図形の拡大・縮小場面における大学生の面積判断―
面積の乗法性に着目させる教授の効果―
著者
佐藤 誠子
雑誌名
東北教育心理学研究
巻
11
ページ
21-29
発行年
2009-03-25
URL
http://hdl.handle.net/10097/00121898
図形の拡大・縮小場面における大学生の面積判断
一面積の乗法性に着目させる教授の効果-佐 藤 誠 子
(東北大学大学院教育学研究科)問題と目的
面積には、互いに直交する縦の距離×横の距離で決まる という性質(乗法性)があり(堀部, 1971;大津, 1981, 1982)、このことはどのような図形の面積にも成り立つ大き なルールとして存在している。にもかかわらず、このルー ルは学習者にとって十分には意識されていないようである。 例えば、複数の平面図形の面積比較において定性的な判断 が求められると、児童は「底辺(横)と高さ(縦)Jには着 目せずに、図形の周長がより大きい方が面積は大きいと判 断したり、図形の周長が同じ場合には面積は同じと判断し たりすることがある(細谷, 1976;工藤・白井, 1991)。ま た、面積を規定する変数である「縦と横」に着目できても、 適切な判断がなされない例も示されている。Andersonand Cuneo (1978)によると、 5歳児は、長方形の面積の大小を 判断するとき「縦×横」のルールで、はなく、「縦+横」のルー ルに従って判断してしまうと推測されている。さらにLeon (1982)によると、7歳児は、対角線に基づく一次元の拡がり を指標として長方形の面積判断をしてしまうと推測されて いる。これらは、面積の乗法性が理解されていないために 出現するものであると考えられる。面積学習において、面 積の乗法性を意識させ、それを適用した解決が行われるた めにはどのような教授法が効果的であるのかを検討する必 要がある。 本研究で取り上げる課題は、図形の拡大・縮小場面にお ける面積判断課題である。図形を拡大・縮小すると、それ らは相似な図形となる。相似図形の面積については「相似 比m nならば面積比m2:nうというルールが成り立つ。 すなわち、図形の拡大・縮小場面に当てはめると、「図形を k倍すると面積はk2 倍になるJ(以下、「面積の2乗倍ルー ノレ」と呼称)ということである。このルールは、面積が「縦× 横」によって求められることから導かれるものであり、平 面上のどのような図形の面積にも成り立つ。しかし、拡大 図形の面積について、「図形をk倍拡大したら、面積もk倍 になる」とする誤判断がみられることが先行研究より明ら かになっている(VanDooren,DeBock,Hessels,
J
anssens,&Verschaffel, 2004)0 Van Dooren et al. (2004)は、この誤 判断は「どんな量の関係も一方がk倍になると他方もk倍 になる」とする線型ルールに起因していると想定した。そ の考えは、日常経験において広く適用可能で役立つものと して存在する。例えば、「今、 30分歩いて 2km進んだ。とい うことは、同じベースで 60分歩いたら 4km進める」などと 予測することがそうである。それゆえ、拡大図形の面積の 場合にもそうした比例関係が成立するとみなされてしまい、 上記のような誤判断がなされると考えられている。そこで、 Van Dooren et al.(2004)は、 8年生を対象に、この誤判断 の修正を目指した教授実験を行ったところ、幾何図形の面 積問題への線型ルール適用による誤判断は減少した。しか し一方で、なお線型ルールを誤適用し続ける者や、逆に、 比例関係が成立する問題(図形の周長)に線型ルールを適 用しなくなってしまった者もみられた。誤判断の要因と想 定された線型ルールの面積への過剰適用を否定することで、 「相似図形の面積比は辺の長さの比と同じで、はない」こと は把握される。しかし、「相似図形の面積比は辺の長さの比 の2乗に等しい」ことを理解させるには、そもそも面積概 念の中核である「縦×横」という乗法性を捉えさせる必要 があるだろう。この性質を最も簡潔に表しているのは長方 形の求積公式であるが、それを他の図形に拡張できるか否 かが適切な面積判断の鍵となると思われる。相似図形の面 積の学習においても、面積の乗法性をいかに捉えさせるか が重要となるのである。
-21-さて、相似図形の面積の2乗倍ルールについて、小学校 での既習事項を用いた説明としては、次のような2種類の 教授法が挙げられる。一つは、拡大前の図形を拡大後の図 形に敷きつめることで2乗倍ルールを示す方法で、ある(以 下、「図形操作」とする)。これは、長方形や三角形など、 k倍拡大した図形の中に拡大前の図形がピ個敷きつめられ ることから説明可能なものである。もう一つは、「面積=縦× 横」という公式の変数を操作して2乗倍ルールを示す方法 である(以下、「公式操作」とする)。これは、縦と横をそ れぞれk倍すると、(縦Xk)X (横Xk)= (長方形の面 積)Xピとなることから説明可能なものである。面積学習では「縦×横」の概念を様々な図形の面積に拡張できるか 否かが鍵となることを踏まえると、面積の 2乗倍ルールに ついての説明は、どちらがより効果的であろうか。 長方形の整数倍拡大場面では拡大後の図形に拡大前の図 形を隙間なく敷きつめられるため、学習者は直観的には変 形前の図形の敷きつめで面積を理解している可能性がある。 図形の敷きつめで面積の 2乗倍ルールを捉えた場合は、正 方形、長方形、平行四辺形、三角形など、変形前の図形(以 下、基準図形)が拡大後の図形内に敷きつめ可能であれば ノレール適用に納得し解決できる。しかし、台形、多角形や 不規則図形(曲線で固まれた図形)では、基準図形を拡大 後の図形内に敷きつめることができないため、図形操作に よる理解で、はルール適用に確信が持つことができないと思 われる。一方、公式は「縦×横」という面積の乗法性を明 瞭に表したものlである。公式の変数操作によって2乗倍ノレー ルを捉えた場合は、公式から「縦方向」と「横方向」の変 化が強調されることで、面積が2次元に拡がる量であるこ とが理解できるだろう。そうすれば、拡大図形内に基準図 形を敷きつめられない規則図形でも、まず求積公式があれ ば変数を操作して面積比較が可能になる。そして、縦・横 の変化による面積変化が抽象的に捉えられることによって、 不規則図形の面積に対しても適切な判断がなされる可能性 がある。面積は客観的に存在している実在量であり(遠山・ 長妻, 1963)、それに関するルールはどのような図形の面積 にも当てはまる、ということの理解は、適切な面積概念と して重要である。以上のように想定すると、適切な面積概 念形成のためには、公式操作による教授が望ましいと思わ れる。 本研究では、①学校教育で面積学習を経た大学生におい ても、図形の拡大・縮小場面における面積判断課題におい て2次元の方向を考慮しない誤判断がみられるかを確認す ること、そして、②ルールを説明する際に操作する表象の 違い(公式・図形)によって、学習者の問題解決の様相が 異なるかどうかを検討することを目的とする。 仮説 学習者に形成される知識表象は、提示される学習材料の 様式に依存するだろう。それゆえ、図形操作によって面積 の 2乗倍ルールが説明されれば、拡大前の基準図形の敷き つめ個数の変化として面積変化が捉えられるだろう。一方、 公式操作によってルールが説明されれば、縦と横の 2次元 の方向の変化として、面積変化が高い抽象度で捉えられる だろう。 結果の予想 (1)敷きつめ可能な規則図形では、公式操作、図形操作と も正判断の割合は同程度であろう。 (2)敷きつめ不可能な 規則図形および不規則図形では、公式操作の方が正判断の 割合が高いだろう。
方 法
1.対象者 私立A大学生 57名(公式操作群 29名、図形操作群 28名) が対象者となった。 2.手続き 実験は、2007年 10月下旬に講義の時間の一部を借りて行 われた。所要時間は20'"30分であった。 10ページからな るクリップ留めの質問紙冊子 (A4判)が角型2号の封筒 に入った状態で、配布された。解答の際、前のページに戻っ て答えが修正されるのを防ぐために、1ページごとに、解答 が済んだら冊子から抜いて順次封筒に戻してもらう形式で 行った。最初に実験者が質問紙冊子の扱い方について説明 した後、学習者各自のベースで解答が進められた。T
l
a
b
l
e
l
面積に関する知識測定項目
①長方形の面積を求める式は,
r
縦×横」だ。
(0)
②平行四辺形の面積を求めるには,底辺と高さの長さをかけあわせればよい。
(0)③三角形は, 3辺の長さがわかれば,面積は求められる。
(0)④面積を求める公式がない図形(ハート形など)は,面積を求めることができない。(
x)⑤台形の面積は,結局は長方形の面積を求める式から導くことができる。
(0)
⑥ひし形の面積は,平行四辺形の面積を求める公式でも求めることができる。
(0)⑦平行四辺形の底辺が一定の場合,高さが小さくなると,面積は小さくなる。
(0)⑧できるだけ大きい面積の三角形を描くには,底辺と高さをできるだけ長くすればよい。
(0)⑨同じ面積の平行四辺形でも,形が違うことがある。
(0)⑩図形が合同ならば,必ず面積は等しい。
(0)⑪図形の周りの長さが大きいと,面積は必ず大きくなる。(
x
)
⑫円は,直径が大きくなると面積も大きくなる。
(0)( )内は,正答を表す。
-22-3.冊子の構成 フェースシート (1ページ) 解答の際の諸注意を記載し た。所属、学年、学籍番号(二重解答防止および真剣に取 り組ませるため)を記入させた。 面積に関する知識測定項目(2ページ) 学習者のもつ面積 についての知識を測定するために用いた。Table1の12項 目について、面積に関して適切だと思うものには
O
を、適 切でないと思うものには×を、わからないものには?を記 入させた。このうち、①、②、③は「求積公式J(③はヘロ ンの公式のことを示している)、④は「面積の基本概念J(図 形があれば面積は存在すること)、⑤、⑥は「図形と公式と の関係」、⑦、⑧は「公式の変数関係」、⑨、⑩、⑪、⑫は 「図形と面積との関係」についての知識を問うように作成 した。 「コピー機での拡大・縮小」の意味の説明 (2ページ) 以 後のテスト課題で、拡大コピー・縮小コピーという方法で 相似図形を作り出す状況を設定するため、「拡大コピー・縮 小コピーが、何を拡大・縮小しているのか」について説明 した。具体的には、例を 2つ提示し、線分を縮小(拡大) コピーするとその「長さ」が変わるということを図ととも に提示した。例①は原稿上で10cmの線分を縮小コピーでO. 70倍 (70%)にすると長さが7cmになるという状況、例② は原稿上で10cmの線分を拡大コピーで1.50倍 (150%)に すると長さが15cmになるという状況であった。 事前テスト 問1(3ページ、不規則図形・小数倍縮小課題) 不規則図 形(アメーパ形)を縮小コピーで0.73倍 (73%)にしたと き、縮小コピーする前(図形A)と後(図形B)の図形の 面積を比較させた。解答は選択式による(
4
択)。また、そ の判断理由も記入させた。図形Aは図示したが、視覚に頼っ た判断を防ぐために図形Bは示さずr?J
と表した(Figure 1)。 問2(
4
ページ、台形・小数倍拡大課題) 四角形(台形) を拡大コピーで1.20倍 (120%)にしたとき、拡大コピーす る前(図形A)と後(図形B)の図形の面積を比較させた。 解答は4択(問1と同様)で求め、その判断理由も記入さ せた。図形 Bは図示せずr?
Jと表した (Figure1)。 問3(
4
ページ、三角形・小数倍縮小課題) 三角形(鋭角 三角形)を縮小コピーで0.90倍 (90%)にしたとき、縮小 コピーする前(図形A)と後(図形B)の図形の面積を比 較させた。解答は4択(問1と同様)で求め、その判断理 由も記入させた。図形B
は図示せずr
?
J
と表した(Figure 1)。 学習セッション(5ページ) 相似図形における相似比と面 積比についての説明を文章と図で示した(Appendix参照)。 く公式操作群> 長方形を2倍 (200%)に拡大する前(長 方形A)と後(長方形B)の面積比について、「長方形の面 積=縦の長さ×横の長さ」の求積公式を用いて、変数を操 作することで面積の変化を説明した。 r(縦の長さx 2) x (横 の長さx2)=
(縦の長さ×横の長さ)x 2 X 2Jとして示 した。三角形を2倍に拡大する前と後の面積比も、「三角形 の面積=底辺×高さ-;-2Jの求積公式を用いて同様に説明し た。なお、拡大前、拡大後の図形は図示してあった。最後 に「相似形において、もとの図形を 1とすると、 n倍に拡 大した図形の面積はn
2
倍になる。相似比 1:n
ならば、面積 画 面 ( 正 答 は 12J) 下のような図形A
があります。図形A
を縮小コピー で0.73倍 (73%)にしたものを図形Bとします。さ て,このときの図形A
と図形B
の面積を比べてくだ さい。 当てはまるものにO
をつけてください。また,そう 思った理由も書いてください。ワ
縮 小図形
A
0.73倍 (73%)図形
B
1. Bの面積は. Aの面積の0.73倍のはずだ 2. Bの面積は. Aの面積の0.73倍より小さいはず だ 3. Bの面積は. Aの面積の0.73倍より大きいはず だ 4. 具体的に面積を求められないから,わからない ー 画 亘 ( 問 題 文 は 問1と 同 様 。 正 答 は ほJ)v
ワ
拡 大 1.20イ
音
(120%)図形
B
図形
A
ー 画 副 ( 問 題 文 は 問1と 同 様 。 正 答 は 也J) / ¥ ~ーゾワ
/ ¥ 縮 小一図形
A
0.90倍 (90%)図形
B
- 函 喧 ( 問 題 文 は 問1と同様。正答は 12J)む ?
縮 小 0.81倍 (81%)図形
A
図形
B
Figure1事前テスト問
1,2, 3および
円 べ U つ 臼比1:I12」というルールとしてまとめた。 く図形操作群> 長方形を2倍 (200%) に拡大する前(長 方形A)と後(長方形B)の面積比を、長方形Bに長方形 Aを 4つ敷きつめた図を示して説明した。同様に、三角形 を2倍に拡大する前と後の面積比も、拡大前の図形を拡大 後の図形に敷きつめることによって説明した。最後に「相 似形において、もとの図形を1とすると、 n倍に拡大した 図形の面積は
n
z
倍になる。相似比1: IIならば、面積比1・d
」というルールとしてまとめた。 事後テスト 1 問4(
6
ページ、平行四辺形・整数倍拡大課題) 相似の平 行四辺形(図形 A:図形 B= 1 : 5) を提示し、図形 Aの面 積が10のときの図形 Bの面積を求めさせた。解答は記述式 であった(正答は r250J、Figure2)。 問5(6ページ、四角形・整数倍拡大課題) 相似の四角形 (図形A:図形B=
1 : 3)を提示し、図形Aの面積が10の ときの図形Bの面積を求めさせた。解答は記述式であった (正答は r90J、Figure2)。 問6(7ページ、不規則図形・小数倍縮小課題) 不規則図 形(葉形)を縮小コピーで0.81倍 (81%) にしたとき、縮 小コピーする前(図形A)と後(図形B)の図形の面積を 比較させた。解答は4択(問 1と同様)で求め、その判断 理由も記入させた。図形Bは図示せずr?Jと表した (Figure 1)。ー唖旦
下のような相似図形AとBがあります。図形Aと 図形B の相似比は, 1: 5です。図形 A の面積が 10のとき,図形Bの面積を求めてください。ζ
フ
図形A (面積 10) 図形B (面積は?) ー 層 圏 ( 相 似 比 は 図 形A:図形 B=l:3である。 問題文は問 4と同様。)ム
図形 A (面積10) 図形B (面積は?) Fi思lre2 事後テスト問 4,5の提示図形 水平・垂直方向異倍率での拡大・縮小コピーの説明(
7
ペー ジ) 問7、8では、図形を水平方向・垂直方向それぞれ異なる 倍率で拡大・縮小コピーする状況を設定した。その説明の ために、直角をなす2線分(横 10cm,縦10cm) を水平方向 に1.20倍 (120%) に拡大、垂直方向に 0.70倍 (70%) に 縮小すると、長さが横12cm縦 7cmとなるという例を図とと もに提示した。 事後テスト2
(発展問題) 問7(
8
ページ、不規則図形・小数倍異倍率変形課題) 不 規則図形(花形)をコピー機で水平方向に0.90倍 (90%) に縮小・垂直方向に1.10倍 (110%)に拡大する前(図形A) と後(図形B)の図形の面積を比較させた。解答は選択式 による (4択 :1.Bの面積と、 Aの面積は同じはずだ /2. Bの面積は、Aの面積よりも小さいはずだ/3.Bの面積は、 Aの面積よりも大きいはずだ/4.具体的に面積を求められ ないから、わからない)。また、その判断理由も記入させた。 図形A、図形Bともに図示した(正答は r2J、Figure3)。 問8(8ページ、台形・整数倍異倍率拡大課題) 四角形(不 等脚台形;図形A)
をコピー機で水平方向に2倍 (200%) に拡大・垂直方向に3倍 (300%)に拡大した後の図形を図 形Bとし、図形Aの面積が10のときの図形Bの面積を求め させた。解答は選択式による(
4
択 :1.B
の面積は、 30に なるはずだ/2.Bの面積は、40になるはずだ/3.Bの面 積は、50になるはずだ/4.B
の面積は、60になるはずだ)。 また、その判断理由も記入させた。図形A、図形Bともに 図示した(正答は r4J、Figure3)。 問9(
9
ページ、逆操作課題) r花子さん」が星形の型紙 を作っている状況を設定した。もとの星形の2倍の面積を もっ星形を作るには、もとの図形をおよそ何倍の倍率でコ ピーすればよいかを求めさせた。解答は記述式で、小数第 1位までの数字で答えさせた(正答は r1.4J)。ー画回
し
i
t >iM"
O
>
~"
'
)
- 水平方向に 0.90倍 (90%) ¥.J 図形 A 垂直方向に1.10倍 (110%) 図形 B厘函回
てフ
国 ゆ ¥ / 水平方向に 2倍 (200%) ¥_一一一_ j 図形 A 垂直方向に 3倍 (300%) 図形B (面積10) (面積は?) Figure3 事後テスト問 7,8の提示図形 A せっ
山
結 果
1.面積に関する知識項目 面積に関する知識12項目の正答率をTable2に示す。①、 ⑫ではほとんどの学習者が正答したが、一方、③、⑤、⑪ では正答率が低く、項目によって正答率が異なった。これ ら12項目の合計正答数は、公式操作群8.79 (S D= 1.70)、 図形操作群8.54(S D = 1.55)であり、群聞に有意な差はみ られなかった。よって2群を等質とみなす。 Table2 面 積 に 関 す る 知 識 項 目 の 正 答 者 数 ( % ) 群 ¥ 項 目①
② ③ ④ 29 20 10 23 公 式 操 作(29名)(1;;.0)(6~~0) (3~~5)
(79.3) 28 19 11 20 図 形 操 作(28名)(1;~.0) (6;~9) (4~~3)
(71.4) ⑤ ⑥ ⑦ ③ 10 22 24 25 公 式 操 作(29名)(3~~5)
(75.9) (82.8) (86.2) 9 23 23 23 図 形 操 作(28名) (3;.1) (82.1) (82.1) (82.1) ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ 25 23 15 29 公 式 操 作(29名)(8~~2)
(79.3) (51.7) (100.0) 26 19 12 26 図 形 操 作(28名)(9;~9)
(67.9) (42.9) (92.9) 数字は人数, ( )内は%を表す。2
.
事前テスト 群を統合した全体の事前テストの結果をTable3に示す。 解答をみると、正答は少なく、どの問でも rB (拡大・縮 小後)の面積は、 Aの面積に図形の拡大(縮小)倍率をか けたものに同じ」とする誤答が半数以上を占めた。また、「具 体的に面積を求められないからわからない」とする者は、 Table3 事前テストにおける解答人数(%) 問1 間2 問3 解 答(Bの面積は) (不規則) (台形) (三角形)A
の面積に図形の披汰備制、) 30(52.6) 40(70.2) 32(56.1) 倍率をかけたものに同じ A の面積に図形の拡大~判、) 倍率をかけたものより小さ詔皇1.1) 1(1.6)2.五鐙並
し 、 Aの面積に図形の拒汰拘官小) 倍率をかけたものより大き 4(7.0) 16(鐙.1) 3(5.3) し 、 具体的に面積を求められな 10(17.5) 0(0.0) 1(1.6) し、から,わからない 無答 1(1.6) 0(0.0) 0(0.0) 数字は人数, ( )内は%を表す。下線部が正答。 曲線で固まれた図形である不規則図形(問1)の面積判断に おいてややみられた。3
.
事後テスト 各群における事後テスト問4"-'問9の正答者数をTable 4に示す。なお、問9で、は小数第1位までの数字で答えるも のであったが(正答は r1.4J)、「占」、 r1.41Jも答えとして 正しいものであるため正答とした。問 4"-'問 8ではいずれ も公式操作群の正答率がやや高い。問ごとに、各群の正答 者数の比率についてが検定を行った結果、いずれの聞にお いても群聞に統計的な有意差はみられなかった。 ただしTable4の結果は、事前での成績を考慮していな いため、事前で正答していた者も含まれている。そこで次 に、事前テスト3聞において3問とも誤答を示した者を対 象として分析を行う。そのような者は公式操作群16名、図 形操作群15名であり、そのうち事後テスト各問の正答者数 はTable5に示す通りであった。問ごとに、各群の正答者 数の割合を比較したところ、問6において有意差がみられ、 公式操作群の正答者数の割合が高いことが示された(x2(1)= 5.49,
pく.05)。 Table4 各群の事後テストの正答者数(%) 問4 間5 群¥問 (平行四辺形) (四角形) 公式操作(29名) 17(58.6) 17(58.6) 図形操作(28名) 15(53.6) 14(50.0) 問 7 問 8 (不規則異倍) (台形異倍) 公式操作(29名) 4(13.8) 20(69.0) 図形操作(28名) 2(7.1) 15(53.6) 数字は人数, ( )内は%を表す。 問6 (不規則) 17(58.6) 13(46.4) 問 9 (逆操作) 5(17.2) 5(17.9) Table5 事前誤答者における事後テストの正答者数(%) 群¥問 公式操作(16名) 図形操作(15名) 問 4 問 5 (平行四辺形) (四角形) 8(50.0) 8(50.0) 8(53.3) 7(46.7) 問 6 (不規則) 11(68.8)合 4(26.7) 問 7 問 8 問 9 (不規則異倍) (台形異倍) (逆操作) 公式操作(16名) 2(12.5) 10(62.5) 1(6.3) 図形操作(15名) 1(6.7) 7(46.7) 3包0.0) 数字は人数, ( )内は%を表す。 *pく.05考 察
本研究では、図形の拡大・縮小場面における大学生の面 積判断について、次の2点が明らかになった。①大学生に おいても2次元の方向を考慮しない誤判断がみられた。② 事前誤答者に対して、図形操作よりも公式操作による説明 F h d ヮ “の方が、不規則図形の縮小場面における適切な面積判断を 促進させる効果があった。よって、仮説に基づく結果の予 想は一部支持されたといえる。 事前誤答者を対象とした事後テストの結果、規則図形の 整数倍拡大場面(問 4、問 5)では適切な面積判断の割合に 群差はみられなかったが、不規則図形の縮小場面(問 6)で は公式操作による説明の方が高成績で、あった。今回の実験 で、学習セッションで提示されたのは敷きつめ可能な規則 図形(長方形、三角形)の整数倍の拡大である。図形の拡 大を基準図形の敷きつめによって理解していた場合、敷き つめ可能な図形の整数倍拡大という状況であれば敷きつめ 方略によって解決できるが、そもそも小数倍縮小・拡大と いう場面では、図形の敷きつめでは対処できない。そうし た問題状況では、面積を、図形の種類によらない、面の縦・ 横の拡がりとして抽象的に捉える必要がある。このような 理解を促進させる効果は、公式操作の方が優れていたと考 えられる。ただし、敷きつめ不可能な四角形の整数倍拡大 という問題状況(問5)では、図形操作でも公式操作でも同 程度の正答率で、あった。仮説における想定と異なり、その ような問題状況において差が生じなかったのは、両群の学 習セッションにおいて長方形だけでなく三角形も例示され ていたためであると考えられる。多角形は三角形に分割可 能であるため、多角形それ自体では敷きつめられなくても 三角形に分割して考えれば敷きつめ可能になるのである。 そうしてルールが適用できる事例が拡がったため、三角形 に分割できる規則図形では、図形操作でも面積の2乗倍ルー ルの適用が促進されたと思われる。 加えて、学習後のルール適用についてさらに吟味するた め、発展問題として位置づけた事後テスト2の問題、すな わち不規則図形の小数倍異倍率変形(問 7)と台形の整数倍 異倍率拡大変形(問 8)と逆操作(問 9)の結果も用いて考 察する。これらは、面積の乗法性が理解されていれば解決 可能な問題である。台形の整数倍異倍率拡大変形(問8)の 問題の正答率は、問7や問9のそれに比して高かった。こ の間では、規則図形の整数倍でどちらの方向にも拡大して いるという状況が学習段階と同様であったため、学習され たルールの原理(すなわち、2乗倍ルールの基となる面積の 乗法性)が活'性化されやすかったと思われる。一方、不規 則図形の小数倍異倍率変形(問 7)と逆操作(問 9)の問題 では、どちらの群においても正答率は2割にも満たなかっ た。このような問題において適切な課題解決が可能になる には、2乗倍ルールそのものの理解のみならず、どのような 図形に対しても面積に関するルールが適用で、きることに納 得できるような学習が必要になると思われる。 以上、本研究の目的に沿って考察してきたが、今後さら なる検討を要することとして以下の2点が挙げられる。ま ずーっは、評価問題の設定の仕方についてで、ある。本研究 で焦点を当てていたのは、敷きつめ可能な規則図形だけで なく、敷きつめ不可能な規則図形や不規則図形でも面積の 2乗倍ルールを適用した問題解決が可能かどうかということ で、あった。そのため、評価問題は、主に図形の種類(敷き つめ可の規則図形、敷きつめ不可の規則図形、不規則図形) の違いによって配列されていたが、その変形の方向(拡大、 縮小)、変形倍率(整数倍、小数倍)の組み合わせについて はシステマティックではなかった。例えば長方形に関して、 整数倍拡大という場面では、長方形を敷きつめられるが、 小数倍拡大・縮小という場面では、長方形でも図形を敷き つめることができない。事後で問うていたのは、敷きつめ 可・不可図形の整数倍拡大と、不規則図形の小数倍縮小で、 あった。そのため、公式操作、図形操作の教授の違いによ る課題解決の様相について、さらに踏み込んだ検討ができ なかった。変形方向(拡大・縮小)や倍率(整数・小数) を統一する、もしくは、今回用いた課題に加えて不規則図 形の整数倍拡大課題や敷きつめ可能な図形の小数倍縮小(拡 大)課題を用意することで、ルール適用事例の範囲拡大な どについて込み入った考察が可能となると思われる。もう 一つの課題点は、不規則図形を含むどのような図形の面積 に対しても2乗倍ルールが適用できることを納得させる教 授のあり方である。公式操作と図形操作とでは、2乗倍ルー ルの適用に確信がもてる図形が異なる。図形操作では、敷 きつめ可能な図形のみ、説明可能である。公式操作では、 それに加え、敷きつめ不可能な図形の場合も、規則図形で あれば説明可能である。しかし、不規則図形の場合はどち らでも厳密な説明がつけられない。公式操作、図形操作の どちらであっても面積の2乗倍ルールそれ自体は理解可能 であるが、図形の種類に関わりなくその適用に納得できる か否かが問題となるのである。事前テストの段階では、い ずれの問でも単に長さの倍率をそのまま面積の倍率とする 誤りが半数以上みられた。事後テストの結果をみると、正 答率は事前よりは高いが、学習段階で学習したことをその まま適用できる問題(問4)でさえも両群とも 5""6割程度 にとどまっている。また、不規則図形縮小(問
6
)
の問題に おいても、群差があったとはいえ公式操作群でも正答率は さほど高くなかった。このような事態を鑑みると、「面積は 2次元に拡がる量であり、直交する縦の距離×横の距離によっ て決まる」という面積概念を、面積学習において重要視し て理解させなければならない。今後は、2乗倍ルールの適用 に対する納得度をより高められるような教授文脈を考案す る必要がある。p o
ヮ “引用文献
Anderson, N. H., & Cuneo, D. O. 1978 The height+
width rule in children's judgment of quantity. Journal01 ex
ρ
erimentalρ
sychology:General,
107,
335-378 堀部佑子 1971 面積の指導数学教室, No.209, 6-12 細谷純 1976課題解決のストラテジー 藤永保(編) 思 考 心 理 学 大 日 本 図 書 pp.136・156 工藤与志文・白井秀明 1991 小学生の面積学習に及ぼす 誤ルールの影響教育心理学研究, 39, 21-30 Leon, M. 1982 Extent, multiplying, and proportionality rules in children's judgments of area. Journal 01 exρ
erimentalchildρ
sychology, 33, 124-141 大津悦夫 1981面積概念の形成一加法性の授業の分析一 日本教育心理学会第23回総会発表論文集, 84-85 大津悦夫 1982量概念としての面積概念の習得 日本教 育心理学会第24回総会発表論文集, 696-697 遠山啓・長妻克亘(編) 1963応用問題に強くなる量の 指 導 入 門 上 巻 国 土 社Van Dooren, W., De Bock, D., Hessels, A.,
J
anssens, D.,& Verschaffel
,
L. 2004 Remedying secondary school students' illusion of linearity: a teaching experiment aiming at conceptual change. Learning and instruction, 14, 485-501謝 辞
本論文を執筆するにあたり、ご指導をいただきました小 野寺淑行先生に深く御礼申し上げます。そして、実験にご 協力いただきました学生の皆様に、心より感謝申し上げま す。 1 r長方形=縦×横j,r平行四辺形=底辺×高さj,r三角 形=底辺×高さ72j,rひし形=対角線×対角線7 2j, r台 形 =(上底+下底)x高さ72jの公式の下線部分が 「縦× 横」の意味にあたる。その点で,公式は「面積は直交する 2方向に広がる量である」という面積概念を端的に表したも のと言える。-27-Appendix 各群の
学
習セ
ッシ
ョ
ン
における 2乗倍ルールの説明
問題文中にコピー機の話が出てきましたが,ある図形
P
を拡大コピーしたものを図形
Q とすると,
図形
P
と図形
Qは相似図形となります。
ここで,相似比と面積比の関係について考えてみましょう。例えば,下のような長方形
A
をコピー
機で 2倍(200%)に拡大したものを,長方形 B とします。このとき,長方形 A と長方形 Bの面積比
は,何対何になっているでしょうか。(長方形
Aを 2倍に拡大した図;省略)
く
公式操作群
>
面積の変化をとら左金
l
三度
J
錐
l
企
I
債 よ 笠
2
1
5
聞の劉ほ雪之金必要があるのです。
長友震の貸主横が,それぞれ何倍になったか考えて
J
性支
L主
三
ιコピー機で
2
倍に拡大したという
ことは,縦の長さは 2倍,横の長さも 2倍になったということです。
ここで,長方形の面積を求める公式は,
I
長方形の面積=縦の長さ×横の長さ│ です。
コピー機で拡大した後の面積は,
(縦の長さ X2)x
(横の長さ x2)=もとの長方形の面積 x2x2
2x2=4なので,拡大後の面積は,もとの面積の 4倍となりました。
よって,面積比は長方形
A:
長方形
B =1 :
4
となることがわかります。
それでは,三角形の場合はどうでしょうか。三角形 Cをコピー機で 2倍(200%)に拡大したものを
三角形 D とします。底辺と高さが,それぞれ何倍になったか考えてみましょう。(
三
角形 Cを 2倍
に
拡大した図;省略)
コピー機で 2倍に拡大したということは,底辺は 2倍,高さも 2倍になったということです。ここ
で,三角形の面積を求める公式は, I
三角形の面積=底辺×高さ
-
;
-
'
2
│
です。
コピー機で拡大した後の面積は,
(底辺 x2)x (高さ x2
)
-
;
-
'
2
=
(
底辺×高さ -
:
-
2
)x
2
x
2
2X2=4なので,拡大後の面積は,もとの面積の 4倍となりました。
面積比は,三角形
C:
三角形
D =1 :
4
です。
.
く
図形操作群
>
長方形
BI
こ最重堅企必質賃敷童
2
員長忽金全秀之支金支
L
主主
a
図のように敷きつめると,長方
形 Bには長方形 Aが 4個敷きつめられます。
よって,面積比は長方形
A:
長方形
B =1 :
4
となることがわかります。
A
l
1
.
H B
それでは,三角形の場合はどうでしょうか。三角形 Cをコピー機で 2倍(200%)に拡大したものを,
三角形
D とします。三角形 Dに三角形 Cが何個敷きつめられるか考えてみましょう。
j
忠犬
z
イ
者
(:200%)L
v
~D
図のように,このとき,三角形 Dには三角形 Cが 4つ敷きつめられるので,
面積比は,三角形
C:
三角形
D =1 :
4
となります。
cL
¥
く2
群共通
>
このように,相似比と面積比の関係には,
r
面積比は相似比の
2
乗倍』というルールが成り立って
います。これは,平面図形一般に成り立ちます。
相似形において、もとの図形を1
とすると、
n
倍に拡大した図形の面積はn
2倍になる。
相似比
1
:
n
ならば、面積比
1:
n
2 n δ つ ωUniversity students' judgments of the areas in the context of enlargement/ reduction of geometrical figures: Effects of instruction on students' judgments to encourage comprehending the multiplicative rule about area. SATO, Seiko Graduate School of Education, Tohoku University This artic1e investigates effects of instruction on university students' judgments of the areas in the context of enlargement/ reduction of geometrical figures. The misconception is well known that if a geometrical figure enlarges k times, its area becomes k times larger too. In this experiment, university students were taught the rule that the area of a figure enlarges with factor k 2 when a figure is enlarged k times by means of either transformation of the formula (area