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地域包括ケアシステムにおける看護職の在宅シフト支援コンピテンシー尺度の開発

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The Journal of the Japan Academy of Nursing Administration and Policies Vol. 24, No. 1, 32-42, 2020

資料

地域包括ケアシステムにおける看護職の

在宅シフト支援コンピテンシー尺度の開発

Development of a Nurse Competency Scale for Hospital to Home Transition within an Integrated Community Care System

小野麻由子

1)*

Mayuko Ono1) *

Key words : Integrated community care system, nursing, hospital to home transition, competency, scale

development

キーワード : 地域包括ケアシステム,看護職,在宅シフト,コンピテンシー,尺度開発

Abstract

Purpose: The purposes of this study were to clarify the competency of nurses in supporting a transition to home care in an integrated community care system, develop a scale to measure that competency, and test its reliability and validity.

Methods: An interview survey was conducted on the competency of nurses who make hospital to home care transitions possible. The results were integrated with the results of a literature review on hospital discharge support, and draft questions were prepared. The questions were then examined by an expert panel and the questionnaire was completed through a pilot study. A survey of 1,348 nurses nationwide was conducted using this questionnaire. To assess the questionnaire’s reliability, Cronbach’s α coefficient was calculated and a test-retest method was implemented. To assess its validity, concurrent validity was examined by calculating the correlation coefficient with the Nurses’ Discharge Planning Ability Scale and construct validity was examined from the results of factor analysis.

Results: An analysis was done using 614 valid responses (45.5%) from the national survey. This scale was created with 35 items and 4 factors: Factor 1, “Optimization for the hospital to home transition”; Factor 2, “Coordination with the patient and family as the principal axis”; Factor 3, “Specialized assessment and prac-tices that respect the values of the patient and family”; and Factor 4, “Planning in order to achieve targets.” Cronbach’s α coefficient for the scale overall was 0.963, and the correlation of the test-retest method was r = 0.682. The correlation with the Nurses’ Discharge Planning Ability Scale was r = 0.768. The status of agree-ment between the extracted factors and the construct of the draft questionnaire, and the structure of each fac-tor, were confirmed.

Conclusion: This scale consists of 4 factors and 35 items, and its reliability and validity were confirmed. 要  旨 【目的】地域包括ケアシステムにおける看護職の在宅シフト支援コンピテンシーを明らかにし, その尺度の開発,並びに信頼性・妥当性を検証する. 【方法】在宅シフトを可能にする看護職のコンピテンシーについてインタビュー調査し,退院支 援に関する文献レビューの結果と統合して質問項目の原案を作成した.その後,エキスパート パネルでの検討,パイロットスタディを経て質問紙を完成させ,全国の看護職1,348名を対象と して調査を行った.信頼性は Cronbach のα係数の算出及び再テスト法を実施した.妥当性は, 「退院支援看護師の個別支援における職務行動遂行能力評価尺度」との相関係数の算出による併 存妥当性,因子分析結果から構成概念妥当性を検証した. 受付日:2017年 7 月 3 日  受理日:2019年10月17日

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【結果】全国調査は,有効回答614(45.5%)を分析対象とした.本尺度は,第 1 因子「在宅シ フトに向けた最適化」,第 2 因子「患者・家族を主軸とした連携」,第 3 因子「患者・家族の価 値観を尊重した専門的アセスメントと実践」,第 4 因子「目標達成に向けたプランニング」の 4 因子35項目で生成された.尺度全体の Cronbach のα係数は0.963,再テスト法の相関は r= 0.682であった.また,「退院支援看護師の個別支援における職務行動遂行能力評価尺度」との 相関は r=0.768であり,抽出された因子と質問紙原案の構成概念との一致状況や各因子の構造 が確認できた. 【結論】本尺度は 4 因子35項目で構成され,信頼性と妥当性があることが確認できた.

Ⅰ.緒言

1.高齢化に対する我が国の医療政策の動向  我が国の高齢社会対策は,65歳以上の高齢者人口 がピークに達する「2025年問題」を見据え,「地域包 括ケアシステム構築」を実現することを重要課題と している.2014年の診療報酬改定では,医療機能の 機能分化・強化と連携,在宅医療の充実があげられ, 急性期病棟から医療必要度の高い患者を受け入れ, リハビリや在宅復帰機能あるいは在宅療養患者の急 性憎悪時の対応機能をもった地域包括ケア病棟が新 設された.今後,地域包括ケア病棟は,急性期病床 からの患者の受け入れと同時に,在宅への復帰支援 推進の中核として,地域包括ケアシステム構築にお いて在宅シフトを支援するパイオニアとしての役割 が期待される. 2.地域包括ケア病棟の現状  平成26年10月時点での地域包括ケア病棟入院料・ 入院医療管理料の届出病床数は24,645床であったが, 平成28年10月にはすでに52,492床(厚生労働省, 2017)と, 2 年間で 2 倍を超える届出状況にある. 今後も地域包括ケアシステムの構築に伴い,地域包 括ケア病棟の開設の増加が予測される.  厚生労働省によると,地域包括ケア病棟の入院患 者の疾患は骨折・外傷が最も多く,次いで肺炎,脳 梗塞,悪性腫瘍,心不全の順であった(厚生労働省, 2017).地域包括ケア病棟の入院患者の疾患は多岐に わたり,これまで診療科別に区分されていた病棟看 護とは異なり,様々な疾患を持った患者への関わり は,これまで以上に知識や技術が必要とされること が推測される.また,在院日数は15日以内が全体の 48%であり,次いで16日~30日が25%を占めていた (厚生労働省,2015).さらに,地域包括ケア病棟の 在宅復帰率は,施設基準の要件である70%を上回る 医療機関が93%にのぼり,厳しい施設基準のもと在 宅復帰率は髙値を示している(厚生労働省,2015). しかし,医学的な要因以外で退院できない理由とし て,家族の希望に適わない(18%),退院に向けた調 整・マネジメントができていないため(13%),本人 の希望に適わない(11%)(厚生労働省,2015)があ げられていた.基準日数内の退院の中には,この先 の生活に対する不安を抱えたままの退院やその不安 への対応不足により,患者・家族が満足していない 退院も含まれていることが推測される. 3.退院支援に関する看護職への期待  住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期 まで続けることを目指す地域包括ケアシステムを実 現には,患者の在宅シフトを支援するための看護実 践能力が必須となる.  2008年度診療報酬改訂後,在宅生活へ移行するた めの退院支援は退院調整看護師が主な役割を担って いる.退院調整看護師及び退院支援看護師には,患 者・家族の入院中の生活のみならず,退院後の生活 を見越した支援も求められ,病棟や地域との連携を 含め(藤澤ら,2006;戸村ら,2013),必要とされる 能力も多岐にわたる.ところが,従来,病院で退院 支援を担ってきた退院調整看護師数は 1 病院あたり 平均1.6名であり(財団法人 日本訪問看護振興財団, 2011),ごく少数の限られた人員と言える.今後は, あらゆる場で勤務する看護職に退院支援に関する看 護実践能力が求められると推測する.従って,在宅 シフトを支援するための看護師に必要な実践能力を 明らかにする必要がある.

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4.看護職の在宅シフト支援コンピテンシー尺度の 開発の必要性  コンピテンシーとは高業績者が持続的に高い業績 をあげる能力を行動特性に置き換えて表現したもの である(谷内,2001).患者・家族がそれぞれに納得 した退院をむかえることができるよう,在宅シフト を支援する看護職のコンピテンシーを明らかにし, 行動特性を測定する尺度を開発する必要がある.

Ⅱ.目的

 地域包括ケアシステムにおける看護職の在宅シフ ト支援コンピテンシーを明らかにし,その尺度の開 発,並びに信頼性・妥当性を検証する.

Ⅲ.方法

1.用語の定義  【在宅シフト】とは,患者の在宅生活へのスムーズ な移行とする.  【在宅シフト支援コンピテンシー】とは,患者の在 宅シフト支援に関する看護職の卓越した行動特性と する.  【納得した退院】とは,患者・家族の合意のもとで の退院とする. 2.研究方法 1)「地域包括ケアシステムにおける看護職の在宅 シフト支援コンピテンシー尺度」項目案作成  地域包括ケア病棟で患者の在宅シフトを可能にす る看護職の具体的なコンピテンシーを探求すること を目的とし,対象者ごとにインタビューガイドを用 いてインタビュー調査を実施した.対象病院は,地 域包括ケアシステムに詳しい研究者から,地域包括 ケア病棟に力を入れている病院を紹介してもらった. その後の施設抽出は,研究者が各都道府県の高齢化 率や人口推移をふまえ,雑誌等に地域包括ケア病棟 の記事の掲載のあった病院を選定した.調査対象者 は,地域包括ケア病棟で,退院支援に向けて卓越し た実績及び業績を遂行していると上司や同僚から推 薦を受けた看護師,看護部長,地域包括ケア病棟に 入院中の患者・家族(看護管理者から,インタビュー 可能な患者・家族を選定してもらった),ケアマネ ジャー(看護管理者から,連携先のケアマネジャー を選定してもらった),地域包括ケアに関連する学識 者とした.インタビューデータ全体から逐語録を作 成し,コンピテンシーについて 1 つの意味単位ごと に区切り,類似するデータを集めてコード化した. サブカテゴリー,カテゴリー化し,質的記述的方法 で分析した.新たなデータが得られなくなった時点 でサンプリング及びインタビューを終了した.さら に,退院支援に関連する文献レビューで得られた結 果等を合わせて概念及び項目案を作成した.  エキスパートパネルは,専門家としてインタ ビューを実施した看護部長 3 名と看護師 3 名及び学 識者 2 名と,新たに地域包括ケアに精通した専門家 2 名の合計10名を選定した.質問項目とそれが該当 する概念との関係の妥当性,質問項目の適切さを検 討してもらった.  パイロットスタディの対象は,インタビューを実 施した 3 病院の地域包括ケア病棟の看護職67名と, インタビュー調査には参加できなかったがパイロッ トスタディへの研究協力の承諾を得た 2 病院の地域 包括ケア病棟の看護職39名,合計106名とした.回答 にかかる時間,回答のしやすさ(答えにくいと予測 される質問項目)や質問項目の適切さ(内容が分か りにくいと予測される質問項目,追加したほうが良 い内容)について検討してもらった.  質問項目の回答方法は, 1 .全く行っていない, 2 .あまり行っていない, 3 .どちらともいえない, 4 .だいたい行っている, 5 .十分行っている,の 5 段階リッカートスケールとした. 2)「地域包括ケアシステムにおける看護職の在宅 シフト支援コンピテンシー尺度」の項目分析, 因子分析,信頼性・妥当性の検証  地域包括ケア病棟協会のホームページ上で公開さ れている会員名簿リストから地域包括ケア病棟及び 地域包括ケア病床を有する病院を無作為抽出した. そのうち,電話で調査依頼の内諾の得られた64病院 の地域包括ケア病棟及び地域包括ケア病床で勤務す る看護職1,348名に質問紙を郵送した. (1)項目分析  反応分布,質問ごとに平均と標準偏差及び,天 井・床効果について検討した.また,G-P 分析,

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Item-Total 相関の検討結果から質問項目を決定した. (2)因子分析  項目分析後の質問項目を用いて探索的因子分析を 実施した. (3)信頼性の検証  内的整合性は,Cronbach のα係数を算出した.安 定性では,再テスト法として,地域包括ケア病棟協 会のホームページ上で公開されている会員名簿リス トから無作為抽出し,11病院の地域包括ケア病棟及 び地域包括ケア病床で勤務する看護職204名を対象と し, 1 か月の期間をあけ, 2 回にわたって同じ質問 紙に回答してもらい検証した. (4)妥当性の検証  内容妥当性では,エキスパートパネルによる構成 概念と質問項目の一致状況の結果から,概念名を見 直し,定義を明確にした.また,表現方法の修正や 項目の削除・統合・追加を行い,再度,質問項目と 概念の一致状況について,内容の妥当性を確認した.  基準関連妥当性では,退院支援においては個別支 援が重要であるため,戸村らが開発した退院支援看 護師の個別支援における職務行動の遂行能力を評価 するために「患者・家族との合意形成」「退院後のケ アバランスの見積力」「退院後のケアバランスの調整 力」「療養場所の移行準備力」の 4 つの下位尺度で構 成されている「退院支援看護師の個別支援における 職務行動遂行能力評価尺度」(戸村ら,2013)を使用 した.「退院支援看護師の個別支援における職務行動 遂行能力評価尺度」(戸村ら,2013)と研究者が作成 する「地域包括ケアシステムにおける看護職の在宅 シフト支援コンピテンシー尺度」の結果には相関関 係があると仮定し,その関連を確認した.  構成概念妥当性では,探索的因子分析(最小二乗 法・プロマックス回転)の結果から抽出された因子 と質問紙原案の構成概念の一致状況を確認した. (5)倫理的配慮  本研究は,青森県立保健大学研究倫理委員会の承 認を得た上で開始した(承認番号1539).  研究対象者には, 1 .研究対象となる個人の人権 の擁護, 2 .個人情報などの保護, 3 .研究の対象 となる個人への利益と不利益,ならびに社会への貢 献の予測, 4 .研究対象者及びその関係者からの研 究全体に関する相談先, 5 .研究成果の公表,発表 について書面にて説明し了解を得た.

Ⅳ.結果

1.「地域包括ケアシステムにおける看護職の在宅シ フト支援コンピテンシー尺度」項目案作成 1)対象者  地域包括ケア病棟の運営に力を入れている 3 病院 (高齢化率上位で過疎化が進む県:380床の病院,高 齢化率下位で大都市:520床の病院,高齢化率中程の 県:320床の病院)の看護管理者( 4 名),看護師 ( 3 名),患者・家族( 3 名・ 2 名),介護支援専門員 ( 2 名),地域包括ケアに関連する学識者( 2 名)の 合計16名であった.  医療従事者のインタビュー平均時間は約53分,患 者・家族のインタビュー平均時間は約21分であった. 2)分析結果  コンピテンシーに関連したインタビューデータを カテゴリー化し,文献レビューで得られた結果と統 合した.その結果,【Ⅰ.在宅シフトに向けた入院早 期の実践】,【Ⅱ.個別性に応じた在宅シフトへの展 開】【Ⅲ.意志決定を支えるセルフケア向上】【Ⅳ. マネジメント能力】【Ⅴ.課題達成に向けた連携】の 5 概念と57項目の質問項目と概念の原案を作成した. 3)エキスパートパネル  回答数は,10件(回収率100%)であった.回答者 からの意見を踏まえ,32項目に関して表現方法の修 正や項目の削除・統合・追加を行った.さらに,概 念の定義,概念間の相違を明確にし,概念名の見直 し後,再度,項目内容を見直し,概念毎に分類した. 4)パイロットスタディ  回答数は73(回収率68.9%)で,有効回答率は71 (67.0%)であった.平均回答時間は15分であった.  答えにくい質問項目,内容がわかりにくい質問項 目の回答を踏まえ,30項目に関しての表現方法の修 正や項目の削除・統合・追加を行った.また,追加 したほうが良い内容はなかった.  最終的に56の質問項目案, 6 概念で再構成した. 2.「地域包括ケアシステムにおける看護職の在宅シ フト支援コンピテンシー尺度」の項目分析,因 子分析,信頼性・妥当性の検証  回収数は682(50.6%),質問項目56項目全てに欠 損のなかったものを有効回答とした.有効回答614 (45.5%)を分析対象とした.

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1)対象の属性  対象者の年齢は30歳から39歳が188(30.6%)と最 も多く,平均年齢は38.2±10.6歳であった.地域包 括ケア病棟での勤務経験では, 1 年未満が225名 (36.6%)と最も多く,地域包括ケア病棟に配置にな る前の勤務経験としては,10年未満が227名(37.0%) と最も多かった.通算平均経験年数( 0 年を除く) は,13.9±10.3年であった. 2)項目分析 (1)反応分布  平均値が1.5以下もしくは4.5以上及び,最小値- 最大値の範囲が 1 - 3 もしくは 3 - 5 と回答に偏り がある項目はなく,標準偏差が0.6未満と識別力が不 十分な項目もなかった.また,天井効果(平均+標 準偏差:5.0以上),床効果(平均-標準偏差:1.0以 下)を示す値はなかった. (2)相関分析  I-T(項目-全体)相関分析では,尺度の総得点 と各項目の点数の相関係数を確認した.その結果, 0.459~0.799の範囲であり,0.3以下の項目はなく尺 度の一貫性を損なっていることを示す項目は存在し なかった. (3)G-P 分析  尺度の総得点の得点順に対象者を高得点群 - 低得 点群と 2 群に分け,各項目の得点について群間の有 意差を確認するために Mann-Whitney 検定を行った. その結果,全質問項目において, 2 群間の得点に有 意差があり,高得点群が低得点群よりも得点が高 かったため(平均値)削除項目はなかった. 3)因子分析(表1)  全ての質問項目56項目を用いて最小二乗法,プロ マックス回転を行った.因子数は初期の固有値1.0以 上,スクリープロットの傾斜を基準に分析し 4 因子 に決定した.質問項目の取捨選択の基準は,共通性 が0.2以上とした.また,因子負荷量が0.4未満の項 目及び,所属因子以外への因子負荷量が0.3を超える 項目を除外し,この基準で因子分析を繰り返した. その結果,「地域包括ケアシステムにおける看護職の 在宅シフト支援コンピテンシー尺度」は, 4 因子35 項目で生成された.  質問項目の取捨選択の基準は,共通性が0.2以上と した.また,因子負荷量が0.4以下及び,所属因子以 外の因子負荷量も高値の項目を除いて因子分析を繰 り返し,最終的に因子負荷量が0.4以下及び,所属因 子以外への因子負荷量が0.3以上の項目を除外した. 4)信頼性  尺度全体の Cronbach のα係数は0.963であり,下 位尺度は,第 1 因子0.902,第 2 因子0.923,第 3 因 子0.905,第 4 因子0.805と内的整合性による信頼性 が確保していることを示した.再テスト法では, 1 回目の回収は124(60.8%), 2 回目の回収は102 (50.0%)であった. 1 回目, 2 回目共に「地域包括 ケアシステムにおける看護職の在宅シフト支援コン ピテンシー尺度」35項目全てに欠損のなかったもの を有効回答とし,有効回答は88(43.1%)であった.  「地域包括ケアシステムにおける看護職の在宅シフ ト支援コンピテンシー尺度」 1 回目の回答の合計点 数と 2 回目の回答の合計点数とを Spearman の相関 係数を算出した結果,r=0.682であった. 5)妥当性 (1)内容妥当性  エキスパートパネルやパイロットスタディでは, 表現方法の修正や項目の削除・統合・追加を行い, 構成概念と質問項目の一致状況の結果から,概念名 を見直し,定義を明確にした. (2)基準関連妥当性(表2)  「地域包括ケアシステムにおける看護職の在宅シフ ト支援コンピテンシー尺度」35項目と「退院支援看 護師の個別支援における職務行動遂行能力評価尺度」 (戸村ら,2013) 4 項目全てに欠損のなかった576 (42.7%)を分析対象とした.「地域包括ケアシステ ムにおける看護職の在宅シフト支援コンピテンシー 尺度」各因子の合計得点と「退院支援看護師の個別 支援における職務行動遂行能力評価尺度」(戸村ら, 2013)各因子の合計得点との相関係数(Spearman) は,r=0.512~0.692であった.最も強い相関を示し たのは,「地域包括ケアシステムにおける看護職の在 宅シフト支援コンピテンシー尺度」の第 3 因子【患 者・家族の価値観を尊重した専門的アセスメントと 実践】と「退院支援看護師の個別支援における職務 行動遂行能力評価尺度」(戸村ら,2013)の第 1 因子 【患者・家族との合意形成力】であった.また,「地 域包括ケアシステムにおける看護職の在宅シフト支 援コンピテンシー尺度」の合計得点と「退院支援看 護師の個別支援における職務行動遂行能力評価尺度」 の合計得点との相関係数(Spearman)は,r=0.768

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表 1  因子分析の結果 因子名 Cronbach α 質問紙 番号 原案 構成概念 項目 因子負荷量 下位尺度 平均値±SD 平均点 第1因 子 第2因 子 第3因 子 第4因 子 第1因 子 在宅シフトに向けた最適化 Cronbach α=0.902 51 Ⅱ 退院後,患者・家族との関わり(訪問・外来・電話等)を通して,患者・家族が納得した退院ができたかを評価する 0.836 -0.069 -0.182 -0.089 2.84 ± 0.34 2.28 41 Ⅲ 患者・家族が,状況に応じて,友人・知人・ボランティア等に協力や支援を自ら求められるよう,その力を引き出す支援をする 0.790 0.064 -0.073 -0.065 2.65 8 Ⅱ 退院後の患者・家族との関わり(訪問・外来・電話等)を通して,入院中に自分が行った退院支援を自己評価する 0.728 -0.179 -0.032 -0.039 2.24 29 Ⅳ 退院に向けての目標設定について,患者・家族や多職種間で合意形成をはかるためのコーディネート役となる 0.675 0.060 0.007 0.097 2.89 28 Ⅳ 地域包括ケアに関連した制度における報酬の仕組みを把握している 0.672 -0.043 -0.041 0.067 2.83 49 Ⅳ 患者・家族,多職種間で,課題解決・目標達成に向けたリーダーシップをとる 0.632 0.092 -0.010 0.076 2.82 21 Ⅱ 退院支援に関しての経験を看護職同士で振り返り,共有し,そのスキルを次の実践に生かす 0.628 0.103 -0.039 -0.027 3.07 13 Ⅲ 患者・家族が,状況に応じて訪問看護やデイケア等の法律や制度上の公的サービスを自ら求められるよう,その力を引き出す支援をする 0.619 -0.123 0.236 0.069 3.01 22 退院後に必要となるサービスや支援をスムーズに受け入れることができるよう,サービスや支援に関する情報を提供する 0.566 0.101 0.085 0.023 3.23 53 Ⅱ 退院後の生活環境について,患者・家族に住宅改修等(手すりの設置やトイレの改修等)実現可能な方法を提案する 0.512 0.046 0.064 0.132 3.19 30 Ⅰ 入院及び転科・転入・転棟早期に患者・家族に対し,退院支援についての概略を説明する 0.490 0.143 0.088 0.016 3.08 第2因 子 患者・家族を主軸とした連携 Cronbach α=0.923 37 Ⅴ 退院に向けた課題解決・目標達成に向けて日頃から多職種と連携を図る -0.195 0.914 -0.108 0.243 3.49 ± 0.14 3.65 38 Ⅴ 退院後の在宅生活を予測した多職種連携を図る 0.007 0.818 -0.122 0.149 3.54 36 Ⅱ 患者の生活を把握するために必要な情報を, キーパーソンや支援者(介護支援専門員 ・外来 ・他病棟 ・他病院等) , 情報提供書から収集する -0.236 0.722 0.126 0.046 3.74 35 Ⅴ 退院に向けた課題解決・目標達成に向けて,日頃から院内の看護職同士で連携を図る 0.106 0.659 -0.153 -0.010 3.44 48 Ⅱ 複雑な状況を抱え退院が難しいと予測される患者の課題を明確に抽出し,患者・家族,多職種で目標を共有する 0.122 0.649 0.080 -0.027 3.39 45 Ⅰ 入院及び転科・転入・転棟早期から患者・家族,多職種間で,退院に向けての課題と目標を共有する 0.031 0.624 0.144 0.028 3.46 47 患者の自己効力感が高められるよう,患者が持っているセルフケア能力を認め,患者自身に伝える 0.016 0.617 0.233 -0.244 3.48 46 Ⅴ 患者が目指す退院後の生活についての情報を,介護支援専門員や地域の各専門職につなげる 0.193 0.491 -0.013 0.104 3.43 12 Ⅰ 入院及び転科・転入・転棟早期から患者・家族,多職種間で情報を共有する 0.046 0.458 0.081 0.196 3.67 43 Ⅳ 退院に向けての課題と目標設定について,患者・家族の意向と各専門職の意見をすり合わせる 0.200 0.427 0.182 0.078 3.35 40 Ⅰ 患者・家族が入院及び転科・転入・転棟をどのように受け止めているかを関わりの早期に把握する 0.170 0.418 0.225 -0.113 3.29 第3因 子 患者・家族の価値観を尊重した 専門的アセスメントと実践 Cronbach α=0.905 2 Ⅱ 退院に向けての患者・家族の不安やニーズを把握する -0.118 -0.064 0.800 0.171 3.54 ± 0.18 3.77 4 Ⅲ 患者が目指す退院後の生活の実現に向けて,患者がセルフケア能力を発揮し,その力を拡大できるよう支援する -0.199 0.147 0.715 -0.001 3.71 3 Ⅲ 入院前の生活レベルにどこまで近づけることができるかをアセスメントする -0.120 -0.062 0.694 0.149 3.65 1 Ⅰ 入院及び転科・転入・転棟早期に,患者・家族が目指す退院後の生活を把握する -0.030 -0.140 0.667 0.212 3.70 20 Ⅲ 在宅での生活にむけて,患者が持っている強みと弱みを含むセルフケア能力をアセスメントする 0.119 0.228 0.603 -0.194 3.41 14 Ⅱ 患者・家族が退院後の生活をイメージすることができるよう支援する 0.225 0.095 0.484 0.011 3.45 19 Ⅱ 自分自身で患者の退院後の生活をイメージする 0.172 0.154 0.479 -0.060 3.48 32 Ⅱ 患者の退院後の生活を予測し,患者を立体的・多角的にアセスメントする 0.293 0.141 0.473 -0.092 3.19 9 Ⅱ 退院後に必要と予測される医療や看護をアセスメントする 0.200 -0.112 0.451 0.215 3.46 6 Ⅱ 病棟で行われている医療や看護を患者・家族の価値観に合わせて退院後の生活に定着させられるよう支援する 0.098 0.098 0.421 0.182 3.56 第4因 子 目標達成に向けたプランニング Cronbach α=0.805 5 Ⅴ 多職種カンファレンス等で,退院に向けての課題と目標設定が妥当かを検討する -0.078 0.068 0.247 0.646 3.65 ± 0.19 3.78 10 Ⅴ 多職種カンファレンス等で,看護師の立場から入院中の患者の状況を具体的に提示する -0.035 0.105 0.192 0.548 3.73 24 Ⅴ 多職種カンファレンス等で,課題解決・目標達成のプロセスを中間評価し,今後の方針を決める 0.245 0.250 -0.037 0.444 3.43 項目全体の Cronbach α=0.963 因子相関行列 因子 2 0.74 因子 3 0.73 0.77 因子 4 0.49 0.59 0.55 因子抽出法 : 重みなし最小二乗法

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であった. (3)構成概念妥当性  因子分析の結果から抽出された因子と質問紙原案 の構成概念の一致状況を確認した.質問紙原案の概 念名が,本尺度因子名に含まれなかった特徴的なも のとして,概念Ⅰ「在宅シフトに向けた入院早期の 実践」を構成していた入院早期の実践,概念Ⅲ「意 思決定を支えるセルフケア」を構成していたセルフ ケアがあった.しかし,質問紙原案の構成概念Ⅰ~ Ⅴは,探索的因子分析から抽出された 4 因子と対応 していた.

Ⅴ.考察

 本尺度は,在宅シフトを支援する看護職のコンピ テンシーを測定するものである. 1.本尺度の信頼性・妥当性 1)信頼性  再テスト法では,「地域包括ケアシステムにおける 看護職の在宅シフト支援コンピテンシー尺度」の 1 回目と 2 回目の総得点に相関(r=0.682)があり, 安定性による信頼性が認められた.また,尺度全体 のα係数は0.963であり,内的整合性による信頼性が 認められた.以上のことから,信頼性は確保された と言える. 2)妥当性 (1)内容妥当性  エキスパートパネルでの改訂を経て,パイロット スタディでさらに質問項目を精錬し,表現方法の修 正や項目の削除・統合・追加をした.内容妥当性は, 専門家パネル法やパイロット研究を伴う何回かの修正 が必要となると述べられており(Liamputtong, 2010, 2012, pp. 145-146),本尺度は,このようなステップ とプロセスを踏み,質問項目が因子に対応している ため,妥当性が確認できたと考える. (2)基準関連妥当性  「地域包括ケアシステムにおける看護職の在宅シフ ト支援コンピテンシー尺度」の第 3 因子【患者・家 族の価値観を尊重した専門的アセスメントと実践】 と「退院支援看護師の個別支援における職務行動遂 行能力評価尺度」(戸村ら,2013)の第 1 因子【患 者・家族との合意形成力】の相関係数は,最も強い 相関が認められた.黒崎(2015)は,患者や家族が どのような環境や価値観のなかで生きてきたのか, 現状をどう受け止め,どこでどのように生きていき たいのか,本音を聞くことが退院までを支えていく 柱となると述べている.このように,退院支援にお いて,患者・家族の価値観を把握することは必須で あり,そのうえでの合意形成が不可欠であるため, 因子は合致していたと言える.また,「地域包括ケア システムにおける看護職の在宅シフト支援コンピテ ンシー尺度」と「退院支援看護師の個別支援におけ る職務行動遂行能力評価尺度」(戸村ら,2013)の各 合計得点でも相関が認められた.つまり,本尺度項 目は,退院支援看護師のみならず,今後,地域包括 ケアシステムにおける看護師の在宅シフトを支援す る行動特性として妥当であると考える. (3)構成概念妥当性(図1)  因子分析から抽出された因子と質問紙原案の構成 概念との一致状況や,以下に述べる各因子の構造か ら構成概念の妥当性も確認できたと考える. ①第 1 因子【在宅シフトに向けた最適化】  第 1 因子では,41.13.患者・家族の力を引き出 すことや,22.53.看護師からの情報提供や提案の 表 2  「地域包括ケアシステムにおける看護職の在宅シフト支援コンピテンシー尺度」と「退院支援看護 師の個別支援における職務行動遂行能力評価尺度」(戸村ら,2013)との相関 「地域包括ケアシステムにおける看護職の在宅シフト 支援コンピテンシー尺度」 第 1 因子 第 2 因子 第 3 因子 第 4 因子 因子全体 「退院支援看護師の個別支援における  職務行動遂行能力評価尺度」 (戸村ら,2013) 第 1 因子 0.620** 0.691** 0.692** 0.585** 0.735** 第 2 因子 0.598** 0.608** 0.651** 0.531** 0.680** 第 3 因子 0.615** 0.635** 0.625** 0.532** 0.694** 第 4 因子 0.607** 0.573** 0.551** 0.512** 0.648** 因子全体 0.688** 0.693** 0.695** 0.595** 0.768** Spearman 相関係数   **. 相関係数は 1% 水準で有意(両側)

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中から患者・家族が選択するという看護師との協働 作業が抽出された.これは,患者・家族が持つ力を 引き出す支援と看護職側の在宅シフトのスキル向上 等,患者・家族と看護師の両者が在宅シフトに向け た状況を最適な状態に整えていくものであるため, 【在宅シフトに向けた最適化】と捉えた.  セルフケア理論では,看護者が患者を観察するだ けではなく,また患者も単に見守られているわけで はなく,それ以上のことが双方に要求されることの 重要性を述べている(粕田,1987).今後,これまで 以上に在宅シフトが進められる中で,看護師からの 情報提供や様々な提案の中から患者・家族自身が意 思決定していけるよう患者の力を引き出す関りが重 要となる.  2010年 1 月から2015年 8 月までの78論文を対象と した退院支援に関する国内文献レビューでは,退院 支援が困難となりやすい事例が数多く報告されてい る(塚越,二渡,2015).このように困難な状況が続 く中,我が国の高齢化率はさらなる上昇を続け,前 述した地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料の 届出病床数も増加の一途をたどっている(厚生労働 省,2017).つまり,在宅シフト支援はすでにスター トしているものの,実際には戸惑いながらも実践し 続けている現状が推測できる.看護師らは,今まさ に,在宅シフト支援を経験しながら,それらの経験 による積み重ねを今後の在宅シフト支援につないで いこうとしている段階であることがうかがえる.看 護職個々の在宅シフト支援を丁寧に振り返り,地域 包括ケア時代の新たな在宅シフト支援のスキルが重 要となる.  このように,【在宅シフトに向けた最適化】によっ て患者・家族と看護職側の両者能力を測定すること は,在宅生活へのスムーズな移行にむけて最適な準 備状態を整えることになり,在宅シフトを支援する 看護師の行動特性として妥当であると考える. ②第 2 因子【患者・家族を主軸とした連携】  第 2 因子では,46.患者が目指す退院後の生活に ついて地域の各専門職につなげることや,37.多職 種との連携,35.看護職同士の連携が抽出された. これは,患者の目指す退院後の生活を地域につなぐ ために重要となる連携であるため,【患者・家族を主 軸とした連携】と捉えた.  患者・家族の側からとらえた退院支援での連携で は,在宅移行時の困難として,「患者家族の意向・医 療者の方針不統一」があり,連携上役立ったことと しては「事前会議により望む在宅療養を可能にする」 が報告されている(樋口ら,2009).本研究結果から も,入院早期から患者・家族,多職種間で,退院に 向けての課題と目標を共有する等が抽出されており, それらが実践できれば,樋口らの述べる,在宅移行 時における連携上の困難は回避でき,患者・家族が 望む在宅生活を可能にすることに役立てられる.さ らに,2015年に文部科学省の事業チーム及び JAIPE (日本保健医療福祉連携教育学会)で検討された「多 図 1  「地域包括ケアシステムにおける看護師の在宅シフト支援コンピテンシー尺度」概念図

病院内 つなぐ 多職種 地域 専門職 患者・ 家族

1因子【在宅シフトに向けた最適化】

3因子【患者・家族の価値観を尊重した

専門的アセスメントと実践】

つなぐ 提示・検討・評価 「地域包括ケアシステムにおける 看護師の在宅シフト型コンピテンシー尺度」 概念図

2因子【患者・家族を主軸とした連携】

4因子【

目標達成に向けたプランニング

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職種連携コンピテンシーの全体像」の中核は,患 者・利用者・家族・コミュニティであり,それらを 囲むものとして職種間コミュニケーション等がある (公益社団法人日本医師会,2016).つまり,入院早 期に患者・家族を中心として,課題や目標を設定し, 共有することが多職種連携の基盤であり,今後は, 医療従事者が主体の在宅シフト支援ではなく,患 者・家族を主軸とした協働の在宅シフト支援が重要 となる.  また,本研究結果からは,患者が目指す退院後の 生活についての情報を,介護支援専門員や地域の各 専門職につなげるという項目が抽出されている.黒 崎(2015)は,退院支援における情報収集の意味と して,看護職は,社会の中で生きている人や生きき る人をそれぞれの生活の場へ送り出す役割を担って いるからであると述べている.患者が目指す退院後 の生活について,それらが実現できるよう,これま での具体的な情報を,地域の専門職に丁寧に,きめ 細かくつなげていくことも看護職の重要な役割であ る.さらに,在宅療養移行支援は入院から退院まで の一方向ではなく,地域・病院間の連続したサイク ルに基づく支援であると述べている(坂井,2015). 本研究結果からは,患者の生活を把握するための情 報を,キーパーソンや支援者,情報提供書等のあら ゆる場面からの情報を収集するという項目も抽出さ れている.在宅シフトに関する情報も一方向ではな く,病院から地域(退院後)へ,地域(入院前)か ら病院へと連続したサイクルでつなぐことが,患者 の目指す退院後の生活の実現において重要である.  このように,【患者・家族を主軸とした連携】に よって情報を連続したサイクルでつなぐということ は,患者が目指す退院後の生活の実現のために,在 宅シフトを支援する看護師の行動特性として妥当で あると考える. ③ 第 3 因子【患者・家族の価値観を尊重した専門 的アセスメントと実践】  第 3 因子では, 3 .生活レベルのアセスメント, 20.セルフケア能力のアセスメントや 6 .患者・家 族の価値観に合わせた支援が抽出された.これは, 退院後に必要と予測される医療や看護をアセスメン トし,医療や看護を患者・家族の価値観に合わせて 退院後の生活に定着させるものであるため,【患者・ 家族の価値観を尊重した専門的アセスメントと実践】 と捉えた.  退院後に必要と予測される医療や看護をアセスメ ントするには,まずは,患者・家族のセルフケア能 力を把握することが重要である.本庄(2015)は, セルフケア能力は,その人が持っている「能力(abil-ity):できること(強み)」と「限界(limitation): できないこと(弱い点)」の両方の視点からアセスメ ントすることが重要であると述べている.また,セ ルフケア能力を高める支援は,セルフケアを行う潜 在的な力を高める支援とも言えると述べている(本 庄,2015).本研究結果からも,患者のセルフケア能 力をアセスメントし,発揮,拡大できるよう支援す ることや患者が持っている強みと弱みを含むセルフ ケア能力をアセスメントするという項目が抽出され ている.このように,セルフケア能力を拡大してい く看護は,患者のできる能力の向上と同時に,患者 が目指す退院後の生活の在り方にも大きく影響を及 ぼすこととなるため重要であると言える.  また,本研究結果から,現在行われている医療や 看護を患者・家族の価値観に合わせて退院後の生活 に定着させるという項目が抽出されている.宇都宮, 山田(2014)は,生活の中で医療行為を実施するこ とに関して,本当に必要な処置に限るようにする 「医療のシンプル化」を目指すことについて述べてい る.患者・家族の価値観を基盤に,入院中に行って いた医療や看護を可能な限り生活の場に合わせ,定 着させられるようアレンジする等の工夫が必須であ る.つまり,入院中から退院後の生活を見据えて, 徐々に生活に定着させられるよう,患者・家族が実 践可能だと実感できるような段階を踏んだ支援こそ が在宅シフトにおける看護職の専門的実践として重 要である.  また,坂井(2015)は,入院早期スクリーニング 票は,入院早期からの退院支援計画書作成の着手に は効果的であるが,スクリーニングのみが入院早期 になされ,具体的な退院支援の介入が遅れることや, 入院経過に伴う患者の状態変化により,再度,退院 支援の必要性をアセスメントすることが課題だと指 摘している.つまり,高齢者は,状態変化を起こし やすく,状況に応じて目指す退院後の生活の在り方 が揺らぐことが予測されるため,患者の状況に応じ た時間軸での専門的アセスメントの実施と,それに 基づいた課題や目標の再立案等,軌道修正を繰り返

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す専門的実践能力が重要であると言える.  また,病棟に勤務する看護職の多くは,疾患を中 心とした入院生活のアセスメント,いわゆる「医学 モデル」の看護実践をしている現状に対し,本研究 結果からは,退院後の生活をイメージできるよう支 援する,退院後に必要と予測される医療や看護をア セスメントするといった項目が抽出された.つまり, 看護職自身が,患者を入院前,退院後の患者ではな い生活者としてどれだけとらえることができるかが 必須であり,「生活モデル」としてのとらえ方に転換 できるかがポイントとなると考える.医療と生活を 融合した時間軸でのアセスメントは,在宅シフトに 向けた多くの課題抽出につながっていくことが予測 される.今後は,在宅シフトを実践する看護職全体 が,「生活モデル」の視点でとらえ,患者が目指す退 院後の生活の実現に向けて支援するといった専門的 アセスメントと実践が重要である.  このように,【患者・家族の価値観を尊重した専門 的アセスメントと実践】によって生活モデルを基盤 とした専門的アセスメントと実践は,患者・家族の 価値観に応じた実現可能な在宅生活のために,在宅 シフトを支援する看護師の行動特性として妥当であ ると考える. ④第 4 因子【目標達成に向けたプランニング】  第 4 因子では, 5 .課題と目標設定の妥当性の検 討や,24.課題解決・目標達成のプロセスを中間評 価し,今後の方針を決める項目が抽出された.これ は,多職種カンファレンス等での患者の状況を具体 的に提示することや,課題と目標設定の妥当性の検 討,今後の方針を決めるものであるため,【目標達成 に向けたプランニング】と捉えた.  平成28年度診療報酬改定での退院調整加算算定の 要件には,多職種カンファレンスの実施が含まれて いる(厚生労働省,2016).さらに,平成27年度 第 10回 入院医療等の調査・評価分科会の調査結果で は,多職種カンファレンスを実施している病棟では, 実施していない病棟と比べて平均在院日数が短い傾 向にあると報告されている(厚生労働省,2015).こ のように,退院支援における多職種カンファレンス の効果が示されていることからも,多職種カンファ レンスは必須であり,その多職種カンファレンス中 で,課題と目標設定の妥当性の検討及び今後の方針 の決定といったプランニングが重要である.  また,吉本ら(2009)は,地域高齢者ケアのリー ダーは,継続して高齢者と家族を見守り支援する構 えを持っている人であることが求められると述べて いる.多職種カンファレンスでは,患者の入院生活 全体を継続して把握でき,患者の生活に最も近い立 場で患者の疾病と生活を融合した具体的状況を提示 できる看護職独自の専門性の発揮が重要となる.  このように,【患者・家族の価値観を尊重した専門 的アセスメントと実践】によって,多職種カンファ レンスにおける看護職独自の専門性の発揮が,目標 達成のために必須であり,在宅シフトを支援する看 護師の行動特性として妥当であると考える. 2.「地域包括ケアシステムにおける看護職の在宅シ フト支援コンピテンシー尺度」の限界と活用可 能性  本研究では 2 つの限界がある.まず 1 つ目は,地 域包括ケア病棟で在宅シフトを可能にする看護職の コンピテンシーについてインタビュー調査を実施し たが,制度上,地域包括ケア病棟が新設され約 2 年 の段階でのインタビューであったため,学識者も対 象としたものの,十分なコンピテンシーを網羅して 捉えられたかという点である. 2 つ目の限界は,本 尺度は,一定の妥当性と信頼性があることは確認し たものの,今後は,内容妥当性指数や確認的因子分 析等の実施により尺度の精度を上げていく必要があ るということである.  以上の限界はあるものの,本尺度の活用により, 看護職個々の在宅シフト支援コンピテンシーの把握 ができる.さらに,病院や病棟ごとの集計により, それぞれの在宅シフト支援に関する強みと弱みが明 確となり,在宅シフトを強化するための教育体制や 人材育成といった具体的な取り組みが可能になると 予測する.今後は,地域包括ケア病棟の看護職らの 経験によって「地域包括ケアシステムにおける看護 職の在宅シフト支援コンピテンシー尺度」を構成す る因子や項目は変化することも予測されるが,その 変化こそが,質の高い在宅シフト能力の向上であり, 患者・家族の納得した退院につながっていくことが 期待される.

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Ⅵ.結論

 「地域包括ケアシステムにおける看護職の在宅シフ ト支援コンピテンシー尺度」は,第 1 因子【在宅シ フトに向けた最適化】,第 2 因子【患者・家族を主軸 とした連携】,第 3 因子【患者・家族の価値観を尊重 した専門的アセスメントと実践】,第 4 因子【目標達 成に向けたプランニング】の 4 因子35項目で構成さ れ,信頼性と妥当性があることが確認できた. 謝辞:本研究にあたり,ご協力いただきました皆様 に深く感謝いたします.  なお,本研究は2016年度青森県立保健大学大学院 博士論文を加筆修正したものであり,その一部を第 21回日本看護管理学会学術集会で発表した. ■引用文献 藤澤まこと,普照早苗,森仁美,黒江ゆり子,平山朝子,他 (2006).退院調整看護師の活動と退院支援における課題. 岐阜県立看護大学紀要, 6(2),35-41. 樋口キエ子,原田静香,大木正隆(2009).訪問看護師が認識 する在宅移行時における連携の現状―連携上の困難・役 立った支援よりー.看護実践の科学,34(10),61-69. 本庄恵子(2015).セルフケア看護(pp. 14-37).神奈川:ラ イフサポート社. 粕田孝行(編),南裕子,稲岡文昭(監)(1987).セルフケア 概念と看護実践―Dr. P. R. Underwood の視点から― (pp. 19-38).東京:へるす出版. 公益社団法人日本医師会(2016).地域包括ケアと多職種連携 ~指導者用ガイドブック~(pp. 2-21).東京:公益社団 法人日本医師会. 厚生労働省(2015).平成27年度 第10回 入院医療等の調査・ 評価分科会.(2015年 6 月 1 日,http://www.mhlw.go.jp/ file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/ 0000087186.pdf) 厚生労働省(2016).平成28年度診療報酬改定の概要.(2017 年 1 月 6 日,http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000125201.pdf) 厚生労働省(2017).入院医療等の調査・評価分科会資料 入 院医療その 4 .(2017年 5 月25日,http://www.mhlw. go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/ 0000165657.pdf) 黒崎恵子(2015).第 2 章 退院支援の実際.宇都宮宏子(監), 坂井志麻(編),退院支援ガイドブック(pp. 40-52).東 京:学研メディカル秀潤社. Liamputtong, P. 編(2010)/木原雅子,木原正博(訳)(2012). 現代の医学的研究方法 量的・量的方法,ミックストメ ソッド,EBP(pp. 145-146).東京:メディカル・サイ エンス・インターナショナル. 坂井志麻(2015).政策につながる看護研究の動向と今後の展 望 退院支援の研究を例に.看護研究,48(1),32-42. 谷内篤博(2001).新しい能力主義としてのコンピテンシーモ デルの妥当性と信頼性.経営論集,11(1),49-62. 戸村ひかり,永田智子,村嶋幸代,鈴木樹美(2013).退院支 援看護師の個別支援における職務行動遂行能力評価尺度 の開発.日本看護科学学会誌,33(3),3-13. 塚越徳子,二渡玉江(2015).退院支援を行う看護職を対象と した研究の動向と課題―国内文献レビュー―.群馬保健 学紀要 36,103-114. 宇都宮宏子,山田雅子(編)(2014).看護がつながる在宅療 養移行支援(pp. 20-28).東京:日本看護協会出版会. 吉本照子,酒井郁子,杉田由加里(編)(2009).地域高齢者 のための看護システムマネジメント(pp. 41-44).東 京:医歯薬出版. 財団法人 日本訪問看護振興財団(2011).退院調整看護師に 関する実態調査 報告書.東京:財団法人 日本訪問看護 振興財団.

参照

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