• 検索結果がありません。

地域「通いの場」活動におけるロコモ予防・転倒予防9年間の取り組み

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "地域「通いの場」活動におけるロコモ予防・転倒予防9年間の取り組み"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

連絡先:新潟市秋葉区役所健康福祉課 新井春美     〒 956-8601  新潟県新潟市秋葉区程島 2009 番地     TEL:0250-25-5686  E-mail:[email protected]     受理日:2020. 1. 16

特 集

地域「通いの場」活動における

ロコモ予防・転倒予防9年間の取り組み

新井 春美

新潟市秋葉区役所健康福祉課 Ⅰ はじめに  「通いの場」とは地域づくり,介護予防を目指し,高 齢者などが月 1 回以上定期的に集まり,自主的な運営に より運動や茶話会,レクリエーション,趣味活動などを 行う場である。  日本では,2014 年から地域包括ケアシステムの中で 介護予防に関わる活動として「通いの場」を押し進めて いる。厚生労働省は,「通いの場」参加者として地域高 齢者の 10 %に目標をおいている。介護予防・日常生活 支援総合事業の実施状況調査では 2013 年の 2.7 %から 2017 年の 4.9 %と確実に増加傾向である。しかし,その 内容は「運動」51.4 %,「茶話会」20.5 %であり,まだま だ「通いの場」における運動実施率は高いとはいえない。  秋葉区の「通いの場」は, 2010 年度に 5 か所から始 めて,並行しながら通いの場を運営するサポーターの育 成も進め,2018 年度の 50 か所まで拡充してきた。これ らの「通いの場」では,身体運動や体を動かすレクリ エーションなどの普及に努めてきた。  本稿では,秋葉区の取り組みを紹介し,参加者の実態 と体力の変化,普及することで学んだ点などについて記 し,一行政区の試みとして高齢者の介護予防,転倒予防 に寄与したい。 Ⅱ 秋葉区の概要  新潟市秋葉区は人口 76,998 人,高齢者 23,823 人,高 齢化率 30.9 %(2019 年 3 月末時点)と,高齢化率が市 内 8 区中 2 番目に高い。区内には通いの場が約 60 か所 登録されており,主に後期高齢者が集まることから, 2010 年度より通いの場を利用してロコモティブシンド ローム(運動器症候群,以下ロコモ)予防運動の普及・ 啓発に取り組んできた。 Ⅲ 通いの場でのロコモ予防運動普及サポーター育成 と活動内容  地域全体にロコモ予防運動を普及するために,住民サ ポーター(以下サポーター)の育成を中心に地域コミュ ニティ協議会(小学校区または中学校区を基本とし,い くつかの町内会を中心に構成された組織;以下コミ協) と連携し 3 期 9 年間にわたって取り組んできた。 1.  1 期目(2010 ~ 2012 年度)の目標:サポーターを 養成し,サポーターとともに地域で体操普及を進めてい る。  次のことを実施した。   1 )サポーター養成を新潟医療福祉大学と協力して 行った。9 年間でサポーター養成講座を 5 回開催, 延べ 257 人のサポーターを育成し,さらに毎年活動 状況の把握,運動の導入や継続支援,運動実技の練 習を目的に事後研修会を実施した。   2 )サポーターによる運動の普及は,サポーター本人 が所属している「通いの場」での実施や,通いの場 が立ち上がっていない地域で新たに立ち上げる等さ まざまな形で進めた。サポーターの約 1/3 が通いの 場での運動実施や運営(会場借用,参加者管理,プ ログラム進行など)にも関わっていた。サポーター 通いの場 サポーター ロコモ予防運動 キーワード 29 日本転倒予防学会誌 Vol.7 No.1:29-32 2020

(2)

2.  2 期目(2013 ~ 2015 年度)の目標:サポーターが 地域で運動普及を継続できている。  地域に活動場所がなかったり人前に出ることに躊躇し たりして活動が停滞しているサポーターも地域で活動展 開できるように,1 期目の内容に追加し次のことを実施 した。   1 )「視聴覚教材」としてロコモ予防運動,新潟弁ラ ジオ体操の DVD や CD,リーフレット,ポスター 等を大学と協力して作成し,運動に取り組むきっか けやサポーターの負担軽減に役立てた。 を「ピンピン元気に生きて,コロリと大往生しよう」 という意味の「PPK サポーター」と名付けた(図 1)。   3 )区役所所属の保健師や理学療法士が通いの場に出 向いて,運動継続支援のためにサポ-ターや教室参 加者との話し合いを必要に応じて行った。また,サ ポーターと協働して新しい運動種目の開発・普及を 行った。   4 )区民への啓発のためロコモ予防講演会の開催やロ コモ通信(A3 の 2 頁版を年に 2 回,計 18 号まで) を発行した(図 2)。 30 日本転倒予防学会誌 Vol.7 No.1 2020 図 1 PPK サポーターと運動普及のイメージ  図 2 ロコモ通信 

(3)

  2 )運動の効果を見るために,希望のあった通いの場 で「体力測定」を実施した。即日その場で結果を返 却して効果や対策方法を伝えることで,運動意欲の 継続に結び付くよう工夫した。   3 )ロコモ予防講演会をさらに参加者の経験を重視し た「体験型のイベント」に変更した。大学やサポー ターの協力を得て,骨密度・体力測定や運動体験, 健康相談などのコーナーを作り気軽に参加できるよ うにした。 3. 3 期目(2016 ~ 2018 年度)の目標:さらに多くの 住民がロコモ予防を体験できている。  地域の役員の交代等でロコモ予防の必要性を再周知す る必要性が生じた。また,新規にロコモ予防に取り組む 団体が少なくなってきたので,1・2 期目の内容に追加 し次のことを実施した。   1 )体験による運動に取り組むきっかけづくりとして, 「ロコモ予防運動体験会(3 回コース)」を通いの場, 老人クラブ,コミ協の集まりで行った。つながりの ある団体に個別に運動の必要性や効果を説明し体験 会につなげた。体験会終了後も運動継続して進めら れるよう保健師や理学療法士が 3 ~ 6 か月に 1 回の 頻度で支援を行った。状況に応じて支援回数を減ら すものの切れ目のない関係を作ることで,体験会を した 16 か所全ての団体で運動を継続できていた。   2 )サポーターの中からロコモ予防運動啓発を担 当するグループとして「PPK48」を立ち上げた。 「PPK48」では“ピンピンコロリと大往生,生涯現 役,はつらつ元気”をモットーにユニフォームの作 製や「PPK48 の五か条」の作成,「PPK 体操」の制 作を PPK48 と一緒に行った。そしてこれらのツー ルを啓発活動に積極的に利用した。現在,「PPK48」 はそれらを用いて通いの場以外の「芸能祭」「夏祭 り」などの高齢者が集まるさまざまな地域イベント に出演し,ロコモ予防運動の普及・啓発活動を担っ ている(写真 1)。「PPK 体操」はロコモ予防運動の 要素を取り入れ音楽に合わせた楽しい体操で,イベ ントでの発表により地域の役員や通いの場の参加者 の関心をひき,PPK 体操に取り組むところが増え てきた。 Ⅳ 通いの場参加者の実態と変化  通いの場でサポーターが関わりながらロコモ予防運 動を行う団体数,回数,参加延べ人数は,2010 年度で 5 か所,56 回,1,536 人だったが,2018 年度は 50 か所, 629 回,11,281 人となった。2018 年度の参加実人数は 1,372 人で,秋葉区全高齢者の 5.8 %(全国平均 4.9 %, 2017)にあたる(図 3)。  体力測定とアンケートを実施した 591 人の結果,平 均年齢は,女性 74.6 歳,男性 77.5 歳であった。参加者 の多くは,会場まで 10 分以内の距離から徒歩で参加 していた。2012 ~ 2015 年に調査した転倒率は,女性 31 日本転倒予防学会誌 Vol.7 No.1 2020 地域「通いの場」活動におけるロコモ予防・転倒予防9年間の取り組み 写真 1 地域イベントでの PPK 48 の活動 平成22(年) 平成23 平成24 平成25 平成26 平成27 平成28 平成29 平成30 204 190 302 204 190 2,114 302 2,439 992 7,147 1,310 8,951 1,443 7,968 1,658 8,854 1,617 8,950 1,766 9,515 1,332 サポーター数 利用者数 図 3 サポーター活動実績 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000(人) 女性 287人 男性  53人 図 4 転倒率(2012~2015年)―男女,年齢層別― 0 (%) 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 全数 19.2 15.1 4.5 0.0 0.0 0.0 12.5 28.6 18.7 12.5 17.7 27.3 26.7 33.3 60~64 65~69 70~74 75~79 80~84 85<(歳)

(4)

19.2 %,男性 15.1 %であった(図 4)。転倒率の 3 年間の 変化では,3 年目に下がって 4 年目に少し上がったもの の 1 年目よりも下がっていた(図 5)。サポーターと一 般参加者で比較したところ,サポーターの転倒率は一般 参加者を大きく下回っていた(図 6)。  体力測定の経年的な変化を分析した結果,1 年間では 明らかな変化はないが,3 年間で筋肉率,開眼片足立ち 時間,握力の低下が生じた。一方,タイムドアップアン ドゴー(TUG)や 30 秒間椅子からの起立回数,健康関 連 QOL は維持していた。5 年目になると,動作遂行能 力や健康関連 QOL,痛みに関連した項目も低下してい た。低下の傾向は,女性,後期高齢者にみられた。結論 として,3 年目以降握力・片足立ちなどの筋力・バラン ス能力は低下したが,身のこなしなどの動作能力は4年 間は維持していた。このような結果を事後研修会でも示 しながら,通いの場は月に 1 ~ 2 回の開催のところが多 いため,ラジオ体操や筋トレ,歩行などの運動を自宅で 実施することを勧めている。 Ⅴ 事業実施のポイント  心身機能を維持していくためには,運動継続がカギに なる。また運動を継続していくためには, 会場の設定, 運動強度,サポーター,行政の関わりが重要なポイント になる。   1 )会場は,高齢になるほど行動範囲が狭くなるため, 町内会館など近くで安全に活動できるスペースを確 保し町内の馴染みの人同士がグループで活動できる と継続しやすい。   2 )運動強度を上げると体力に自信のない人が参加し づらくなる。一方,高齢者向け運動教室や運動系 サークル活動などでは,適切な運動強度の変更が盛 んに行われている。参加や継続を重視する地域の通 いの場では,参加できる虚弱な高齢者が取り組める ように,特に初期において低強度で簡単な運動を継 続することが大切である。   3 )ロコモ予防を広く普及するためには,サポーター の活用が重要である。通いの場の立ち上げ,会場借 用,参加者集め,プログラムの企画・進行などを自 主化するためには,地域住民の力が不可欠であり, それらの活動を通してサポーターも元気になること を見聞している。   4 )行政は,地域での主体的な活動を促すためのサ ポーター育成を重点に実施し,啓発活動,新たな運 動導入の場の開拓,通いの場の立ち上げや継続支援 等を地域住民とともに行ってきた。これらは,「通 いの場」運営やロコモ予防・転倒予防の普及に有効 であったと考える。  今後も,住み慣れた地域で元気に暮らせるよう住民パ ワーを引き出す地域支援を目指していきたい。 引用文献 1)厚生労働省ホームページ 平成 27 年度地域づくり による介護予防推進支援事業,第 2 回都道府県介 護予防担当者アドバイザー合同会議(H28. 2. 25)引 用:1-32, 2016. 2)厚生労働省ホームページ 平成 25 年度介護予防・ 日常生活支援総合事業(地域支援事業)の実施状況 に関する調査結果(概要):1-19, 2014. 3)厚生労働省ホームページ 平成 29 年度介護予防・ 日常生活支援総合事業(地域支援事業)の実施状況 に関する調査結果(概要):1-16, 2018. 32 日本転倒予防学会誌 Vol.7 No.1 2020 1年目  2年目  3年目  4年目 図 5 転倒率の 3年間の変化 0 25 20 15 10 5 (%) 男女 女性 男性 サポーター  43人 一般参加者 290人 図 6 サポーターと一般参加者の転倒率―年齢層別― 0 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 (%) 60~69(歳) 70~79(歳) 80~89(歳) 9.5 n=21 n=57 n=22 n=141 n=0 n=92 8.8 4.6 23.4 20.6

参照

関連したドキュメント

・民間エリアセンターとしての取組みを今年で 2

ためのものであり、単に 2030 年に温室効果ガスの排出量が半分になっているという目標に留

№3 の 3 か所において、№3 において現況において環境基準を上回っている場所でございま した。ですので、№3 においては騒音レベルの増加が、昼間で

北区の高齢化率は、介護保険制度がはじまった平成 12 年には 19.2%でしたが、平成 30 年には

 活動回数は毎年増加傾向にあるが,今年度も同じ大学 の他の学科からの依頼が増え,同じ大学に 2 回, 3 回と 通うことが多くなっている (表 1 ・図 1

 今年は、目標を昨年の参加率を上回る 45%以上と設定し実施 いたしました。2 年続けての勝利ということにはなりませんでし

1時間値が 0.12 ppm 以上になった日が減少しているのと同様に、年間4番目に高い日最 高8時間値の3年移動平均も低下傾向にあり、 2001~2003 年度の 0.11 ppm