高校生のだしの嗜好ならびに食経験がうま味認知閾値に及ぼす影響
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(2) 中嶋・小泉・北野・川上・中嶋・松添:高校生のだしの嗜好ならびに食経験がうま味認知閾値に及ぼす影響. ている 5)。一方,日本の女子大生おいて4基本味(甘味,. において天然だしの調製は市販の調理本を参考にした16)。. 塩味,酸味,苦味)のうち甘味,塩味,苦味の閾値の上. すなわち,ステンレス鋼鍋(φ200 mm, 株式会社柄沢製. 6). 昇傾向,すなわち感受性低下傾向が報告されている 。学. 作所)に蒸留水を500 mL入れ,昆布を入れて30分間浸漬. 校給食のない高校生や大学生は自ら食事を選択する機会. した。昆布浸漬30分後に塩分計にて食塩濃度を測定後,. が増えると考えられ,摂取食品が将来の健康に及ぼす影. 800 Wで加熱し,80℃に達したところで昆布を取り出した. 響が懸念される。. (加熱開始2分~3分後)。その後1400 Wに設定し,沸騰. うま味は5基本味(甘味,塩味,酸味,苦味,うま味) 7,8). 後にかつお節を入れ,1分間加熱し続けた。加熱後に電熱. 。また,既報において. 調理器から下ろし,3分間静置した後,キッチンペーパー. うま味が判別できる者は,塩味や苦味を判別できる者が. で濾し,蒸発と濾した際に過失した蒸留水を500 mLメス. 多く,うま味感受性が高い者は甘味や塩味の感受性も高. シリンダーで補正した。食塩を用いて食塩濃度を0.40 %. の中でも識別しにくい味である. 8). かった 。甘味や塩味の感受性が高いことは,糖分や塩分. に調整した。. の濃度が低い食品を摂取するので健康を維持できると考. 顆粒だしは,顆粒風味調味料(ほんだし, かつおとこ. えられる。これらのことからうま味感受性に影響を及ぼ. んぶのあわせだし, 味の素)を用い,商品の表示に従い. す食生活要因を探ることで味覚感受性を高く維持するた. 調製した(3.33 g/蒸留水500 mL)。熱源と鍋は天然だし. めの食生活を提示することができるのではないかと推察. と同じ規格のものを使用した。蒸留水を鍋に入れて加熱. 9). される。神田ら は小学生と親を対象にした研究におい. を始め,沸騰後に顆粒風味調味料を入れて溶解し,電磁. て,だしの好みの違いにより,うま味の知覚が異なるこ. 調理器から下ろして(加熱開始5分~6分後)3分間静置し. とを示唆している。つまり,うま味感受性はだしの嗜好. た。蒸発分は天然だしと同様に蒸留水で補正し,食塩濃. と関連すると考えられるが,食の嗜好は食経験の影響が. 度を調整した。. 10). 大きい 。そこで,本研究は,高校生を対象に,だしの 嗜好型官能評価と,5基本味味覚感受性官能評価,食物摂 取頻度調査および食習慣に関する質問紙調査を実施し, これらの関連を検討することを目的とした。 2.材料および方法 1)試料調製 昆布とかつお節から抽出しただし(天然だし)と市販 の風味調味料(顆粒だし)を図1に示す手順で調製した8)。 食塩濃度の測定には塩分計(ATAGO, PAL-ES1)を,食塩 濃度の調整には市販の食卓塩(公益社団法人塩事業セン ター)を使用した。また,水の硬度によって煮出し汁の 嗜好性と溶出成分に差が生じる11)ため,本研究において 天然だしと顆粒だしは蒸留水を用いて調製した。 昆布は北海道産利尻昆布を,かつお節は枕崎産本枯れ 節,荒節,焼津産荒節を,それぞれ購入した。かつお節 は 3 gごとに不活性ガス充填気密パック入りのものを用 いた。購入後は使用直前まで5℃の冷蔵庫内で保存した。 天然だしの調製方法は次の通りである。昆布は1回の調 製に5.0 gのものを1片,繊維に垂直に切るなど条件を揃 えた。かつお節は3種類をそれぞれ1.67 gずつ,計5.0 g となるようにした。抽出には蒸留水500 mLを,熱源は電. 図1. 磁調理器(DI-104, DRETEC),温度計は防水型デジタル 温度計(SK-250WP, 株式会社佐藤計量器製作所)を用い た。昆布,かつお節は高温,長時間煮出すことで抽出さ れる成分量に差が認められ. 12-14). 2)調査対象者. ,材料の配合割合によっ 15). て呈味成分と食味に違いが見られる ことから,本調査. だしの抽出方法. 天然だしは昆布の浸漬後に食塩濃度を測定し,両だし は容積測定時,メスアップ後に食塩濃度を測定した。. 対象者は熊本県内のD高校1年生410名(男子202名,女 子208名)とした。対象者には事前に調査内容を説明した. 19(19).
(3) 美味技術学会誌. 第 17 巻 1 号(2018). 文書と同意書を配布し,保護者からの同意を得た。同意. 行った。官能評価では各試料を呈味物質ごとに味を予測. 書の配布と回収は家庭科教諭に依頼した。味覚官能評価. されないよう18)に,異なる色のサインペンで1から6と記. は,1つの机に2人もしくは3人の被験者が座り,調査員が. 入した90 mL容量の紙コップに10 mLずつ入れて提供した。. 試料を提供した。個人の間には,衝立を用い,隣の被験. 前後で口にした試料の影響を抑えるため,試料を口にす. 者の様子がわからないようにした。室温は26.1 ± 0.6℃. る前と後には精製水で5秒間口腔内をすすぐこととした。. にて実施した。なお,本研究は熊本県立大学生命倫理委. 最も薄い濃度である1から順番に全量を口に含み,5秒間. 員会の承認を得て実施した。. 味わった後に吐き出した。試料を口にするごとに試料の. 3)だしの嗜好型官能評価. 味についてどのように感じたかを,a. 水と同じ味に感. 対象者に対し,だしの嗜好型官能評価を実施した。天. じる,b. かすかに水とは違う味を感じる,c. 自信は持. 然だしと顆粒だしを調査当日に調製した。調査方法は川. てないが水とは違うある味を感じる,d. かすかに何の. 8). 上ら の手順に従い実施した。提供は90 mL容量の紙コッ. 味かわかる,e. はっきりと何の味かわかる,のうちから. プに10 mLずつ入れて提供し,対象者にはそれぞれの試料. 五者択一で回答してもらった。その際,d. かすかに何の. 全量を口腔内に含み,5秒間味わった後に飲み込んでもら. 味かわかる,e. はっきりと何の味かわかる,と回答した. った。試料を口にする前と後には精製水で5秒間口腔内を. 場合のみ何の味と感じたのかを,甘味,塩味,うま味,. すすいで吐き出し,あらためることとした。両試料を味. 酸味,苦味の5基本味のうちから一つ選んでもらった。試. わったのちに,①どちらのだしが美味しく感じたか,②. 料数が多いため,官能評価は対象者各人のペースにて実. どちらのだしが塩辛く感じたか,という問いに対し,①. 施した。通常は試料濃度が濃くなるにつれてa. b. c. d.. 最初に口にした物,②後から口にした物,③どちらとも. e.の順で回答するが,通常の順番とは逆に回答した場合. 言えない,の三者択一の回答とした。嗜好調査において,. を逆走とした。例えば,ある試料の回答でd.かすかにな. 17). 心理的影響を避ける ため,対象者が試料を口にする順. んの味かわかる,と回答し,その次の濃度でc.自信は持. 番を,天然だしが先の者,顆粒だしが先の者の人数が同. てないが水とは違うある味を感じる,と回答した場合は,. 一になるように提供した。試料が2種類と少ないため,動. 逆走とした。各基本味において,正しく識別できたもの,. 作ごとに指示を出して実施した。. かつ途中で回答が逆走しなかったものを正解者とした。. 4)5基本味味覚官能評価. 正解者数を,試験対象者で除した値を正解率とした。各. 対象者の味覚閾値を調べるために,甘味,塩味,うま. 基本味おいて,正解者が味を識別できた段階を認知閾値17). 味,酸味,苦味の5基本味味覚官能評価を行った。呈味物. とし,その濃度を認知濃度とした。さらに,プロビット. 8). 質と試料濃度は川上ら を参考に調製した。各呈味物質. 法にて集団の認知濃度を求めた。各基本味の試料におい. として,甘味はスクロース(和光純薬工業株式会社, 試. て不正解者は含まない認知閾値ごとの人数を累積し,. 薬特級),塩味は塩化ナトリウム(和光純薬工業株式会. 50 %が識別できた値から最も近い濃度の試料を集団の認. 社, 試薬特級),うま味はグルタミン酸ナトリウム一水. 知閾値とした。集団の認知閾値よりも薄い濃度で識別で. 和物(和光純薬工業株式会社, 和光特級),酸味は酢酸. きた群を認知閾値低群(以下,低群)とし,集団の認知. (和光純薬工業株式会社, 試薬特級),苦味は硫酸キニ. 閾値で識別できた群を認知閾値標準群(以下,標準群). ーネ二水和物(和光純薬工業株式会社, 和光特級)を用. とし,それ以外(不正解者含む)を認知閾値非低群(以. いた。溶媒は蒸留水(和光純薬工業株式会社)を用いて,. 下,非低群)とした。. 各試料は6段階等比濃度とし,調査当日に調製した(表1)。. 5)食物摂取頻度調査および食生活に関する質問紙調査. 対象者は官能評価実施直前に甘味,塩味,うま味におい て一番濃い濃度のものを味わい,それぞれの味の確認を 表1. 対象者の食品・栄養素等摂取状況を把握するために, 簡 易 型 自 記 式 食 事 歴 法 質 問 票 ( Brief-type self-. 味覚官能評価に用いた試薬とその濃度. 基本味. 甘味. 塩味. うま味. 酸味. 苦味. 呈味物質. スクロース. 塩化ナトリウム. グルタミン酸ナトリウム. 酢酸. 硫酸キニーネ. 1 2 3 4 5 6. 1.25 2.50 5.00 10.00 20.00 40.00. 0.15 0.30 0.60 1.20 2.40 4.80. 0.10 0.20 0.40 0.80 1.60 3.20. 11.8×10-3 23.5×10-3 47.0×10-3 94.0×10-3 188.0×10-3 376.0×10-3. 0.38×10-3 0.76×10-3 1.52×10-3 3.04×10-3 6.08×10-3 12.15×10-3. g/L. 20(20).
(4) 中嶋・小泉・北野・川上・中嶋・松添:高校生のだしの嗜好ならびに食経験がうま味認知閾値に及ぼす影響. administered Diet History Questionnaire : 以下, BDHQ). 19-21). 22). および食習慣アンケート と,対象者の共食. 状況や味の嗜好を調査するために食生活に関する質問紙 調査. 23-26). を実施した。調査項目を表2に示す。BDHQでは,. らかに有意水準とかけ離れた(P > 0.10)項目は独立変 数から除外した27)。さらに多重共線性の存在を回避する ために,相関の強い(相関係数 する場合は一方を除外した. |r| > 0.9)変数が存在 27). 。 統 計 解 析 に は SPSS. 過去1ヶ月間の食物摂取量と摂取頻度から個人の食品摂. Statistics Version 21 (IBM) を用い,有意水準は5 %. 取量と栄養素等摂取量を定量的に推定した。食習慣アン. (両側検定)とした。. ケートでは,Ⅰ運動や健康,Ⅱ食行動,Ⅲ食態度,Ⅳ食. 3.結果および考察. 意識の4分野の質問項目によって評価した。いずれも自己. 1)対象者の選別. 記入式にて実施し,記入後確認と入力を行い,記入漏れ については官能評価時等に訂正をしてもらった。 表2 大項目 基本属性. 熊本県内D高校1年生を対象にだしの嗜好調査,5基本味 味覚感受性官能評価,食物摂取頻度調査,食生活に関す る質問紙調査を実施し,それぞれの関連を検討した。対. 調査項目. 象者410名のうち,個人データに欠損のある者,質問紙に. 中項目. 小項目 性別 年齢 世帯 健康状態 身長 体重 BMI 調査当日の体調 睡眠 歯の状況 食物アレルギーの有無 専門家指導による食事コントロールの有無 ストレス 食物摂取状況 牛乳・乳製品 肉・肉加工品 海草・魚介類 卵 大豆・大豆製品 いも 野菜類(緑黄色野菜, 淡色野菜, きのこ類) 菓子類 果物 穀類 調味料(砂糖, 塩) 嗜好飲料 栄養補助食品 油脂 種実類 調理済み食品 朝食・昼食・夕食の内食・中食・外食・欠食頻度 行動 食行動 食事時間 調理保存 食事速度 食事作り 間食 食塩 情報 食品選択 自分の適正体重 特産物 健康行動 1日の身体活動時間 1週間の運動時間 野菜 脂質 食事提供者 食態度 行儀 食味嗜好 共食 食事雰囲気 和食 和食の摂取頻度 和食の嗜好 汁物の摂取頻度 だし だしの嗜好 だしの種類. 不備のある者,味覚調査に欠席した者の計53名を除外し た。さらに,エネルギー摂取量が日本人の食事摂取基準 2015年版28)の最低身体活動レベル(レベルⅠ)における 推定エネルギー必要量の0.5倍未満(男子 <1,250 kcal/ 日,女子 <1,025 kcal/日)あるいは最高身体活動レベ ル(レベルⅢ)における推定エネルギー必要量の2.0倍よ り大きい(男子 <6,300 kcal/日,女子 <5,100 kcal/ 日)者の計14名を除外し29),最終的な本研究の分析対象 者を343名(有効分析率 83.7 %)とした。対象者特性を 表3に示す。男女ともに属性および居住形態に有意な群間 差は認められなかった。 2)うま味認知閾値とだしの嗜好との関連 うま味認知閾値による群(低群+標準群,非低群)と 嗜好型官能評価で得られただしの嗜好(天然だし,顆粒 だしのどちらを美味しく感じたか)との関連では,男子 に有意な差は認められなかった一方,女子において,非 低群は「どちらともいえない」と回答した者が有意に多 かった(P = 0.02)(表4)。本研究においては,うま 味の認知閾値低群は天然だしと顆粒だしの味の差を感じ ることが可能であることが示唆されたが,うま味認知閾 値とだしの嗜好には関連が認められなかった。このこと から,うま味認知閾値は食経験などの複合的要因の影響 が大きいと考えられた。先の報告においても,正しい味 覚を形成するためには,幼児期から若年時代までの食生 活や食習慣が大きく関わっていると考えられている30,31). 6)統計処理 得られたデータにより男女別に統計分析を行った。対 2. ことから,様々な食経験によって味覚は発達していく感. 象者特性には,χ 検定,Mann- WhitneyのU検定を用いた。. 覚であると考えられる。. うま味認知閾値による群(低群+標準群,非低群)とだ. 3)うま味認知閾値に影響を及ぼす因子. しの嗜好との関連にはχ2検定を用いた。うま味認知閾値. うま味認知閾値に影響を及ぼす要因を探るため,うま. に影響を及ぼす要因を抽出するために,二項ロジスティ. 味認知閾値低群 + 標準群(0),認知閾値非低群(1)を. ック回帰分析を行った。従属変数は低群 + 標準群,非低. 従属変数とし,男子は,健康や運動に関する項目(1項目). 群の2群とした。投入する独立変数を選定するために,2. 食行動に関する項目(1項目),食態度に関する項目(3. 2. 変量解析(χ 検定,Mann- WhitneyのU検定)を行い,明. 項目),食意識に関する項目(1項目),食味嗜好に関す. 21(21).
(5) 美味技術学会誌. 表3. 第 17 巻 1 号(2018). 対象者特性. 認知閾値低群+認知閾値標準群 (男子n=60,女子n=55) 中央値,四分位範囲 or n(%) 男子. 属性. 中央値,四分位範囲 or n(%). (歳). 16. 16. -. 16. 16. 16. -. 16. 0.12. 身長. (㎝). 167.0. 164.0. -. 172.0. 169.0. 166.0. -. 172.0. 0.41. 体重. (㎏). 54.0. 50.0. -. 61.0. 56.0. 52.0. -. 60.0. 0.57. BMI. (㎏/m2). 19.4. 18.3. -. 21.0. 19.8. 18.0. -. 21.0. 0.85. 1. (1.7). 0. (0.0). 二世代世帯. 51. (85.0). 83. (83.0). 三世代世帯. 6. (10.0). 16. (16.0). その他 属性. P. 年齢. 居住形態 一人暮らし. 女子. 認知閾値非低群 (男子n=100,女子n=128). 0.29. 2. (3.3). 1. (1.0). 年齢. (歳). 16.0. 16. -. 16. 16.0. 16. -. 16. 0.05. 身長. (㎝). 157.0. 154.0. -. 160.0. 158.0. 156.0. -. 161.0. 0.19. 体重. (㎏). 49.0. 46.0. -. 54.0. 50.0. 46.0. -. 55.0. 0.29. BMI. (㎏/m2). 20.1. 18.8. -. 21.6. 20.5. 18.7. -. 21.6. 0.62. (0.8). 居住形態 一人暮らし. 0. (0.0). 1. 二世代世帯. 45. (81.8). 103. (80.5). 三世代世帯. 6. (10.9). 22. (17.2). その他. 4. (7.3). 2. (1.6). 0.15. 属性は中央値および四分位範囲(Mann-WhitneyのU検定) 居住形態は n(%)(カイ2乗検定) BMI(Body Mass Index):体重(㎏)/身長(m) 2の式で計算される体格指数. 表4. 男子. うま味認知閾値とだしの嗜好との関連 認知閾値低群+認知閾値標準群 n(%) 27 (44.3) 27 (44.3) 7 (11.5) 20 (36.4) 34 (61.8) 1 (1.8) *. 天然だし 顆粒だし どちらともいえない 女子 天然だし 顆粒だし どちらともいえない カイ2乗検定 * 調整済み残差が+1.96以上あるいは-1.96以下. 認知閾値非低群 n(%) 43 (42.6) 38 (37.6) 20 (19.8) 41 (32.0) 66 (51.6) 21 (16.4) *. P 0.36. 0.02. る項目(1項目),認知閾値に関する項目(3項目)の全. の回答において「どちらともいえない」および「顆粒だ. 10項目,女子は,栄養素摂取量に関する項目(5項目),. し」を「0」,「天然だし」を「1」とし,だしの嗜好(2). 健康や運動に関する項目(1項目)食行動に関する項目(4. は,「どちらともいえない」および「天然だし」を「0」,. 項目),食態度に関する項目(3項目),食意識に関する. 「顆粒だし」を「1」とし分析した。その結果,だしの種. 項目(3項目),食味嗜好に関する項目(6項目),認知. 類に関わらず,「どちらともいえない」と回答するほど. 閾値に関する項目(4項目)の全26項目を独立変数とした. うま味認知閾値「非低群」となる確率が有意に高かった。. 二項ロジスティック回帰分析を行った。二項ロジスティ. これは,前述のうま味認知閾値とだしの嗜好との関連で. ック回帰分析は,従属変数に対して,独立変数の影響度. 得た結果(表3)と一致する。さらに,親が和食を「好ま. 合いを解析することが可能であり,従属変数が質的(0-. ない」ことや,自宅でのだしの種類が,「作らない」あ. 1型の2値)かつ1つであり,独立変数は量的または質的で. るいは「市販だしの利用が多い」ほどうま味認知閾値が. 2つ以上の場合に用いる統計手法である。分析の結果,う. 「非低群」となる確率が有意に高かったことから,本研. ま味認知閾値との有意な関連性が認められた項目は,男. 究ではだしの嗜好より,だしの食経験のほうがうま味認. 子は,甘味認知閾値,塩味認知閾値の2項目,女子は,塩. 知閾値に強く影響していると示唆された。だしの種類「天. 味認知閾値,酸味認知閾値,苦味認知閾値,コレステロー. 然だし」,「顆粒だし」はいずれも種類が多く,各家庭. ル摂取量,だしの嗜好(1),だしの嗜好(2),辛いもの. で使用しているだしは多様である。本研究で用いた「天. の嗜好,自宅でのだしの種類,親の和食嗜好,魚料理と. 然だし」はかつお昆布だしであった。神田ら(2015)は,. 肉料理の摂取頻度の10項目であった(表5)。. うま味感受性が低い,すなわちうま味認知閾値非低群に. だしの嗜好(1)は,嗜好型官能評価で得られただしの. おいて,「かつお昆布だし」は「昆布だし」に比し「生. 嗜好(天然だし,顆粒だしのどちらが美味しく感じたか). 臭みが強い」と評価した者が有意に少なく,「うま味を. 22(22).
(6) 中嶋・小泉・北野・川上・中嶋・松添:高校生のだしの嗜好ならびに食経験がうま味認知閾値に及ぼす影響. 表5 男子. 女子. うま味認知閾値に影響を及ぼす因子. 変数 甘味認知閾値 (0:認知閾値非低群,1:認知閾値低群+認知閾値標準群). 偏回帰係数 -1.348. オッズ比 0.26. 95%信頼区間 0.11 0.59. P. 塩味認知閾値 (0:認知閾値非低群,1:認知閾値低群+認知閾値標準群) 塩味認知閾値 (0:認知閾値非低群,1:認知閾値低群+認知閾値標準群). -0.825. 0.44. 0.22. -. 0.86. 0.017. -1.38. 0.25. 0.100. -. 0.610. 0.002. 酸味認知閾値 (0:認知閾値非低群,1:認知閾値低群+認知閾値標準群). -1.18. 0.31. 0.120. -. 0.820. 0.018. 苦味認知閾値 (0:認知閾値非低群,1:認知閾値低群+認知閾値標準群). -1.665. 0.19. 0.080. -. 0.480. <0.001. コレステロール(㎎/日) (連続変数). 0.008. 1.01. 1.004. -. 1.012. <0.001. だし嗜好(1) (0:どちらともいえない,0:顆粒だし,1:天然だし). -3.459. 0.03. 0.002. -. 0.422. 0.009. だし嗜好(2) (0:どちらともいえない,1:顆粒だし,0:天然だし). -3.416. 0.03. 0.003. -. 0.431. 0.009. 辛いもの嗜好 (4:好まない,3:あまり好まない,2:どちらかというと好き,1:好き). -0.399. 0.67. 0.450. -. 0.998. 0.049. 自宅でのだしの種類 (5:作らない,4:市販,3:市販が多い,2:天然だしが多い,1:天然だし). 0.528. 1.70. 1.136. -. 2.533. 0.010. 親の和食嗜好 0.629 (5:わからない,4:母親が好まない,3:父親が好まない,2:母親が好き,1:父親が好き). 1.88. 1.125. -. 3.130. 0.016. 2.99. 0.999. -. 8.946. 0.050. 魚料理と肉料理の摂取頻度 (3:ほぼ同じ,2:肉料理が多い,1:魚料理が多い) 二項ロジスティック回帰分析 従属変数はうま味認知閾値(1:認知閾値非低群,0:認知閾値低群+認知閾値標準群) モデルカイ2乗検定 男子 P <0.001,女子 P <0.001 判別的中率 男子 68.1%,女子 84.7%. 1.095. 0.001. 感じる」と評価した者が有意に多かったと報告している7)。. これらを支持する結果であった。中学生の男女を対象と. かつお昆布だしは,うま味認知閾値に関わらずうま味を. した報告では,味覚識別能高群,すなわち味覚認知閾値. 感受し生臭みの感受を弱めることができるため,いずれ. 低群は「栄養・バランス性」の得点が高く,味覚識別能. の群も美味しく感じだと考えられる。また一般に「顆粒. 低群,すなわち味覚認知閾値非低群は「ファスト・濃厚. だし」は「天然だし」に比しうま味成分であるグルタミ. 味志向性」の得点が高いことが確認された35)。これらの. ン酸含量が高く9)糖類(甘味)の添加が多い8)ことから,. ことから,脂質ならびに辛味の短期的および長期的摂取. うま味を感受しやすいといえる。これらのことから,本. によりうまみ認知閾値が高くなる可能性が示唆され,脂. 研究の2種類のだしは「美味しさ」の差が小さかったため,. 質の中では特にコレステロール摂取の影響が大きいと考. だしの嗜好とうま味認知閾値との関連が認められなかっ. えられた。. たと推察される。. 塩味の認知閾値が「非低群」の場合,うま味認知閾値. コレステロール摂取量が多いことや,魚料理より肉料. が「非低群」となる確率が有意に高く,酸味,苦味も同. 理の摂取が多いほどうま味認知閾値が「非低群」となる. 様であった。甘味以外の4基本味は,食品中においても強. 確率が有意に高かった。脂質の中でも特にコレステロー. さが限度を超えると警戒シグナルとなる共通点がある1)。. ルの摂取がうま味認知閾値に関与している可能性が示唆. 先行研究においては,うま味は5基本味の中で最もわかり. された。Richard(2007)は,平均年齢23歳の健常な男女. にくく,塩味,酸味,苦味と誤判定したことが示されて. を対象に味覚を調査し,脂肪酸を添加した塩化ナトリウ. いる8)。さらに,うま味がわかる者は塩味,苦味がわか. ム(塩味),クエン酸(酸味),カフェイン(苦味)溶. ることが報告されている8)ことから,本研究においても. 液の閾値は非添加溶液に比し有意に高いことを示してい. 塩味や酸味,苦味の認知閾値が低いほど,うま味認知閾. る. 32). 。また,辛いものを好むほどうま味認知閾値が「非. 値が低くなる確率が有意に高かったといえる。. 低群」である確率が有意に高かった。Lawlessら33)は,辛. 本研究では高校1年生の女子においてうま味認知閾値. 味を好む者は辛味閾値が高く,辛味成分のマスキング効. には,だしの嗜好(天然だし,顆粒だしのどちらが美味. 果を報告している。閾値が高い者は酸味,苦味や辛味な. しく感じるか)の影響は認められず,親の和食嗜好や食. どの刺激の強い食品を好むとの報告. 34). もあり,本研究は. 品摂取量などの食経験の影響が確認された。一方,本研. 23(23).
(7) 美味技術学会誌. 第 17 巻 1 号(2018). 究の調査項目では男子におけるうま味認知閾値に影響を. 3). 及ぼす因子を導きだすことができなかった。先行研究に おいても,味覚の男女の相違について議論されているが,. 井奈波良一,岡田晃:女子の肥満と味覚閾値,民族 衛生,54(4),193-196,1988.. 4). 水沼俊美,金子真紀子,久野(永田)一恵,荒尾恵介,. 36-38). 堀尾拓之,久藤麻子,坂井堅太郎,真鍋祐之,久木. ないという報告 もあり一致した見解は得られていない。. 野憲司:女性の味覚感度は加齢で低下し,肥満では. 性差はないといった報告の例として,味覚の男女差は感. 酸味が低下する,肥満研究,4(4),25-29,1998.. 男女差があるといった報告. がある一方で,男女差は. 35). 受性の性差というよりもむしろ食行動の差であるという. 5). 35). 報告 がある。よって,今後はより詳しいだしの食経験 および食品摂取頻度の調査が必要であり,男子のうま味認. 学会誌,44(3),251-253,2011. 6). 知閾値に影響を及ぼす要因について検討する必要がある。 4.要約. 今中正美,道本千衣子:女子学生の味覚の変化につ いて,日本家政学会誌,50(10),1091-1096,1999.. 7). 熊本県内D高校1年生353名を対象に食材から抽出した. 神田知子,丸山智美:男子中学生のうま味感受性と だしの風味の評価との関連,栄養学雑誌,73(3),87-. だし(天然だし)と市販の風味調味料だし(顆粒だし) の嗜好型官能評価,5基本味味覚官能評価,食物摂取頻度. 篠原久枝:フランスの味覚教育の現状,日本調理科. 99,2015. 8). 川上育代,我如古菜月,池上由美,湯之上祐子,松. 調査,食生活に関する質問紙調査を実施した。その結果,. 添直隆,北野直子:女子大生における味覚感度の現. うま味の認知閾値低群は天然だしと顆粒だしの味の違い. 状と「だし」の嗜好性,栄養学雑誌,69(1),10-19,. を識別することが可能であることが示唆された。うま味. 2011.. 認知閾値に影響を及ぼす因子を検討するため,二項ロジ. 9). 神田知子,加藤雅子,田原彩,安藤真美,野口孝則,. スティック回帰分析を行った結果,女子においては,う. 高橋徹:小学生と親を対象とした煮干しだしと風味. ま味の認知閾値低群は,4基本味のうち甘味以外の基本味. 調味料だしに対するだしの好みとうま味の知覚と. (塩味,酸味,苦味)の閾値も低く,だしの食経験が豊. の関係,栄養学雑誌,67(3),99-106,2009.. 富であることやコレステロール摂取が少ないこと,辛味. 10) 真部真里子:食経験が嗜好に及ぼす影響―味噌の嗜. を好まないことといった食経験の影響が強いことが確認. 好調査から―,日本家政学会誌,58(2),81-89,2007.. された。一方,男子においては,甘味認知閾値と塩味認. 11) 坂本真里子,河野一世,熊谷まゆみ,赤野裕文,畑. 知閾値のみ,うま味認知閾値との有意な関連が確認され. 江敬子:水の硬度が煮出し汁の嗜好性と溶出成分に. た。本研究により男子と女子でうま味の認知閾値に影響. 及ぼす影響,日本調理科学会誌,40(6),427-434,. を与える要因に相違がある可能性が示唆された。今後は. 2007.. 男子のうま味認知閾値に影響を及ぼす因子について検討. 12) 松本仲子,加藤尚巳,甲田道子,菅原龍幸:こんぶ. する必要がある。. だし汁の成分と嗜好,日本家政学会誌,40(10),883-. 謝辞. 889,1989.. 本研究は美味技術学会2017年度研究助成を受けたもの. 13) 佐藤久美,牧田寛,村上和雄,海老塚広子,有田政. であり,記して謝意を表します。本研究を行うにあたり,. 信,花岡研一,長尾慶子:抽出条件を変えた昆布だし. ご協力いただきました熊本県熊本市の高等学校の先生方. 汁中のヒ素及びアミノ酸量の動態,日本調理科学会. に感謝申し上げます。本研究は熊本県立大学環境共生学. 誌,41(4),234-240,2008.. 部食健康科学科給食経営管理学研究室の松本結衣さんを. 14) 前川隆嗣,甘庶志帆乃,野村直孝,榎原周平,渡邊. はじめ研究室の学生の尽力による。. 敏明:削りぶしの抽出液におけるアミノ酸組成の比. 参考文献. 較検討,微量栄養素研究,23,93-98,2004.. 1) 2). 山口静子:食品の嗜好と味,日本食品工業学会誌,. 15) 柴田圭子,渡邉容子,安原安代:組み合わせ材料(か. 41(3),241-248,1994.. つお節,煮干し,昆布)による和風煮だし汁の呈味成. Overberg J, Hummel T, Krude H, Wiegand S:. 分と食味との関係,日本調理科学会誌,41(5),304-. Differences in taste sensitivity between obese. 312,2008.. adolescents,. 16) 財団法人ベターホーム協会:ベターホームのお料理. Archives of Disease in Childhood, 97(12), 1048-. 一年生改定3版,ベターホーム出版局(東京),174-. 1052,2012.. 175,2013.. and. non-obese. children. and. 24(24).
(8) 中嶋・小泉・北野・川上・中嶋・松添:高校生のだしの嗜好ならびに食経験がうま味認知閾値に及ぼす影響. 17) ( 社 )日本フードスペシャリスト協 会 編 : 三 訂 食 品. 門学科高校生の比較分析-,日本食生活学会誌,. の官能評価・鑑別演習,建帛社(東京),9,2014. 18) 奥田弘枝,田坂美央,由井明子,川染節江:食品の色. 26(1),33-40,2015. 27) 対馬栄輝著:SPSSで学ぶ医療系多変量データ解析,. 彩と味覚の関係-日本の20歳代の場合-,日本調理 科学会誌,35(1),2-9,2002.. 東京図書株式会社(東京),124,2008. 28) 第一出版編集部:日本人の食事摂取基準(2015年版). 19) Kobayashi S, Murakami K, Sasaki S, Okubo H,. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会報. Hirota N, Notsu A, Fukui M, Date C:Comparison of relative validity of food group intakes estimated. by. comprehensive. and. 告書,第一出版(東京),2009. 29) 佐々木敏:BDHQの過小過大申告:除外基準(主に研究. brief-type. 者向け)2010.. self-administered diet history questionnaires. http://www.ebnjapan.org/developer/pdf/1005097. against 16 d dietary records in Japanese adults,. .pdf(2017年9月30日アクセス可能). Public Health Nutr.,14(7),1200-1211,2011.. 30) 川上育代,我如古菜月,中嶋名菜,池上由美,湯之. 20) Kobayashi S, Honda S, Murakami K, Sasaki S,. 上裕子,松添直隆,北野直子:女子大生における味. Okubo H, Hirota N, Notsu A, Fukui M, Date C:. 覚感度と食物摂取状況ならびに食生活との関連,日. Both comprehensive and brief self-administered. 本食育学会誌,6(4),351-357,2012.. diet. history. questionnaires. satisfactorily. 31) Stein L,Cowat B,Beauchamp G: The development. rank nutrient intakes in Japanese adults,J. of salty taste acceptance is related to dietary. Epidemiol.,22(2),151-159,2012.. experience in human infants: a prospective. 21) Okuda M, Sasaki S, Bando N, Hashimoto M, Kunitsugu I, Sugiyama S, Terao J, Hobara T. Carotenoid, tocopherol,. and. fatty acid. study,Am J Clin Nutr,95(1),123−129,2012. 32) Mattes R, Effects of linoleic acid on sweet,. biomarkers and. sour, salty, and bitter taste thresholds and. dietary intake estimated by using a brief self-. intensity ratings of adults, Am J Physiol. administered diet history questionnaire for. Gastrointest Liver Physiol, 292(5),1243-1248,. older Japanese children and adolescents,J Nutr. 2007.. Sci Vitaminol,55,231-241,2009.. 33) Lawless, H, Rozin P,Shenker J: Effects of oral. 22) 高橋啓子,吉村幸雄,開元多恵,國井大輔,小松龍. capsaicin on gustatory, olfactory and irritant. 史,山本茂:栄養素および食品群別摂取量推定のた. sensations and flavor identification in humans. めの食品群をベースとした食物摂取頻度調査票の. who regularly or rarely consume chilli pepper,. 作成および妥当性,栄養学雑誌,59(5),221-232,. Chemical Senses, 10(4), 579-589,1985.. 2001.. 34) Glanville E, Kaplan A: Food preference and. 23) 今井佐恵子,西川純子,黒川通典,三宅基子,小谷. sensitivity of taste for bitter compounds,. 一子:だしの嗜好と子供の頃および現在の食習慣と の関係,J Rehabil Health Sci,8,9-14,2010.. Nature, 205, 851-853,1965. 35) 鈴木智子,得丸定子:中学生の味覚と食意識・食行. 24) 濱口郁枝,安達智子,大喜多祥子,福本タミ子,前. 動の関係性(第2報)-食意識と食行動の視点から-,. 田昭子,内田勇人,奥田豊子:大学生の食生活に対す る意識と行動の関係について,日本家政学会誌,. 日本家庭科教育学会誌,50(2),121-134,2007. 36) 二木栄子,井上照子:中学生の調理における調味指. 61(1),13-24,2010.. 導について(第3報)-男子のし好・味覚を中心に-,. 25) Larson N Fulkerson J, Story M, Neumark-Sztainer D:. Shared. associated predicted. meals with by. among better. family. young diet. meal. adults. are. quality. and. patterns. 日本家庭科教育学会誌,26(3),53-58,1983. 37) 土海一美,福井陽子,辻由紀子,中島滋,中村宗一 郎:小・中・高・大学生の味覚識別能力と食生活,. during. adolescence, Public Health Nutrition, 16(5),. 食生活調査,23(4),33-43,2003. 38) 三橋富子,戸田貞子,畑江敬子:高齢者の味覚感受. 883-893, 2012.. 性と食品嗜好,日本調理科学会誌,41(4),241-247,. 26) 荒川きよみ:高校生の食行動および食習慣からみる 「家庭基礎」の食に関する指導の課題-普通科と専. 25(25). 2008..
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