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「ランダウのご神託」への挑戦:フェルミ液体論の深化?

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Academic year: 2021

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「ランダウのご神託」への挑戦:フェルミ液体論の深化

1950 年代後半に発表されたランダウのフェルミ液体論 は,物質中の電子集団を典型とする「相互作用するフェル ミ粒子系」のふるまいを記述する有効理論である.超流動 ヘリウム 3 から半導体,超伝導,金属磁性におよぶ広範な フェルミ粒子系の低温挙動を記述する標準理論としての地 位は,今日もゆらいでいない.相互作用を無視した自由電 子は波として空間を伝わり,その状態は波数とスピンで確 実にラベルできる.このラベルが,粒子間に相互作用を ゆっくり印加しても確実に受け継がれるというのが,ラン ダウ理論の根本的な仮定(断熱接続の原理)である.要は, 独立粒子としての個性(波としてのコヒーレンス)が,相 互作用があっても受け継がれるということだ.この相互作 用の衣をまとった独立粒子は準粒子とよばれる.準粒子の 集団は自由電子ガスと同様に,明瞭なフェルミ面をもつ. 準粒子描像の成立とフェルミ液体論の有効性は同義である. では,このご神託のごとき断熱接続のプロセスを微視的 に追いかけるには,どうすればよいのか? それにはまず, フェルミ面から遠く離れた高エネルギースケールから出発 し,徐々に下降しながら相互作用効果をくり込んで,行き 着く先にフェルミ面が存在するか否かを検証する必要があ る.現実の系の多様性を考慮しつつこのくり込みの思想を 具体化する作業は,凝縮系物理学における難問の 1 つだ. 希土類金属化合物のなかには,相互作用効果によって電子 の有効質量が自由電子の 1,000 倍にも達する,重い電子系 とよばれる系がある.このような系でも,物理量のふるま いが元来のランダウ理論からずれることはあっても,準粒 子描像そのものが脅かされることない.これは不思議なこ とだ. 準粒子描像そのものが脅かされるのは,電子が棲息する 空間の次元が低く相互作用が強い場合,つまり電子の身動 きが強く制限される場合である.たとえば純粋に 1 次元の フェルミ粒子系では,準粒子が完全に消失し,系の励起は 集団運動で覆い尽くされる(朝永・ラッティンジャー液体). ランダウ理論に対するさらなるチャレンジが,銅酸化物 高温超伝導体における電子の挙動である.そこでは銅と酸 素からなる 2 次元面に閉じ込められた上に強くクーロン相 互作用する電子が超伝導を起こす.このような系でも,準 粒子はその独立性を守り切れるのか.準粒子描像のほころ びを通してフェルミ液体論の本質に迫る試みが,理論・実 験両面から続けられている. 会誌編集委員会 ©2016  日本物理学会

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