スウェーデンにおける1991年の税制改革
25
0
0
全文
(2) 46. 図1 租税負担率(%,GDP比) 60 55. 50. 45 40 9K・濃. 35 ×x’. 30 ※’. 25. .※)K. ※)K帯x誉×. 一→一一スウェーデン ー一 Z一一イギリス. ーアメリカ ー→←一日本. ×今に. 一帯・・OECD平均. 口. 20 15. 10. §ま§§霧霧霧霧頭§§§§ま§§§§ 出所:source OECD Revenue StadsHcsより作成.. つも,主に移転支出を通じて所得再分配を達成. く.この作業を通じて,財務省主導のもとで,. していくというスウェーデンの租税政策の特色. 経済のグローバル化への対応を強く意識した改. は基本的には変化していないという評価を行っ. 革提案が用意される一方で,最終的に,他党と. ている(Steinmo[2002:1ff】).むろん,こうした. の妥協を必要としつつも,従来の所得再分配を. 研究でも,91年税制改革が包括的な税率の引 点では共通している.しかしながら,画期性を. 重視する社民党およびLO(ブルーカラー労働 組合の中央組織)の意向を大きく反映する形で 制度設計がなされたという改革の性格を明らか. 強調する分析では,スウェーデンに固有の歴史. にすることとしたい.. き下げと課税ベースの拡大を伴うものであった. 的脈略や政治的,経済的要因の検討が必ずしも. 十分とは言えず,逆に,政策の連続性を強調す. る議論では,91年改革の制度的分析が不十分 であるため,これらを統合する視点が必要とな る.本稿では,これらの問題を租税構造とこれ を規定した経済状況,政治的要請,さらには政 策決定過程における議論の検討を通じて明らか. 2 スウェーデンの租税構造と1991年税制改革. の背景 2−1 スウェーデンの租税構造. スウェーデンは世界で最も進んだ社会保障制 度を持つ国として知られるが,それは,非常に. 高い租税負担よって支えられてきた.図1に見. にすることを課題としている.. られるように租税負担率は,1970年代後半か. 税制改革後のスウェーデン経済は,1990年 半ばに始まるバブル経済の崩壊を受け,マイナ スの実質成長率を示したことも重なり,改革で 意図された税収調達や所得分配の目標が十分に は達成されなかった.そのため,この改革の実 施に際し,政府によって組織された税制改革評. ら50%近い高さを維持しており,特に80年代 後半には,それを優に超える値を示していた.. これは,OECD諸国のなかで見ても,デンマー クと並ぶ最も高い租税負担率を意味している. スタインモは,この高い租税負担を支えている. 租税制度は,多くの人々が期待するような平等. 価委員会(KUSK)による定量的な分析も,91 年改革の性格を把握するには不十分なものにと どまっている3).そこで本稿では,政策決定過. 程における財務省,政党,労働組合,経営者団. 体といったアクターの相互作用に着目しなが ら,91年改革の歴史的性格を明らかにしてい. 3)1994年から95年にかけて提出されたTax Reform Evaluation Report(Natiohal Institute of. Economic Research)およびAgell, Englund and S6dersten l l995][1998]が挙げられる..
(3) 47. 表1 総税収(100万SEK) 中央政府. 1988. 1989. 1990. 1991. 1992. 1993. 1994. 101,686. 103,444. 94,725. 48,241. 35,019. 46,934. 68,114. 69,733. 77,615. 71,047. 21,198. 14,000. 14,715. 23,749. n.a.. n.a.. 取.a.. 671. 一6,549. 一6,151. 一258. 31,953. 25,829. 23,651. 27,043. 21,019. 32,219. 42,019. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 2,346. 57,469. 58,214. 54,803. 57,587. 57,334. 44,622. 48,772. 637. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 54,786. 56,042. 52,926. 55,082. 55,849. 43,387. 47,502. 2,046. 2,172. 1,877. 1,657. 1,485. 1,235. 1,270. その他. 0. 0. 0. 848. 0. 0. 0. 給与支払. 16,056. 16,925. 18,686. 26,912. 21,530. 9,394. 10,145. 所得 個人 うち資本所得 法人. その他. 社会保障拠出金 被用者 雇用者 自営業者. 財産. 19,050. 22,896. 26,630. 31,316. 26,336. 23,253. 24,948. 財・サービス. 148,518. 164,615. 187,764. 204,255. 189,723. 196,366. 199,659. 付加価値税. 81,711. 93,279. 112,399. 127,144. 114,578. 122,393. 123,994. 個別消費税. 49,193. 52,923. 55,332. 54,961. 55,496. 56,649. 60,960. 1,711. 1,487. 1,264. 400. 454. 444. 732. 小計. 344,490. 367,581. 383,872. 368,711. 330,396. 321,013. 352,370. 個人所得税. 168,997. その他. 地方政府. 191,247. 220,072. 239,283. 245,216. 249,694. 261,911. 739. 703. 945. 824. 926. 958. 986. 169,736. 191,950. 221,017. 240,107. 246,142. 250,652. 262,897. 被用者. 7. 754. 823. 925. 1,542. 8,244. 14,810. 雇用者. 93,134. 117,712. 143,979. 163,331. 153,665. 141,371. 144,203. 3,189. 5,573. 6,262. 3,955. 3,574. 3,581. 3,607. 96,330. 124,039. 151,064. 168,215. 158,781. 153,196. 162,620. 610,556. 683,570. 755,953. 777,034. 735,319. 724,861. 777,887. 財・サービス 小計. 社会保障基金. 自営業者. 小計 総計. 注:SEKは,スウェーデンの通貨クローナを表している. 出所 OECD Revenue Stads廿cs DatabaseおよびRiksskatteverket[2001]より作成.. 主義的なものではなく,一般の労働者を重課し,. 方政府,社会保障基金を合わせた総税収で見る. 企業や資本所有者の租税回避,資本蓄積を許容 同時に高い福祉支出を賄ってきたと指摘してい. と,80年代後半は個人所得税が中央と地方を 合わせて全体の4割程度を占める一方で,法人 税の割合は3−4%程度と国際的に見ても低いレ. る(Steinmo[1993:40fl)4).そこで実際の税収構. ベルにある.しかし,総税収の3割程度を占め. 造の変化からその特徴を把握することにする.. る社会保障拠出金については,そのほとんどが. 税収構造について,表1より,中央政府,地. 雇用者負担となっており,総じて企業に高い負. することによって,安定性と効率性を促進し,. 担を強いてきたことが分かる(Tanzi [1995:105]).さらに,間接税が25%程度を占め,. 4)政府は,所得再分配的な政策は租税控除や 税額控除ではなく,直接的な社会支出によって行. そのうち6割が付加価値税による収入である.. う方が効率的だと考えてきた(Steinmo[1993:411).. そしてこれらを法人税と同程度の税収を持つ財.
(4) 48. 産税が補完するという形になっていたが,1991. の変化を必要としたのかという点に着目してみ. 年の税制改革により,この税収構造は大きく変. よう.. 化することになる.以下,精解に従って,これ らの点をやや詳しく見ていこう.. 2−2 1991年税制改革の背景. まず,第一に,中央政府の税収が1991年か ら低下し,また総税収も92年から低下するこ とにより,図1に見られるような租税負担率の. スウェーデンにおける1991年の税制改革は,. 落ち込みをもたらすこととなった.第二に,重. 経済のグローバル化を重要な背景としている. 要な変化として,国税の個人所得税が大きく減. (Steinmo[1993】, Tanzi[1995])5).特に資本の国. 少したことにより,税収に占める所得税の割合. 際的な移動性が高まったことにより6),それま. が大きく低下した.これに対し,第三に,間接. で国内的な問題とみなされてきた租税政策につ. 税の税収は伸びており,それは主に付加価値税. いても,国際的な取引や投資を考慮せずには制. の増収によることが看取できる.第四に,改革. 度設計ができない状況となり(Steinmo. により,勤労所得税から分離して課税されるこ. [1993:29】),主に資本逃避を避けるために,税. ととなった資本所得税は,91年にはわずかな がら収入を上げているが,その後は純損失に対. 率の引き下げと課税ベースの拡大という潮流が. する税額控除が税収の減少を生み出すこととな. 以下では,まず,税制改革の背景の経済的要. った.第五に,社会保障拠出金は,絶対額とし. 因として,スウェーデン国内におけるオイル・. ては,91年に大きく増加しているが,その後. ショック以降のマクロ経済状況に対応させる形. の推移を考慮すると,税収に占める割合として. で,経済のグローバル化がスウェーデン経済に. 80年代の世界的な税制改革の潮流に沿う内容 となっているが,そもそもこの世界的な潮流は,. 生まれることとなった.. はさほど変化していない.最後に,地方政府の 税収については,その増加率こそ鈍りはしたも. のの比較的安定して推移していることが読み取. れる.これは,91年の税制改革において,自 治体に決定権が与えられている地方所得税率に 変更が加えられなかった一方で,国で決定され る課税ベースが拡大されたことに起因してい る.. 5)IMFによれば,この経済のグローバル化は 「国境を越える様々な財貨サービスの取引,国際的 な資本の流れを通じて,さらにはテクノロジーの. より急速にして広汎な普及を通じて,世界中の 国々が相互依存をますます強めていく状態」とさ れている(秋元編【2001:3】).この理解は,近年の. 央政府において課税が所得から消費へ移行した. 経済のグローバル化に関する議論における共通認 識と言え,本稿もこれに立脚している.しかし, この経済のグローバル化は「現実には,アメリカ 主導の多国間機構によって構築されつつある単一 のグローバル市場の安定を脅かすもの」であると. ことがあげられる.しかし,前者については,. いうジョン・グレイによる指摘や(Gray(石塚訳). 以上のことから,税制改革後の大きな変化と して,租税負担率が低下したこと,および,中. 1990年半ばに始まったバブル経済の崩壊によ り,以後93年までマイナスの実質経済成長率 が続くという経済状況にあったため,その影響 を考慮に入れなくてはならない.後者における. 租税構造の変化は,国税の勤労所得税の限界税 率の大幅な引き下げや付加価値税の課税ベース. の拡大といった91年税制改革の柱となる改正. [1999:10】),経済のグローバル化は,たんに国民国. 家の重要性の衰退をもたらしたのではなく,財務 省のような国際銀行機能と結びついた要素を強化 することにより,民主主義の欠陥を引き起こした というサスキア・サッセンによる指摘に見られる ように(Sassen(伊塩谷訳)【1999:12ffD,その本. 質について,多くの議論がなされているところで ある.ただ,この問題は,本稿の課題を大きく超 えるものであるため,ここでは立ち入らないこと とする.. によりもたらされたものと思われる.そこで,. 6)国際的な資本移動の活発化については,金. 以下では,なぜこの改革がこのような租税構造. 子【1997:第7章1を参照..
(5) 49. 与えた影響を検討し,続いて,政治的,社会的. った.76年置らは穏健統一党(以下,穏健党),. 要請を反映して制度化された既存税制の問題 点,限界点を見ていく.前者については,通貨. 国民党,中央党による保守中道連立政権が誕生. の切り下げによる国際競争力の強化が図られる. 政赤字を原因とした対外債務の急速な悪化によ. も,金融自由化を受けた景気過熱期においては,. りインフレが加速し,82年には社民党が政権. それでも補いきれない対外的な労働コストの上. に復帰することとなる.. 昇が見られ,さらに資本移動が活発化するなか. 政権復帰前の社民党内部で組織された「危機. で,それまでの国内投資を優遇する租税制度に. 問題グループ」は,この経済危機を労働コスト. 対する不満が噴出することとなる.後者におい. のアンバランスな上昇を要因とした構造的な危. ては,それまでのスウェーデンの税制の特徴で. 機と認識し,1982年に政権に復帰すると,そ. あった高い税率と狭い課税ベースによる差別的. のグループの中心であった財務大臣フェルト. な課税が,所得税,法人税における調整行動を. (Kle1LOlof Feldt)は,輸出企業の収益率を改善. 生み,垂直的,水平的公平を阻害するとともに,. するという方法でスウェーデン経済を立て直す. 間接税の領域でも競争に歪みを与える状況が見. 目的から,82年遅16%の通貨の切り下げを行. られることとなる.もちろん,政治的,社会的. った(Swedish Ministry of Finance[2001:7】).. 要因とは言え,経済的要因から独立したもので. また,1971年のニクソン・ショックに始ま. はなく,特に,法人所得,資本所得に対する課. るブレトン・ウッズ体制の解体は,国際的な金. 税の領域では,国際的な資本移動という面で両. 融の自由化をもたらし,ユーロダラーによるオ. 者が強く結びついている点には注意が必要であ. フショア市場の形成,多国籍企業の活動拡大に. る.. よる短期資本移動が活発化し,スウェーデン国. し,労働市場政策,産業政策を強化したが,財. 2−2−1 経済のグローバル化と国内のマクロ経済状況. 内においても,82年に政権に復帰した社民党 政府において,フェルトがこの流れに追従する. 1973年のオイルショック以降,スウェーデ. 形で金融の規制緩和を断行した(宮本. ンの経済状況は急激に悪化した.民間固定資本. [1999:220])8).82年,83年に各種の国債が発行. 投資の停滞により生産性上昇率は低下し(61. されたが,これにより証券市場が拡大し,規制. ∼73年平均3.2%から73∼79年平均0.6%),さ. 緩和への動きが強まると,85年5月に銀行の金. らに,労働コストの上昇(65∼70年平均上昇 率8.4%から70∼75年平均12%)が加わり,国. 利規制が廃止され,さらに,同年11月には商 業銀行の貸出高規制が撤廃された(「11月革. 際競争力が低下した(宮本[1999:218])7).経常. 命」)(同[1999:221]).. 収支は74年にマイナスに転じ,80年には赤字. スウェーデン財務省(以下,財務省)[2001】. 額185億クローナ(GDP比で3.5%)となった.. によれば,通貨の切り下げの後,競争部門の輸. 以上の不況に際し,政府は総需要拡大政策をと. 出と収益が増加したが,一連の金融の自由化に. り,加えて労働市場政策,産業政策,公共部門. 伴い,大企業は新たに生み出された利益を海外. の拡大といった積極政策により失業の抑制を図. 7)周知の通り,スウェーデン経済は輸出に対 する大きな依存をその特徴としてきた.現在でも,. GDPに占める輸出の割合は,44%となっており, ベルギー(76%),オランダ(61%),オーストリ. ア(45%)に次ぐ割合を保っている (Confederation of Swedish Enterpdse[2001:46]).. 8)1982年に政権に復帰した社民党政府は,通 貨切り下げによる競争部門の刺激と,緊縮財政政 策とを組み合わせることにより,安定成長と高い 雇用の基礎を作ることを意図した.前者が欠けれ ば,失業が増加し,後者が欠ければ,景気の過熱 やインフレにつながると認識していた(“Acrisis plan for Sweden”1982年10月11日)(Swedish Ministry of Finance[2001:7])..
(6) ∫o. 図2 製造業における単位あたり労働コスト(1970=100) 160 140 120 100. 一国内通貨. 80. 醗階調共通通貨. 60. →一為替レート. 40 20 0 1970 1975 1980 1985 1990 1995. 出所:Confederation of Swedish Enterprise[2001:28]より作成.. への直接投資へと振り向けるようになった9).. 年代後半の通貨の切り下げにより10),80年中は. 1985年から86年の世界的な不況を機iに,輸出. 費が80年代後半の好景気を牽引することとな った.これが,資本市場,銀行信用の拡大に伴. 両者の関係が逆転し,その後,82年の大幅な 通貨の切り下げにより大きく改善され,先に述 べた競争部門の成長につながった.しかし,80 年代後半になると,国内における労働コストが 大幅に上昇したため,為替レートは若干の低下. う実質金利の低下と結びつき,不動産投資ブー. にも関わらず,対外的な労働コストも上昇する. ムや株価の高騰を招き,最終的には,90年代 初頭のバブル経済の崩壊に至ることなる.加え て,失業率が2%を切った87年からは,物価上 昇率,賃金上昇率がともに高まった結果として 労働コストの上昇がもたらされ,生産性が低下. 結果となった.この時期のスウェーデン経済は,. が減少したが,その後,86年の石油価格の大 幅な低下を一つの要因として,今度は,民間消. した(Swedish Ministry of Finance[2001:8]).. 輸出の減少に加え,国内における景気の過熱が 生産物市場,労働市場,そして多くの資産市場,. 特に不動産市場の価格上昇に影響を与えていた ことが指摘されている(Swedish Ministry of Finance[2001:8】).. 以上の点を図2をもとに確認しておこう.同. このように経済が輸出に依存するスウェーデ. 図は製造業における単位あたりの労働コストの. ンにおいては,国際競争力という観点が非常に. 変化を表している.左は国内における労働コス. 重視され,1970年代後半からの為替レートの 調整により,その強化が図られたが,80年号 後半には,それでも補いきれない労働コストの 上昇が経済問題の争点となりつつあったのであ. ト,右はそれを為替レートで調整した対外的な. 労働コストであり,国際競争力を測る一つの指 標と見ることができる.国内における労働コス. トは1990年代初頭のバブル経済の崩壊まで上. る.. 昇を続け,特に80年代後半には大きな伸びを 見せている.一方で,対外的な労働コストに関. 以上のようにスウェーデン国内においては,. しては,オイル・ショック後の交易条件の悪化. 化に対応して,1982年の社民党政府の復帰以. を受け,75年にはその上昇が見られるが,70. 降,一連の金融の規制緩和が行われることとな. 経済のグローバル化に伴う国際的な金融の自由. った.これにより,スウェーデンの企業は利潤 9)スウェーデン企業の海外直接投資は,,605億 クローナ(1980−85年平均)から,2579億クロー ナ(1986−90年平均)に急増した(Confederation. 10)1976年,77年にそれぞれ3%,6%の通貨の. of Swedish Enterprise[2001:74]).. 切り下げが行われた..
(7) ∫■. 表2 税率の推移 1980. 1985. 1988. 1990. 1991. 1992. 最:高限界税率(国税). 58. 50. 45. 35. 20、. 20. 最低限界税率(国税). 1. 4. 5. 3. 0. 0. 29.09. 30.37. 30.56. 31ユ6. 31.15. 31.04. n.a.. n.a.. n.a.. n.a.. 30. 30. 資本所得に対する平均限界税率. 56. 52. 54. 30. 30. 30. 法人税. 52. 52. 52. 40. 30. 30. 20.63/23,46ユ. 23.46. 23.46. 23.46/252. 25. 25. 被用者. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 雇用者. 35.25. 36.46. 37.07. 38.97. 38.77. 34.83. 自営業者. 34.00. 34.41. 34.29. 34.19. 35.49. 33.85. 1−2.5. 1.5−3.0. 1.5−3.0. 1,5−3.0. 1.5−3.0. 1.5. 0.47. 1.2. 1.2. 個人所得税. 平均地方所得税率 資本所得税率. 付加価値税 社会保障拠出金. 純資産税 不動産税. n.a.. n.a.. 0.47. 年金基金からの収益. n.a.. n.a。. n.a.. n.a.. 10. 10. 生命保険基金からの収益. n.a.. n,a.. n.a.. n.a.. 25. 25. (1)1980年9月8日から変更となった. (2)1990年7月1日から変更となった. 出所:OECD[1999:169]をもとに作成.. を海外への直接投資として,振り向けていくこ. 2−2−2 従来の税制の問題点. ととなるが,その際,従来の国内投資を優遇す. 1980年代のスウェーデンにおける税制の特. る租税制度に対する不満が噴出することとなっ. 徴は,高い税率と狭い課税ベースにあったとい. た.また政府は通貨の切り下げを通じて,企業. うことが言える.まず,第一に,個人所得税に. の国際競争力を強化する政策をとってきたが,. ついてみてみよう.個人所得税は,表2からわ. 賃金交渉の多元化に伴う労働コストの上昇は11),. かるように,80年には最高限界税率は,国と. 特に80年代後半の景気の過熱期に顕著な上昇. 地方を合わせておよそ88%に達していた.80. を見せることになり,構造的なインフレ圧力を. 年代の税制改革を通じて,限界税率は徐々に引. もたらすとともに,企業の国際競争力を弱める 一因となった.さらに,次節に見るように,こ. き下げられていったが,88年時点で,国税の 個人所得税の限界税率は,5%,20%,34%,. の時期には,資本所得に対する差別的な課税が. 45%という4段階の累進構造を持っており. 高所得者層に有利に働き,資本所得課税の垂直. (Pechman et al.[1988:190】),これに加えて,課税. 的不公平に対する批判も生じつつあった.そこ. 最低限が10,000クローナと低かったため12),地. で,次に,本節において触れた経済状況のもと. 方所得税と合わせると,低所得者に対してもお. で,既存の税制にいかなる問題が生じ,それを. よそ36%,平均的な所得層に対しては50%を. 1991年の税制改革がどのように克服しようと. 超える限界税率が課されていた.. 試みたのかを見ていくこととしたい.. 11)賃金交渉の多元化については,宮本[1999],. 12)当時,為替1/一トは,1ドル=約6.2クロー ナであり,1クローナ=21円程度であった(Source. 下平[1999]に詳しい.. OECD Database[2002])..
(8) ∫2. 一方,課税ベースに関しては,フリンジ・ベ. 第二に,法人税に関しては,税率52%の法. ネフィットに対する過小評価という問題があげ. 人税に加え,インフレ調整に基づいた税率. られる.フリンジ・ベネフィットとしては雇用 るいは低利の貸し付けといったものがあるが,. 20%の利潤配分税が課されていた.両者は課 税ベースを計算する際に互いに控除されるの で,総税率はおよそ57%となっていた.一方. これらは公正な市場価値に比して,非常に低く. で非課税の準備金である投資基金制度15)や棚卸. 評価されるため,課税ベースを狭める要因とな. 資産の評価減制度などにより,課税ベースが著. っていたユ3).また,これらの給付は,高所得者. しく狭められ,実効税率は20%程度になって. 層により普及しているため,垂直的公平を阻害. いた(Swedish Ministry of Finance[1991:35]).こ. 者から支給される自動車,住宅,食事,旅行あ. する要因にもなっていた(Swedish Ministry of. のような高い法定税率と多くの租税控除,ある. Finance[1989a:11]).. いは,手当の組み合わせば様々な問題をもたら. また,個人所得税の中でも,資本所得に対す. す要因となっていた.スウェーデンでは,いわ. る課税の非中立性が様々な問題を生んでいた.. ゆる二重課税に加え,法人レベルでは分配利潤. 特にキャピタル・ゲインの優遇および支払利子. より留保利潤の方が実効税率が低くなってお. の無制限な控除により,資源配分が低税率の領. り,さらに,株主レベルでは配当よりもキャピ. 域に集中するという非効率な状況が見られた.. タル・ゲインの方が実効税率が低かったため,. まず,キャピタル・ゲインに関しては,保有期. この分配利潤に対する重い租税負担は,資本の. 間が2年に満たない株式のキャピタル・ゲイン. ロック・イン効果を生んでいた.これによりリ. (あるいはロス)は,すべて課税(控除)され,. スクの高い資本の再配分が妨げられ,経済厚生. 2年を超えるものについては,その40%が課税. の損失につながっていた.. (控除)されていたため,保有期間が2年に満. また,従来の制度には,投資基金制度に見ら. たない株式のキャピタル・ロスと2年を超える 株式のキャピタル・ゲインを組み合わせること. れるように政府が企業の投資行動に影響を与え. によって,租税負担を軽減するという調整行動. (Swedish Ministry of Finance【1989a:18]).しかし,. を生んでいた(Kristo丘ersson[2001:3]).さらに,. スウェーデンの企業のうち,すべての適用可能. この株式のキャピタル・ゲインでは,名目所得. な控除を利用しているのは全体の5分の1で,. で課税されるのに対し,不動産からのキャピタ. ル・ゲインは実質所得で課税されるという課税. 平均すると諸控除の利用度はわずかに72%で あったため,法人部門内での資本の非効率な配. の非統一に加え,その他私的年金や国家が奨励. 分を生じさせていた(Sorensen et al.[19g8:78fq).. する貯蓄の利子も非課税扱いになっていた.次. このことは同時に,政府のもくろんだ介入的な. に,支払利子の無制限な控除が認められていた. 政策の精度を下げる原因にもなっていたのであ. ため,特に高所得者層はほとんど費用をかけず. る.. ようとする介入的な思惑が反映されていた. に借入れを行うことが可能になっていた (Salsback[1991:62])14).このように資本所得の. 扱いが非中立的であったため,名目的な累進度 と実質的な累進度に大きなギャップを生む結果 となっていた.. 14)個人の資本所得に対する課税からの税収は マイナスになっており,特にその原因が上位20% の納税者に集中していたため,垂直的な公平が阻 害されていた(馬場【2000:6】).. 13)例えば,自動車に関しては,市場における. 15)企業と経済団体は,利潤額の半分までを投 資基金に繰り’入れることができ,その額の75%は スウェーデン銀行の無利子の特別勘定に預託され. 新車価格の22%で計算されていた.. ることを条件に非課税となった(藤岡[1992:146】)..
(9) ∫3. 第三に,間接税に関しては,付加価値税が 1969年の導入以来,かなり狭い課税ベースで 課税されていた.サービス部門は原則として非 課税であり,ホテルやレストランにおけるサー. げ分を調達することを可能にすることを意味し ている16).また,すべての所得を統一的に課税. するには,税率を大幅に引き下げることが必須 であることを指摘したうえで,加えて,統一性. ビスには軽減税率が適用されており,立物の建. を増すことにより資本所得の偏在から来る垂直. 設についても同様であった.また,エネルギー. 的な不公平の是正に効果があると言及していた. の消費については,個別消費税が課されており,. (Swedish Ministry of Finance[1989a:6]).しかし,. 付加価値税は非課税となっていた.このように,. この財務省の見解とは逆に,社民党およびLO. 間接税の領域においては,中立性の観点から見. は,高所得者や法人の租税負担が少なすぎるこ. て一貫しておらず,多くの免税が消費パターン. とがスウェーデンの租税制度の問題であると主. に歪みをもたらしているとみなされた. 張しており(Steinmo[2002:111),こうした主張. (Swedish Ministry of Finance【1991:47]).特に付. は,政策決定過程に影響を与えることとなる.. 加価値税に関しては,多くの非課税品目の存在. さらに,資源配分の観点から見ると,高い税. が競争を歪ませる累積効果の形で非中立性を生. 率と非中立性が歪みをもたらしていた.非課税. じさせていた.エネルギー部門については,個. のフリンジ・ベネフィットや優遇された貯蓄や. 別消費税への依存が,特に国際競争にさらされ. 投資に資源が集中し,一方で,勤労所得や様々. る部門の租税負担を増加させていた.. な金融貯蓄に重課されていたため,労働供給に. 以上のような状況において,財務省は,租税. マイナスの効果をもたらし,また純貯蓄も非常. が賃金を押し上げ,インフレ圧力になっており,. に低くなっていたのである.そのため,税制改. また税率が非常に高いため,勤労意欲が阻害さ. :革により福祉支出の財源を調達すると同時に,. れ,一般の納税者でさえ租税回避を行っている. 十分なレベルの労働供給,貯蓄,投資をもたら. ことを問題とした(Steinmo[2002:10】).そのた. す租税構造を選択する必要があるとされ,スウ. め,同省の見解に従えば,1991年の税制改革. ェーデンのような開放経済では,この選択は労. では,以下のような目的が追求されることとな. 働,投資あるいは資産の移動性を特に考慮に入. った.. れて行わなくてはならないとされた(Swedish. まず,個人の経済行動に対する中立性を保ち,. Ministry of Finance[1991:12f]).. 公共支出の財源を効率的に調達することが課題. 最:後に,税制改革戦略の国際的な側面につい. として掲げられた.しかし,スウェーデンのよ. ては,旧制度はいくつか有利な点を持っていた. うな大きな公共部門を持つ経済では,タック ス・ウェッジの減少には明らかに限界があるた. ことが指摘されている.まず,控除される支払 利子およびキャピタル・ロスが,課税される利. め,その避け難い高いタックス・ウェッジを最. 子所得,配当,キャピタル・ゲインよりも大き. 適化することで,歪みを最小にすることが重要. く,資本所得に対する非統一的な課税が税収の. であるとされた(Swedish Ministry of Finance. 損失をもたらしていた.また,付加価値税の課’. [1991:121).. 税ベースがほとんどのヨーロッパ諸国よりもか. 次に,公平の問題に関しては,資本所得の統. なり狭かったこともあり,マイナスの効果をも. 一的課税だけでなく勤労所得の統一的課税によ. たらすことなく資本所得と消費の課税ベースを. る水平的公平の達成に焦点が当てられた.この. かなり拡大することができ,それにより所得税. 水平的公平は,免除や控除を除去し,課税ベー スを拡大することにより達成されるが,そのこ とは,同時に,付加価値税や社会保障拠出金の. 16)実際には,1990年7月1日から付加価値税率. 税率を上げることなく,所得税の税率の引き下. は23.46%から25%に変更された..
(10) ∫4. 表3税制改革の概要 税 率 個人所得税. 勤労所得. 地方 平均31% 国 20%. 課税ベースの拡大. 備 考. フリンジ・ベネフィット 雇用者負担の生命保険. 低利貸付 資本所得. ・10万SEKまでの支払利子は100%控除 それを超える部分は,70%のみ控除 ・キャピタル・ロスは70%まで控除 ・資本所得全体でネットのロスが出た 場合は,ロスの30%を他の所得から. 30%. 控除できる.. 法人税. 30%. 投資基金制度,棚卸資産 の評価減制度,建物の初 期控除の廃止. ・年金基金からの収益に対する課税 ・資本金額と利益を足したものをベー スとする準備金の新設 ・配当に対する二重課税は残る ・赤字の翌年以降の所得からの控除 については,年限の制限の廃止. 間接税. 付加価値論. 25%. エネルギー,サービスへ の課税. ・社会福祉,金融,文化,医療等のサ 一ビスは非課税 ・課税ベース拡大に伴う個別間接税 の廃止 ・環境関連税制の導入(二酸化炭素. 個別消費税. 税,硫黄税). その他. 不動産税. 1.5%(92年まで は1.2%). 出所:Swedish Ministry of Finace[1991】より作成.. 率の大幅な引き下げが可能であるとされた (Swedish Ministry of Finance[1991:13D.. 3 1991年税制改革. このように,1991年税制改革は,一方におい. 3−1 1991年税制改革の概要. て,経済のグローバル化への対応として法人所. による中立的な課税を企図したものであったと. 1991年の税制改革では,純資産税を除く税 制の主要な部分が改正された.国の勤労所得税 の大幅な減税,キャピタル・ゲインを含む資本 所得に対する分離比例課税の導入,法人税の改 正,そして付加価値税の課税ベースの拡大,以. いうことができる.しかしながら,アメリカの. 上の実現を通じた総税負担の現状維持が意図さ. 84年財務省報告によって方向づけられた経済状. れた.まず,地方を含めた勤労所得税の最高限. 況の変化が税制改革の本来あるべき理念を明確 的,社会的な政策要求はその理念からの乖離を. 界税率は,89年の約73%から約51%になり, 85%程度の納税者が平均31%の地方所得税の みを課されることになった.次に,資本所得は. もたらすこととなった.以下では,この経緯を. 勤労所得から分離され,30%の比例課税がな. 明らかにするために,制度改革の具体的内容と. されることとされた.さらに,国税の勤労所得. その決定過程での議論を検討することとしよう.. 税の減税分は,課税ベースの拡大,とりわけ資. 得,資本所得課税における税率の引き下げを,. 他方において,既存税制に内在する問題として 労働インセンティブの強化と課税ベースの拡大. なものにした一方で,スウェーデン国内の政治.
(11) ∬. 本所得と消費に対する増税で賄うことがもくろ. びついている点も多いため,便宜上,雇用所得. まれた.最後に,エネルギー消費に対する課税. に対する課税,資本所得に対する課税,事業所. は,環境保全を促進する目的から改正されるこ. 得に対する課税,消費に対する課税に区分した. ととなった.. うえで,それぞれについて詳しく見ていく’8).. 所得は,雇用所得,資本所得,事業所得の3 つに区分され,さらに事業所得は法人組織と非. 3−2 雇用所得に対する課税. 法人組織に区別される’7).雇用所得と非法人組. まず,国税勤労所得税の最高限界税率が. 織の事業所得は個人の勤労所得として,国と地. 42%(89年時点)から20%に大幅に引き下げ. 方の勤労所得税が課される.社会保障拠出金は. られ,同時に,課税最低限が1万クローナから. 雇用者に対して38.97%,自営業者に対して 34.19%の税率で課される.65歳以上の被用者. 18万クローナに引き上げられることにより, 上位15%の所得層にのみ課税されることとな. の勤労所得に関しでは,雇用者に対して22.2%. った19).. の特別給与税が課される.資本所得は勤労所得. また,税率の引き下げに加え,課税ベースが. から分離して税率30%で比例課税される.ま た,法人組織による事業所得には,税率30%. 拡大されることとなった.まず,フリンジ・ベ. の法人税が課税され,その課税ベースは,キャ. 小評価による評価価値の低さや,日当による被. ピタル・ゲインやその他の資本所得を含むすべ. 用者への過剰な補償という問題があった.その. ての所得で構成される.原則として,二重課税. ため,統一性の観点から公正な市場価値で評価. が継続され,配当とキャピタル・ゲインは株主. する必要が生じ,原則として,すべてのフリン. 段階で再び資本所得税が課される.. ジ・ベネフィットは課税所得とみなされること. これらの改革の基本的な内容を踏まえたうえ. となった20).年金は,雇用所得の延期とみなさ. で,以下では,前節で検討してきた経済のグロ. れ,所得税および社会保障拠出金の租税部分が. ーバル化のインパクトと既存税制の問題点に対. 課される.また,職務における必要経費は,原. して,1991年改革がいかなる克服を試みたの かということに焦点をあてながら制度変更を追. 則として,すべて控除されるが,控除額が実際. っていく.まず,経済のグローバル化による資. 価過程を簡素化する目的から,標準的な控除が. ネフィットに関しては,旧制度では制度的な過. の経費を超えないように規則が変更された.評. 本逃避を回避する必要から生じた法人税率の引. き下げと資本所得税の低税率での分離比例課 税,いわゆる二元的所得税の導入,次に,労働 供給,貯蓄といった個人の意思決定に対する歪. 18)以下の制度変更に関する記述は,主に. みという既存税制の問題点を是正する目的から. 19)税率決定権が与えられている地方の勤労所. Swedish Ministry of Finance【1991]による.. 行われた勤労所得税の改正,さらに,これらの. 得税の税率には変更は加えられなかった.ただし,. 減収分を調達する手段として位置づけられた付. 1991年から94年の4年間は,91年改革の減税効果 が相殺されないように,税率の引き上げが凍結さ. 加価値税の課税ベースの拡大という諸論点に着 目する.ただし,これらの制度変更は相互に結. れた(藤岡[2001:126]).一方で,課税ベースは国. 会で決定されるため,地方の勤労所得税の課税ベ ースも,91年改革の結果を受けて拡大されること となった.. 17)従来は,農業財産からの所得,他の不動産 からの所得,営業からの所得,雇用からの所得, 臨時的な活動からの所得,資本からの所得と6つに. 20)無料旅行,雇用者から支給される自動車や 食事,雇用者による低利ローン,団体交渉を通じ て獲得される保険などが含まれる.しかし,経済 的に無視できる給付については,雇用者によって 提供されるヘルス・ケアと同様に非課税となって. 区分されていた(藤岡[1992:96]).. いる..
(12) ∫6. 3,000クローナから4,000クローナに引き上げら. も低下するため,多くの負債を抱えた家計にと. れ,その他特別な個別控除が用意された21).. っては,住宅支出の著しい増加というような経. 次に,勤労所得の課税ベースの拡大に伴い,. 過的な問題を起こす可能性がある.こうした理. 社会保障拠出金の課税ベースも拡大する結果と. 由により,名目資本所得課税におけるインフレ. なった.税率は従来どおり雇用者に対して支払. に対する欠点は正当化されることになった.. 給与の38.97%,非法人組織の事業所得の. また,統一性の観点から,すべての資本所得. 34.19%で課税される.社会保障拠出金と社会. を同様に課税するには,キャピタル・ゲインが. 保障給付のつながりは徐々に弱まってきてお. 発生主義に基づいて課税される必要があるが,. り,大まかに言って,38.97%のうち22.2%分. 実行上の理由から,従来どおり,実現価値に対. が経済的な意味での租税となっている.そのた. して課税されることとなった.これは,現在所. め,65歳以上の被用者の勤労所得には特別給. 得に適用される法定税率よりも実効税率を下げ. 与税が税率22,2%で課され,雇用者によって負. る延期効果をも’たらすため,キャピタル・ロス. 担される.また,社会保障年金以外の私的年金. や支払利子に対する控除を70%に制限するこ. にも課税されることとなった.. とによって,ある程度相殺されることとなった.. しかし,これには例外が設けられることになっ 3−3 資本所得に対する課税. た.まず,支払利子に関しては,住宅費用の増. 資本所得は勤労所得から分離され,名目資本. 加を抑制する目的から10万クローナまでは全 額が控除の対象とされた.続いて,キャピタ. 所得に対して税率30%で比例課税され22),資本. 所得が純損失を生んだ場合,その30%が勤労 所得から税額控除されることとなった.また銀. 促進する目的から,上場株式のキャピタル・ロ. 行預金,株式保有のような直接貯蓄であるか,. スは,その全額が控除の対象となった.. 企業,年金保険,投資信託の留保収益のような. その他,利子所得,配当所得に対しても. 間接貯蓄であるかに関わりなく,家計の貯蓄は. 30%の税率で課税され,控除は一切認められ. 同等に扱われる.. なくなった.また,株式および有価証券につい. 税率の引き下げにより改革後は,従来の制度. ては,投資の期問に関わりなく課税されるよう. よりインフレの影響を受けなくなるが,それで. になり,調整行動を排除する大きな要素となっ. も実質利子率が4%で,インフレ率が9.3%よ. た23).このように実行上の制約がありながらも,. り高くなる状況では,実効租税負担は100%を. 資本所得に対する統一的な課税は,勤労所得税. 超えることになる.とはいえ,税率を30%よ. における課税ベースの拡大とともに,個人所得. り低く設定するということは,同時に,控除率. 課税における水平的,垂直的公平の達成を追求. ル・ロスに関しては,株式による家計の貯蓄を. する側面も持ち合わせた.. 最後に,従来の制度では,私的年金の保険料 21)これには私有自動車の利用,生活費の増加 に対する控除が含まれる.. は個人所得から控除される一方で,年金は支給. 22)納税者の大多数は,およそ31%の勤労所得 税が課されるので,資本所得に対して30%という 税率が選択されることとなった.またインフレ率 と実質利子率がともに4%の状況では,実効税率は. された時に課税され,年金基金からの年間利回. 60%(=0.3×0.08/0.04)になり,これは個人の雇. 用所得に対する租税負担(所得税と社会保障拠出 金を含める)がおよそ65%であることと釣り合う という想定がなされた.また,税率を30%まで下 げることにより,支払利子を勤労所得から控除す. 23)一般に,キャピタル・ゲインは,獲得費用 と売却価格の差に等しいが,株式保有者が,同級 の株式を異なる価格で獲得した場合は,その平均 が獲得費用となる.課税利得計算の単純化のため に売却価格(純売却費用)の20%を獲得費用とみ. ることが可能になるとされた.. なす代替ルールも設けられた..
(13) ▽. りには課税されなかったため,かなりの課税延. 率は,資本所得に対する税率に等しく,また法. 期をもたらしていた.さらに’,年金が支払われ. 人によって支払われる社会保障拠出金の税率と. るときより保険料が支払われる時の方が限界税. も相対的に近づくことになった.これにより家. 率が高い場合には,この延期された納税義務の. 計の直接的,間接的貯蓄および法人部門におけ. 一部は免除されていた.そのため統一性を高め. る資本所得,雇用所得に対する課税に関した統. るために年金基金からの年間利回りは課税され ることとなったが,この種の貯蓄を促進するこ. 一性が改善された26).. 課税ベースの拡大に関しては,投資基金制度. ととこの領域における国際競争め観点から,税. が廃止され,棚卸資産については,従来,獲i得. 率は通常より下げられ,協約保険では10%, 私的年金保険では15%で課されることとなっ. 費用の50%まで控除が認められていたが,こ. た24).. 株式と事業不動産からのキャピタル・ゲイン が,その名目的価値に全額課税されることによ. 3−4 事業所得に対する課税. の制度も廃止されることとなった27).加えて,. り,課税ベースはさらに拡大することとなっ. 事業所得は,法人所得と非法人所得を含み,. た.. 法人所得は国による法人税が課され,非法人所. また,原則として,.二重課税は継続されるが,. 得は国および地方の勤労所得税と社会保障拠出. 一方で,新規発行株式の価値に相当する控除. 金,または特別給与税が課されることとなった.. (アネル控除)も継続するという緩和措置がと. また,個人所得課税と同様に,事業所得課税に. られた.この控除は,新規発行株式価値の年間. 関しても名目的所得に課税されることとなっ. 最大10%を上限とし,20年を限度として認め. た.中立的な課税という意味でキャッシュ・フ. られ,総額は発行価値に制限される28).これに. ロー税やインフレ調整所得税が選択肢としてあ. より,新規株式発行による資金調達と内部留保. ったが,国際的な観点からの税務執行上の複雑. による資金調達の問での中立性が達成されるこ. さゆえに却下されることとなったのである.イ. ととなる.その結果,法人部門の分配所得に対. ンフレ調整課税が却下されたことにより,従来,. する租税負担が下がることになり,資本所得税. インフレ調整原則に基づいていた利潤配分税は. において,株主レベルでの課税延期を通じたキ. 廃止された25).. ャピタル・ゲインの優遇措置が緩和されること. 法人により獲得される事業所得,利子所得,. と関連して,ロック・イン効果が縮小し,効率. キャピタル・ゲイン,不動産所得というすべて の所得は,一種類の通常所得として課税される.. 法人税率は52%から30%に引き下げられ,す べての法人,協同組合,投資信託,財団および 非営利組合に適用されることとなった.この税. 26)国際競争力を維持する目的から,非金融法 人部門の租税負担は変化させないことが意図され た.一方で,銀行のような金融部門は,株式資本 が少なく,税平衡準備金の配分が相対的に小さく なるので(後述),租税負担は増加することとなっ た.. 24)資本所得課税に関連して,新たに小規模企 業に対する課税が問題となった.この点に関する. 27)そのため棚卸資産の評価には「会計法(the. 考察については,Sorensen et a1[1998]に詳しい.. れ,それぞれの棚卸資産について,獲得費用か公 正な市場価値のうち低い方が適用され,その評価. 25)以下では,税率の引き下げと課税ベースの 拡大による中立性,資源配分の改善という観点か ら,法人所得に焦点をあてて分析をしていく.資 本所得課税と同様,小規模企業に対する課税の問. Accounting Act)」に規定された会計規則が適用さ. はFIFO原理によることとなった.. 題に関する考察については,S併ensen et al[1998]. 28)原則として,スウェーデンに在住する株主 に分配される配当のみが控除の対象となり,国外 の個人や法人に対しては源泉徴収されるが,親会. に詳しい.. 社に分配される配当は控除の対象とならない..
(14) ∫8. 性が改善するとされた.. と環境関連の個別消費税の導入によるものであ. 新たな法人税制においては,非課税準備金を. る.付加価値税は原則としてすべての財・サー. 一切認めないという原則に反し,税平衡準備金. ビスに課されることとなり,いくつかの非課税. 制度が導入された.二重課税が実施される名目. 品目はあるが,課税ベースについては,ECの. 所得に対する課税制度においては,株式により. 市場統合に向けて加盟国が将来的に期待される. 資金調達された投資より,借入れによる投資の. ものと一致するとされた.. 方が優遇される.さらに,課税ベースが非常に. これまで非課税であったマス・メディア30),. 広い所得税制においては,損金遡及引当金が必. 輸送・通信31),文化や娯楽32)に対して新たに付. 要となる.この2つの特徴により,法人の自己資. 加価値税が課されるとともに33),住宅の建築や. 本に基づいたこの新たな準備金制度が導入され. ホテルやレストランのサービスなどに対しても. ることとなった.まず,法人,協同組合,貯蓄. これまで適用されてきた軽減税率が廃止され. 銀行,外国法人は税平衡準備金への配分ができ. た.. るが,生命保険会社,住宅共同組合,投資会社,. また,エネルギーの領域に関しては,いくつ. 投資信託,信託会社は課税が制限されているの. かの変更が加えられることとなった.まず,す. で除外される.次に,配分は企業の株式資本の. べてのエネルギー消費に対して付加価値税が課. 30%に制限される(KSURV).また,サービス. されることにより課税ベースの拡大が図られる. 部門のように株式資本の少ない企業では,配分. とともに,環境への配慮から二酸化炭素税,硫. が給与支払の15%に制限されるくLSURV)29).. 黄税といった環境税が導入されることになっ. これらの変更は税収面においては,法人に対. た.二酸化炭素税は,石油,石炭,自然ガス,. する租税負担を変化させないことが意図されて. 液化石油ガス等に,その二酸化炭素の排出に関. いたが,同時に,様々な資産に対する投資やそ. 連して課税され,硫黄税は石油,石炭,泥炭に. の調達方法に関するインセンティブが重要視さ. 対して課される.. れた.企業の財源調達に関して,まず,税率の. これらの環境税の導入により,エネルギーに. 引き下げと株式資本に対する税平衡準備金の導. 対する租税負担を制限するために,石油,石炭,. 入により,内部留保により調達される投資の課. 自然ガスに対する一般エネルギー税,および,. 税前収益率を引き下げ,借入れによる調達に対. 自動車燃料ではない液化石油ガスに対する課税. する負担を相対的に上昇させることがもくろま. は半減された.また,簡素化の理由から,石油. れた.続いて,分配法人利潤に対する部分的な. 製品等への特別税は一般エネルギー税と石油に. 二重課税の緩和により,新規株式発行による投 資の課税前収益率が,内部留保によるそれより. 低く抑えられることを通じた中立性の達成が意 図された.. 3−5 消費に対する課税. 所得税率の大幅な引き下げによる税収減は, 大規模な間接税の増徴により調達されることと. なった.これは付加価値税の課税ベースの拡大. 29)税平衡準備金への配分は毎年見直され,企 業は両者のうちいずれかを選択することができる.. 30)国営のテレビ,ラジオのライセンス料を除 いたすべての放送,テレビ活動に課税される.. 31)航空,鉄道,タクシー,地方輸送を含むす べての国内乗客輸送サービスおよび電信電話サー ビスが課税されることとなった.. 32)音楽コンサート,映画,サーカス,劇場, オペラ,バレーといった娯楽は非課税のままとな った.. 33)その他,従来,医療,歯科医療,社会扶助, 教育は非課税であったが,医療,歯科医療に関し ては,医療費用手当を受ける資格があるもの,公 的に供給されるものに限って非課税となった.ま た美容師,弁護士,獣医などによるサービスも課 税されることになった..
(15) ∫9. 対する税に統合されることとなった.以上の結. 4−2第二段階(1989年6月の委員会報告まで). 果,エネルギー税の変更と二酸化炭素税の導入. フェルトの発表を受け,各政党内で議論が行. により,石油にかかる租税負担は変化せず,石. われたのち36),1987年6月に個人課税改革委員. 炭にかかる租税負担が他のエネルギーよりも高. 会(Utredningen om refomlerad inkomstbeskat血ing.. くなったのである.. 以下,RINK),法人課税改革委員会 (Utrdningen om refomlerad f6retagsbeskattning.以. 4 税制改革過程. 下,URF),間接課税改革委員会(Kommitt6n f6r. 前節では,経済のグローバル化のインパクト. indirekta skatter以下, KIS)という3つの委員会. および既存税制の抱えていた問題点との関連か. が組織された37).通常このような政府委員会は,. ら制度の変更を詳細に追ってきたが,次に検討. 主要な政党の代表,産業界,および労働組合の. されるのは,その改革の意図の問題である.以. 代表者から構成され,その他に財務官僚や研究. 下では,政策決定過程の分析を通じて,1991 年税制改革の歴史的な位置づけを明らかにして. 者も参加するが,RINKとKISにおいては,す べての利益団体が,それらと委員会の仕事の距. いこつ34).. 離を保つ目的から排除された38).また,RINK. 4−1 第一段階(改革論議の開始). (Erik Asbrink), KISについては前財務省租税局. スウェーデンにおいては,80年代初頭に個 人所得税の税率引き下げ,あるいは,支払利子. 長のマルムグレン(Kurt Malmgren)が,それ. 控除の制限といった税制改正がなされたもの. 過程は財務省によって厳密にコントロールされ. の,それ以後,税制改革は主要な政治的議題に. ることになった.RINKとK【Sは87年初秋に開 始され,現行制度の分析と新たな制度のモデル に関するメモが作成されたが,翌年に選挙を控 えていたため,政治的に厄介な税率の問題と減 収分の調達の問題は棚上げにされたままであっ. とURFについては財務副大臣のオスブリンク. ならなかった(Salsback[1993:199】).. しかし,1984年のアメリカ財務省報告を受 け,さらに翌年,デンマークにおいて,87年 の税制改革に対する広い政治的合意ができたこ. ぞれの委員会の議長を務めることにより,その. とをきっかけに,税制改革論議が開始されるこ. た.. ととなった.まず,財務省で議論が始まり,そ. ここで,1991年税制改革の成立に非常に重 要な影響を及ぼしたといえる88年9月の国会議. の後,様々な機関が改革提案を行った.86年 初秋には,政府はキャピタル・ゲイン課税に関. 員選挙について触れておきたい.この選挙では,. する政府委員会からの提案に対して見解を示さ なければならなかったが,これに対し,財務大 臣フェルトは,より広範な改革を行う時期であ. 35)具体的には,資本所得に限定せず,所得全. るという結論に達し,86年10月15日,委員会 提案の代わりに包括的な税制改革を直ちに始め. 般を扱うものとした.間接税は幾分遅れて加わる.. ることを発表した35).. 36)社民党,国民党は,党内でディスカッショ ン・ペーパーを発表した.それらはともに大胆な 税率の引き下げを含むものであったが,それぞれ. の党内において受け入れられた(Salsback [1993:2021).. 37)その他,インフ1/調整所得課税委員会(IBU). が組織されたが,以下では,主に上記の3つの委員 会に関連させて分析を進めていく.. 38)特にRINKは,7名の政党の代表者だけで構 34)以下の改革:過程に関する記述は,Salsback. 成された.その内訳は,社民党が3名,穏健党,中. [1993】およびAsard=Bennett[1992]に依るところが. 央党,国民党,左党が1名ずっとなっていた. 大きい.. (Asard=Bennett[1992:36])..
(16) 60. 税制改革が1つの大きな争点となった. [2002:10])41).この選挙期間と通して,カール. (Asard=Bennett[1992:38]).伝統的に社民党は選. ソンをはじめとした社民党の幹部は,自らが包. 挙毎に非社会主義政党のうち1つ,場合によっ. 括的な税制改革:を望んでいることを全く示唆し. てはそのすべてを政敵として設け,それに対す. なかった.また,税制改革委員会においても,. る批判という形で,選挙期間中の議論の方向を. この問題が早期に解決することに対して否定的. 決定することに成功してきた.そこで社民党は,. な見解が示されていた42).しかしこの選挙期間. 税制改革提案をいち早く行っていた国民党を政. 中,RINK内部では,秘密裏に税率の引き下げ. 敵とすることによって,選挙運動を展開した39).. とその減収分を調達するためのモデルが作られ. 当時の首相であった社民党党首カールソン. ていたが,それは多くの点で社民党の批判の対. (Ingvar Carlsson)は,国民党は穏健党を擁i淫す. 象となった国民党の提案に類似したものであっ. る右翼的立場にあり,彼らが提案している所得. た(Salsback[1993:203])。. 税率の引き下げは,不当に高所得層を優遇する. 社民党が選挙に勝利したその翌月に,税制改. ものであると批判した.逆に自らは選挙期間中,. 革のブループリントがフェルトとオスブリンク. 「より公平な税制(fairer taxes)」というスロー. によって,カールソンに提出され,カールソン. ガンを繰り返し,税制改革に関して非社会主義. は,フェルトに対して,社民党の大きな支持基. 政党とは一切妥協しないことを表明したが40),. 盤であるLOのサポートを確保することを条件. 具体的な政策についてはいっさい語らなかっ. として提案を支持することを明らかにした.そ. た.全国で社民党候補者による国民党に対する. の後,政府から税制改革,特に税率の問題に関. 批判が繰り返されるなか,中央党と左党もこれ. しての見解が提示されないことに対する野党か. に追従することとなり,国民党は厳しい選挙戦. 結果として1988年選挙では,社民党の戦略. らの不満が増大するなか,フェルトはLOの指 導者達に対して,この改革案が十分に社会民主 主義的な租税政策であることを説き,最終的に. が奏功し,穏健党と国民党が議席を減らし,左. 彼らを説得することに成功した.そうした成果. 党および中央党が議席を伸ばした.社民党は,. を受け,政府は11月に所得税改革のガイドラ. 若干,議席を減少させたものの,下落傾向にあ. インを発表し,プレス・コンファランスにおい. った支持率を回復させると同時に,政権を維持. て,フェルトと:LOのリーダーであるマルム. することに成功した(Statistiska Centralbyran. (Stig Malm)は,現行の租税制度が如何に「腐. を強いられることとなった.. 敗」しているかということを説明し43),高所得. 層に対する租税の抜け穴をなくし公平な税制を. 39)国民党は,大多数の納税者の限界税率を 50%まで引き下げ,それによる減収分は基礎的な 個人手当の50%以上の削減で埋め合わせるという. 築く必要と,資本所得と個人所得を統一的に扱 う必要を主張した.また社民党も,フェルトの 計画を支持する立場を明らかにした.ただし,. 提案を行っていた(Salsback[1993:203], Asard= Benne批[1992:38D.. 40)1988年8月29日付の日刊紙Dagens Nyheter において,カールソンは”Ingen ny underbar natt. (no new wonderful night)”と述べている. 41)その他,新しく環境党が国会に議員を送り. (Asard=Bennett【1992:391).”the wonde1至ul night”と. 込むこととなった.. は,穏健党,国民党,中央党による保守中道連立 政権期である81年に,社民党が政権内の租税政策 の足並みの乱れを突いて,国民党,中央党と協力 関係を結んだことを指している.これにより穏健 党は政権を離脱し,翌年の社民党政権の復帰につ. 42)実際,RINKの議長を務めるオスブリンクは, 1988年9月7日付のDagens Nyheterにおいて,「率 直に言って,選挙が終わり,各政党がマス・メデ ィアに出演する必要がなくなったときの方が,税 制の問題を分析するのは容易であろう.」と述べて. ながった.(Steinmo[1993:184D.. いる (Asard隅Bennett[1993:40D..
(17) この計画を支持する一つの条件として,税制改. 革の結果,租税負担が高所得者層から低所得者. RINK ・国税の勤労所得税の限界税率の引き下げ(最. 層に移らないことを要求しており,これが後に 委員会提案の変更を余儀なくする要因となる.. 高限界税率42%→20%).. しかしながら,これ以降の改革過程は,社民党. の拡大.. ・・. tリンジ・ベネフィットに対する課税ベース. およびLOの支持を基礎に展開されていくこと. ・資本所得に対する税率30%の分離比例課税.. となる.. ・資本所得の純損失に対する税額控除.. 企業課税に関してURFでは,あまり公式な 議論が行われなかった.経営者連盟(SAF)が 1987年の春に出した税率の引き下げと課税ベ. ・支払利子,キャピタル・ロスに対する控除の 制限.. URF. ースの拡大を含む改革提案は,産業界で合意を. ・法人税率の引き下げ(52%→30%). 得ることは比較的厳しかったが,財務省や野党. ・税平衡準備金(SURV)を組み合わせた課税. の考えに沿っていた.ただ,法人課税一般の複. ベースの拡大.. 雑さと改革後の企業からの収入効果や租税負担. K【S. の計算の難しさが問題となっていた.そこで議 論に決着をつけるため,財務省,産業界,労働組. 合の代表者による非公式な討論を開始され,そ. ・付加価値税のサービス,エネルギー部門への 課税ベースの拡大. ・環境関連税制の導入.. こにおける合意が委員会の最終提案となった坐).. 1989年6月に各委員会から提案を提出された.. 以上の概要からもわかるように,前節で見た. 委員会提案の概要は以下の通りである45).. 経済のグローバル化への対応と既存税制の問題. 点の克服という1991年税制改革の方向性は, この委員会提案で明確に打ち出されることとな った.. これらの提案によれば,従来の制度は,税収,. 所得分配をはじめとする様々な政策目的のため に複雑化し,このことが企業や個人の意思決定 43)特に,現行制度が租税回避や脱税の機会を 与え,社会における不公平を増大しているという. に歪みを与え,水平的,垂直的な不公平をもた らしてきたと同時に,ここ数年の間に,租税回. ことが強調された(Salsback[1993:204D.またこの. 避が複雑化して激増するようになり,経済のグ. 時点で,所得税に関して,1989年6月のRINK提案 と同一の年間20万クローナ以上の所得に対する国. ローバル化と証券市場の規制緩和が,この歪み や不平等を顕在化させるようになったと指摘さ. 税の限界税率を20%まで引き下げる案が示された. これに対して一部のメディアからは,社民党によ る公約の破棄と非難されたが,カールソンは,国 民党は限界税率の引き下げのみに焦点を当ててい たが,社民党は,税制全体の改革によりすべての 国民が便益を受けることを望んでいると主張した.. この問題意識に対する改革の方向性として,. また,この点は,マルムによっても強調された. 2つの原則は密接に結びついており,まず,水. (Asard=Bennett口993:42】).. れている(Swedish Ministry of Finance[1989a:6]).. 統一性の原則による水平的公平の達成および税 率の引き下げが掲げられることとなった.この. 44)参加者は,フェルト,オスブリンク(とも. 平的公平の観点から,統一的な課税を行うには,. に財務省),エディン(Per−Olof Edin:LO),ロディ ン(Sven−Olof Lodin:SAF)の4名であった(Sven−. 特に資本所得に関して大幅な税率の引き下げが. Olof Lodin氏に対するインタビュー(2002年9月6. 必要となり,反対に,大幅な税率の引き下げを. 日)による).. 行うには,その減収分を調達するために統一的. 45)詳細は,藤岡口9921を参照.. な課税による課税ベースの拡大が必要となる..
関連したドキュメント
自由主義の使命感による武力干渉発想全体がもはや米国内のみならず,国際社会にも説得力を失った
しかし、近代に入り、個人主義や自由主義の興隆、産業の発展、国民国家の形成といった様々な要因が重なる中で、再び、民主主義という
[r]
[r]
従いまして、本来は当社が責任を持って担うべき業務ではあり
2013年3月29日 第3回原子力改革監視委員会 参考資料 1.
社会学研究科は、社会学および社会心理学の先端的研究を推進するとともに、博士課
租税法律主義を貫徹する立場からいえば,さらに税制改正審査会を明治38