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高校・理数科教育(物理・数学)の科学技術離れの実態と授業実践検討(その2) : 原子観のアンケート調査から

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(1)Title. 高校・理数科教育(物理・数学)の科学技術離れの実態と授業実践検討(そ の2) : 原子観のアンケート調査から. Author(s). 酒井, 源樹; 倉賀野, 志郎. Citation. 僻地教育研究, 51: 55-62. Issue Date. 1997-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/1578. Rights. 本文ファイルはNIIから提供されたものである. Hokkaido University of Education.

(2) No.51. 1997.3. 高校・理数科教育(物理・数学)の‘‘科学技術離れ’’の. 実態と授業実践検討(その2) 一原子観のアンケート調査から一. 酒井 源樹. 倉賀野志郎. Researchfor Science&MathematicsEducation. inHighSchoolⅡ−ConcqptualUhdel・Standing O′ガよgん−ぶc九00J励〟de几ね0乃Ⅳαわげe− MotokiSAKAIand Shirou KuRAGANO. 3年生109名. はじめに. 我々は論文(その1)(l)において,「若者の科学技術. 合計 347名. 離れ」を背景にして,見方・考え方としての“自然観・ 数学観”の形成が必要であると考え,まずは自然観・数. 調査時間 理科の授業時間の20分†. 調査実施日 平成7年(1995)12月 質問G−1∼G鵬6. 学観そのものの開拓しうる基礎をアンケートとして調査. (1)アンケート調査結果. することとした。r【“理科離れ’’現象の実態を調査する. 以下の集計結果のそれぞれの表には,学年毎の回答数. という視点とは異なり,“自然観・数学観”の基礎が存. を人数で与え,「 ̄全学年」欄には人数および()内に. 在していることを調査の基本的視点」とした。調査分野 は,数学については,数学観として無限論を,また物理. その百分率を付した。また,表の最後の「参照」欄の(). 分野については物理観・自然観として原子論を選定し. 湖陵高校での調査結果から,対応する項目を比較のため. 内の数字(百分率)は,論文(その1)で報告した釧路. た。■. に抜粋した。. 本稿は論文(その1)で展開した自然観として,原子 論に関する部分に続くものである。高校に限定して,都. (a)〔質問G−1〕. “原子’’という言葉から何を連想しますか。いくつ. 市部においては釧路湖陵高校を,郡部では北海道白糠高. でもよいですから,連想する言葉を書いてください。. 校を選定して調査を行った。論文(その1)においては, とりわけ都市部に関する調査を報告した。白糠高校では,. 集計結果が表1である。複数の言葉を回答させてので,. 1年生から3年生まで全校生徒を対家にアンケート調査. 重なる部分もあるが,一一番最初イメージしたものに限定. を行い,総数347名から回答を得たが,今回は,その原. して整理してみた。. 子観に関する調査結果と,都市部との比較,今後の授業. 白糠高校の生徒たちが−一番最初にイメージした内容と. しては,原子という言葉から反射的に連想したと考えら. 実践に向けての課題を述べておきたい。. れる“〔原子〕爆弾”(18.4%),“原子力発電〔所〕” 〔1〕原子論についてのアンケート調査報告. (10.1%)および“原子力”(7.8%)が多く,合わせる. 今回は白糠高校でのデータを報告する。. と36%に達する。自然なことであろう。同項目は湖陵高. 調査方法. 校でも合計31%となっていた。. それに比べて,原子の実体についての認識に由来する. 対象生徒 北海道白糠高等学校. 1年生118名. イメージである‘‘小さい”は2年を主として全体の7.8. 2年生120名. %に留まっており,湖陵高校での調査でこの範時のイ. *前者の数学に関する調査結果を(その1)において報告し たが,それに続く展開は小形秀雄がその調査に基づく授業実践. †白糠高校の藤原美実氏をはじめ,アンケートの実施にあ たっては同校の渚先生の協力をいただいた。ここに記して感謝. とを合わせて修士論文として整理しつつある。. の意を表したい。. ¶ 55 【.

(3) 酒井 源樹・倉賀野志郎. メージが24%を占めたことと対照的に思われる。また,. 表1〔質問G−1:‘‘原子”で連想する言葉〕の回答例. 連 想 事 例. 白糠高校では“物理・化学”をイメージする割合が2.3. 1年 2年 3年 全学年 参照. 小さい/微小. 4 20 3 27(7.8) (24.0). %であり,湖陵高校でそれらのイメージが12%ほどあっ. 化学/物理/科学. 3 4 ロ 8(2.3) (12.4). たことも差異と受け止めることもできよう。両校での教. 原子力発電〔所〕. 3 9 23 35(10.1) (12.4). 科内容の学年進行の違いを反映しているのであろうと推. 原予備粗/上ノラゲイ・広島藁崎 26 20 18 64(18.4) (9.1). 察される。 白糠高校では無回答・連想なしの比率が高かった。自. 10 3 14 27(7.8) (9.1). 原子力. 元素信己号】/ア仏/分子/電子 9 4 四 24(6.9) (7.4). 由記述のため回答しにくかったのだろうが,その他とと. 物質のもと/働贋の最小単位 2 ロ ロ 10(2.9) (5.8). もにその割合も提示しておくこととする。以下の質問事. ロ. 個別物質名/元素名 鉄腕アトム. 2(0.5) (4.1). 人の名前. 1(0.3) (4.1). 球/粒子〔の集合体〕. 8. 力/電気. 4 ロ 3. 核/核融合/分裂. 2 3. 項も同じである。. 5(1.4). 原子人. 4. 連想するものなし. 3 2 3 8(2.3). その他. 3 12 3 18(5.2) (1.7). わからない. 15 8 24(6.9) (1.7). 無回答(空欄). 〔数字は回答人数,()内は%〕. 1−1 9つすてノ. 9っ11●. 1、・t. 鴨手車中一性サ †fヽ−、小−かろ. 1−3. このl†して1−l・け..=事句、■l. r苓J¶、・・ち,き,て腑恒\l■ていチてItろ. .・中 予のつうご(帥) 1−5. ト、. し・・h†てト ■・一 ■八. Tllて、t. (rこ1㌧くY). ら ∴. ㌫叫 しt. 憾 l. lつ0. ..与亨. ・下手く†iち t●tドtt一一ち・. 1−6. 1−7. 二二 鞋㊥嘩. 図1 原子のイメージ. − 56 一. ≡三、≠ ・坤咋.

(4) No.51. 高校・理数科教育(物理・数学)の‘‘科学技術離れ’’の実態と授業実践検討(その2). 表2 〔質問G−2:内部イメージ〕の回答 回 答 事 例. 1997.3. 表3〔質問G−3:分割可能性〕の集計. 1年 2年 3年 全学年 参照. 回 答 項 目 ■1年 2年 3年 全学年 参照. 卿斗書に掲載してあるような電子配置図. 41 50. 無限分割可能. (図1−・1・1,2). 冊の考えに近い. 2 3(0.9) (5.0). 点もしくは丸い球のイメージ. 40. 最小単位あり. 【 その集合休の図版(図ト3) 33 18 26 77(22.2) (5.8). 鵬の考えに近い. 原子の内部にかかわるイメージ. 2 2 ロ 5(1.4) (3.3). わからない/知らない 5 9 9 23(66.6) (2.5). (図1¶・4,5) 分子の原子間結合のイ. 無回答(空欄). 2. 四 19 14 44(12.7) (0.8). (図1−6,7) 〔図版なし〕 ・丸くて小さい粒子. (C)〔質問G−3〕. 田. ・陽子.電子.クオークな どが入っている球. 2(0.6). わからない/知らない. 23. 無回答(空欄). 14 35 15 64(18.4) (7.4). “原子’’は. ①さらに分割していくと無限にできる, ②これ以上分割できない単位がある という考えがありました。 あなたは,どちらの考え方に近いですか。. (b)〔質問G−2〕. ③その他の場合も書いてください。. 私たちの体や石ころも“原子’’からできています。. 回答を表3に集計した。また,そう回答した理由の例. “原子”っていったいどんなものだと思いますか。. を次に示す。. 図でも言葉でも良いですから小さい粒子と思われ る“原子”(陽子や電子)の内部も合わせてイメージ. (理由例). を書いてください。. 〔無限分割可能〕. 回答数を表2にまとめ,代表的なイメージを図1とし. ●箱をあけたらまた箱だとか。. て示す。. ●化学とは無縁にすぎるほど不思議なものだ。. イメージの図版が書かれたものは39.5%で,大半は点. ●原子はいくつかの細胞でつながっている。. もしくは丸い球,もしくはその集合体か,教科書に掲載. ●できたら楽しいかなぁーと思う。. してあるようなものが多かったが,原子の内部にバネが. ●原子が無限じゃないとちがう物質ができなくなっ. 内包されているようなものもある。原子内部の階層性に. ちゃう。. 関するイメージも少数ながら存在しており,これは,い. 〔最小単位あり〕. ずれの高校でも同じである。. ●割れると大変めんどくさい。. 教科書に掲載してあるような電子配置図が湖陵高校. ●無限ってことはないと思う。無くなるかもしれない。. (33.9%)と比較すると4.3%と少ないが,この部分に. ●無限じゃない,終わりがある。. 限らず,両高校の履修カリキュラムの差盟がアンケート. ●無限なんて考えられない。. 上に現れていると考えられる。今回は両高校の履修形態. ●無限に近いけど無限じゃない。. にまで含めて検討を加えておらず,全学年を対象として. ●化学などが発展すると分かってくる。. の白糠高校のアンケート調査の方が実像により近いと思. 〔その他〕. われる。. ●ずっと小さくなって消滅する。. †∬図版なし__」では「気体の中に入っている小さくて丸. ●その原子によって分割できるものとある程度までで. い粒」として「かたくてすかすか,おもい」が「空気み. きるものがある。. たいなもの_Jで「 ̄核(中ノ[一、)は液体みたいなものMlとい. ●クオークのさらに,その粒子をつくっているものも. う液滴モデルをイメージさせるような記述もあった。そ. きっと発見されていくと思う。. の形としては「でこぼこな形をしているM」や璽ひしがた. ●今の技術だと無限に近いところまでいく。実際にで. で重なってできている」として丸いイメージではないも のもある。また「1京子は弱い物質だけど,次々と生まれ. きなくとも化学式とかそういうものでは無限までで. 変わるもの▼Jとして変化をあげている例もある。. きそう。. 「▲生物や物の1番のもと」で「体の中を流れる粒子」 無限分割が可能か否かという問題は,回答に示される. や細胞,生きているもの」として生物と結びつけたイ メージも少数ながらある。. ようにはぼ半数に分かれている。両高校とも同じである。. 【−【57 −.

(5) 酒井 源樹・倉賀野志郎. 子がないと何もないことになる。宇宙もない。. 表4〔質問G−4:原子の起源〕の回答 回 答 事 例. ●原子という名前ではなかったと思うけど,それらしい. 1年 2年 3年 全学年 参照. 物質は宇宙の始めからあった。. 60 55 55 170(49.0) (62,0). 思う 始まる前からもある. 8 田 9 28(8.1) (6.6). 思わない. 6 4 4 14(4.0) (3.3). 〔始まる前からもある〕. ●原子ができたから→宇宙ができた。. 宇宙が始まった時につくられた 5 2 6 13(3.7) (1.0,7). ●宇宙以前から原子はあった。. 宇宙の始まりには加(以降にできた) 20 18 9 47(13.5) (6.6) わからない/知らない. 8 6 ロ 21(6.1) (2.5). 無回答(空欄). 4 14 9 27(7.8) (1.7). ●原子たちが手箱をっくり,生物や植物などいろんなす べてのものを作って,今がある。 ●宇宙の始まりの前から原子じゃなくてもそのようなも のがあった。それじゃないと宇宙が存在しないと思う。. 後述するが,このことは,原子観を直接的課題とする,. ●芋苗のはじまり自体知らないし,もしかすると宇宙よ. 例えば討論等を組み込むような教材が構成し得る可能性. を示している。. りもっと大きなものが存在していたかもしれない。「存 在すべきものが存在する前から原子はあった」って感じ。. 「箱をあけたらまた箱だとか」という階層性が触れら. れていたり,「原子が無限じゃないとちがう物質ができ. 〔思わない〕. なくなっちゃう」という考えに対して,「無限なんて考. ●宇苗の始まりは,素粒子の形で存在していて,温度が. えられない」としながらも「無くなるかもしれない」と. 下がって行くにしたがって,こいっらが結びついてっ. も不安が述べられている。それぞれの考えには与してい. て原子ができたと思う。 ●芋諸に始まりがあったとしたら,何らかのはずみで,. なくとも「ずっと小さくなって消滅する」や「無限じゃ. ない,終わりがあり」に加えて「分割できるものとある. できて進化したんじゃないの。. 程度までできるものがある」や「クオークのさらに,そ. 〔宇宙が始まった時にできた(創造された)〕 ●芋苗と一緒にできた。. の粒子をっくっているものもきっと発見されていくと思. う」ものもある。「化学式とかそういうものでは無限ま. ●宇宙のできた瞬間から/同時に。. でできそう」として認識上の深化を配慮しての考えも示. ●ビックバンでできた。. されている。今回,原子論史等の科学史を直接的に課題と はしなかったが,次の設問の回答においても,その科学史. ●無から何かが生まれた時とかのあと。. 教材の検討が必要であるように思われる部分が現れている。. ●人間が生まれる前からはあったんじゃないか。でも宇. 〔芋苗の始まりにはない(それ以降にできた)〕. 宙の始まりから…というのは∼…わからない. (d)〔質問G−4〕. ●地球ができたころ。. “原子”って,いっできたのでしょうか。芋酋の. ●大気ができてから。. 始まりからあったと思いますか。. ●地球に生まれた最初の物体が原子。. (設問の意図が分かりにくく,圧倒的多数は“あった. 〔その他〕. ●物のはじまりからあった。. と思う’’となっているが,宇宙と無関係に宇宙の始まり からあったという考えと,それと同時にできたともとれ. ●人間が発見したものと思う。. る回答が含まれている。“思う”だけでは判断できない. ●ずっとずーつと苦から。人間ができる前から。. 回答が含まれていることになる。それが明示されていな. ●芋苗の始まりはいっなのか。原子は始めから原子だっ たのか。芋苗といっしょにできたのか,なんて思う。. いものについては項目を分けている。). 回答数を表4に集計し,そう回答した理由の例を以 ̄F に拾い上げた。. l ̄思う」や「始まる前からもあった」を明確に区分す ることは困難だが,「芋苗よりももっと昔」からあるか, 「宇宙の始まる以前,宇宙以前から原子はあった」とい. (理由例). う原子前提説が半数に達する(57.1%)。これは湖陵高. 〔思う〕. ●宇宙も原子だと思う。. 校においても同じである(47.9%)。. 設問の曖昧さがあり,原子前提説か,原子途中生成説. ●宇宙も原子のかたまりでできているので始めからあった。 ●すべての始まりは原子から。原子あってこそのこの世界。. (宇宙の初期のみならず,いくつかの時代選定が予想さ. ●じゃないと,地球や太陽が存在しなかった。. れる)を明確に腑分けしにくかったが,大筋の傾向とし. ●でもその一番最初に出来た原子は何からできたの?. ては両高校とも同じで前者が半数を越える。しかし,後. ●すべてが原子からできているのならば,始まりから原. 者の生成時期に関しては差がある。. −一l 58 −一.

(6) No.51. 高校・理数科教育(物理・数学)の“科学技術離れ”の実態と授業実践検討(その2). (e)〔質問G−5〕. 表5〔質問G−5:化学的性質のちがいの由来〕の集計. 回 答 内 容 24(6.9). (14.0). 電子数. 4(1.2). (7.0). 電子配置・価電子. 3(0.9). (5.0). 性質の速い. 別なものだから違う(穫瓶物質カり. 39(11.2). (10.7). 構造の違い修子数・電子数). 16(4.6). (18.2). 原子そのものに遠いがある. 11(2.3). (8.3). 例えば,酸素の“原子”と,炭素の“原子”とでは, 化学反応でも働きが違いますね。この働きの遠いの 原因はどこに,あるいは何にあると思いますか。 集計結果を衰5にまとめる。 「性質の遠い」としては,「視覚の差異(酸素は見え ない,炭素は見える)」として「個性/性質の差異」な. (その他の回答)¶ちがいの原因−】. どの「▼それぞれの性質」の差異としている。これと共通. 1年生:組み合わせ/原子の量/炭素は見えるが酸素は見え ない/炭素と酸素の内部の遠い/原子の中に含まれている もの/くっつき方/原子が生まれた場所/酸素は生物体の. するが,「別のものだから違う(種類が)」として「固. 中,炭素は石とかアルミの中/地球環境/DNAのような. 体と気体の違い」やそもそもの名前としての「炭素と酸. 情報が原子の申にある/エネルギー. 素川」としての「種類の相違」を指摘している例も多い。 「性質の違い_」,「別ののだから違う」,「原子その. 2年生:くっつき方/原子の大きさ/原子の数/原子の引 力/質量・圧力・結合力・エネルギー/もっている粒子が 違う/炭と酸/火がつくのとつかんのの差//酸素や炭素が くっついたときに他の原子そのものが変わってしまう/原 子のおいてある場所/名前. ものに適いがある」の項目を合わせると20.4%に達して. いる。湖陵高校も同じである(33.0%)。. 3年生:原子間の結合/イオンの個数/原子量/組み合わ. 性質が個性が異なるように差異があるのは当然で,そ. せ/原子の数/原子より小さいものの違い/もとのやつの 逢い/原子自体に原因はないと思うのだけれど…/水素の 数が違うから働きがちがう/名前が違う/人間にある わからない/知らない 無回答(空欄). 1997.3. れを課題とする問題意識そのものが既に原子一元論観が. なければいけないはずである。1例ずっではあったが,. 123(35.4). 「働きが違うことすらわからなかった」,「原因なんて. 64(18.4). 知らない¶」という回答もあり,性質の逢いを,原子から 説明できると考えるか,そもそもの“元素”としで性質を内 包しているものとして考えるのかの差は意外と大きい。. そのようには「思わない」ものとしては今日の宇宙論. の認識に立っ回答(「芋笛の始まりは,素粒子の形で存. しかし,他方「電子数」や量の差異としては「原子の. 在していて,…」)もみられた。「宰領をつ.くったその. 量が違う(原子の数の差異)」・「陽子や電子(中性子). 日」か「宇宙の始まりと同時ぐらい」,「無から何かが. の数の差異」や「電子配置・価電子」として「最外殻電. 生まれた時とかのあと」という考えも示されている。この. 子の数によって働きが違う」や「イオンの個数の差異」. 部分も,無限分割化が可能か否かという課題と合わせて討. として化学的考えから説明しようとする試みも出ている。. 論を中心とする教材を組み得る可能性を示している。陽子. これは「構造の遠い」として「組み合わせ(くっつき方)」,. さえも崩壊する可能性を予測する物理理論もあるが,生. 「原子のくっつき方」の加えて「原子間の結合」という. 考えとも同じである。. 成・消滅をめぐる課題は原子観を問う恰好の題材となろう。 地球の誕生あるいは生命の誕生に結びついて原子の起. これらの質を原子から何らかの説明が可能であるとの. 源を考える感じ方が,案外と多いようである。その原子. 考えは6.7%で,湖陵高校の30.2%とは差があるが,こ. 生成の開始時期としては,「太陽ができてから」,「地. れも学年進行の速いであろう。. 球ができてから」,「大気ができてから」や「水とかが. また,項目としては現れてはいないが,「働きの遠い」 とでも形容しうるような「それぞれが働くエネルギーが. できたころ」に加えて「地球に生物ができた時から」な ど「人間が誕生してから」など生物進化と結びつけたも. いっぱいっまっている,その差異」であるとか「原子の. のもある。地球史上の様々な事柄が選定されている。本 来,原子からそれぞれが形成されているのであるから,. 中にDNAのような情報がつまったものがあり,それに. 論理的順序を考えても,まず原子が前提となるはずだが,. としてとらえる考え方も示されている。「地球の環境の. その原子とマクロな身近な物質とのつながりが希薄であ. 差異」として「原子が生まれた場所の差異」としての原. ることの結果ではないだろうか。. 子の“履歴”によって差異が根拠づけられるという考え. したがって働いたりする」や「液体・固体・気体の速い」. 少数ではあるが「人が作った」として,「人間が発見. も少数ながら示されている。. した物,化学っていうものができてから」や「人類が原. (f)〔質問G−6〕. 子を見つけた時から」という考えも根強く存在している。. 水素の“原子”から金などのような“原子”をっ. ニュートンが万有引力を‘‘発明”したというような考え. くることばできないでしょうか?. と対略すべき科学史教育が取り扱うべき課題も存在して. そのように考える理由も合わせて書いてください。. いる。. 鵬 59 岬.

(7) 酒井 源樹・倉賀野志郎. うと意図したものであった。しかし,「わからないⅣ」と. 表6〔質問G−6:元素の転換〕の回答. r−無回答」をあわせると,G…5で54%弱,G−6でも. 回 答 内 容 できる〔と思う〕. 47%を越えており,‘‘原子’’と“原子核”の階層として. 68(19.6). の質の違いの認識をもとめるのは,難しすぎたようである。. (その理由). 1年生:原子分解などをすれば/水は酸素原子と水素原子で. できていて固体・液体になったり気休になったりするか. 〔2〕原子論の教材構成を課題とする. ら/金も原子からつくられているというなら同じ原子であ る水素の原子にもっくれないことはない/全宇宙の中にあ. (1)原子論の展開. る物はみんな原子というものでつながりがある。. 科学的認識過程の一段階として自然・社会を対象とす. 2年生:原子から何でもできるから変えることはできる/素 が素で同じ/水素と何かを組み合わせて/化学は未知が いっぱい. る“世界観’’的把握段階があることを検討する必要があ. る。梅津徹郎氏は「‘‘観”の教育の構築」として「“価値. 3年生:原子の構造を変えればできる/電子,陽子,中性子 の組み替えが出来るなら(今は不可能)/原子の基本形は. 観の形成’’は人間が生きていく上で根源的なこと」で,. 水素だから,星の核融合みたいにしてつくることは可能。 現に恒星はそれをやっている。 できない〔気がする〕. 「自然や社会のしくみをできるだけ体系的に理解し,どこ にどう働きかければ,自ら掲げた価値を実現できるのか,. 106(30.5). その科学的な道筋を理解する必要」(2)を強調している。. (その理由). 1年生:原子は最小の単位だから/水素の原子は水素の働き しかしない/水素から金はできない性質/水素は水をつく る原子だから/金などのような原子をつくる物質は決まっ ている/ひとつひとつの物の原子は形か何かがちがうと思 うから金などはできない/原子自体の形を変化させるのは 不可能. 論文(その1)では体系的な理解をとしての自然(世界). 像と,そこに現れる自然観として次の3つを区分した。 ①体系的自然像,体系構成の視点としての自然観 ②体系性の延長(論理的,歴史的・予測)として意味が. 2年生:原子の種類やくっつき方が違う/水素は共有結合で. 分子になり,金はプラスの原子が並んでその回りを電子が. 問い直されるという形での自然観. まわっているから構造が違う/水素は水素/炭素→ダイヤ. ⑨体系性・歴史性の自然の観念的把握に基づく,目的論. モンドだったらありうるかもしれないが,水素は金と違う. を含めた自然史への自己適用から問われる自然観. 3年生:原子は不変/一つの原子から別の原子は作れない/. 水素はもともと水素原子であってはかのものにはなれな. まず①として統一的世界像を「観」(自然・社会・人. い/水素は目に見えないから(見える)金は無理/金は純 粋だから わからない/知らない 無回答(空欄). 間等)と併せて構想すべきことを提案したい。統一的世 界像の提出には,像の「統一」の視座が要求されている。 これはどのまうな「観」を形成していくべきか,という. 100(28.9) 64(18.4). ことを具体的自然像にかかわった形で課題化することで. 回答をその理由とともに表6に示す。. もあろう。. 全体で30%が“できない”と回答した「原子は物質を. また「‘‘観’’の形成を促す教育とは何かを解明するた. 構成する最小の単位である」,「1京子は変わらない」の. めに,具体的な教授プランによって実践,検証し,それ. であって錬金術のようなことができるはずはなく,「水. ら確定していくこと】」(2)も必要である。体系的構成は. 素原子はあくまでも水素原子であり,金原子もまた金原 子である」,という回答が多い。このことは今日の原子. 像・観の提示に終えずに最終的に教材の構造のうちに具. 体化されなければならない。. 観の到達点として,ある意味では健全でもある。 一方,“できる”との回答は20%弱であった。この中. 下,《群構造》と略記)としては,例えば「自然の歴史. には,漠然と「できても不思議ではない」(1年),「将. 性・階層性の主系列全体を貫く“層子間相互作用の質的. 来の化学および科学の発展の中で実現する」(1∼3年). 発展と階層間移行”」というような教育内容の体系の視. と期待するものや,(分子的なイメージで)「水素と何. 点がある(3)。(ここでの‘‘層子”とは,各々の階層を. かを組み合わせて」(2年)金が作られるのではないか,. 代表する粒子の総称である。). 「授業書の各領域ごとにまとめた授業書群の全阻」(以. とするものも見られる。3年生になると,「水素を電子,. 統一・的構成としての教材の《群構造》に着目すること. 陽子,中性子などに分解し,合成すればできる」,「】原 子の基本形は水素だから,星の核融合みたいにして作る. は,像の背後としての自然観の形成にも通ずるとともに, 教材構成への指針をも与える。. ことはできる。恒星はそれをやっている」としっかりし. 池内了氏は自然の階層構造に基づいて† ̄私たちが知っ. ている安定な物質階層の数は有限であるj として,とり. た意見が増えてくる。 質問G−5は原子の化学的性質の違いが外殻電子の配. わけ密度に着目して『3つの構造系列』に整理してい. 。今までの∫▼層子・相互作用jに対応させるなら. 置によることを,質問G一−6はG一一−5の電子配置の違い. る(4). の根源を原子核が支配していること,したがって,元素. ば,各々の「層子」に対応する「層密度が存在すると. の転換とは原子核の転換であること,のつながりを見よ. いうものである。. 60【【.

(8) 高校・理数科教育(物理・数学)の“科学技術離れ”の実態と授業実践検討(その2). Nα51. 次のような教材構成の視点が考えられる。. (3)自己適用としての自然観. †酸/塩基と酸化/還元の層子交換による酪−・(5). また③として自己適用としての自然観の重要性も指摘. しておきたい。. ●電気を帯びた層子による金属物性の展開 ●質量を有する層子による質量保存,密度. 科学教育として現代的課題を自然の歴史に“繰り込む”. ●層子の運動による圧力勾配による作用の現れ:浮力,. ことの重要性を指摘したことがある(7)。そこでは‘‘今” を考えるための課題;環境問題,情報化・国際化等を,. 圧力等の統一【・的展開. この圧力に着目すると「層子一相互作用論」からみた. “対自然/対社会”というような視点から見直していく. 圧力論も考えられる。圧力教材の《群構造》 としては,. 必要が出てくるだろう。このためには環境や情報への着. 圧力が,この「層子_」間の相互作用によってつくり出さ. 目を,それが課題となりうる自然史的意味や,そこから,. れているものであり,その変動の伝播は‘‘圧力波”となっ. どのような展望が切り開き得るかが構想されていかねば. て伝わることとなる。「層子」の圧力として椚一般化する. ならない。. と,圧力にも階層性があることがわかる。「層子圧力」. “対自然課題”;環境教育:生命の起源段階でも“環境”. として一般化することによって,固体の圧力(抗力・弾. 問題には直面したことがある。その解決策は光合成によ. 性力),液体の圧力,気体の圧力(これについては教材. る物質循環システムの確立である。地球的規模における. 化がなされている。粒子問の相互作用をイメージ化しや. 自然と自然に対する働きかけの現段階の課題を考えるな. すいためか)などを統一的に把握していくことができ. らば,生産ととりわけ消費(廃物,廃熱)のリサイクル. る(6). 化が直面する緊急課題となっている。生命の起源段階で. 。. の障壁と,その克服方向は,現在の私たちにもいろいろ な示唆を与えてくれる。. これは,科学法則を把握そのものが教材として扱われ ている場合,その認識をさらに深めてその物性・法則そ のものをさらに深い本質的実体把握からとらえるという. ‘‘対社会課題”;情報化,国際化:この課題を異質性に学. 展開となる。この課題は原子論に限定しても数多く残っ. ぶという視点から考える。生物進化における多細胞化は. ている。. 環境悪化による異質を求める行為の帰結であると考えら. (2)原子に対する見方・考え方としての原子観. れている。その異質をコミュニケートするためには神経 系も発達させなければならなかったし,この視点から. しかし「価値観は,生徒自身が様々な‘‘学び”と実践. ‘‘性”の確立の意味も探ることができる(8)。現在,イ. を通して,自らのうちに形成しうるものでなければなら ない。」(2)体系的構成の微視的構成の視点原理とでも表. ンターネットがもてはやされているが,そのネット化は. 現できるような②としての自然観(原子論に限定して). 生物の散在神経系の進化史とおもしろいように対応して. そのものも課題とする必要性を感じている。例えば次の. おり,そこから課題を探ることができる。このことば遺. ような課題が有り得る。. 伝や脳・神経に加えて学習(言語・図書館等)や社会的. ●物質の性質は,そもそもの原子にあるのか?. な情報過程の意味を探るという課題ともなる(9)。 原子論として考察するならば,この視点に関して例え. もし,ないのなら,どこで“性質”が生まれているの. か?→デモクリトスの考え:原子そのものが形や性質を. ば次のような課題を見いだすことができる。 ●物理で,“なぜあるのか’’を問うということの“危う. 有している!?. ●物質の階層性→無限なのか?ボトムはあるのか原子の. さ”と,でも“問いたくなる”気持ち(例:もし宇宙の. 中に原子核,原子核の中に陽子,陽子の中にクオークで. 空間次元が“3”ではなかったら). はクオークの中には?. ●原子論に基づく,決定論と偶然論. ●陽子といえども崩壊するのか?アトムに生成はあった. のか?また,アトムはいつかは消滅するのか?. 森羅万象がアトムから出てきているなら,もし方程式 を解く気になるなら,すべての条件が与えられるなら,. ●究極は物質か?場か?−>“究極”なんていうのは,結. 未来は決定できるのか?. 局何もないのでは?,という考えもある。究極は“点” なのか,“紐”なのか,この場合には“点”モデルの矛. ②及び③に対応するような課題は,直接的には教材と しては展開されてこなかったのではないだろうか。ギリ. 盾(無限大を困難)を抱えることとなる。−−一方,‘‘紐’’. シャ哲学的視点ともとれるような見方・考え方は,個々. が究極とは?(紐を作っている点と点は関係があるの. の個別的科学概念を媒介して展開されるべきことは当然. か?). だが,それをもってして扱いきれるわけではない。まし. ●“究極の物理法則”という考え方【>もし,あるとして. てや高校卒業以降,自然科学分野を二度と扱うことがな. たらどんな課題を有するか?その方程式を解いたら,す. い場合であればこそ,直接的に‘‘観”そのものを展開す ることも必要であると考えている。. べての物王朝去削が導出される?. 61▼¶. 1997.3.

(9) 酒井 源樹・倉賀野志郎. (注). (1)小形秀雄,酒井源樹,倉賀野志郎,「高校・理数科 (物理・数学)の“科学技術離れ”の実態と授業実. 践検討(その1)」,『僻地教育研究』(北海道教育 大学)第50号,105−118頁,1996年 (2)梅津徹郎「“観”の形成を促す教育を考える:科学教 育の目的論によせて」(1996年合同教育研究会発表資 料). (3)高村泰雄編,『環境科学教授法の研究』,北海道大 学図書刊行会,31頁,1996年 (4)池内了,『芋苗進化の構図』,大月書店,14−16亘, 1989年. (5)梅津徹郎,「“粒子取り込み競争”論に基づく授業書 “化学反応入門けの実践」,『北海道の教育』(北海道 合同教育研究会推進委員会編),224−244頁,1992 年. (6)倉賀野志郎,『自然史から考える自然観の形成と教 育』,高文堂出版社,40−43頁,1994年 (7)倉賀野志郎,「未来の授業づくり:科学:“繰り込 み”をキーワードとして」,『授業づくりネットワー ク』恥119,学事出版,40−41頁,1997年 (8)中村嵐『生体機構の進化』,177−181頁,講談社, 1982年. (9)田中一,『情報とは何か』,新日本出版,177−178 頁,1995年 酒井 源樹(北海道教育大学釧路校/物理学) 倉賀野志郎(北海道教育大学釧路校/教育内容・方法). 【 62 −.

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