様式8の1の1 別紙1
博士論文の内容の要旨
No.1 専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 赤羽 千佳 これまでの情報化社会の発展は,無機半導体デバイスに大きく支えられてきたが,それらの製 造・微細加工を担ってきたトップダウン型の技術開発は成熟期を迎えている.一方,近年では, 有機分子を基本とした自己組織化によって構築するボトムアップ技術を取り入れた素子製造技術 が注目を集め,それを適用した有機薄膜素子の開発研究が盛んに行われている.素子の性能の一 つであるキャリアの伝導性は,活性層内の有機半導体分子の配列・配向といった自己組織化構造 に大きく影響されることから,変換効率向上の技術開発が急がれる太陽電池分野にとって,構造 制御法の探索が重要なカギとなる.低分子系有機半導体に着目すると,その薄膜内における電荷 キャリアの輸送はホッピング伝導が支配的であることから,輸送能向上のためにはπ共役系平面 の重なりが大きい分子を用いた方が有利である.電子ドナー型の半導体分子であるヘキサベンゾ コロネン(HBC)は,大きなπ共役系を持ち,秩序性の高いカラム状の構造体を形成する.こ の構造体中では,ホールが構造体の長軸方向(HBCのスタック方向)に沿って移動し,有機半 導体の中でもトップクラスのホール移動度を示すことが報告されている. 本研究は,両親媒性を付与した一連のHBC誘導体に着目し,Langmuir-Blodgett(LB)法によ って組織化単分子膜を構築し,その膜構造と光電流特性の相関を明らかにすることを目的とした ものである.HBC誘導体としては,HBCに対し,疎水基としてのドデシル鎖と,フェニル基を 介した親水性のトリエチレングリコール(TEG)鎖を付加した両親媒性HBC化合物(HBC-TEG), および親水部構造を系統的に変えた化合物を用いた.製膜条件や分子構造に依存した膜内におけ る分子充填構造をX線反射率法をはじめとした高度な局所分析手法により詳細に解析し,それら の膜構造と光電流特性の評価を行った. 本論文は全6章で構成され,その概要は以下のとおりである. 第一章は序論であり,有機薄膜太陽電池の作動機構,有機半導体分子の要求される性能,有 機薄膜太陽電池の研究開発の動向について述べ,それらを踏まえた研究の意義と研究目的を述べ ている. 第二章では,表面圧に依存したHBC-TEG単分子膜の構造と光電流特性の評価を行い,両者の 相関性について検討している.HBC-TEG単分子膜は,幅約20 nmの表面線状ミセル構造体から成 り,その内部でHBC部位はスリップスタック配列構造で充填されていること,および圧縮によ ってそれらの構造体がドデシル鎖とTEG鎖の配向変化を伴って互いに接触することを明らかにし た.一方,HBC-TEG単分子膜の面内の光電流値測定では,より高い分子密度まで圧縮した膜に おいて,分子密度の増加から予想される値を上回る光電流値が得られた.これは,圧縮により表 面線状ミセルの接触が起こり,面内のキャリア輸送に有効なキャリアパスが発達したことによる様式8の1の1 別紙1