相模湾真鶴海岸のモエギイソギンチャクAnthopleura midori UCHIDA & MURAMATSU(Anthozoa: Actiniidae)に寄生するかいあし類について
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(2) 戸田龍樹・菊池知彦. 88. 的ゆるやかな種から外部寄生,さらに内部寄生をおこなうものまでを含め,世界の海洋 1982)。しかしながら,これまでに日本近海から. から42種類が報告されている(HuMES,. は,イソギンチャク類に共生・寄生するかいあし類は一種類も見出されておらず,これ 1990年6月に真鶴海岸の潮だ らのかいあし類に関する知見は皆無であった。ところが, まりに棲息するモエギイソギンチャク(Anthopleura. midori. &. UcHIDA. MuRAMATSU). から,初めてかいあし類が採集された。そこで,このかいあし類の出現について報告す るとともに,光学顕微鏡ならびに走査型電子顕微鏡により外部形態の観察をおこか1, 本種の分類学的位置について検討を加えた。. 材料と方法. 本報告で調べられたモエギイソギンチャク(Anthopleura. midori. UcHIDA. &. MuRA-. MATSU)は1990年6月25日の干潮時に,横浜国立大学理科教育実習施設(神奈川県真鶴) 付近の海岸に形成された潮だまりから採取された。モエギイソギンチャクは生きたまま. 実験室まで持ち帰り,触手冠内を遊泳するかいあし類をピペットで吸い取って採集した。 3個体のモエギイソギンチャクを調べ,うち1個体から1種8個体のかいあし類が採集 され,直ちに10%ホルマリン海水溶液で国定した。. これらのかいあし類は不透明で,特に雌の成体は体内に卵を有し,光がほとんど透過 しない。そのため,ホルマリン海水で固定した試料を蒸留水で洗浄し,乳酸に浸して微. 分干渉顕微鏡で観察した。 また,採集したかいあし類のうち,雌の成体の2個体が走査型電子顕微鏡用の試料に 供された。走査型電子顕微鏡による観察では,ホルマリンで固定された試料を4%グル タール溶液に移して一昼夜再固定したのち,孔径0.22JJmのミリポアフィルターで渡過し た海水で洗浄し,. 2%オスミウム酸溶液で固定をおこなった。試料は再度,滅過海水で洗. 浄したのち,アルコール系列で脱水し,酢酸イソアミルに浸し,臨界点乾燥をおこなっ. た(FELGENHAUER, 属蒸着をおこない,. 1987)。次に,試料はJEOL Akashi. Alpha. FC-1100イオンスパッタ一により金で金. 25A走査型電子顕微鏡によって,加速電圧15kVで観. 察された。 結果及び考察 b)が6個体,雄の. 採集されたかいあし類8個体の成長段階構成は,雌の成体(図1a,. 成体(図1c)が1個体,Ⅴ期コペポダイト幼生が1個体であった。雌の成体は生殖節の左 右両側に卵塊を1個ずつ付けていたが,ホルマリン海水で固定した際に脱落した。 かいあし類の体長,体幅,体高は,雌で各々1.92-1.77mm, 51mm,雄で1.42mm,. 0.57mm,. 0.36mm,. 0.88-0.76mm,. Ⅴ期コペポダイト幼生で1.17mm,. O158-0・ 0・46mm,. o.32mmであった。雌の体節は5節の前休部と5節の後休部,雄は5節の前休部と6節の 後休部よりなる。. 電子顕微鏡による雌の観察から,生殖節は背側に大きく隆起し,節の前方より約2/3の ところに癒合の痕跡が認められた(図2a)。生殖節に続いて3節の腹節があり,月工門は背.
(3) 89. モエギイソギンチャクに寄生するかいあし類. 図1.モエギイソギンチャクから採取されたかいあし類. a. :雌の成体の背面観,. し,. b,. a,. b. c. :雌の成体の左側面観,. :雄の成体の背面観.左の白い棒は0.5mmを示. cに共通.. 側に門口する(図2b)。尾節は6本の剛毛を備え(図2c),幅に対する長さの比は約1. :. 1.75であった。. 雌の成体の第1触角は7節(図2d),第2触角は4節(図2e)よりなり,大型の上唇 (図2e)が大顎,小顎片,第レト顎,第2/ト顎を覆う。上唇にかくれた口器ならびに第1 脚から第4脚までの付属肢は走査型電子顕微鏡では観察されなかった。第5脚は2本の. 末端煉を備える細長い1節でのみ(図2a)形成され,外側表面には多数の小棟が観察さ れた。第6脚は生殖節の着卵部位にみられる痕跡的な2本のなめらかな剛毛(餌2f)と 推定される。. 以上の外部形態と記載中の口器ならびに付属肢の剛毛配列は, Lichomolgidae科. Critomolgus属. HuMES. &. STOCK,. Poecilostomatoida目. 1983の特徴を有していた。現在さ. らに雄の観察をおこなっているが,本種はCritomolgus属の新種のかいあし類である可 能性が高い.今後は,雌雄のより詳細な形態学的観察をおこない,. Critomolgus属各種と. の類縁関係を明らかにするつもりである。 なお, Anthoplewa属のイソギンチャクのうち,かいあし類の宿主として報告されてい るものはA.. (HuMES, UCHIDA. artemisia,. 1982 &. A.. ; L4NNING&VADER,. elegantissima,. A.. stellula,. A.. xanthogrammicaの4種で. 1984),モエギイソギンチャク(Anthopleura. MuRAMATSU)は新たにかいあし類の宿主に加えられる。. midori.
(4) 90. 戸田龍樹・菊池知彦. 図2.走査型電子顕微鏡による雌の外部形態の観察. a:後休部,特に第5脚と生殖節, 面,. f. b:虻門節ならびに尾節,. :生殖節の着卵部位.. 1:生殖節の愈合部位,. 2:第5脚,. 3:月工門, 4:上唇. c:尾節,. d:第一触角,. e:頭部腹.
(5) 91. モエギイソギンチャクに寄生するかいあし類. 参考文献 B. E・ 1987・ Techniques. FELGENHAUER,. A.. HuMES,. G・. 1982・. A.. G.. Smithson. HuMES,. H.. A. G. &. Zool.,. gidae). 127. :. from. Biol. Ecol.,. (Copepoda,. VADER.. 9 1984.. California 77. :. 99-135.. sae. :. electron. of the. family. anemones. Phil. Soc., 72. with. and. (2). :. 1-120・ KossI. Lichomolgidae. invertebrates・. marine. i-Ⅴ, 1-368.. HuMES. Amsterdam, W.. Am.. associated. mainly. sea. with. Trans.. 1983. Redefinition. of Metawmolgus. S. &. associated. revision. copepods. for scannlng. Crustaceans. 71-76・. Copepoda. A. 1973.. J. H, STOCK.. Univ.. Mus.,. :. (Cnidaria,Anthozoa).. STOCK.. critomolgus. genus,. of. review. cyclopoid. Contr.. synonymy. L≠NNING,. &. 1877,. MANN,. A. forms. anemone-like HuMES,. Biol., 7. ∫.Crustacean. microscopy.. for preparlng. &. of the genus. STOCK,. 1972,. Poecilostomatoida,. and. Doridicola. 1853,. LEYDIG, of. establishment. Bull・. Lichomolgidae).. a. new. Zool・. 93196・. Sibling anemones. species :. of Doridicola. biology. and. host. (Copepoda specificity・. :. Lichomol-. ∫.Exp・. Mar・.
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