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建設業における外国人労働者の労働災害防止に関する研究

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Academic year: 2021

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1 はじめに 近年,わが国では外国人労働者が大幅に増加している. その背景には,様々な業種における深刻な人手不足があ る.2019年4月,政府は就労を目的とした新たな在留資 格「特定技能」を創設し,それにより今後,外国人労働 者の更なる増加が予想される. 外国人労働者の増加に伴い,懸念されるのが,言葉が 上手く通じないことにより発生する労働災害など,外国 人特有の労働災害である.厚生労働省第13次労働災害防 止計画(計画年度:2018年度~2022年度)においても, 外国人労働者の労働災害の防止は重点的な取り組みの一 つに掲げられている1) そこで本稿では,わが国の重点対策業種の一つである 建設業を対象に,これまで著者らが進めてきた外国人労 働者の労働災害防止に関する研究を紹介する. 2 研究の背景 ここ数年,わが国では外国人労働者が急激に増加して いる.2019年10月末現在,外国人労働者を雇用する事業 所は全国約24万か所,外国人労働者数は約166万人に及 び,2014年の約80万人と比べ,5年間で約2倍に増加し た2).建設業においても,全産業同様,外国人労働者数 は増加し,2008年の8.4千人が,2018年には68.6千人に まで急増した(図1).特に,2014年以降の増加が著し い. 外国人労働者急増の背景には,わが国の深刻な人手不 足がある.建設業でみると,建設現場で働く技能者(建 設技能者という)は,1997年の455万人から2015年には 331万人へと,この20年足らずの間に約27%減少した3) 現在の建設技能者を年齢階層別にみると(2018年),高 年齢層(60歳以上)は81万人と,全建設技能者329万人 の約4分の1を占める一方,これからの建設業を支える 29歳以下の若者は37万人と,全体の11.0%に留まる (図2).高年齢化の進展と若者の建設業離れが顕著に見 受けられ,将来の一層の人手不足が見込まれている4) これまで,外国人労働者の活用は,外国人技能実習生 が大きなウェートを占めた.建設業では,2018年,外国 人労働者全体の約3分の2が外国人技能実習生である5) 外国人技能実習生は,開発途上国等への技能移転を目 的に,2003年に創設された外国人技能実習制度に基づく ものであるが,その多くは,低賃金で雇える人手不足対 策として活用が進んだ6) 政府は,骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針) 8,355 11,50713,790 12,830 13,102 15,647 20,560 29,157 41,104 55,168 68,604 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 (単位:⼈) 図1 外国人労働者数の推移(建設業) 2.7 14.0 19.9 24.6 33.2 44.5 43.2 33.9 31.9 33.2 47.9 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 15〜19歳 20〜24歳 25〜29歳 30〜34歳 35〜39歳 40〜44歳 44〜49歳 50〜54歳 55〜59歳 60〜64歳 65歳以上 (単位:万⼈) 図2 年齢階層別にみた建設技能者数(2018年)

建設業における外国人労働者の労働災害防止に関する研究

高 木 元 也

*

1

,庄 司 卓 郎

*

2

,呂     健

*

3 近年,わが国では外国人労働者の労働災害が増加し,外国人特有の労働災害リスクに対し早急に対策を講じ る必要がある.本稿では,外国人労働者の労働災害を防止するため,これまで著者らが建設業を対象に進めてき た①元請業者における外国人労働者活用の実態調査,②送り出し国における入国前実践教育の事例調査,③非言 語視聴覚教材の制作,④タブレット端末を用いた危険予知のためのベトナム語版安全教材の制作,⑤非言語マン ガ看板に関する研究,⑥外国人特有災害の要因抽出に関する研究等,外国人労働者の労働災害防止に関する研究 を紹介する. キーワード: 外国人労働者,労働災害,特定技能,建設業,安全教材

原稿受付 2020年6月2日(Received date: June 2, 2020) 原稿受理 2020年6月9日(Accepted date: June 9, 2020)

J-STAGE Advance published date: July 1, 2020

*1労働安全衛生総合研究所建設安全研究グループ *2産業医科大学産業保健学部安全衛生マネジメント学 *3労働安全衛生総合研究所リスク管理研究グループ 連絡先:〒204-0024 東京都清瀬市梅園1-4-6 労働安全衛生総合研究所建設安全研究グループ 高木元也 E-mail: [email protected] doi: 10.2486/josh.JOSH-2020-0011-KE 研究紹介

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2018において,今後の人手不足解消方策の一つに外国人 労働者の活用を掲げ,2019年4月,就労を目的とした新 たな在留資格「特定技能」が創設された.海外試験,入 国等審査を受け,特定技能1号の資格を取得すると在留 期間は5年となる.この間,一定の要件(例:技能検定 1級相当取得,職長経験1~3年)を満たせば,特定技能 2号の資格が取得できる.そうなれば在留期間の制限が なく,家族の帯同なども認められるようになる.外国人 技能実習生は,その実績により特定技能1号の資格は取 得しやすい7) 2019年度,特定技能1号の資格取得者は,送り出し国 との協力覚書の締結や,業種ごとの試験実施の大幅な遅 れなどにより,予想されたほど多くはなく建設業は267 人に留まったが8),長期的にみると,特定技能の資格取 得により,外国人労働者の大幅な増加が見込まれてい る7) このような状況下,心配されるのは外国人労働者の労 働災害である.全産業では外国人労働者の休業4日以上 死傷者数は,労働者数増加などに伴い増加傾向にあり, 2015年以降,毎年2,000人を超えている(図3)9) このため,厚生労働省は第13次労働災害防止計画にお いて,外国人労働者の労働災害の防止を重点的な取り組 みの一つに掲げ,外国人労働者を雇用する事業場に対し, 安全衛生教育の実施,労働災害防止のための日本語教育 等の実施,労働災害防止に関する標識・掲示の設置,健 康管理の実施等の徹底を図るとしている1) 今後,外国人労働者の労働災害防止対策を推進させる ことは重要な課題であり,わが国の事業場で働く外国人 労働者の実態を把握し,効果的な労働災害防止対策を打 ち出す必要がある. 3 建設業の外国人労働者の労働災害防止に関する研究 これまで筆者らは,建設業を対象に外国人労働者の労 働災害防止に関する様々な研究を行ってきた. それらを以下に紹介する. 1)元請業者における外国人労働者活用の実態調査6) 建設業における外国人労働者の活用は,雇用主である 専門工事業者の経営方針はもとより,建設現場の統括施 工管理責任を担う元請業者の現場運営方針も大きく関わ る.建設生産方式は,建設現場の直接的な施工は下請業 者である専門工事業者(以下,協力会社という)が担う 一方,元請業者はその統括施工管理を担う.労働集約型 の建設業では,労務管理は重要な統括施工管理業務の一 つである. このため,2016年,元請業者である総合建設会社(ゼ ネコン:大手~中小),大手ハウスメーカーを対象に,ア ンケート調査,ヒアリング調査を行い,建設業で働く外 国人労働者(主に外国人技能実習生)の実態を調査し, 以下のことが明らかとなった. ・建設業で働く外国人労働者は大手・中堅ゼネコンが施 工を担う建設現場を中心に大幅に増加しているが,小 規模ゼネコンでは活用が進んでいない. ・外国人労働者は躯体関連業種に多かったが,建設技能 者不足解消のため,今後は様々な業種での拡大が予想 される. ・ほとんどのゼネコン,大手ハウスメーカーは,外国人 労働者の指導や教育を,雇用主である協力会社に任せ ていた. ・ただ,大手ハウスメーカーA社は,戦略的・主導的に 外国人技能実習生の活用を図り,外国人技能実習生を 施工体制の一部に組み込んでいた.賃貸住宅開発業者 (ディベロッパー)として,年間の住宅建設・販売計画 等の事業計画を立て事業を推進しているため,その計 画に基づき,施工に必要な技能労働力を見定め,主要 協力会社等に対しその技能労働力が自力で調達可能か 打診し,自力での調達が難しい協力会社に対し外国人 技能実習生の採用を促していた.この点,請負業が主 のゼネコンとは異なる. ・外国人特有の労働災害防止上の課題として,アンケー ト調査で最も多かったものが,言葉が十分に通じない リスクであった.安全指示が伝わらない,安全教育が 十分にできない,緊急対応が心配である,作業手順・ 作業方法が理解できない,専門用語が理解できない, 安全標識・掲示物が理解できない,安全意識のレベル が把握できない等があげられた.次に多かったのが, 国民性や慣習などの違いにより,日本で定められた建 設現場の安全ルールが十分に守られないおそれがある ことや,それに対する教育や指導は負担が大きいこと などがあげられた. ・外国人労働者の安全対策には,職長・ベテラン作業員 の管理下でリスクの高い作業には就かせない,日本語 での指示は簡潔にわかりやすくし外国人労働者に判断 を委ねない,言葉以外にポンチ絵等の活用により理解 度を高める等,言葉が十分に通じないことに対する対 策があげられた.一方,言葉の問題以外の対策は見受 けられなかった. 2)送り出し国における入国前実践教育の事例調査10) 積極的に外国人技能実習生の活用を図る大手ハウスメ ーカーA社は,入国前に送り出し国の大学で外国人技能 実習生予定者の実践教育を行っており,2018年,ベトナ ムでの現地実態調査を行った. A社は,ベトナム労働省と提携し日本にベトナム人技 1,239 1,292 1,732 2,005 2,211 2,494 2,847 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 (単位:⼈) 図3 外国人労働者の休業4日以上死傷者数(全産業)

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能実習生を派遣している公益財団法人国際人材育成機構 (アイムジャパン)と提携し,A社が施工する建設現場で 働く予定のベトナム人に対し,入国前の1か月間,大学 (写真1)で独自の実技研修,座学研修を行っていた.A 社は,日本全国の協力会社から外国人技能実習生の雇い 入れ希望を募り,ここで教育した上で日本に送り込んで いた. 調査時の研修受講者は21人,職種は大工と外壁工であ った.そこでの教育は,労働災害の防止に主眼を置き,墜 落災害が多い足場の正しい組立方法,切創災害が多い電 動丸ノコの正しい使い方などを教育していた.大工と外 壁工は,直接足場は組まないが,足場上での作業は危険 を伴うため,基礎的な組立方法,点検方法等を教えてい た.A社は実技研修に必要な教材(足場,電動丸ノコ,材 木等)を日本から持ち込み,作業着,保護具,安全靴な どは支給していた.講師はA社の協力会社の職人であり, 日本での外国人技能実習生の受け入れ経験を基に,要領 よく教えていた.電動丸ノコは切創災害が多いが,研修受 講生は,その日,生まれて初めて電動丸ノコに触れる者ば かりで,安全な取扱いに力を入れ教えていた(写真2). 座学教育は現場専門用語(現場でよく使う会話のやり とり含む)と安全教育を主に教える実践教育であり,A 社の専用テキストが使用されていた.講師はA社OBが 担い,通訳をつけ授業を行っていた(写真3). 大学では,A社以外にも,国際人材育成機構により総 勢約700人の技能実習生予定者が研修を受けていた.彼 らは日本でどのような職種で働くのか,どのような会社 に配属されるのか決まっておらず,7か月間,日本語研 修を受け,日本の企業に派遣された後,一から仕事を覚 えることになる. A社が実施するような送り出し国での入国前の実践教 育は,仕事を覚える上でも,安全な作業を行う上でも効 果が高いといえる. 3)非言語視聴覚教材の制作10) 厚生労働省は,2019年3月28日付け通達,基発0328 第28号「外国人労働者に対する安全衛生教育の推進等に ついて」において,外国人労働者に対する安全衛生教育 は,母国語等を用いる,視聴覚教材を用いる等,外国人 労働者がその内容を確実に理解できる方法により行うこ とを定めている.これまでわが国では,外国人労働者の 母国語に翻訳された安全教材が数多く制作されている が,2019年,これらの補助教材として,あらゆる国の 方々の理解が進むよう “ 非言語 ” 視聴覚教材を制作し た11).制作にあたっては,EU-OSHAが難民対策等を目 的に制作した非言語視聴覚教材を参考とした12) 対象業種は木造家屋等低層住宅建築工事で,そこで多 発する9つの労働災害を取り上げ,それぞれについて,ま ず,危険な作業方法(写真4:電動丸ノコの安全カバー を固定することにより無効化し,切断する材木を手に持 つ)と,その結果起こる被災のシーン(写真5:電動丸 ノコの反発により大腿部を被災(模擬))をみせ,それに より安全意識を高めさせ,その上で,正しい作業方法を 実写と単純化したイラストで示した(写真6,写真7:電 動丸ノコの安全カバーを有効にし,作業台の上で切断作 業を行う). この視聴覚教材の教育効果を検証するため,大手ハウ 写真1 研修を実施している大学 写真2 実技研修 写真4 危険な作業方法 写真3 座学研修 Vol. 13, No. 2, pp. 145 150, (2020)

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スメーカー数社の協力の下,この教材を用いた安全講習 を行った.受講した外国人労働者の国籍は15か国に及ん だ(表1).この国籍の多さは,非言語教材の重要性を窺 わせるものであった. 安全講習終了後,大手ハウスメーカーの安全管理担当 写真5 被災シーン(模擬) 写真6 正しい作業方法 写真7 イラストによる正しい作業方法 表1 安全講習受講者の割合(国籍別) 100.0% 国籍 ⼈数 割合 ベトナム 193 54.8% 中国 56 15.9% フィリピン 26 7.4% カンボジア 17 4.8% インドネシア 15 4.3% モンゴル 8 2.3% ブラジル 4 1.1% タイ 3 0.9% バングラデシュ 2 0.6% ドミニカ 1 0.3% ペルー 1 0.3% 韓国 1 0.3% ミャンマー 1 0.3% エチオピア 1 0.3% キューバ 1 0.3% 不明 22 6.3% 合計 352 0 0 1 40 52 0 10 20 30 40 50 60 全く理解できなかった あまり理解できなかった どちらともいえない ある程度理解できた 十分に理解できた 単位:人 0 1 7 46 39 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 十分に理解できた ある程度理解できた どちらともいえない あまり理解できなかった 全く理解できなかった 理解できた 89% 理解でき なかった 10% 無回答 1% 電動丸ノコの危険 (作業台未使用) 理解できた 90% 理解でき なかった 9% 無回答 1% 自動くぎ打ち機の危険 (トリガーに指をかけたまま) 理解できた 89% 理解でき なかった 9% 無回答 2% グラインダーの危険 (足が近寄り過ぎ) 理解できた 94% 理解でき なかった 4% 無回答 2% ドラグショベルの危険 (後退時の死角) 理解できた 96% 理解でき なかった 3% 無回答 1% 足場上作業の危険 (墜落制止用器具未使用) 理解できた 94% 理解でき なかった 5% 無回答 1% 脚立の危険 (天板上作業) 図3 現場の危険の理解度(安全管理担当者,n=93) 図4 労働災害防止対策の理解度 (安全管理担当者,n=93) 図5 各種危険の理解度(外国人労働者,n=352)

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者93人に,この教材の理解度を確認したところ,「十分 に理解できた」「ある程度理解できた」の合計は,現場の 危険の理解が92人(98.9%,図3),労働災害防止対策の 理解が85人(91.4%,図4)と高い評価を受けた.受講 した外国人労働者の各種危険の理解度も同様に高く (図5),非言語視聴覚教材の教育効果が認められた. 4) タブレット端末を用いた危険予知のためのベトナム 語版安全教材の制作 建設現場はリスクの高い作業環境や作業内容が多く, 事前のリスクアセスメントだけでは安全性を担保するの が難しいことから,作業者自らが安全教育や安全活動に よって現場に潜むリスクを学習し,労働災害防止に努め る必要がある.そこで,高橋らは木造家屋等低層住宅建 築工事を対象に,2012年,タブレット端末を用いた危険 予知のための安全教材を制作し,教育内容の理解の観点 から教育訓練効果があることを実証した13) 2018年,大手ハウスメーカー大東建託との共同研究に より,この危険予知のための安全教材のベトナム語版を 制作し,それによる安全教育を実施し,日本人同様の教 育効果があることを確認した(図6). 5) 非言語マンガ看板に関する研究 2017年からは,非言語マンガ看板に関する研究を行っ ている.非言語の看板といえばピクトグラムがあげられ るが,事前調査で大手造船会社のドックに掲示されたピ クトグラムの安全看板をみたが,情報は伝わりやすい印 象を受けたものの,“危なさ”をより伝えられないかと考 え,危険がよりイメージしやすいマンガ看板の研究を進 めた(図7,写真8).図7右側のイラストのように,悪 い例,良い例を一枚の看板の中で示すことにより,危険 とともに対策を伝えることも狙う. また,マンガ看板に必要な要素を,マンガに用いられ る色,マンガのデザイン(構成),色の組み合わせによる 目を引く度合いの違いから検討した14).実験は外国人技 能実習生41人(インドネシア人21人,フィリピン人20 人,ベトナム人9人)が被験者として参加し,質問形式 で回答を得た.その結果,配色については,危険は赤色 を,安全は緑色をイメージするという従来の知見が支持 された.看板の内容(構成)については,1コマのマン ガよりも4コマのマンガの方が好まれること,労働災害 図6 危険予知のためのベトナム語版安全教材 立入禁止 足場からの墜落防止 図7 非言語マンガ看板(試作) 写真8 建設現場への掲示状況(試行) Vol. 13, No. 2, pp. 145 150, (2020)

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発生状況の拡大図よりも労働災害を起こした作業の全景 図が,同様に,労働災害の瞬間の提示よりも労働災害を 含む時間の流れの提示が評価されること,リスク状況を 提示するより労働災害事例を提示する方が現場の危険が わかりやすいものの,改善事例を掲示することで労働災 害への関心や安全意識を高める可能性があることなどが 明らかになった.また,マンガ看板のフレームについて は,単色であれば紫色や黄緑色,組み合わせでは黒色/ 黄色と赤色/黄色で,縦縞,横縞よりも斜縞が選択され る傾向があることなどが明らかになった. 6)外国人特有災害の要因抽出に関する研究 現在,大東建託,芝浦工大と共同で,外国人労働者特 有の労働災害について,言葉が上手く通じない以外の要 因を抽出する研究を進めている. 研究の背景として,2016年,建設業の休業4日以上死 傷災害発生状況を事故の型別にみると,建設業全体では, 墜落災害が34.4%と最も多いものの,外国人技能実習生 に限ると,はさまれ・巻き込まれ災害が25.8%を占め最 も多い(表2). このように外国人労働者が墜落災害よりもはさまれ・ 巻き込まれ災害が多いのは,外国人特有の要因がある可 能性があり,現在,外国人労働者の労働災害分析,現場 実態調査等により,外国人特有の要因の抽出に努めてい る. 4 おわりに 以上のように,外国人労働者の労働災害を防止するた め,これまで建設現場の実態を調査し,安全教材等の労 働災害防止対策を提案してきたが,今後は,6)で述べた とおり,言葉以外の外国人特有の要因を抽出し,外国人 特有災害の防止対策を提案していきたい. また,現在,建設業を対象に研究を進めているが,そ こで得られた知見,労働災害防止対策等を他産業に生か していきたい.特に,今後5年間の外国人労働者受入人 数が多いと予想されている介護業(最大6万人),外食業 (同5.3万人),ビルメンテナンス業(同3.7万人),農業 (同3.65万人),飲食料品製造業(同3.4万人)などの業 種の労働災害防止に貢献していきたい(建設業は同4万 人と3番目に多い)15) 謝 辞 タブレット端末を用いた危険予知のための安全教材を 主担当者として制作した労働安全衛生総合研究所高橋明 子主任研究員,外国人技能実習生の実態調査,安全教育 効果検証等で協力いただいた大東建託冨松弘誠氏,外国 人特有災害の要因抽出の研究を進める芝浦工大の秦明日 香氏,古賀陽平氏には感謝申し上げます.      文 1) 厚生労働省.第13次労働災害防止計画,2018. 2) 厚生労働省.外国人雇用状況,2019. 3) 一般社団法人日本建設業連合会,再生と進化に向けて-建 設業の長期ビジョン-,2015. 4) 国土交通省.建設業就業者の現状,2019. 5) 公益財団法人国際研修協力機構,外国人技能実習・研修事 業実施状況報告(2018年度報告),2019. 6) 高木元也,呂健,庄司卓郎,惠羅さとみ,蟹澤宏剛.建設 業における外国人労働者の活用と労働安全衛生上の課題 -元請業者対象の実態調査-,安全工学,2018;57: 228-236. 7) 建設技能人材研究会.建設分野の外国人材受入れガイドブ ック2019,2019. 8) 毎日新聞.外国人労働者の「特定技能」就労,準備不足で 想定の1割弱3987人 制度創設1年,2020;2020年5月28 日付. 9) 厚生労働省.外国人労働者を雇用する事業主のみなさまへ  外国人労働者に対する安全衛生教育には適切な配慮をお 願いします,2019. 10) 高木元也.建設業における外国人労働者の安全教育-先進 事例調査と新たな安全教材の制作-.2019年度日本建築学 会大会学術梗概集 , 673-674.. 11) 労働安全衛生総合研究所.低層住宅建築工事における非言 語安全教材,

URL:https://www.youtube.com/watch?v=ZrnsD0KYB60

&t=31s,2019.

12) EU-OSHA.NAPO’Sfilm, URL:https://www.napofilm.net/.

13) 高橋明子, 高木元也, 三品誠, 島崎敢, 石田敏郎.建設作業 者向け安全教材の開発と教育訓練効果の検証,人間工学, 2013;49(6),262-270. 14) 庄司卓郎,高木元也,呂健.外国人労働者向けマンガ看板 の開発-視認性と内容理解につながる要因の検討-,労働 安全衛生研究,2020;13(1),35-47. 15) みずほ総合研究所.「特定技能」資格導入から一年 新資格 による外国人材受け入れ動向.建設業しんこう,2020; 518, 10. 表2 建設業における休業4日以上死傷災害発生状況 (事故の型別,2016年) ⼈数 割合 ⼈数 割合 墜落 5,184 34.4% 19 20.4% はさまれ・巻き込まれ 1,585 10.5% 24 25.8% 転倒 1,512 10.0% 6 6.5% ⾶来・落下 1,457 9.7% 13 14.0% 切れ・こすれ 1,422 9.4% 11 11.8% 動作の反動・無理な動作 813 5.4% 3 3.2% 激突され 734 4.9% 6 6.5% 激突 668 4.4% 5 5.4% 交通事故(道路) 658 4.4% 3 3.2% 崩壊・倒壊 475 3.2% 1 1.1% ⾼温・低温物との接触 208 1.4% 1 1.1% その他 342 2.3% 1 1.1% 合計 15,058 100.0% 93 100.0% 建設業全体 うち、外国⼈ 技能実習⽣

参照

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