価値観を用いたコミュニケーション支援のための発言開始語句分析
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(2) Vol. 46. No. 1. 2. 背. 価値観を用いたコミュニケーション支援のための発言開始語句分析. 139. 2.4 テキストを対象とした意思疎通補強 テキストコミュニケーションにおける意思疎通方法. 景. 2.1 テキストコミュニケーション 電子メールに加えて,テキストチャットやインスタ ントメッセンジャといったコミュニケーションツール. には,テキストの提示を工夫するタイプと,あらかじ. も普及し,テキストコミュニケーションの研究はさか. 意思疎通を目的としてテキストの提示を工夫する方. んに行われている2),4),19) .コミュニケーションが持つ. 法には,テキストに属性を付与して強調する場合と,. 社会性の観点からテキストコミュニケーションを分析. 音声や画像などの他の手段と組み合わせて強調する方. した研究事例もある7),20) .しかし,コミュニケーショ. 法がある.前者では,フォントのサイズや色などを変. ンにおける意思疎通に関しては,まだまだ課題も多い. 化させる場合がこれに相当する.視覚的に効果を与え. のが現状である.. るこの方法では,テキストを読む人が直感的にすばや. め用意する語句データベースを工夫するタイプがある.. 2.4.1 強 調 提 示. 2.2 意思疎通における問題点. く理解できるという利点がある.たとえば,表示文字. コミュニケーションにおいて意思疎通を困難にする. に動きを付加することでテキストの表現力を向上させ. 原因は,主として,(1) ユーザの能力不足,(2) コミュ. た例や1) ,インタラクションを可視化するという観点. ニケーション環境の不備,(3) 利用可能モダリティの. でグラフィック効果を分析した例などがある3) .一方,. 制限,の 3 つに大別できる.. 他の手段との組合せ例としては,表情マークを付与し. ユーザのコミュニケーション能力は意思疎通に大き く影響する.必要なツールを使いこなし,伝えたいメッ. たテキストを,漫画のような吹き出しによって表示す るシステムがある16) .. セージを的確に生成,伝達することができないと,意. 2.4.2 語句データベースデザイン. 思疎通は達成されない.たとえば,音声会話やテキス. 語句データベースの工夫に関しては,語彙を増やす. トコミュニケーションの場合には,語彙や文法知識の. 場合,減らす場合,および属性を付加する場合がある.. 不足,文章構成能力の欠如は,考えていることを相手. 語彙を増やす場合というのは,顔文字のように,明示. に伝える際の阻害要因となる.. 的な語句を追加することによって,模式的,明示的な. 快適なコミュニケーションには,それを取り巻く周. 意思表示を可能とするものである. 「(笑)」のような. 囲環境も重要である.たとえば,通信遅延や音声会話. 文字による直接的な感情表現と, 「:-)」のような顔文. 時の環境雑音は円滑なターンテイキングの妨げとなる. 字による感情表現について,定量的な比較分析を行っ. し,粗悪なデザインの画面操作インタフェースやキー. ている研究もある13) .一方,使用語句を限定すること. タイプしにくいキーボードはテキストチャットにおけ. で,すなわち,語彙を減らすことで,使用対象語句を. る文字入力の妨げとなる.. 絞り込んで,使い勝手や理解しやすさを向上させる場. 一方,モダリティ制限も意思疎通の阻害要因となり. 合もある.学校の教科書が,対象学年の生徒が知って. うる.対面でコミュニケーションを行う場合には,人. いる文字や言葉だけで記述されているのはこの例であ. 間は,発言内容以外にも表情やジェスチャといった複. る.データベースに登録されている語句に何らかの属. 数のチャネルを巧みに扱いながら意思疎通を図る.し. 性を付与しておいて,その語句が参照される際に,属. かし,テキストコミュニケーションの場合はこれは容. 性情報を利用する場合もある.この方法の場合,新た. 易ではない.. な語句の習得や使用語句の限定は必要なく,使い慣れ. 2.3 意思決定支援 コミュニティのような集団における意思決定を支援 6),9),15). する研究はいくつか事例がある. .たとえば,発. 話文コーパスから発話意図タイプ決定ルールを自動生 成している例や11) ,合意と受容の関係性モデルを構築 した例がある8) .特に,本研究で検討対象としている. た語句を,より高い表現力で利用することができる. 本研究で述べる「語句に対する同意,非同意の強度」 も,この属性の一種である.. 3. 価 値 観. 同意,非同意に関連の深い研究としては,会話インタ. 3.1 価値観の類似 人間は,コミュニケーションにおいて何らかの合意. ラクションにおける肯定,否定の意図抽出を試みた例. を必要とするとき,相手の考えを考慮して協調的行動. 12),17),22). や. ,同意,非同意表現へのタグ付与の重要性. をとることがある.完全に同一の価値観を持つ人はい. を述べている例などがある21) .しかし,いずれの研究. ないが,人間はお互い異なる価値観を持ちながらも,. も人間の価値観を扱うにはいたっていない.. 自分の価値観と相手の価値観の間に共通部分を見出.
(3) 140. Jan. 2005. 情報処理学会論文誌. し,あるいは,共通部分を作り出すことによって合意 を得ようとする.価値観の類似,相違に関する判断は, 本来,会話内容の意味論理から行われるのが理想的か もしれない.しかし,多くの場合,感情混入や議論戦 略,発言のあいまい性などが原因で,その判断は容易 ではない.通常,意味論理を用いる場合には,膨大な シソーラスが必要となってしまう.コミュニティを構 成するメンバの知識を関連づけることで知識体系を構 成し,コミュニケーション支援を行う試みもあるが5) , その知識体系は,やはり限定されたものとなる.また, 人間が持つ複雑な概念体系を単純な構造の決定木を用 いて表現し,ことばの使い方の相違を取り除こうとい う例もあるが10) ,この場合もやはり限界はある.他 に,ユーザが過去に使った用語をもとに文脈の推定を 行うことで知識の違いを吸収する研究もある18) .. 図 1 価値観共有モデル Fig. 1 A model for sharing human sense of values.. 本研究では,人間はお互いの意見に対する同意,非 同意の繰返しから価値観の類似を推測していると考え た.実生活においても,話しているうちに徐々に相手 の考えが理解できるようになったり,あるいは,何年 も付き合いのある間柄だと相手の考え方が理解しやす いというのは,同意や非同意の繰返しをもとに価値観 の推定,理解を行っているからと考えられる.本研究 の目的は,各個人の絶対的な価値観を推定することで はなく,ユーザ間の相対的な価値観,すなわち,価値 観の類似度を推定することである.また,特定の概念 体系にのみ適用可能な手法ではなく,概念体系によら ずに適用可能な,同意,非同意の情報から類似度を推 定するアプローチを採用する.. 3.2 価値観共有モデル. 図 2 アンケート画面のスクリーンショット Fig. 2 A screenshot of the questionnaires page.. 価値観類似度を推定する仕組みをコンピュータ上に 実現し,推定結果をユーザに提示して共有させる「価 値観共有モデル」を図 1 に示す.本モデルでは,ユー. 4. 実. 験. ザ A,B の間で送受信される各メッセージに対するお. 同意,非同意から価値観の類似度を推定するための. 互いの同意,非同意の情報がコンピュータ上に蓄積さ. 初期検討として,ターンテイキングで用いる発言開始. れていき,2 人の価値観の類似度が推定,提示される.. 語句を収集し,各語句に対して,同意,非同意の強度. ユーザは提示された価値観の類似度を共有しながらコ. をユーザに評価してもらい,評価の傾向を調査した.. ミュニケーションを行うことができる.各メッセージ. 4.1 発言開始語句の収集. に対する同意,非同意は,返答メッセージの冒頭部分. 本実験では,同意,非同意が比較的明確に意思表示. から抽出される.返答で用いられた発言開始語句に対. されることが多いといわれる英語を対象言語とした.. し,発言開始語句データベースを参照し,該当語句の. 日常的に不自由なく流暢な英語で生活をしている 100. 同意,非同意の強度を参照して,価値観類似度の推定. 人の被験者にアンケートを行った.被験者の内訳は,. に用いる.同データベースを含めた価値観推定方法の. 10 代から 50 代の年代別に男女各 10 人ずつとし,年. デザインにおいては,登録対象とする語句の選定,お. 代や性別による偏りがないように配慮した. 「発言の最. よび,それらの強度設定が重要となる.. 初に用いる表現で,同意,非同意を表す語句を思いつ くだけあげてください」という指示の下,同意語句 67 個,非同意語句 42 個の合計 109 個を収集した.語句.
(4) Vol. 46. No. 1. 価値観を用いたコミュニケーション支援のための発言開始語句分析. 141. 図 5 日常的利用度の高い非同意語句の評価結果 Fig. 5 Rating results for common statements of disagreement.. 図 3 日常的利用度の高い同意語句の評価結果 Fig. 3 Rating results for common statements of agreement.. 図 6 日常的利用度の低い非同意語句の評価結果 Fig. 6 Rating results for rare statements of disagreement.. で 478 個であったが,100 人中 1 人しかあげなかった 語句については不採用とし,少なくとも 2 人以上の被 験者があげた 109 個を採用した.アンケートは,電子 メールによる回答で,自由記述とした.なお,できる だけ多くの語句を分析対象として収集するため,被験 者への指示において「チャットで用いる語句」, 「自分 がよく使う語句」等の条件は付与しなかった.. 4.2 同意,非同意の強度評価 図 4 日常的利用度の低い同意語句の評価結果 Fig. 4 Rating results for rare statements of agreement.. 収集したすべての発言開始語句に対し, 「同意,非 同意の強度」,および「日常的によく使う表現か否か (以下,日常的利用度とよぶ)」の 2 項目について,そ. は 1 つの単語のみで構成されるとは限らず, 「I agree with you」の例のように複数語から構成されてもよい. 英語生活者にアンケートを行った.年代,性別の内訳. れぞれ 5 段階評価尺度,3 段階評価尺度で 100 人の. とした.収集された 109 個の語句において,1 語句あ. は語句収集のときと同じだが,語句収集の被験者と. たりの平均単語数は,同意語句が 2.0 個,非同意語句. は別の 100 人を被験者とした.アンケートに用いた. が 2.1 個であった.また,1 つの語句における単語数. ウェブページの画面を図 2 に示す.同意,非同意の強. は最大でも 5 個であった.なお,収集した語句は全部. 度に関する尺度値については,強い方から 5,4,3,.
(5) 142. Jan. 2005. 情報処理学会論文誌. 図 7 日常的利用度の高い同意語句に対する評価のばらつき Fig. 7 Plotted standard deviations for common statements of agreement.. 図 9 日常的利用度の高い非同意語句に対する評価のばらつき Fig. 9 Plotted standard deviations for common statements of disagreement.. 図 8 日常的利用度の低い同意語句に対する評価のばらつき Fig. 8 Plotted standard deviations for rare statements of agreement.. 図 10 日常的利用度の低い非同意語句に対する評価のばらつき Fig. 10 Plotted standard deviations for rare statements of disagreement.. 2,1 とし,両端の尺度値のみ言語ラベル(Extremely Strong,Extremely Weak)を被験者に提示した.ま た,提示される同意,非同意の英語表現は,それぞ. 5. 考. 察. 5.1 語句タイプによる分析. 「Disagreement」とした.回答は, れ, 「Agreement」,. 5.1.1 誤. ウェブブラウザ上に配置された 5 個のラジオボタンか. 図 3∼図 6 を見ると,全体的に誤差範囲は 2 程度で. ら,被験者が感じる同意,非同意の強度を選択しても. あるが,図 3 と図 5 では,同意や非同意の強度が強. らった.日常的利用度については,3:よく使う(Very. くなるほど誤差範囲が小さくなっている.このように. common),2:使う(Common),1:あまり使わない. 日常的利用度が高く,強度が強い語句を見つけて語句. (Not common)というラベルを提示した. 同意語句,非同意語句それぞれについて,日常的 利用度の高低別に,全被験者のスコア平均を調べた (図 3,図 4,図 5,図 6).これらの図において,横. 差. データベースに登録しておき,それらを積極的に活用 することで,解釈相違の生じにくいコミュニケーショ ンを実現できると期待される.. 5.1.2 評価のばらつき. 軸は,図 3,図 4 では同意の強度,図 5,図 6 では非. 各語句について人による評価のばらつきを調査する. 同意の強度を表している.縦軸は対象語句を表してお. ため,標準偏差を調べた.横軸を同意,非同意の強度,. り,上から同意,非同意の強度が強い順に並んでいる.. 縦軸を標準偏差として,各語句をプロットしたものを. 日常的利用度の高低を区別するしきい値については,. 図 7,図 8,図 9,図 10 に示す.図 7 を見ると,日常. 日常的利用度の平均値が 2.16,中央値が 2.24 とやや. 的利用度の高い同意語句に対する評価は,同意の強度. 高めの値であったことから,しきい値として 2.2 とい. が強くなるほど,ばらつきが小さくなっていることが. う値を採用した.なお,本アンケートのデータ水準は,. 分かる.同意強度と標準偏差の相関を表すピアソン積. 本来,順序尺度であるが,ここでは便宜上,等間隔を. 率相関係数は −0.7310(p < 0.05)であり,強い負の. 仮定して間隔尺度と見なした.. 相関を持っている.この結果から,日常的に用いる共 通の同意表現が存在することが分かる. 「Absolutely」.
(6) Vol. 46. No. 1. 価値観を用いたコミュニケーション支援のための発言開始語句分析. 143. や「Definitely」といった語句はその典型例である.同 様に,図 8,図 9 の場合にも負の相関があり,ピアソ ン積率相関係数はそれぞれ −0.4903,−0.6374 であっ た.ところが,図 10 では,非同意の強度によらず,ば らつきはほぼ一定であった.以上の結果から,日常的 利用度の低い非同意語句以外ではユーザ共通の表現が 存在し,それらを積極的に用いることで意思疎通が向 上する可能性があるといえる.. 5.1.3 被験者属性 図 3∼図 6 を比較すると,非同意語句よりも同意語 句の方が種類が多いことが分かる.この原因の 1 つと して被験者の属性による影響が考えられる.今回の被. 図 11 同意,非同意の強度評価(平均からの差分)に関する被験者 分布 Fig. 11 A histogram of the difference between user rating and average on the strength of agreement/disagreement.. 験者に関する年代,性別による分析によれば,20 代,. 30 代,50 代の女性が特に同意語句を多くあげている. たとえば,あげてもらった同意語句の数から非同意語 句の数を引いた差分値は,20 代女性では平均 2.2 個,. 20 代男性では平均 0.4 個であった.同様に,30 代で は,女性が平均 1.9 個に対して男性が平均 0.8 個,50 代では,女性が平均 1.8 個に対して男性が 0.9 個であっ た.これらの結果から,女性の方が同意語句の語彙が 豊富である可能性がある.あるいは,英語を公用語と する地域や今回実験を行った米国における生活習慣が. 図 12 過大評価型の例 Fig. 12 An example of the user in an overestimation type.. 影響している可能性もある.この詳細な分析は今後の 検討課題である.. 5.2 ユーザタイプによる分析 5.2.1 過大評価と過小評価 ある語句に関してユーザが感じる同意,非同意の強 度は,人によって異なると考えられる.そこで,先述 の実験の同意,非同意の強度評価データを対象に,各 語句に対して,全被験者の評価の平均を求め,被験者 ごとに,その平均からの差分を計算した.さらに,語 句ごとに得られたそれらの差分計算結果を被験者ごと に平均し,各被験者についての平均的評価からのずれ. 図 13 過小評価型の例 Fig. 13 An example of the user in an underestimation type.. を表す大まかな指標とした.この指標を横軸にとって, 被験者分布をヒストグラムにしたものが,図 11 であ. した場合でも,相手が強く同意してくれたと誤解して. る.この図から分かるように,同意語句,非同意語句. しまう.一方,図 13 は,過小評価型の被験者の例で. の評価の間に有意な差は見られず,いずれも過大に評. ある.この被験者の場合,特に強い同意語句について. 価した被験者と過小に評価した被験者が存在すること. 過小評価をしている.この被験者は,相手がどんなに. が分かる(グラフの右側が過大評価した被験者を,左. 同意してくれても,それに気づかなかったり,信じな. 側が過小評価した被験者を表している).. かったりする傾向があると推測される.. 図 12 は,過大評価型の被験者の例である.横軸が 同意の強度,縦軸が平均からのずれを表しており,1. 5.2.2 評価の同意強度依存 同意,非同意の強度評価に関しては,その語句が持. つのデータプロットが 1 つの同意語句を表している.. つ強度が強い場合と弱い場合では被験者の評価に影響. この図の被験者は,弱い同意語句の場合に特に過大評. が見られる.すなわち,語句の同意強度が強いほど評. 価をする傾向があることが分かる.すなわち,この被. 価が過大になる場合は,データの近似直線は右上がり. 験者は,コミュニケーションにおいて相手が弱く同意. になるし(増加型,図 14),逆に過小になる場合は,.
(7) 144. 情報処理学会論文誌. 図 14 増加型の例 Fig. 14 An example of the user in an increase type.. Jan. 2005. 図 17 同意,非同意の強度評価(平均からの差分)に関する,被験 者ごとの標準偏差分布 Fig. 17 A histogram of standard deviation for the difference between user rating and average on the strength of agreement/disagreement.. 図 15 減少型の例 Fig. 15 An example of the user in a decrease type.. 図 18 安定型の例 Fig. 18 An example of the user in a stable type.. 5.2.3 評価の安定性 ユーザの同意,非同意に関する評価については,個 人差もあり,評価データの信頼性には注意する必要が ある.安定して一定の傾向を示す被験者に対しては, 今回の実験から得られる知見をもとにした支援が有効 図 16. 同意,非同意の強度評価(平均からの差分)に関する,被験 者ごとの近似直線の傾き分布 Fig. 16 A histogram of inclination in linear approximation for data of user ratings on the strength of agreement/disagreement.. と考えられるが,評価が不安定な被験者に対しては, 支援が有効に作用しない可能性が高い.そこで,各被 験者の強度評価データに関し,全被験者の平均からの 差分を各語句について算出した.得られた差分値に関 する標準偏差を求め,被験者ごとの標準偏差をヒスト. 左上がりになる(減少型,図 15).図 16 は,線形近. グラム化したものが図 17 である.横軸は標準偏差,. 似直線の傾きについて被験者の分布をヒストグラムに. 縦軸は被験者数を表しており,グラフの右側にいくほ. したものである.このヒストグラムによれば,同意,. ど評価が不安定な被験者を表している.この図から分. 非同意いずれの場合も,極端に評価が過大,過小の被. かるように,同意語句,非同意語句いずれの場合も,. 験者が存在しており,評価が語句の持つ強度に依存し. ほぼ正規分布に近い.この結果は,何人かの被験者は. ていることが分かる(依存しない場合は,中心に偏っ. 評価にばらつきが大きい,すなわち,評価が不安定で. た分布となる).. あることを示している.図 18 の被験者の例では,全. 一般的に,強い同意や非同意に対する評価は信頼度 が高いと考えられるが,図 15 の例では,語句の同意 強度が弱くなるほど,評価が平均に近くなっている. このようなユーザのコミュニケーションを支援する方 法としては,実際に使われる同意語句よりも少し弱い 同意語句を積極的に活用することが考えられる.. 体的に安定して平均に近い評価となっているのに対し, 図 19 の被験者の評価は,かなり不安定である.. 6. システムデザイン用ガイドラインに向けて 最近では,テキストチャットなどでも,今回の実験 の収集語句に登場したような口語表現が使われること.
(8) Vol. 46. No. 1. 145. 価値観を用いたコミュニケーション支援のための発言開始語句分析. いて分析した.約百個の語句に関するユーザ評価実験 を行い,将来のガイドライン構築に向けての定性的知 見を得た. 本検討では,1 つの単語に限らず複数語からなる語 句を対象とした.しかし,単語レベルでは,辞書等に カジュアルかフォーマルかなどといった一定の基準に 基づいた用法が説明されている場合がある.今後は, 図 19 不安定型の例 Fig. 19 An example of the user in an unstable type.. それらの既存の知識と,今回の実験で得た経験的知見 を融合し,さらに,文脈によって各語句に対する同意, 非同意の印象が変化することを考慮したうえで,価値. が多い.また,テキストチャットでは,面と向かって. 観共有システムのデザインガイドラインを構築したい.. 口頭で会話をする場合に比べて,相手への返答に言葉. 謝辞 本研究をすすめるにあたって,加国ブリティッ. を選ぶ時間が多少ある.その返答の際に,システムが. シュコロンビア大学の Brian Fisher 氏,および,NTT. 使う語句の候補を提示してくれて適切な強度の同意,. 研究所の皆様にご協力をいただいた.ここに感謝の意. 非同意表現を用いることができれば,相手の価値観の. を表する.. 理解や意思疎通がしやすくなると期待される.ただし, 適切な語句は相手や状況に応じて変化しうる.状況に 「Well」のように文脈によって同 ついては, 「No way」, 意にも非同意にも用いられる語句がある.このような 語用論的分析は,今後検討すべき重要な課題である. 今回の実験では,文脈から独立した語感に着目し, 相手への返答に用いられる約百個の語句を実際に収集 し,被験者に評価してもらうことで統計分析可能な定 量データを獲得した.それらに対する考察で得られた 定性的知見を以下にまとめる.. • 評価誤差の小さい語句を見つけて語句データベー スに登録しておき,それらを積極的に活用する. • 日常的利用度が高く,同意,非同意の強度が強い 語句では評価誤差が小さい. • 同意も非同意も,共通に認識されやすい語句が存 在し,一般的に強度の強い場合の方が評価が信頼 できる(日常的利用度の低い非同意語句を除く). • データベース登録語句の選定に際し,年代や性別 等,相手の属性を考慮する(女性では同意語句の 語彙が豊富である). • ユーザには過大評価型と過小評価型があり,この 傾向が強いユーザに対しては,やや強め(あるい は,弱め)の語句を代用的に用いることで誤解を 軽減できる可能性がある.. • 一部のユーザでは評価が不安定であり,別の支援 方法も検討する必要がある.. 7. お わ り に 価値観を用いたコミュニケーション支援実現のため の初期検討として,テキストコミュニケーションに着 目し,発言開始語句の同意,非同意に関する評価につ. 参 考. 文. 献. 1) Bodine, K. and Pignol, M.: Kinetic typography-based instant messaging, ACM CHI ’03 Extended Abstracts, Ft. Lauderdale, FL, pp.914–915, ACM Press (2003). 2) DiMicco, J.M., Lakshmipathy, V. and Fiore, A.T.: Conductive Chat: Instant messaging with a skin conductivity channel, ACM CSCW ’02 Interactive Poster, New Orleans, LA, pp.193– 194, ACM Press (2002). 3) Donath, J.: A semantic approach to visualizing online conversations, Comm. ACM, Vol.45, No.4, pp.45–49 (2002). 4) Farnham, S., Chesley, H.R., McGhee, D.E., Kawal, R. and Landau, J.: Structured online interactions: improving the decision-making of small discussion groups, Proc. ACM CSCW ’00, Philadelphia, PA, pp.299–308, ACM Press (2000). 5) 平田高志,村上晴美,西田豊明:連想表現を用 いたコミュニティにおける知識の視覚化とその評 価実験,システム制御情報学会論文誌,Vol.12, No.7, pp.428–436 (1999). 6) John, C.M., Victoria, C.M. and Andrew, F.M.: An experimental study of common ground in text-based communication, Proc. ACM CHI ’91, New Orleans, LA, pp.209–215, ACM Press (1991). 7) Jozsef, A.T.: The effects of interactive graphics and text on social influence in computermediated small groups, Proc. ACM CSCW ’94, Chapel Hill, NC, pp.299–310, ACM Press (1994). 8) Kahai, S.S. and Cooper, R.B.: The effect of computer-mediated communication on agree-.
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