土肥要旨集 第66集(2020)
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出穂期前後の落水がイネの気孔コンダクタンスに与える影響-北陸地方のグライ
低地土水田における測定
○鈴木克拓1
・平内央紀1
・桑形恒男2
・加藤英孝2
・中村 乾2
(1
農研機構 中央農研 2
農研機構 農環研)
出穂期前後各3週間の間断灌漑によって玄米中ヒ素濃度
を湛水管理に比べて大幅に低減できることが明らかにさ
れている。一方,北陸地方に広く分布するグライ低地土
は有効水分が少ないため,盛夏に当たるこの時期におけ
る落水がイネに水ストレスを与え,収量・品質に影響す
ることが懸念される。本研究は,出穂期前後の落水が水
ストレスの指標の一つである気孔コンダクタンスに与え
る影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】新潟県内水田圃場(細粒質グライ低地土;品種 コ
シヒカリ)において,出穂期(2019年7月31日)前後3週間
に3回の4日間落水を行った落水区と常時湛水した湛水区
を2つずつ設けた。落水2回目(8月5~9日)および3回目(8
月12~16日)において,午前9時台に各区で展開葉9枚の
気孔コンダクタンスを測定した。また,深さ10 cmの土
壌水ポテンシャル,玄米収量,品質およびヒ素濃度を測
定した。
【結果】落水2回目の期間は,いずれの日も湛水区と落水
区との間に気孔コンダクタンスの有意な差はなかった。
落水3回目の期間には,14日午前7時頃から16日午前9時
頃にかけてフェーン現象が生じ,落水区の深さ10 cmの
土壌水ポテンシャルが-30 kPaにまで低下した。15・16
日の気孔コンダクタンスは湛水区に比べて落水区の方が
有意に低く,落水が水ストレスを与えたことが示唆され
た。なお,16日は湛水区の土壌水ポテンシャルは約0 kPa
で前日と変わらなかったが,気孔コンダクタンスは前日
までに比べて低下していた。日射が低かったことが一因
と考えられる。落水により玄米中総ヒ素濃度は約25%低
下し,低減効果は有意だったが,収量・品質に影響はな
かった。以上から,間断灌漑における落水は,通常の気
象条件では気孔コンダクタンスへの影響はなかったが,
フェーン発生時には気孔コンダクタンスが低下してお
り,水ストレスを与えたことが明らかになった。
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ダイズの成長段階における蒸発散と根の吸水モデルのパラメータ推定手法の検討
○取出伸夫・三口貴久代・鈴木萌香・坂井 勝
(三重大生物資源)
農地における根の吸水による蒸散と地表面蒸発は,植
物の生長段階や土の乾燥の進行によって変化する.
HYDRUSによる根の吸水を考慮した土中水分移動では,
リチャーズ式の吸い込み項としてFeddesモデルを用い
てストレス耐性を表現し,さらに吸水特性の変化は補填
吸水モデルを用いる.しかし,根の吸水特性,蒸発と蒸
散の割合,また水分保持曲線と不飽和透水係数も含めた
根群域の水分移動に関わる特性のパラメータを独立し
て個別に推定することは難しい.また,圃場の土は不均
一な上,乾湿を繰り返すため,実験室内で主排水曲線と
して測定される水分保持曲線と異なる場合が多い.その
ため,利用可能な情報と圃場の水分移動の現場観測デー
タを用いて,乾燥の進行段階,植物の生長段階ごとにそ
れぞれのパラメータの感度を検討し,総合的に判断し
ながら適切なパラメータ値を推定する手法の開発が必
要である.そこで,本研究では,ダイズ圃場に設置した
直径30 cm,高さ30 cmの重量ライシメータによる栽培
実験を行い,測定した蒸発散速度と土中水圧力に対して
HYDRUS1Dによる水分移動モデルの解析を行った.実
験室内で測定した水分保持曲線,乾燥期間の水収支,乾
燥初期において蒸発の低下が蒸散の低下に比べて卓越
することなどを考慮しながら,可能蒸発と可能蒸散の割
合,水分保持曲線,不飽和透水係数を段階的に決定した.
さらに,乾燥が進行する段階でのFeddesモデルの吸水特
性,根の生長に伴う吸水強度分布,補填吸水モデルにつ
いて検討し,それぞれのパラメータを試行錯誤的に決定
することを試みた.今後,今回用いた手法を様々な圃場
観測データに対して適用し,解析手法のさらなる検討を
行うことにより,より確かなパラメータの推定が可能と
なると考える.
1-1-6
西アフリカ乾燥サバンナにおけるSWATを用いた流域スケールでの表面流出量予測
○伊ヶ崎健大1
・シンポレ サイド2
・南雲不二男1
・酒井 徹1
・内田 諭1
・バロ アルベール2
(1
国際農研 2
ブルキナファソ環境農業研)
【背景と目的】乾燥地で持続的な農業を実現するために
は、水循環を正確に把握しておく必要がある。著者らの
これまでの研究から、西アフリカ・スーダンサバンナ(年
降水量が600-900mmの半乾燥地)では、数十mスケールで
の表面流出率が3年間の平均値で28%と非常に高いこと
が分かっている。本研究では、当該地域で水循環を特徴
付けている表面流出量について、SWATモデルによる予
測可能性を検討した。
【方法】ブルキナファソ環境農業研究所サリア支所(西経
2°09’、北緯12°16’、標高300m)を含む190km2
のDoulou流
域を研究対象とした。SWATモデルへの入力値として、
地形図はAW3D画像を、土地利用図は多時期のLandsat
画像から著者らが作成したものを、植物生理パラメータ
はデフォルト値を、土地管理パラメータは現地での調査
結果を、土壌図および土壌パラメータは対象流域内の60
地点で実施した土壌断面調査の結果を、気象データは
2014~2018年の実測値を用いた。また、モデルの予測精
度を検証するため、流域の最下流に位置するDoulouダム
の余水吐において、2016~2018年に放流量(当該地域で
は中間流出は無視できるため、実質的には流域の表面流
出量)を測定した。
【結果と考察】平均758mmの降水量に対して、SWATモ
デルで推定された表面流出量は199mm(降雨の26%)で
あった。しかし、余水吐で実測した放流量から推定され
た表面流出量は55mmと推定値を大きく下回った。これ
は、当該地域は準平原のため非常に平ら(平均斜度1%)
で窪地が多くendorheismな環境であるが、SWATモデ
ルでは計算過程で窪地を全て取り除いてしまうため、そ
の環境を再現できないためと考えられた。この改善策を
検討したところ、各土地利用でカーブナンバーを30下げ
ることが有効であることがわかった。以上の成果は、今
後西アフリカの乾燥地において水循環を把握する上で重
要な情報を提供するものである。
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