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愛媛県内の森林の浸透能と森林の整備

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愛媛県内の森林の浸透能と森林の整備

河 野 修 一 江 﨑 次 夫 目 次 Ⅰ. はじめに Ⅱ. 調査方法 1. 浸透能調査 2. 土壌,相対照度,形状比,土壌硬度, 土壌深及び土砂移動量(侵食量)の調査 Ⅲ. 測定結果及び考察 1. 土壌型による浸透能 2. 林種別の浸透能 3. 森林内の土砂移動量 4. 森林の整備率 Ⅳ. まとめ Ⅴ. おわりに 要旨 近年,愛媛県内に天然生広葉樹林と竹林を含めた放置森林が増大している。 一方で森林に及ぼす外的因子の降雨量や降雨強度は,地球温暖化の影響により 増加傾向にある。そのため,愛媛県においても森林を発生源とする災害が増大 傾向にある。災害を減らす,あるいはこれ以上増加させないためには,森林の 持つ土砂流出及び山地崩壊防止機能などの,いわゆる公益的機能を最大限に発 揮させることが求められる。そのためには当然のことながら森林整備が必要で ある。その森林整備の具体的な数値目標となりうるのが土壌浸透能であると考 え,県内で森林を有する19市町,228箇所で浸透能を測定した。その結果,森 ⎧ ⎜ ⎩ 河野:愛媛大学農学部技術室技術長 ⎫ ⎜ ⎭ 江﨑:愛媛大学名誉教授

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林整備を実施したスギ・ヒノキ人工林の浸透能の最大値は230mm/ hr,放置森 林の浸透能の最小値は60mm/ hr であり,極端な相違が認められた。天然生広 葉樹林と竹林も同様な傾向であった。防災・減災,そして,森林資源の有効活 用という視点から放置森林の早急な整備の必要性を指摘した。 キーワード:浸透能,放置森林,森林整備,人工林,天然生広葉樹林 Ⅰ. はじめに 愛媛県は県土面積567, 623ha の内,森林が401, 047ha を占め,森林率が 70. 7%と高く,民有林の人工林率も全国平均の約46%を大きく上回る61. 4% で,全国第 6 位である。このことから愛媛県は森林県といわれている。県内で は新居浜や西条を中心とした地域を東予地方と呼び,スギ林とヒノキ林が多 い。松山を中心とした地域を中予地方と呼び,スギ林が多い。そして,宇和島 を中心とした地域を南予地方と呼び,ヒノキ林と天然生広葉樹林が多い。 平成29(2017)年度実績でヒノキの素材生産量は全国 1 位であり,スギの素 材生産量は全国 8 位である。しかし,昭和39(1964)年に実施された木材の全 面自由化以降,木材価格の低迷が続き,手入れが10年間以上行われていない森 林,いわゆる放置森林が増大している。その面積は,県内針葉樹人工林面積の 約30%の63, 000ha におよぶと推定されている。筆者らは,以前より森林の手 入れ不足による,土砂流出防止及び水源かん養機能などの森林の持つ公益的機 能の低下を危惧し,森林整備の重要性を指摘してきた。そこで,主に平成に入 ってから県内20市町の内,森林を有しない伊予郡松前町を除く19の市町で土壌 浸透能調査と,これに関連する相対照度,形状比,土壌硬度,土壌深及び土砂 移動量(侵食量)の調査を行ってきている。その結果,スギ・ヒノキ人工林の みならず,天然生の広葉樹林や竹林でも手入れ不足による著しい浸透能の低下 が認められると共に,表面侵食が発生している箇所が随所で確認され,土砂移 動量も一般的な値よりも大きな値であった。このことから,このままの状態が 続けば,大きな災害を誘発する可能性を指摘する。 愛媛県では,平成16(2004)年 9 月の台風21号などによって東予地方を中心 に被害額が530億円を超える大きな災害が発生している(愛媛大学2005)。平成 30(2018)年の 7 月の西日本豪雨では,今治市の島嶼部,松山市,大洲市,宇

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和島市吉田町及び西予市野村町など,県内各地で大きな災害が発生し,33名も の尊い人命が失われた。今も復旧は半ば途中であることから,この教訓を活か した防災・減災を早急に考える必要がある。 本論では,愛媛県内の市町別に実施した浸透能の調査結果などを基に,早急 な森林整備の必要性について述べる。 Ⅱ. 調査方法 調査は県内の市町の内,森林を有しない松前町を除く19市町(図 1 )で実施 した。浸透能の測定は昭和55(1980)年から現在まで実施しているが,本報告 では,主に平成20(2008)年から平成30(2018)年までの測定値を用いた。な 図 1 愛媛県内の市町の位置

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お,測定地点付近では,適宜,土壌,相対照度,形状比,土壌硬度,土壌深及 び土砂移動量(土砂侵食量)の調査も実施した。 1. 浸透能調査 1)対象林分,測定場所,測定値の取り扱い 市町別の測定箇所は,原則として 1 市町村当たりスギ・ヒノキ人工林が 6 箇 所,天然生広葉樹林が 4 箇所及び竹林が 2 箇所で,全市町村の合計が228箇所 である。1 箇所内の測定地点も原則として斜面上部,中央部及び下部で10地点 ずつの計30地点とし,その平均値をその林分(箇所)の浸透能とした。測定地 点の総数は,6, 840である。スギ・ヒノキ人工林については,原則としてその 面積が県内では一番多い 8 ~12齢級林分を対象にした。天然生の広葉樹林につ いては,目視で40年~50年生の林分を対象とした。竹林は10年生前後の林分を 対象にした。測定は,市町の森林地帯の中心部やその周辺で実施した。林内に 写真 1 整備された森林(松野町) 写真 2 未整備の森林(松山市) 写真 3 ヒノキ林内の侵食状況(松山市) 写真 4 広葉樹林内の侵食状況(東温市)

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入り,主に森林整備が実施されている箇所(写真 1 )と,皆無の箇所(写真 2, 3, 4)で実施した。両者の箇所は同じような地形の場所を選んだ。なお,極 端に整備の進んでいる箇所及び遅れている箇所は対象外とした。また,県内 6 箇所の史跡地の天然生広葉樹林内では,樹木が石垣を孕ませたり,埋蔵遺跡の 破壊や雨滴及び表面侵食が発生している箇所が認められるため,同様の方法で 浸透能などの測定を実施した。 測定は本来,林種別,基岩別,土壌型別,林齢別,方位別及び斜面の位置別 (上部,中央部及び下部)に実施すべきであるため,浸透能の測定開始から当 初 5 年間は,上述した項目別に実施していた。しかし,それらよりも土壌型 (斜面の位置)と森林の取り扱い,具体的には除間伐による下層植生の有無が 大きく浸透能に関与していることが判明した。そこでその後は,できる限り多 くの場所で測定し,数多くのデータを収集することに主眼をおき,全体を包括 して取り扱っている。今回は,土壌型と林種別にデータを再整理して報告す る。 2)測定方法 浸透能の測定には,直径108mm で高さ200mm の塩ビパイプ製の円筒を活 用した簡易浸透器を用いた(写真 5 )。塩ビパイプを約2cm,土壌内に差し込 み,これに920cc(100mm)の水を一気に流し込んで,土壌を飽和させる。次 に,再度920cc の水を一気に流し込んで,その水が土壌にすべて浸透するまで の時間を計測する(林野庁1981)(写真 6 )。この時間を基に 1 時間当たりの浸 透量を計算で求める。求めたこの値を換算率100で除すれば,1 時間当たりの真 の浸透量が求められる。換算率100で除する理由は,塩ビパイプの断面積が小 さいため,最初に土壌を飽和させるために水を注入しても,土壌内で側方に入 っていくためと,次の測定の際の注入でも同様に側方に入って行くため,浸透 量が過大な値を示すことになる。そこで,1m ×1m の範囲内に 3 時間人工的 に雨を降らせて土壌を飽和状態にした後,その中心に塩ビパイプの浸透器を置 いて,920cc の水を注入して,その浸透時間を計測した。この方法では場所を 変えて20回計測を行った。その結果,パイプの周辺を十分飽和状態にした場合 の浸透量は,今回の測定方法による浸透能の99. 2分の 1 から98. 8分の 1 であっ た。そこで,換算率を便宜上100とした。この測定方法による測定値は,我が 国で一般的に用いられている村井・岩崎(1975)の測定値とも整合性がとれて

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いるものと判断している。 2. 土壌,相対照度,形状比,土壌硬度,土壌深及び土砂移動量(侵食量)の調査 浸透能以外の項目の調査方法は次のとおりである。 1) 土壌調査は一般的な森林土壌調査方法に基づいて実施した。 2) 林内の相対照度 照度は,コニカミノルタ製の照度計 2 台を用いて裸地と林内で同時に 測定した。これを基に相対照度(%)((林床照度/裸地の照度)× 100)を求めた。 3) 立木の形状比 立木の形状比(樹高/胸高直径)は,胸高直径を輪尺で,樹高をブル ーメライスで測定し求めた。 4) 土壌硬度 山中式土壌硬度計を用いて測定した。 5) 土壌深 検土杖を用いて測定した。 6) 土砂移動量(土壌侵食量) 測定は南予地域を流れる一級河川四万十川水系の広見川の支流で,鬼 北町を南西から東に流下している奈良川流域と,宇和島市三間を北西 から南東に流下する三間川流域で実施した。傾斜角が35°~40°,約50 年生のスギ放置林及び整備林内で平成22(2010)年 6 月から11月まで の,梅雨と台風シーズンの含む 6 ヶ月間,土砂移動量を測定した。そ 写真 5 簡易浸透器 写真 6 土壌浸透能の測定(西条市)

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の方法は,図 2 に示すように林内に設置した2m ×2m のプロット内 に,10cm 間隔で測定用の金属製の杭を打ち込み,それを基に,侵食 深を求め,これから土砂の移動量を算出した。 Ⅲ. 測定結果及び考察 1. 土壌型による浸透能 斜面の部位と土壌型は,ほぼ一致していることは,既に述べた。愛媛県内の 森林土壌は,黒ボク土や黄色土の分布も認められるが,その約70%は褐色森林 土であるため,ここでは,まず,それらの分布場所での主な土壌型別の浸透能 結果について述べる。なお,土壌調査は,四国中央市,西条市,今治市,松山 市,東温市,伊予市,砥部町,久万高原町,内子町,宇和島市,鬼北町及び松 野町の12市町の80箇所で実施した。 1)乾性褐色森林土 ① BA型土壌 高木はツブラジイ(コジイ)とアラカシ(40~50年生),低木はヒサカキで ある。A 層は10cm~20cm 程度と薄く,B 層は20cm~30cm である。土壌型は 乾性褐色森林土の BA型である(写真 7 )。断面の土壌硬度は10mm~25mm と 図 2 土壌浸食深の測定方法

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やや硬く,根系の発達状況は良好とは言い難い(図 3 )。この場所は手入れが 実施されておらず,浸透能は30mm/ hr と小さな値を示した(該当する土壌型 の平均値は45mm/ hr)。林種転換は難しく,現在の天然生広葉樹林が望まし い。 2)弱乾性褐色森林土 ① BC型土壌 ヒノキ60年生林分,林床植生ヒサカキ,シロダモで下草はなし,A 層は 20cm~30cm 程度であり,B 層は約25cm である。土壌型は弱乾性褐色森林土 の BC型である(写真 8 )。断面の土壌硬度は10mm~25mm とやや硬く,根系 の発達状況は良好とは言い難い(図 4 )。この場所も放置林であり,浸透能は 80mm/ hrであった(該当する土壌型の平均値は85mm/ hr)。ヒノキが生育可 能な土壌であるが,生育状態が良好であるとは言い難い。 3)適潤性褐色森林土 ① BD(d)型土壌 土壌型はやや乾いた適潤性褐色森林土の BD(d)型である(写真 9 )。断面 の土壌硬度は8mm~20mm と比較的柔らかく,根系の発達状況は良好である (図 5 )。このことは浸透能が高いことを意味する。この場所は森林整備が実施 されており,浸透能は150mm/ hr であった(該当する土壌型の平均値は 145mm/hr)。ヒノキは旺盛な成長を示している。 ② BD型土壌(崩積土) スギ70~80年生林分,下層植生はシロダモ,チャノキ,ヤブニッケイ,アラ カシである。A 層は30cm とやや厚く,B 層は約30cm である。土壌型は適潤 性 褐 色 森 林 土 の BD型(崩 積 土)で あ る(写 真 10)。断 面 の 土 壌 硬 度 は 5mm~20mm と柔らかく,根系の発達状況は良好である(図 6 )。このことは 浸 透 能 が 高 い こ と を 意 味 す る。森 林 整 備 も 実 施 さ れ て お り,浸 透 能 は 200mm/ hrであった(該当する土壌型の平均値は205mm/ hr)。スギは旺盛な 成長を示している。

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写真 7 乾性褐色森林土 0 10 20 30 40 50 60 0 20 40 60 80 土色 7.5YR 3/2 7.5YR 5/3 7.5YR 7/3 A0層 A1層 A2層 B層 cm cm 図 3 土壌断面図 写真 8 弱乾性褐色森林土 0 10 20 30 40 50 60 0 20 40 60 80 土色 10YR 3/1 10YR 3/2 10YR 3/3 10YR 3/4 A0層 A1層 A2層 B2層 B1層 cm cm 図 4 土壌断面図 写真 9 適潤性褐色森林土 0 10 20 30 40 50 60 0 20 40 60 80 土色 10YR 3/2 10YR 4/4 10YR 3/4 10YR 5/4 A0層 A1層 A2層 B2層 B1層 cm cm 図 5 土壌断面図

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4)まとめ 土壌型による浸透能は,乾性褐色森林土,弱乾性褐色森林土及び適潤性褐色 森林土の順に大きくなる傾向が認められた。この傾向は村井,岩崎(1975)の 結果とほぼ一致している。なお,土壌深で最も深い値を示したのは,松山市の 基岩が花崗岩地帯と,久万高原町と東温市の基岩が安山岩地帯の100cm であ った。 2. 林種別の浸透能 浸透能測定結果について,その内容を林種別に詳しく述べることにする。 1)スギ・ヒノキ人工林 スギ・ヒノキ人工林における浸透能測定結果を市町別に図 7 に示した。特徴 的な市町の結果は,次のとおりである。 ⅰ)久万高原町 林業の町として全国的に有名な久万高原町は,県内の市町の中では最大の 52, 477haの森林(県内森林面積の13%)を有している。民有林が森林面積の 約82%を占め,その人工林率は約85%と非常に高い。林業労働者数は平成30年 度実績で194名と県内では一番多く,県内林業労働者総数998名の約20%を占め ている。この町の森林が整備された箇所の浸透能の最大値は230mm/ hr(平均 200mm/ hr)と高いが,未整備の森林の最小値は100mm/ hr(平均123mm/ hr) と大きな開きが認められた。 写真10 適潤性褐色森林土 0 10 20 30 40 50 60 0 20 40 60 80 土色 7.5YR 3/1 7.5YR 4/2 7.5YR 4/3 7.5YR 5/2 A0層 A1層 A2層 B1層 B2層 cm cm 図 6 土壌断面図

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ⅱ)上島町 一方,県内で1, 483ha と最も森林が少なく,今治市と接する島嶼部の上島町 は,県内で最低の森林率約44%の松山市に次いで,森林率が約49%と低かっ た。この町の人工林の面積は50ha 以下と少なく,未整備地の浸透能の最小値 図7-1 愛媛県内の未整備地の浸透能(スギ・ヒノキ林) 図7-2 愛媛県内の整備地の浸透能(スギ・ヒノキ林) 手入れされた森林:昭和55(1980)年~平成19(2007)年に実施した県内19市 町における浸透能の最大値

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は60mm(平均93mm/ hr),整備地の最大値は180mm/ hr(平均163mm/ hr) であった。この地域は,基岩が花崗岩で年平均降雨量が1, 100mm 程度と県内 では一番少ないところであり,BC型土壌から BD(d)型土壌の分布が多いた めではないかと考えている。 ⅲ)伊方町 整備地の最大値で最も小さな値を示したのは,原発の町として全国的に有名 な佐多岬半島に位置する伊方町で170mm/ hr(平均162mm/ hr)であった。こ の町の森林面積は4, 743ha,森林率は約51%であった。この町の整備地の最大 浸透能が県内で最も小さかったのは,陸地のほとんどが山地からなり,急傾斜 をなして海岸にせまり,崖の多い半島特有の地形が関与し,BC型土壌から BD (d)型土壌の分布が多いためではないかと考えている。 ⅳ)松山市 平成 6(1994)年の異常渇水で松山市の水瓶の石手川ダムが底をつき,全国 的に有名となった松山市の未整備地の浸透能の最小値は85mmhr(平均 110mm/ hr),整備地の最高値は230mm/ hr(平均203mm/ hr)であった。石手 川ダムの流域面積は,松山市の森林面積の約58%を占める7, 260ha であるが, ここでもスギ,ヒノキの放置林が目立つ。 ⅴ)今治市 愛媛県の北部に位置する今治市には,大三島と笠松山の大規模山火事跡地が あるが,これらの場所での浸透能は,植生の回復に伴って順調に上昇傾向であ り,市全体としての浸透能は未整備地の最小値60mm/ hr(平均100mm/ hr) から整備地の最大値200mm/ hr(平均182mm/ hr)であった。 ⅵ)八幡浜市 ミカンの産地として全国的に有名な八幡浜市は,果樹園が多いため,森林率 は 53% と 県 内 で は 低 い が,浸 透 能 は 未 整 備 地 の 最 小 値 80mm/ hr(平 均 106mm/ hr)から整備地の最大値200mm/ hr(平均180mm/ hr)であった。 ⅶ)鬼北町 鬼北町は町名に「鬼」がつくことで全国的に有名である。この町の森林率は 85%で,林業労働者数が平成30年度実績で114名と久万高原町の194名に次いで 多く,ヒノキ材の生産が多いことで知られている。町全体としての浸透能は未 整備地の最小値80mm/ hr(平均102mm/ hr)から整備地の最大値180mm/ hr (平均168mm/ hr)であった。

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ⅷ)西予市 森林率約75%の西予市は「宇和ヒノキ」の産地として全国的に知られてい る。この「宇和ヒノキ」は令和 2(2020)年の東京五輪・パラリンピック選手 村プラザのスポンサーブースに使用されることが決定している。この西予市の 浸透能は未整備地の最小値60mm/ hr(平均103mm/ hr)から整備地の最大値 200mm/ hr(平均180mm/ hr)であった。林業労働者数は93名で,久万高原町 の194名,鬼北町の114名に次いで県内では 3 番目に多い。 ⅸ)愛南町 県の最南端に位置する愛南町は,森林率が77%と高いが,天然生広葉樹林の 割合が50%以上を占めていることもあり,町全体としての浸透能は未整備地の 最小値80mm/ hr(平均108mm/ hr)から整備地の最大値190mm/ hr(平均 173mm/ hr)であった。 市町別での整備地での最大値には,伊方町の170mm/ hr から久万高原町, 松 山 市,東 温 市,西 条 市,新 居 浜 市 及 び 四 国 中 央 市 の 230mm/hr ま で と 60mm/ hrの差が認められた。未整備の最小値には,西予市,宇和島市,伊予 市,今治市,四国中央市及び上島町の60mm/ hr から東温市の120mm/ hr まで と60mm/ hr の差が求められた。久万高原町,西予市,宇和島市,伊予市,松 山市,今治市,西条市,新居浜市及び四国中央市などの比較的林業が盛んな市 町では,整備地の最大値と未整備地の最小値との差が130mm/ hr 以上あった。 同様に最大値と最小値の開きが100mm/ hr から130mm/ hr であったのは,八 幡浜市,東温市,愛南町,松野町,鬼北町,伊方町,内子町,砥部町及び上島 町であった。また,同様に100mm/ hr 以下の市町は大洲市のみで95mm/ hr で あった。 スギとヒノキの樹種別では,スギ林がヒノキ林に比べて,19市町の平均で未 整備地において30mm/ hr,整備地において40mm/ hr,高い値を示した。これ には,スギは水分が豊富で肥沃な土地を好むのに対し,ヒノキはスギよりもや や乾燥した土地を好むという樹種特性と生育場所(斜面の上部,中央部及び下 部)の土壌型が大きく関与しているものと考えられる。 県内の放置森林面積は,前述したように針葉樹人工林面積の約30%の 63, 000haにおよぶと推定されている。しかし,県内各地を回って実際に林内 に入って踏査及び調査を実施してみると,この数字をかなり上回っているので はないかという印象であった。加えて,これまでの調査結果から,放置林では

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浸透能が極端に低下していることが明確となった。このことを裏付けるよう に,このような箇所の林内は非常に暗く,林床には下草や落葉落枝は見あたら ず,降雨のたびに,雨滴によって土壌表面が叩かれ,雨滴侵食の次の段階であ る表面侵食に進行している箇所が多かった。また,相対照度は通常に手入れが された箇所の30~40%に比べて,その値は 1 ~20%程度と著しく小さな値を示 した。形状比は,70~120程度であり,適期に手入れをした森林内の形状比 65~70に比べると,著しく大きな値を示していた。この値が大きくなると風や 雪に対する抵抗力が弱くなり,立木の幹折れや倒木の恐れの確率が高くなるこ とは,周知のとおりである(写真11,12)。 2)天然生の広葉樹林 天然生広葉樹林における浸透能測定結果を市町別に図 8 に示した。天然生広 葉樹林(愛媛県内の天然生の広葉樹林は大部分が里山である)については,手 入れを実施しなくても良いのでないか,という意見もあるが,これは大きな誤 りである(写真13,14)。天然生広葉樹林の浸透能は,市町別で大きな相違は 認 め ら れ な か っ た。す べ て の 市 町 で 未 整 備 地 の 30mm/ hr か ら 整 備 地 の 200mm/ hrであった。整備地の最大値は100mm/ hr 程度を示す市町が一番多 かった。なお,整備地で最大値の200mm/ hr を示したのは,内子町の小田深 山であった。 天然生広葉樹林には,昭和30年代頃までは,炭焼きの原料,各家庭用の薪や カヤ,水田や畑地の有機質肥料,農機具の材料や稲木及び山野草などを,周辺 の里山の広葉樹林から採取するために,人々が里山に積極的にかかわってき 写真11 スギ林の倒壊(久万高原町) 写真12 スギの雪による幹折れ(砥部町)

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た。つまり,人々と里山のかかわりが深く,里山には常に人々の手が入り,そ の結果として里山は整備されてきた経緯がある。しかし,昭和40年代以降から はプロパンガス,代替燃料の発達という燃料革命があった。加えて化学肥料な どの普及,また,農機具の機械化が急速に進展してきた。そのため,人々は里 図8-1 愛媛県内の未整備地の浸透能(天然林) 図8-2 愛媛県内の整備地の浸透能(天然林) 手入れされた森林:昭和55(1980)年~平成19(2007)年に実施した県内19市 町における浸透能の最大値

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山から日常の生活に必要な物資を採取する必要性がなくなってきた。さらに, シイタケ価格の下落により,クヌギのシイタケ原木の需要も減少した。里山と 人々のかかわりが希薄となり,その状態が今日まで続いている。このことから 県内の天然生林面積141, 000ha の大部分は放置林であろうと判断している。 加えて,天然生林で地味の良い場所は,愛媛県では明治時代以降,なかでも 戦後の昭和20年代から30年代初めの拡大造林思想に伴って,スギ,ヒノキやク ヌギなどの人工林に林種転換され,今日に至っている経緯がある。従って,現 在の天然生広葉樹林では手入れ不足も加わって,浸透能は相対的に小さな値を 示していると判断している。 また,天然生林落葉広葉樹のコナラ林やクヌギ林にはアラカシ,ヤブツバキ やカゴノキなどの常緑広葉樹が目立つことから,手入れ不足により,コナラ林 などから常緑広葉樹林への遷移が進んでいるものと考えられる。 3)竹林 竹林における浸透能測定結果を市町別に図 9 に示した。江戸時代に中国から 移入されたモウソウチク林は,愛媛県でもタケノコ価格の低迷で,放置竹林の 中心的な存在である。これに加えてマダケ,ハチクなども愛媛県においては猛 スピードで放置竹林化し,その面積が増大している(写真15,16)。前述した 石手川ダム集水域の約30%は放置竹林である。統計によれば県内の竹林面積は 4, 425haとなっているが,踏査から実際はこの数値をかなり上回るのではと判 断している。放置竹林の密度は ha 当たり 1 万本を超えている。放置竹林にお ける浸透能は30mm~50mm/ hr 程度,タケノコ生産を行っている整備竹林は 写真13 天然生広葉樹林の崩壊(松山市) 写真14 天然生広葉樹林の崩壊(西条市)

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100mm/ hrを超える箇所もあった。この竹林の浸透能も市町で大きな相違は 認められなかった。放置林内の落葉や落枝は幾十にも重なり合って腐り難くな っており,少しの降雨でも表面流が発生するような状況にある。放置竹林の下 部に住宅地などがある場合には,しっかりとした対策を取りながら,早急に竹 林の整備を実施することが防災,減災につながる。 図 9 愛媛県内の浸透能(竹林) 手入れされた竹林:昭和55(1980)年~平成19(2007)年に実施した県内19市町 における浸透能の最大値 写真15 放置モウソウチク林(伊予市) 写真16 放置マダケ林(大洲市)

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4)史跡地の天然生広葉樹林 県内史跡地の天然生広葉樹林(樹叢)の浸透能を図10に,相対照度を図11に 示した。宇和島城は宇和島市に,大洲城は大洲市に,松山城は松山市に,岩屋 寺は久万高原町に,久谷ふれあい林は砥部町に,旧等妙寺は鬼北町に,河後森 城は松野町に,永納山は西条市に位置している。この内,岩屋寺と久谷ふれあ い林は,スギとヒノキの人工林である。全体的に浸透能,相対照度が低い。 た,逆に図示はしていないが,形状比は高かった。この大きな原因は,ほとん ど手入れが実施されていないためである。史跡の保存,活用,そして,防災, 減災という視点から早急な対策を講ずることが求められる。 この内で,松山市の中心部に位置し,標高132m で面積が約50ha と一番大き な史跡松山城の樹叢について少し述べる。この樹叢には太平洋戦争末期に焼夷 弾が落とされ,一部が焼失した。また,戦後に燃料として盗伐されたため,樹 叢は荒廃していたことが当時の写真から読み取れる。その後,時間を経て,昭 和24(1949)年に県指定の天然記念物になり,現在の樹叢となった経緯があ る。昭和30年代にはマツクイムシの被害によりアカマツが伐採された。そし て,平成の時代に一部の登城道周辺で間伐が実施された以外,手入れは実施さ れていない。 図10 史跡地の浸透能 手入れされた森林:昭和55(1980)年~平成19(2007)年に実施した県 内19市町における浸透能の最大値

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現在,樹叢内では,雨滴侵食や表面侵食の痕跡も認められ,降雨の際には実 際にその状況を確認することができる(写真17, 18, 19, 20)。時間当たりの浸透 能が平均で80mm 前後であるので,これ以上の降雨であれば当然のことなが ら表面流が発生することになる。相対照度は 1 ~10%程度と,樹叢内は非常に 暗くなっている。形状比は80~100である。このため,林内では,至る所に倒 木や小崩壊が発生しており,早急な対策,すなわち森林整備を実施しなければ 大きな崩壊につながる可能性がある。樹叢内には,登り石垣などをはじめとし て,貴重な遺跡や文化財が多く残っており,これらが破壊される可能性があ る。樹叢斜面の下部の周囲には住宅地や商業施設などが密集している。特に樹 叢の南側斜面の下部には,愛媛県庁,裁判所や博物館などが集中しており,崩 壊が発生すれば大きな災害となり,愛媛県全体がマヒすることにつながり,県 民が日常生活において大きな影響を受けることになる。 このように今,まさに愛媛県内の史跡を取り巻く樹叢は大きな問題を抱えて いるといえる。早急に間伐などの手入れを実施しなければ,梅雨や台風期の豪 雨の際には,地域住民にも多大な影響が出ることは容易に推測できる。また, 失われた文化財や史跡は復元しても,それは所詮,イミテーションである。こ のことを肝に命じて文化財や史跡の保存と利活用にあたるべきである。 図11 史跡地の相対照度 手入れされた森林:昭和55(1980)年~平成19(2007)年に実施した県 内19市町における整備地の相対照度         ⋧ኻᾖᐲ  ᧂᢛ஻࿾ߩᦨዊ୯ ᢛ஻࿾ߩᦨᄢ୯ ⋧ኻᾖᐲ㧩       ᨋౝߩ᣿ࠆߐ⵻࿾ߩ᣿ࠆߐ ×100

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5)まとめ 愛媛県内の土壌浸透能は,森林整備が実施されている箇所では,200mm/ hr 以上を示す箇所もあるが,未整備の箇所では,30mm/ hr 程度の箇所もあり, 両者の間には大きな開きが認められた。今回での調査では 1 市町当たりの浸透 能の測定箇所は12箇所と少なく,また,調査期間も長いが,放置森林は確実に 増加傾向にあることから,森林の手入れ不足による放置林の問題点は,具体的 な数値によって充分に把握できたと考えられる。 3. 森林内の土砂移動量 土砂移動量(土砂侵食量)の測定結果をみると,放置森林内の測定期間内の 6ヶ月間の平均侵食深は0. 30mm であった。これを基に1m ×1m 内の土砂の 移動量を推定すると, 写真17 松山城の樹叢 写真18 樹叢内の小崩壊 写真19 樹叢内の侵食状況 写真20 非常に暗い樹叢内(相対照度 2 %)

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100cm×100cm ×0. 06cm( 1 年間の侵食深)×0. 25(侵食部の孔隙率75%) ×2. 1g/ cm3(土の比重)=315. 0g となる。 これを1ha 当たりに換算すると,1ha 当たり3. 15トンとなる。つまり,この 流域内の放置林では,1 年間に1ha 当たり3. 15トンの土砂が移動していること になる。また,整備森林内の 6 ヶ月間の平均浸食深は,0. 20mm であった。 これを基に同様の計算をすると,整備森林内の移動土砂量は2. 1トンとなる。 ただし,これらの内,どの程度の移動土砂量が三間川や奈良川に流出している かは,実際に,それぞれの斜面端での測定結果を基に検討しなければならない が,渓流における堆積状況から判断して,そのほとんどが流出したものと考え ている(写真21, 22)。これらの流出土砂量は,丸山(1970)の値よりも大きな 値である。なお,両測定地に最も近い鬼北町の近永気象観測所におけるこの期 間内の総降雨量は913. 5mm,日最大降雨量は80. 5mm,1 時間最大降雨量は 28. 5mm,10分間最大降雨量は10. 5mm であった。 4. 森林の整備率 浸透能,相対照度及び形状比を基にした森林の整備率(江﨑ら2005)を表 1 に示した。この表に県内19市町での測定結果を当てはめると,整備地では 「可」から「良」であり,未整備地では当然のことながら「不可」から「可」 となる。森林の整備状態を常に「良」以上の状態に維持管理することによっ て,土砂流出防止や水源かん養機能などの森林の持つ公益的な機能と木材生産 機能が発揮されることになる。従って,このことを念頭において森林整備を持 写真21 流出土砂の渓流での堆積 (鬼北町) 写真22 流出土砂の渓流での堆積 (松山市)

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続させることが肝要である。 Ⅳ. まとめ スギやヒノキなどの人工林でも定められた施業を適期に実施すれば,手入れ を行っている天然生林や広葉樹林と同様に,山地災害に対し強い抵抗力を有す ると共に,良質材の生産可能な森林となる。つまり,人工林でも天然林でも定 められた施業を適期に実施した林分は,災害に強いが,天然林を含めて未整備 の放置林などは災害に非常に弱いといえる(江﨑ら2005a,江﨑ら2005b, 愛媛 大学2005)。従って早急に森林整備を進め,山地災害の発生要因の低減化と発 生率の軽減をはかることが最重要となる。このことは良質材の生産にもつなが る。 愛媛県では,平成13(2001)年度から13年間にわたって県費の森林整備費 や,財団法人えひめの森林基金の財源を活用した放置林対策を積極的に実施し 浸透能 (mm/ hr) 相対照度(%) 立木の形状比 森林の整備率(%) 浸透能 250< (100<) 150~250 (60~100) 100~150 (40~60) 100> (40>) 優 良 可 不可 5 4 3 2 ◎ 〇 △ × 100 80 60 40 相対照度 40< 30~40 20~30 20> 優 良 可 不可 5 4 3 2 ◎ 〇 △ × 100 80 60 40 立木の形 状比 70> 70~80 80~90 90< 優 良 可 不可 5 4 3 2 ◎ 〇 △ × 100 80 60 40 表 1 浸透能,相対照度及び立木の形状比を基にした森林の整備率 浸透能の( )内は,最大浸透能250mm/ hr に対する割合(%) 整備率(%)は,浸透能では250mm/ hr,相対照度では40%,形状比では70をそれぞれ 5 とし た場合に対する割合

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てきている。県では針葉樹人工放置林の整備には,継続して手入れ(施業)が 必要なため,このことを考慮すると,残りの整備期間は約14年で,約1, 500億 円の経費が必要であると試算している。今後も継続的かつ積極的な森林整備に 期待したい。加えて,全国の先陣を切って未整備の天然生広葉樹林の整備にも 着手してもらいたいと考えている。 ここで,愛媛県の中部を流れる一級河川で,流域面積60, 942ha を有する重 信川流域での38年間の浸透能測定結果(江﨑・河野ら2018,林野庁1980)を基 に,整備された森林における浸透能を表 2 に示した。その値は村井・岩崎 (1975)の値と比較しても大きな相違は認められない。この表からも改めて森 林整備の重要性が充分に読み取れる。 なお,既に述べたように愛媛県内のスギ・ヒノキなどの人工林の手入れ不足 の大きな要因は,昭和39(1964)年の木材輸入の全面自由化の影響をうけて, それ以降木材価格が低迷を続けていることにある。その影響によって木材搬出 や手入れに必要な林道や作業道の整備の遅れにも拍車をかけ,その後,放置森 林が急増している。また,木材輸入の全面自由化は農山村からの若年労働力の 都会への流出,そして,高齢化,過疎化の大きな要因の一つでもあることを, 我々はしっかりと肝に命じておくことが大切である。 一般的に用いられる全国的な値 重信川流域 村井・岩崎(1975) 江﨑・河野(1980~2018) 浸透能(mm/ 時間) 比率(%) 浸透能(mm/ 時間) 比率(%) 森林平均 針葉樹人工林 針葉樹天然林 広葉樹天然林 竹林 伐採跡地 草生地 裸地 258 261 211 272 ---158 128 79 100 61 50 31 239 265 200 260 230 160 110 85 100 67 46 36 表 2 土壌浸透能の比較 比率(%)は,森林平均を100%とした時の浸透能の割合

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Ⅴ. おわりに 今,我々は生活の利便性や快適性を求めた結果,地球や人類が過去に経験し たことのない地球温暖化という現象に直面している。この地球温暖化現象の顕 在化に伴って時間当たりの降雨強度や総降雨量が増大している。これにより, 土砂災害発生件数も増大傾向にある。これには,二つの要因が考えられる。一 つ目は前述した降雨強度や総降雨量の森林に対する外部因子が大きくなってき ていることである。二つ目は森林の手入れ不足による未整備に伴って森林が本 来持っている内部抵抗力(免疫力)の低下である。これに大きく関与している のが,土壌浸透能である。今回の浸透能測定結果はこのことを如実に表してい るものといえる。 森林に作用する外的因子が大きくなる一方で,これに抵抗する内部抵抗力が 低下すれば,災害頻度やその規模が大きくなるのは当然の結果であると考えら れる。降雨強度や総降雨量などの外的因子を小さくすることは,現在のところ 不可能である。災害頻度やその規模を小さくするには,森林が本来持っている 免疫力,すなわち内部抵抗力を最大限に発揮させることである。その免疫力, すなわち内部抵抗力を高めるためには,まず,土壌浸透能を高めることであ る。それに必要なのは徹底した森林の整備である。愛媛県を含めて山国である 我が国では,国民一体となって環境改善を図りながら,英知を絞り,農山村の 人手不足を解消し,災害に強い森林を整備・造成していかなければならない。 加えて,次世代につないでいかなければならない貴重な文化財及び史跡が,今 危機に直面している。我々は,樹木(森林)と文化財や史跡との共存共栄を考 えなければならない。具体的には,樹木(森林)にしっかりと手を加えれば, 森林は勿論のこと,文化財や史跡も守れることを,正しく認識しなければなら ない。 平成30(2018)年 7 月の西日本豪雨災害後,県内19市町の内,15市町につい て,改めて森林整備状況の調査を実施したが,放置森林は増加傾向であること が再確認された。行政の迅速,かつ適切な対応に期待したい。その意味におい て,愛媛県では,現在,県民から徴収している県の森林環境税の第三期課税対 象期間が今年度で終わり,来年度から新しく第四期の課税対象に入る予定であ り,それを活かした放置森林の更なる整備,そして,令和元(2019)年 9 月以

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降,国から主に市町を対象に交付される森林環境譲与税を活かした森林整備の 成果に期待したい。

引用文献

江﨑次夫・Razafindrabe Bam Haja Nirina・戎 信宏・藤原三夫・藤久正文・河野修 一・全 槿雨(2005a):台風による森林被害。第116回日本森林学会大会講演要旨 集,PA007. 江﨑次夫・戎 信宏・藤原三夫・林 和男・杉森正俊・泉 英二・百瀬邦泰・藤久正 文・牧野耕輔・車 斗松・全槿雨(2005b):平成16年の豪雨によって発生した流木 の類別とそれらの活用法。平成17年度砂防学会研究発表会概要集,462. 江﨑次夫(2010):山地防災ヘルパー活動について。平成22年度山地防災ヘルパー講習 会,特別講演要旨集,1-5. 江﨑次夫・河野修一・金 錫宇・全 槿雨・寺本行芳(2018):愛媛県内の森林の浸透 能。第129回日本森林学会大会講演要旨集,163. 愛媛大学自然災害学術調査団(2005):2004年愛媛県下における自然災害学術調査報告 書。344pp. 丸山岩三(1970):森林水文,林業教育研究会編(実践林業大学22),農林出版,197pp. 村井 宏・岩崎勇作(1975):林地の水および土壌保全機能に関する研究(第Ⅰ報)─ 森林状態の差異が地表流下,浸透および侵食に及ぼす影響─。林業試験場報告, 274,23-84. 林野庁(1981):重信川流域管理計画調査報告書。292pp. (原稿受付2019年 6 月 3 日,原稿受理2019年 8 月29日)

参照

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