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JAXAにおける国内防災の取り組みについて

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Academic year: 2021

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(1)© 2021. RSSJ. Journal of The Remote Sensing Society of Japan. Vol. 41. No. 1 (2021) pp. 21-24. 事例紹介. JAXA における国内防災の取り組みについて 有安恵美子*1†・新井史也*1・中川宣隆*1・桐谷浩太郎*1 Support for Domestic Disaster Prevention by JAXA Emiko ARIYASU*1†, Fumiya ARAI*1, Nobutaka NAKAGAWA*1 and Kotaro KIRITANI*1 Abstract In recent years, large-scale natural disasters are occurring more frequently. Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA) is doing an experimental activity to validate the effectiveness of satellite data, mostly Advanced land Observing Satellite-2 (ALOS-2), in grasping the situation of disaster damage. In this paper, we will introduce JAXA’s cooperative activities with the ministries towards disaster prevention, satellite’s emergency observation products, “Disaster Prevention Interface,” and case study of large- and long-scale water-induced disaster that occurred on July 2020. Keywords : ALOS-2, disaster reduction, Disaster Prevention Interface, flood り決めを締結した。これにより防災指定行政機関のユーザ 1. は じ め に. に対し,災害発生時に ALOS-2 等による緊急観測の実施と 観測画像や災害情報の提供,平時には防災訓練での衛星プ. 近年,世界各地で大雨による洪水や干ばつなどの大規模. ロダクト等の提供などを推進している。この協定とは別. な自然災害が起こっている。我が国においても令和元年東. に,平成 29 年に国土交通省と個別に災害協定を締結して. 日本台風や令和 2 年 7 月豪雨など記憶に新しい。今後も甚. おり,国土交通省および地方整備局が防災業務での実活用. 大な被害をもたらす自然災害が日本各地で発生する可能性. と地方公共団体支援に利用可能とすることを目的としてい. が高いことから,宇宙航空研究開発機構(JAXA)では,衛. る。また,自治体においては,現在,7 県(新潟県,岐阜県,. 星データの災害状況把握の有効性を実証する活動を行って. 三重県,和歌山県,高知県,徳島県,山口県・山口大)と. いる。衛星としては,陸域観測技術衛星「だいち」 (ALOS). 個別の災害協定を継続し,こちらも同様に ALOS-2 等によ. の後継機となる 2014 年 5 月に打ち上げられた陸域観測技. る緊急観測の実施と観測画像や災害情報の提供や防災訓練. 術衛星 2 号「だいち 2 号」(ALOS-2)の観測データを主に. への衛星プロダクト等の提供を行っている(Fig. 1)。. 活用し,衛星データの災害状況把握の有効性を実証する活. 2. 2. 動を行っている。本稿は,国内防災における関連省庁との. 国内で災害が発生した場合,省庁や自治体の防災ユーザ. 防災利用実証実験の取り組みの他,10 月から運用開始に. は緊急観測を要請することが可能である。ユーザからの観. なった「防災インタフェースシステム」1)および令和 2 年. 測要請後,JAXA は,要請から衛星の通過タイミングまで. 7 月豪雨に災害における観測事例について紹介する。. の時間の他,観測計画の優先度や要請の重複有無の確認な. 緊急観測. ど総合的に判断を行った上で観測を実施する。 2. 防災利用実証実験の取り組み. 緊急観測を実施することになった場合,JAXA は,緊急 観測から 2 時間後を目途に「災害速報図」の提供を行う。. 2.1. 防災に関わる協定. 災害速報図とは,緊急観測画像と同じ観測条件(観測方. JAXA の地球観測衛星を用いた防災利用実証実験は,平. 向,ビーム区分など)で撮影された災害前の後方散乱強度. 成 18 年度に開催された「防災のための地球観測衛星等の. 画像を Red に,緊急観測画像(災害後の後方散乱強度画. 利用に関する検討会」で明確になった地球観測衛星に関わ. 像)を Green と Blue に割り当てた RGB カラー合成画像で. る防災ニーズに基づいて活動を開始した。これを皮切りに. ある(Fig. 3 左図) 。災害前画像との緊急観測画像(災害後. 平成 19 年に内閣府(防災)と JAXA 間で,災害発生時等の. 画像)の期間で地表面上に変化があった箇所は,後方散乱. 情報共有および災害における衛星画像利用提供に関する取. 強度の変化が起こるため,災害前に対し災害後の後方散乱. *1. †. (2020. 12. 25 受付,2021. 1. 14 改訂受理) 宇宙航空研究開発機構 〒101-8008 東京都千代田区神田駿河台 4-6 御茶ノ水ソラシティ 連絡著者. *1. †. ─ 21 ─. JAXA, Ochanomizu sola city, 4-6 Kandasurugadai, Chiyoda-ku, Tokyo 101-8008 Japan Corresponding author.

(2) JAXA における国内防災の取り組みについて. Fig. 2 Fig. 1. 2019 年徳島県における防災訓練の様子. 防災利用実証における協定の枠組み. 取り組みを行っており,リモートセンシングの理解と利用 の拡大に努めている。その他,県や地整の防災訓練におい 強度が低下した場合は赤色もしくは増加した場合は青色. ては,訓練内容や被害域を主催者側に確認し,訓練用のダ. (シアン)で表現される。そのため,災害による被害域だけ. ミープロダクトを作成し,実災害時に要請や利用でトラブ. でなく,経年変化による土地利用変化または植物や農作物. ルなく対応できるように支援を行っている(Fig. 2)。 2.4 ワーキンググループ. の季節変化も捉えることになる。防災ユーザは,それらの. 防災関連省庁や自治体との連携の他,防災関連研究機関. 変化の中から実際の災害域を解析・判読することになる。 なお,現在は実証実験期間中であり,JAXA から観測から. や大学と連携したワーキングクループ(WG)等を災害種. 5 時間後を目途に「被害区域図」の提供を実証実験の一環. 別に設置し,衛星画像を防災関連機関が実利用できる仕組. として行っている。被害区域図とは,災害速報図や対象地. み作りを進めている。火山 WG(事務局:気象庁)と地震. 域の災害情報や入手可能な光学衛星画像などを基に判読を. WG(事務局:国土地理院)はそれぞれ火山噴火予知連絡会. 行い,被害域の可能性のある箇所のみ選定したポリゴン. と地震予知連絡会の衛星画像解析ワーキンググループとし. データである。これらの衛星プロダクトは, 「防災インタ. て編成され,火山噴火や地震発生時の状況把握に加え,活. フェースシステム」を通して防災ユーザに提供している。. 火山監視等での衛星利用の定着化を推進する。土砂 WG. 災害速報図は,ラスターデータのため,座標情報を付与し. および水害 WG は,国土交通省との共催で今後の土砂災害. た GeoTiff や KMZ 形式で提供しているが,その他,災害速. や洪水災害時におけるマニュアル整備や衛星解析の精度技. 報図に道路や河川,重要施設の情報などを重ねた GeoPDF. 術などを議論している。その他,大規模災害衛星画像支援. や JPG も作成し,すぐに印刷可能な状態で提供している。. チーム(大規模チーム)は,内閣府との共催で大規模チー. 被害区域図は,Shapefile や KML のベクター形式で提供し. ムに委嘱頂いた大学や研究機関のメンバーに大規模災害が. ている。また,実ファイル形式以外にも,WMS や WFS と. 発生した時に JAXA だけで解析の手が回らない国際災害. いったサービスでの提供を行っている。. チャーター画像の解析支援をお願いし,昨年の令和元年東. 緊急観測後,JAXA は,緊急観測要請者に対しては,衛 星プロダクト等の利用方法についてフィードバックをお願. 日本台風や今年の令和 2 年 7 月豪雨等で画像解析の支援を 頂いた。. いしている。このフィードバックを受けて防災における新 たな衛星開発の参考情報あるいは解析技術の向上,災害に. 3. 防災インタフェースシステム. 関する課題解決に利用していきたいと考えている。 2.3. 研修等. JAXA では,地球観測衛星を用いた防災利用実証実験に. JAXA は,防災利用ユーザのリモートセンシングの理解. おける情報共有のため利用していた「だいち防災 WEB. 向上を目的に防災機関に光学や SAR の基礎講座や応用講. ポータル」の運用を 9 月末で停止し,10 月から「防災イン. 座を設け,年に数回程度無償で研修を行っている。内容は. タフェースシステム(防災 IF)」の運用を開始した。防災. 座学から QGIS などのフリー GIS ソフトを用いながら光学. IF は,防災・災害対応のため防災ユーザから緊急観測要求. 画像あるいは SAR 画像を用いた簡易な画像処理を実践し. の受付およびユーザへの衛星プロダクトの提供をワンス. てもらっている。その他,TEC-FORCE 研修や省庁で主催. トップサービスで実現したシステムである。防災関連ユー. する勉強会でもリモセンの基礎の紹介もしくは JAXA に. ザにアカウントを発行し,標準プロダクト画像および標準. おける防災利用実証実験について紹介の場を設けてもらう. プロダクト画像を基に作成される防災対応用プロダクトの. ─ 22 ─.

(3) 日本リモートセンシング学会誌. Vol. 41. No. 1 (2021). 左)災害速報図(R: 2018/05/30 G&B: 2020/07/08) 右)国土交通省(北陸地方整備局) Fig. 3. 国土交通省における土砂移動に係るヘリ調査結果の一部抜粋(長野県伊那市). 左)災害速報図(R: 2020/06/08 G&B: 2020/07/06) 右)林野庁(九州森林管理局)によるヘリ調査結果(撮影:2020/07/08) Fig. 4. 林野庁における土砂移動に係るヘリ調査結果の一部抜粋(熊本県芦北町). ダウンロードが可能となっている。また,GIS ソフトを保. 野庁から要請を受け,7 月初旬は九州地方,7 月中旬は中部. 有しないユーザがいることを考慮し,衛星プロダクトを. 地方,7 月下旬は東北地方を観測し,計 10 回の緊急観測を. WebGIS で閲覧できる機能を用意している。その他,今後. 実施した(Table 1)。その他,緊急観測画像を用いて土砂崩. 打ち上げ予定の ALOS-3 や ALOS-4 においても,災害時に. れの状況を把握の依頼を受け,干渉解析を行うなど状況把. おいて緊急観測した場合,このシステムを通して衛星プロ. 握の支援を行った。 7 月 6 日に「大規模災害画像解析支援チーム」のメンバー. ダクト等を提供する予定である。. に解析の協力を依頼し,同日センチネルアジアを発動と同 4. 令和 2 年 7 月豪雨の対応. 時に国際災害チャータへエスカレーションを行った。その 結果,海外の宇宙機関から新規撮影 56 シーン,過去画像. 令和 2 年 7 月豪雨は,7 月 3 日から 7 月 31 日にかけて日. 156 シーンの計 212 シーンを提供いただいた。これらの中. 本の広範囲において長期間にわたる大雨が発生し,西日本. から,大規模チームが地図化また画像解析を行い,これら. から東日本にかけて多くの災害が発生した。JAXA は,7. の情報を国土交通省などに提供を行った。. 月 4 日から 29 日の期間で国土交通省および農林水産省林 ─ 23 ─. 今回の豪雨では,長期間における大雨が続いた。ALOS-.

(4) JAXA における国内防災の取り組みについて. Table 1 令和 2 年 7 月豪雨における緊急観測リスト. 2 衛星は SAR センサーの特性である雲を透過し,地表面の. で,効率的に調査を実施することができたとの報告を頂い. 状況を把握できるおかげで,夜間や天候の悪い観測時にお. た(Fig. 4) 。. いても早期状況把握に貢献できた。国土交通省および地方 整備局からの報告によると,広範囲にわたって被災状況を. 5. ま. と. め. 調査する必要があることから,SAR 判読結果を活用して防 災ヘリの飛行ルートを選定し,調査の効率化が図れたとの. 日本では毎年のように自然災害が発生する。JAXA は,. ことだった(Fig. 3) 。また,国土交通省統合災害情報シス. ALOS-2 における防災利用実証を省庁および自治体との災. テム(DiMAPS)と被害区域図を自動送信していることか. 害協定を通し,災害時の早期状況把握やリモートセンシン. ら,DiMAPS を通して防災ヘリ調査のルート検討が効率的. グ分野の利用拡大に貢献できるように取り組んできた。今. に実施できたとの報告を頂いた。林野庁からの報告による. 後も,ALOS-3 や ALOS-4 の打ち上げ予定が計画されてい. と,大雨の影響による山崩れの把握のため緊急観測要請を. るため,更なる防災分野における衛星の利用および理解の. 行った。林野庁から九州および中部森林管理局に衛星プロ. 拡大に繋がるように努めていきたい。. ダクトを共有され,山地災害の発生箇所の推定やヘリコプ 引用文献. ター調査の飛行計画に活用するとともに,地方公共団体に も情報を共有した。その後,山地災害の被害状況を確認す るために各森林管理局と被災県が合同で実施したヘリコプ ター調査においても,JAXA から得た情報を活用すること. 1)防災インタフェースシステム,https : //daichi-bousai.dpif. jaxa.jp/static/html/pre_top.html(2020. 12. 22). 〔著者紹介〕 ●有安 恵美子(アリヤス エミコ) 所属:宇宙航空研究開発機構 衛星利用運用センター E-mail:[email protected]. ●中川 宣隆(ナカガワ ノブタカ) 所属:宇宙航空研究開発機構 衛星利用運用センター E-mail:[email protected]. ●新井. ●桐谷. 史也(アライ フミヤ) 所属:宇宙航空研究開発機構 衛星利用運用センター E-mail:[email protected]. 浩太郎(キリタニ コウタロウ) 所属:宇宙航空研究開発機構 衛星利用運用センター E-mail:[email protected]. ─ 24 ─.

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