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同一係争事件の解決における安全保障理事会と国際司法裁判所

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(1)

同一係争事件 の解決 におけ る安全保 障理事会 と国際 司法裁判所

The

Separate

Function

of ICJ

and

SC in Settlement

of International

Dispute

He Ming

Abstract

In recent precedents of International Court of Justice (ICJ) and the practice of Security

Coun-cil (SC) of United Nation, they both act their jurisdiction over a same case. At some cases the

po-litical Jurisdiction of SC bars to legal proceedings of ICJ. There are not any rules about their

separate function in internatio nal law, so it became an urgen problem of international law.

The problem emergenend at the precedents of ICJ in 1960s.

At. "Certain Expenses Case" (1962)

the problem was soft, because both ICJ and SC did not insistent their jurisdiction. But by the

case ICJ have.charlenged that even peace-keeing action of SC are not exclute. Legality, of the

peace-keeping

action of SC can be (or should be) checked by judicial organ.

In "Nicaragua Case" (1984) ICJ concluded

to the problem: "The Council has functions of a

po-litical nature assigned to it, therefore the Court exercises purely judicial functions. Both organs

can therefore perform their separate but complementary with respect to the same events."

And in "Lockerbie Case" (1992) the separate function of ICJ and SC became a new and

impor-tant problem: the judicial review by Judicial organ like ICJ to the action of Political organ like the

action of peace-keeping

of SC. there are not any rules about the judicial review, so it needs legal

practice of ICJ to make laws with the practice.

1992年 国 際 司 法 裁 判 所(以 下 、ICJ)に 提:訴され 、 同裁 判 所 の訴 訟 過 程 にか か られ た ロ ッカ ビー 事 件 は(D、 国 際 司法 の 、 もち ろん ま た 国 際法 の 「重 要 な 問 題 」(2)を提 起 して い る。 これ らの 問題 の な か の 一 つ は、 同一 紛 争 事 件 に お け る安 全 保 障理 事 会(以 下 、 安 保 理)とICJが どの よ う にそ れ ぞ れ 自 己 の あ るべ き機 能 を 行 使 し、 両 者 が どの よ うに 自己 の機 能範 囲 内 で、 しか も相 手 の機 能 範 囲 内 に進 入 しな い 、 す な わ ち両 機 能 が 衝 突 しな い す るか、 で あ る。 一 見 、 この 問題 は訴 訟 テ クニ ックの よ う な レ ベ ル の 問 題 で あ るが、 これ に よ り国 際 法 の 重 要 な 問題 一 国 際法 シス テ ム に お い て 安保 理 とICJが ど う い う あ るべ き 関 係 を 有 す るか(3)、 の 問 題 は提 起 され て い る。 そ して 、 この 問題 もあ る意 味 で は現 象 で あ り、 そ の背 後 に も っ と国 際 法 の 重 要 な 問 題 一ICJの 司法 審査 とい う国 際 法 の 法構 造 お よび 法 機 能 に関 わ る もの が あ る。 その た め、 この 問 題 は、 国 際 法 の 現 実 問 題 で あ り、 ま た 国 際法 の根 本 的 な 問題 を 捉 え る理 論 上 の 問題 で もあ る。 この 「重 要 な 問題 」 に対 して 、 本 論 文 は 訴訟 過 程 か ら諸 問 題 を 取 りあ げ て そ の本 質 を見 出す 。 具 体

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的 に、 同 一 係 争 事 件 を め ぐっ て安 保 理 が そ の政 治 的解 決 を も ってICJが す で に 司法 過 程 を 開 始 させ た ケ ー ス に介 入 し、 そ して こ の司法 的 的解 決 を 中 断 させ る とい う場 合 、 国 際法 上 こ の現 象 を ど う説 明 し、 解 明 す るか に ス ポ ッ トを与 えて 検 討 す る。 同 一 係 争 事 件 に安 保 理 とICJが と もに紛 争 解 決 を 担 当 し、 と くに場 合 に は安 保 理 の 政 治 的 解 決 が ICJの 司 法 的 解 決 を 左 右 す る と い う現 象 を 国 際 法 上 の 問 題 と して 検討 す るの に は、 や は り単 な るテ ク ニ ッ クの 問題 だ け とす るの で はな くて 、 この現 象 を 引 き起 こす 原 因 を も分 析 す る必 要 が あ る。 そ の た め、 本 論 文 は理 論 枠 組 とケ ー スの 紹 介 の 両方 か ら取 り組 む 。

理論 的枠組

国際法の政治的解決 と司法的解決 との因果的関連の説 明

同一 係 争 事 件 の解 決 に安 保 理 とICJが と も に参 入 す るの は、 国 際法 の 法使 用 の 問 題 で あ る が、 そ の 基 本 に は国 際 法 の法 構 造 に よ り生 じた 国 際法 の特 有 な 法 現 象 で あ る。 国 際法 の法 構 造 と この特 有 な法 現 象 との 間 の因 果 的 関 連 に につ い て は 、現 行 国 際法 を 解 釈 して そ の意 味合 い か ら この法 現 象 を説 明す る こ とが で きな いた め 、 法 の 基 本原 理 か ら説 明 す るほ うが 効 果 的 で あ る。 以 下 の ポ イ ン トに ま とめ て 説 明 をす る。 1.国 際 法 の 法 と政 治 との 密 接 不可 分 性 一 般 的 に法 と政 治 は 社 会 統 制制 度 の両 輪 で あ る た め 、 両者 が別 個 の機 能 を果 たす と と もに、 相 互 補 助 性 も有 す る。 国 際法 の場 合 で は、 国 際法 と国 際政 治 は天 然 的 に一 体 性 を な して国 際 法 と い う実 体 にお い て 共 存 す る。 そ れ は、 国 際社 会 に は権 威 的 な 独 立 の法 制 定 機 関 が備 え て い な い一 備 え られ な い、 ま た 国際 法 の 対象 ま た は使 用者 が各 主 権 国家 で あ る と い う国際 社 会 の 特質 に規 定 され て い る。. そ れ ゆ え 、 国 際 法 の法 規 範 は 国 際政 治 と同一 の トピ ッ クス を持 ち、 対 象 も同様 で あ る(4)。 国 際 法 の 法 と(国 際)政 治 との密 接 不 可 分 性 に 関 して、 国 際法 と い う法 シ ス テ ムの 特 質 を理 解 す るの が ま ず 重 要 で あ る。 法 シス テ ム と して 国 際法 は 国 内法 シス テ ム に比 べ れ ば 、 「自己 言 及 的 」 な 法 シ ス テ ム で は な い。 「自己 言 及 的 」 な 法 シ ス テ ム は近 代 法 以 来 法 発 展 した法 シ ス テ ム で あ り、 以 下 の 特 性 を 有 す る: (1)巨 大 な社 会 シス テ ムか ら法 シ ス テ ム は完 全 な 分 化 を して い る 「自己 言 及 的 で 、 自律 的 で、 作 動 の うえ で 閉 じ られ た」(5)独立 の法 シ ス テ ム で あ る。(2)他 の 機 能 シ ステ ム に よ り代 替 さ れ る こ と は な く、 ま た他 の シス テ ム の機 能 に よ り負 担 を軽 減 され る こ と もな い。(3)自 律 的 な法 シス テ ム は 自 己 の機 能 で十 分 の レベ ル で充 足 さ れ て い る、 独 自 の機 能 領 域 で解 決 不 可 能 な問 題 が 扱 わ れ る こ とは な い。 「自己言 及 的」 な法 シス テ ム の意 義 か ら い え ば、 国 際法 シ ズ テ ム は 自 己言 及 的 、 自律 的 な法 シス テ ム で は な い、 と言 え る。 そ れ ゆえ に、 国 際 法 シ ス テ ム 内 に政 治 シ ス テ ム と は別個 の 、 固 有 の循 環 的 な 閉鎖 性 が な い た め に、 国際 法 シ ステ ムの 機 能 だ け で は解 決 で き な い余 地 が 残 され る。 国 際法 シ ス テ ム の この機 能 不 全 で、 他 の一 例 え ば国 際 政 治 の一 機 能 に よ り補 足 され 代 替 され る必 要 が あ る。 この必 要 に よ り、 国際 法 に国 際 政 治 が 参 入 し、 国 際 政 治 の機 能 が シ ス テ ムを 超 え て 国 際法 の法 機 能 に補 助 しま た は代 替 す る こ とが あ る。 そ の 必 然 的 に生 じる国 際 法 の 法 現 象 の 一 つ と して は 同一 係 争 事 件 の 処 理 に安 保 理 とICJが と もに担 当 し、 そ して 安保 理 の 政 治 的 解 決 がICJの 司 法 的 解 決 を超 え て そ の機 能 に代 替 す る こ とで あ る。

(3)

2.政 治 的紛 争/法 的紛 争 、政 治 的解 決/法 的解 決 国 際法 シス テ ム が 自己 言及 的 な法 シ ス テ ム で は な い た め、 本 来 国 際法 の法 機 能 が活 動 す る場 に は 国 際政 治 の機 能 が 介入 し、 国 際法 に補 助 して ま た は代 替 して活 動 す る。 これ を基 本 的 な規 定 要 因 と して、 従 来 国 際 法 には 紛 争 を二 分 化 に し、 そ の解 決 方 法 を も二 分 化 す る問題 が あ る。 す な わ ち、 紛 争 を政 治 的紛 争 と法 的 紛 争 に二 分 し、 そ の解 決 方 法 を政 治 的解 決 と法 的解 決 に二 分 す る。 こ の二 分 化 は 、 「国 際 法 学 者 を 悩 ます 」 問題 で あ り(6)、 国 際 法 理 論 の従 来 の 課 題(7)で は あ る が、 二 分 化 の 必 然性 ま た合 理 性 が 国 際 法 シス テ ム の特 質 に規 定 さ れ、 国 際法 の 固 有 の法 需 要 で あ る と言 わ な け れ ば な らな い 。 そ して、 この法 需 要 に よ り紛 争 解 決 の担 当 機 関 と して 安 保 理 とICJを と も に設 置 す る 必 要 が あ る。 政治 的紛 争 と法 的紛 争 が そ の 存在 の実 質 的効 果 と して主 に裁 判 所 の訴 訟 受 理 可 能 性 に意 義 が あ る が 、主 に は 国 際 法 学 の 問 題 と して研 究 の対 象 と され る。 そ れ に対 して、 政治 的解 決 と法 的 解 決 と い うの は 、 国 際 法 の 法 使 用 の現 実 問題 で あ る。 しか し、 実 定 国 際法 に は 両解 決 に 関 す る明 確 な規 定 が な い。 そ の た め 、 国 際 法 使 用 の 際 に両 解 決 の 衝 突 が生 じう る。 同一 係争 事 件 に対 して両 者 が と もに 管 轄 権 を 行 使 し、 と りわ け安 保 理 の政 治 的解 決 がICJの 法 的解 決 を 左 右 す るの は、 実 定 国 際 法 に は 相 応 の 規 定 が な い の を 原 因 の 一 つ とす る こ とが で き る。(こ の 問 題 を 国 際法 の 「法 の 欠缺 」 の一 現 象 と理 解 して よ い。) 3。 国 際 紛 争 の 平 和 的 解 決 にお ける 役 割分 担 自己 言 及 的 で は な い国 際 法 シ ステ ム に お い て 、 国 際法 機 能 が 政 治 機 能 に補 足 され、 ま た は政 治 機 能 と と もに作 動 す るの が 国 際紛 争 の平 和 的 解 決 に お け る安 保 理 とICJの 役 割 分 担 と い うの に も現 れ て い るQ 国 際 紛争 の平 和 的解 決 は国 際 連合 憲 章(以 下 、 国連 憲 章)に 揚 げ られ る現 代 国際法 の理 念 で あ る。 憲 章 第 六 章(と りわ け第33条)は 国 際 紛 争 の 平 和 的 解 決 に 法 規 範 の 意 義 を 付 与 して、 そ れ を諸 国 の 義 務 と して規 定 して い る。 こ の 指 向性 明確 な 義 務 を果 た す の に は 、 「交 渉 、 審 査 、 仲 介 、 調 停 、 仲 裁 裁 判 、 司 法 的 解 決 」 とい う義 務 履 行 の 選 択 肢 を任 意 規定 と して 用 意 して い る。一 方 、 安 保 理 は 同 33条2項 に よ り 「当事 者 に対 して、 そ の 紛 争 を前 記 の 手段 に よ って 解 決 す る よ うに 要請 す る」 権 限 を有 す る。 ま た 同34条 に よ り安 保 理 は 「いか な る紛 争 」 を 自己 の 解 決 対 象 に しう る任意 決 定 権 を 有 す る。 その 上 に、 第 七 章 に付 与 され る権 限 を も って 安 保 理 は全 般 的 に 国際 紛 争 解 決 の最 終 的 決 定 権 を持 つ 。 そ うす れ ば、 実 定 国際 法 上 で は国 際 紛 争 の平 和 的 解 決 と い う大 枠 の 中で 国 際 連合(以 下 、 国連)の 主 要 な 司 法 機 関 と してICJの 「司法 的 解 決 」 お よ び担 当可 能 な 「仲 裁 裁 判 」 は 「い か な る 紛 争 」 を も解 決 す る安 保 理 の権 限下 の紛 争 解 決 と ど うい う 関係 を なす か、 あ る い は両 者 は ど うい う 役 割 を分 担 す るか 、 に つ い て の規 定 が な い。 こ うい う前 提 にお い て は、 同一 係争 事 件 が 生 じ う る し、 同一 係 争 事 件 に対 す る安保 理 とICJの 管 轄 権 の 衝 突 と競 合 も生 じ う る。

同一係 争事件の解決にお ける安保 理 と℃J一 ケー スか らその軌跡 を見 る一

○ 特 定 経 費 事 件(CertainExpensesoftheUnitedNations1962)(8) 特 定 経 費 事 件 は 憲 章 第17条2項 に 規 定 さ れ る 「こ の 機 構 の 経 費 」(expensesoftheorganiza-tion)の 意 味 の 解 釈 に 関 して 、 国 連 総 会 が そ の 決 議1731を も っ てICJに 勧 告 的 意 見 を 求 め る ケ ー ス で あ る。 安 保 理 とICJと の 関 係 と い う意 義 か ら い え ば 、 こ の ケ ー ス の ポ イ ン トは 二 つ あ る 。 一 つ は 、

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Congoに お け る安 保 理 の平 和 維 持 活 動一 本 件 で はそ の平 和 維 持 活 動 に使 用 され る必 須 の 経 費 お よ び こ の経 費 に関 す る事 務 総 長 の報 告 書 は、 そ の性 質 か らい え ば政 治 問 題 で あ る。 しか し、 この政 治 問 題 は法 律 問題 一 本 件 で は憲 章17条2項 とつ な が って い る。 も う一 う の ポ イ ン トは、 本 件 の対 象 は 政 治 問題 で は あ るが 、 この政 治 問題 に対 してICJが 司 法 判 断 をす る可 能 性 と必 要 性 が あ る こ とで あ る。 す な わ ち、ICJが 国連 の主 要 な 司法 機 関 と して 国 連 自身 の行 為 を も司法 判 断 の 対 象 に して 司法 判 断 を下 す べ きで あ る。 こ の ケ ー ス は 同一 紛 争 を安 保 理 とICJが と も に管 轄 権 で競 合 す る典 型 的 な ケ ー ス で はな いが 、 初 め て 国連 の 行 為一 本 件 で はCongoに お け る安 保 理 の 平 和 維 持 活 動 をICJが そ の 司 法 判 断 の 対 象 に して 、 国 連 の行 為 と りわ け安 保 理 が憲 章 第 七 章 に基 づ い て行 う平 和 維 持 活 動 の権 限 とそ の合 法 性 を 審 査 す る(9)ケ ー ス で あ る。 安 保 理 とSCと の 関 係 か ら いえ ば、 本 件 は非 常 に意 義 が あ る。 こ の審 査 は、 いわ ゆ るICJの 司 法 審 査 で あ る(10)。 ○ エ ー ゲ ン 海 大 陸 棚 事 件(AegeanSeaContinentalShelfCase1978)G2) こ の ケ ー ス は 安 保 理 とICJの 同 一 係 争 事 件 の 最 初 の 例 だ と言 え る 。 原 告 が エ ー ゲ ン 海 大 陸 棚 境 界 線 の 争 い をICJと 安 保 理 の 両 方 に 訴 え た 。 こ の 訴 え に 対 して ま ずICJはorderを 提 出 し た 。 こ の orderの 後 に安 保 理 が 原 告 の 訴 え に 対 して 決 議395を 採 択 し た 。 本 件 は 安 保 理 とICJの 同 一 係 争 事 件 で あ る が 、 こ の 同 一 係 争 事 件 の 最 初 の 段 階 に お い そ は 、 安 保 理 は 意 識 的 に 国 連 の 主 要 の 司 法 機 関 のICJを 擁 護 し て い た 。 本 件 の 領 土 紛 争 が よ り法 的 紛 争 で あ り、 安 保 理 が 平 和 維 持 活 動 を 主 に 対 象 と す る の を 理 由 に 、 安 保 理 は 両 当 事 国 に 本 件 をICJの 司 法 解 決 に 、』 と 提 案 した(13)。 同 一 係 争 の 処 理 に お け る安 保 理 とICJと の 関 係 と い う意 義 か ら い え ば 、 エ ー ゲ ン事 件 の 有 意 義 な ポ イ ン トは、 同 一 係 争 事 件 に お い て 安 保 理 の 調 停 、 ま た こ の 調 停 が す で に始 ま っ た と して も、 そ れ がICJ の 司 法 機 能 の 行 使 の 妨 げ に は な らな い(14)、 初 め て 調 停 と 司 法 解 決 が 「同 時 行 使(paripassu)」(15)を 提 出 した 点 で あ る 。 ○ 人 質 事 件(CaseConcerningUnitedStatesDipbmaticandConsularStaffinTehran1980)(16) こ の ケ ー ス は エ ー ゲ ン事 件 に 続 い た 安 保 理 とICJの 同 一 係 争 事 件 で あ る 。 原 告 はICJに 提 訴 し た 後 に 、 そ し てICJが す で に 訴 訟 手 続 き を 始 め た 後 に 、 同 じ事 由 を 安 保 理 に も提 出 し た 。 これ に 対 し て 、 安 保 理 は 二 回 決 議 を 採 択 し、 被 告 に 命 令 と 要 請 を 出 した 。 安 保 理 の 政 治 的 解 決 と は 別 個 に 、ICJは 依 然 と して 裁 判 所 規 定53条 に よ り訴 訟 を 進 行 さ せ た が 、 安 保 理 の 二 回 目 の 決 議 の 採 択 後 に 、 さ ら に 被 告 がICJの 訴 訟 手 続 き を 無 視 し た た め 、 こ れ で 被 告 に 呼 び か け 、 ま た は 被 告 に 裁 判 所 の 命 令 を 確 認 す る こ と が 困 難 に な る と 判 断 した 時 点 でICJは 本 件 の 審 理 を 自分 が 担 当 す る の に は 不 適 切 と 判 断 した 。 同 一 係 争 事 件 に お け る 安 保 理 とICJと の 関 係 と い う 問 題 に 関 して 、 本 件 は 三 点 に お い て こ の 問 題 の 解 明 お よ び 確 認 を 進 め た 。 一 つ 目 は 、 「政 治 的 紛 争 は 司 法 訴 訟 の 妨 げ に な っ て は な ら な い 、 す な わ ち 安 保 理 の 平 和 的 解 決 はICJの 司 法 機 能 の 制 限 に な っ て は な ら な い 」(17)とい うICJの 判 決 の 結 論 で あ る 。 二 つ 目 は 、 同 一 係 争 事 件 お よ び す べ て の 紛 争 解 決 の 事 件 に お い て 安 保 理 とICJの 平 行 解 決 (parallelproceedings)の パ タ ン の 提 起 で あ る 。 三 つ 目 は 、 本 件 は エ ー ゲ ン海 事 件 の 判 決 を 参 照 し、 判 例 を 積 み 重 ね 、 こ の 問 題 の 判 例 法 の 形 成 に 大 い に 意 義 が あ る 。

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○ ニ カ ラグ ァ事 件(CaseConcerningandMilitaryParamilitaryActivitiesinandAgainstNicaragua 1984)q8) 本 件 も安 保 理 とICJと の係 争 事 件 で あ る。 そ して、 同一 係 争 事 件 にお け る両 者 の 管 轄 権 の 競 合 と い う問題 を最 も鋭 く提起 した事 件 で あ る。 この意 味 で、 この ケ ー ス は 国 際 司法 の 重要 な判 例 に な る、 国 際 法 学 に も重 要 な 問題 を 提起 した事 件 で あ る。 この ケ ー ス に お い て、 同一 係 争 事 件 にお け る安 保 理 とICJの 管 轄 権 の 競 合 とい う法 現 象 に対 して ICJが 見解 を示 したの は 、 自分 自身 が安 保 理 と衝 突 した とい う事 実 に基 づ いた の で は な く一 との ケ ー スの 時 点 に お いて も依然 と して 両者 の直 接 の 衝 突 はま た は一 方 的 な 強 制 的 な影 響 力 が な か った一 、 被 告 が 原 告 の提 訴 した 「軍 事 的 な紛 争 」 を 「政 治 的紛 争 」 の 範 畴 に入 れ、 安 保 理 が解 決 す べ き とい う理 由 で原 告 の訴 訟 を否 定 しよ う と した た め で あ る。 被 告 の この抗 弁 に対 して、ICJは まず 「軍 事 的 紛 争 」 で もICJの 司法 的 判 断 の対 象 に な り うる(19)と、 言 明 した。 そ して 、 国 際紛 争 の 平 和 的解 決 に お け る安 保 理 とICJの そ れ ぞ れ 異 な る権 限 お よ び機 能 に 関 してICJは 重 要 な見 解 を 示 した:ま ず 、 大 前 提 と して 憲 章 は安 保 理 に は紛 争 の平 和 的 解 決 の 「絶 対 的 な権 限」(exclusiveresponsibil-ity)を 付 与 して い な い(20)。憲 章 に は 両 者 の 役 割 分 担 に関 して は 具 体 的 明 確 な 規 定 が な いが 、 安 保 理 は政 治 的 な機 能 を 果 た す 、ICJは 司法 的 な機 能 を果 た す。 この 原 則 に応 じて 、 両 者 の役 割 分 担 は 「そ れ ぞ れ 別 個 で あ るが、 補 助 的 な機 能 を果 た す」(21)とい う結 論 を 出 した。 この 結 論 は こ の 問題 の 解 決 的 な 、 ま た判 例 法 の 意 義 を有 す る も の とな って い る。(こ の結 論 はICJの 法 使 用 に お い て本 件 以 後 同様 な 問題 の参 照 お よ び規 定 に な って い る。) ICJは 初 め て 自分 と安 保 理 との 関 係 に関 して重 要 な判 断 を 示 した が 、 終 始 安 保 理 と の合 理 的 ・健 全 な関 係 を保 つ こ と を意 識 して い る:そ れ ぞ れ 別 個 の 機 能 を果 たす 安 保 理 に対 して、 た とえ 安保 理 の不 利 の 決 定 で もICJに は 提 訴 す る こ と もで きな い し、ICJ自 身 は そ の決 定 が 間違 った と は見 解 を 示 す こ と もで き な い。 当時 の時 点 で は、 原 則 と して 明 確 にす る こ とが で き るの は二 点 だ け で あ る。 一 つ は、ICJの 法 律 問題 は 安 保 理 の考 慮 す べ き問 題 で もあ る。 も う一 つ は、 安 保 理 はICJの 司法 活 動 を 阻止 す る こ とは で き な い、 と い うこ とで あ る。 Oロ ッ カ ビ ー 事 件(QuestionoflnterpretationandApplicationofthe1971MontrealConvention arisingfromtheAeria目ncidentatLockerbie,1992)(22) 本 件 は 同 一 係 争 事 件 に お け る 安 保 理 とICJが ど う い う 健 全 的 な 関 係 を 有 す べ き か と 明 確 に 問 題 を 提 起 し た 事 件 で あ る 。 と い う の は 、 本 件 は 初 あ て 安 保 理 の 政 治 的 解 決 がICJの 司 法 的 解 決 を 左 右 し た 事 件 と し て 、 い ま ま で の こ の 問 題 の 程 度 を 越 え た だ け に 、 こ の 問 題 の 蓄 積 を 集 中 し て 本 件 に 現 れ て い る 。 そ の た あ 、 本 件 は 最 も こ の 問 題 の 深 刻 さ を 現 して い る 。 同 一 係 争 事 件 に お け る 安 保 理 とICJの 関 係 と い う 問 題 に 関 し て 、 本 件 に は 二 つ の ポ イ ン トが あ る。 一 つ は、 安 保 理 の 政 治 的 解 決 一 本 件 で は 安 保 理 の 三 つ の 決 議 一 がICJの 司 法 的 解 決 に 決 定 的 な 影 響 を 及 ぼ し た 。 安 保 理 が 原 告 を 相 手 に 決 議 をi採択 した 。 そ れ で 原 告 がICJに 提 訴 し た 。 さ ら に 安 保 理 が 憲 章 第 七 章 に よ り二 つ の 決 議 を 採 択 し、ICJが す で に 始 め た 訴 訟 過 程 を 中 止 し た 。 同 一 係 争 事 件 に お け る 安 保 理 とICJが 管 轄 権 で 競 合 し 、 安 保 理 の 政 治 的 解 決 がICJの 司 法 的 解 決 を 根 本 的 に 左 右 し た の は 》 本 件 で あ る。 い ま ま で の こ の 問 題 の 芽 生 え お よ び 蓄 積 は 本 件 に お い て こ の 問 題 の 性 質 を 変 え た 。 本 件 の ポ イ ン トの も う一 つ は 、 同 一 係 争 事 件 に お け る 安 保 理 とICJの 関 係 と い う 問 題 に 重 要 な 法 発 見 し た こ と で あ る 。 そ れ は 、 司 法 機 関 一 のICJの 司 法 審 査 権 で あ る。 も し、 同 一 係 争 事 件 に お け

(6)

る安 保 理 とICJの あ るべ き 関係 とあ るべ き役 割 分 担 と い う の はニ カ ラ グ ァ事 件 の 際 のICJの 重 要 な 法 発 見(23)であ る とい うの な らば、 ロ ッカ ビー事 件 の 際 の 司 法 機 関一ICJの 司 法 審 査 権 とい うICJの 法 発 見 は ニ カ ラ グ ァ事 件 の法 発 見 を発 展 して、 こ の 問題 の性 質 の所 在 と解 決 の方 法 を発 見 した ので あ る。

訴訟法上 の説 明

管 轄権 の移動 と訴訟物変更 の法理

同 一 係 争 事 件 にお け る安 保 理 とICJの 管 轄 権 の競 合 は、 ロ ッカ ビー事 件 に お い て結 果 と して 、 安 保 理 の 政 治 的 解 決 がICJの 司法 的解 決 を左 右 し、 実 質 的 に そ の管 轄 権 を政 治 的解 決 の領 域 に移 動 させ た わ けで あ る。 そ こ で、 管 轄 権 の移 動 と い う法 現 象一 た とえ あ るべ き で はな い法 現 象一 に 関 して 法 理 (jurisprudence)上 か らそ の 可 能 性 と不 合 理 性 を解 析 す る必 要 が あ る。 ロ ッカ ビー事 件 に お い て生 じた 司法 的 管 轄 権 の 移 動 とい うの は、 事 件 の訴 訟 進 行 中 に 司法 機 関 が 訴 訟 過 程 を作 動 さ せ て い る の に もか か わ らず 、 政 治 機 関 が 当事 件 の訴 訟 物 を政 治 過 程 に移 入 させ 、 そ れ に よ り司法 機 関 の管 轄 権 が移 動 さ れ訴 訟 物 も変 更 され る こ とで 当事 件 の訴 訟 に影 響 を及 ぼ した こ とで あ る。 と りわ け事 件 の訴 訟 を 中断 させ 司法 的 判 断 の 段 階 お よ び 内容 を途 中で 早 め るか 、 あ るべ き司 法 判 断 が一 部 分 しか で き な い。 す な わ ち、 訴 訟 お よ び司 法 的判 断 の方 向性 、 目的 お よ び性 質 まで 変 更 さ せ るわ け で あ る。 この 変 更 は ロ ッ カ ビー事 件 に お い て具 体 的 に こ の よ うな プ ロセ ス を経 て な され た。 当事 件 の被 告 (イ ギ リス政 府 とア メ リカ 政 府)は 当事 件 の審 理 開 始 後 に安 保 理 に ロ ッカ ビー で 発 生 した飛 行 機 爆 発 事 件 の容 疑 者 の 引 き渡 しを要 請 した。 この 要 請 に応 じて安 保 理 は 当事 件 の原 告(リ ビア政 府)に 対 し て容 疑 者 の 引 き渡 しを命 令 し、 そ れ に従 わ な い場 合 制 裁 措 置 を課 す る と い う決 議 を採 択 した。 この 決 議 に要 求 さ れ た容 疑 者 の 引 き渡 しと い うの は、 ロ ッカ ビー事 件 の訴 訟 物 の一 つ一 仮 保 全 措 置 とそ の 請 求 で あ る。 当 安 保 理 決 議 の採 択 に よ り、ICJは ロ ッカ ビー 事 件 の原 告 の 仮 保 全 の訴 求 は 「訴 訟 対 象 (物)な し(withoutoblect)」(24)で あ る と判 断 し、 そ の 訴 求 を却 下 した。ICJは ロ ッカ ビー事 件 の そ の後 の訴 訟 進 行 お よ び判 決 を下 す まで 原 告 の 当 初 の 訴 求 事 由 の一 つ一 仮 保 全 措 置 の 訴 求 を排 除 して、 も う一 つ の訴 求 事 由一 モ ン トリオ ール 条 約 の 解釈 と適 用 だ け を訴 訟 物 に した 。 本 来 、 ロ ッカ ビー 事 件 の 仮 保 全 措 置 とそ の訴 求 はICJの 管 轄 権 行 使 の対 象 で あ る が、 安 保 理 決 議 に よ りこの 管 轄 権 は訴 訟(法)過 程 か ら政 治 過 程 へ移 動 され、 訴 訟(法)機 能 が政 治 機能 に代 替 され た。 同様 に、ICJに 提 訴 され に訴 訟 物 も訴 訟(法)過 程 か ら政 治 過 程 へ 変 更 され 、 司法 的解 決 を求 め る訴 訟 の 目的 が 蒙 質 され 、 訴 訟 物 の性 質 も司 法 の 対 象 か ら政 治 の対 象 に変 更 され た 。 こ の移 動 と変 更 に関 して法 理 か ら説 明 す る必 要 が あ る が、 ロ ッカ ビー事 件 の 判 決 に は この法 理 の説 明 は不 十 分 で あ る。 当事 件 が 「国 際 法 の 重 要 な 問題 を 提 起 した」 意 義 にお いて 、 この 法 理 の説 明 が必 要 で あ り、 そ して こ の法 理 の説 明 を通 して 国 際法 の 性 質 と 問題 を認 識 す る こ とが で き る。 実 定 法 か らの説 明一 ロ ッカ ビー事 件 の管 轄 権 の移 動 と訴 訟 物 の変 更 に関 して 実 定 国 際 法 か らその妥 当 性 を立 証 す る場 合 、ICJ規 則 第 七 九 条 に基 づ いて立 証 す れ ば一 応 は 「裁 判 所 の管 轄 権 若 し くは請 求 の受 理 の可 能 性 」 を も って原 告 の仮 保 全 措 置 に対 す る管 轄 権 行 使 の 不 可 能 性 を説 明 す る こ とがで き る(25)。 す なわ ち、 先 決 的抗 弁 に有 効 な条 件 を付 け るか、 若 し くは先 決 的 抗 弁 が条 件 に満 た さな い こ とに関 して 「抗 弁 」 す るか 、 で あ る。 ロ ッカ ビー事 件 で は、 安 保 理 決 議 が 当事 件 の訴 訟 物 の 一 部 を 決 議 の対 象 に し た ため、 当訴 訟物 に対 す るICJの 管 轄権 が実 際 に行 使 不 可 能 に な った。 この不 可 能 につ いて の説 明 はICJ 規 則 第 七 九 条 だ けで は、ICJの 管 轄 権 移 動 とその必 要 性 との 間 の メカニ ズ ムを 因 果 的 に説 明 す る ことは

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で きな い。 とい うの は、 ロ ッカ ビー 事件 の場 合 で は被 告 の抗 弁 が原 告 の訴 求 の 受 理 可 能 性 お よ び訴 訟 の 進 行 可 能 性 を規 定 す る要 因 で はな いか らで あ る。 そ して、 安 保 理 決 議 は訴 訟 以 外 の要 因 で あ り、 「被 告 以 外 の 当事 者 」(裁 判 所 規 則 第 七 九 条 一 項)に は該 当 で きな いた め、 当決 議 を 「抗 弁 」 と して 原 告 の訴 求 を受 理 不 可 能 と判 断 しては な らない。 その意 味 では、 当 事 件 の判 決 で はその受 理 不 可 能 に対 す る実 定 法 上 、 規 則 第 七 九 条 によ る説 明 は ロ ッカ ビー事 件 の ポイ ン トとな る管 轄 権 の移 動 と訴 訟 物 の変 更 の 因果 関係 を説 明 しきれ ない、 と言 え る。 当事 件 の管 轄 権 の移 動 と訴 訟 物 の変 更 は 当事 者 以 外 の 第 三 者 の 関与 を ポ イ ン トに して そ の 因果 的関 係 を 解 くべ き で あ る(26)。当事 件 で は、 この第 三 者 が 当事 者 と 同等 な地 位 の 第三 者(例 え ば、 国)で は な くて 、 国 際 組 織 、 しか もICJと 同 等 な 地 位 の 安 保 理 で あ る た め、 この レベ ル の 第 三 者 の 関 与 は 当 事 件 の訴 訟 の進 行 に決 定 的 な影 響 が あ る。 それ は、 当事 件 の本 来 の担 当機 関 の 司法 機 関 を僭 越 し、 そ の管 轄 権 を政 治 過 程 に移 動 させ、 本 来 司法 機 関 がす で に訴 訟 に掛 け た訴 訟 物 を政 治 決 定 の 対 象 に変 更 させ た影 響 力 で あ る。 現 在 の 国 際 シス テ ム お よ び現 行 国 際 法 シス テ ム に お い て は、 この司 法 か ら政 治 へ の移 動 と変 更 の現 象 は本 質 的 に そ れ らの シス テ ム に規 定 さ れ るの で あ る。 そ れ故 に、 司 法 の管 轄 権 お よび訴 訟 物 の法 過程 か ら政 治 過 程 へ の移 動 お よ び変 更 に対 して、 そ の移 動 お よ び変 更 を引 き起 こす メ カ ニ ズ ム を 発 見 し、 そ の 当然 ・合 法 の場 合 と不 均 衡r不 妥 当 の場 合 を そ れ ぞ れ認 識 し実 定 法 に生 成 で き る もの を形 成 させ る こ とが大 事 で あ る。 ちな み に、 この 移動 お よび変 更 に関す る実 定 法 が い ま だ に な い た あ、 ロ ッカ ビー事 件 の よ うに た だ ICJ規 則 第 七 九 条 だ け で移 動 と変 更 の 妥 当 性 を 説 明 す るの は、 限 界 が あ る。 この 限 界 お よ び そ の認 識 か ら、ICJの 司 法 審 査 権 とい う法 需 要 が 出 た。 安 保 理 が そ の決 議 でICJの 訴 訟 に影 響 を及 ぼ す場 合 に、 そ の行 為 の 妥 当 性 ・合 法 性 に対 す る司法 機 関 の審 査 とそ の行 為 に よ り生 じ る不 均 衡 ・不 妥 当 に対 す る 司法 審 査 が 必 要 にな る。 決議 と条 約 の 関 係 か らの 説 明一 ロ ッカ ビー事 件 は、 国連 決 議 が 当事 者 間 の モ ン トリオ ール 条 約 を越 え た 一 例 で あ る。(国 連 決 議731、 と決 議748は 当事 件 の訴 訟 の 第 一 段 階 を完 全 に影 響 し、 訴 訟 の 当初 の 目的 を変 え た 。 決 議883は 当 事 件 の 第 一 段 階 に お け る 司 法 裁 判 所 の結 論 が 出 され た 後 に 採 択 さ れ た が 、 訴 訟 全 体 に影 響 が あ った(27)。)ロッカ ビー事 件 の この ポ イ ン トは国 際 法 体 系 の な か の 規 範 問 の 関 係 の再 認 識 を 呼 びか け、 と くに特 別 法 の 国 連 決議 が一 般 法 の条 約 を 越 え る法 理 の説 明 を要 求 して い る。 法 体 系 は法 規 範 の集 中体 で あ る。 法体 系 の な か で法 規 範 が 一 定 の 構 造 を な す。 この構 造 は法 規 範 の 間 で均 衡 を保 ち、秩 序 の あ る状 態 を保 つ た め に、 一 定 の 関係 を なす 状 態 で あ る。 この構 造 は一 定 の ル ー ル を 提 供 す る。 す な わ ち、 基 本 法 は最 上 位 の法 で あ り、 一 般 法 と特 別 法 を 越 え る。 同様 の意 味 で、 一 般 法 と特 別 法 は基 本 法 を体 現 し、 また そ れ に服 従 す る。 一 般 法 と特 別 法 の 間 で は、 特 別 法 は一 般 法 を 越 え る。 国 際 法 は 国 際 法 規 範 の 体 系 で あ る。 この 法体 系 の 中 で、 憲 章 は基 本 法 で あ り(憲 章 第 二 五 条)、 条 約(と くに二 国 間条 約)は 一 般 法 で あ り(28)、国 連 決 議 は特 別 法 で あ る。 基 本 法 の 憲 章 は一 般 法 の 条 約 を越 え(憲 章 一 〇 三 条)、 特 別 法 の 国連 決 議 を も越 え る。 特 別 法 の 国 連 決 議 と基 本 法 の憲 章 との 間 で は上 下 関係 とい うよ り、 両 者 一 体 の 関係 をな す 。 国 連 決 議 は特 別 法 と して基 本 法 の 憲章 を 個 別 分 野 で実 現 す る。 そ の た め、 国連 決 議 は一 般 法 の条 約 と は違 い、 公 共 性 と広 範 な拘 束 力 を 有 す る。 この 意 義 に お い て 、 特 別 法 の 国連 決 議 は 一 般 法 の条 約 を越 え る(29)。国 際 法 体 系 の 中 で 国 際 社 会 全 体 の 法 と して の 国連 憲 章 お よ び多 国 間条 約 の ほ か に、 国 家 間 の関 係 を調 整 す るの は 国家 間 条 約 で あ る。 国 際 法 体 系 を そ の法 構造 か らい え ば、 国連 憲 章 を は じめ とす る多 国 間条 約 とい う公 共 性 の部 分 と二 国 間 お よ び地 域 間条 約 とい う限定 利益 の部 分 が あ る。

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も し、 公共 性 を境 界 線 に して基 本 法 の 国 連 憲 章 と特 別 法 の 国連 決 議 を 上 位 法 に し、 限 定 利 益 の た め の二 国 間条 約 を下 位 法 とす る の な らば、 ロ ッカ ビー 事 件 の 際 の 国連 決 議 が モ ン トリー オ ール 条 約 を越 え て元 々 この条 約 の範 囲 の紛 争 を公 共 性一 国 際 社 会 の 平 和 と安 全 一 に関 わ る問 題 と して 決 議 の対 象 に す る こ とが で き る。 しか し、 問題 は この よ うな 前 提 条 件 に お い て も特 別 法 の 決 議 が 一 般 法 の条 約 を尊 重 す る余 地 が あ るか ど うか、 重 大 な 公 共 性 の 場 合 で も決 議 の効 力 が 条 約 を 越 え 、 また は排 除 す る のが 妥 当 で あ る か ど うか、 で あ る。 す な わ ち、 この 上 位 関係 は 絶対 的 な もの にな って はな らな い。 ま して、 決議 と条 約 は そ れ ぞ れ の 目的 と対 象 が 違 うた め、 上 位 関 係 とい って も、 決 議 は条 約 を 制 御 して はな ら な い の で あ る。 しか し、 ロ ッカ ビー 事 件 の 場 合 で は、 決 議 は条 約 を制 御 した 、 と言 わ ざ る を え な い。

国際法構造 か らの解析

(一)安 保 理 とICJと の基 本 的 な違 い ICJと 安保 理 との関 係 を考 え る最 初 の作 業 と して、 ま ず両 者 の基 本 的 な 違 い を考 え る必 要 が あ る。 両 者 の 違 いお よ び基 本 的 な 違 いな ど を言 え る前 提 が あ る。 そ れ は、 国 際 シ ス テ ム に お い て、ICJ、 安 保 理 と総 会 の 三 者 が 同様 に 国連 の 「主 要 機 関 」(憲 章 七 条)で あ る、 と い う前 提 で あ る。 この 前 提 に お い て、 両 者 の違 い と い うの は国 際 法 シ ステ ム に お け る機 能 の 違 い で あ り、 同 一 法 シ ステ ム内 の分 業 で あ る。 1.法 過 程 と政 治 過 程 との 違 い ICJは 司法 機 関 で あ り、 安 保 理 は政 治 機 関 で あ る。 両 者 は も と も と別 々 の レベ ル で違 う機 能 を 果 たす 。 安 保 理 は 「政 治 的 性格 の 機 能 」 を果 た し、ICJは 「純 粋 に司 法 機 能 」 を果 た して 、 両 者 は 「並 行 的機 能 遂 行 の原 則 」(30)によ り活 動 す る。 国 際 紛 争 の 平 和 的 解 決 にお い てICJと 安 保 理 は と もに平 和 的解 決 を担 当 し、 と りわ け同 一紛 争 に対 して両 者 が と もに管 轄 権 を 行 使 す るが で き る。 こ の場 合 、 紛 争 を 法 過 程 に入 れ て 司法 の ル ー ト、訴 訟 手 続 き に従 って解 決 す るか、 そ れ と も政治 過 程 に 入 れ て 政 治 の ル ー トに従 って 解 決 す るか は、 基 本 的 に違 う。 こ の基 本 的 な 違 い に よ り、 ICJと 安 保 理 との 関 係 は、 法 過 程 と政治 過 程 との違 い と して 認 識 す る こ とが で き る(31)。 い う まで もな く、 法 過 程 と政 治 過 程 は別 々 の分 野 で あ る。 法過 程 は立 法 と司法 を含 め る法 の 活 動 過 程 で あ る。 法過 程 牽通 して法 は制 定 さ れ、 使 用 され 、 当初 予定 さ れ る法 の 目的 を実 現 す る。 そ れ に対 して 、政 治 過 程 は行 政 機 関 の活 動 過 程 で あ り、 行 政命 令 を そ の活 動 の指 針 と して具 体 的 な 問 題 解 決 を 目的 とす る。 法 過 程 と政 治 過 程 を 峻別 す るの は、 形 式 的 ・合 理 的 な法 規 範 とそ れ に よ る権 利 ・義 務 的 な 社 会 関 係 を 営 み 、 恣 意 を 抑 制 す る た め で あ る(32)。政 治 過 程 は そ の 活 動 か ら い え ば 、 利益 の対 立 、 意 見 の対 立 を統 合 す る過 程 で あ る。 そ れ に対 して、 法 過 程 は法 と法 機 関 を 動 員 して権 利 侵 害 を違 法 行 為 と して確 認 し、 法 規 範 に従 って強 制 的 に権 利 ・義 務 的 な 関係 を 回復 し維 持 す る法 の活 動 過 程 で あ る。 国 際 法 も同様 に法 過 程 と政 治 過 程 が基 本 的 に違 う。 国 際法 の法 過 程 は立 法 過 程 と 司法 過 程 の両 部 分 に よ り構 成 され る。 国 際 法 の法 過 程 か ら司 法 過 程 だ けを 抽 出 して見 る場 合 、 国 際 法 の 司 法 過 程 に政 治 過 程 の 影 響 が 大 き い、 と言 え る。ICJと 安 保 理 が と もに国 際 紛 争 の平 和 的解 決 を担 当す るが 、 国 際法 過 程 と国 際 政 治 過 程 は その 機 能 、 目的 と効 果 にお い てはや は り違 う。国 際法 の法 過 程 はICJを 中心 に して 国 際法 の法 的 問題 を解 決 し、 と りわ け合 法 性 と違 法 性 の 確 認 を任 務 とす る(33)。 こ の合 法 性 と違 法 性 の 確 認 は、 諸 国 と国 際 組 織 を含 め る 国 際行 為 の合 法 性 と違 法 性 を 確 認 す る こ

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とで あ る。 国 際 政 治 過 程 は、 法 過 程 との対 角 にお い て 、 力 で 国 際 社 会 の 統 合 を 任 務 とす る。 政 治 過 程 が 法 過 程 と と も に国 際 紛 争 の 平 和 的解 決 に参 与 す る場 合 、 政 治 過 程 は 国 際 社 会 の平 和 を 回復 し、 平 和 の 脅 威 を 取 り除 くと い う具 体 的 な 作 業 を 総 会 と安 保 理 を 動 員 して 力 で 完 成 す る。 政 治 過 程 は政 治 的 な 判 断 と強 力 を もって 平 和 強制 の 実 現 を 通 して 国 際 社 会 の 統 合 を 指 向 す る。 安 保 理 を 主 導 とす る政 治 過 程 は、 関係 国 お よ び国 際社 会 の利 益 の対 立 と意 見 の対 立 を統 合 す る過 程 で あ る。 それ に対 して、ICJを 主 導 とす る法 過 程 は国 際法 と法 制 度 を 動 員 して 関 係 国 の権 利 ・義 務 的 な 関 係 を維 持 す る過 程 で あ る。 両 者 の この違 い の た め 、 国 際 紛 争 の 法 的解 決 に政 治 過 程 の介 入 に対 し てICJの 裁 判 官 は反 対 の態 度 を取 って い る(34)。 一 方、 国 際 法 の 法 過 程 と国 際 政 治 過 程 は 法 と政 治 との 混 合 体 とい う国 際 法 の 特 質 に よ り、 対 立 よ り相 互依 存 の状 態 を示 す 。 国 際法 秩 序 に お い て、 法 過 程 と政 治 過 程 は そ れ ぞ れ 「別 々異 な るが 、 補 助 的」(35)な役 割 を 果 たす 。 法 過 程 は 国 際 立 法 と国 際 司法 裁 判 所 の活 動 を 通 して 国 際 法 に よ る 国 際 社 会 の 法 的 制 御 を実 現 す る。 政 治 過程 は集 団 安 全 保 障 体 制 で あ り、 そ の 体 制 の維 持 と運 転 が 国 際 法(憲 章 、 と りわ け第 七 章)に 正 当性 と妥 当 性 を 求 め る必 要 が あ る。 国 際 法 の法 過 程 と政 治 過 程 は 「補 助 的」 な 関 係 を示 す が 、 法 と政 治 と の基 本 的 な違 い ㈹ に よ り、 国 際 法 の法 過 程 と政 治 過 程 は 「異 な る」 機 能 を も って そ れ ぞ れ 活 動 す る(37)。紛 争 解 決 に お いて 両 者 の 機 能 の 違 いが 典 型 的 に生 じる。 紛 争 を 法 過 程 に付 与 す るの と、 政治 過 程 に付 与 す る の と法 的 解 決 と政 治 的 解 決 の機 能 が 違 う、解 決 の 効 果 が 違 う。 紛 争 を 法 過 程 に 付 与 して、 国 際 司法 裁 判 所 の 法 的 判 断 に付 与 す る場 合 に、 法 的 関 係 の 調 整 を 目的 とす る。 紛 争 を 国 連 ・安 保 理 に付 与 して その 調 査 、 憲 章 第 六 章 と第 七 章 に基 づ く判 断 と活 動 に付 与 す る場 合 に 、 政 治 的 な政 策 に よ る 問 題 解 決 を 求 め る。 国 際 社 会 の社 会 的 関係 も問 題 解 決 も元 来 法 と政 治 の 混 合 に よ る もの で あ る た め、 法 過 程 と政 治 過 程 の それ ぞ れ の 活 動 が 国 際 社 会 の 法 需 要 で あ る。 安 保 理 は 国連 憲章 を憲 法 と して その 政 治 過 程 を展 開 す るが 、 憲 章 の規 定 の 不 十 分 と い う問 題 が あ るた め、 憲章 の絶 対 の参 照 (reference)は 危 険 性 を伴 う(38)。これ に対 して 、 司 法 裁 判 所 とそ の法 過 程 が政 治過 程 の補 充 ・検 査 と して そ の法 需 要 が高 くな る。 2.両 者 の 法 発 見 の 違 い 安 保 理 とICJは と も に国 際 法 規 範 の 法 発 見 とい う機 能 を 持 って い る。 そ して 、 両 者 の 法 発 見 は 国 際法 に お い て重 要 な 地 位 を有 す る。 しか し、 安 保 理 とICJの 法 発 見 が 同一 で あ るか(39)は、 さ らに重 要 な 問題 で あ る。 それ は安 保 理 とICJの 基 本 的 な 違 いを認 識 し、 国 際 法 秩 序 に お け る安 保 理 とICJと の 関係 を認 識 す る有 意 義 な問 題 で あ る。 まず 、 安 保 理 の法 発 見 は形 と して 安 保理 決 議 を 主 とす る。 安 保 理 の 法 発 見 とい うの は、 国 際上 位 組 織 に よ る国 際 法 規 範 の定 立 で あ る。 そ の 意 味 に お いて 、 国 連 ・総 会 の 決議 も国 際上 位 組 織 に よ る国 際 法 規 範 の定 立 に な る。 その た め、 国 連 ・安 保 理 の法 発 見 を 言 及 す る場 合 に、 広 義 上 に お いて 総 会 決 議 も含 め る。 国 際 法 シス テ ム に お い て、 安 保 理 は 立法(law-making)機 関 で あ る(40)。と りわ け、 安 保 理 に よ る国 際 紛 争 の政 治 的解 決 に お いて 安 保 理 決 議 は法 発 見 の形 と して 定 立 され る。 司法 機 関 の裁 判 と裁 判 官 の法 発 見 に比 べ れ ば、 安 保 理 の法 発 見 は純 粋 の 法 規 範 の 発 見一 定 立 で は な くて、 政 策 一 公 共 政 策 を 制 定 す る こ とで あ る(41)。安 保 理 の 法 発 見 を そ の形 式 か ら いえ ば、 具体 的 な 関 係 国 ま た は国 際社 会 の利 益 の衝 突 に対 す る解 決 案 で あ る。 この 種 の決 議 は、諸 国 の共 同行動 を要 求 す る。 その 性質 か らいえ ば、 決 議 は政 策 と して の特 性 を有 す るた め、 具体 的 な問 題 に対 す る具 体 的 な ケ ー

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ス ・バ イ ・ケ ー ス の 問題 解 決 の 方 法(42)であ り、 法 規 範 と して の 普 遍 性 ・形 式 性 が 乏 し く、 法 発 見 と い って も、 ソ フ ト ・ロ ー が多 い(43)。も ち ろん 、 憲章 第 七 章 に基 づ き決 定 した安 保 理 決 議 は 強 制性 とい う一 点 に お い て、 概 念 上 の ソ フ ト ・ロ ー と は多 少 違 うが、 それ はむ しろ第 七 章 に基 づ い て安 保 理 決議 が執行 され る と、 ハ ー ド ・ロー に生 成 す るた め、 決 議 に は ソ フ ト ・ロ ー とハ ー ド ・ ロー両 方 の性 質 を示 す の で あ る。 基 本 的 に は、 決 議 は一 種 の解 決 案 で あ り、 ハ ー ド ・ロ ーへ 発 展 す る必 要 が あ る。 裁 判 官 の法 発 見 は判 例 法 の発 見 と行 為 規 範 の 発 見 で あ る。 こ の法 発 見 は法 規 範 の 基 本 的 な 生 成 ル ー トで あ る。 裁 判 官 の法 発 見 は政 治 的 な意 志 又 は個 人 の恣 意 を排 除 す る意 義 で 法 の 最 も基 本 的 な性 質 を有 す る。 国際 法 の分 野 で も裁 判 所 と裁 判 官 の 法 発 見 が 国 際 法 規 範 の 生 成 に参 与 し、 政 治 機 関 と個 人 の 恣 意 を 排 除 しそ 法 規 範 を形 成 す る。ICJの 法 発 見 は裁 判 の場 で判 例 法 を 発 見 し行 為 規 範 を 発 見 す る。 また 国 際 法 の解 釈 を通 して 国 際法 規 範 を 発 見 す る。ICJの 法 発 見 は普 遍 的 ・形 式 的 な法 規 範 を志 向す る。 ICJと 裁 判 官 の法 発 見 の 最 近 の例 は、 司 法 審 査 の 法 発 見 で あ る。 「特 定 経 費 事 件 」 か ら 「ニ カ ラ グ グ ァ事 件 」、 「ロ ッカ ビー事 件 」 ま で裁 判 の場 でICJは 紛 争 の平 和 的解 決 に現 れ た安 保 理 の 権 限踰 越 とい う法 現 象 に対 して 「司 法 審 査 」 の法 発 見 を した 。 この 法 発 見 を め ぐ ってICJの 裁 判 官 た ち の意 見 お よ び見 解 は決 定 的 な要 素 で あ った(44)。この実 例 に見 られ る よ うに、'ICJと 裁 判 官 の 法 発 見 は、 裁 判 の 活 動 を通 して ケ ー ス ご と に形 成 さ れ る もの で あ る。(最 近 の 「司 法 審 査 」 は形 成 途 上 の法 発 見 で あ る。) (二)国 際 紛 争 の平 和 的解 決 に お け る両 者 の異 同 と衝 突 安 保 理 とICJが 具体 的 に国 際 紛 争 の 平 和 的 解 決 に お い て 両 者 の 異 同 お よ び矛 盾 を現 して い る。 こ の分 野 に現 れ る両 者 の 違 い は基 本 的 に国 際 紛 争 の 「政 治 的 紛 争 」 と 「法 的紛 争 」 の 区 別 お よ び 「政 治 的解 決 」 と 「法 的 解 決 」 との 区 別 か ら生 じるの で あ る。 この 基 本 的 な 違 い は 国 際紛 争 の平 和 的解 決 に お い て具 体 的 な 異 同 と衝 突 を 生 じさせ る。 1.国 際 紛 争 の 平 和 的 解 決 にお け る 両 者 の 一 致 と共 同 的 管 轄 権 安 保 理 とICJは と もに 国 際紛 争 の 平 和 的 解 決 を 目 的 とす る、 また と も に この 解 決 に参 与 す る。 安 保 理 は 「政 治 的機 能 」 を発 揮 して 参与 す る。ICJは 「純 粋 に司 法 機 能 」 を発 揮 して参 与 す る。 こ の 同一 の 目的 の も とで 両 者 は 並 行 的 に そ れ ぞ れ の 機 能 を 遂 行 す る。 この 同一 の 目的 で 両 者 の 並 行 的 な 機能 の 遂行 が 同 一 係 争 事 件 の 場 合 で機 能 交 互 ま た は機 能 衝 突 生 じう る。 しか し、 安 保 理 とそ の 「政 治 的 機 能 」 はICJの 「純 粋 に司 法 機 能 」 を排 除 す る こ とが で きな い。 同様 にICJも 安 保 理 とそ の 「政 治 的 機 能 」 を排 除 す る こ とが で きな い。 こ の状 況 は 同 一 係 争 事 件 に対 す る安 保 理 とICJの 共 同 的 管 轄権 を 要 求 して い る 。 安 保 理 とICJの 共 同的 管 轄 権 はICJの 判 例 上 そ の先 例 が見 られ る。 「人 質 事 件」、 「特 定 経 費 事 件 」 と 「ロ ッカ ビー事 件 」 は両 者 の共 同 的管 轄 権 の 行 使 例 で あ る。 厂人 質 事 件 」 の場 合 、 安 保 理 が事 実 調 査 を始 め た と して も、ICJの 管 轄 権 の 行 使 を 阻 止 す る こ とが で きな か った 。 「特 定 経 費 事 件 」 の 場 合 、 安 保 理 とICJは 同 時 に そ れ ぞ れ の 管 轄 権 を行 使 した。 「ロ ッカ ビー 事 件 」 は多 少 異 例 で あ る一 共 同 的管 轄 権 の行 使 は安 保 理 の権 限踰 越 の 問題 を 引 き起 こ し、 共 同 的管 轄 権 に対 す る管 理 の 必 要 性 を提 起 した、 そ れ は安 保 理 の権 限 踰 越 に対 す るICJの 司法 審 査 の 問題 で あ る。 しか し、 「ロ ッカ ビー 事 件 」 は共 同 的管 轄 権 を否 定 して は い な い 、 む しろ安 保 理 が そ の調 査 と判 断 を終 え

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て決 議 を下 す後 で も、ICJが 依 然 と して そ の管 轄 権 を保 留 す る こ とが で き る、 とい う可 能 性 を提 示 して い る。 共 同 的管 轄 権 は 国 際 紛 争 の 平 和 的解 決 の 理 念 と実 践 に お い て、 安 保 理 とICJの 並 行 的 な活 動 と 可 能 性 を提 供 して い るが 、 この 並行 的 な活 動一 共 同 的管 轄 権 は 同一 係 争 事 件 の 場 合 で は平 行 線 を 越 え て 、 交 叉 す る場 合 に、 権 限 踰越 を生 じ る こ とが あ る。 この法 現 象 は 司 法 審 査 の 問題 を提 起 し て い る一 方 で 、 共 同的 管 轄 権 を 維持 す るた め に、 この共 同 的管 轄 権 の も とで 同一 係 争 事 件 に お け る両 者 の 回避 の 問題 も提 起 して い る。 司 法 審 査 はICJを 主 導 とす る司 法 活 動 を も って安 保 理 の権 限踰 越 と それ に よ り生 じる違 法 性 ・違 憲性 を 排 除 す る、 い わ ゆ る共 同 的 管轄 権 を維 持 す る た め の 強 制 措 置 で あ る。 それ に と もな って、 同一 係 争 事 件 にお け る安 保 理 ま た は司 法 裁 判所 の 回避 原 則 は共 同的 管 轄 権 の保 全 措 置 で あ る。 2.共 同 的 管 轄 権 と回 避 原 則 安 保 理 とICJが 同一 係 争 事 件 に 取 り扱 う こ と に関 して 、 憲 章 お よびICJ規 程 に は明 確 な 許 可 ・ 不 許 可 の規 定 が な い 。 従 って 、 実 定 国 際 法 に は 同一 係 争 事 件 に つ い て 安 保 理 とICJが 抵 触 す る解 泱 をす る こ とが で き る か に関 して は明 確 な 規 定 が な い。 実 定 国 際法 を推 論 して 両 者 とも 同一 係 争 事 件 に取 り扱 うこ とが で き る、 いわ ゆ る共 同的 管 轄 権 を 有 す る と考 え られ るが 、 この共 同 的管 轄 権 を原 則 に して、 両 者 は抵 触 を回 避 す る よ う に しな けれ ばな らな い。 と ころ で、 どの よ う に 回避 す べ きか は重 要 な問 題 で あ る(45)。 安 保 理 とICJの 法 使 用 上 、両 者 の 回避 が見 られ な い。そ の代 わ りに共 同 的管 轄 権 が 主 張 され(46)、 行 使 さ れ る。 安 保 理 が憲 章 第 六 章 に基 づ い て 紛 争 の 当事 国 を相 手 に して 「勧 告 」 を下 す場 合 に、 そ の 「勧 告 」 はICJの 管 轄 権 の行 使 を 阻止 で き な い。 む しろ、 この 「勧 告 」 を最 終 的 な拘 束 力 を 持 た な い決 定 と して 、 紛 争 当事 国 は憲 章 九 四条 に よ り法 的 拘束 力 を持 つICJの 司 法 的判 断 を求 ら6、 そ の判 決 に従 う。 こ の場 合 に は 回避 の 問 題 が 生 じな い。 しか し、安 保理 が 憲 章 第 七章 に基 づ い て 下 す 決 定 は、 法 的拘 束 力 が あ る。 安 保 理 の こ の法 的拘 束 力 の あ る決 定 に対 して 、 同 一係 争 事 件 の 場 合 で はICJは 回 避 す べ きで あ る、 とい う理 解 が あ る(47)。一 方 、 回避 す る必 要 が な い、 とい う理 解 もあ る(48)。も し、 回 避 す る必 要 が あ る とす れ ば 、 国 際紛 争 の平 和 的解 決 にお け る安 保 理 とICJ の共 同 的管 轄 権 を改 造 す る こ とに な る。 こ の場 合 に は、 憲 章二 四 条 の 安 保 理 の 「主 要 な責 任 」 を 絶 対 条 件 とす る。 そ うす れ ば、ICJの 回避 が 憲 章 二 四 条 の 解 釈 か ら推 論 さ れ て、 可 能 で あ る。 も ち ろ ん、ICJ一 方 だ けの 回避 は 司法 機 関 の 活 動 制 限 と司法 の作 用 の縮 小 とい う問 題 を生 じう る(49)。 そ の た め、 回避 原 則 とい うの は安 保 理 とICJの 責 任分 担 を前 提 条 件 にす る必 要 が あ る。 3.℃Jの 司 法保 全 と安 保 理 の紛 争 処 理 と の衝 突 国 際 紛 争 の 平 和 的 解 決 に安 保 理 とICJと の 関 係 を政 治 的 紛 争/法 的紛 争 、 政 治 的解 決/法 的 解 決 の 区別 か ら認 識 す るの は従 来 一 般 的 で あ る。 この 区別 に応 じて、 マ ク ロ的 に 「並 行 的 機 能 遂行 」 原 則 が 対 応 措 置 とさ れ、 ミク ロ的 に 同 一係 争 事 件 の場 合 にICJの 回避 と い う問 題 が 提起 され た 。 しか し、ICJが 国 連 の 主 要 な 、 唯 一 の 司法 機 関 と して 司 法 保全(judicialintegrity)を 維 持 しよ う とす る(`o)。ICJの 司 法 保 全 は単 な るICJだ け の 自己 要 求 で はな い。 国 際 法 の法 発 展 とICJの 司 法 活 動 の展 開 につ れ て法 需 要 と され る。ICJの 司 法 活 動 と司 法 機 能 の 前 提 条 件 は、ICJの 司 法 保 全 で あ る。 そ して、 国 際 法 シ ステ ム 全 体 の レベ ル か らい え ば、ICJの 司 法 保 全 は この 法 シ ス テ ム の 重 要 部 分 に あ た る。 国 際法 の 法 的 制 御 の実 現 はICJの 司法 保 全 を含 め る司 法 活 動 の 完 成 度 に よ

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り左 右 され るか らで あ る。 司法 保 全 はICJの 管 轄 権 の 主 張 と司 法 機 能 の健 全 な発 揮 を 内 容 とす る。 安 保 理 と 同一 係 争 事 件 で管 轄 権 を 主 張 しまた 保 留 す る場 合 、 と りわ け い った んICJが 訴 訟 に入 った 段 階 で 安 保 理 の 決 議 に よ り訴 訟 物 を変 更 さ せ る場 合 に 、ICJの 司 法 保 全 は 問題 とな る。 す な わ ち、ICJの 司法 活 動 と 安 保 理 の紛 争 処 理 が衝 突 す る場 合 に 、 紛 争 の 平 和 的 解 決 の 「主 要 な 責 任」 を 負 う安 保 理 とそ の 行 動 が実 質 的 にICJの 司法 活 動 と司 法 機 能 に影 響 を も た らす 。 この 影 響 で予 定 さ れ るICJの 司法 機 能 、 当事 国 の提 訴 事 件 を 対 象 とす る司 法 活 動 は制 限 され る。 この 影 響 に対 して、 実 定 国 際 法 に は 安 保 理 とICJの 責 任 分 担 に 関 す る明 確iな規 定 が な い 現 状 で は、ICJは 管 轄 権 の主 張 と積 極 的 な 法 使 用 を通 して 司法 保 全 を 維 持 す る しか な い 。 ICJが 司 法 保 全 を 維 持 す るた め に は 、 安 保 理 との 「並 行 的機 能 遂 行 」 原 則 を堅 持 す る と と もに ICJの 積極 的 な 法 使 用 と重 要 な 法 発 見 を す す め る必 要 が あ る。 司 法 審 査 の よ うな 重 要 な法 発 見 を 通 して 司法 の機 能 を強 化 し司 法 保全 を 実 質 的 に可 能 にす る。 一 方 、安 保 理 と同一 係 争 事 偉 に ぶ つ か る場 合 、 回避 原 則 と司 法 保 全 の 均衡 を保 つ 必 要 もあ る。 (三)両 者 の 間 で 階層 関係 の不 存 在 同一 係 争 事 件 に お け る安 保 理 とICJの そ れ ぞ れ の機 能 行 使 に 関 す る実 定 国 際 法 の 明 確 な規 定 が な い代 わ りに 、 ニ カ ラ グ ァ事 件 の司 法 裁 判所 の法 発 見 は こ の問 題 の見 解 と指 針 と して参 照 さ れて い る。 す な わ ち、 こ の法 発 見 は 両者 の 「そ れ ぞ れ異 な るが、 補 助 的」 な機 能 行 使 の 関係 を規 定 して い る。 この 法 発 見 に よ り、 安保 理 とICJと の 関係 は 「階層 関 係 を呈 しな い」 と理 解 す る こ とが で き る(51)。 また 、 両者 の 間で 階層 関係 が 存 在 して い な い とい う の を実定 国 際法 か ら も推論 す る こ とが で き る。 国 際 紛 争 平 和 的 解 決 に関 して は、 憲 章 第 三 六 条 は安 保 理 に は他 の紛 争 解 決 機 関 よ り多 い権 限 と義 務 を 規 定 して いな い 。 そ して、 司法 裁 判 所 に 関 して は、 憲章 第 一 二 条 は安 保 理 の決 定 に服 従 す る と い う意 味 に お い て は 裁 判所 に対 す る い か な る強 制 も規 定 して い な い。 安 保 理 とICJは 本 来 政 治 機 関 と 司法 機 関 と して 違 う分 野 で 別 々 の機 能 を果 た す。 政 治 機 関 と司 法 機 関 は そ の 基本 的 な 区別 が あ り、 別 々 に社 会 に需 要 さ れ る意 義 に お い て階 層 関 係 が な い。 国 際 法 の 分 野 で は 、 安 保 理 とICJが と もに紛 争 の平 和 的 解 決 に携 わ る た め、 と りわ け両 者 が 同一 係 争 事 件 で ぶつ か る こ とが あ るた め、紛 争 解 決 に お いて は両 者 の どち らが最 終 決 定 を下 す か、 は現 実 問題 に な っ て い る。 この現 実 問題 か ら両 者 の関 係 と い う 問題 が 問 わ れ る。 法 体 系 の な か で 国 際法 は特 殊 な 法 で は あ る が、 司 法 機 関 と政 治 機 関 との 並 行 な 別 々の機 能 行 使 と い う基 本 的 な 関係 は安 保 理 と司 法 裁 判所 に も適 用 す る。 こ の階 層 的 な 関 係 を 作 らな い とい うの を 基 本 的原 則 に して、 国際 紛 争 の 平 和 的解 決 と い う具 体 的 な 問題 の場 合 で は、 憲章 通 り に安 保 理 が 「主 要 な責 任 」 を負 う、 司法 裁 判 所 が法 的 問題 に携 わ る一 方 で 、 安 保 理 の 「主 要 な責 任 」 の合 法 性 ・違 法 性 の 司法 審 査 をす る。 そ うす れ ば、 両者 の 並 行 的 な 機 能 遂 行 が 有 効 にで き る。 今 後 、 国 際法 の法 発 展 に よ り、 安 保理 の 「主 要 な責 任 」 とICJの 法 的 制 御 との 関 係 は国 際 法 の現 実 問題 に な る だ ろ う。 (四)均 衡 状 態 の打 破 と非 常 事 態 の 措 置 国 際 法 シ ス テ ム に お い て、 安 保 理 とICJは 上 述 した諸 関係 を も って 均 衡 状 態 を 保 って い る。 両 者 の この 均 衡 状 態 に よ り、 国 際法 シス テ ム 自体 も均衡 状 態 を保 って い る。 しか し、 この均 衡 状 態 が打 破 され る場 合 も あ る。 そ れ は紛 争 の平 和 的解 決 の場 合 にた び た び生 じた 同一 係 争 事 件 の際 の安 保 理 の 権 限 踰 越 で あ る。 この権 限踰 越 に よ り、 も と もと国 際 法 に設 定 され た安 保 理 とICJと の 間 の 並 行

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的 な、 均 衡 の とれ た状 態 は打 破 され る。 この 均 衡 状 態 の打 破 は国 際 法 秩 序 の 非 常状 態 の発 生 を意 味 す る。 この 非 常 状 態 の 措 置 は、 安 保 理 とICJの い わ ゆ る政 治 機 関 と司 法機 関 の 問 だ け の レベ ル で は、 ICJの 司法 審 査 と安 保 理 に対 す る説 明 責 任 の 要 求 で あ る。 1.℃Jの 司 法 審 査 と安 保 理 の説 明責 任 国 際 紛 争 の平 和 的解 決 に、 と りわ けICJと 同一 係 争 事 件 に出 る場 合 に、 安 保 理 の 権 限 踰 越 が も. と も と国 際法 に設 定 され た安 保 理 とICJと の 間 の均 衡 的 な状 態 を 打 破 す るわ けで あ る。 こ の場 合 に、ICJが 安 保 理 の権 限踰 越 に対 して 司法 審 査 を 施 す 。ICJの 司 法 審 査 は、 も と も と国 際 法 に設 定 さ れ た 両者 の 均衡 的 な 関係 を 打 破 して 、ICJが 安 保 理 を越 え る、 と い う こ とを 意 味 しな い。 裁 判 所 の司 法 審 査 は あ くま で もICJと 安 保 理 の あ るべ き並 行 的 な 関 係 を前 提 条 件 に して 実 施 され る。 だか ら こそ、ICJの 司 法 審 査 は安 保 理 の 権 限踰 越 を含 め る合 法 悔 ・違 法 性 を対 象 にす るが 、 安 保 理 の責 任 を糾 明 し違 法 行 為 に対 す る法 的 な 処 罰 を 目的 と しな い。 司 法 審 査 は安 保 理 の 自分 の決 定 と行 為 に 関す る説 明責 任(accountability)を 求 め るの を 目的 とす る。 説 明責 任 は現 代 国際 法 の新 しい法 概 念 で あ る。 説 明責 任 は国 家 の 違 法 行 為 に対 す る 当該 国 の 国 家 責 任 で あ る。 この説 明責 任 は国 家 の レベ ル だ けで は な い。 安 保 理 の 決 定 と行 為 の合 法 性 ・違 法 性 を 司法 審 査 の対 象 にす る と い うの は、 違 法 性 に対 す る説 明 責 任 は国 際 組 織、 安 保 理 の よ うな上 位 国 際組 織 に も必 要 で あ る。 安 保 理 が 自分 の 決 定 と行為 に関 して 説 明 責 任 を 負 うの は、 そ の恣 意 性 を抑 制 す る こ とが で き る。 そ して 、 安 保 理 の 法 発 見 に 関 す る説 明 を 一 般 的 な説 明 で あ る とす れ ば、 憲 章 第 七 章 に付 与 され る紛 争 の 平 和 的 解 決 に関 す る いか な る決 定 と行 為 に 関す る説 明 は安 保 理 の重 要 な説 明責 任 にす る必 要 が あ る。 この 説 明 責 任 が あ るか ら こそ 、 安保 理 の合 法 性 ・違 法 性 とい う従 来 国 際法 上 の空 白 の問 題 を は じめ て 国 際 法 の対 象 にす る こ とが で き る。 別 の角 度 か らい え ば、 説 明 責 任 を 負 う こ とで 、 安 保理 は諸 国 との 間 、 国 際社 会 との 間、 権 利 ・ 義 務 的 な 関係 を構 築 す る ことが で き る。 こ の権 利 ・義務 的 な 関 係 は現 代 国 際法 秩 序 の権 利 ・義 務 的 な法 秩 序 とい う性 質 を決 め る構 築 要 件 の 一 つ で あ る。 2。 司 法 審 査 、 国 際憲 法 が 集 団 安 全 保 障 体 制 を 取 り替 え られ る か ICJが 安 保 理 の 違 憲 に対 して 司法 審 査 を実 施 す る こ とは、 そ の 司 法 活 動 の頂 点 で あ る。 司法 審 査 の対 象 は安 保 理 の違 法 性 で あ る。 司 法 審 査 の 正 当 性 と妥 当 性 の 根 拠 は 、 国連 憲 章 で あ る。 国連 憲 章 を も って政 治 機 関 の決 定 と行 為 の 合 法 性 ・違 法 性 の 司 法 審 査 を 施 す の は、 そ の前 提 条 件 と し て、 憲 章 の憲 法 と して の地 位 が あ る こ とで あ る(52)。実 際 上 、 憲 章 は五 十 年 以 上 の法 使 用 と法 発 展 に よ り、 国 際憲 法 志 向 の憲 章 とな って い る。 憲 法 と して の 憲 章 を 基 準 に して施 さ れ る司 法 審 査 は憲 章 を そ の正 当性 と妥 当性 とす る こ とが で き る。 そ れ 故 に、 司 法 審 査 は 政治 機 関 の違 憲 の審 査 を可 能 にす る(53)。 一 方、 国 連 憲 章 が 国 際憲 法 志 向 とい って も、 そ こに は憲 法 が 存 在 して い な い。 そ れ だか らこ そ、 安 保 理 を主 導 とす る安 全 保 障 体 制 は憲 法 の替 わ りに憲 章 の 頂 点 とな り、 活 動 を実 施 す る こ とが で き る。(こ の意 味 か ら いえ ば、ICJの 司 法 審 査 は 安 保 理 の違 憲 行 為 の 審 査 をす る こ とが で き る わ け で あ る。)し か し、 司法 審 査 の 目的 は 国 際 憲 法 を も っ て集 団安 全 保 障 体 制 を取 り替 え る の で は な い。 司法 審 査 は 憲章 第 七 章 に基 づ く安 保 理 の義 務 の 履 行 の 際 の 法 律 問 題一 権 限踰 越 は憲 章 第 七 章 の範 囲 を越 え る不 法 行 為 に関 す る審 査 で あ り、 安 保 理 の 権 限 踰 越 に対 す る現 状 回復 を求 め る。 そ の た δ6、司 法 審査 は安 保 理 を取 り替 え、 安 保 理 を中 心 とす る集 団 安 全 体 制 を取 り替 え る の で は

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な い。 そ して 、 取 り替 え る可 能 性 もな い。ICJの 司法 審 査 は法 の 分 野 に属 され 、 安 保 理 の集 団安 全 保 障体 制 は政 治 の分 野 に属 され る。 法 の 活 動 と政 治 の 活動 は と もに 国 際社 会 の法 需 要 で あ る。 国 際法 の実 現 とい う大 きな 共 通 の 目標 に お いて は、 安保 理 が集 団 安 全保 障体 制 を発 動 す る 際 の合 法 性 ・違 法 性 を、ICJが 司 法 審 査 を も っ て担 保 し監 督 す るが、 法 の 活 動 が 政 治 の 活 動 を取 り替 え る可 能 性 が現 行 国 際 法 上 には そ の 可 能 性 と必 要 性 は 推論 で き な い。

1.同r係 争 事 件 にお け る安 保 理 とICJの 機 能 、 両 者 の あ るべ き機 能 区 分 、 いわ ゆ る役 割 分 担 と い うの は、 国 際法 の新 しい問 題 で もあ り、 ま た 国 連 シス テ ム ・憲章(法)シ ス テ ム制 定 当初 未 解 決 の ま ま の 問題 で もあ る。 この 未 解 決 の 状 態 は 国連 シス テ ム ・憲章(法)シ ス テ ム 内 の機 能 不 全 を 引 き起 こ す こ とが考 え られ る。 同一 係 争 事 件 にお け る安 保 理 とICJの 機 能 区分 また は役 割 分 担 の 混 同 は こ の機 能 不 全 の体 現 で あ る。 2.同 「 係 争 事 件 にお け る安 保 理 とICJの 機 能 区分 ま た は役 割 分 担 の 混 同 と い.う問題 は国際法 の従 来 の法 構 造 に規 定 され 、 また 当 然 に この 問題 の 進 展 お よ び解 決 は い ず れ も従 来 の 国際 法 の法 構 造 に関 わ る。 国 際紛 争 の 平 和 的解 決 に お け る安保 理 とICJの あ るべ き役 割 を分 担 し、 そ れ を 国 際 法 化 にす れ ば、 まず 国 際 法 の 根 本 に触 れ る。 そ れ は 国 際 法 の 法 と政 治 との緊 密 な一 体 性 を どれ だ け克 服 で き るか の こと に な る。 こ の克 服 は国 際 法 の法 的制 御 の 実 現 を決 め る一 方 で、 この一 体 性 を前 提 条 件 に して 国 際法 の法 的 制 御 を 実 質 的 に実 現 させ る必 要 が あ る。 一 連 の係 争 事 件 に提 起 さ れ た安 保 理 とICJの 健 全 な 関 係、 と くに ロ ッカ ビー事 件 に提 起 され たICJ の 司法 審 査 とい う法 需 要 の よ うに、 も し司 法 機 関(例 え ば、ICJ)の 司法 審 査 を 新 しい 法 機 能 と して 国際 法 シ ス テ ム に付 け る と、 憲章 の 「国 際 憲 法 」 お よ び 憲法 シス テ ム の 国 際法 とい う可 能 性 、 国 際 法 に国 連 機 関 の行 為 の 合 法 性 とい う価 値 、 お よ び 司法 審 査 の 限界 な ど国 際法 の法 的性 質 、 あ るべ き法 機 能 と法 使 用 の テ クニ ック とい う一 連 の重 要 な 問 題 が生 じて くる。 これ らの 問題 の解 明 ・解 決 は今 後 の 国際 法 の 新 しい法 発 展 を 進 め る こ とが で き る。 3.同 一 紛 争 事 件 に お け る安 保 理 とICJの 役 割分 担 お よ び そ の 問題 に惹 起 され たICJの 司法 審 査 な どの問 題 は、 国 際法 の 「法 の欠 缺 」 を 指摘 して い る。 安 保 理 の決 議 の合 法 性 、ICJの 司 法 審 査 は国 際 法 の 根 本 的 な 問 題一 民 主 主 義 と国 際法 制 度 の 性 質 を 問 って い る。 これ らの 問題 の解 決 済 み の国 内法 、 ま た は よ り完 成 度 の 高 い 国 内法 制 度 に比 べ れ ば 、 国 際法 の法 と して の未 熟 、 法 の欠 缺 と い う の は依 然 問題 と して 残 って い る。

(1)19921CJRep.3,QuestionsofInterpretationandApplicationofthe1971MontrealConven- tionArisingfromtheAerialIncidentat:Lockerbie(LibyaArabJamahiriyav.United:King-dom,LibyaArabJamahiriyav.UnitedStatesofAmerica).

(2)ThomasM.Franck,"銃 θ`Poω2劉soゾ 助 μ θoゼα'伽'」 佩 加Z∫ 伽 σZ励3α オθG%α γd伽oグ 乙W L2gα 」づ吻?",AJIL,vol.86(1992),p.519.

(3)同 一 係 争 事 件 の 処 理 に お け る 安 保 理 とICJの 関 係 お よ び 国 際 法 シ ス テ ム の な か で 安 保 理 とICJ の 関 係 と い う 問 題 に 対 す る 研 究 は 最 近 の 国 際 法 学 の 重 要 な ト ピ ッ ク ス で あ る 。 こ の 問 題 に 関 す る

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研 究 実 例 は 主 に 以 下 の 諸 例 が あ る: .Thor△asM.Franck,shpra算ote2;.R.ST.J.、M即donald, "伽 π9吻R

召Zα伽 ∫ ∂θ鰡 θ渤 θ.碗27鰡 伽 αZC・ 魏(ゾ 加 惚 απ伽 θSθ ・π蜘C・ π鰡(ゾ 伽

.乙碗 惚d 一く庸 ゼoηs",CanadianYearbook:oflnternatiollalLaw,vol.31(1993),pp.3-321.Vera

Gowlland-Debbas,"丁 舵1∼ θ♂α渉ゼoηs勉 ρ 加 オω θ召π'加1窺 θ7ηα'ゴoηαZCoπ γ孟qプノ初sあ62α ηdオ 加Sθoπ 一.

吻 〃Co%ηc〃 勿 魏 θLづ ψ 渉qプ 跏 θ 五〇〇κ6γ∂ゴ6Cαsθ",AJIL,vol.88(1994),pp.643-677;Dapo

Akande,"Tlz21傭 θγπα'ゼo%α!Co%7渉qプ ノ磊s孟∫cθαπ4'舵Sθo%γ ¢瑠Co襯cゼ ゐ お 丁舵72Roo〃z/bγ"zθ

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(1997),pp.30昏343;KeithHarper,`IDo召 ∫'加 乙勉 伽d翫'ゼoηsSθoπ7疹 勿C6観cπ 血 肥 魏 θCo吻 θ一 'θηcθ'o/1c彦 αsCρ πγ孟 αη4ゐ θgゼsZαオ伽 θ?撃,NY.Uni.J.ILP,vol.2マ(1994),ppユ03-157;Jose

E.Alvarez,"ノ 翩g勿g'孝132S2cπ γ吻 .Co吻cπ",AJIL,volgO(1996)別'ppユ 「39;Bernhard

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(1993),pp.184-198;杉 原 高 嶺 「同 「 紛 争 主 題 に 対 す る 安 全 保 障 理 事 会 と 国 際 司 法 裁 判 所 の 権 陵 」 同編.r紛 争 轍 の 甲際 法 』(旱 省 堂・ 一 九 九 七 年)五 〇 三 匝;頏r (4)国 際法1と国 際政 治 とξ)密接 不 可 分 性 に関9て ・ 法 社 今 学 的 な .アブFト チ で 説 明 す るρ)}ま・.廣瀬 和 子説 で.ある。.廣灘 和 子.r甲 際 珠 社 会 学 』.(東京 大 学 出 版 会 ・.一れ 九九 年)二 ニ ー ∼二 二 四 頁・ (5)こ.こ の 「自己言 及 的 な法 シス テ ム」 の 理 論 構 成 ほ、:ル肖 マ ンめ 「自己 的 シ ズデ ム理 論 」 に ょ わ 国 際法 の法 と政 治 の密 接 不 可 分 性 とい う問 題 に対 す る実 証 研 究 の た めで あ る。 ル ー マ ン著/土 方 透 訳 『法 社 会 学 的観 察 』(ミ ネ ル ヴ ァ書 房 、 二 〇 〇 〇 年).亠 ○ ∼ 一 九頁 。 (6) .石本泰雄 「国際法 ρ構造転換」高野雄一綿《 国際 関係法の課題》(有 斐閣・一九八八年).八頁。 (7)杉 原高嶺 .「国際裁判の機籠的刮約論の展開」.国際法外交雑誌九六巻四.・五号・71五マ頁6 .(8)19621CJReや.49,Certaine文penses6ftheUnitedNatio且s(Article17,paragraph2,0fthe Charter),AdvisoryOpi皿ionof20July1962. (9)ibid,pユ76.

(10)ibid,p.189,JlPercySpehder,sep.op、 こ の ケ ー ス で 言 及 さ れ たICJの 司 法 審 査 は た だsoftで 、

厳 格 で は な い 審 査 と し て 提 起 さ れ る 。. (11) (12) (13) (14) (15) (16) ibid,p.181。 .19781CJR ep.62,AegeanSeaContinentalShelfCase.(Greece.v.Turkey), .ibid,p.10. ibid,P.3. ibid,p.12. 19801CJRep.64,CaseConcerhingUnitedStatesDiplomaticandConsularStaffinTehran (UhitedS七atesofAm6ricanv.Iran). (17)ibid,p.3.. (18)19841CJRep.70,CaseConcerning..MilitaryandParamihtaryActivitiesinandAgainst Nicaragua,(Nicaraguav.UnitedStatesofAmerica). (19) (20) (21) (22) (23) ibid,p.46. ibid,P.46. ibid,P.47. supra.n6te1. ibid,ICJの 司 法 審 査 権 と い う ロ ッ カ ビ ー 事 件 の 際 の 判 事 た ち の 法 発 見 は 、 と く に 以 下 の 判 事

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