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大学1年生における歩幅と体力・運動能力の関係

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Academic year: 2021

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全文

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緒  言

 ウォーキングは健康の維持増進のために人気の高い運 動である。本学の1年時のいわゆる教養体育の授業にお いてもウォーキングを実践するとともにその効果や指導 方法を学んでいる。特に筆者が担当する教育学部の学生 に対しては運動としてのウォーキングを科学的に捉え, ウォーキングへの動機付けを高めるため,歩幅を測定さ せる授業を展開している。  授業の感想では「ウォーキングの知識が深まった」 「歩幅を意識するようになった」「ウォーキングの楽し さを知ることができた」「ウォーキング中の会話で仲が 深まった」などの肯定的意見が寄せられている。  歩幅は発育による体格や体力・運動能力の増加ととも に大きくなり10)19)20),加齢による筋量・筋力低下によ り小さくなることが知られている2)3)11)15)18)20)。そこ で本研究は,本学教育学部1年生のウォーキングの授業 で測定した歩幅を20歳前後の日本人の歩幅の先行研究 と比較し,さらに歩幅と体力・運動能力の関係について 検討することによって,今後のウォーキング指導の基礎 資料を得ることを目的とした。

対象と方法

1.対象  本学教育学部1年生で健康・スポーツ科学実習を履 修した者のうち,運動可能で測定時のすべての授業に 出席し,データ欠損のない18〜19歳の男子15名(年 齢:18.2±0.4歳, 身 長:171.4±3.0cm, 体 重:62.1 ±11.2kg)と女子111名(年齢:18.1±0.3歳,身長: 157.6±5.6cm,体重:52.6±6.8kg)を分析対象とし た。 2.歩幅測定  体育館にて裸足で実施した。普段通りに歩くように指 示し,1名ずつスタート地点から巻き尺に沿って10歩 の通常歩行を実施した。つま先からつま先までの移動距 離から身長に対する1歩幅の割合を算出した。3回実施 し,中央値を分析に用いた。 3.体力・運動能力測定  12〜19歳対象の新体力テスト実施要項(スポーツ庁) に従い,体育館にて握力,上体起こし,長座体前屈,反 復横とび,20mシャトルランを実施し,グラウンドに て50m走,立ち幅とび,ハンドボール投げを実施した。 4.統計処理  統計処理には SPSS Statistics Ver.21を用いた。統計量 は平均値±標準偏差で示し,有意水準はp<0.05とし た。

結果と考察

1.歩幅  表1に歩幅の結果を示した。t検定の結果,歩幅の絶 対値は女子よりも男子で有意に大きいが(p<0.05), 身長に対する歩幅の相対値に性差は認められなかった。

大学1年生における歩幅と体力・運動能力の関係

中 野 裕 史

The Relationship between Step Length of Walking and

Physical Fitness in First Year University Students

Hiroshi Nakano (2019年11月27日受理) 執筆者紹介:中村学園大学教育学部 別刷請求先:中野裕史 〒814-0198 福岡市城南区別府5-7-1 E-mail:[email protected]

中野裕史

表1,P3,L1

1段幅

歩幅(cm) 歩幅(%) 男子(n=15) 女子(n=111) 72.6±6.2* 42.4±3.5 67.8±8.4 43.0±5.1 表1 歩幅 歩幅 (%) = 歩幅(cm)/身長(cm)×100 数値は平均値±標準偏差 *p < 0.05 vs.女子 表1 歩幅

(2)

250  図1に先行研究において通常歩行と考えられる20歳 前後の日本人の歩幅と本研究の結果を示した。測定条件 がそれぞれ異なるため,一概には比較できないが,先 行研究1)4-9)11-14)17)19)20)の歩幅の絶対値は男子が73± 7.2cm 〜84±7.5cm, 女 子 が60±4.9cm 〜76±5.2cm であり,本対象者も同程度の歩幅であった(図1A)。  歩幅の相対値を示した先行研究は少なく,独自に先行 研究4-9)13)14)17)の歩幅の相対値を算出したところ,男 子が42.7%〜43.6%,女子が40.1%〜46.3%となり, 本対象者と同程度の歩幅であることが明らかとなった (図1B)。 2.体力・運動能力  表2に体力・運動能力の結果を示した。体力につい て握力は筋力,上体起こしは筋持久力,長座体前屈は 柔軟性,反復横とびは敏捷性,20mシャトルランは全 身持久力の指標である。t検定の結果,長座体前屈を除 く測定項目で男子が女子よりも有意に優れていた(p< 0.001)。運動能力について50m走は走能力,立ち幅と びは跳能力,ハンドボール投げは投能力の指標である。 t検定の結果,全ての測定項目で男子が女子よりも有意 に優れていた(p<0.001)。  なお,男女ともに18〜19歳の全国平均値16)を下回る 測定項目は認められず,本対象者の体力・運動能力は全 国平均値と同程度,もしくはやや上回る結果であった。 3.歩幅と体力・運動能力の関係  歩幅は身長に影響されることから,身長に対する歩幅 の相対値を算出した。しかし,男子は35.5%〜46.2%, 女子は28.0%〜54.8%と分散が大きく,身長以外の要 因が歩幅に影響していると考えられる。加齢による歩 幅低下は,筋量・筋力低下によることから2)3)11)15)18) 20),歩幅の大小は体力・運動能力とも関係しているか もしれない。そこで,歩幅と体力・運動能力の関係を検 討したところ,男子では筋力(握力)が歩幅と正の相関 関係(r=0.584,p<0.05)にあり(図2),女子で は柔軟性(長座体前屈)が歩幅と正の相関関係(r= 0.318,p<0.005)にある(図3)ことが認められた。 このことから,平均値より歩幅が小さい場合,男子では 筋力を,女子では柔軟性を向上させるように指導するこ とが望ましいと考えられる。ただし,男子については対 象者が少数のため,今後も議論を必要とする。

ま と め

 ウォーキングの授業で本学教育学部1年生の歩幅を測 定した結果,以下のことが明らかとなった。 1)歩幅の絶対値は女子よりも男子で有意に大きいが (p<0.05),身長に対する歩幅の相対値に性差は 認められず,歩幅の絶対値,相対値ともに先行研究 と同程度の歩幅であった。 2) 男 子 で は 筋 力 が 歩 幅 と 正 の 相 関 関 係( r = 0.584,p<0.05)にあり,女子では柔軟性が歩幅 と正の相関関係(r=0.318,p<0.005)にある ことが認められた。  これらの結果は今後のウォーキングの指導に役立つ基 礎資料であり,平均値より歩幅が小さい場合,男子では 中野 裕史

中野裕史

図1,P3,L11

1段幅

図1

20歳前後の日本人の歩幅

歩幅 (%) = 歩幅(cm)/身長(cm)×100

年齢が範囲表示の先行研究は,年齢の

中央値を用いて図示した。

50 55 60 65 70 75 80 85 90 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 歩幅(cm) 年齢(歳) 15-19歳 20-25歳 20-24歳 20-24歳 15-24歳 15-24歳 19-24歳 大学生 38 40 42 44 46 48 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 歩幅(%) 年齢(歳) 男子 女子 男女 本研究男子 本研究女子

A

B

20-25歳 大学生 19-22歳 19-22歳 図1 20 歳前後の日本人の歩幅 歩幅(%)=歩幅(cm)/ 身長(cm)× 100 年齢が範囲表示の先行研究は,年齢の中央値を用いて図 示した。

中野裕史

表2,P4,L3

1段幅

握力(kg) 上体起こし(回) 長座体前屈(cm) 反復横とび(点) 20 mシャトルラン(回) 50 m走(秒) 立ち幅とび(cm) ハンドボール投げ(m) 男子(n=15) 女子(n=111) 43.5± 6.3* 34.0± 3.9* 53.7± 8.5 60.7± 5.0* 98.9±22.7* 7.2± 0.4* 236.7±32.1* 26.9± 4.3* 26.5± 3.9 24.1± 4.9 49.5± 9.4 50.9± 4.6 54.0±15.2 9.0± 0.7 168.3±22.3 14.3± 3.6 表2 体力・運動能力 握力は左右平均値 数値は平均値±標準偏差 *p < 0.001 vs.女子 表2 体力・運動能力

(3)

図2 男子学生における歩幅と体力・運動能力の関係 歩幅(%)=歩幅(cm)/ 身長(cm)× 100

中野裕史

図2

30 40 50 60 34 36 38 40 42 44 46 48 kg 歩幅(%)

握力

20 25 30 35 40 45 34 36 38 40 42 44 46 48 回 歩幅(%)

上体起こし

30 40 50 60 70 80 34 36 38 40 42 44 46 48 cm 歩幅(%)

長座体前屈

45 50 55 60 65 70 34 36 38 40 42 44 46 48 点 歩幅(%)

反復横とび

40 60 80 100 120 140 34 36 38 40 42 44 46 48 回 歩幅(%)

20 mシャトルラン

6.5 7.0 7.5 8.0 8.5 34 36 38 40 42 44 46 48 秒 歩幅(%)

50 m走

100 150 200 250 300 34 36 38 40 42 44 46 48 cm 歩幅(%)

立ち幅とび

15 20 25 30 35 40 34 36 38 40 42 44 46 48 m 歩幅(%)

ハンドボール投げ

r = 0.584,p < 0.05

(4)

252 中野 裕史 図3 女子学生における歩幅と体力・運動能力の関係 歩幅(%)=歩幅(cm)/ 身長(cm)× 100

中野裕史

図3

15 20 25 30 35 40 25 30 35 40 45 50 55 kg 歩幅(%)

握力

5 15 25 35 25 30 35 40 45 50 55 回 歩幅(%)

上体起こし

20 30 40 50 60 70 80 25 30 35 40 45 50 55 cm 歩幅(%)

長座体前屈

40 50 60 70 25 30 35 40 45 50 55 点 歩幅(%)

反復横とび

r = 0.318,p < 0.005 20 40 60 80 100 120 25 30 35 40 45 50 55 回 歩幅(%)

20 mシャトルラン

7 8 9 10 11 12 13 25 30 35 40 45 50 55 秒 歩幅(%)

50 m走

100 150 200 250 25 30 35 40 45 50 55 cm 歩幅(%)

立ち幅とび

5 10 15 20 25 25 30 35 40 45 50 55 m 歩幅(%)

ハンドボール投げ

(5)

筋力を,女子では柔軟性を向上させる指導の必要性が示 唆される。

文  献

1)安藤正志・丸山仁司・小坂健二(1995)異なる歩行速度 が快適歩行に及ぼす影響,理学療法学,22:10-13. 2)伊東元・長崎浩・丸山仁司・橋詰謙・中村隆一(1989) 健常男子の最大速度歩行時における歩行周期の加齢変化,日 老医誌,26:347-352. 3)金俊東・久野譜也・相馬りか・増田和実・足立和隆・西嶋 尚彦・石津政雄・岡田守彦(2000)加齢による下肢筋量の 低下が歩行能力に及ぼす影響,体力科学,49:589-596. 4)村田伸・忽那龍雄・北山智香子(2004)最適歩行と最速 歩行の相違―GAITRite による解析―,理学療法科学,19: 217-222. 5) 中 江 秀 幸・ 村 田 伸・ 甲 斐 義 浩・ 相 馬 正 之・ 佐 藤 洋 介 (2016)健常女性における歩行パラメータと身体機能との 関連性,ヘルスプロモーション理療研,6:9-15. 6)中村葵・村田伸・飯田康平・井内敏揮・鈴木景太・中島 彩・中嶋大喜・白岩加代子・安彦鉄平・阿波邦彦・窓場勝 之・堀江淳(2016)歩きスマホが歩行に及ぼす影響につい て,ヘルスプロモーション理療研,6:35-39. 7)翁長謙良・吉永安俊・趙廷寧(1998)身長と歩幅の相関 に関する一考察―学生の歩測の事例から―,琉球大学農学部 学術報告,45:149-155. 8)大杉紘徳・美和香葉子・重森健太(2007)健常成人の後 方歩行の特徴,理学療法科学,22:199-203. 9)小澤実奈・村田伸・窓場勝之・小西佑磨・阪本昌志・高 橋萌・吉田安香音・安彦鉄平・白岩加代子・阿波邦彦・堀 江淳・甲斐義浩(2016)最適歩行と最速歩行中の歩行パラ メーターと下肢筋活動の比較,ヘルスプロモーション理療 研,5:179-183. 10)坂田知子・海老原修(1994)幼児・児童の脚長からみた 歩幅の発達,日本保育学会大会研究論文集,47:454-455. 11)Sato H・Ishizu K(1990)Gait patterns of Japanese

pedestrians,J Human Ergol,19:13-22.

12)Sato H・Sako H・Mukae H・Sato A・Takahashi T(1991) Gait patterns of young Japanese women,J Human Ergol, 20:85-88.

13)Shigeshima K・Fujiwara T・Ogoma Y・Ohkura M・ Nakaya H(2009)Symmetry of step length and temporal variability in gait of people without impairment,J Jpn Health Sci,12:25-30. 14)清水啓司(2003)「歩行実習」の取り組み―身体特性と 歩幅の相関・学生報告課題の評価―,奈良産業大学紀要, 19:39-55. 15)相馬正之・吉村茂和・寺沢泉(2004)歩行時における 最小拇趾・床間距離の加齢の影響について,理学療法学, 31:119-123. 16)スポーツ庁(2018)平成29年度体力・運動能力調査報告 書. 17)鈴木康弘・宮下充正・川本ゆかり(1998)日本人女性の 歩行スピードと歩幅の標準値―50mウォークテストより―, ウォーキング科学2:53-56. 18)多田実加・大森圭貢・最上谷拓磨・佐々木祥太郎・堅田 紘頌・石山大介・小山真吾・畑中康志・榊原陽太郎(2018) 高齢入院患者における歩行速度と歩幅を維持するための等尺 性膝伸展筋力閾値,日老医誌,55:624-631. 19)田中敦士・奥住秀之(1996)小児歩行の発達的変化― 歩行速度,歩幅,歩幅率,歩調からの検証―,Equilibrium Res,55:270-274. 20)山崎昌廣・佐藤陽彦(1990)ヒトの歩行―歩幅,歩調, 速度およびエネルギー代謝の観点から―,人類誌,98: 385-401.

参照

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