• 検索結果がありません。

定期船海運の法政策に関する比較研究 : 海運の公共性から観た競争法適用除外の擁護

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "定期船海運の法政策に関する比較研究 : 海運の公共性から観た競争法適用除外の擁護"

Copied!
98
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)定期船海運の法政策に関する比較研究  ∼海運の公共性から観た競争法適用除外の擁護∼. 石黒行雄. 1.本論文の課題と分析の焦点  産業に対する規制緩和は世界的傾向である。これまで規制によって保護さ れてきた基幹産業(電力産業,通信産業、金融産業,交通産業など)が近年 次々と規制緩和されて行った。海運も例外ではなく規制緩和が進み,米国政府 は1998年海運改正法(Ocean ShipPing Reform Act of 1998:0SRA)1)によって. 海運同盟の機能を形骸化し,さらに米国反トラスト改革委員会(US.Antitrust. Modernization Commission:AMC)は,反トラスト改革委員会法(Antitrust Modernization Commission Act)2)に基づき行った調査報告書を大統領と議会. に提出し(2007年4月)tその最終報告書の取り扱いを政府と議会に委ねた。 その報告書は海運(international shipping conference)を含めたいくつかの規. 制産業(regulated industries)の反トラスト法適用除外の廃止を強く勧告して いる:)o.  欧州議会は2006年7月に定期船海運への競争法包括適用除外廃止を決定, それを受けて閣僚委員会は2008年10月をもって廃止することを決定した。そ. して,H本公正取引委員会は2006年末に独禁法の定期船海運への一括適用除 2ユ.

(2)  横浜1到際経済法学第17巻第1号(2008年9月). 外の廃止を結論付け,その検討を国土交通省へ要請し最終決定を委ねた㌔当 局のこのような主張にあわせ,民間の研究機関/研究者も同じように主張する。  クリス・セイジャース(Vanderbilt University School of Law)は,海運の規、. 制緩和の中で最後に残されている定期船海運の「拘束力のない運賃協定」に対. する競争法の適用除外は,船社間協力の余地をまだ残す結果となっており有 害であると「外航海運における行政規制の消滅(The Demise of Regulation in Ocean Shipping)f’)」の中で主張する。.  先ず,航路安定化協定(talking agreement)fi)とその航路安定化協定によっ て設定される数量割引運賃契約(service contract:S/C)7}への自主的運賃ガイ. ドラインは,米国1998年海運改革法(OSRA)によって寛大に扱われ.大量の 情報が協定メンバー船社間でシェアされており,反トラスト法に違反している。. 次に,運賃ガイドラインと航路安定化協定は,船社が荷主にコストを付け換え る運賃値上げと付帯料金の値上げを容易にしている。さらに,継続して行う規. 制緩和は多くの船社にとって混乱する結果となりうる坑それは海運業界の組 織,過剰能力および種々の固定化した業界の期待に対し貢献してきた百年近く に及ぶ米国の海運政策が役に立たないものであったからである,と主張する。 最後に,セイジャースは現在の海運規制の管理方式は,事実上経済理論の上で 大きな聞違いであった過去の遺物の痕跡と考えることが最も正しいかも知れな いからであると述べる。そして,それはアレグザンダー委員会報告によって,. 1916年の米国議会が状況を誤解したためであって,その時には事実上誰もが それについて誤解をしていたからであるS)、と主張する。.  またEU委員会競争局の依頼によってグローバル・インサイト〔Global Insight)とベルリン工科大学(Berlin University of Technology)が共同作成し. た報告書9)も海運に対するEU競争法包括適用除外の廃止を結論づけている。 先ずt現在同盟が運賃決定に影響力を及ぽしており,海運への競争法包括適用 廃止によって運賃が値下げされれば,適正な運賃が実現されると主張する。そ. して競争の増大は船社に改革と改善のプレッシャーを与え,将来のより大き 22.

(3)                      定期船海迎の法政策に関する比較研究. な運賃値下げの基礎となる,と述べる。次に、純粋な情報交換システムは,ト レード規模とプロセス能力の稼働率,輸送貨物と輸送能力の展開.そして運賃 価格についての情報の収集と処理から構成されるであろう。そしてその正当性 は,それらの情報が他の計画目的のためと同じように輸送能力と輸送器機の配. 置と展開に役に立つことである。このことは原則的に受け入れられ,情報を シェアし合うことは害のないオペレーション上の利益である。しかし供給と対 応能力をマネージしようと意図することは共同謀議行為である,と述べる。最 後にT純粋に第三者の独立情報データサービスシステム(the pure information. exchange system)によりすべての情報が集められ処理されて.市場で輸出業 者と船社の双方に役に立つようにするべきである,と主張する。.  以上のような世界的な規制緩和の流れの中でtこの論文は定期船海運協定の 一部分,すなわち「拘束力のない運賃協定」に対する競争法の適用除外が不 特定多数の顧客に対する定期船サービスを維持する上で必要であることを検証. する。海運への競争法適用除外廃止を主張するセイジャース論文の主張とグ ローバル・インサイト報告の結論は,この論文の主張とするところと相反する ものである。この論文は,わずかな競争法からの適用除外により設定される「ゆ るやかな拘束力のない運賃ガイドライン」によって,不特定多数の利用者(荷主) を対象に提供される「定期船サービス」が「公共の利益(public interest)」に. 貢献することを検証することにある。セイジャースの論点にもまたグローバル・. インサイト報告にもいくつかの賛同できる側面もあるが,「海運への競争法適 用除外を廃止」する点において,本論文は基本的に相容れないものであり,本 論文では「定期船海運に対する最小限の競争法の適用除外の必須性」を論証す る。.  さらに,本論文の主張の一つは,規制緩和を行い自由主義経済市場下で自由. な競争を助長することは海運においても望ましい姿であるが規制緩和によっ て定期船海運への競争法適用除外が実質的に全面廃i止されると,海運企業の大. 型化によって市場の寡占化現象が促進されるという側面が顕在化する,と思わ.                                  23.

(4)  横浜国際経済法学第17巻第1号(2008年9月〕. れることである。海運同盟カルテルにまる市場独占とは異なった寡占状況が顕 著となり,海運市場は少数の海運企業の寡占体制となる。それは,中小規模の 荷主にとって定期船サービス選択の幅が小さくなるだけでなく,船積み条件に よってコスト高につながる。さらに,途上国海運企業の国際定期船市場参画へ の障害ともなり,途上国船の市場参入を阻害する。また,国際航路に有力な自 国定期船を持たない途上国の輸出入業者は,国際貿易において不利な立場に立 たされる。すでに中国およびアジア貨物が海上物流において大きな流れとなり (2005年輸出総額の30%,輸入総額の28%)、さらにアジア貨が増大する傾向(下. 記表一1参照)にある中での海運の南北問題である。. 表一1国別輸出入総額表(単位:100万米ドル) 輸出. 地域/国 世界全体 アジア全体. 増減 2005. 2003. 輪入. 増減 2005. 2003. 7P11,994. 9,727,445. +39%. 7,166,451. 9β94,794. 2,075力34. 21900,731. +4096. 1.877β40. 2,778,714. +48%. 中国. 438,228. 761,953. ÷7496. 412,760. 6591953. +60%. +38%. B本. 47ユ,999. 594,986. +26%. 383,085. 514,988. 呼34%. 韓国. 193817. 2841419. +47%. 178β27. 261238. +46%. シンガポール 香港. 144,183. 229,652. +59%. 127,935. 200,050. +5696. 223,762. 289,337. +29%. 231β96. 299,533. +2996. 99,370. 140,871. ・+42%. 81,949. 114,410. ÷40%. マレーシア. (出典:世界の統計2007総務省統肚局平成19年3珂発行217頁よ1,引用L作成).  したがってT自由主義経済体制の下での適正な定期船海運秩序存続のために 望まれることは,競争,市場占有率,および政府規制と調整を,最も望ましい 割合で結合させることであり,“定期船海運に対する競争法の適用除外の維持 か廃止かITといった二者択一ではなく,実状に合った解答をもとめることが海 運産業と世界貿易における適正な経済的資源配分への寄与のために検討される べきであり,同時に緊急時における船舶の動員など国益を見据えた政策が必須 とされる。ここで繰り返し指摘したいことは,この定期船海運協定の一部への 競争法適用除外を必要とする考えは,長い海運の歴史に立脚した既得権からの. 主張ではなく,新しい定期船海運秩序が樹立される上で求められているもの 24.

(5)                      定期船海迎の法政策に関する比較研究. であって,在来の海運同盟を中心に行われて来た定期船海運活動の概念とは異 なった思考の枠組みからくるものである。海運産業はt変化を繰り返しながら 発展して来た。以下その海運産業の変遷と外航航路の歴史的経緯を考察する。.  1.海運産業の変遷。.  (1)定期船海運同盟と海運環境の変化.  定期船海運の歴史的変遷の推移は,次のように要約される。第一に,定期船. 海運同盟の観点から見れば,最初の定期船海運同盟がイギリス・リバプール /インド・カルカッタ間に設立(1875年)されてから1916年米国海運法1°}が. 制定されるまでの約40年間,海運同盟は各国政府からの干渉を直接受けるこ ともなく海運自由の原則11)の下に同盟機能を充分に活用した活動を行って来 た。そこでは,荷主を同盟につなぎ止めるためのルール(二重運賃制度や運賃 割戻し制度など)が有効に作用し,盟外船の活動に充分対抗することが出来た。.  第二に,海運産業の立場から観て大きな影響を受けた事象は,産業革命(1800. 年代)であった。産業革命によって「蒸気機関」を採り入れた鉄鋼船が商船と して改善され実用化されたという事実は,その後の海上輸送に画期的な発展を 海運産業にもたらし,強烈な影響と変化を海運産業に与えた。この蒸気鉄鋼商 船の出現は,その時期の最重要航路であった大西洋航路(欧州/米国間)の海. 上輸送の覇権争いに強い影響をおよぼしたeアメリカは,豊富な森林資源と高 度な造船技術による優秀な帆船を作り出すことによって興隆を誇っていたが, 造船業界などからの抵抗によって帆船輸送から鋼鉄蒸気商船への切り替えに乗. り遅れ,大西洋航路における定期船輸送の覇権をイギリスに奪われる結果と なった。.  第三に,上記1916年米国海運法が定期航路に与えた影響は大きかった。同 法の制定によって,定期船同盟活動は反トラスト法の規制を受けるようになり,. 同時に米国政府の自国船と自国貿易保護のための政策(米国籍船による自国貿 易の保護を目的とする国旗差別政策)が実施されて行った。また,海運同盟の 25.

(6)  横浜国際経済法学第17巻第1号(2008年9月). 性格も1916年米国海蓮法の規定により「開放型海運同盟(open conference). ILユ」の性格が位置づけられ,それまでの英国型「閉鎖型海運同盟(closed conference)1:s)」の一角が崩れ,盟外船の市場への参入を(特に大平洋を中心. とする航路において)容易にする環境を作り上げた。.  第四に,二度に亘る世界大戦の影響による変化である。ここで二つの世界大 戦を定期船海運の歴史的変遷と推移によってくくるごとは世界大戦のそれぞれ の発端と結末が異なることから適切ではないが,次のように海運と社会経済へ. の影響について説明される。先ず,第一次世界大戦(1914年∼1918年)にお ける商船の保有は,強力な海軍力保持の象徴として考えられ,商船は海軍の予 備船隊としての役割をも担い,政府によって商船隊の保護と拡大政策が実施さ れた。実際に,商船隊は兵員・武器・物資などを輸送するための重要な輸送手 段として大きな功績があり,同時に重要な逓信手段でもあった。このように海 運の役割が,強力な海軍の象徴ともなり,軍事的行動に際して実際に重要な役 割を果たした。この時代における海運同盟活動は競争法の適用除外の下におか れ,盟外船の活動を最小限に抑えると共に荷主の同盟離れの現象もなかった。 次の第二次世界大戦は,航空機と通信の飛躍的発達という大きな変化と発展を. もたらした。それらの飛躍的発展は,第二次世界大戦終了後(1945年)の国 境を越えた物流,サービス,人の交流を容易にさせ,今日のような商業取引時 間と貨物輸送時間の短縮,資本の回転時間を大幅に短縮するという契機と変遷 をもたらした。.  第五に,乾貨の海上輸送という観点から見た大きな変化と影響は,1970年 初めより本格化した海上輸送貨物のコンテナ化14)であった。それまでの在来 船による乾貨輸送の概念を根底から覆すような簡略化されたフォーミュラの電 算化によって,海上輸送や港湾荷役および貨物保管と陸上輸送が在来船時代と 異なり,極めて簡単となって,永年の間伝統的技術と熟練を保持していた海運. 先進国の優位な立場を崩した。このフt一ミュラの電算化によって,海運後進 国の国際定期船航路への参入を一足飛びに可能にした。一方,海運経営の観点 26.

(7)                      定期船海運の法政策に閏する⊥七較研究. から見て,このコンテナ化輸送の発展によって受けた大きな影響の一つは、定 期航路経営コスト管理の改革が船社に要求されたことであった。それまでの運. 航船一隻ごと,あるいは1航海ごとの採算から,1コンテナ単位での採算が採 られるようになり,海・運企業はより厳しいコスト管理を強いられることになっ た。同時に,コンテナ化に対応した継続的投資と人材育成の課題が与えられた。. 大型化するコンテナ船やそれに対応する港湾施設(ターミナルなど)への投資 額は巨太なものとなり,’ カ産のために大規模装置を用いる装置産業としての性. 格を強くするものであった。それはまた,企業規模の大型化とターミナルや陸 上サービス施設の設置など総合物流経営化を促進し,海運企業間の統合合併の 契機となって、少数の成功した海運企業が生き残っていくという企業の存続を 賭けての生存競争的様相を呈しながら,少数の大型企業による市場の寡占体制 へとつながる傾向を示す。.  そして最後に,法的側面から見た変化と影響である。1916年米国海蓮法によ り米国政府海事機閤の管轄下となって以来の海運は、法的側面の変化によって. 大きな影響を受けた。最も大きい変化と影響は,米国当局の反トラスト法違反 への厳格な対応であった。運賃割戻し制度15),運賃延べ戻し制度叫二重運賃 制t7)など荷主を同盟につなぎ止めるために機能してきた運賃制度などが,数々. の海運訴訟事件(イスプランセン事件1958年結審,カーネーション事件1966 年結審,スヴェンスカ事件1968年結審,セーバー事件1968年結審など)を通 して,米国法廷により競争法違反行為として裁定され,海運同盟は荷主をつな ぎ止める手段を次々と失って行った。それは,同盟船載に不満を持っていた荷 主の盟外船への船積を助長する結果となり、盟外船の市場での活動を容易にす る環境を作り出した。そして同盟組織が形骸化する方向へ進む結果となった。.  (2)定期船活動のグローバル化と新海運秩序の胎動.  長い間海運同盟を軸として維持されてきた海運貿易秩序が,1916年米国海 運法成立以降徐々に変化して行った。その変化を促進した主要因の一つ1よ先                                  27.

(8)  横浜1到際経済法学第17巻第1号(2008年9月). ず,上記1の(ユ)にて述べたごとく,反トラスト法違反への厳格な司法の対 応であった。同じ考え方を持つ海運先進国を中心とした海運同盟メンバーに よって行われてきた慣行や独自の法の解釈は,多くの海運訴訟事件を通して修 正されて行き,厳格な法の適用が実施されるようになって行った。その結果, メンバー間の信頼をベースに運営してきた海運同盟という組織はそれまでの機 能を失い,形だけの存在となってしまった。.  次に,同盟メンバー船社と荷主との運送契約形態の変化である。従来は,同 盟タリフ1帥上の共通運賃を同盟加入船社が共通して同じように適用していた。. これが,1984年米国海運法によって数量割引制が導入され,個々の荷主と個 別の船社との数量割引運賃契約(service contract:S/C)19)による個別契約を. 協定の枠内で,メンバーが個別に締結することが出来るようになった。この S/Cによる貨物輸送が協定内で大半を占めるようになり,これまでの同盟共通 運賃表を使用しての定期船サービスは,主流ではなくなった。このシステムで. 明白となったことは.同じ協定内の個々のメンバーが個々の荷主とS/C契約 を締結し,独自の運賃率によって独立した定期船サービスを荷主に提供出来る ことである。これは,明らかにこれまでの同盟と荷主の関係を越えた新しい契 約実態であり,サービス実施の状況であって,新らたな海運秩序への過程を形. 成していると思われる。この新しい海運秩序への過程の下ではT特定の船社と 特定の荷主との1対1の契約が大勢を占め,個々の独立した数量割引運賃契約 による定期船サービスが大勢を占める。すなわち,外航定期船は米国の海運法 や日本海上運送法に「公共運送人(common carr丘er)」20)として定義され,公. 共運送人として海上運送を申し込むものすべての不特定多数の顧客に対し,同 じ蓮賃で,同じサービスを長期間にわたって安定的に提供し,①運送引受,② 安全輸送,③差別待遇の禁止,④公正な運賃設定の義務,を負い海運同盟組識 を通して長い間実施されて来た定期船サービスが変貌した。そして,S/Cによ る海上貨物輸送が,定期船サービスにおいて主流となった。.  ここで競争法適用除外の現状確認をすると,現時点で海運への競争法適用除 28.

(9)                      定期船海迎の法政策に関する比較研究. 外となっているものは,競争法へ直接には抵触しない単なる業務提携協定を除 き,次の二つである。第一に,認可された海運協定の下で複数協定メンバーに より使用される共通運賃ガイドラインの設定に対するものであり,第二は、認 可された協定下で複数船社によって行われる船上輸送スペース(船腹)調整に 対するものである。ただし,この二つの適用除外も,米国議会と政府の反トラ. スト改革委員会の最終報告を受けての判断と決定,EU委員会の包括適用除外 廃止に対する措置,および日本当局の公正取引委員会の海運への適用除外勧告 の取扱によっては,変わって来る可能性が大である。.  第一の運賃ガイドライン協定については,現在太平洋航路および大西洋航路 において同盟船や盟外船の区別なく参加できる協定事項に拘束力のない船社間 協定「航路安定化協定(talking agreement or discussion agreement)」21)が実. 施されており,この協定の下にメンバー船社は,運賃政策やサービス条件など について話し合う。協定メンバーは協定で決定する運賃率をガイドラインとし て使用し,それぞれの船社が独立して独自の運賃を取り決め運用するが,協定 によって合意された事項を遵守する義務はない。また,協定により取り決めら れる運賃水準に拘束力はないが,定期船活動を行う上で協定メンバーが独自に 取り決める運賃のための非常に有効なガイドラインとなっている。もしこの「ゆ. るやかな形での運賃水準ガイドライン」がなければ,外航定期船運航各社は市 場原理に任せ,独自に海上運賃およびその他の契約条項を決めることとなり不. 定期船契約の取引形態となる。運賃はマーケットにしたがって荷主ごとに異 なった水準で取り決められ,その運賃と付帯費用に見合った海上サービスが船 社により提供される。.  上述したように,米国および欧州を中心とする海運協定の中に共通運賃ガ イドラインに加え,数量割引運賃契約(S/C)の謹入が1984年米国海運法に よって義務づけされたがさらに1998年海運改正法(Ocean Shipping Reform Act:OSRA)z2)では,一般公開義務のない非公開数量割引運賃契約(confidential. S/C)z’)の導入も協定に規定することが義務付けられた。その影響は大きく, 29.

(10)  横浜国際経済法学第17巻第1号(200S年9月〕. 共通運賃タリフの利用による貨物運送は激減し,数量割引運賃契約による貨物. 輸送が,全体の約60%以上を占め主流となった。そして協定内での船社と荷 主の契約は,さらに不定期船運送契約の形態に近づいた。.  第二の船腹調整については,これまで航路秩序安定のためにという名目で,. 貨物量の多寡に合わせた船腹増減調整や貨物量減少時の運賃水準維持のため に,船上スペースの間引き調整などが行われていたが,現在では利用者の利害 を考慮しない協定メンバーの自己利益のためだけの船腹調整は,米国海運法お. よびEU共通海運政策により禁止されている。しかし季節的要因による貨物減 少への船腹調整など限定された範囲内ではあるが,協定メンバーが過剰船腹を 調整する余地はまだ残されている。運航する船舶の在庫を持ち貨物の増減に合 わせて投入する船舶数を調整して航路を運営することが実質的に困難な定期船 海運において,運賃の高値維持を目的とする船腹調整は別として,発生する貨 物量激減時に余剰船腹の調整機能(調整弁)として,競争法の適用除外が今後 も考慮されるべき事項である。なぜなら,余剰海上輸送スペー一スの発生は,容 易に運賃競争を引き起こすからである。.  以上に述べたような環境下での現在の定期船活動は、外航定期船運航会社が “認可された船社聞協定の下で不定期船形態の運送契約によって定期船サービ スを実施している”ことと同一と考察され,同一運賃と同一サービスを提供す ることによってその存在価値を示してきた従来の海運同盟の下ではとうてい考 えられなかった事態となっている。これを新Lい定期船海運秩序と呼ぶのか, あるいは新たな海運秩序への過程と見るのか,そして「公共の利益」に合致す るのか,本論文において検証する。.  海運産業の申で不定期船2S)が主として原価に運賃の基礎を置くのに対し,. 定期船訓はサービスの価値に基づく複雑な運賃表を使用する。そして,定期 船海運は多くの他の産業と同様に,産業保護と育成,発展と技術開発,そして 税制上の措置および競争法への抵触などの観点から複雑である。その定期船海 30.

(11) 定期船海迎の法政策に関する」七較研究. 運の現状および将来の展望を次に検証する。.  2、定期船海運の現状と展望  (1)定期船海運の展望.  この時点での海運市況を見る限り,海運の将来の荷動きは順調に推移するか のように思われるが,現在の海運市場の好況は中国貨物を中心とするグローバ ル市場の物流増大による一1時的なものであり,このまま推移すれば.醐送貨物. に対する船腹過剰,海上運賃の低下現象定期船海運の経営不振などが,再び 2010年前後から繰り返されるであろう。  定期船経営はすでに燃料価格の高騰や内陸コストの増加により,売上高増加、. 営業利益減少という現象が現われている。長い歴史を経て現在に至った海運産. 業はますます経営規模を拡大して大型化しt航路の多様化および総合物流経営 化によって世界的戦略によるグローバルサービスを行う傾向を示している。.  その行きつくところは.大型化した多国籍海運企業による定期航路での寡占 的サービス体制の形成であり,海運市場はそれら少数の多国籍海運企業により. 寡占化されることとなる。そこでは.競争原理の働く場面は少なくなり,利用 者である輸出入業者(荷主)は,市場を寡占化する海運企業との契約条件によっ. てそれぞれ異なった定期船サービスを受ける。すなわち,このような寡占状態 においては,共通運賃・共通サービスを提供するための海運企業間の協定はな く,定期船航路でありながら各荷主は,締結した個別海運企業との契約条件に. 基づいて,異なった海上運賃の適用を受け,異なった個別の定期船サービスを 受ける。これは,従来の海運同盟協定の下に実施されて来たような長期に固定 された入出港ll寺問や寄港地および一定期問固定される海上運賃など,海運協定. の下に行われる共同定期船サービスではなく,その時々の市場の動向によって 運送契約が決められる不定期船ビジネスと同様の海上輸送サービスである。そ こには,独禁法や競争法の対象となるような船社問協定は少なくなり,巨大化 した海運企業による単独の定期船サービスや競争法の対象とならないオペレー 31.

(12) 横浜国際経済法学第17巻第1号{2008年9月). ション上の複数海運企業間の業務提携が駆使され,定期船輸送サービスが展開 される。.  これまで長い間存続して来た海運同盟の実施する共同サービス体制は,米国 および欧州を中心とする主要航路ではすでに姿を消しつつあり,航路安定化協 定によるサービスが中心である。それに伴い,寡占体制となった市場では船社 間の自由競争も減少する。そこでは,「公共の利益」を目的とするサービスは,. 背後に追いやられることになる。その観点から考察を進めると.これまでのよ. うに,長期的に設定された海上運賃,多数の寄港地高い寄港頻度,そして 安定した本船スケジュ・一ル,などを提供する複数海運企業グル・一プによる共同. サービスが存在しないと仮定した場合,荷主は個々の海運企業との個別契約に. よって,海上輸送サービスを受けるがその場合大量の貨物を抱える荷主,一 定量の貨物を継続して出荷できる荷主,あるいは空船時の復荷や特定の貨物を 所有する荷主は,海運会社の定期船サー一ビスを有利に享受することができる契. 約を結ぶ機会が増大する。このような単独大手海運企業による,あるいは少数 大手海運企業グループによる海上運送サービス実施の状況下では、同盟もなく.. 競争相手であった盟外船との競合もない。また,国際航路に閤係する各国の競 争法上の制約に抵触する機会も少なくなる。このような定期船サービスは、自 由主義経済市場における市場で市場原理に従い活動を行う不定期船サービスと 重なることになる。定期船が実施する公共性を持つた定期航路サービスは、姿 を消す。.  (2)海運企業の大型化.  海運企業の大型化への方式として見られるのは,次のような形態である。先 ず第一に,同じ国籍同士の合併による統合である。シーエムエー社(Compagnie. Marttime D’Affretement:CMAフランス)とシージーエム社(Compagnie Generale Transatlantique:CGMフランス)によるデルマス社(Delmasフランス), OTアフリカライン(OTL Afi・ica Line:OTL:フランス)およびフランス企業グルー 32.

(13)                      定期船海迎の法政策に関する比較研究 プ‘’ボロアー”(Bollore)からの船舶部門買収で強力な「フランス・ナショナル・ コンテナ運航会社(French Natibnal Container ’Carriers)」が誕生した。世界の. 海運企業ランクリストの中に強力なフランス定期船運航企業の出現である(下. 記の表一2)。そして,日本海運業界は1963年に行われた6社中核体海運企業 への統合のあとの長い年月をかけての海運集約によって,現在の大手海運会社 3社(日本郵船,大阪商船三井船舶,および川崎汽船)の体制となった。そして、. 海運産業の再々統合の結果生き残った大手海運企業の3社は、世界的規模の多. 国籍海運企業となった。そして世界トップ10ランキング企業の中で日本海運 企業の一社がその一角を占め,第10番目に位置している。.  第二に,国境を超えた合併による巨大化である.先ず,デンマーク企業 A.P.モラーマースク社(Moller−Maersk)によるオランダ海運会社ピーアンド. オーネーデルロイド社(P&ONedlloyd)獲得のケース,次に,シンガポー ル政府系海運企業ネプチューン・オリエントライン(Neputun Oriental Line:. NOL)によるアメリカ海運会社アメリカン・プレジデントライン(American President Line:APL)買収のケース。そして,三番目にドイツ系海運企業ハパッ. クロイド社(Hapag Lloyd)の親会社TUI AGのイギリス系海運企業カナデイ アンパシフィック社(CP Ships)の買収によってハパックロイド社が大型化し  表一2 トップ10コンテナ船社の租載能力(teu)による順位表:予定されている合併後のランク Lines. マースク(デンマーク).   現在の翁‘蝋能力.   発注済栢載能力. mo. of ship/1000teu. mo. of slllps/ユOOOteu. 539/1,501. メディタレニァンシッピング 263/714 iMSCスイス〕. 市場シェアー @   (%). 127/659. 15.5. 39/294. 7.4. CMA CGM(フランス). 229/469. 152μ54. 65/354 29/171. 4.9. エバグリーン(台湾). 133/402. 16/99. 42. 103/320. 26/90. 3.3. 109/309 115/297 73/290 83/258. 33/205. 32. 27/223. 3.1. 1工/74. 3.0. 23/137. 2.7. ハパックロイド (ドイツ〕. APL(ネプチューン・才リエン gラインNOL)(シンガポール). チャイナシッビング(中国). コスコ(COSCO中国) ハンジン(Halljin韓.国). 日本郵船(NYK日本). 4.7. 目三:EIIs〔ld on fieets at Oct l 2005. {出典:Lloyd’sSHIPPING economistVolume 27, November 2005). 33.

(14) 横浜国際経済法学第17巻第1号{2008年9月). た,などのケ・一一スが代表的ものである。         1.  第三に,企業自身への投資による企業規模の拡大のケースである。合併・統 合や買il又(merger and acquisition:M&A)という手法ではなく,新しい付加価. 値への投資により企業規模拡大をしている海運企業がある。エバーグリーンラ イン(Evergreen Line)やヤンミンライン(Yang Ming Line)などに見られる. ように,台湾系主要海運企業は急速に台頭してきている。その企業規模の拡大 は,他国籍企業や国内企業との合併や併合による方式ではなく,大型コンテナ 船の建造を含む新しい付加価値への投資により企業規模を拡大している。そし て世界的規模の他国の海運企業と組み,アライァンス26)あるいはコンソーシ ァム・グループL’7)として、世界的規模の展開を行ってグローバルな定期船活. 動を行っている。      ・’.  上記ランキング表一2を見る通り,国境を越えた企業合併によって,世界で の単独シェアが15%以上という巨大な海運企業(A.Pモラーマースク社)が 現われた。上記のリストは,合併統合後の積載能力(capacity)を示しており,. 現在発注済みのコンテナ船を含むものであるが,今後数年問の世界定期船海運 企業の積載能力ランキングを示すものとして示唆されている2S}。今後も,マー. スク・P&0ネーデルロイドグループ,およびTUIハパック・カナデイアンパ シフィックグループに引き続き,国境を越えた海運業界の統合・合併がさら. に続くと予測されている。しかし日本海運企業3社については,お互いに合 併することは長期的には別としてありそうにないと観測されている。またさ らに他国籍企業との合併を目指す様子もない、というのが一般的観測である。. それは,日本海運企業3社がすでに巨大コングロマリット企業グループ(big conglomerate groups)に属しているからであるというのがその理由である。.  ここで大型化した船社の定期航路への戦略について考察する。上記の表一2 は,コンテナ積載能力順位3位までの船社で世界全体の36.8%のシェァを占め,. io位までの船社で52.1%を占める。これは,少数の海運企業によって,世界 海運マーケットが寡占される可能性を示している。 34.

(15)                     定期船海運の法政策にIYJする比較研究.  このように大型化した海運多国籍企業が行う定期船サービスの形態につい てtサービスを単独で行うのかあるいはグループを組んで行うかについては, 次のように考察することが出来る。先ず,第一の選択は単独企業による単独サー. ビスである。APモラーマースクやP&0ネーデルロイドグループが協定グルー プに加わった場合のシェアーが競争法に抵触する場合に,航路によって単独で 単独定期船サービスを行う。第二の選択は,アライアンスやコンソーシアムに よるサービスである。これらのグループによるサービスは,船上スペース交換 を伴うグループ活動で,オペレーション業務協定に基づくサービスである。.  第三として,以上2つの選択肢の併用を市場によって使い分けることでt競 争法への抵触を避け定期船海運活動を行う。.  次に,定期船海運経営に大きな影響を与る法的側面の現状とこれからの展開 について考察する。.  (3)定期船海運への法政策環境の変化.  EU委員会よって,2008年10月に実施される船社協定への競争法包括適用 除外(4056/86)の廃止に代わる新しい措置「EU定期船海運政策」が間もな く示されるであろう。AMCよりの最終報告書による勧告を受けてLM),米国政 府および議会はEU委員会による新しい措置を見守る姿勢にある。.  EU議会の包括適用除外廃止決定の数年前に,米国はユ998年OSRAによって 海運協定メンバーが協定内に留まりながら独自の個々の非公開S/C契約を個々 の荷主と結ぶことが出来るように規定した結果,海運会社にとって必要な貨物 を持つ輸出入業者および大量の貨物を持つ大手輸出入業者が有利な状況の展開. となった。さらに,米国連邦海事委員会(FMC)は,非公開数量割引運賃契 約(confidential S/C)ln)の締結許可を非船舶所有運航業者(NVO CC):mへ適. 用拡大:IL)した。米国連邦海事局(FMC)が許可したNVOCCへのconfidentiaI S/Cの締結権は,大手NVOCCの貨物混載市場での寡占体制を助長する。元来.. 自分では船舶などの輸送手段を持たないNVOCCは,顧客との契約によってそ                                  35.

(16)  横浜固際経済法学第ユ7巻第1号(2008年9月). れそれ異なった運賃と異なった輸送サービスを顧客との個別契約によって提供 するが,大口貨物や出荷頻度の多い荷主が優遇される。この傾向は,もともと. NVOCCサービスが小□荷主のための小口混載貨物サービスが主体であったも のを,法改正によって定期船運航会社に対し荷主としての地位を得た結果であ. る。問題は,この立法化によってNVOCCの地位が高められた結果, NVOCC の大型化が助長され,NVO CC市場での寡占化という傾向を生み, NVOCC の大1コ利用者が優遇されるという状況を作りだした。非営利団体(non profit organization:NPO)“シッパーズアソシエーション(shippers’association)”13). が認可され,小規模荷主を救済する措置がとられた。このNPO組織は,輸出 入業務を輸出入業者の代行として行う海貨業者(freight forwarder)に類する. 機能を持ち,非営利的に会員荷主の小口貨物を混載し数量割引やS/C単位で の貨物輸送を確保するための非営利荷主団体であるが,多数存在する小規模荷 主にとって十分な救済措置とは言えず,特に小規模荷主の不満を解消できず問 題を残している。.  一方,米国関係航路でのこのような状況に加え,EUの競争法包括適用除外(理 事会規則4056/86 ”‘))の2008年10月を以ての廃止決定によって,欧州共同体. 関係航路においても定期船輸送サービスを不定期船型契約による変則的な定期. 船サービスへと変貌させることになり,米国1998年海運法OSRA施行後の米 国関係航路の状況と同様に,公共の多数の中小規模の輸出入業者への配慮と対 策が損なわれる恐れが強くなった。.  米国連邦海事委員会(Federal Maritime Commission:FMC)は,海運への. 競争法適用除外範囲をさらに圧縮し規制緩和することによって,またEU委員 会は海運への競争法包括適用除外の廃止を2008年10月に実施することによっ て,定期船海運市場での自由競争がさらに促進されるとの考えに立ちt海運同 盟協定を初めとする船社聞協定が消滅することを否定しない。.  このような完全規制緩和に近い状況になると,海運企業の淘汰がさらに進 み,巨大化した多国籍海運企業による競争相手の買収と吸収合併がさらに進行 36.

(17)                      定期船海迎の法政策に関する比較研究. し,少数の海運多国籍企業による市場の寡占化の進行が顕著となる。その結 果,独力にて生存競争に勝ち抜いた大規模海運多国籍企業が海運市場を寡占化 するが,そこには最大公約数の不特定多数の利用者(荷主)に対し長期的に安 定した運賃水準と海上運送サービスの提供を目指した公共運送人と言われるコ モン・キャリアーはなく,荷主は船積みする貨物の多塞や支払う海上運賃・付 帯料金と港湾サービス料金の額によってそれぞれ異なったサービスの扱いを受 ける。.  それは廉価で質の良いサービスを求める荷主側の選択の幅が極めて少なくな ることを意昧する。なぜなら、寡占体制下での大規模海運企業あるいはその少 数海運企業グループメンバーは,個々に結ぶ荷主との契約内容に基づいて,す なわち荷主によって支払われる運賃や付帯費用の金額によって,海上輸送サー ビスと港湾サービスの内容を決定し提供するからである。サービスを実施する. 海運会社側に選択権が移り,利用者側の選択の幅はますます狭くなることを意 味している。.  定期船海運への法政策の側面,特に海i運への競争法適用除外範囲の変化は,. 海運同盟と定期船経営そのものに大きな影響を与えて来たが,さらにこれから の定期船海運に対する法的側面の展開を想定すると,海運貿易秩序は,適用除 外の廃止によって大転換を迎える。同盟カルテルによって維持されて来た国際 海運秩序は,欧米の主要航路において消滅し,定期船海運企業自身はこれまで に経験をしたことのない新たな環境の中で,異なった次元での定期船海運サー ビスを実施する。.  利用者(荷主)もまた,支払った運賃と付帯料金に相当すると定期船海運企 業が査定する海上輸送サービスを受ける。そこでは競争法に抵触しない海運協 定だけが存続し,すぐ数年前まで多数の海運会社によって行なわれて来た共通 の運賃と共通のサービスによる定期船共同サービスは,存在しない海運環境と なる。.  それが荷主にどのような影響を与え.そして海運企業にどのような展開が待‘’                                   37.

(18)  オ黄i兵IN際経済i去学角617巷第1f} (2008ゴF 9月). ち受けているのか。本論文では,競争法適用除外を海運協定の一部分に与える ことによって生かされる定期船サービスについての仮説を設定する。  また本論文では,私的独占禁止法の条文に述べられてい:5)「この法律は,私. 的独占,不当な取引制限および不公正な取引方法を禁止し…  公正かつ自由 な競争を促進し…  雇用および国民実所得の水準を高め,以て,一般消費者 の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進することを 目的とする(第1条:目的)」,また「この法律の私的独占とは,… 他の事 業者の事業活動を排除し,または支配することにより,公共の利益に反して… (第2条第5項)」,という公共の利益の観点から海運定期船サービスを評価し 検証することを課題とする。そして“定期船サービスが,公共の利益のために 必要であるtTとの前提に立った場合,定期船サービスと称される海運企業の定 期航路運営のために,必要最小限の範囲で定期船海運協定のどの部分が競争法 の適用除外とされるべきかを具体的に検証し,まとめにおいて述べる。あわせ 行政と利用者に与えられる課題についても考察し検証する。.  次に,本論文の焦点について述べ,論文の目的を達するための手法について 述べる。.  3.本論文の目的と方法  海運という業種には多種多様な分野が含まれるが,本論文の究極の目的はそ の中の「定期船貨物海上輸送の運賃と船腹調整についての船社問協定の必要性 と重要性」に焦点を合わせ,分析と考察を行なうことにある。.  以下、そのような観点から,海運に対する行政側からの関与と介入に関する 重要な点を指摘する。.  (1)定期船海運への行政関与の必要性.  市場が独占資本に支配され,多くの人々の福祉を実現するには限界のある制 度として位置づけられ,その限界を補完し資本に搾取される公共の福祉を積極 38.

(19)                     定期船海迎の法政策に閲する比較研究. 的に実現するための政府による市場への介入が福祉国家の理念の下で価値ある ものとされていたがその状況が変化している:1“)。しかし,競争法の積極的活. 用による海運市場経済の活発化と共に,自国海運と自国貿易の健全化のために 政府介入の必要性があることには基本的に変わりがない。なぜなら,海運秩序 は自然の産物ではなく,一定の法的制度的装置によって担保されなければなら ないからであり37),国境を越える経済活動が行われる場合には,法的綱度的装 置によって担保された経済秩序が必要であるからである3S)。.  過去に容認されていた海運同盟協定への競争法適用除外は,海運同盟の独占 的活動を容認することになったが,一定の海運貿易秩序を維持していた。しか し,トレードへの新規参入者の参画を阻む要因となり,同盟は自由な競争を阻 害する存在となって行った。また,海運企業の合併,統合集約の繰り返しは,. 生き残った少数海運企業の体質強化と企業規模の拡大と総合経営化のための準 備期間となった。.  定期船海運においては,いったん価格競争が始まると破壊的な価格競争 (destructive competition)へと容易に陥る体質を持つ。定期船海運業界は,特. にその意志と能力があればすべての加入を認める開放型同盟を海運法に規定 するアメリカ関係航路鋤において,市場にまかせた自由競争によって厳しい 運賃値下げ競争を繰り返し経験した。競争相手を市場から放逐したあとは,自 然独占“・・)をした海運同盟が独占的支配を続けるケースが続いた。これ1よ完. 全競争市場における市場の原理にまかせることにより,市場成果は資源配分を 最適にするという一般理論とは異なった環境を生む結果となった。競争市場が 十分に機能するような財やサービスにおいては,不要な規則を排除し市場に任 せることによって適正な資源配分を実現することができるとされるが:1},重厚. な装置産業回といわれる海運のように固定費が莫大である産業においては市 場を信頼してその成果を期待することは難しい。そこに,海運に対する政府当 局による適宜適正な介入の必要性が存在する。. 39.

(20)  横浜国際経済法学第17巻第1号(2008年9月).  (2)海運産業の自律と政府関与の意義  定期船‘:)サービスは不特定多数の利用者(荷主)に対し,長期的,定期的. で頻度の高い安定した海上輸送サービスであった。海運同盟ベースのサービス においては,運賃表(タリフ)に基づく品目別共同運賃を提供するもので,船 社問協定により形成される海運同盟は非政府非営利の国際海運組織である。こ の国際的定期船海運組織が機能することによって,不特定多数の利用者を対象 とした定期船輸送サービスを共同で行うコモン・キャリアー(公共運送人)の 存在があり,海運貿易秩序が維持されて来た。そしてこの海運同盟という非政 府非営利国際海運組織は,入出港を行う各国の海運政策と法律により制約と影 響を受けて来たが,世界的規制緩和の流れの中で次第に競争法の適用除外の対 象からはずされ,荷主を拘束する運賃制度の廃止や盟外船に対する対抗手段(競 争抑圧船など.)の禁止によって,同盟は主要な機能を失って行った。.  現在,定期船海運産業はアジア貨物,特に中国貨物を中心に荷動き好況の状 態が続いている。しかし,運賃レベルは過去の最低時期の水準に比べ上昇して はいるが,まだ低い水準にある。一度下がった運賃はなかなか元には戻らない。. さらに燃料油や鉄道運賃の値上がり分をそのまま荷主に転嫁することもままな らない。市場の動向にまかせて商売を行う不定期船i・t)と異なり,船社が協定. を結んで不特定多数の顧客を対象として行う定期船サービスには,そのような 弱点的一面もある。.  視点を変え,定期船海運に対する競争法適用除外がなかったと仮定したら, どうであろうか。答えは,明確であ為。たとえ,現行のように海運に対する競 争法適用除外政策がゆるやかなもので海運協定グループの機能的活動のために 充分なものではないとしても,航路安定化協定などにおける「拘束力のない運 賃水準の設定に対する競争法適用除外」が,外航定期船サービスの実施にとっ てプラスに作用していることは,明らかである。  この「ゆるやかな海運協定」に加わりながら,複数定期船会社によるオペレー. ション業務提携などの協定や本船上のスペース交換共有協定(space charter 4⑪.

(21) 定期船海迎の法政策に関する比較研究. agreement)等の協調配船体制を持つグループがある。欧州では「コンソーシ ァム列と1呼ばれる企業連合であり,また,国境と航路を越えた業務提携によっ てネットワークの拡大や配船数の増大によるサービスを強化し,本船スペース やターミナルの共同使用によるコスト削減を目的とするグループ「グローバル・ アライアンス’1 C・)」がある。これらのグループの国境や航路を越えたコスト削減. 努力と運航能率向上努力が「ゆるやかな競争法適用除外」の下で生かされてい る。.  このように,海運企業の現在の好成績は,古典的な海運カルテルへの独禁法 適用除外を享受しての海運活動の結果ではなく,船舶の大型化と省力化.技術 革新による船舶運航能力の向上と港湾作業の効率化,十分なマーケット調査と. 機敏な戦略の実施など「ゆるやかな競争法適用除外」を背景にしたグローバル 競争に対応するための海運企業の厳しいコスト削減努力の結果であり,剛時に タンカー部門や不定期船部門など他分野での好成績に支えられた総合的経営の 結果であると考察される。.  定期船海運への「ゆるやかなで範囲限定の競争法適用除外(特に運賃水準設 定行為に対する)」は,定期船サービス実施において重要性と必須性を持ち,. 外航定期航路経営のための最後の砦と位置づけられる・それなくしては、不特 定多数の中小荷主に定期船サービスを提供する「公共運送人」はなく’個々の 海運企業による不定期船契約形態での定期船サービスが残り.海運市場の寡占 化が進んで中小荷主にとって不利な環境となり「公共の福祉」が損なわれ易く. なる。すなわち,海運企業による経営規模の拡大や徹底した合理化によって海 運企業の淘汰が進み,市場は少数の巨大海運多国籍企業により寡占される構図 へと向かう。そこに,海運市場への政府規制(行政介入)の必要性が生じて来る。.  この寡占の否定的な面は,競争状態にある時には,利用者が安い運賃や荷役 料金を享受できるが,寡占状態となったあとは海運会社側に取引上の選択権が 移り,荷主は高い運賃・付帯費用やターミナルなどの施設使用料金を支払うこ とになる点である。一般拍に,自然独占が発生することが判っている産業では..                                  41.

(22)  横浜国際経済法学第17巻第1号(2008年9月). 破滅的競争による被害を回避するために,行政が市場に介入し規制を行うこと が多い47). H.産業社会における海運の位相  ここでは,第1項において海運の特殊性を形成する国家主義的性格と国際性 について述べ,その両者が緊張関係にあることを述べる。第2項では,公共の 観点からの海運について述べ,公共性のある他の基幹産業との比較を行う。第. 3項では,海運カルテル行為について述べtカルテルは全面的に禁止されるべ きものかについて検証する。また,これらを日米欧の中で比較法的視野から検 証する。.  1.海運の特殊性を形成する要因  海運産業に対する政府閲与が,他産業に比し頻繁で継続的であるのは,第一 に,海運が国家主義的性格(ナショナリズム性)を持っていた。第二に,国際. 性(インターナショナル)があること.そして第三はsこの2つの特徴がお互 いに相和しないもので緊張関係にあることによるものであった。.  (1)海運の国家主義的性格(ナショナリズム)  オリバー・クロムウエルの公海条例(1651年)’t帥は,絶対主義の下での重商主義. dP)の時代における海運保護主義で,イギリスおよび植民地全体にわたる貿易を. イギリス船で独占することが規定されていた。海運自由の原則を採る前のイギ リスは,自国船中心の国旗差別を実施していた・w)。.  同じく、明治維新以降の日本における海運の発達は,手厚い政府補助政策に よって始まった。それによって,日本海運は近代的商船隊を整備し,先進海運 国に追いつき,国際定期航路に進出することができた。世界第二次世界大戦ま. での日本の海運政策はt軍国主義的ナショナリズムをベースとしていた。明治 42.

(23)                     定期船海運の法政策に閏する比較研究. 時代の補助金は日清戦争のたまものであり.日中戦争の引き金となつた盧溝橋 事件(1937年)以降の海運補助政策の有力な後ろ盾は海軍であった。.  日本の場合と同じように,第二次大戦前までの各国の海運政策は,程度の差 はあれ,国家主義的性格を背景にしており,国家の歴史的発展と海運の興隆は 表裏一体の密接な関係の下に展開されてきた。そこでは.有力な商船の保有は,. 国威の象徴としての意味を持ち,また戦時には,兵員や武器・軍事物資の貴重 な輸送手段として,重要な役割を果たした副。.  これに対し,アメリカの場合には,産業革命によって蒸気鉄鋼船の商業化に. 成功したイギリスに立遅れ,1880年代後半から始まったイギリスとの大西洋 航路における航路覇権競争に敗退した。それ以来,長期間にわたる米国政府の 海運強化を目的とした造船補助や航海補助などの補助金政策が継続的に行われ た結果,米国海運産業の自律機能が次第に失われて行き・米国海運業界にアメ リカ人船主の経営する米国海運会杜所属の米国籍船がない,という現状を作り. だしてしまった。すなわち,主要な米国籍船は外国企業に買収され,外国企業 所有の米国信託会社の米国籍船として,定期航路で活動するという現状を作り だした。米国政府からの補助金政策によって,米国海運はゆがめられてしまっ たと言える。.  (2)海運の国際性  オランダの国際法学者グロテイウス(Grotius, Hugo 1583−1645)s2)が「IS由. 海論」により「海運自由の原則判を主張したのは1609年といわれるが・海 運の国際性はそれ以前から古い歴史を持ってお{) ,海運は近代国家成立以前か. ら,国家を超越した自由なやり方で活動していた。それは中世のハンザ都市の 時代にも続けられ,海運産業は自由な国際活動を行ってきた5㌔  海運の国際性を示す典型約なものの1つは,便宜{置籍船fne)である。第2次. 世界大戦終了のあと,便宜置籍船は急激に増加したがtその直接的理由は・第 一に税負担が少なく,第二に,廉価な外国人船員を配乗させることができるか.                                  43.

(24)  横浜国際経済法学第17巻第1号(2008年9月)          r. らである。パナマは第二次大戦前からの便宜置籍国であったが、大戦後は,リ. ベリア,キプロス,シンガポール,バミューダなどが便宜地籍船を誘致し、便 宜置籍国の数も増加した。建造資金は有利な外国金融機関や日本の財政資金を 利用し,造船所は建造船価の安い日本や極東の造船所へ注文し,建造された船 舶は税金の安いリベリア籍にするというように,国家の枠組みを超えた海運企 業活動が行われた。便宜置籍船は,国際性の一面を示す典型的な例とされる。.  (3)国家主義的性格と国際性との緊張関係.  便宜置籍船のような国家の枠組みを超えた海運活動の傾向が発生した。近代 海運における国際化の台頭である。.  第一次世界大戦終了後,外国との交通手段と通信手段が発達し,海運活動が さらに活発となった。そして,.1916年に最初の海運法「fi}が米国において制定. されるまでt国際定期航路に参画する海運会社は、殆ど他国の法的規制を受け ることなく,自由な立場から海運活動を行う一方,自国政府からは運航補助な ど各種の補助や保護を受けていた。すなわち,日米欧共にその海運政策はナショ. ナリズムとインターナショナル(国際性)という二面性を持っていた。.  1916年海運法成立以来,自国船保護と自国貿易優先を唱えてきたアメリカ は,一方では便宜置籍船を放任し,他方では国家主義的性格の補助政策を実施 して来た。.  イギリスを中心とする欧州海運は,当初は便宜置籍船に反対を表明していた が,やがてバミューダやバハマのような自国領土内に船籍を登録させ,税金の. 廉価な地域やあるいは無税の地域を作りだし米国などの海運先進国に対抗し た。.  日本政府もまた,経営コストと国際競争力のために,イギリスと同様に反対. であった便宜置籍船がtH本商船隊の大半を占めることを容認するようになっ た。.  圏辮貿易のグローバル化は時代の流れであり.それに矛盾する自国船保謹政 44.

(25)                      定期船海迎の法政策に閲する比較研究. 策が色々な形態により実施されている。この二つの異なった側面を持つ政策が, 国際化のながれに乗って実施されているのが現状である。.  ここに海運,特に定期船海運を世界的規模でマネージする国際海運専門機閲 の存在が望まれる理由がある。その課題の一つとして,その機構が世界の主要 航路におけるに荷動き量に合わせた船腹量をシミュレートし,造船の段階から 調整して計画的船腹保有を実施することである。運賃競争は,常に荷勅きに対 する船腹過剰から生ずるものであり,海運企業は流れる物量をすべて穣取り輸 送する体制で船隊の整備を行っているため,船腹過剰となる要素を常に抱えて いるからである。.  2.公共性の観点からの海運  この中では,公共性における海運の経済社会での立場を考察し、政府関与に ついて考察する。また“定期船海運はどのように扱われるべきかTTについて見. 解を述べる。            ’.  (])海運の公共性.  公共性は,「公開性」「公正性」「公平性」「公益性」などの意味を兼ね備え持. ち人々の活動と深く結びついた「公共世界」を前提にして成り立つ理念である。. これは,最初に「公共性ありき」ではなく,先ず「人々のコミュニケーション. や活動をベースとして成り立つ公共世界ありき」と定義される公共哲学での一 つの学説であるJ’7〕。.  公共性を持つ民間営利組織の定期船海運企業が利潤追求を第一主義として 公共的ルールを無視したり軽視したりする場合,どのような事態となるか。効 率第一主義とするなら,企業間および利用者である荷主とのコミュニケーショ. ンが歪み,それが歪むと公共の世界も歪み,公共性の度合いも低下する。公共. 性を持つとされる定期船海運が公共性を無視して利己主義を貫く場合,企業 の権利と公共の福祉の両立を困難にするss)e.                                   45.

(26) 横浜国際経済法学第17巻第1号(2008年9月).  船舶によって運ばれる物資や第一次製品を使用する最終消費者のための公共 性という理念も不可欠であり,このような公共性が,私有財産制や市場経済の 興隆によって消失しつつあるfg)。定期船海運が自由主義経済市場での活動を自. 由に進めるなら,公共性が無視されることになる。上記をふまえ,「海運の公 共性」については次のように要約されよう。.  まず,海運サービスは人々の安定した日常生活にとって必要不可欠であるe すなわちt人々の日常生活に必要なものは多々あるが,恒常的に物資を輸入し,. 製品を輸出しなければならないという日本産業経済の仕組み,および四面を海 に囲まれた島国という地政学的立場から,常時安定した輸出入を行う手段とし ての海運の立場は国民生活の安定のために欠かせない。理論的に,日本船では なく外国船をチャーターすることにsって物資の輸入,製品の輸出を行うこと ができる。しかし,自国商船群を持たない場合の不安定性は,第一次世界大戦 勃発時にアメリカが国際貿易において依存していた外国船舶が姿を消し,海運 市況の高騰によって膨大な滞貨を抱えたケースを見るまでもなく,戦争や国際. 紛争,それに自然災害などの非常時における船舶供給不足とtそれに伴う海上 運賃の高騰が国民生活に与える影響は計り知れないものがあり,国民経済を不 安定な状態へとおとしいれるW)。.  第二に,自国海運は国家緊急時に必要なものである。国家経済の非常時にお ける緊急物資輸入や戦争,そして国際紛争などの安全保障上の観点からt船舶 による海上輸送は重要なものとなる。上記にて述べたように,緊急時に外国船 をチャi・一+ターすることによる海上輸送は理論的に可能であるが:そのような状. 況で外国船をチャーターする場合に,必要とする数の信頼性ある船舶をタイミ ング良く傭船出来ることに,まったくの確実性と信頼性がない。大型の貨物航. 空機による輸送も可能ではあるが,1回の輸送数量に限りがある。このような 理由から,自国商船によるサービスは緊急1時や非常ll寺など,いざと言う時に利. 用出来る迅速,安全かつ確実で大量の物資を輸送できるサービスであることか ら,定期船海運の「公共性」が強調される。 46.

(27)                     定期船海運の法政鑑に関する比較研究.  第三に,公共性は共同体のように等質な価値に充たされた空間ではなく,同 一性や閉鎖性を求めない。公共性の条件は,それぞれの持つ価値がお互いに異. 質なものであって,そしてだれもがアクセス出来る空間である。この学説剛 による定期船海運における公共性は.不特定多数のそれぞれ異なる商売条件や. 商売の目的,それに商売上の考え方を持つ顧客が,定期船サービスという空間 に集まり,定期船サービスを受けるという事象こそが「公共性」の成立を示す ものとなる。従って,競争法適用除外のない海運に公共運送人はなく,少数の. 大型海運会社にsるサービスは,利用者側の選択を限定し,閉じた領域を作り 伺一性を求める。利用者(荷主)の利益は後ろに追いやられ,排他的となる。 誰もがアクセスできる空間ではなく,公共性も成立しない。  これらの学説は,定期船海運が競争法の適用除外を全く受けずに,定期船サー. ビスを提供することは「公共性」の観点から不可能であることを裏付けるもの であり,定期船海運における「公共性」の考え方は,遠くへ追いやられる。.  (2)公共性のある事業の中での比較.  「私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律」により,日本におい て公共性を持つ産業として独占禁止法適用除外となっている産業は,鉄道事業,. 電気事業,瓦斯事業,水道事業,運河事業,航空事業,および海運事業などで あるev)。海運と同じ装置産業である運送事業の申で,独占的な運営が行われる. 業種もあれば競争的な色彩の濃い業種もある。一般的な区別から言えば航 空産業(および空港事業)と鉄道事業は前者であり,海運業は後者である。し かし,規制緩和の波はこれらの産業にも押し寄せて来ている。もともと,「公 共性」という言葉はt政府が上記の基幹産業などを公共事業として推し進めた 時代の官製用語の一つで,公共事業に異議を唱える人達を説き伏せるための言. 葉であったものが1990年代に入ってから,いろいろな研究者によって肯定 的な意味でも用いられるようになったといわれるc・1)。すなわち,時代によって. 公共性の意味は,変わってきたことが指摘される。そして,以下の考察は現代                                  47.

(28) 杣浜国際経清法学第17巻第1号{2008年9月}. をベースに行った。.  1)航空産業(及び空港事業):.  空港事業においては破滅的競争の弊害を排除するために,また混雑による失 敗を回避するために独占自9供給権を賦与したり,フライトの乗り入れを規制し. たりする。それは,市場に任せることは社会的に見て望ましくないということ から,市場による失敗を避けるために公共性を考慮し,当局による措置が取ら れる。一方,競争法の規劉にさらされ,自由競争の中でのスカイフリー政策の 下に業界の再編成や淘汰が流動的に行われているアメリカ航空業界の実情は, 激しい自由主義経済体制下における市場での競争である。スカイフiJ 一一政策の. 下では,相互主義による二国閥協定によって稲互乗り入れ便数や適用料金が決 められる。市場が航空会社の運賃とサービスを選択し,サービス競争に敗れた 会社は市場より撤退するか,あるいは,Chapter−11N}により再度市場参入を計. るため徹底した合理化とサービスを両立させる努力が行われる。その結果航 空業界では、統合と合併が繰り返し行われている。.  日本公正取引委員会は,法律に適用除外の一つとして記されている航空産 業臼)についても独禁法適用除外政策の見直しを始め,公正取引委員会の「政 府規制等と競争政策に関する研究会」が「国際航空市場の実態と競争政策上の 課題について」という素案を作成した。その素案では膚際航空協定について、. 現行の独禁法適用除外制度を維持する合理的な理由を説明するのは困難とし. て,適用除外劔度の抜本的見直しが必要と結論付けている。そして最終報 告書をまとめることで,2007年9月20目の同研究会において方向付けがなさ れたfA) o.  以上のように航空産業は,海運産業と類似点もあるが,相違点も多い。決定 的な違いはt第一に航空輸送産業においては,いかなる国も他国の飛行機が領 土内を飛行したりすることや領土内への着陸許可を拒否することが出来るが, 海運の場合には,貿易および航海に関する諸条約により,他国商船の入港を拒 否することは敵意ある行為となる。航空には戦略的性質という観点から,海運.

参照

関連したドキュメント

厳密にいえば博物館法に定められた博物館ですらな

J-STAGEの運営はJSTと発行機関である学協会等

(7)

・関  関 関税法以 税法以 税法以 税法以 税法以外の関 外の関 外の関 外の関 外の関係法令 係法令 係法令 係法令 係法令に係る に係る に係る に係る 係る許可 許可・ 許可・

笹川平和財団・海洋政策研究所では、持続可能な社会の実現に向けて必要な海洋政策に関する研究と して、2019 年度より

高(法 のり 肩と法 のり 尻との高低差をいい、擁壁を設置する場合は、法 のり 高と擁壁の高さとを合

計量法第 173 条では、定期検査の規定(計量法第 19 条)に違反した者は、 「50 万 円以下の罰金に処する」と定められています。また、法第 172

アドバイザーとして 東京海洋大学 独立行政法人 海上技術安全研究所、 社団法人 日本船長協会、全国内航タンカー海運組合会