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JAIST Repository: 社会的価値を創造した研究開発活動の事例調査(科学技術と社会・倫理問題,一般講演,第22回年次学術大会)

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Academic year: 2021

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全文

(1)

Japan Advanced Institute of Science and Technology

JAIST Repository

https://dspace.jaist.ac.jp/

Title

社会的価値を創造した研究開発活動の事例調査(科学技

術と社会・倫理問題,一般講演,第22回年次学術大会)

Author(s)

三石, 祥子

Citation

年次学術大会講演要旨集, 22: 1062-1064

Issue Date

2007-10-27

Type

Conference Paper

Text version

publisher

URL

http://hdl.handle.net/10119/7463

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す

るものです。This material is posted here with

permission of the Japan Society for Science

Policy and Research Management.

(2)

2I17

社会的価値を創造した研究開発活動の事例調査

○三石祥子(科学技術振興機構)

1. はじめに

社会技術研究開発センター(RISTEX)

は 、 独 立 行 政 法 人 科 学 技 術 振 興 機 構

(JST)の活動理念を踏まえた上で、社

会的価値の創出を支援する仕組みの充

実を図る活動を行っている(図1)。研

究開発の対象となる問題を絞り込み、明

確な目標をもつ研究開発領域を設定し

て、社会問題解決型の研究開発を推進す

る役割を担う。このような役割を遂行す

るために、社会的価値を創造した科学技

術に関する過去の事例を調査し、RISTEX

の今後の活動を検討する過程において

基盤的情報とすることを目的とする。

図1:社会技術研究開発センターの新しい活動サイクル

2.候補事例の選出と選定

RISTEX 関係者より、社会的価値を創造した科学技術研究開発活動と考えられる事例の提案を受け、調

査対象事例の候補とした。提案された 61 事例のうち、以下の①から⑤に該当する 23 事例を調査の対象

として選定し、4 つのカテゴリーに分類した(表1)。

①時間:戦後 1945 年以降、かつ未来でない。

②場所:日本(で研究開発された。

③費用:科学技術そのものの研究開発のために、公的資金が使われた。

④科学技術との関連:科学技術そのものである。または研究開発の一部に科学技術そのものを含む。

⑤規模:普及や研究開発の規模が「世界規模ではない」。

分類

No 事例名

概要

選出の観点

医療事故防止に

対する製造業安

全手法適用研究

医療組織において製造業におけるプロセス管理の 取組を導入し、クリティカルパスの使用率や続行 率を高くするためのシステムを開発した。 患者の個別性に対応し た医療事故未然防止シ ステムの構築に貢献し た。

2 冷暖房服

冷暖房機能のあるカーディガンのこと。無痛無汗 症の子供を持つ親からの切実なニーズから開発さ れた。車椅子の方のためにも応用できる。 切 実 な ニ ー ズ へ の 対 処。「社学連携」(大学 の知を社会に還元)の 例でもある。

3 触知ボコーダ

耳の聞こえない人が点字を読むように声を指で聞く装置。 福祉・医療・教育の中 の 科 学 技 術 / 環 境 ・ 防 災・安全の科学技術等

高齢者見守りサ

ービス

高齢化や生活様式の多様化が進む我が国におい て、生活者の生活行動パターンを様々なセンサ情 報から分析して、普段と異なる事態を検知するた めの技術。 高齢者介護、見守りの 代替手段。

医療

健康

低侵襲能動

内視鏡

大腸鏡の挿入性・観察性能の向上のための能動内 視鏡を作成。外部から操縦が可能で、なめらかに 動き、完全な無苦痛大腸鏡としての機能が確認さ れた。 福祉・医療・教育の中 の 科 学 技 術 / 環 境 ・ 防 災・安全の科学技術等

-1062-

(3)

血管侵入用水圧

駆動能動カテー

テル

脳血管や心臓用の直径3ミリのカテーテル。生理 食塩水で動くので漏れても問題ない上、高い圧力 をかけていないので、血管が破裂する恐れも無い。 福祉・医療・教育の中 の 科 学 技 術 / 環 境 ・ 防 災・安全の科学技術等

7 バルーン内視鏡

小腸は口や肛門から遠く自由に動く上曲がりくね っており内視鏡検査が困難であったが、二重構造 かつチューブと交互に進ませる小腸対応可の内視 鏡を開発。 福祉・医療・教育の中 の 科 学 技 術 / 環 境 ・ 防 災・安全の科学技術等

8 人工心臓

小型、体内埋め込み方の人工心臓の開発。臨床的にも成果が出ている。 多くの人が直接便益を 受ける訳ではないが社 会的・公共的価値の創 出に繋がると考えられ る。

安全でおいしい

水道水

日本では生水を直接飲んでも安全である。このよ うに安全性の高い水を提供するために、技術的側 面での開発だけでなく、行政上も水質基準の改正 等による対応が行われている。 全体として、社会的・ 公共的価値を目的とし て進められている。

10 廃水処理技術

下水処理技術 産業廃水処理技術 畜産廃水処理技術 環境保全という社会的 要請から研究開発が進 められている。

11

プラスチック・

リサイクル技術

循環型社会構築の一環としてプラスチック・リサ イクル技術の研究開発が進められている。法律が 民間を含めた技術開発を喚起したという側面あ り。 環境保全、省資源とい う社会的要請から研究 開 発 が 進 め ら れ て い る。

12 ミューチップ

世界最小レベルサイズの無線自動認識 IC チップ) の一つ。従来では難しかった紙への装着をはじめ、 さまざまな素材やパーツへの装着を可能にした。 医療・環境・教育

13 ETC

高速道路の渋滞緩和や料金所での支払いの簡素 化・渋滞化などの高速道路の問題を解消するため に国・政府レベルで立ち上げたプロジェクト。 社会に広く普及し、生 活様式に多大な影響を 与えた。

生活環境

改善

14 電波時計

実用的には十分とも言える精度の時間情報を全国 的に配信し、極めて廉価な設備投資で受信できる ような仕組みが出来たという点で、今後の応用が 期待できる。 社会に広く普及し、生 活様式に多大な影響を 与えた。

15

運 輸 多 目 的 衛 星

ひまわり 6 号・7

高品質の画像取得、気象観測の精度が向上。防災 能力・防衛能力の向上、航空交通容量の拡大と安 全性の向上にも寄与。7 号は 6 号のバックアップ。 日本のみならず、東・ 東南アジア、太平洋地 域の気象予報、航空保 安における国際貢献に 資する。

16

地 球 シ ミ ュ レ ー

世界最大規模のスーパーコンピュータである地球 シミュレータを用いて、2100 年までの地球温暖化 の見通し計算を行った。 医療・環境・教育

17

津 波 災 害 シ ナ リ オ・シミュレータを 用いた防災教育 各種シナリオ想定に基づき地域住民への災害情報 の伝達状況や住民の避難状況、津波の氾濫状況を 統合化して表現することができるツールを開発し た。 地域状況を反映した防 災教育コンテンツの作 成に貢献した。

防災

救助

18

レ ス キ ュ ー ロ ボ

ット(救助支援ロ

ボット)

地震等の災害時にがれきの中から被災者を探し出 すことや、人間が入り込めない部分の障害物撤去 等を行うことが可能。 災害時の救助策として 期待できる。

19

海 中 ウ ラ ン の 採

ウランに特別に反応する分析用指示薬を固定する 技術を確立し、海水中の溶存ウランを選択的に回 収する捕集材を開発(国内と海外で特許を取得)。 福祉・医療・教育の中 の 科 学 技 術 / 環 境 ・ 防 災・安全の科学技術等

20

人 工 光 合 成 シ ス

テ ム に よ る 水 の

分解

植物の光合成メカニズムを模倣した「人工光合成 システム」を用い、可視光で水を水素と酸素に完 全分解することに世界で初めて成功した。 将来のエネルギー供給 問題への寄与、完全な 自 然 循 環 が 期 待 さ れ る。

エネルギー

地球環境

対策

21 太陽電池パネル

太陽光を直接電気エネルギーに変換する半導体で あり、太陽光を受けている間だけ電気を発生する 一種の発電装置。 太 陽 光 を 有 効 利 用 し た。

-1063-

(4)

22 淡水化技術

世界的な水需要の増大に対処するために、海水の 淡水化技術は有効な造水方法として注目されてい る。 水需要への対処策とし て国際的に貢献した。

23 砂漠化防止対策

開発調査、技術協力プロジェクト、一般無償資金 協力、草の根無償資金協力、及び有償資金協力と いった各種スキームにより、支援を行っている。 地球環境問題だけでな く人々の生活の安全保 障や生物多様性の保全 に関わる。

表 1:社会的価値を創造したと考えられる科学技術研究開発活動 23 事例

3.対象事例の詳細の整理

対象とする 23 事例それぞれについて、概要、研究開発のきっかけ、経緯、成果の具体例、今後の方

向性、参考情報等に関する情報を、インターネットや書籍等から収集、研究開発年表の一覧を作成した。

4.おわりに

社会的価値が創造されるプロセスを明確にするには、一つの科学技術だけを見ていても、また、科学

技術の研究開発だけを見ていても不十分であり、研究開発活動の背景にある社会との関連、例えば経済

的価値や知的価値とは異なるニーズとしてどのようなものがあったのか、どのような支援があったのか、

それらの時代背景は何か、といった事項を更に調べる必要がある。

「社会的価値を創造する科学技術をどう捉えるか」について RISTEX 関係者からの意見を整理すると、

以下のようになるが、この点に関しても更なる考察が必要である。

(1)人間の生活様式に影響を与える科学技術

・「科学技術のおかげ」と誰もが思う<科学技術である> ※< >内以下同様

・生活をする人の視点にたった

・生活様式に多大な影響を与えた

・人間の生活を一変させるような革命的な事態を生むようなインパクトがあった

(2)具体的な社会問題を解決する科学技術

・タイムリーな課題(少子高齢化、農村部の後継者不足)に適応した

・認知症の予防や治癒の実現により社会に与える影響が甚大な

・将来のエネルギー供給問題への寄与が期待される

・自動車による環境負荷低減に貢献した

・医療事故未然防止システムの構築に貢献した

・環境保全や省資源という社会的要請から進められた

・気象予報や航空安全のために国際的に貢献する

(3)社会の安寧を維持する科学技術

・切実なニーズへの対処策としての

・多くの人が直接便益を受けるわけではないが、限られた生活者にとっては極めて重要な

・社会的な要請は高いがコスト負担の動機が弱い

・国民の安全安心のために国が投資した

・研究者の力を結集し人々にある種の秩序や安心を与えた

本調査を踏まえ、社会的価値と科学技術研究開発との関係を更に追究してゆきたい。

-1064-

参照

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