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Title
日本における法歯学・法人類学の過去,現在,そして未
来
Author(s)
橋本, 正次
Journal
歯科学報, 118(5): 471-471
URL
http://hdl.handle.net/10130/4709
Right
Description
471
歯科学報 Vol.118,No.5(2018)
特 別 講 演 4
日本における法歯学・法人類学の過去,現在,そして未来
東京歯科大学法歯学・法人類学講座教授
橋本 正次
我が国の大学における法歯学研究室の設置は,1964年の東京歯科大学に始まる。その初代教授は故鈴木和男
教授であった。その翌年には,日本大学に歯学部法医学教室,そして1968年に神奈川歯科大学法医学教室が開
設されている。私は,1977年10月に講座に副手として入局し,翌年4月から助手として教育や研究のスタート
をきった。当時は法歯学という学問が社会的にもあまり認知されておらず,鈴木教授は警察庁や警視庁に自ら
出向き,様々な事案を研究室に持ち帰っては私たちに鑑定の機会を与えてくれるといったような状況であっ
た。搬入された事案は,歯による身元不明死体の個人識別のみならず,骨からの個人識別,血液型や人類学的
な手法による親子鑑定,咬傷の鑑定,裁判事案の鑑定書の鑑定など多岐にわたっていた。そのために,鈴木教
授は,教室員として多くの分野の専門家を集めて,いわゆる法科学の中心的な講座を構成しようと考えられて
いた。そこで,私も1984年にハワイの中央鑑識研究所に短期留学を許され,骨の鑑識について学ぶ機会を与え
られたが,これが後の法人類学を専門とする契機となっている。
そして,その翌年の1985年8月に法歯学の重要性が社会的に認められるようになった日本航空機墜落事故が
発生したのである。この事故では,520名の犠牲者のうち,およそ40%以上が歯科的な特徴で確認されたこと
から歯科的証拠の身元確認での重要性が理解され,各都道府県に警察協力歯科医制度(現警察歯科医制度)が
設置されるようになり,現在に至っている。また,日航機事故から数年後,個人識別手法として DNA 検査が
用いられるようになった。当初は高価で時間がかかる手法であったが,時とともに改良され短時間で結果を出
せるようになったこと等で,個人識別事案により積極的に利用されるようになってきている。しかし方法とし
ては,より簡便で安価,そしてご遺族や関係者が視覚的に確認できるという歯科的個人識別方法がより有効で
あることは明らかである。
一方,骨を主体とした個人識別,さらに近年は社会における防犯ビデオカメラの普及に伴い,映像上の人物
の個人識別といった法人類学的な事案も増加している。それが,拉致被害者や爆弾テロ犠牲者,自然災害犠牲
者の個人識別であり,私もそのいくつかに参加する機会を与えて頂いた。このような個人識別事案は今後,よ
り一層増加するものと考えられる。
法歯学講座の運営の難しさは,臨床系講座や基礎系講座とは異なり,社会歯科系であるがために,鑑定作業
と研究のバランスをどのようにするかというところにある。しかし,社会に貢献すべき領域を担う法歯学・法
人類学は今後,歯科治療記録やエックス線写真による個人識別だけでなく,解剖学的な特徴による新たな個人
識別手法を模索する必要があると思われる。法歯学・法人類学の益々の発展を期待したい。
≪プロフィール≫ 昭和59年10月 オーストラリア・アデレード大学歯学部
法歯学研究室留学
昭和63年5月 オーストラリア・アデレード大学歯学部
法歯学研究室留学
平成4年4月 東京歯科大学講師(教養系人類学兼任)
平成15年4月 東京歯科大学助教授(教養系法人類学研
究室)
平成17年11月 東京歯科大学研究室教授(教養系法人類
学)
平成26年4月 東京歯科大学主任教授(法歯学講座,法
人類学研究室兼任)
平成26年6月 東京歯科大学主任教授(法歯学・法人類
学講座)
<略 歴> 平成28年6月 東京歯科大学副学長
昭和51年3月 東邦大学理学部卒業 現在に至る
昭和52年9月 東京大学理学部生物学科人類学教室研究
生修了
<その他>
昭和52年10月 東京歯科大学副手(法歯学講座) 日本法医学会評議員
昭和53年4月 東京歯科大学助手(法歯学講座) 日本人類学会評議員
昭和57年4月 東京歯科大学講師(法歯学講座) 外務省参与
昭和59年9月 アメリカ合衆国・陸軍省ハワイ中央鑑識 厚生労働省慰霊事業人類専門員
研究所留学 千葉犯罪被害者支援センター理事
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