 sccm,3 sccm に制御し,CH4の気体濃度を67とした.基板温度は真空 中で680°Cに設定した. 基板には,Cu 薄板,Si(100)ウェーハから切り出した鏡面 状の Si 片,および Si(111)上厚さ約100 nm の SiO2膜付き のウェーハから切り出した小片を用いた.成長は,接地電極 上に設けた直径25 mm の円形の浅い溝の中に種類の異なる 基板を置いて同時に行った. ガス圧力を5.5 Pa に設定し,高周波の供給電力を100 W とした. 成長後の基板の表面をラマン分光(励起レーザー光波長 514 nm)による分析,および走査型電子顕微鏡(SEM)に よる観察を行った.また,偏光解析法による成長過程におけ る表面状態のモニタリングを行った. . 実 験 結 果 Fig. 2に,Cu および Si 基板上に10分間成長を行った試 料のラマン分光分析の結果を示す.Cu 基板を用いた場合 は,ラマン分光スペクトルに D(1350 cm-1付近欠陥に起 因),G (1580 cm-1付近グラファイトの一次ラマン散乱) 2D(2700 cm-1付近層数の少ないグラフェンに特徴的に 現れる)のピークがはっきりと表れているのが分かる.2D ピークの高さ I2Dと G ピークの高さ IGとの比 I2D/IGが 1 程 度の場合,二~三層のグラフェンであると考えられる14) また,D ピークの高さ IDと IGとの比 ID/IGはグラフェンの ドメイン(グレイン)サイズと反比例し,理論的に求められ た式によれば15),この場合,約10 nm となる.一方,Si 基 板上では,同じ条件で測定したスペクトルにおいて,ラマン 散乱強度は極めて小さく明確なピークを見つけ難い. 基板表面に堆積したグラファイト量の目安を得るため,ラ マン散乱のピーク強度 IGについて成長時間に対する変化を 調べた.Fig. 3 は,Cu,Si,SiO2基板上の試料において, IGの成長時間変化を示したグラフである.時間10,15,20, 30分については同じ条件で複数回成長を行い,すべての結 果を示している.データにばらつきがあるものの一定の傾向 が見られ,それを線で表した.Cu 基板では成長時間10分で 大きくなっているが,Si 基板では20分になってようやく, Cu 基板の場合よりも一桁小さい強度でピークが現れている ことが分かる.SiO2基板については,ややゆっくりとピー ク強度が増加している.したがって,核発生誘導期間は, Cu基板の場合に比較して,Si 基板や SiO2基板では長いこ とが分かる. Fig. 4 は,成長時間に対する,ラマン散乱スペクトルの ピーク強度比 I2D/IGおよび ID/IGの変化を示す.Cu 基板で は,成長時間10分後より I2D/IGおよび ID/IGが大きくなり, その後やや減少気味ながら大きな変化はなく,それぞれ,1

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3 461 Fig. 3 Growth-time evolutions of Raman G peak heights for

ˆlms deposited on Cu (closed circles & solid line), Si (open squares & broken line), and SiO2(open rhombuses & dotted line). Raman spectra were obtained under the same measure-ment conditions.

Fig. 4 Growth-time evolutions of Raman peak intensity ratio for ˆlms deposited on Cu (upper) and Si (lower). 2D/G and D/G indicate the Ratio of Raman peak intensity of 2D to that of G peak and D to G, respectively.

Fig. 5 Scanning electron micrographs of ˆlms deposited on Cu and Si for 15 and 30 min.

3 461 ―( )― Vol. 60, No. 12, 2017 ~0.7,2~1.5となっていることが分かる.一方,Si 基板に ついては,成長時間15分の試料で I2Dのピークがかろうじて 観測されている.成長時間15分以降の変化は小さく,I2D/IG は 1~0.7,ID/IGは1.5~1 となっている.SiO2基板につい て も ,そ の 変 化は Si 基 板 と同 様 で あっ た . Fig. 3 お よ び Fig. 4 の結果から,Cu 基板と Si 基板について比較すると, Si 基板ではグラファイトなどの炭素の基板表面への堆積が 遅く,欠陥密度は比較的小さくてドメインサイズがやや大き いことがわかる.なお,I2D/IGが 1~0.7の値は,三層程度 のグラフェンに対応する14) Cu 基板および Si 基板表面を真上から観察した SEM 像を Fig. 5に示す.成長15分では,Cu 基板では Si 基板よりも 堆積物の数が多く,核発生密度が高いことが分かる.さらに 成長30分になると,密度をほぼ一定に保ちながら大きく成 長している様子が分かる.真上からの像では葉状の堆積物が 立ち上がっているように観察され,これまでの実験では,基 板に平行に成長した後,垂直方向に立ち上がって,カーボン ナノウォールが成長することが分かっている11).本実験の 場合も,同様な成長を行っていると判断される.なお,Si 基板上で10分間成長した試料表面の SEM 像では,このよう な堆積物は全く観察されなかった. ところで,偏光解析モニタリングによる観測の結果では, Cu 基板の場合,偏光解析パラメータC,D の変化の最大幅 は,10分間の成長でそれぞれ,14.6°,35.8°であった.一方, Si 基板では,30分間の成長でもそれぞれ,1.9°,5.5°で,表 面状態の変化が極めて小さいことが分かった. . 考 察 グラフェンを成長するとき,反応前駆体が基板表面を拡散 し,一定個数以上の炭素原子が集合して,ある時点から安定 した構造の六員環の集合体が形成されると考えられる.つま り,六員環ネットワークの核形成が生じる.一般に,前駆体 の密度が高いほど過飽和度は大きく,核発生の誘導期間が短 くなり,また核発生密度が高い.したがって,Cu 基板と Si 基板との間のそれらの相違は,基板表面における前駆体の密

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4 462 4 462 ―( )― J. Vac. Soc. Jpn. 度の差によるものと考えられる.気相で生成されて基板に入 射するラジカルの密度は同じと考えてよいので,核発生の相 違は,ラジカルが表面に到達した後の反応の違いに起因する. 六員環ネットワーク形成の前駆体は炭素原子と考えられて おり,気相中から飛来する炭化水素系のラジカルは,一旦, 基板表面で解離吸着するか水素引き抜きが生じて原子状の炭 素となり,表面拡散の後にグラフェンを形成する16).した がって,基板材料によるグラフェンの核発生の相違について まず考えられるのは,炭化水素系ラジカルの解離吸着または 水素引き抜き反応の違いである.しかし,こうした場合,基 板表面における炭素原子の密度は変わらない.つまり,グラ フェンの成長前駆体に成り切らない炭化水素も基板表面に残 ることになる.ところが,偏光解析モニタリングの結果にお いて Si 基板では変化が小さいことから,基板表面にそうし た炭素膜が存在していることは考えにくい.一方,基板が炭 素と化学結合し表面に SiC 層が形成されている場合につい て,偏光解析測定の結果と計算によるシミュレーションの結 果とを比較したところ,この可能性については除外されるこ とが分かった.なお,C,D のわずかな変化の理由について は,現在,様々なモデルに基づいたシミュレーションを行っ て調べているところである. そこで,基板材料によるグラフェン核発生の相違の原因と して考えられるのは,基板表面における炭化水素ラジカルあ るいは炭素原子の脱離速度である.それには,気相中の条件 が同じ場合,炭化水素ラジカルや炭素原子と基板との物理吸 着の大きさが関係する.その結果,Si 基板ではグラフェン を形成する前駆体の密度が低く,長い核発生誘導期間と低い 核発生密度をもたらしたものと推測される. プラズマ CVD 法ではラジカルを気相中で大量に生成する ため過飽和度を高くすることができ,熱 CVD 法では成長が 困難であった半導体や絶縁膜の基板材料において,触媒金属 を用いずに15~20分程度の時間でグラフェンの核が生成し たものと考えられる. なお,Fig. 3 に示した,20分以降の一定の成長後における ラマンスペクトルの G ピークの高さが,Cu 基板では,Si や SiO2基板よりも数倍から一桁程度大きい.これについては, Cu が微粒子化し11),表面増強の効果が働いた可能性があ る.しかし,Fig. 3 での時間変化の傾向が示すように,この ことが15分以前の基板による核発生の違いについての議論 を損なうことはない. . ま と め マグネトロンプラズマ CVD 装置を用いて,異なる基板上 へグラフェンの成長を行った.Cu 基板,Si 基板,SiO2基

板,どれについてもグラフェンの成長が確認された.しかし, Cu 基板上に比較して,Si, SiO2基板上では,核発生誘導期 間が長く,核発生密度も低い結果となった.こうした基板材 料による相違は,偏光解析モニタリングの結果と合わせて, 基板表面における炭化水素ラジカルあるいは炭素原子の脱離 速度が関係し,Si 基板上ではグラフェンを形成する前駆体 の密度が低く,過飽和度が小さくて,長い核発生誘導期間と 低い核発生密度をもたらしたものと推測した.こうした点 で,熱 CVD と比較すると,プラズマ CVD ではラジカルの 生成が促進され,有限の時間での核生成が可能となり有利で はある.しかし,途中から基板面に垂直にウォール状で成長 する傾向があり,二段階で成長を行って基板面に平行なグラ フェンを作製する工夫が必要である. グラフェンの基板表面における核発生密度を抑制すること により,ドメインサイズのより大きなグラフェンを作製する ことができる.また,グラフェンを用いた電子デバイスを作 製するとき,転写によらず非金属基板上に直接成長する方法 の開発も必要である.こうした点から,グラフェンの核発生 過程やその密度について基板との関係を調べることの重要性 は大きい. 〔文 献〕

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Fig. 1 Schematic of RF magnetron plasma system for graphene growth.
Fig. 5 Scanning electron micrographs of ˆlms deposited on Cu and Si for 15 and 30 min.

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