後入先出法とアメリカの司法
40
0
0
全文
(2) 第50巻. 第2号. れを認めなかった事例である。 そのため, Kansas City Structural Steel社はこれを不服 '. として内国歳入局長官を訴えたのである ])。 問題はKansas City Structural Steel社にお ける棚卸資産の評価方法にあった。 基礎有高法が焦点となる。 1929年5月148. 巡回控訴裁判所(Circuit Court of Appeals, Eighth Circuit.)はこ の事件に対する判決を下した。 その当時 製鉄業や非鉄金属業など少数の業種はリスク. ・. ヘッヂングの方法として基礎有高法を適用していた。 甚礎有裔法は棚卸資産の数贔を恒常 的に維持し, 基礎数量については墓準価格を設定する。 そこで , たとえ価格の変動が生じ ても損益計算への影響を最小限にくい止めることができたのである。 McDermott地方判事(District Ju dge)は内国歳人局長官の立場を支持する。 McDer mott判事の支持 す る理由を以ドに要約す る こ と に し よ う。 こ の訴えは租税訴願IT (Board of Tax Appeals)の裁定によるところとなる。Kansas City Structural Steel社 は総額7,656.74ドルの追徴金を1�服として訴えを起こしたが . 内国歳入局長官が下した過 少申告との評価を支持する。 事実の確認については委員会の審査に委ねる。 いまのとこ ろ, 事実を裏付けるような証拠を示す記録は提出されていない。 また, 記録のほかに何か 証拠があるかどうかは はっきりしない。 できる限り事実を見つけ出すことにつとめて, そこから正しい判断をするよう努力するほかはないのである。 ここで提起する問題は, Kansas City Structural Steel社の課税所得について内国歳入 局長官が鉄鋼業の棚卸資廂に対して関与する権限があるかどうかである 12)。 緊急を要する 棚卸資産, あるいはその準備のための製品について, Kansas City Structural Steel社は 恒常的な有高としてそのほかの残高とは区別して処理していた。 それは棚卸資産というよ りは設備としての性格を有していたのである。 そこで, 訴えの内容は次のようなもので あった。 Kansas City Structural Steel社は 建築物, 橋梁 タンクなどの建設に要する鋼板の 製造をする会社である。 鋼材を製造しているのではない。 従って, 棚卸高に完成品はな い。 鋼材は製鋼工場に注文してつくられる。 そうした鋼材を消費した時, 売上に取替原価 をチャ ー ジした。 売上原価には取替法を採用していたのである。 消費したのは同種, 同質 の鋼材であるとみなしたのである。 Kansas City Structural Steel社は建物や橋の鋼鉄製品の事業が上である。 鋼材のため. (I) (2). KansasCityStructural Steel Co. v. Commissioner of Internal Revenue.1929. 基礎有高法は製鉄業. 非鉄金属業などの業種で適用されてきた。 Warsow (1922), Walker (1936). Arthur (1938を参照したい。 ) -106 (254)-.
(3) 後人先出法とアメリカの司法(毛利) の製鋼工場の金額で契約価額が決まる。 製造原価に利益を加えた額が契約価格である。 契 約価額が決まると銅材を発注する。 KansasCity Structural Steel社の訴状から推定でき る取引の内容はこのようなことであった。 会社の名称は鉄鋼会社であるけれども. どちら かといえば建築請負人に似ているのである。 1916年12月31日 緊急時に備えて5,554トンの鋼材の棚卸があった。 その原価は, 100ポ ンドにつき1.70ドルであった。 1.70ドルの価格というのは, 1895年以来. 正常時の平均単価 であった。 1916年12月31日から1921年12月31日まで. 鋼材は上記の訴状にあるように処理 された。 棚卸資産の残高は. 年度中に5,554トン以下に変動した。 その中から, 鋼材は消費 され取り替えられた。 1916年以降 残高が過剰になることもあったが. ある時は過小に なり4,CXX>トンまた11,CXX>トンに近いこともあった。 1917年および1921年を除けば. 期未の 残高はいつも5,554トンを超えた。 期末の残高が5,554トンを超えた時. 超過分はいつも現 在原価で評価され. それに対して税を支払った。 1918年から1920年にかけての課税所得計算において, KansasCity Structural Steel社 はこの緊急時の鋼材を固定的な残高の一 部として扱った。 そして, 100ポンドにつき1916 年の原価でそれを評価したのである。 緊急時の銅材が固定資産と同じように考えていたこ とに注意がしたい。 売買契約の内容は次のようなものであった。 1916, 1917, 1918, 1919. 1920年の各年度末に. 会社は1916年度末の原価で5,554トンの製品を評価した。 あるいは, 100ポンドにつき1.70ドルと評価した。 1916年度末に同種同質の製品の残高はなかった。 鋼材が100ポンドにつき1.70ドルの原価であることを確認するのが不可能なので,内国歳入 局長官は 最近に購入した鋼材の市場価格で棚卸資産を評価した。 先入先出法を適用した のである。 それというのも. 消費する際に従業員は鋼材の底の方でなく上澄みから払い出 すと仮定しているからである。 このような仮定がフェア ー であるかどうかは. ここでは問 わないことにしよう。 KansasCity Structural Steel社はあえてそのように主張するので ある。 二通りの棚卸資産の評価方法によって. 違った結果が生じた。 内国歳入局はKansas City Structural Steel社 の 所得を18,230.10ド ルと計算 し た。 そ の金額 はKansasCity Structural Steel社が申告した所得額を超えていた。 そこで. 内国歳入局は7,656.74ドルの 追徴金を請求したのである。 租税訴願庁への不服申し立ては不成功であった。 判決をここ で検討することにしよう。 納税義務者は. 緊急時に必要な鋼材を一 種の固定資産として処理した。 1918年の歳入法 のもとで銅材の価格が下落し棚卸資産の評価損失が発生したが, KansasCity Struc-107( 255)-.
(4) 第50巻. 第2号. tural Steel社は不服申し立ての請求は提出しなかった。 1921年12月31日, 価格が正常に 戻った後に, 鋼材の価格が1916年の水準 (1.50ドル)以下に下落した時, 納税義務者は内 国歳入局の考えをそのまま黙認した。 そして納税義務者は緊急時に備えた棚卸資産を原価 あるいは低価法で評価した。 1916年12月31B. 納税義務者は手持ちの100ポンドあたり1.70 ドルの鋼材を5,554トンもっていた。 また. 100ポンドあたり1.50ドルの同種の鋼材を5,554 トンもっていた。 1921年12月31日, 手持ちの同じ数量の鋼材があった。. 5 年問ずっと緊急. 時のために棚卸資産を準備してきたが, 納税義務者はそこからなんらの所得も得なかっ た。 この点は原告の主張のポイントである。 鋼材の価格が上昇する時期に, 内国歳入局は同種の鋼材の評価益に課税することの正当 性を主張した。 また, 租税訴願庁は鋼材価格の平均上昇率で所得に課税するよう内国歳入 局にもとめた。 しかし, 価格が下落する場合に納税義務者の課税を猶予することには反対 した。 それは実現 した損失でないからである。 納税義務者はそのことについて反対しな かった。 損失が発生したとしても そのことによって租税訴願庁は課税の支払いを猶予す ることはしない。 評価損は税そのものでない。 実現 利益でなければ課税所得にならないの である。 根本問題は, 緊急時に備えた棚卸資産の評価益が所得に相当するということである。 こ の立場を支持するとしても. その前に, 内国歳入局によるいくつかの方針を吟味する必要 があろう。 1921年に鋼材の価格が下落した。 KansasCity Structural Steel社は 1921年 に鋼材価格が上昇した時に適用するルー ルと, 下落した時に用いるルー ルに違いがある。 内国歳入局は課税制度には一 貫した考え方がなくてはならないという。 それは納税義務者 が一 つの制度を採用する場合. 経営状況のよしあしに関係なく堅持すべきであるとの考え 方である。 そして, 政府は納税義務者に協力して迅速かつ適切に処理するようにしなけれ ばならない。 公正にして健全なルー ルが政府の都合でころころ変わるようではいけない。 それでは納税義務者は一 貰した処理が適用できないのである。 もし, KansasCity Struc tural Steel社の不服申し立てが正しいとすれば, 争訟によって新しい)レ ー ルが確立した ことになる。 KansasCity Structural Steel社は 5,554トンをこえる鉄鋼の過剰在庫の増加を所得の 一部に含めたとされる。 とはいえ, そのことによって政府の立場の正しさを証明したとの 結論にはならない。 KansasCity Structural Steel社は 緊急時に必要な数量が経営にと り公正な大きさであることを認識していた。 問題は超過の数量である。 5,554トンは 年間 30,CXX)トンを製造する経営にとっては適切な準備であった。 そこで. その数量を超える分 -108( 256)-.
(5) 後入先出法とアメリカの司法(毛利) を超過数量と考えることにしよう。 問題は基礎有高法が想定する基準量と基準価格にあっ たのである。 ともかく. 棚卸資産の評価方法としての甚礎有高法の存在意義そのものが問 われているのである。 棚卸資産のなかから所得を反映するものは分離する。 問題はその額を棚卸資産として考 慮するか否かである。 所得に算入しない企業もたくさんある。 小売業者が販売する製品や 商品のなかにも利益をつけて売っているのか. それとも原価のままで売っているのか見極 めるのは難しい。 売上原価のほうが売上収益より大きいことさえありうるであろう。 棚卸 資産といっても単に残高を意味するだけでなく, 企業活動の継続性にとって維持すべき必 要量なのである。 KansasCity Structural Steel社は鋼鉄部品の製造業者であり、 また建造者でもあって、 商品の生産仕人れ, 販売のいずれにも関与していない。 基礎有高法を所得計算として認 めるべきか否かについては 以下の点を考慮すべきである。 はじめに, 棚卸資産の評価益が所得であるか否かを峻別するのは歳人局長官の権限であ り, 裁判所の任務ではない。 もし, 企業の方に韮礎有高法の必要性を示す証拠があるのな らば, 租税訴願庁の決定が尊重されるべきである。 多くの支持がえられればよい。 他方, 基礎有高法が所得を反映するよりむしろ歪めることがわかれば, KansasCity Structural Steel社は内国歳入局の決定に従わなければならない。 いずれにしても ここは裁判所の 判断が基準になる。 歳人法は課税の公平性を保つためにあり, 所得を徴収するためのもの ではない。 施行規則は歳入法のようにはどこでもあてはまるわけではない。 歳入法は所得計算に棚 卸高を考慮に人れるように規定している。 歳入局長官の見解でも. 納税義務者の所得計算 に棚卸高はなくてはならないとしている。 まだ, 問題の決着はついていないが, 歳入局長 官の見解は棚卸高を評価するのを正当であると認めていることになる。 緊急に備えた鋼材の棚卸高はKansasCity Structural Steel社の所得計算に必要であ ろうか。 食い込みの前また食い込みがある場合, KansasCity Structural Steel社は棚卸 高に完成品がないことが確約できるだろうか。 KansasCity Structural Steel社は小売業 者でもなければ, 卸売業者でもない。 注文をうけ, 売買契約をして鋼材を製造する。 そこ には先ず契約があるのである。 そのあと制作が始まる。 建造契約あるいは売買契約を受け て, 鋼材が製鋼工場から注文され, つくられる。 つまり. 銅材は市場で購入するのである。 工事の進行につれて, 発注した鋼材は船で運ばれる。 鋼鉄製品の製作には鋼材がどうして も必要 であるからである。 それから. 鋼材が消費され, 取り替えられる。 問題となってい - 109( 257)-.
(6) 第50巻. 第2号. る緊急時に備えた鋼材がそれに当たるのである。 鋼材が消費される時. 取替原価で売上収 益にチャ ー ジされる。 鋼材は同種で同質であるからである。 次のような状況を考えなければならない。 Kansas City Structural Steel社はKansas で鋼鉄を製造している。 ビルや橋梁の建築の仕事は炉からはなれたところである。 船便の 遅れを取り戻すために, また. 炉の近郊に位置する設備の建設契約を履行するために, 頼 みとする在庫が必要なのである。 緊急時に備えた在庫であるから. それによって利益が実 現するはずがない。 そうした在庫の準備はたいしたことはないのである。 利益はたとえ あったとしても たかがしれている。 利益は, 炉で鋼鉄を製造する代わりに. 鋼材を借り 受けてきても同じである。 事実, この準備する鋼鉄の半分は契約上の損になりがちなので ある。 1916年12月31日, 炉はいつもと同じように稼働していた。 基準となる数量はあくま でも緊急時に備えたものであり. そこから利益を得ることはない。 また. 市場価格の変動 とは関係がない。 建築物を引き渡した時に販売益か販売損があるだけである。 しかし, そ れまでは. 起勇機 クレ ー ン. 建築物にすぎない。 これらは経営にとって有用である。 売 却されるまで, 利益は実現しない。 従って. 課税もできない。 それは単に帳簿利益を示す にすぎないのである。 納税義務者が炉から100ポンドあたり1.70ドルで銅材を仕人れて, 4ドルの販売価格で 販売すると利益を得る。 そして. 納税義務者がこの利益を別の鋼材を購入するのに再投資 したかどうかは重要ではない。 納税義務者は販売価格を4ドルと見積もって鋼材を契約 し, 工場から発注した。 もし. 100ポンドあたり1.70ドルの橋桁が炉から今日つくりださ れ, 橋に投入されて, 次の日に4ドルの橋桁と取り替えたとしよう。 緊急時に使用するた めに4ドルの橋桁を保有する限り利益はないのである。 いうなればKansas City Struc tural Steel 社は商人のようなものである。 この会社は在庫を補充しつつ, いつも取引の 需要に見合うよう手持ちしておく。 しかし, 問題がある。 第 一 に, 棚卸資産は商人の取引のために必要である。 まず. 仕入れてその後に売る。 販 売するために製品はあるのである。 販売しない人にとって棚卸資産は必要ない。 販売する ための製品がなければ, 先ず売買契約をした後に購入する。 さらに. 商人は売買活動のさ なかに予備の在庫をもたない。 消費した品目をすぐ取り替えるだけである。 緊急に調達す る必要があっても また不足が生じても納税義務者の利益とはしない。 利益に影響するこ とはないのである。 納税義務者が緊急時の在庫を削減するとき彼は1916年の100ポンド あたり1.70ドルの価格をこえるまで思案しなければならない。 しかし. 彼がそれを処分す るまで所得はない。 所得は単に鋼材を所有するだけでは発生しない。 この事実は, 1916年 -ll0(258)-.
(7) 後入先出法とアメリカの司法. rn利). 12月31B, この鋼材が100ポンドにつき1.70ドルの原価であることを示している。 年度中 に,彼はそれをア ップし. 緊急時の準備として用いた。 1921年12月に所得計算に算入した。 その日の鋼材は100ポンドにつき1.50ドルの価値だった。 1916年より20セント少ない。 し かし,その所有により,政府は18,CXX)ドルの利益を予想した。 事実,所得は年度を基礎に計 算する。 当年度の損失と前年度の利益とを相殺することはできないのである。 しかし, 当 年度に実現した利益はない。 基準数量に食い込みがあっても 利益は実現しない。 KansasCity Structural Steel社は, この緊急時に調達した鋼材から年度中に何らかの 利益を得たわけではない。 それはこの会社が企業活動をするために必要 な設備の一 部だっ た。 会社は利益を得るのに, この在庫を棚卸資産に含める必要 はなかった。 そうすれば 納税義務者の真の所得を反映するより, かえって歪めるものと考えたのである。 こうした決定は企業の特殊な事情によるものである。 KansasCity Structural Steel社 が商人か製造者であるなら, 棚卸資産は利益を得るためのものである。 そのためには維持 すべき棚卸高の最低量が必要 である。 KansasCity Structural Steel社が利益を得るため に製品を緊急に調達した事実は免れることはできない。 以上がMcDermott地方判事の陳述の概要である。 彼は歳人局長官の考えに賛意を表 し, 桂礎有高法を否認していることがわかる。 また,VanValkenburgh判事はMcDermott判事の意見に賛成して,この裁判に次の ような意見を述べる。 法律の基本目的は納税義務者の所得に公平に課税することにある。 課税所得を恣意的かつ意図的に減らしたり, 増や したりすることはできない。 条文がいう ように, 真の利益が反映されるべきである。 このH的の達成のためには, 会計方法を規則 的かつ継続的に納税義務者に適用すべきである。 しかし, 所得を正確に計算するために各. r する売買契約を輯簿記人するには大きな困難が待ち受けている。. 年度に完. 政府として. も, 納税義務者に不当な負担を課すことはできないのである。 所得は, 資本や 労働また双 方の結合から得られる利得として定義されている。 以上のように, 判事の考えは基礎有高 法を課税の公平性という観点から述べたものである。 Woodronjh地方判事の意見 これに対して, Woodronjh地方判事は反対 の立場をとる。 その陳述の概要を以下に示 すことにしよう。 納税義務者が商人であれば, 当年度の真の所得は販売からの収人と売上 原価との差額であった。 差額は所得として計算することができる。 徴収官は会社の根簿の 数値から金額を明らかにできなかった。 というのは 鋼鉄製品に対して鋼材を平均的に チャ ー ジしたからである。 歳入法の条文にあるように, 平均値より小さい原価である手持 -111( 259)-.
(8) 第50巻. 第2号. ちの在庫から補充したのである。 袋 小路に人るのをさけるために. 双方の当 事者は棚卸資 産に目を向けた。 徴収官がよりどこ ろ にしたのは棚卸資産の条 文であった。 しかし. 歳入 法に明示はなかった。 納税義務者と徴収官はともに棚卸資産に目を向ける。 争点は納税義 務者がつくった棚卸資産の種類にあった。 1917, 1918, 1919年に鋼材の価格が上昇して. 期末に手持ちの棚卸資産の平均的 な評価 によって納税義務者は大きな利得を得た。 その結 果 所得税が大 きくなったのである。 1920年に価格が下落した後. 納税義務者は評価減や税の減少によって利得を得た。 現金収 入とはならなかったのに利得に税を支払ったわけである。 しかし. 税を支払わないでよい とする根拠はない。 それは. 所得税の評価に棚卸資産がいかに大きく依存しているかを意 味している。 納税義務者は貨幣で利得を得るわけではない。 問題は棚卸資産の評価益にあ るのである。 棚卸資産の仕入原価が期 間 中 に上昇し. また下落した多くのケ ー ス がある。 この納税義 務者の状況もそれと同じことであるとみてよい。 そのように考えれば 多くの人たちは棚 卸資産の評価損による税の救済を得ることができるのである。 鋼材に対する棚卸資産の評 価方法は, 評価益を所得としないようにする。 そして. 税を免れる。 評価損が生じた場合. 所得を減少させることによって税の支払いを免れることができる。 しかし. こうした棚卸 資産の評価方法は決してよき会計慣行に合致するものではない。 これは企業の利益を隠す という明 白 な 理 由 がある。 適正な損益計算の目的を偽るものである。 それが恣意 的であることは1916年12 月 31 B . 鋼材の価格が安定した時期 にはっきりし た。 その時期に手持ちした鋼材の数量を決めたのである。 価格が上昇する時にも評価増を することなくそのままにしている。 とこ ろ が. 価格が下落する時期には評価減して. 低価 法で評価している。 このようにして鋼材の会計処理を行っている。 各期 間の状況をまった く考慮していないのである。 課税所得の計算はそれとともに信頼性を失ってしまった。 もちろ ん. 会社は手持ちの適正な鋼材の在庫をおいて. 恒常的に価格が上昇する 市場で 投機による利得を得た。 しかし. 基礎有高法による棚卸資産の評価方法は事実をおおい隠 し. 政府の歳入をそれだけ少なくするのである。 もし. それが期 間 中 . 炉の周辺に鋼材を 保有しているのであれば 議論の余地があるかもしれない。 しかし, 実際はそうでない。 鋼材はいつも手持ちとして保有していて, 必要なときに使用した。 すべての売買契約に応 ずることはできないが. 注 文にすばやく対応した。 売買契約を履行するのに不都合はな かったのである。 それは恒常的な在庫があってこそ可能なことであった。 納税義務者は鋼材の在庫を運搬して. それを事業で用いなければならなかった。 1912年 - 112 ( 260)-.
(9) 後入先出法とアメリカの司法(毛利) には在庫 は1,500 ト ンほどに減少した。 192 0年には11,(XX) ト ンほどの大きさに増加した。 し か し, 数量 と価格が変動した。 基準量を超える数量の評価は一 括 して把握 するのが難し い。 徴収官は年々 時価でそれを評価した。 そして, 利益がある場合に評価増として, 損失 が発生 した際には評価減にした。 これをくつがえしてしまえば 歳 入に混乱 をきたすであ ろう。 KansasCity Structural Steel社は企業活動に必要 な最低量の棚卸資産を提案 する。 し か し, 鋼材の消費に際して、 歳 入 法の条文にある緊急時の使 用という用語 にこだわ ること はない。 歳 入 局 長官は条項 にある緊急時の使 用という用語 を好 意的に解 釈 したと思 わ れ る。 KansasCi ty Structural Steel社の立 場に配 慮したのである。 炉 か ら製鋼工 場へ, そ して圧 延 工場へと鋼材をすぐ に処理するのが鉄鋼業者の望 むところであろう。 できれば炉 か ら直接, 圧延 工場へ鋼材が処理されればこれにこしたことはない。 しか し, 契約の条項 はそれほどはっきりしていない。 在 庫 ができるだけ適当な大 きさに保たれるべきことが望 ましい。 在 庫 を増 や したいとする気 持ちもあるであろう。 そういう意味においては在庫 は 緊急時の使 用のためである。 それは他か ら鋼材の借 り入れであるという考え方がある。 し か し、 裁判所がそうした考えに歩み寄 っていると思 えない。 また. どの部分が炉 の上澄み なのか 底なのか どの部分が炉 にとどまったか は問題ではない。 これらのことは税収が棚卸資産 に依 りかか っていることへの鋭 い指摘 でもある。 所得計 算にあたり棚卸資産 の会 計処理 に対 する規制を意図 するものではない。 しか し 裁判所は いままでなか ったような事態 が納税義務者に生 じていることをうすうす感 じている。 在庫 についても特殊な事情があるのである。 鉄鋼 の生産 製造そして使 用する場所がはなれて いるので. それを運ぶ 必要 があった。 棚卸資産は入庫 と出 庫 を繰 り返 すありふ れた資産で ある。 価格が上昇すれば 公平な課税所得を計算するのは難しい。 期間 が経 過すればさら に価格は 上昇していくのである。 ともか く, 棚卸資産の最低 の数量を維持しさえすれば. 投 資した原価を回 収することができる。 もともと. 基 礎有高法は特定のしか も少数の業種の会 計慣行であった。 基礎有高 法の特 徴は, どんなに大きな価格変動が生 じても 基準量についてはその影響 を受けないことに あった。 そこで この方法は価格変動会 計との関わ りで論 じられるようになったのであ る。 その後KansasCi ty Stre x turel Steel社は判決を不服として巡回控訴院に控 訴 したが. 結局 この事 件 の裁 定は最高裁判所に移 っだ心 1930年 3 月1 3日と 3 月14日. 弁 論がおこ なわ れた。 そして, 1930年 4 月14日, 判決が 下 った。 それは以下の内容であった。 - 113(261)-.
(10) 第50巻. 第2号. 1 . 特定の企業で. ある 一 定額の棚卸資産が所得の決定に必要かどうかは1918年の歳 入 法における未解決の問題である。 2 . いわゆ る基準数量に基準価格を用いる基礎在高法は 所得税の計算目的のために議 会で要求される会計方法と 一 致しない。 3 . Kansas City Strexturel Steel Company 社は建築物 橋梁をはじめとする鉄鋼設 備の建設に従事する。 この会社は売買契約をした後, 製鋼工場から仕事に対し鋼材を 発注した。 しかし、 製鋼工場から鋼鉄製品の船積みが遅れたときに備えて 手持ちに緊 急用の在庫をおいていたのである。 そして, そうした船積みが遅れることがあれば 緊急時の在庫でそれを補充した。 特定の鋼材が別枠とされた り 準備の在庫として取 り置きされたのでなく, 特に別けることなくまとめて生産に用いたにもかかわらず. 1921年 当 時 多くは1916年の原価また低価法で棚卸した。 あたかも1916年度末に手持 ちしていたものの ごとく処理したのである。 在庫の数量は. 1916年の数量を 下 回ったり, 上回ったりして大きく変動した。 問題 となったのは1918年と1920年の課税所得であった。 双方の年度とも. 1916年の原価で 棚卸した。 また, 在庫については歳 入局長官は現在の平均価格で 再 評価した。 実際原 価ではなかった。 その結 果 所得税を追徴することにしたのである。 棚卸資産に対す る審理請求の結果, 歳 入局 長官の行為が支持を得た。 4. 税訴願庁の命令は歳入局長官が審理した結果にもとづく課税所得を支持する。 納税 義務者の棚卸資産の中 に価格変動から所得が発生したことを認めたのである。 税の不 服 申 し立てをする納税義務者は歳入局 長官の行為が恣意的であるとの証明をしなくて はならない。 Kansas City Structural Steel 社は. 1918年の所得税が7,656.74ド ル, そして1920年には 1 5,953.36 ド ルに増加した。 納税義務者は内国歳 入局長官の決定を受けて租税訴願庁へ不服 審 査の 申 し 立てをした。 これらの追徴 金は銅材の在庫を評価するにあたり, 歳入局長官が 更 正処分した結果である。 会社は基準価格で, 手持ちの基準数量の鋼材を評価した。 歳 人 局長官は現在の市場価格でこれを再評価した。 これによ って状況が変化した。 1918年12 月 に, 棚卸資産は165,849.46 ド ルだけ増加した。 1920年12 月 , 棚卸資産は177,113.61 ド ルだけ 評価増になった。 租税訴願庁は歳 入 局 長官の行為を支持したのである。 Kansas City Structural Steel 社はビル, 橋梁 タ ン クに用いる鋼板の製造をしている。. (3) Lucas, Commissioner of Internal Revenue, v. Kansas City Structural Steel Company, 1930. - 1 14 ( 262 ) -.
(11) 後 人 先 出 法 と ア メ リ カの司法 ( 毛利) この 会社は 完 成品を 在庫 しない。 しか し . 売買 契約があってその 求めに 応 じて鋼 板を製造 するのである。Kansas Ci ty Str uct ur al Stee l 社は 特殊な 建築物あるいは 売 買 契約に 応 じ て 製鋼 _[ 場から 銅材を 注 文する。 しか し ` 売買 契約を 遅滞なく . すみやかに 履行するため に 恒常 的に 在庫を維持 しておいた。 それによって . この会社は 企業 活 動を 継続 的に維持 していく 責任を 果た したのである。 特 別な 仕事のために 発 注された鋼材については . 消費 に影響する。 緊急時には 製 鋼 工 場からの 船積に 遅れが 生 じる。 必 要な鋼材はこの 在庫か ら 得られたのである。 そ して . 不 足 した 在庫が 補充される。 1916年 1 2月31 B . 在庫の 数量 . 0ドルの 原 価で 棚 卸 した。 1921 は5,5団 ト ンになった。 会社は . それを 1 00ポ ンドにつき 1 7 年までの 各 期 末に . 会社はその 価格で55 , 団 ト ンの 在庫を 棚 卸 した。 実 際原価あるいは 市 場 価格を 無視 したのである。 そ して . 超過数 量を 低価法で 評価 した。 問題となっている1918 年から 1921年 度にかけて . 市場価格が 比較 的に高かった。 手 持 ちの 在庫の 実 際原価がいく らかは 知らされていない。 そのあるものは 1 .7 0ドルの 低い 原 価であった。 それ 故. 歳入局 長官は 市 場価格で 任庫を 再評 価 した。 それにともない 課 税 額は 増加 したのである。 第 一 , 特殊な 経営では , 棚 卸資産が 所得の 計算に 必要か 否かは 、 歳入局長官の判断とい うよ り. 法 令によって 判 断 す べき問題である。 この問題に 関する 限り, 歳入局 長 官と 会社. は 同 じ 見解である。 各年度 何の 問 題もなく 会社は 所得計算に 棚 卸資産の 評価を 必要と し た。 問 題は 止常 在 高とよ ばれる 任庫の 一 部に適用する 評価方 法にあった。 Kansas City Str uc tur al Steel 社は5,5団 ト ンの原 料の 在庫を ずっと原価あるいは 市 場価 格で 評価 していた。 1921年以来. 手持ち した 在庫をそのよ うに 評価 した。 会 社の 所 得を 計算するのに 棚 卸資産が 必要なら . 基礎 在 高法は 好ま しくない。 連邦所得 税制度は . 年度とい う 会計期間を 基礎とする。 これは 実現 した 年度に 所得を 計 上するよ う 要請する。 棚 卸資産の 目 的は 各期 間に 損益を適正に 配分することである。 価格 上 昇の時 期に . 基 礎 在高法は 利 益を過 小に 報告する。 とい うのは . それは 市 場価格が高いときにも 低い 価格の 任庫の 販売を 通 して 実 現 した 利 益を 認識 しないからである。 価格が ド 落する時 期 に 基 礎 有高 法は 利 益を過 大に 表示する。 とい うのは . それは 高い 価格の ス ト ッ クの 払い 出 しから 生 じる 損 失を認 識 しないからである。 この 方法は準備 金の よ うに . 年度の 経営活 動の 結 果を 等 しくするのに 役立つ。 しか し , それは 所得 税の 計算に あたって . 議会が要求する 年 度会 計と 矛盾する。 それは . 期 問の 棚 卸資産 損失と 棚 卸資産 利 益を 相殺する。 課税年 度の 真の 利 益あるいは 損 失を 誤って 示すことになる。 そ して 事 実 を 見 誤る。 それは 通常のあるいは 最 善の会 計 方法と 一 致 しない。 明らかに時 代遅れであ る。 会社は 基 礎 在高 法を 守り 通す べきではない。 また .. -115(263 ). 卜級裁判所 はそれを 拒否 した。.
(12) 第50巻. 第2 号. 第 二 , 棚卸資産は5, 5団トンの大きさであり, 会社の在庫 としてふ さわしくないと主張さ れる。 Kan s sa City Stru c tural Steel社はデ ィ. ー. ラ ー でない。 製造業者か生産 者である。. しかし, 建設業あるいは建築 業といえるであろうか。 所得は建設契約の業務から生じる。 緊急 時に備 えた在庫 としての鋼材はこれらの売買契 約に関係ない。 鋼材の在 庫 が 不足 すれ ば基準量から一 時的に借 りてくるものとみなしている。 そして, 取り替 えられる。 それは 会社の機械や 設備 のような利益の構 成要素 でない。 そして, この鋼材の価値は販売 するま で増加しない。 論 点はKan s sa City Structural Steel社の会 計慣行 と矛 盾 しており,不健 全である。 鋼板 の仕 入や 生産は利益の構 成要 素 である。 期問中 に会社は手 持ちの鋼材の数量を変 え る。 鋼材を消費すれば利益に影響 する。 鋼材の種類 は取り替 えられても 数量は変わらな い。 多 くの会社は企業活動を維持 し, 利益を得るために必要な在 庫 を運用する努 力 をす る。 会社は在庫が 不足 しないように また過剰にならないように計画 する。 在庫を払 い出 せ ば, その分だけ取り替 えればよいのである。 鋼材の仕入 原価の推移 はその後の棚卸高や 収益に反映する。 5,554トンの基準量は特に必要 なものではない。 1916年12月318 , 手 持ち の在庫 量を除けば, 機械 や 設備 のような恒 常的な在庫 でない。 それは不足 しても借 り入 れ ることによって減らされることはない。 そして, ただちに基準量 に戻される。 反対 に. 1 918年に在庫 は3,(XX)トンあったが , 1920年には11,(XX)トンに変動している。 このように考 えてくると, 別枠 として取り置 き処 分されるような在 庫 はないのである。 鋼材にはいろいろのものが混 合しており. 必 要 なとき製造に用いられる。 5, 5団トンであ るべき理由 はない。 多 くもなければ少なくもない金 額で技術 的に線 を引けばよい。 そのこ とによって, 年度の所得の計算を早 くすることが できるのである。 誤 りが 各 年度に等 しく 生じることが あっても. 適正 な棚卸資産が 必要 である。 数量 や 金 額にくるいが あっても基 礎在高法を用いる理由 にはならない。 以上 のように 最高裁判所は歳入局長官の行為が恣 意的であることを証明するようなものはなにもない, と判決 を下しだ九 最高裁判所は墓 礎有高 法を棚卸資産の評価方法として認めなかった。 その理由 は墓 礎有 高法がそもそも基準量としての棚卸高をある種の設備 として扱っていることにあった。 棚 卸高は恒 常的に維持すべきものといっても, それは棚卸資産であって設備 ではない。 恒 常 的な棚卸高を棚卸資産とみない基礎有高法は, 棚卸資産の評価方 法であろうはずが ない。 裁判所はこのように判断して基礎有高法を否認した。 (4). 塞礎有 高法を 支持 する 論者は少ない 。 例 え ば, Arthur (1938) , Carson (19氾) お よ び. Peloubet (1930) が あ る 。 -116( 264)-.
(13) 後入先出法とアメ リ カの司法 ( 毛利) 基 礎有嵩 法は歳入局の立場か らすれば, 基準量や基 準価格に 恣 意性が あり所得計. - とし てとうてい受け入れ難いものであっ た。 しか し, 裁判所はそのこ とを基礎有高法を否 認す る理 由 としなか っ た。 そのこ とは問題に ならない。 大事 なこ とは、 基礎有高法が 棚卸資産 の評 価方 法として成り立つか どうか であっ た。. 裁判所はこ の点を基礎有高法を是 認する. か否か の判断の甚準 としたのである。 歳入局 の考え方と根本的に 違うこ とに 注意したい。. m.. 小売棚卸 後 入 先 出 法の承認. 次に 後入先出法が 小売棚卸法に 結合できるこ とを認めた事例 を示すこ とに しよ う。 小 売 業は多種の商品を扱うので, 他の業種のよ うに 数量を基準に した棚卸資産の評価方法に は無理が あった。 そこ で, 会 計慣行 として小売棚卸法を採用していたのである。 小売棚卸 法に よ ると, 金額を基準に して棚卸資産の評価額を決めるこ とが できた。 一 方, 1 939年 に はすべての業種に 後入先出法を歳入法は認めた。 しか し, それはあく までも数量を甚準に した後入先出法であっ て, 小売業に は適用できないものであった。 そのこ とは小売業に とっ て大いに 不満 の残るとこ ろ であっ た。 そこ で, 一部の小売業ではすでに 小売棚卸法に 後入 先 出 法の考 えを取り入れ. 棚卸 資産の評価方法を採用していたのである。 そして, 課 税所得を計 算する。 こ れに 対 して, 当 然 のこ となが ら歳入局は異 を唱 えて. 追徴金を請求 した。 こ んどはこ れを不服として小売業は裁 判所に 訴 える。 こ のよ うに して起 こ っ たの z l er事件 であった。 が H ut H ut z l erB orhers t 社は内国歳入 局長官に 追徴金に 対 する不服申し立 てをし, 審介 を請 z l erB orhers t 社が 原告であり, 被 告は内国歳入局長官であっ 求 した。 不服申立 人の H ut た。 1947年 1 月1 48 , 審理の結果, 裁判所は原告勝 訴 の判決を下しだ凡 H ut z l erB orhers社 t は小売業者であり, 百貨店 を営んでいる。 こ れまで,小売棚卸法で 棚卸資産の報 告をしていた。 内国歳 入法22条(ct)は棚卸資産の評価方法としての後入先出法 の選択 を認 めていた。 とこ ろ が , 百 貨 店 は こ の規定か ら除か れていたのである。 それに も かかわらず, 訴訟に 発 展 したのは小売業 に とっ ては小売棚卸法こ そが 健全なる会 計慣行で あっ たか らである。 百 貨 店 は会 計慣行として小売価格または原 価で棚卸資産を継続的に 記 録 してきた。 それは特別なこ とでなく 百 貨 店 ではご く ありふ れた会 計行為 であった。 た だ, 評 価の基準を数量でなく 金額に おいているだけのこ とである。. (5) Hutzler Brothers Company v. Commissioner of Internal Revenue, 1947 . -1 1 7( 265)-.
(14) 第50巻. 第2号. 歳 入局は1942年の事 業 年 度に税の不足を指摘した。 所 得 税 と 追 徴 金 をあわせて、 表 m- 1 のように 不 足分の支払いを求めたのである。 表m- 1 不. 足. ( 単位 : ド ル ) 額. 吏 布 に よ る 増額. 所. 得. 税. 9,759.48. 581.88. 追. 徴. 金. 123,749.04. 2,815.61. 歳 入 局 長官は内国歳 入 法の722 条に基 づき. 救済を 申 し立てる Hutzler Brothers 社の 申 し出を拒否した。 申 立 書の 中 で, Hutzl er Brothers 社は追徴金に不服を 申し立てた。 歳入法722条 に基づき. 救済に対する 申 し立てを拒絶されたことに対して異議を唱えたの である。 そして, 1941年 1 月 31 日 . およ び1942年 1 月 31 日 . 事業年度の追徴 金が過大であ ると主張した。 歳入法722条に よ る救済の申 し立てについては全く別の問題なので, 切り 離して考える。 ここで問題なのは, 1942年 1 月 31 日 , Hutzler Brothers 社の棚卸資性の金 額の修正に歳入局が応じたかどうかである。 原 告は小売棚卸法を基礎に棚卸資産を評価し て いる。 その際 内国歳入法22条(d)の規定にあるように被告は後入先出法を選択した。 事実 不 服 申 し立人である Hutzler Brothers 社 はメリ ー ラ ン ド 州 にある会社であり. ボ ル テ ィ モ アで大規模 な 百 貨店を経営している((』)。 年度の法人税 申 告 書はメリ ー ラ ンド州の内 国歳入局の徴税官に提出された。 連邦法人税 申 告 書の提 出にあたり使用した会計記録は保 存されており. 発生主義を基準に作成されている。 1942年 1 月 3 1 日 . 期 末の尚 品棚卸高を 計算するにあたり, H utzler Brothers 社は小 売棚卸法を用いた。 そのことは過去20年 間 の内国歳入局の会計記録で読みとることができた。 棚卸資産の評価に適用した方法はその 会 計記録に記されている。 百貨店にはおびただしい種類の棚卸資産の品目があるので. 通 常の棚卸資産の評価方法で処理するのが実際的と考えられなかった。 むしろ. 各部門は品 目を会計単位と考える。 そして品目 ごとに商品に対する記録はとらない。 全ての仕入れと 販売は部門で記録される。 商品を仕入れた後 Hutzler Brothers 社は小売価格で商品を表示していた。 そして. 原 価と小売価格を記録する。 続いて, 附加利益率をきめる。 附加利益率は小売価格の総額に 対する利益額の割合である。 小 売価格の比 率で表現する。 附加利益率は商品の原価を決め. (6). Hutzler Brothers 社をめ ぐる事件については渡辺 (1965) に簡潔な紹 介がある。 -118( 266)-.
(15) 後 入 先 出法と ア メ リ カの司法 (毛利) るためのものである 。 部門の 商品の 小 売価格を 合計し , これ に 附加 利 益 率を 乗 じて 得た 利 益 額 を 差し り 1 け ば原価を 計算することができる 。 現在の 歳入法の 下では, そうして 計算さ れる原価は 課 税所 得 計 算として 認め られ , 歳 人 局も 受 け 入れると 考えたのである 。 H utz ler Broth er s社は棚卸資産の 評価方法として 小 売棚卸法を 用 いる 百 貨 店の. 一. つで. あ った 。 1942年 1 月31 B に 終わる 事業 年度 につ いて, 被告は内国歳入法 22条(d)を 思 い起こ した 。 そこ には棚卸資産の評価方法を 選択して 適用できることを 明 記して いたからであ る 。 後 人 先 出法も 認めて いた 。 後 入 先出法を適用し な い 部 門は , H utz ler Broth ers社の 棚卸資産のほ ぼ5 パ ー セ ン トを 占めた 。 1942年の 事業 年度の法 人 所 得 税申告菖 には , 1941 年 1 月31 1::l にお ける H utz ler Broth ers社の 商品の棚卸高は次のようである 。 それ には内 国歳入局は 修正を 求め なか った 。. (単位 : ド ル) 脱価での棚卸 (全部門). 1, 104,006 . 5 4. 原価での棚卸 ( 後 人 先 出法を適用 した部門). 1,051,172 36 .. 小売棚卸 ( w orkr oom を 除 く 全部門). 1,916,289.38. 小売棚卸 ( 後 入 先 出法を適用 した部門). 1,876,869 . 5 1. 1942年の法 人 所 得 税申告 書 には 「棚卸資産の評価方法 には 後入先出法を適用 する 」 との 明 示があ った 。 聞き取りの 後, 誤りが 見出されたり, またある 部 門で 後入 先出法 へ評価方 法を変更したため , H utz ler Br oth er s社は 修正 計算を提 示した 。 それは 部門の 数 原価, 小 売価格 , 各部門の 附加 利 益 率から 構 成するものであ った 。 期 首と 期末の棚卸の H 付や年 度の 仕入高が 記されて いた 。 修 正 計算の 数値はここから 導き出したものである 。 修 正 計算は 全 国産業調査会が 作 成した 指 数の 誤りが 発 見される 以前のもので , 不完 全で あ った 。 H utz ler Br oth er s 社は 部 門の 修 正 値 に 1 16.56を 用 いて いた 。 正し い指数は117.44 であり, 116.56では なか ったのである 。 この 修正の 結果, 後 人 先出法の金額 に714.88の 増 加 をもたらした 。 1 942年 1 月31 日 , H utz ler Br oth er s 社は 決 算時の 財務 諸 表 に棚卸資産の 計算手続を 示 し, 後 人 先出法を適用した 。 貸借対 照表は次の 通りである 。 次のことは, 後入先出法の 指示あるものの 計算であり, H utz ler Br oth ers社 により 用 い られる 手続である 。. - 119 ( 267 )-.
(16) 第50巻 第 2 号. 貸借対照表. 資産. 流動負債. 流動資産 現金 ア メリカ合衆国政府債 受取勘定 前払保険料 棚卸商品. (単位 : ド ル) 負債お よ び資本. 498,3 5 1 .80 400,000 .00 2, 1 3 7 ,043 .68. 支払手形 支払勘定 未払連邦所得税な ど. 2 5,627.06 1 , 1 66,2 3 7 .50 4 ,2 2 7,260.04. 2 4 1 . 1 50.00 1 56 ,048.44 7 58,934.27 l . 1 56,1 32.7 1. 固定負 債 投資勘定その他. 1 96 ,2 7 5 .5 1. 担保付社債. 2,025,000.00. 489,5 6 3 .69. 株主持分. 6,084,97 9 .00. 品 物 械 地. 備 建 機 土. 固定資産 2,939,03 2 .1 8 1 0 ,44 1 .4 1 1 ,403,538.88 4,842,576.1 6 9,2 6 6 ,1 1 1 .7 1 (1). 9,266, 1 1 1 .7 1. 1942 年 1 月 31日, 各部門 の棚卸資産の小売 価格は, 194 1年 1 月 31 日から1942年 1 月 31日までの平 均上昇率だけ減らす 。 それは主 な百貨店 における小売価格の上昇率を示 す よう指 示された。 1941年 1 月 を基準 あるいは100パ ー セン ト とす る。 その指 数は 全国産業調査会 (NIC B: Nat oi nal In dust rial Confe rence Boa rd) によりえられた研 究 結果 である。 その後は小売価格の正確な記録 がある。 1942 年 1 月 31日の小売価格水 準で計 算す ると, 1942年 1 月 318 , この減少額 は部門 の棚卸資産の小売価格を示す と 主張される。. (2). 1942年 1 月 31日 , 減少額 は同じ部門 の棚卸資産の小売価格と比較 される。. (3). 1942年 1 月 31日, 部門 の棚卸資産の全体 の小売価格が1941年 1 月 31 8 の棚卸資産の 小売価格より小さい例 である。 減少の額 は原 価で評価す る。 そして, 期 首 の棚卸資産 原価から減少した原価を差し引く。 残高は1942年 1 月 31日の部門 の後入先出法による 期 末棚卸である。. (4). 1942 年 1 月 31日の部門 棚卸の全体 の小売価格が, 1941年 1 月 31日 の小売価格よりも 大きい例 がある。 超える金額 は, 価格の増に対す る部 門 の指 数を乗 じることにより現 在 の小売価格に再 調整する。 この小売価格に原価率 を乗 じることにより増加した原価 を得る。 この原価を期首 の棚卸資産に加える。 そして, 総額は1942 年 1 月 318 の部門 -120 ( 268)-.
(17) 後入先出法 とアメリカの司法 (毛利) の後入先出法による期末棚卸である。 第. 一. 次世界大戦後, 全国産業調査 会 はイ ンフ レ ー シ ョ ン下の棚卸資産評価の修 正方法を. 研 究 し,. 「 小売価格の価格変動指 数」. と題する報 告書 を作成し, 公表 した。 その結果, 棚. 卸資産における価格変動の影響 を取り除くためには後入先出法を適用するほかはないこと が決まった。 メ ンバ ー である百貨 店 は後入先出法の適用を示唆 した。 すると, 百貨店 の特 定部門 の棚卸資産について年々 の価格変動を測 定する問題が生じた。 そこで, いくつかの方法を検討 して後 全国産業 調査 会 の小売価格の価格指 数を選んだ のである。 これが NICB 指 数である匹 そして H ut z l erB orhers t Co m p any の小売価格と N .I .C .B の棚卸資産のウェイ トを 用いる。 このようにして, 次のような多様性があることがわ かった。 194 1年 1 月から1942 年 1 月にかけての衣服や住居の小売価格を比較 すると, 都市により 大きな差 があることが判明した。 後入先出法を適用しなかった場合, 1942 年 1 月31 日 の棚卸高は原価で1,319, 287.29ドルで あることに H ut z l erB orhers社 t は同意した。 ともかく, 更 正 処 分の通知 書 の中で, 歳入 局は理由 を述べ た。 課税年度末の棚卸資産を後入先出法で評価すると, 内国歳入法の22条 (d) に反することになる。 それ故 に、 小売棚卸法によって棚卸資産の金額を更 正したのであ る。 Oppe r判事は次のような意見を述べ た。 現在 の手続は煩雑 であるうえに. たぶ んに専門 的である。 にもかかわ らず. 課税所得の 計 算 は通 常の経験 で行 うものである。 根本問題は何を評価の基準にするかである。 百 貨 店 ではドルを単位 とするのが可能である。 価格や 原価がコ ンス タ ントである場合 , 棚卸資産 の増加あるいは減少をドル額で示 すであろう。 それが信 頼性 ある測 定値である。 しかし, 価格上昇 の期間 に, 経験 的に同 じドル額であってもより少ない商品の数量を示すであろ う。 改 革 は, さしあたり棚卸資産の評価の基準を数量でなくドル数値に変 えることであ る。 数量の感覚 を棚卸資産から排 除し, ドルに換 えることが望 ましい。 このような問題がなぜ生じてきたかを考えるにあたって, 小売棚卸法の特徴を検討する ことが必要である。 そのためには主 な部門 の在 庫 を構 成する品目 や 品質を分析 しなくては ならない。 共 通 の尺 度を有 する制度づくりが望 ましいのである。 とりあえず品目 を減らす ようにする。 こうしてドル数値が認 められ, 実施 された。 棚卸資産はそのようにして, (7). 小先棚卸法 に つ い て はその当 時 か ら . 多 く の研究が あ っ た 。 例 え ば. North (1942) Blackett and Ladin (1叫9) な どが あ る 。 -121( 269)-.
(18) 第50巻. 第2 号. 年 々, 処理さ れる。 棚卸資産を 構 成する 年 々の 在庫は 平均化し た。 特殊な品 目. るいは 数. 量には 注意を 払 わな かっ た。 コ ンスタン トに変動する原価を 記録し 続けることは 煩雑な た めである 。 その プ ロ セスは, 期 末棚卸する 裔 品の価格 か ら 各 部 門の 全体を 推 定することである。 も ちろ ん, そ れは 手持 ちする 全ての 財のその 日の 小 売価格を 示す。 この金 額に 部門の 平均利 益 率を 乗 じて 利 益 額として,. 小 売価格 か ら 差し 引く。 そ れによって 小 売価格は原価 へ還元. する。 そ れが問題となる 部門の 期末の棚卸資産である。 年度の 附加 利 益率が原価の総額と 小 売価格とを 比較することにより 計算できるのである。 棚卸資産の ドル 額は, 白貨店の 売上原価, 総利 益, 純 利 益の 計算で 用いることができる。 小 売棚卸法の 特 徴は, たとえ 単 一 部門の 財が 種 類, 質そして価格で 異なるとして も 課 税 所得の 計算には 代 替可能として 扱われることである。 こ れは 棚卸資産がそ れぞれの 品 目 で 一 括して 扱われ, 計算さ れ, 維持さ れる 事実をみ ればわかる。 そ れは 完 全に 相 互に 代 替 可能である。 金額が 甚準である。 ま た, 同 じ理巾で, 棚卸資産のいくつ かの 評価方法の 問 題は 消えていっ た。 納税義務者は 期 末棚卸 高の 小 売価格を 集 計す れ ばよい。 小 売価格 か ら 利 益 額を 引け ば期末棚卸 高の原価とすることができる。 小 売棚卸法は 商品の 種 類や品 質を 区 別する 手続を 必要としない。 H utz el r Br other s社がな す べきことは, 価格 水準が 上 昇する 時 期に棚卸資産 評価 益を き ち んと 示すことである。 そ れによって, 未実現利 益を 排 除することができるのである。 1938年の歳入法では 特 定の業 種にのみ 後入先 出法の適用を 認めてい たが, 1939年の 歳入法 はす べての業 種に 容認し た。 歳入法 22条(d)項( I )は, 期 末棚卸 高は 原価で 評価することとし て , そのう ち 期 首に 相 当する 分については 期 首に 近い原価で, そ れを 超える 分については 期 中の原価で処 理するようにいう。 とはいえ, 歳入法が 規定する業種の 中に 小 売 業は 入っ ていな かっ た。 H utz el r Br other s社は 全 国 百貨店協会 (N at ional Re tail Dr y G oods As sociation )の メ ンバ ーであっ た。 全 国 百貨店協会は 後入 先 出法を 利 用して 小 売の棚卸資産 か ら 年 度 中の価格 上 昇の 部分を排除しようとし た。 この価格 上 昇の基準が 何かを 決める た めに, 彼 らは メ ンバ ーである 百貨店の 小 売価格の 推移を 詳しく 調 査し た。 そして, 各部門 における 主な 百貨店の 標準的な 小 売価格の 年間の 上 昇 率を 計算し た。 その 際に, 全国産 業 調査会が 作 成し た指数を 用い たのである。 この デ ー タをもとにして, H utz el r Br other s社は 小 売価格で棚卸資産の ドル価 値を 調 整し, 利 益 額を控除して原価を 計算し た。 こうして, 法 人所得 税申 告 書を提 出し たのであ る。 所得 計算には 後 入 先 出法を適用し た。 期 未の 小 売棚卸 高は N.I.C. B. 指数を 用いて 期 - 122 ( 270 )-.
(19) 後 入先出法とアメリカの司法 ( 毛利) 首 の棚卸資産 価格へ戻 して計算した。 それ はドルで示 され る商品の数量 に限られ た。 期首 と 期末の棚卸裔 を同一 の価格水準においたのである。 双 方 の棚卸裔 を比 較 して期末 棚卸高 が期首 より大 きい場合. 増加額は期首 の価格水準 に戻すこと なく, 期末 の小売価格と した。 歳 入 局 は H tuz l erB ro hers t 社の申告書 の中の個別の事項 については全く問題 と しな い。 争 点は. つまると ころ後 入 先出 法が小売 業にも適用できるかどうかに帰 着する。 周 知 のように 歳 入法 は後 入 先 出 法を容認 しているのでその規定が小売業 にも及ぶ か否かが根 本 にある。 と もかく納税義 務者は小売棚卸 法を採 用している。 また. どういう評価方法が 小売 業にと り適切 であるかと いう問題もある。 しかし. 後 者 の答 えと しては多くの代替的 な可能性 があるわけでない。 根本 問題は簡 単 にいうと 後 入先出法の適用にと り棚卸資産 の品目 や 種類 の証明が不 可 欠 かどうかである。 本 来 . 後 入 先出法は種類 や 品目 を区別して数量を墓準にして適用した からである。 歳人 局の論点は論理 によるのでもなけれ ば 歳入 法の意図 に従うのでもな かった。 後 入 先出 法が小売 棚卸 法に結合できるか否かの問題であった。 これ らの疑 問 に答 えようと しても. 歳入 法 にはこのこと を規 定する文言 がまだなかったのである。 施行 規則 は歳人局にも H tuz l erB ro hers t 社の立場にもすべてあてはまること である。 しかし、 施 行規 則の内容 がそもそも不明 確であったのである。 百貨 店 は多品種. 多量の商品をかかえ ている。 これ が小売業の性 格なので, 少品 種の製品しかない製造業と 同じようにみること はできない。 こうして. 小売 業に後 入 先 出法を適用できるかどうかは 歳入法の解釈 にかかっている。 問題の根源 は22条(d) の解釈 にあった。 歳入 法22条(d) を改 正 すること も念頭 においている。 しかし, 現状 を考慮して歳入 法を改正しても. その制定を求めた産業のみしかカ バ ー でき ないのである。 結論と しては 歳 入 法に規定する産業 にそれ を適用すること であった。 同 じこと は基礎在高 法あるいは恒 常在 高 法についてもいえる。 基礎有高 法は棚卸高 に基 準 量 と 甚 準価格と を設定する。 それ は正 常な企 業活動を継続していくのに必要 な有高 であ ると 同時 に 損益計算への価格変動の影 響 を少 なくする効果があった。 墓 礎有高 法は価格 l:: 昇 期に利益を繰 り延 べ. 下落 する時期に損失を吸収 したからである。 そのために. 基 礎 有 高法は価格 上 昇 による利益を反映しないこと が指摘され たのである。 このこと に思 い全れば. 多品種の商品にも単 一 の評価を適用できるであろう。 小売棚卸 法に後 入先出 法を適用するのは可能なのである。 小売棚卸法による棚卸資産評価の主 な特 徴が. 測 定値 と してドルであること を想起 され たい。 価格水準が急激 に変化 する時期に. 棚卸 資産に付 すドル価値 は取替原価でもなく小売価格でもないのである。 -123( 271).
(20) 第50巻. 第2号. このことは歳入法に関わるすべての産業に直面 する墓 本 問 題である。 小売業に後入先出 法を適用するのは簡 単である。 しかし. どん な業種 であれ基本的状況は同 じである。 そし て. 可 能ならば全てのケ ー ス にあてはまるような方法を適用してこそ効果が発揮 できると いうものである。 実際に応 用するとなるといくつかの障碍 が生じる。 それが適用の可能性 を排 除するほどに大きいかどうかが考慮 さ れね ばならない。 後入先出法の考え方は 払 い出す商品に最新の原価を付 すだ けである。 個別の原価を識 別するわけでない。 棚卸商品は. 期首に購入 さ れたものであることを仮定する。 ただ , そ うした仮定をおくと小売業では確認が難しい。 小売棚卸法が複雑 なためである。 もし. 製造 業者 であれば 第 一 に原価を付 す商品を決め, 次にその原価を決めればよい ことである。 H ut z l erB rot hers社が行 ったことは 先ず期首 の棚卸資産の小売価格水準 を減らすことである。 そして、 それによって期未 の棚卸商品を期首 を基準にして評価する ことである。 数量を基準にするのでなく, ドルで商品を処理する。 これがドルで報 告する 百貨店 の見解である。 しかし. この方法が納税義務者の棚卸資産を反映しないのではないか。 数量 を測 定値と する代わりにドルを用いることが棚卸資産内容を歪 めるのではないか。 このような懸念が あった。 小売棚卸法は棚卸資産の内容をドルに拡張するから, どのような所得計 算にもあ てはまるというわけではない。 H ut z l erB rot hers社は長 い間 このことを認めた 上 で用 いていた。 必要 があればその方 法の適用を限定することを受け入れるのはや ぶ さ かでない のである。 期末の棚卸資産を期首 からの繰越商品としてみてみよう。 最近仕 入れた商品が最初 に払 い出さ れ, 最初 に仕 入れたものが手持ちとして残る。 後入先出法を仮定すると. 期末の棚 z l erB rot hers社の考 えにあるように プロ セス 卸資産に最初 の原価数値を付 する。 H ut は簡 単である。 それは歴史 的原価には変わりはない。 ただ, 期末 の棚卸資産の原価が当年 度の期首 と同じ原価であるというだ けである。 同様 に, 期首 の棚卸資産の原価は前年度の 期末の原価であることはいうまでもない。 小売棚卸法に後入先出法を結合することによって, 金額を基 準にしながら期末棚卸高の 評価に期首 に近い原価を得ることができる18) 。 棚卸資産の評価には小売棚卸法を適用して いるが, その値は後入先出法の考えが反映している。 簡 単な手続 は次のようである。 期末 棚卸高における商品の数量を確認することから始まる。 期末の棚卸高はその期首 棚卸高の 割 合に応 じて歴 史 的原価を適用する。 そして, 残りは小売棚卸法の下で経験 的に得た原価 (8) McNair and Hersum (1952) は 小売棚卸法後入先出法を理論的 に 基礎づけた。. - 124 ( 272 ) -.
(21) 後人先出法とアメリカの司法(毛利) を適用する。 これにより, 双 方の棚卸高とみなす商品は期首 の原価で 処理する。 減少は期 首 の原価で 処理し, 増加は当期の仕 入 原 価で 評価する。 小売棚卸法に後入 先出法を結びつ けるため にはこれらの手順 が必要で ある。 棚卸資産を構 成する商品を選択し, 原価で その 裔 品へ の割 当てを行う。 後入 先出法の考え方 が小売棚卸法の原理に侵入 するので ある。 議 会 は後入 先出 法の規定は小 売 業 の会 計 手続 には適用で きないものとみていた。 たし かに, この計算はおおまかなもので あり, それだけに明確さや 論理を欠 いている。 だからといっ て, この方法を不 当にわずらわしいものとし て放棄 することはで きない。 こうして, Opp er判事は 現在 , H ut z l erB or ht ers社が会計慣行としている小売棚卸法 に対して後人先出法の適用を認め ると述べた。 また, それは22条(d) の規定に合致 すると 言 っ た。 し かし, Opp er判 事 は社にこの方 法の適用にあたっ ては, H ut z l erB or ht ers Co m p any にいっ そうの細 かい配 慮をもっ ている。 それは指 数の選 択 問 題で ある。 NICB の指 数だけで なく, 公的機 関で あるア メ リ カ 労働省 労働統 計局 (Th eB ureauof L ab o r Stat icsof ht eU in tedStates De p artmentof L ab o )r の指 数もある。 これによっ て, 期 首 と期末の棚卸資産をより比較 可能なものにすることがで きるので ある。 小売業に後人先 出法を適用するH的は何かが明らかで なくてはならない。 歳入 法にその適切な適用が求め られるので ある。 歳入 局長官のいうのは, 適正なもので なく強 制的に他の業種を排 除する ことになるだろ う。 H ut z l erB or ht ers社は異議 のすくない指 数を模索 し ていっ た。 法人 所得税申告書 の提 出にあたっ ても周 到 な準備を重 ね た。 H ut z l erB or ht ers社は部門 ご とに期首 と期末の価 格を調 査 し ていっ た。 そして, デ ー タ をえるため の代 替的方法の一 つを採 用しようとここ z l erB or ht ers社はこの方法を選ぶ ことを表明し たので ある。 ろ みた。 その結果 H ut それゆ え, Opp er判事 は様 々 な代 替的可能性のそれぞ れの長所に関 する意見を記録 す る必要 はあるまいと述べた。 ここに示 した手続を H ut z l erB or ht ers社をはじめ とする百 貨店 において価格変動の計算に用いるべきで ある。 こうし て, 小売棚卸法を用いても後入 先出法が適用で きる機 会 を提供 することがで きるので ある。 これに対して, J urner判事は次のように反論した。 歳入 法の22条(d) の規定が一 般 的に 適用で きるもので ある。 したがっ て, 他の納税義務者と同様 H ut z l erB or ht ers社はここ で 認め られた棚卸資産の評価方法を用いるべきで ある。 し かし, H ut z l erB or ht ers社が その22 条 の規定にしたがっ たという意見 には同意しがたい。 22 条 に規定する方法は期末と 期首 の棚卸高の対応で ある。 それが歳入 法の意図 で あることは間違 いない。 それが多 数の 意見で ある。 たとえ対応 がなくとも, そ し てドルが事 実から乖 離しているとし ても, 期末 -125 ( 273 )-.
(22) 第50巻 第 2 号 と 期首のドルが対応 し ておれば歳入 法 と 一 致する と 結 論する。 そこにゆるやかな仮定をお いているのである。 そう し た仮定は. 原価に関 し ても また財についても許されるこ と で ある。 小 売棚卸法は小売価額から平均的な 附加利益率 を 差 し 引いたものが期 末棚卸高の原 価である と の考え を と る。 手持ちの財の小売価格から原価 を 導 く 。 期 末の棚卸資産である 特定の商品の実際原価 と は関係がない。 次に, 22条(d) を適用 するために, 財が代替可能である と する。 種類 品質 また価格に 大きな違いがあっても, 期 末 と 期 首の手持ちの財は同種 同 質 と 仮定する。 多数の意見が この方 法 を 認める。 こう し て, Hutzler Brothers 社は期 末の棚卸資産の 原 価 を 得るこ と ができる。 それに近い と はいえないに し ても 期 首の 手持ちの財の原価 と みなすのであ る。 そ し て, た とえ期首に 手持ちの財がなかったに し ても原価 と する。 仮定をおく だけでは棚卸資産の事実 を 反 映 し ないのである。 そ し て, そう し た 方 法 を 使 用するこ と は. 正 しい会計利益 を 計 上できない。 後入先出法による棚卸資産の評価は, 一 つの仮定 を 認めるこ と にほかならない。 つまり, 期 末の棚卸資産は課税年度中の手持ちの 財の最初の原価である と の事実である。 このこ と はどうみても フ ィ ク シ ョ ンにすぎないの である。 も し , Hutzler Brothers 社が22条(d)の ドでこの方法を適用 し よう と 望 むならば 許 可が必要である。 このように し て, Jurner 判事は小 売棚卸後 入 先 出 法に反対する意見 を 述べた。 Jurner 判 事の考えはもはや財の代替性すらも理解 し ていなかったのである。 裁判所は. 小売業にも後入先 出法の適用 を 認めた。 その結果. 小売棚卸法が後人 先 出 法 と 結 合 し た。 裁判によって. 歳 人法にはない小 売棚卸後入 先 出 法 と いう制度 を 作り出 した のである。. N.. ド ル価値後 入 先 出法の承認. 後入先 出法はも と も と 数量 を 基準に し て . 払 出数量に対 し て最近の仕入原価 を 付 し . 棚 卸高には期首に近い原価 と する方法であった。 と ころが. 小 売棚卸後 入先出法は. 金額を 基準に し て, 期末の小売価格 を 期 首 と 同 一 水準に修 正 し , さらに原価に還元するのである。 裁判所は小売棚卸後 入 先 出 法 を 多種の商品を 扱う小売業に認めたのである。 小 売棚卸後入 先出法は小売業に後入先出法の適用 を 認めたものであった。 し か し , 金 額 を 基準 と する後 入先出 法は小売業に し か適用できない と いういわれはない。 広 く. 一. 般の業種においても用. いるこ と が可能である。 そればかりか. 小 売業以外の棚卸資桁の業種においては小 売価格 を 原価に戻す必要がない。 いっそう簡単である。 こう し て, 小売業以外の業種においても - 1 26( 274)-.
(23) 後入先 出法とア メ リ カ の 司 法 (毛利) 金 額 を 基準とする評価 方 法が 会 計 慣 行として 始 まった。 そ の きっかけ と な ったのが Basse 事 件である。 この事件の内容は1948年 2 月19 日 の裁判所の判決に明らかである。 原 告は夫の Edgar A. B asse とその妻の Carrie H art B asse であり. 被告は内国歳人局 長官である(ill。 1941年 歳人局は B asse が提 出した法人所得税の 申 告書について14,851ド ルの 吏 正を決定した。 B asse はこの更 正に対して 不 服 を 申 し立てたものである。 問題は 次の点にあった。 1941年の期 末の棚卸資産の額を決定するにあたり, 内国歳入法の22条(d) にしたがい B asse は後 入先 出法を選択した。 にもかかわらず. 歳入局はこれを否 認して 原価を甚礎に評価したことであるilOl。 B asse の訴えは歳入局の行 為を不 当 とするものであ る。 Basse の納税地は Texas であった。 1941年にそれぞれの法人所得税を 申 告した。 彼ら は純所得の 半額を申 告する。 それは彼らが営 む 小 売 業から得た純利益が大部分であった。 所得は発 牛主義を基礎にして計算している。 原告は小売莱者である。 二 十 九の小売店を経 営していた。 ワ ン フ ロ アー の卸売店があり. そこに小売店経営のための商品をス ト ッ クし ていた。 各小売店における商品の数量 は 恒常 的な経営活動を維持するために最低の量を 必要とした。 1941年12月31 日 . 手持ちのすべての棚卸資産の 3 分の 1 がそれぞれの小売店 にあった。 そして. 残りの 3 分の 2 が卸売店にあった。 商品は先ず売れ筋の品 目 から卸売 店に搬人した。 そ し て. 通常のル ー ルにしたがって, 入庫した商品から先に払い出すこと ができるような場所に配憤した。 紺 日 . itij品は卸売店から小売店へ運 びだされる。 そうし た中で、 rti;品の恒常 的な数量はいつも維持される。 売れ筋の商品回転率は年に 8 回から10 回 ほどである。 そして. 全品 目 が 平均して年に 1 回あるいはそれ以 上 回転する。 例えば 野菜や フ ル ー ツ は収穫時に仕入れた。 しかし. 回数はそう多くはない。 また, 隔月 ごとに で仕 入れる品 目 もあった。 1941年以 前には原告は棚卸資産の評価に原価を用 いた。 1941 年には内国歳入法22条(d)に よる棚卸資産の評価方法を適 用 した。 そこで, 1941年12 月 31 日 . 課税年度の所得計算に後 入 先 出 法を採用 することとしたのである。 1941年の法人所得税 申 告書に記載された売上原 価の計算において. 原 告 は363,824.03ドルの期 首の棚卸資産を用 いた。 原価で評価するこ ととして, それについて何ら問題はなかった。 彼らは期 末の棚卸資産を410,091.58ドルと 評価した。 それは. 申 告 書にあるように後人先出法によったからである。. (9) Edgar A. Basse v. Commissioner of Internal Revenue, 1948. Carrie Hartz Basse v. Commissioner of Internal Revenue, 1948. (IQ) こ の事件は ドル価値後入先出法が小売棚卸後人 先出法 に 由 来する こ とを示す好例である。 - 127 ( 275 ).
関連したドキュメント
関係会社の投融資の評価の際には、会社は業績が悪化
廃棄物の排出量 A 社会 交通量(工事車両) B [ 評価基準 ]GR ツールにて算出 ( 一部、定性的に評価 )
線量は線量限度に対し大きく余裕のある状況である。更に、眼の水晶体の等価線量限度について ICRP の声明 45 を自主的に取り入れ、 2018 年 4 月からの自主管理として
本稿で取り上げる関西社会経済研究所の自治 体評価では、 以上のような観点を踏まえて評価 を試みている。 関西社会経済研究所は、 年
100~90点又はS 評価の場合の GP は4.0 89~85点又はA+評価の場合の GP は3.5 84~80点又はA 評価の場合の GP は3.0 79~75点又はB+評価の場合の GP は2.5
これらの船舶は、 2017 年の第 4 四半期と 2018 年の第 1 四半期までに引渡さ れる予定である。船価は 1 隻当たり 5,050 万ドルと推定される。船価を考慮す ると、