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高効率な小型・薄型AC-DCコンバータを実現 (別ウィンドウで開きます)

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Academic year: 2021

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高効率な小型・薄型AC−DCコンバータを実現

−ハイパワー圧電材料を高度に積層化することで30W出力圧電トランスを実現− 平成14年10月28日 独立行政法人 物質・材料研究機構 1.概 要 独立行政法人 物質・材料研究機構(理事長:岸 輝雄) 物質研究所(所長:渡辺 遵) の羽田 肇(電子セラミックスグループ・ディレクター)、早稲田大学の一ノ瀬昇(理工学 部・教授)及び日本電気株式会社の井上武志(機能材料研究所・主任研究員)らのグループ は、文部科学省科学技術振興調整費の研究課題「セラミックスインテグレーション1)技術に よる新機能材料創製に関する研究」(平成 12 年度∼平成 16 年度、研究リーダー:羽田 肇) の一環として、ハイパワー圧電セラミックス2)材料を高度に積層化することで30W出力圧 電トランス3)(図1参照)を開発し、高効率なAC−DCコンバータ4)電源を実現した。こ れは、従来の電磁トランスに比べ電力密度が約5倍と大きく、小型・薄型化が図られている ため、今後、携帯機器や電子機器などへの応用が期待される。 2.研究背景と目的 ノートパソコンなど携帯機器の薄型化が進展する中で、AC−DCコンバータにも小型・ 薄型化が要求されている。現状のAC−DCコンバータにおいては、数種の大型部品が用い られており薄型化を妨げているが、その中で最も占有体積が大きく、高さも高いのが電磁式 トランス(変圧器)である(図2参照)。この電磁式トランスを薄型の圧電トランスに置き 換えることで電源全体の薄型化が可能になり、将来における携帯機器への組込みにも道を拓 くことになる。また、AC−DCコンバータの小型・薄型化を図る場合、高密度な実装形態 になるため、信頼性の面などから回路としての発熱が少ないことが不可欠であり、回路の高 効率化が必須である。 圧電トランスは、従来使われている電磁トランスに比べて、不燃性で電磁ノイズが出ない という特徴があるため(図3参照)、これまでカラー液晶バックライト点灯用などの高電圧 発生用に用いられているが、その出力はせいぜい5Wである。一方、AC−DCコンバータ 用のトランスは、出力として数10W以上が要求され、降圧型トランスであることが必要で ある。当グループでは、圧電トランスの形状が正方形板状であり、圧電横効果の一つである 輪郭拡がり振動モード(図4参照)5)を利用した積層型圧電トランスに着目し、電極と圧電 体や絶縁層などとの界面のバッファーレイヤー6)を工夫することで高効率な電力伝送を目標 として研究を進めてきた。 3.今回の研究成果 研究を進めてきた結果、ハイパワー圧電セラミックスを高度に積層化することに成功し、 小型・薄型で低損失な圧電トランスを実現した。寸法が 14mm×14mm×6mm の正方形板状圧電

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トランス(図1参照)では、30Wの出力電力時で変換効率96%以上、発熱22℃以下を 実現した(図5参照)。これは従来の電磁トランスに比べ電力密度が25.3W/cc と約5 倍大きい。 実現した圧電トランスは量産性に優れた積層セラミック技術 7)を用いて作製されている。 厚み方向の中央には出力部が有り、上下側には入力部が分割配置されている(図6参照)。 内部電極間は側面に形成された端子電極により接続されている。バッファーレイヤーを最適 に設計することにより、圧電セラミックスと内部電極層、さらには、入力部−出力部間が強 固に積層一体化されハイパワー駆動を実現している。 今回、圧電トランスのハイパワー化を実現した主なポイントは、①従来のハイパワー圧電 セラミック材料に比べ約2倍の振動速度(電力密度)を実現する三成分系圧電セラミック材 料(マンガンアンチモン酸鉛−ジルコン酸鉛−チタン酸鉛)を新たに開発したこと、②圧電 セラミック材料に合わせた電極材料(銀パラジウム合金)の開発と、トランス構造の最適化 による電極界面での応力低減により、ハイパワー駆動に耐える強固な結合を実現したこと、 ③圧電横効果の一つである電気機械結合係数の大きな正方形板状の輪郭拡がり振動モードを 採用したこと、の3点である。 また、変換効率90%以上のAC−DCコンバータを実現したポイントとして、①圧電ト ランスに電力を供給する入力側に、ハーフブリッジ型スイッチング回路を採用し、圧電トラ ンスに直列にインダクタを接続することで、ZVS(ゼロボルトスイッチング)8)という高 効率な駆動を達成したこと、②圧電トランスからの出力側に、MOSFET(半導体デバイ スの一種)を使った同期整流回路を用いることで大幅な効率アップを達成したこと、が挙げ られる。 この結果、本圧電トランスを搭載したAC−DCコンバータは、交流入力80V∼120 Vにおいて87%以上の効率を有し、通常の電圧であるAC100V入力の場合には、世界 最高レベルの効率である90.2%を達成した(出力は13V一定)。AC−DCコンバー タの制御方式は、圧電トランス固有の共振−反共振特性を活かした周波数制御方式を採用し、 共振周波数と反共振周波数の中間点で動作するようにしている。さらに、形状の大きい電磁 トランスに替えて小型でかつ低背の圧電トランスを用いたことにより、今回のAC−DCコ ンバータは厚さ12mm以下と極めて薄型の形状を実現した(図7、8参照)。 4.成果の波及効果 圧電トランスの原理はジルコンチタン酸鉛系の圧電セラミック材料が開発された当時から 提案されているが、これまでは液晶バックライト用の冷陰極管の高昇圧電源やオゾン発生用 の高圧電源など、低出力(5W以下)用途に限られていた。今回、新たに開発されたセラミ ックスインテグレーション技術により、出力30Wで極めて低損失な小型・薄型圧電トラン スを世界で初めて開発することに成功した。今後、携帯機器や電子機器など小型化と低ノイ ズ、低消費電力が求められる用途への応用展開が期待される。

(3)

用語説明 1)セラミックスインテグレーション 近年、機能性セラミックスは急速な用途拡大が実現された結果、さらに高度な技術が求め られており、モノリシックな材料ではこの要請に応えられなくなっている。このような中で、 セラミックスインテグレーションは各種機能材料の統合化、複合化による多機能実現を目指 す新しい材料・設計技術である。 2)圧電セラミックス 大きな誘電分極を有する強誘電性物質は、圧電性を示し、電気−機械エネルギー変換機能 を有する。実用的な圧電材料としては、水晶やペロブスカイト構造の複合酸化物が知られて いる。その中で、最も大きな圧電性を示すのが、通常、PZTと呼ばれるジルコンチタン酸 鉛系の圧電セラミックスである。PZTは当初、米国で開発されたが、圧電特性や温度特性 の改善のため第3成分を加えた三成分系材料が日本で開発され、今日までフィルタ、レゾネ ータ、センサ、アクチュエータなど各種用途に広く適用されている。 3)圧電トランス 一次側に電気エネルギー(交流)を入力した時に、圧電トランス全体が振動し、機械振動 エネルギーに変換される(圧電逆効果)。この機械振動エネルギーが圧電正効果により電気 エネルギーに再変換され、二次側から電気エネルギーとして出力される。圧電セラミックス は優れた絶縁性を有しており、一次側と二次側の間は高い絶縁性が確保される。(図9参 照) 4)AC−DCコンバータ 一次側の交流(50/60Hz)を電子機器に必要な直流(二次側)に変換するデバイスをコ ンバータという。コンバータは交流(例えば実効値100V)を一度、整流回路を通して直 流にし、高周波でスイッチングし、次にトランスで降圧する。トランスからの高周波電圧は、 整流回路を通して必要な直流電圧に変換される。一次側の高電圧(100V)から二次側の 機器を保護するため、AC−DCコンバータ用トランスには、一次側−二次側間に高い絶縁 性が求められる。 5)輪郭拡がり振動モード 正方形状の板状試料が正方形状を保ったまま拡大−収縮して振動するモードであり、分極 方向に対して垂直方向の振動を用いる圧電横効果の中ではもっとも高い電気−機械結合係数 (約50%)を有している。

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6)バッファーレイヤー 複合機能をデバイスとして高度に実現するためにキーとなる緩衝的役割を果たす領域。実 現方法としては、組成の傾斜化やアンカー構造をはじめとした様々な構造的工夫による方法 がある。これらにより、異種材料間の反応、物質移動の抑制、機械的応力や振動の制御、ま た信号の伝播や遮蔽の最適化など単一の材料では不可能な多様な機能を実現することができ る。 7)積層セラミック技術(グリーンシート積層法) 機能性セラミックスの内部に電極層を形成するのに用いられる技術。セラミックコンデン サや多層セラミックス基板などの製造に用いられている。焼成前のセラミックス粉末を有機 バインダや溶媒と混合し、薄いシート状(グリーンシート)に成形する。この表面に印刷法 などにより内部電極材料として銀、パラジウム、ニッケルなどを形成する。作製したシート を所定の形状に切り抜いたものを積層し、加圧成形した後、有機バインダを分解除去してか ら焼成することにより、電極層とセラミックスを一体化して焼結させる技術。圧電セラミッ クスとしては積層圧電アクチュエータの製造法にも適用されている。 8)ZVS(ゼロボルトスイッチング) 半導体スイッチのターン・オフ時に発生するスイッチング損失を低減するために、電圧が ゼロの状態でスイッチの切り替えを行う動作をZVSという。 (問い合わせ先) 独立行政法人物質・材料研究機構 広報・支援室(〒305-0047 茨城県つくば市千現 1-2-1) TEL:0298-59-2026 FAX:0298-59-2017 (研究内容に関すること) 独立行政法人物質・材料研究機構 物質研究所 電子セラミックスグループ・ディレクター 羽田 肇

(5)

図1 輪郭拡がりモード圧電トランスの写真

・輪郭拡がりモード圧電トランス、およびそのケーシング。圧電トランスの形状は縦、横ともに

14mm、厚さ6mmと、同等出力の電磁トランスに対して、体積比で約20%(1/5)の小型

化が図られている。

(6)

図2 現在のACアダプタ(電磁トランス搭載)と薄型の圧電トランスコンバータ(実装例)

圧電トランス 電磁トランス

・ 上段は現状のノート PC 用30W 級 ACアダプタ。厚さ16mmの電磁トランスなどが搭載。

・ 下段は厚さ6mmの圧電トランスを搭載した薄型電源モジュール(DC-DC コンバータ)の

実装例。圧電トランス部は従来に較べて体積1/5、厚さ1/3に小型化。

図3 圧電トランスと電磁トランスとの比較

項目

圧電トランス

電磁トランス

素子形状

電力密度

電磁放射ノイズ

出力波形

可燃性の有無

小型、薄型

25W/cc

発生なし

正弦波

不燃性

大きい

5W/cc

あり

歪み波

(高調波成分によるノイズ発生)

難燃性

(7)

図4 輪郭拡がりモード圧電トランスの動作

拡大

収縮

(輪郭拡がり振動モード)

・ 輪郭拡がり振動モードは正方形状の板状試料が正方形状を保ったまま拡大−収縮して

振動するモードであり、分極方向に対して垂直方向の振動を用いる圧電横効果の中で

はもっとも高い電気−機械結合係数(約50%)を有している。共振周波数は音速など材

料の弾性定数が一定の場合、形状寸法に反比例するが、今回の形状14×14×6mm

では約140kHzである。圧電トランスは共振周波数の近辺で駆動され、また、エネルギ

ー密度は概ね駆動周波数に比例する。従って、実用的な圧電トランスの出力値(エネル

ギー密度×体積)は通常、ある形状で最高値を示すと考えられている。振動の方向は電

極層に対して平行なので、電極界面にかかる引張り応力は次項の長さ縦モード素子と

較べて小さい。

(長さ縦振動モード)

・ 一方、長さ縦振動モードは棒状振動子の長さ方向の振動を用いるもので、圧電縦効果

を用いるため横効果と較べて高い電気機械結合係数(約60%以上)を有している。しか

しながら、① 振動の方向と分極方向が同じであるため電極層に垂直に大きな応力がか

かり、必要な素子強度を確保することが困難である ② 長さ方向に電極層を積層する

ために積層数が膨大となり製造コストが極めて高くなる というような問題があり実用化

されていない。

(8)

図5 圧電トランスの出力特性(30W出力)

N8 30W出力 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 125 130 135 140 145 150 f(kHz) 効率( %) 、 Δ T(℃ ) 0 50 100 150 200 250 300 入力電圧( V) 効率 ΔT 入力電圧

30W 定電力駆動特性

効率

入力電圧

温度上昇

N8 30W出力 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 125 130 135 140 145 150 f(kHz) 効率( %) 、 Δ T(℃ ) 0 50 100 150 200 250 300 入力電圧( V) 効率 ΔT 入力電圧

30W 定電力駆動特性

効率

入力電圧

温度上昇

・本圧電トランスの共振周波数は130kHz 付近にあるが、この部分では電力損失が大きい

(発熱による温度上昇が存在)。実際のAC−DCコンバータの周波数制御は139kHz以上

と損失の小さい周波数領域で行っており、温度上昇は22℃程度と低いレベルである。

(9)

図6 輪郭拡がりモード圧電トランスの構造および端子接続

内部電極:

Ag-Pd

上方断面図

分極済み圧電セラミック

断面図

入力部:

入力部:

出力部:

不活性層:

未分極圧電セラミック

絶縁層

(バッファーレイヤー)

未分極圧電セラミック

不活性層:

未分極圧電セラミック

入力端子

出力端子

接続図

・輪郭拡がりモード圧電トランスは、グリーンシート積層法により作製されており、バッファー

レイヤーを工夫することにより、圧電セラミックスと内部電極層が強固に積層一体化されて

いる。厚み方向の中央には出力部が配置され、上下側には入力部が分割配置されている。

内部電極間は側面に形成された端子電極により相互に接続されている。また、入出力部の

間や表面部、底部は未分極状態であり絶縁層となっている。

(10)

図7 圧電トランスを用いたAC−DCコンバータの写真

図8 圧電トランスを用いたAC−DCコンバータの回路図

上記回路図で、S1、S2 はハーフブリッジスイッチング回路の MOSFET である。ここでスイッ

v

in 圧電トランス Co RL L C R Ls Cd1 Cd2 S1 S2 Cds1 Cds2

v

DS2

i

1 Vo + -+ -

v

1

v

2 + -+ -1:N

v

GS1

v

GS2 Filter

i

ds2 RC1 C1 Lo1 Lo2

チングされた電圧波形は矩形波であるが、圧電トランスに直列に接続されたインダクタ Ls と

圧電トランスの一次側の並列容量 Cd1 を共振させることにより、圧電トランスには常に正弦

波が入力される構成となっている。出力側整流回路は、ダイオードの代わりに MOSFET を

用いた低損失な同期整流回路となっている。

(11)

図9 圧電トランスと電磁トランスにおける構造の比較

Expansion Shrinkage Expansion Shrinkage 電気エネルギー

圧電体

電気エネルギー 機械振動エネルギー

<圧電トランス>

<電磁トランス>

電気エネルギー 電気エネルギー 磁性体 /コイル 電磁気エネルギー

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