マテリアルフローコスト会計の自動車リサイクルへの応用(木村) ― 3 ―
【論文】
マテリアルフローコスト会計の自動車リサイクルへの応用
木村 眞実
Application of Material Flow Cost Accounting to Automobile Recycling
Mami KIMURA
1.はじめに
本稿では、MFCA(material flow cost accounting)を使用し、静脈産業の生産プロセスに は新たな資源の有効利用の方法と改善の可能性があることを示す。具体的には、静脈産業のう ち自動車解体業の生産プロセスに関して試案の MFCA バランス集計表を作成し、マテリアル のロスのうち、「既知のロス」に該当する使用済自動車(ELV:End-of-life Vehicles)由来の樹 脂部品には、生産プロセスの改善や設備投資によって、再資源化を行う価値があることを示す。 ELV は自動車リサイクル法(2005年施行)のもとでリサイクルが行われている。しかし、 特定の部品に関しては、同法において自動車メーカー等への再資源化・破壊を義務付ける法定 3品目(シュレッダーダスト、エアバッグ類、フロン類)に指定されていない点、および、回 収に掛かるコストに見合うだけの売上が見込まれない点によって、シュレッダー原料(廃車ガ ラとも言う)として破砕がされ、シュレッダーダストとして処分がされている。つまり、国内 において、ELV 由来の特定の部品はマテリアルとしてリサイクルがされていないのが現状で ある。 そのようななか、リサイクルの質の向上を求める研究が実務界を中心として行われ始めてい る1。また、自動車解体業の経営環境をみると、発生する ELV の台数の減少によって、ELV 1台の付加価値を高めることが必要となってきている。 本稿では、まず、資源循環型社会では、産業は動脈産業と静脈産業からなることを述べる。 次に、動脈産業と静脈産業の違いから、静脈産業の生産プロセスへ MFCA を使用することの 意義を考えたい。そして、ELV 由来の樹脂部品を対象として、A 社における試案の MFCA バ ランス集計表を作成し、新たな資源の有効利用の方法と生産プロセスの改善の可能性を明らか にする。 1 たとえば、一般社団法人日本 ELV リサイクル機構による「使用済自動車由来のプラスチックリサイクルの 促進と効率化の検討」、東京製鐵株式会社による「鉄スクラップの自動車部品への高度利用化技術調査」等 がある。 p003-019-kimura.indd 3 2018/03/20 20:19:34
2. 先行研究 (1)産業は動脈産業と静脈産業からなる 動脈産業と静脈産業は別個に独立してあるのではなく、循環することで相互に成り立つもの である(岸本、1989:15)。動脈産業と静脈産業という言葉は一般には聞きなれない言葉である が、人間と自然のあいだの物質代謝の様相を人体の循環系に例えて表わした概念である。人間 が生命活動を行うためには、心肺から各細胞へ栄養素や酸素を乗せた血液を、動脈を通じて運 ばなければならず、そして同時に、老廃物や二酸化炭素を再び血液に乗せて静脈を通して心肺 に戻さなければならない。つまり、生命活動を維持するためには、栄養素や酸素を供給する機 能とともに、老廃物や二酸化炭素を捨てる機能が必要となる(外川、2001:51)。 これまで我が国では、動脈産業の発展や動脈産業による技術革新に力が注がれてきたものの、 廃棄物を再利用する静脈産業の発展や静脈産業による技術革新には力が注がれてこなかった経 緯がある。そのため、動脈産業が主役となった経済発展の結果が、公害問題やゴミ戦争を生ん だとの指摘がされる(細田、1999:28)。しかし、近年、廃棄物を生む大量生産・大量消費の社 会システムから、廃棄物を抑えて資源を循環利用する社会システムへの転換が図られている。 そのためには、動脈産業と静脈産業の検討が重要となり、特に静脈産業の解明が焦点となる。 たとえば、環境経済学では、製品を生産し消費する活動を動脈の系統として、廃棄物を適正に 処理し使う活動を静脈の系統として捉え、両者のバランスを図ることが環境問題の解決につな がるものとして、その研究が進められてきている(植田、1992)。 それでは、静脈産業とはどのような産業であるのか。静脈産業を研究対象とする場合には、 静脈産業の経営環境が一様ではないため、業種の分類が困難な産業であることに注意をしたい。 外川(2001:53)では、静脈産業を、①中古品小売業(リユース業)およびリース業、②修理 業(リペアビジネス)、③リサイクル事業(再生資源流通および卸売業・正再資源加工業等)、 ④廃棄物処理業として定義している。①および②は、使用済みの製品への大幅な加工を施さず に、基本的に当該機能をそのまま利用する業者からなり、③は、使用済みの製品への加工を行 い、新たな製品または原材料として利用する業者からなる。そして④は、リユース・リサイク ルがされない廃棄物を処分する業者からなる。つまり、静脈産業の分析を行う際には、業務内 容別での分析を行う事が重要となっている。 そこで本稿では、①中古品小売業(リユース業)、②修理業(リペアビジネス業)、および③ リサイクル業(再生資源回収業・卸売業、再生原料・再生製品加工業)の側面をもつ自動車解 体業を対象として検討を進めたい。 (2)正の製品と負の製品 MFCA では、生産プロセスからアウトプットされる製品を「正の製品」、それ以外を「負の 製品」と言う(安城・下垣、2011:18)。 細田(1999:272)では、バッズの処理や再資源化によってバッズをグッズに転換する産業を p003-019-kimura.indd 4 2018/03/20 20:19:34
マテリアルフローコスト会計の自動車リサイクルへの応用(木村) ― 5 ― 静脈産業としている。細田(1999)によるグッズとは、市場取引において「正の価格」がつけ られて生産や消費のために用いられる財を言う。ここで言う正の価格とは、「物を受け取り- お金を払う」取引の際の価格である。そしてバッズとは、まだ使える財であるが購入する人が 存在せず、それを処理せずに廃棄すると、他人に心理的・物理的な負担を与える財を言う。そ のような財は、市場取引において負の価格がつけられるものである。ここで言う負の価格とは、 「物を渡し-お金を払う」取引の際の価格である(細田、1999:4・5)。 そこで、本稿においては、「正の製品」とはグッズ(有償で取引される物)、そして「負の製 品」とはバッズ(逆有償で取引される物)と定義する。そして、静脈産業とは負の製品を再資 源化によって正の製品に転換する産業とする。 (3)動脈産業と静脈産業におけるインプットと改善の違い
静脈産業への MFCA の適用を考える場合、動脈産業の MFCA と静脈産業の MFCA には、 インプットの違いと改善の違いがあることを見ておかねばならない。 まずはインプットの違いについて検討していきたい。産業全体を動脈産業と静脈産業に分け て資源の循環を考えた場合には、図1に示したように、動脈産業では、正の製品をインプット し、生産プロセスから発生する廃棄物である負の製品と、製品である正の製品をアウトプット する。ここでインプットする正の製品とは、新しい原材料と、静脈産業において廃棄物・使用 済品から再製造された原材料を言う。他方、図2に示したように、静脈産業では負の製品をイ ンプットし、生産プロセスから負の製品と正の製品をアウトプットする。ここでインプットす る負の製品とは、動脈産業の生産プロセスにおいて発生した負の製品と、動脈産業からアウト プットした正の製品が消費者の使用を経て負の製品(つまり廃棄物・使用済品)となったもの である。静脈産業がインプットする製品は、基本的に、排出者から処分費用を受け取ったバッ ズであるため「負の製品」と言える。 つまり、動脈産業と静脈産業ではインプットが異なっており、動脈産業では「正の製品」を インプットし、静脈産業では「負の製品」をインプットする。 次に、もう1つの違いとは改善の違いである。安城(2007)では通常の生産とリサイクル事 図1 動脈産業における MFCA 出所:拙著(2015) 出所:拙著(2015) 図2 静脈産業における MFCA 3 (3) 動脈産業と静脈産業におけるインプットと改善の違い
静脈産業へのMFCA の適用を考える場合,動脈産業の MFCA と静脈産業の MFCA には,
インプットの違いと改善の違いがあることを見ておかねばならない. まずはインプットの違いについて検討していきたい.産業全体を動脈産業と静脈産業に分 けて資源の循環を考えた場合には,図1 に示したように,動脈産業では,正の製品をインプ ットし,生産プロセスから発生する廃棄物である負の製品と,製品である正の製品をアウトプ ットする.ここでインプットする正の製品とは,新しい原材料と,静脈産業において廃棄物・ 使用済品から再製造された原材料を言う.他方,図2 に示したように,静脈産業では負の製 品をインプットし,生産プロセスから負の製品と正の製品をアウトプットする.ここでインプ ットする負の製品とは,動脈産業の生産プロセスにおいて発生した負の製品と,動脈産業から アウトプットした正の製品が消費者の使用を経て負の製品(つまり廃棄物・使用済品)となっ たものである.静脈産業がインプットする製品は,基本的に,排出者から処分費用を受け取っ たバッズであるため「負の製品」と言える. つまり,動脈産業と静脈産業ではインプットが異なっており,動脈産業では「正の製品」 をインプットし,静脈産業では「負の製品」をインプットする. 図 1 動脈産業における MFCA 図 2 静脈産業における MFCA 出所:拙著(2015) 出所:拙著(2015) 次に,もう1 つの違いとは改善の違いである.安城(2007)では通常の生産とリサイクル事 業という観点から,改善の狙いと効果の違い検討をしている.本稿では,安城(2007)の考え 方を動脈産業と静脈産業へ適用し,動脈産業と静脈産業における改善の狙いと効果の違いとし て示す. 動脈産業での改善の狙いとは,生産プロセスからアウトプットする「負の製品」の削減に よって,生産プロセスへインプットする「正の製品」を削減することである.つまり,図3 に示したように,生産プロセスからアウトプットする正の製品の量を改善前と同量と仮定する と,改善後は,生産プロセスにインプットする正の製品の量が削減されるとともに,生産プロ セスからアウトプットする負の製品の量も削減されることになる.他方,静脈産業での改善の 狙いとは,生産プロセスからアウトプットする「正の製品」の増加によって,生産プロセスか らアウトプットする「負の製品」を削減することである.つまり,図4 に示したように,生 産プロセスへインプットする負の製品の量を改善前と同量と仮定すると,改善後は,生産プロ セスからアウトプットする正の製品の量が増加し,生産プロセスからアウトプットする負の製 品が削減されることになる. つまり,生産プロセスの改善によって,動脈産業では生産プロセスからアウトプットする 負の製品が削減され,生産プロセスにインプットする正の製品が削減される.また,静脈産業 では生産プロセスからアウトプットする正の製品が増加し,生産プロセスからアウトプットす 3 (3) 動脈産業と静脈産業におけるインプットと改善の違い
静脈産業へのMFCA の適用を考える場合,動脈産業の MFCA と静脈産業の MFCA には,
インプットの違いと改善の違いがあることを見ておかねばならない. まずはインプットの違いについて検討していきたい.産業全体を動脈産業と静脈産業に分 けて資源の循環を考えた場合には,図1 に示したように,動脈産業では,正の製品をインプ ットし,生産プロセスから発生する廃棄物である負の製品と,製品である正の製品をアウトプ ットする.ここでインプットする正の製品とは,新しい原材料と,静脈産業において廃棄物・ 使用済品から再製造された原材料を言う.他方,図2 に示したように,静脈産業では負の製 品をインプットし,生産プロセスから負の製品と正の製品をアウトプットする.ここでインプ ットする負の製品とは,動脈産業の生産プロセスにおいて発生した負の製品と,動脈産業から アウトプットした正の製品が消費者の使用を経て負の製品(つまり廃棄物・使用済品)となっ たものである.静脈産業がインプットする製品は,基本的に,排出者から処分費用を受け取っ たバッズであるため「負の製品」と言える. つまり,動脈産業と静脈産業ではインプットが異なっており,動脈産業では「正の製品」 をインプットし,静脈産業では「負の製品」をインプットする. 図 1 動脈産業における MFCA 図 2 静脈産業における MFCA 出所:拙著(2015) 出所:拙著(2015) 次に,もう1 つの違いとは改善の違いである.安城(2007)では通常の生産とリサイクル事 業という観点から,改善の狙いと効果の違い検討をしている.本稿では,安城(2007)の考え 方を動脈産業と静脈産業へ適用し,動脈産業と静脈産業における改善の狙いと効果の違いとし て示す. 動脈産業での改善の狙いとは,生産プロセスからアウトプットする「負の製品」の削減に よって,生産プロセスへインプットする「正の製品」を削減することである.つまり,図3 に示したように,生産プロセスからアウトプットする正の製品の量を改善前と同量と仮定する と,改善後は,生産プロセスにインプットする正の製品の量が削減されるとともに,生産プロ セスからアウトプットする負の製品の量も削減されることになる.他方,静脈産業での改善の 狙いとは,生産プロセスからアウトプットする「正の製品」の増加によって,生産プロセスか らアウトプットする「負の製品」を削減することである.つまり,図4 に示したように,生 産プロセスへインプットする負の製品の量を改善前と同量と仮定すると,改善後は,生産プロ セスからアウトプットする正の製品の量が増加し,生産プロセスからアウトプットする負の製 品が削減されることになる. つまり,生産プロセスの改善によって,動脈産業では生産プロセスからアウトプットする 負の製品が削減され,生産プロセスにインプットする正の製品が削減される.また,静脈産業 では生産プロセスからアウトプットする正の製品が増加し,生産プロセスからアウトプットす p003-019-kimura.indd 5 2018/03/20 20:19:35
業という観点から、改善の狙いと効果の違い検討をしている。本稿では、安城(2007)の考え 方を動脈産業と静脈産業へ適用し、動脈産業と静脈産業における改善の狙いと効果の違いとし て示す。 動脈産業での改善の狙いとは、生産プロセスからアウトプットする「負の製品」の削減に よって、生産プロセスへインプットする「正の製品」を削減することである。つまり、図3に 示したように、生産プロセスからアウトプットする正の製品の量を改善前と同量と仮定すると、 改善後は、生産プロセスにインプットする正の製品の量が削減されるとともに、生産プロセス からアウトプットする負の製品の量も削減されることになる。他方、静脈産業での改善の狙い とは、生産プロセスからアウトプットする「正の製品」の増加によって、生産プロセスからア ウトプットする「負の製品」を削減することである。つまり、図4に示したように、生産プロ セスへインプットする負の製品の量を改善前と同量と仮定すると、改善後は、生産プロセスか らアウトプットする正の製品の量が増加し、生産プロセスからアウトプットする負の製品が削 減されることになる。 つまり、生産プロセスの改善によって、動脈産業では生産プロセスからアウトプットする負 の製品が削減され、生産プロセスにインプットする正の製品が削減される。また、静脈産業で は生産プロセスからアウトプットする正の製品が増加し、生産プロセスからアウトプットする 負の製品が削減されることになる。 (4)産業全体へ MFCA を導入する意義 上述のように、動脈産業と静脈産業では、インプットが異なることから、産業間で資源が循 環されることとなる。産業間での資源の流れを示すと図5となる。動脈産業へ正の製品がイン プットされて、負の製品と正の製品がアウトプットされる。次に、アウトプットされた正の製 品は消費者による使用を経て負の製品となり、動脈産業の生産プロセスからアウトプットされ た負の製品とともに静脈産業へインプットされる。そして、静脈産業から負の製品と正の製品 がアウトプットされ、アウトプットされた正の製品は再び動脈産業へインプットされる。 出所:安城(2007)へ加筆修正 出所:安城(2007)へ加筆修正 図3 動脈産業における改善 図4 静脈産業における改善 4 る負の製品が削減されることになる. 図 3 動脈産業における改善 図 4 静脈産業における改善 出所:安城(2007)へ加筆修正 出所:安城(2007)へ加筆修正 (4) 産業全体へ MFCA を導入する意義 上述のように,動脈産業と静脈産業では,インプットが異なることから,産業間で資源が循 環されることとなる.産業間での資源の流れを示すと図5 となる.動脈産業へ正の製品がイ ンプットされて,負の製品と正の製品がアウトプットされる.次に,アウトプットされた正の 製品は消費者による使用を経て負の製品となり,動脈産業の生産プロセスからアウトプットさ れた負の製品とともに静脈産業へインプットされる.そして,静脈産業から負の製品と正の製 品がアウトプットされ,アウトプットされた正の製品は再び動脈産業へインプットされる. つまり,動脈産業と静脈産業は資源の循環で繋がっているため,資源の効率的な使用は,両 産業において効率的な使用が実施されなければ達成できないと言える. では,両産業において,資源の効率的な使用のために実施されるべきことは何か.それ は,両産業における生産プロセスの改善である.先述の動脈産業と静脈産業における改善の狙 いと効果の違いによると,動脈産業ではインプットする正の製品が削減され,静脈産業ではア ウトプットする負の製品が削減される.つまり,産業全体で見ると,インプットされる正の製 品が削減され,アウトプットされる負の製品が削減されることとなる. したがって,動脈産業と静脈産業でMFCA を使用して,生産プロセスの改善が行われるこ とによって,産業全体での資源投入量の削減と廃棄物の削減,つまり資源の効率的な使用が達 成される. 図 5 動脈産業と静脈産業における資源循環 出所:拙著(2015) 4 る負の製品が削減されることになる. 図 3 動脈産業における改善 図 4 静脈産業における改善 出所:安城(2007)へ加筆修正 出所:安城(2007)へ加筆修正 (4) 産業全体へ MFCA を導入する意義 上述のように,動脈産業と静脈産業では,インプットが異なることから,産業間で資源が循 環されることとなる.産業間での資源の流れを示すと図5 となる.動脈産業へ正の製品がイ ンプットされて,負の製品と正の製品がアウトプットされる.次に,アウトプットされた正の 製品は消費者による使用を経て負の製品となり,動脈産業の生産プロセスからアウトプットさ れた負の製品とともに静脈産業へインプットされる.そして,静脈産業から負の製品と正の製 品がアウトプットされ,アウトプットされた正の製品は再び動脈産業へインプットされる. つまり,動脈産業と静脈産業は資源の循環で繋がっているため,資源の効率的な使用は,両 産業において効率的な使用が実施されなければ達成できないと言える. では,両産業において,資源の効率的な使用のために実施されるべきことは何か.それ は,両産業における生産プロセスの改善である.先述の動脈産業と静脈産業における改善の狙 いと効果の違いによると,動脈産業ではインプットする正の製品が削減され,静脈産業ではア ウトプットする負の製品が削減される.つまり,産業全体で見ると,インプットされる正の製 品が削減され,アウトプットされる負の製品が削減されることとなる. したがって,動脈産業と静脈産業でMFCA を使用して,生産プロセスの改善が行われるこ とによって,産業全体での資源投入量の削減と廃棄物の削減,つまり資源の効率的な使用が達 成される. 図 5 動脈産業と静脈産業における資源循環 出所:拙著(2015) p003-019-kimura.indd 6 2018/03/20 20:19:36
マテリアルフローコスト会計の自動車リサイクルへの応用(木村) ― 7 ― つまり、動脈産業と静脈産業は資源の循環で繋がっているため、資源の効率的な使用は、両 産業において効率的な使用が実施されなければ達成できないと言える。 では、両産業において、資源の効率的な使用のために実施されるべきことは何か。それは、 両産業における生産プロセスの改善である。先述の動脈産業と静脈産業における改善の狙いと 効果の違いによると、動脈産業ではインプットする正の製品が削減され、静脈産業ではアウト プットする負の製品が削減される。つまり、産業全体で見ると、インプットされる正の製品が 削減され、アウトプットされる負の製品が削減されることとなる。 したがって、動脈産業と静脈産業で MFCA を使用して、生産プロセスの改善が行われるこ とによって、産業全体での資源投入量の削減と廃棄物の削減、つまり資源の効率的な使用が達 成される。 3.分析方法 (1)目的 MFCA とは環境管理会計における一手法であり、生産プロセスのマテリアルのロスを物量 とコストで見える化するものである(下垣、2014:40)。下垣(2014)によれば、このマテリア ルのロスには未知のロスと既知のロスがある。 まず、未知のロスについてである。多くの企業では、原材料を歩留率、不良率等で指標化を 行い、指標化によって現れる数値をロスとして見ている。そのため、指標には現れない盲点と なっているロスや、全く管理がされていない無管理のロスがある。これらは、企業が認識をし ていないロスと言える。したがって、MFCA を生産プロセスに使用する目的の1つには、こ の未知のロスを発見して、生産プロセスの改善を行うことにある(下垣、2014:40・41)。 次に、既知のロスについてである。既知のロスは、管理ロスと容認ロスに分けられる。前者 の管理ロスは、不良品のように継続的に測定されており、企業ではロスとして認識をしている ものである。後者の容認ロスは、原料、設備の仕様、製造方法等が要因であるため、企業では 出所:拙著(2015) 図5 動脈産業と静脈産業における資源循環 4 る負の製品が削減されることになる. 図 3 動脈産業における改善 図 4 静脈産業における改善 出所:安城(2007)へ加筆修正 出所:安城(2007)へ加筆修正 (4) 産業全体へ MFCA を導入する意義 上述のように,動脈産業と静脈産業では,インプットが異なることから,産業間で資源が循 環されることとなる.産業間での資源の流れを示すと図5 となる.動脈産業へ正の製品がイ ンプットされて,負の製品と正の製品がアウトプットされる.次に,アウトプットされた正の 製品は消費者による使用を経て負の製品となり,動脈産業の生産プロセスからアウトプットさ れた負の製品とともに静脈産業へインプットされる.そして,静脈産業から負の製品と正の製 品がアウトプットされ,アウトプットされた正の製品は再び動脈産業へインプットされる. つまり,動脈産業と静脈産業は資源の循環で繋がっているため,資源の効率的な使用は,両 産業において効率的な使用が実施されなければ達成できないと言える. では,両産業において,資源の効率的な使用のために実施されるべきことは何か.それ は,両産業における生産プロセスの改善である.先述の動脈産業と静脈産業における改善の狙 いと効果の違いによると,動脈産業ではインプットする正の製品が削減され,静脈産業ではア ウトプットする負の製品が削減される.つまり,産業全体で見ると,インプットされる正の製 品が削減され,アウトプットされる負の製品が削減されることとなる. したがって,動脈産業と静脈産業でMFCA を使用して,生産プロセスの改善が行われるこ とによって,産業全体での資源投入量の削減と廃棄物の削減,つまり資源の効率的な使用が達 成される. 図 5 動脈産業と静脈産業における資源循環 出所:拙著(2015) p003-019-kimura.indd 7 2018/03/20 20:19:36
ロスとして認識をし、ロスとして発生することは仕方がないものであると容認している。 認識がされている管理ロスと容認ロスに対する改善活動を行うためには、設備投資や改善活 動に投資するだけの価値があるのかどうかの判断基準が必要である。したがって、MFCA を 生産プロセスに使用する目的には、設備投資や改善活動に投資するだけの価値のある改善領域 や改善課題を発見することにある(下垣、2014:40・41)。 それでは、ELV 由来の樹脂部品とはマテリアルのロスのうち何であるのか。ELV 由来の樹 脂部品は「既知のロス」に該当するであろう。たとえば、解体工程と破砕工程の両方の設備を 持つ企業では、解体工程から発生する樹脂部品をシュレッダー原料に含めて破砕工程でシュ レッダー処理を行うことによって、シュレッダーダストの量が増加し、シュレッダーダストの 処理費用が増加することになる。それゆえ、破砕工程でシュレッダー処理を行う樹脂部品を可 能な限り削減したいと考えており、たとえば回収をして売却することを望んでいる。しかし、 現実には、工賃を掛けて樹脂部品の回収を行っても利益を得ることが難しいため、回収を行わ ずにシュレッダー原料に含めて破砕工程でシュレッダー処理を行っている。つまり、樹脂部品 を、容認したくはないが容認をせざるを得ないロスと感じている2。 したがって、本稿では、MFCA を使用する目的を、生産プロセスを流れる樹脂部品に関す る物量情報と金額情報を示すことによって、既知のロスに該当する樹脂部品が生産プロセスの 改善や設備投資を行うだけの価値のあるものであるかのどうかの判断基準を与えることとする。 (2)コストの区分と配分方法 安城・下垣(2011)によれば、図6に示すように、MFCA ではコストを、「マテリアルコス ト」、「エネルギーコスト」、「システムコスト」および「廃棄物処理コスト」の4つに区分して、 生産プロセスへのインプットと生産プロセスからのアウトプットを把握する。 まず、「マテリアルコスト」については、生産プロセスへインプットされたマテリアルの物 量情報と金額情報、および生産プロセスからアウトプットされたマテリアルの物量情報を集計 する。そして、生産プロセスへインプットされたマテリアルの金額情報を、原則的に、マテリ アルの正の製品と負の製品の重量比によって、正の製品と負の製品の金額情報として配分する。 なお、マテリアルコストの配分基準は、原則的には重量比であるが、簡便な方法として正の製 品と負の製品の金額の比率による集計方法もある。 次に「エネルギーコスト」については、生産プロセスへインプットされた各費目の使用量と 金額情報を集計する。インプットされた各費目の金額情報を、マテリアルコストで用いた正の 製品と負の製品の比率によって、正の製品と負の製品の金額情報として配分する。 そして、「システムコスト」については、生産プロセスへインプットされた各費目の使用量 と金額情報を集計する。そして、エネルギーコストと同様に、インプットされた各費目の金額 2 A 社へのヒアリングによる。 p003-019-kimura.indd 8 2018/03/20 20:19:36
マテリアルフローコスト会計の自動車リサイクルへの応用(木村) ― 9 ― 情報を、マテリアルコストで用いた正の製品と負の製品の比率によって、正の製品と負の製品 の金額情報として配分する。さらに「廃棄物処理コスト」については、処理を行うマテリアル の物量情報と金額情報(処理費用)を集計し、すべてを負の製品とする。 (3)MFCA バランス集計表 MFCA では、コストを、マテリアルコスト、エネルギーコスト、およびシステムコストと して区分し、インプットとアウトプットを集計するのであるが、これらのコストを「MFCA バランス集計表」に集計し、改善すべきターゲットを明確にする。 表1に示すように、MFCA バランス集計表では、マテリアル別に正の製品と負の製品の物 量が明確にされている。これにより、改善の際にターゲットとするマテリアルが明らかになる。 また、システムコストとエネルギーコストの正の製品と負の製品への配分を、マテリアルの重 量比によってできるようにしている。これにより、煩雑な配分計算が不要となる。そして、エ ネルギーのなかでもエネルギーロスが算定できる場合には、マテリアルとして扱う。これによ り、エネルギー消費やロスが大きい事業において MFCA の適用効果が大きくなる(下垣、 2014:44・45)。 出所:安城・下垣(2011)pp.31・32より作成 図6 コストの区分 6 なお,マテリアルコストの配分基準は,原則的には重量比であるが,簡便な方法として正の製 品と負の製品の金額の比率による集計方法もある. 次に「エネルギーコスト」については,生産プロセスへインプットされた各費目の使用量と 金額情報を集計する.インプットされた各費目の金額情報を,マテリアルコストで用いた正の 製品と負の製品の比率によって,正の製品と負の製品の金額情報として配賦する. そして,「システムコスト」については,生産プロセスへインプットされた各費目の使用量と 金額情報を集計する.そして,エネルギーコストと同様に,インプットされた各費目の金額情 報を,マテリアルコストで用いた正の製品と負の製品の比率によって,正の製品と負の製品の 金額情報として配賦する.さらに「廃棄物処理コスト」については,処理を行うマテリアルの 物量情報と金額情報(処理費用)を集計し,すべてを負の製品として直課する. 図 6 コストの区分 出所:安城・下垣(2011)pp.31・32 より作成 (3) MFCA バランス集計表 コストを,マテリアルコスト,エネルギーコスト,およびシステムコストとして区分し, インプットとアウトプットを集計するのであるが,現在では,これらのコストを「MFCA バ ランス集計表」に集計し,改善すべきターゲットを明確にする.MFCA バランス集計表とい う形式に至るまでには経緯がある.MFCA のようなマテリアルフローを中心とする環境会計 は1980 年代から 2000 年代初頭にかけて,アメリカとドイツでそれぞれ別々に発展した.ア メリカでは,環境保護庁が提唱する汚染予防プログラムを起源として,廃棄物削減の観点から 手法が精緻化され,ドイツでは,組織における物質およびエネルギーのインプット・アウトプ ット分析の手法であるエコバランスを起源として会計手法への展開が見られたのである(國部 ほか,2010:251). そして現在,我が国の動脈産業において導入されているMFCA は「日本版 MFCA」(國 部,2009:8)として世界へ発信され,2011 年 9 月に ISO14051 として規格化されるに至って いる.日本版MFCA が規格化に至るまでには進化の段階を経ているとされ,2000 年~2003 年が基礎的な開発段階,2004 年~2010 年が実践的な計算手法の開発段階,2006 年~2011 年 が効果の大きい適用対象の研究・拡張段階,そして2011 年以降が効果的・効率的な MFCA 展開方法の研究段階とされる(下垣,2014:42). p003-019-kimura.indd 9 2018/03/20 20:19:37
(4)改善のターゲット MFCA では、各コストで把握した物量情報と金額情報のうち、①負の製品のマテリアルコ スト、②廃棄物処理コスト、③インプットされたエネルギーコスト、④インプットされたシス テムコストが、改善の対象である(安城・下垣、2011:132・133)。表2では、各コストについ て、正の製品と負の製品の改善の可能性をまとめている。前掲表1の MFCA バランス集計表 と合わせて参照されたい。 安城・下垣(2011:132・133)によれば、マテリアルコストのうち、改善の余地があるものは、 負の製品である。これは、マテリアルロスの削減によって、削減される可能性がある。次に、 表1 MFCA バランス集計表 Input(金額単位 : 円) Output(金額単位 : 円) ¥6,319 ¥5,136 ¥1,183 マテリアルの投入量と材料費 正の製品 負の製品 マテリアル 単価 量 金額 量 金額 量 ロス率 金額 素材 833 3,000㎏ 2,500 2,850㎏ 2,375 150㎏ 5.0% 125 *1 洗浄溶剤 60 1,080㎏ 65 1,080㎏ 65 塗料 250 450㎏ 113 190㎏ 48 260㎏ 57.8% 65 *2 希釈剤 110 540㎏ 59 540㎏ 59 凝集剤 100 300㎏ 30 300㎏ 30 水 0.10 20,000㍑ 2 20,000㍑ 2 マテリアルコスト小計 2,769 87.5% 2,423 12.5% 346 *3、*4 廃棄物処理物量と廃棄物処理費用 正の製品 負の製品 廃棄物処理方法 量 金額 量 金額 1)揮発材料の回収、焼却 250㎏ 3 250㎏ 3 2)水に溶解させて回収、 凝固させ、廃液処理委託 化学物質の物量処理水物量 20,000㍑755㍑ 40015 20,000㍑755㍑ 40015 3)残量回収、ドラム缶で処理委託 1,165㎏ 35 1,165g 35 4)有価で売却 160㎏ -3 160㎏ -3 *5 廃棄物処理コスト小計 450 450 MFCA 対象製品、部門、ラインに配賦される費用 正の製品 負の製品 区分 費目 使用量 金額 金額 金額 エネルギーコスト 電力 30,000wh 600 87.5% 525 12.5% 75 *6、*7 システムコスト 労務費 1,500 87.5% 1,313 12.5% 187 システムコスト 減価償却費 1,000 87.5% 875 12.5% 125 エネルギーコスト、システムコスト 3,100 2,713 387 出所:安城・下垣(2011)p.131へ加筆3 3 表2における計算方法等は以下である。*1ロス率5.0%(=150㎏÷3,000㎏×100)を負の製品の重量(150㎏) とマテリアルの投入重量(3,000㎏)から計算。*2ロス率57.8%(=260㎏÷450㎏×100)を負の製品の重量 (260㎏)とマテリアルの投入重量(450㎏)から計算。*3正の製品87.5%(=2,423円÷2,769円×100)を正の 製品の金額(2,423円)とマテリアルの投入金額(2,769円)から計算。*4負の製品12.5%(=346円÷2,769円 ×100)を負の製品の金額(346円)とマテリアルの投入金額(2,769円)から計算。*5マイナス金額(-3円) は売却金額である。*6正の製品のエネルギーコスト525円(=600円×87.5%)をマテリアルコストの正負比 率から計算。以下、システムコストも同様。*7負の製品のエネルギーコスト75円(=600円×12.5%)をマテ リアルコストの正負比率から計算。以下、システムコストも同様。 p003-019-kimura.indd 10 2018/03/20 20:19:37
マテリアルフローコスト会計の自動車リサイクルへの応用(木村) ― 11 ― エネルギーコストとシステムコストについては、正の製品と負の製品は基本的にマテリアルの 重量比によって配賦された金額情報であるため、改善の対象とはならない。しかし、インプッ トされたエネルギーコストは、削減によって低減が可能である。同様に、インプットされたシ ステムコストについても、人員削減、生産量・稼働率のアップによって低減が可能である。そ して、廃棄物処理コストは、改善の対象であり、マテリアルロスの削減によって低減可能である。 したがって、本稿における樹脂部品のマテリアルリサイクルを行う新しい生産プロセスの提 案においては、試案の MFCA バランス集計表を作成し、改善のターゲットを明確にする。 4.事例 (1)ELV リサイクルフロー 自動車解体業者 A 社を対象として、ELV リサイクルのフローを検討していく4。図7に示 表2 改善の対象 マテリアルコスト (主要材料、補助材料、副資材、水…) 正の製品は、材料単価の引き下げでしか低減ができない。 負の製品は、マテリアルロスの削減により低減可能である。 改善の対象 エネルギーコスト (電力費、燃料費…) 正の製品・負の製品は、配賦されただけの情報であるため、改善の対 象とならない。しかし、エネルギーのロスが定義され、見える化でき れば改善の余地が大きい。 インプットされたエネルギーコストは削減によって低減が可能である。 改善の対象 システムコスト (人件費、減価償却費…) 正の製品・負の製品は、配賦されただけの情報であるため、改善の対 象とならない。 インプットされたシステムコストは、人員削減、生産量・稼働率向上 によって低減が可能である。 改善の対象 廃棄物処理コスト マテリアルロスの削減により低減可能である。 改善の対象 出所:安城・下垣(2011)pp.132・133より作成 図7 従来のリサイクルフロー図 8 表 2 改善の対象 出所:安城・下垣(2011)pp.30・32,132・133 より作成 安城・下垣(2011:132・133)によれば,マテリアルコストのうち,改善の余地があるものは, 負の製品である.これは,マテリアルロスの削減によって,削減される可能性がある.次に, エネルギーコストとシステムコストについては,正の製品と負の製品は基本的にマテリアルの 重量比によって配賦された金額情報であるため,改善の対象とはならない.しかし,インプッ トされたエネルギーコストは,削減によって低減が可能である.同様に,インプットされたシ ステムコストについても,人員削減,生産量・稼働率のアップによって低減が可能である.そ して,廃棄物処理コストは,改善の対象であり,マテリアルロスの削減によって低減可能であ る. したがって,本稿における樹脂部品のマテリアルリサイクルを行う新しい生産プロセスの提 案においては,試案のMFCA バランス集計表を作成し,改善のターゲットを明確にする.
4. 事例
(1) ELV リサイクルフロー 自動車解体業者A 社を対象として,ELV リサイクルのフローを検討していく 5.図7 に示す ように,現在,A 社では,解体工程,破砕工程,および減容固化工程を通じて ELV リサイクル を行っている. 図 7 従来のリサイクルフロー図 出所:筆者作成 まず,原料であるELV を解体工程へインプットする.解体工程では正の製品としてシュレッ ダー原料,ヒューズボックス等を回収する.また,負の製品として,フロン,エアバッグ等を 出所:筆者作成 4 解体工程と破砕工程を持ち、ELV の再資源化を完結することができる企業は、解体工程のみの企業よりも、 解体工程と破砕工程の両方を通じてコストを吸収できる可能性が高いと考えられる(拙著、2015)。それゆえ、 A 社を対象とする本研究は、静脈産業における生産プロセスを対象として、MFCA とは新たな資源の有効 利用に資するものであることを明らかにするという点に加えて、解体業者と破砕業者が連携して ELV の再 資源化を行うことの意義も示すこととなる。 p003-019-kimura.indd 11 2018/03/20 20:19:37すように、現在、A 社では、解体工程、破砕工程、および減容固化工程を通じて ELV リサイ クルを行っている。 まず、原料である ELV を解体工程へインプットする。解体工程では正の製品としてシュ レッダー原料、ヒューズボックス等を回収する。また、負の製品として、フロン、エアバッグ 等を回収する。次に、破砕工程へ、シュレッダー原料をインプットし、正の製品として繊維系 ダストと樹脂系ダスト、非鉄、および鉄をアウトプットする。そして、減容固化工程へ、繊維 系ダストと樹脂系ダストをインプットし、正の製品として代替加炭材をアウトプットする。つ まり、樹脂部品を燃料として燃やし、資源として再利用(マテリアリサイクル)をしていない。 理由は、コストに見合うだけの売上が見込めないためである(A 社談)。 しかし、本稿では樹脂部品の再資源化の可能性について検討したい。そこで、新しいフロー を提案する。図10に示すように、新しいフローでは、解体工程において樹脂部品を回収する。 次に、手選別工程において樹脂部品に付着している鉄ビス等の異物除去を行い、異物除去後樹 脂の回収を行う。そして、破砕工程において樹脂を破砕し、さらに、洗浄工程において破砕後 樹脂を洗浄する。最終的に、洗浄工程から樹脂ペレットをアウトプットする。そして、川下で ある樹脂メーカーへリサイクル樹脂を提供し、樹脂のマテリアルリサイクルを行う。 (2)マテリアルフロー 新しいリサイクルフローにおける MFCA の対象は、解体工程、手選別工程、破砕工程、お よび洗浄工程であり、樹脂部品回収と樹脂ペレット生産に関して追加されたフローである。解 体工程、手選別工程、破砕工程、および洗浄工程にインプットされるマテリアルと、各工程か らアウトプットされるマテリアルは、図11に示すものである。なお、アウトプットする正の製 品は、新しいリサイクルフローの対象部品である樹脂部品のみを表示する。 まず、解体工程へは ELV をインプットし、そこから正の製品として樹脂部品をアウトプッ 図10 新しいリサイクルフロー図 9 回収する.次に,破砕工程へ,シュレッダー原料をインプットし,正の製品として繊維系ダス トと樹脂系ダスト,非鉄,および鉄をアウトプットする.そして,減容固化工程へ,繊維系ダ ストと樹脂系ダストをインプットし,正の製品として代替加炭材をアウトプットする.つまり, 樹脂部品を燃料として燃やし,資源として再利用(マテリアリサイクル)をしていない.理由 は,コストに見合うだけの売上が見込めないためである(A 社談). しかし,図10 に示すように,新しいフローでは,解体工程において樹脂部品を回収する.次 に,手選別工程において樹脂部品に付着している鉄ビス等の異物除去を行い,異物除去後樹脂 の回収を行う.そして,破砕工程において樹脂を破砕し,さらに,洗浄工程において破砕後樹 脂を洗浄する.最終的に,洗浄工程から樹脂ペレットをアウトプットする.そして,川下であ る樹脂メーカーへリサイクル樹脂を提供し,樹脂のマテリアルリサイクルを行う. 図 10 新しいリサイクルフロー図 出所:筆者作成 (2) マテリアルフロー MFCA の対象は,解体工程,手選別工程,破砕工程,および洗浄工程からなる樹脂部品回収 と樹脂ペレット生産に関して追加されたフローである.解体工程,手選別工程,破砕工程,お よび洗浄工程にインプットされるマテリアルと,各工程からアウトプットされるマテリアルは, 図11 に示すものである.なお,アウトプットする正の製品は,新しいリサイクルフローの対象 部品である樹脂部品のみを表示する. まず,解体工程へはELV をインプットし,そこから正の製品として樹脂部品をアウトプット する.次に,樹脂部品を,手選別工程へインプットし,正の製品として異物除去後樹脂をアウ トプットする.そして,異物除去後樹脂を,破砕工程へインプットし,正の製品として破砕後 樹脂をアウトプットする.さらに,破砕後樹脂を,洗浄工程へインプットし,正の製品として 洗浄後樹脂(リサイクル樹脂)をアウトプットする.なお,洗浄工程では,新たに洗浄溶剤を インプットすることとなる. 出所:筆者作成 p003-019-kimura.indd 12 2018/03/20 20:19:37
マテリアルフローコスト会計の自動車リサイクルへの応用(木村) ― 13 ― トする。次に、樹脂部品を、手選別工程へインプットし、正の製品として異物除去後樹脂をア ウトプットする。そして、異物除去後樹脂を、破砕工程へインプットし、正の製品として破砕 後樹脂をアウトプットする。さらに、破砕後樹脂を、洗浄工程へインプットし、正の製品とし て洗浄後樹脂(リサイクル樹脂)をアウトプットする。なお、洗浄工程では、新たに洗浄溶剤 をインプットする。 (3)試案 MFCA バランス集計表 前掲図10の新しいリサイクルフロー図と前掲図11のマテリアルフローから、試案の MFCA バランス集計表を作成する。 全工程を対象とした試案の MFCA バランス集計表は以下の表4である。前掲表2の安城・ 下垣(2011)による MFCA バランス集計表と比較して参照されたい。 試 案 の MFCA バ ラ ン ス 集 計 表 で は、 他 社(H 社 ) に お い て、2014年11月 に、 ト ヨ タ VISTA、排気量2,000cc、1999年式を手で解体し、回収した157個の部品の重量を計測したデー タへ、A 社における破砕設備、機械稼働時間、および作業時間の推定値を加えている。なお、 A 社では、未だ樹脂部品の回収試験を実施していないため、H 社のデータを使用している。 試案の MFCA バランス集計表を作成するにあたって、いくつか検討すべき点がある。特に、 「マテリアルの投入量と材料費」とそれに対応する正の製品と負の製品についてである。 まず、インプットするマテリアルのうち、ELV は、仕入金額が逆有償(つまり処理費用を 受け取る取引)または±ゼロ円となることがある。そこで、A 社と検討をした結果、マテリ アルの金額を、ELV 1台の仕入時における市場価格(2014年11月平均)とする。なお、洗浄 溶剤については購入価格とする。 次に「マテリアルの投入量と材料費」のアウトプットである正の製品は市場価格とする。こ れは、A 社では、原材料の仕入金額から製品原価を計算するという考え方が無いことによる ものである。つまり、ELV の仕入金額はあくまでも ELV の仕入金額であり、製品原価の計算 出所:筆者作成 図11 マテリアルフロー 10 図 11 マテリアルフロー 出所:筆者作成 (3) 試案 MFCA バランス集計表 前掲図10 の新しいリサイクルフロー図と前掲図 11 のマテリアルフローから,試案の MFCA バランス集計表を作成する. 全工程を対象とした試案のMFCA バランス集計表は以下の表 4 である.前掲表 2 の安城・ 下垣(2011)による MFCA バランス集計表と比較して参照されたい. 試案のMFCA バランス集計表では,他社(H 社)において,2014 年 11 月に,トヨタ VISTA, 排気量2,000cc,1999 年式を手で解体し,回収した 157 個の部品の重量を計測したデータへ, A 社における破砕設備,機械稼働時間,および作業時間の推定値を加えている.なお,A 社で は,未だ樹脂部品の回収試験を実施していないため,H 社のデータを使用している. 試案のMFCA バランス集計表を作成するにあたって,いくつか検討すべき点がある.特に, 「マテリアルの投入量と材料費」とそれに対応する正の製品と負の製品についてである. まず,インプットするマテリアルのうち,ELV は,仕入金額が逆有償(つまり処理費用を受 け取る取引)または±ゼロ円となることがある.そこで,A 社と検討をした結果,マテリアル の金額を,ELV1台の仕入時における市場価格(2014 年 11 月平均)とする.なお,洗浄溶剤 については購入価格とする. 次に「マテリアルの投入量と材料費」のアウトプットである正の製品は市場価格とする.こ れは,A 社では,原材料の仕入金額から製品原価を計算するという考え方が無いことによるも のである.つまり,ELV の仕入金額はあくまでも ELV の仕入金額であり,製品原価の計算と は無関係であるという感覚である. そして「マテリアルの投入量と材料費」のアウトプットである負の製品のうち,ELV からア ウトプットする負の製品(液類,バッテリー,異物,ダスト,減損)は,ELV の市場価格(2014 年11 月月間平均)と負の製品と正の製品の重量比から計算をする.たとえば,負の製品である 液類367.84 円は,「40,000 円×12.58 ㎏÷1,368 ㎏」と計算する.同様に,洗浄溶剤からアウ トプットする負の製品(洗浄溶剤)は,洗浄溶剤の購入価格と負の製品と正の製品の重量比か ら計算をする.たとえば,負の製品である洗浄溶剤300.00 円は「300 円×50 ㎏÷50 ㎏」と計 算する. さらに,マテリアルコストの正の製品と負の製品の比率についてである.ここでは重量比と する.正の製品93.55%は,正の製品の重量(1,326.48 ㎏)とマテリアルの投入重量(1,418.00 ㎏)から,「1,326.48 ㎏÷1,418.00 ㎏×100」と計算する.また,負の製品 6.45%は,負の製品 の重量(91.52 ㎏)とマテリアルの投入重量(1,418.00 ㎏)から,「91.52 ㎏÷1,418.00 ㎏×100」 p003-019-kimura.indd 13 2018/03/20 20:19:38
5 表4における計算方法等は以下である。*1マテリアルの投入金額と正の製品の金額を市場価格(2014年11月月 間平均)で計算。*2マテリアルの負の製品367.84円(=40,000円×12.58㎏÷1,368㎏)の金額を ELV の市場価 格(2014年11月月間平均)で計算。以下、バッテリー、異物、ダスト、減損も同様。*3ロス率0.89%(=12.58 ㎏÷1,418.00㎏×100)を負の製品の重量(12.58㎏)とマテリアルの投入重量(1,418.00㎏)から計算。以下、 バッテリー、異物、ダスト、減損、洗浄溶剤も同様。*4マテリアルの負の製品300.00円(=300円×50㎏÷50 ㎏)の金額を洗浄溶剤の購入価格で計算。*5正の製品93.55%(=1,326.48㎏÷1,418.00㎏×100)を正の製品の 重量(1,326.48㎏)とマテリアルの投入重量(1,418.00㎏)から計算。*6負の製品6.45%(=91.52㎏÷1,418.00㎏ ×100)を負の製品の重量(91.52㎏)とマテリアルの投入重量(1,418.00㎏)から計算。*7液類処理費用は± ゼロ円である。以下、バッテリー、異物、ダストも同様。*8正の製品のエネルギーコスト1,784.08円(=1,900 円×93.90%)をマテリアルコストの正負比率から計算。以下、システムコストも同様。*9負の製品のエネル ギーコスト115.92円(=1,900円×6.10%)をマテリアルコストの正負比率から計算。以下、システムコストも 同様。*10破砕・洗浄に関する設備の取得原価の推計が困難であるため減価償却費を考慮外とする。 表4 全工程の試案 MFCA バランス集計表 Input(金額単位 : 円) Output(金額単位 : 円) ¥60,200.00 ¥71,513.83 ¥2,798.41 マテリアルの投入量と材料費 正の製品 負の製品 マテリアル 単価 量 金額 マテリアル 量 金額 量 ロス率 金額 ELV - 1,368.00㎏ 40,000.00 シュレッダー原料 946.42㎏ 21,492.27 *1 洗浄溶剤 6.00 50.00㎏ 300.00 HB・CB 6.20㎏ 259.00 エンジン 253.38㎏ 13,429.14 モーター 17.02㎏ 1,191.40 ラジエータ 3.02㎏ 362.40 ハーネス 13.20㎏ 4,224.00 アルミ付タイヤ 67.00㎏ 4,800.00 触媒 3.24㎏ 6,800.00 洗浄後樹脂(製品) 17.00㎏ 340.00 液類 12.58㎏ 0.89% 367.84 *2 *3 バッテリー 8.12㎏ 0.57% 237.43 異物 2.00㎏ 0.14% 58.48 ダスト 10.00㎏ 0.71% 292.40 減損 8.82㎏ 0.62% 257.89 洗浄溶剤 50.00㎏ 3.53% 300.00 *4 マテリアル量・マテリアルコスト小計 1,418.00㎏ 40.300.00 1,326.48㎏ 52,898.21 91.52㎏ 1,514.04 正負比率 100.00% - 93.55% - 6.45% - *5 *6 廃棄物処理量と廃棄物処理コスト 正の製品 負の製品 廃棄物処理方法 量 金額 量 金額 1)液類 : 処理委託 12.58㎏ 0.00 12.58㎏ 0.00 *7 2)バッテリー : 処理委託 8.12㎏ 0.00 8.12㎏ 0.00 3)異物 : シュレッダー処理 2.00㎏ 0.00 2.00㎏ 0.00 4)ダスト : シュレッダー処理 10.00㎏ 0.00 10.00㎏ 0.00 廃棄物処理量・廃棄物処理コスト小計 32.70㎏ 0.00 32.70㎏ 0.00 MFCA 対象製品、部門、ラインに配賦される費用 正の製品 負の製品 区分 費目 使用量 金額 金額 金額 エネルギーコスト 電力 95kwh 1,900.00 93.55% 1,777.37 6.45% 122.63 *8 *9 システムコスト 労務費 9h 18,000.00 93.55% 16,838.25 6.45% 1,161.75 システムコスト 減価償却費 - - - エネルギーコスト、システムコスト小計 19,000.00 18,615.62 1,284.38 *10 出所:H 社・A 社提供データより作成5 p003-019-kimura.indd 14 2018/03/20 20:19:38
マテリアルフローコスト会計の自動車リサイクルへの応用(木村) ― 15 ― とは無関係であるという感覚である。 そして「マテリアルの投入量と材料費」のアウトプットである負の製品のうち、ELV から アウトプットする負の製品(液類、バッテリー、異物、ダスト、減損)は、ELV の市場価格 (2014年11月月間平均)と負の製品と正の製品の重量比から計算をする。たとえば、負の製品 である液類367.84円は、「40,000円×12.58㎏÷1,368㎏」と計算する。同様に、洗浄溶剤からア ウトプットする負の製品(洗浄溶剤)は、洗浄溶剤の購入価格と負の製品と正の製品の重量比 から計算をする。たとえば、負の製品である洗浄溶剤300.00円は「300円×50㎏÷50㎏」と計 算する。 さらに、マテリアルコストの正の製品と負の製品の比率についてである。ここでは重量比と する。正の製品93.55% は、正の製品の重量(1,326.48㎏)とマテリアルの投入重量(1,418.00 ㎏)から、「1,326.48㎏÷1,418.00㎏×100」と計算する。また、負の製品6.45% は、負の製品の 重量(91.52㎏)とマテリアルの投入重量(1,418.00㎏)から、「91.52㎏÷1,418.00㎏×100」と 計算する。 5.検討 それでは、改善のポイントについて検討をする。 安城・下垣(2011)では、先述したように、各コストで把握した物量情報と金額情報のうち、 負の製品のマテリアルコスト、廃棄物処理コスト、インプットされたエネルギーコスト、およ びインプットされたシステムコストが、改善のターゲットである(安城・下垣、2011:132・ 133)。 したがって、前掲表4に示した、マテリアルコストのうち負の製品、廃棄物処理コスト、イ ンプットされたエネルギーコスト、およびインプットされたシステムコストをターゲットとし て、生産プロセスの改善を検討していく。 まず、負の製品のマテリアルコストについてである。マテリアルのうち、洗浄溶剤がロス 率・金額とも多いが、洗浄溶剤のアウトプットを改善するためには、洗浄の工程の大幅な変更 (破砕と洗浄を同時に行う設備の導入等)が予想される。そこで、工程内部での改善が可能と 考えられるダストと減損のうち、ロス率・金額が多い、ダストについて見てみよう。全工程に おいて、最もダストが発生する工程とは破砕工程である。表5に示すように、全工程で発生す るダスト(10.00㎏)のうち、破砕工程では8.00㎏が発生する。 それでは破砕工程の課題は何であろうか。破砕工程では異物除去後の樹脂をインプットする。 前工程である手選別工程では、バンパー、アンダーカバー等の比較的大きい部品から、異物の 除去を行うため、破砕工程にインプットする異物除去後の樹脂も、比較的大きい部品である。 つまり、破砕設備へ投入する前の樹脂部品は、ダストのような粒度ではなく、大きな部品の状 態である。したがって、破砕工程からダストが発生する原因は、破砕が行われる破砕設備自体 に課題があると考えられる。樹脂メーカーが要求する仕様は10~15㎜の大きさである。破砕設 p003-019-kimura.indd 15 2018/03/20 20:19:38
備からの破砕物が10㎜に満たない場合には、設備内のスクリーン(網目)からこぼれ落ちて、 ダストとなる。したがって、破砕時に10㎜以上となるような破砕方式の検討(1軸方式、2軸 方式、ハンマー方式等)が課題として絞られる。 次に、廃棄物処理コストについてである。 前掲表4に示したように、廃棄物として処理が必要なマテリアルは、液類、バッテリー、異 物、およびダストである。これらは A 社においては処理費用が±ゼロ円となっているが、将 来的には処理費用が発生することが考えられるため、改善の対象とする。 まず、液類、バッテリーについてである。これらは自動車リサイクル法によって、回収と適 正な処理が求められているため、回収量を削減することは困難である。また、異物については、 樹脂部品から樹脂メーカーへ売却するリサイクル樹脂を製造するためには、除去が必要である ため、発生量を抑えることは困難である。 しかし、ダストについては、上述した負の製品のマテリアルコストにおいて絞られた課題が 解決されれば、ダストの廃棄物コストは削減されることとなる。つまり、前掲表5に示した破 砕工程における負の製品のマテリアルコストへの対応が、廃棄物処理コストの削減へとつなが る可能性がある。 そして、インプットされたエネルギーコスト、およびインプットされたシステムコストにつ いてである。 このうちエネルギーコストに比べて金額が多いシステムコスト(つまり労務費)を見てみよ 表5 破砕工程の試案 MFCA バランス集計表 Input(金額単位 : 円) Output(金額単位 : 円) ¥2,600.00 ¥1,733.33 ¥1,159.06 マテリアルの投入量と材料費 正の製品 負の製品 マテリアル 単価 量 金額 マテリアル 量 金額 量 ロス率 金額 異物除去後樹脂 - 30.00kg - 破砕後樹脂 20.00kg - ダスト 8.00kg 26.67% 233.92 減損 2.00kg 6.67% 58.48 マテリアル量・マテリアルコスト小計 30.00kg 0.00 20.00kg 0.00 10.00kg 292.40 正負比率 100.00% - 66.67% - 33.33% - 廃棄物処理量と廃棄物処理コスト 正の製品 負の製品 廃棄物処理方法 量 金額 量 金額 ダスト : シュレッダー処理 2.00kg 0.00 2.00kg 0.00 廃棄物処理量・廃棄物処理コスト小計 2.00kg 0.00 2.00kg 0.00 MFCA 対象製品、部門、ラインに配賦される費用 正の製品 負の製品 区分 費目 使用量 金額 金額 金額 エネルギーコスト 電力 30kwh 600.00 66.67% 400.00 33.33% 200.00 システムコスト 労務費 1h 2,000.00 66.67% 1,333.33 33.33% 666.67 システムコスト 減価償却費 - - - エネルギーコスト、システムコスト小計 2,600.00 1,733.33 866.67 出所:H 社・A 社提供データより作成 p003-019-kimura.indd 16 2018/03/20 20:19:38
マテリアルフローコスト会計の自動車リサイクルへの応用(木村) ― 17 ― う。全工程の中で、最も労務費が発生する工程とは解体工程である。表6に示すように、全工 程で発生するシステムコスト(9時間)のうち、解体工程では6時間である。なお、時給は全 工程同一の時給2,000円である。 表6 解体工程の試案 MFCA バランス集計表 Input(金額単位 : 円) Output(金額単位 : 円) ¥52,600.00 ¥64,915.05 ¥1,015.09 マテリアルの投入量と材料費 正の製品 負の製品 マテリアル 単価 量 金額 マテリアル 量 金額 量 ロス率 金額 ELV - 1,368.00㎏ 40,000.00 シュレッダー原料 946.42㎏ 21,492.27 *1 リサイクル樹脂 32.12㎏ - *2 HB・CB 6.20㎏ 259.00 エンジン 253.38㎏ 13,429.14 モーター 17.02㎏ 1,191.40 ラジエータ 3.02㎏ 362.40 ハーネス 13.20㎏ 4,224.00 アルミ付タイヤ 67.00㎏ 4,800.00 触媒 3.24㎏ 6,800.00 液類 12.58㎏ 0.92% 367.84*3 *4 バッテリー 8.12㎏ 0.59% 237.43 減損 5.70㎏ 0.42% 166.67 マテリアル量・マテリアルコスト小計 1,368.00㎏ 40,000.00 1,341.60㎏ 52,558.21 26.40㎏ 771.93 正負比率 100.00% - 98.07% - 1.93% -*5 *6 廃棄物処理量と廃棄物処理コスト 正の製品 負の製品 廃棄物処理方法 量 金額 量 金額 1)液類 : 処理委託 12.58㎏ 0.00 12.58㎏ 0.00*7 2)バッテリー : 処理委託 8.12㎏ 0.00 8.12㎏ 0.00 廃棄物処理量・廃棄物処理コスト小計 20.70㎏ 0.00 20.70㎏ 0.00 MFCA 対象製品、部門、ラインに配賦される費用 正の製品 負の製品 区分 費目 使用量 金額 金額 金額 エネルギーコスト 電力 30kwh 600.00 98.07% 588.42 1.93% 11.58*8 *9 システムコスト 労務費 6h 12,000.00 98.07% 11,768.42 1.93% 231.58 システムコスト 減価償却費 - - -*10 エネルギーコスト、システムコスト小計 12,600.00 12,356.84 243.16 出所:H 社・A 社提供データより作成6 6 表6における計算方法等は以下である。*1マテリアルの投入金額と正の製品の金額を市場価格(2014年11 月月間平均)で計算。*2次の工程へインプットするリサイクル樹脂の金額をゼロ円とする。*3マテリアルの 負の製品367.84円(=40,000円×12.58㎏÷1,368㎏)の金額を ELV の市場価格(2014年11月月間平均)で計 算。以下、バッテリーも同様。*4ロス率0.92%(=12.58㎏÷1,368㎏×100)を負の製品の重量(12.58㎏)と マテリアルの投入重量(1,368㎏)から計算。以下、バッテーと減損も同様。*5正の製品98.07%(=1,341.60 ㎏÷1,368㎏×100)を正の製品の重量(1,341.60㎏)とマテリアルの投入重量(1,368㎏)から計算。*6負の製 品1.93%(=26.40㎏÷1,368㎏×100)を負の製品の重量(26.40㎏)とマテリアルの投入重量(1,368㎏)から 計算。*7液類処理費用は±ゼロ円である。以下、バッテリーも同様。*8正の製品のエネルギーコスト588.42円 (=600円×98.07%)をマテリアルコストの正負比率から計算。以下、システムコストも同様。*9負の製品の エネルギーコスト11.58円(=600円×1.93%)をマテリアルコストの正負比率から計算。以下、システムコス トも同様。*10破砕・洗浄に関する設備の取得原価の推計が困難であるため減価償却費を考慮外とする。 p003-019-kimura.indd 17 2018/03/20 20:19:38
システムコストは、安城・下垣(2011)によれば、人員削減、生産量・作業効率の向上に よって低減が可能とされる。解体工程では、部品の回収方法には、人による手解体と、二ブラ と言われる重機解体とがある。回収する樹脂部品の大きさによっては、重機による回収も可能 と考えられる。つまり、表6のシステムコストは手解体による回収時間であるため、バンパー 等の比較的大きい部品については重機解体による回収を検討することで、回収時間の短縮によ るシステムコストの削減の可能性がある。 6.おわりに 本稿では、静脈産業の生産プロセスの改善が行われて、負の製品の発生が抑制されることと なれば、産業全体で資源の有効利用が達成されると考える。では、果たして、静脈産業の生産 プロセスには新たな資源の有効利用の方法と改善の可能性があるのかどうかである。 そこで、試案ではあるが、 MFCA バランス集計表を作成し、生産プロセスの改善の検討を 行った。結果、自動車解体業 A 社では、従来、樹脂部品を代替加炭材の原料としている。し かし、樹脂部品を樹脂ペレットという形でマテリアルリサイクルを行う可能性があり、生産プ ロセスの改善の余地があることが明らかとなった。本稿では MFCA を使用する目的を「生産 プロセスを流れる樹脂部品に関する物量情報と金額情報を示すことによって、既知のロスに該 当する樹脂部品が生産プロセスの改善や設備投資を行うだけの価値のあるものであるかのどう かの判断基準を与えること」としたように、前掲表4の物量情報と金額情報において、とりわ けダストと減損の負の製品の金額は、生産プロセスの改善を行う際の判断基準となると考える。 次の課題は、実際に ELV を A 社において解体し、MFCA を使い、樹脂部品から樹脂ペレッ トを生産する生産プロセスを構築することである。A 社と樹脂ペレットの買い手となる樹脂 メーカーと連携し、 MFCA を使用して、生産プロセスおける改善点の洗い出し、達成可能な 標準値の設定、および標準値を達成するまでの実証試験とデータの収集を実施するものである。 謝辞:本研究は JSPS 科研費25380632の助成を受けたものです。 参考文献 安城泰雄(2007)「リサイクル工程・リサイクル事業へのマテリアルフローコスト会計の適用」『環境 管理』43(6):75-82。 安城泰雄・下垣彰(2011)『図説 MFCA(マテリアルフローコスト会計)-マテリアル・エネルギー のロスを見える化する ISO14051』JIPM ソリューション。 植田和弘(1992)『廃棄物とリサイクルの経済学』有斐閣。 岸本重陳(1989)「「豊かさ」の幻想と環境問題」『リサイクル文化』24:10-16。 木村眞実(2015)『静脈産業とマテリアルフローコスト会計』白桃書房。 國部克彦(2009)「日本型環境管理会計の特徴と課題-マテリアルフローコスト会計を中心に-」『原 p003-019-kimura.indd 18 2018/03/20 20:19:39
マテリアルフローコスト会計の自動車リサイクルへの応用(木村) ― 19 ― 価計算研究』33(1):1-9。 國部克彦編著(2008)『実践マテリアルフローコスト会計』産業環境管理協会。 國部克彦・大西靖・東田明・堀口真司(2010)「第10章環境管理会計-マテリアルフロー分析を中心 とした国際比較-」(加登豊・松尾貴巳・梶原武久編著『管理会計研究のフロンティア』中央経済 社に所収)。 下垣彰(2014)「企業への適用を通じた MFCA の進化の研究」『管理会計学』22(2):39-48。 Strobel, M. and C. Redman. 2002. Flow Cost Accounting, an Accounting Approach Based on the
Actual Flows of Materials, In:Bennett, M., J. J. Bounma, And T. Wolters(Eds.). Environmental
Management Accounting:Informational and Institutional Developments, Kluwer Academic Publishers : 67-82.
外川健一(2001)『自動車とリサイクル 自動車産業の静脈部に関する経済地理学的研究』日刊自動 車新聞社。
細田衛士(1999)『グッズとバッズの経済学』東洋経済新報社。
Jasch. C. 2009. Environmental and Material Flow Cost Accounting:Principles and Procedures. Springer.