プリクラ,インターネット,一人旅 : 非日常の中の日常 : 1995年西宮(12)
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(2) プ リクラの 受付 とは ,ま た ,林 さん ら しい 気 もす. 言いに行 つたんですよ。そ した ら「こつちに行きな. る, と思 いつつ ,川 沿 いの道が合流す る広 い道路 に入. さい」と言わねま した。何軒か空いてま したよ。二. り,道 な りに左 に曲が る。 人が集 ま っていた。車道 が. 軒まだ空 いてた し,「 真ん中にするか端 にするか」. 一 部陥没 してお り,通 行止 め にな っていたので あ る。. 言 うか ら,「 端で いいです ,端 のほうが隣の雑音が. 作業 の 人た ち と警備 関係 の 人 な どが 車道 の あ ち こ ちに. 入 らない し」言 うて。気楽でいいかな と思いま し. 居 る。 そ の 向 こ うに,十 階建 てほ どの建物が 三 棟見 え. た。. て きた。あれが きっ と団地 なのだろ う。歩道 を進 んで. 仮設か ら移 りたか つた。通 勤 に便利悪 いですや. い くと,す ぐに約束 の バ ス停 が見 つ か った。駅 か ら二. ん。交通費そんなに出え しません。ここよりは便利. 〇分 であ った。. いいですよ (笑 )。 ここはバスが一時間に一本か二. バ ス停 か ら改 めて 団地 をみ る と,道 路 を挟 んで 目の. 本 しか出ないんですよ。考えた ら,こ こは不便です. 前 で あ った。比較 的古 い建物 であ る。携帯 で電話 を し. わね ,何 にも店がない。駅に行かないとない。たい. て ,そ の まま待 ってい る と,道 路 を警備 して い る男性. がいの人は ,六 十五以上やった ら,阪 急バスの優待. が ,バ スは来 ませ ん よ, と声 をか けて くれ る。昼下 が. があるんですよ。私 ら障害者やか ら,百 十円で乗れ. りにバ ス停 で立 っていれば,バ ス を待 ってい る と しか. ますけど。三か月の定期を一万円で売 つてくねるん. 思 えな いの だろ う。違 い ます と言 って意外 な顔 をされ. で す よ。一 回 ,百 三 ,三 十 円 にな りま す わ な ,そ. て い た時 に,団 地 の建物 の横 か ら林 さんが歩 い て出て. ね ,た いがい買 うては りますわな。私 もいちいち券. きた。. を買 うの高 くつ くか ら ,三 か月一万 円を利用 してま. 道路 を渡 り,エ. レベ ー ター に乗 って 3階 まで上 が. り,端 の 部屋 に入 る。 3DKで. すけど。グラン ドバスい うの ,便 利ええですよ。 ここは ,静 かでいいなあ とい う感 じで したね。人. ,南 の 窓か らは木 々の. 枝越 しにバ ス通 りを見お ろす こ とがで きる。. によ つて 違 うと思 いますけど ,私 は別 に悪 いところ ではないと思います。 老人会 とか何 や とか言 うては りますけど ,一 切 出. ■仮 設 か ら団地 へ この建物 は ,十 一 階建てです。 正確 には知 りませ. ません。老人会 い うた ら ,も の食 べ た り ,し ゃべ り. ん けど ,も う二 十年以上 は経 つています。 ここへ 移. はる ことい うた ら ,孫 の話 ,旦 那の話 ,嫁 の悪 口. つて きたの は ,平 成 … … ど つか に書 い て あ つた な. そんなん多 いですよ ,だ いたいがね。バス に乗 つて. ………十 一 年十 一月三 日に移 つてきたはずです。ち や. ど つか に行 つた り ,食 事会 した り。私 は ,そ れ全然. ん と葉書で出 して ,み んな に配 つたはずなんやけど. 分 か らんか ら。他の こと喋ねる環境 とは違 う しね。. ………あち こち ,整 理 が悪 いか ら………あ つ ,十 年 ,十. 「皆 さん と一緒 に食 べ た ら ,ス トレスがた まる ,私. 年 で す ね 。 え 一 「 3年. ,. 6か 月 の 仮 設 生 活 を 卒 業. は食 べ られないか ら ,そ うい う会合 は一切 こ免 蒙 り. 3日 文 化 の 日に ,や つと 自分 の 城 に移. ます」言 うて。ほんな ら 「名前 だけ貸 して くね」言. り ,今 ほ つと した所 です」 つて 書 いて ます。移 つて. わねて。援助があるんですよね。「ああ ,い いです. 来 る 日を忘ねん よ うにと思て ,十 一月三 日に しま し. よ」言 うて ,名 前だけ貸 しているんですよ。だか. た。. ら,み んなとは打ち解けて話 したことないですよ。. し ,11月. 市へね 「仮設から移 りたい」言 うて申し込みに行 つて。駅の前の ,電 車から降 りてすぐの所に市営住. ■プ リクラ. 宅あるんですよ。でも ,そ ねを申 し込んだ ら,い つ. 仮設住宅 は西宮市 の海岸の近 くにあ った。 この団地. ぱいなんですて。で ,「 この団地や つた ら空いてい. は,電 車 だけを考 えれば,仮 設 よ りも,勤 め先 の宝塚. るから移 りなさい」言われたんです。それから二 か. には近 い。彼女が机 の上に出 した定期入れには,グ ラ. 月もせんうちに移 つてます。. ン ドパ ス と,こ の 団地 の最寄 り駅 か ら宝塚 までの阪急. 市営住宅 しか申 し込んでないです。民間のところ は広告やら入 りますやん ,で も高いか ら。市営住宅. 電 車 の 定 期 券 ,そ して何 枚 か の プ リクラが 入 って い た。. やつた ら震災減免があるんです。二 ,三 回は通 いま したね。「もう歳いく一方やか ら,バ スに乗 らない. こうい うの をや つてます。. で ,電 車降 りた らすぐの市営住宅がこつちにあるの. 写真 を皆取 りに来 ますやん。 この ころ ,若 いお母. を知 つたから,そ こに入ねてください」というのを. さんが ,子 ども抱 いてでも来 は ります しね。そねか.
(3) 原田. 隆司 :プ リクラ,イ ンター ネ ッ ト,一 人旅. ら,小 学生から高校生までが幅広 く来ます。機械は. ソコンでも持 つてきてやりなさい」 つて言 つてくね. 五台置いてます。. はるんですけど。朝十時に行 つて電 源入ねるんで. 前はもうち ょつと行 つてたんやけど ,私 が辞めた. す。でも ,だ いたい学生さんは三時くらいまでは来. い言 うたんですよ ,そ したら「辞めんと ,週 二 日に. ないですね。三時までに来るいうた ら,買 い物に来. するか ら ,辞 めん といて くね」言わねて。本当 は. た若い奥さんが ,赤 ん坊の写真撮 つた りするのに. ね ,セ ンセ ,も う七十九 にな つた らね ,先 のこと考. たまに寄 りはりますけどね。三 時以後 ,学 生が多い. えた らね ,や つぱり自分の したいことをやって ,死. か ら,そ ねか らです。. ,. んだほうがええのとちゃうかな一 ,い つもセンセに. 私 じつと座 つてた ら冷えるんですよね ,お 魚屋さ. 言 うてるように ,中 途半端で しょ (笑 )。 パ ソコン. ん ,お 肉屋さんあるから。だから,そ のまわ りくる. やつてるんやけど ,独 学でや つてるんですよ。 自分. くる回 つて ます。「暇やな あ」言いなが ら。で ,サ. で ,自 分の作 つた詩をきれいに打 つて ,ち ょっと絵. スペ ンスを読んで ,そ ねか らこういうのを読んで. でも入ね らねる ,そ ういうことをやりたいんです。. 最近はやりの ,こ んなんや つてます ,い ろいろ買う. そいで ,習 いにいきたいか らと思 つて ,こ の間か. てきて。. ,. ら,辞 めさせて欲 しい言 うてるんですけど。 去年の八月の二十五日から。そねまでは ,人 材セ. 団地 の部屋 に置 かれた背の低 い本棚 には,コ ンピュ. ンターで仕事 してたで しょ。そねはもう去年の三月 で …… 。「年寄 りいうか ,若 い年寄 りがいつぱい増. ー タのマニュアル などと一緒 に,「 数独」 の本 が何冊 か立て られてい る。. えるから,林 くん ,辞 めてくれ」言わはつたんです よ。三月のは じめにそう言わはりま した。そやか ら. 「いいですよ一」言うて。そ したら今度は ,別 の人 が 「あんた遊んだらボケるから,一 日おきくらい に,全 部とは言わへんから,カ ルチャーセンターの. お昼は ,そ このお店のなかに食べ物屋さんがある んで ,そ こで買つて食べ ます。私は胃がないか ら. ,. ち ょつとずつですね。. 教室は ,掃 除のおばちゃんが入 つてないから,そ こ. することは ,掃 除ぐらいですね。両替は ,ち ゃん と両替機を置いてます。でも一万円は換え らねへん. を掃除してくね」言うて。そいで行 つてたら,腰 い. か ら,私 が干円札を二十枚 くらい持 つて行 くんです. わしたんですよ。広い会議室みたいなところ ,一 人. よ。学生もね ,金 持ち が多 くてね ,「 おばあち や. で掃 除 せんな らんのです。 しば らくがまん してや つ. ん ,一 万円換えてね えな あ」言 うて。「おばあち や. てたんやけど ,辞 める言 うたんですよ。そ した ら. ん ,洒 落てんなあ,マ ニキ ユア してんなあ」言 うか. ,. 前 か ら知 っている 人 がち ょうど定年退職 して ,私 に 「手伝 うて くね」言われて。そねがプ リクラです。. ら「うん ,あ んた らに ,指 くらい綺麗にしとかな失 礼や ろ」言 うた ら 「顔もマ ニキ ュア し一」 (笑 )。. 基本的 には ,朝 十 時か ら晩の 二 十 時まで。長いで. 「何言 つてんの ,あ んた。高速道路みたいにい つぱ. すよ。でもね ,プ リクラて ,セ ンセも 知 つて はる ?. い静かに雛いつてるやろ」「いやいや ,な んぼ高速. 機械のなかの用紙 が切 れますやん ,写 してた ら。 その入れ替えをせんな らんのです ,写 真の台紙 とシ. 道路でもかまへんねん ,下 の百均いつた ら,お ばあ ち ゃん ,百 円で売 つてるで」 …… ほんまに面白いで. たで しょ ,あ あい う仕組み にな つてるん ですよ。 こ. すよ。「おばあち やん ,お 金持ちそうやな あ」「いや いや ,金 持 つてた ら,こ んなとこに座 りに来 うへん. の紙 が真 つ自の台紙でね ,そ の機械のなか に仕組む. で」「いや一 ,お 金あるで一。そんな人ほど ,金 持. んです。それ と ,シ ール言 うんですけど ,紫 色 と黄. ち ,け ち言 うやん」。. ールのね。カメラの フ ィルムは □一ル にな つてま し. 色の薄 ぺ つたい□一ル にな つてて ,入 ね替 えるんで す。 うまい ことな ってますね。よ う八ヤる機械 と. ,. お金は全然い じりません。社長が一週間にいつペ ん来て ,仕 事 しはるんですよ。お祭 りとかの日は. ,. ノヽ ヤ らん機械 あ るんです よ (笑 )。 四十 曰 く らいで. 順番待 つ くらい人も来はるけど ,そ うでなか つた. 交換 するの もある し,一 か月 くらいでな くなるのも. ら,ま あ余裕ですわ。今は週二 回ですけど ,社 長と. ある し ,ま あ ,今 はだいたい短 いのでも二 十 五 日は. もう―人の都合で ,来 ねない日を私に言 うて。で. 保ち ますね。. この前 ,私 ,忘 れたんですよ ,頼 まれてた日を忘ね. それ はな くな つた 時 にするだけで ,後 は じ一 つと 座 つてた らいいん です。「本 を読 んで も ,ノ ー トパ. ,. て ,京 都に行 つてたんですよ。そ した ら「病気 して たんと違うか ,連 絡つかへん」言 うて ,こ つつい心.
(4) 52. 甲南女子 大学研究紀 要第 43号. 人間科学編 (2007年 3月. ). 配 して 「ど う しても携帯電話持 て」言わはるんです. すよ。囲いの網 してある ,そ こ らへ んで立 ってない. よ。そ いで ,や つと先月 ,持 ちま した。でも ,か け. と ,椅 子 はち ょ つと しかないです。ほんま に ,し ょ. る とこあ らしませんやん ,別 になあ。結局 ,機 械の. うむない所で つせ。お 店もそんな にないです。が つ. トラブルあ つた 時 に ,私 ,直 さねせ しませんやん. くり しま した。. ,. そんな時 に連絡 しますね。カーテ ンが降 りた とか. ,. 沖 縄 も行 き ま した ,お と と し ,あ ん ま り回 らん. いろんなカーテンあ りますねん ,そ うい うのが上 が. と。大好きな飛行機 に乗 つて。 友 だち に行 こうか と. らん か つた とか ,連 絡 す るの にち ょ う ど都 合 が い. 言 わ ね る と ,友 だ ち に気 遣 わ な ん の が しん ど い か. 。. ら ,い やなんです。私 は私 ひと りで。よ う新 聞なん. 夜は八時 にな った ら電源切 つて帰るんやけど ,七. か に広 告 出 て ます やん ,共 同で皆 さん 揃 て行 くの. 時四十分 になった ら一応入ねな くていい言 うて。二. が ,あ あ い うの も嫌 なん で す 。 自分 は マ イ ペ ー ス. 十分 ぐらいで写真撮ね しませんやん。落書き しはり. で ,体 を維持 していかんなんか ら。 しん どか つた ら. ますやん ,あ ねが皆 ,長 なるんですよね。「時間や. 一 服 し ,朝 も早 よ う起 きて ど うこうとい うんでな し. で一 ,時 間やで一」言 うて。で ,私 ,七 時四十分で. で。そやか ら自分 でパ ソコンで 調 べ て。 ど う行 ける. お客さん来てなかつた ら切 つて しまいますわ。そや. か ,出 ます やん ,沖 縄行 つて 何 を した い とか ,食. ないと守衛さんも怒 つて来はるんですよね。「八時. 堂 ,食 べ 物 とか ,み なインターネ ッ トで見 て ,そ い. になつた ら早う出てくねなあかんのに」言うて。警. で行 くんです ,自 分で。切符 も高いですよね ,そ ね. 備の人 も回らはるで しょ,魚 屋さんとか店をみな. でもいいんです。食事 もみんな と一緒の もの を食 べ. い. ,. 順 ぐりに。うちだけが ,あ ね してた ら閉めらね しま. へ ん し,そ ねが一番。みんな と一緒 に行 くの嫌なん. せんやん。. です。 自分 自身で満足 できるよ うに行 くんです。二. 機械五台置いてるとこ ,み なお茶 ,飲 んだもの. ,. 泊三 日ですよ ,沖 縄 は ,だ か ら首里城 とか ,な か に. そ こらへ んにほ つた りね ,紙 くずほ つた りするか. 入 つてないんです。 そいで ,船 をち ょつと出 しても. ら,掃 除はせんな りません。機械も拭いてやらな. らつて ,そ ね は共 同で乗 りま した けどね ,海 底で珊. ,. 瑚 があ つて魚が 泳 いでるの が丸見 え ,あ あい うの は. 落書き してますねん。 アイスクリームも今売 つてるんですよ ,受 付の横. 見 てきま した。後 はタクシーで。. で。そねは ,― 日にね ,五 杯 くらい売ねたらええと. お とと しの五月 には ,穂 高 も ,観 光バス に乗 つて。. こ。アイスクリームの入 つている ,こ ね位の容器が. 今年 も ,岡 山 に美術館あ りますやん ,有 名な ,大. あるんですよ。それを置 くと ,き ゅつと押 し出 しで. 原美術館 ,あ そ こ行 きたいんです ,だ か ら今年 ,絶. 出来るようにな つてるんですよ。それも売 つてます. 対行 きます。青春 き つ73i買 うて行 つた ら面 白い。青. けど。若い子やつたらね,い つぺん見したら,「 う. 春 き つぶは一 枚で買えんですやん ,五 枚綴 りですね. ちにさして」言うて,や つてますよ. んね。だか ら,「 もうこれ使わなもつたいないか ら. (笑 )。. 行こう」言 うて。何かね ,ひ とりで居てて ,自 分で 自分に言い訳を して しか実行 に移 しにくい。「こん. ■一人旅 昭和 二 年 ,大 阪 に生 まれた林 さんは,昭 和 二五 年 か. な歳 して ,こ んなん してて ,え えのなかな」 と思. ら大 阪 で 役所勤 め をは じめ るが ,四 年後 に自律 神経失. う。でも青春きつぶやと ,こ れは絶対使わなもつた. 調症 とい われて入院 し,六 年後 の 昭和 三五 年 に退 院. いないねんか ら,そ した ら,あ そこへ行こう,こ こ. ,. 京都 で 父親 の事業 を手伝 い は じめた。 しか し,昭 和 五 七 年 (一 九八 二 年 ),会 社 は倒 産 し,事 情 が あ って. 行こう,自 分で納得 してね。変な理屈つけて。. ,. ■詩 をつ くる. 彼女 は翌 年 か ら京都 で一 人暮 ら しをは じめた。. 林 さんは,本 棚 か ら冊子 を取 り出 して きた。 私なんでも行 きたが りやですか ら ,人 に遅ね と ら ん よ うに ,こ の 間 ,ひ と りで神戸空港行 つた けど. ,. この 間か ら ,何 か や らな あ か ん な か ぁと思 うか. 大 阪の ほ うがええですね。周 りはきねいですよ ,で. ら ,詩 を ,し ょうむない ことをや ってるんです。 作. も空港 らい し感 じは伊丹 ,大 阪やね。関空 に行 つた. 詞家連 盟 とい うの があ るんです 。「今度 ,本 に入 ね. らね ,あ の展望台で寝 転が つても ,人 は寄 つて 来 い. るわ 」言 うて くねて はるんやけど。. しませんで したね。神戸空港 は座 る ところないんで.
(5) 原田. 隆司 :プ リクラ,イ ンター ネ ッ ト,一 人旅. 雲 にな りたい. 私 はあなた とい つ も生存 していた 孤独ではなか つた. 人生 に. くたびね. 自然 も とめて. ―人でもできる こと. ただ祈る ことだ け. 旅 したい. 長 いながい. ひと り夜 に. 恐 い ,恐 ろ しい ,恥 ず か しい い うの も あ る け ど. 返事 もない. 手紙書 くの. ね ,自 分の詩 を 自分 で読むのも ,ま あ人生の うち に. あや しい魅惑の. あたたかい雲. 一 回 ぐ らい あ って も い いかな ,と 。 満 足 しま した. いのちがけの 愛. い と しみなが ら. よ。 まあ ,私 ら ,こ う して読むだ けですけど ,若 い人. 雲 にな りたい. はジ ェス チ ャー付 けて ,や らはるん です。「お一. ,. この詩 ,こ れ は私 が空 を見 る とき ,い つ も ,雲 に. 行 くぞ 一 」 とか い うの が文 章 の な か に入 つて た り. な りた い と思 て ,空 見 てん ねん 。 これ は詩 で な し. ね。カタコ トカタ コ ト,と 電車の音 さ して ,そ の詩. に ,歌 詞 み た い。 この 間で きて ,添 削 して も ろ た. を読んだ りね。それが私 には出来 ひんですやん。だ. ら ,ま た秋 に ,何 とかい う本 に出すか ら ,と か言 う. か ら駄 目なんですよ。. て くねてはんねん。一番の 「人生 に くたびね」 と二. 詩 を聞いて くねる先生 は ,後 でまた 批評 に出すよ. 番 ,三 番の字数 を一緒 にせえ ,と い う指導 はあ りま. うに ,も っと書 いて ください と言 つて くねは りま し. した けど ,こ れは全部 自分で作 つたもん です ,言 葉. た けどね。でも結局 ,こ れ はいい ,言 つても らえる. の添肖」 なんかはなか つたです。も っとも つと作 るよ. 詩 が一 編 もで きひん 。「も つと書 いて くだ さ い 」 言. うに言わねてるんやけど ,こ うい うの はね ,汽 車 に. われて。中途半端 (笑 )。 占い した ら ,占 いも中途半端 (笑 )。 友 だち が や. 乗 つて 何かせん と ,出 てきいひん。 一応ね ,自 分 では ,こ うい う句集 を本 に したいん です。 ここにち ょっと絵 を入れた りしたいんです。. つたん です ,で ,「 よ う性格 が当た つてるか らね. ,. あんたの性格 ,自 分で分か らへ んやろ ,い つぺ んや つてみ 」言 うか ら ,私 や つたんです。そ した ら中途. 昭和 五八 年 (一 九八 三 年 ),京 都 で一 人暮 ら しをは. 半端なんですて (笑 )。 でも面 白い ,五 百 円で。. じめた。 五六 歳であ る。 しか し京都 で は仕事が なか っ. 何でも ,セ ンセ ,も う好 きな ことや つてますわ。. た。翌年 ,か つ て事業 で取 引 の あ った神戸 の会社 で住 み込 みの仕事 をす る こ とに した。 この ときに借 りたア. 既 に数編 の詩 や旅行記 な どをワー ドで入力 して い る. パ ー トが ,自 分 に とっては じめての城 だ った。次 の年. のだが ,フ ァイルが見 つ か らない とい うので ,テ ー ブ. には ,「 大 阪人 て ,落 ち込 んで も助 け て くれ る」 と思. ルの側 にある富士通 のデス ク トップパ ソ コ ンを起 動 し. い ,大 阪 に移 ろ う と思 うが ,家 賃 が合 わないので ,西. て ,ワ ー ドを起動 して探 してみ る と無事 に開 い た。 つ. 宮 に引 っ越 す。. い で に,既 に入 力 して い る詩 の行 間 を狭 くした い とい. それか ら二十 年 ,林 さんは西 宮 で暮 ら して い る。. うので ,ワ ー ドの「書 式」 か ら行 間 を設 定す る方法 を 伝 えた。 それか ら,USBメ モ リー が あ るの で ,デ ス. も う三年前 になるかね ,詩 の柔道 ………神戸文化会. ク トップに保存 して い る ファイル をそれ に コピー した. 館でね ,拳 闘みた いのがあるです ,そ う ,詩 の ボク. りも した。林 さん は ,そ の作 業 を傍 で じっ とみ て い. シング ,出 ま した。 リングで読み上 げた。だめで し. る。. た けどね。インタ ビューさねて ,関 西 テ レビには出 てま したよ。 こね読んだんです。. ■地震 "戦 争 "子 どもの頃 ひ とし き リパ ソ コ ンの作業 の あ と,ぼ くは, ど う し て も地震 の こ とを聞 きた い と思 い 「地震 の ことを,今. 出会 い. で も思 い 出 され ますか」 と尋 ねた。 いつも 孤独だ つた. けれ ど不思議 に明るか つた. あなた とい う人 に会 えたか ら 人 は 自然の摂理 に したがい だ. 生 きてい くべ きなん. とき どきね。私 はね ,や つぱ し ,地 震 で こないな つた けど ,で も ,国 全体のもの と違 いますやん。私 らが ,地 方でも地震起 こつて ,い ろんな心の傷 も っ.
(6) 甲南 女子大学研究紀要第 43号. 54. た人が多いけど ,私 らは私 らで ,「 ああ ,あ の時. 人間科学編 (2007年 3月. ). 習 うの ,自 己本位のことを見習うんですか」言 うた. ,. 家が倒ねて ,誰 か亡 くな った」 とか。でも ,こ のこ. んですよ。「いや ,人 にね ,あ んま り,つ らいこと. ろは ,時 代の流ねがすこい早いから,と きどき思い. を言わへん」と言わはる。あの先生とも ,こ こへ来. 出 しますけねど ,空 襲のほうが ,ま だや つぱ し大き. てから,ず つとお父さんの代か ら付き合 うて ,今. いです。. 息子さんが継 いではるんですね。「親父に ,あ の人. ,. まざまざと思い出すのは ,地 震のときはパア ッと. を見習え ,見 習え ,言 わねた」言 うんですけどね。. 家も消えて ,あ と交流がないで しょ,今 ,自 分がそ. この間 ,死 にはつたんですね。そう言うてくれはる. こに住んでんのとち ゃうから,そ やか ら「みんなど. んですけど ,ひ とに手が不自由ということも言わヘ. うしてるんかなあ」 いうのんでも ,「 元気なかあ. ん し,そ れはまあ自分でも ,ひ とに言うても しゃあ. ,. どこで何 してるかなあ ,私 らと同 じような生活 して. ない しねと思てるか ら,言 わへ ん。整形の先生 に. いるかな」 と思うぐらいでね。. も ,「 肩 が痛い し,首 か ら頭に ,先 生 ,だ んだん歳. でも ,戦 時中は ,ひ どい。背中に弾があた つて. い つて悪な つて くるよ」言 うた ら,「 普通の人間で. ,. そね運んではるのを見てるか らね ,そ つちのほうが. も ,肩 が痛な つた りなんかするのに ,あ んたはもう. き つい です ,思 い出と しては。思 い出 しますね ,イ. 肩がや らねてるんやから,し ゃあないねん ,ど うし. ランとか ,戦 争の話 を聞 くと。だか ら ,日 本 ,テ ロ. ようもないねん」 つて ,そ う言わはるんです。私は. 起 こつた らどう しよ ,そ んな心配するけど ,地 震起. 「そ う ,ど うしようもな い。ほんな ら,横 には動か. こ った ら ,も うこねは天命やか ら ,し ゃあないな あ. せるように ,自 分でするわ ,も う。先生 ,匙 投げて. ………戦争 は 自分 らで起 こすもんで しょ ,で も地震 は. はるんやか ら」 と ,は つきり言 います。他の人やつ. 自然界で起 こるもんやか ら ,何 とも しよ うがないで. た ら,ど うしようもない言われた ら,し ょげますや. す ,だ か ら日頃の備 えは しとかなあかん ,思 います. ん ,も う先生が ,あ かん ,言 わねた ら。そねを私. よ。でも防ぎよ うないですもん。. が ,「 この高さで横 に動 かせ るよ うに 自分 でやる. らば ら。だか ら 「今 頃 ど う してはるかな」 ぐらい し. わ」言 うた ら,「 あんた ,そ やか ら,こ こまで生き ねたんやで ……食道手術 し,胃 手術 し,腸 手術 し. か ,思 い出せ しませんね。今 ,行 つてもですよ ,も. て ,も う,お まけに手まであかんようにな つて ,そ. うち ゃん と家建 つて ますやん ,き れいに。. れでも ,暗 くな らへんから,僕 ,好 きや」言 うてく. みんな 同 じ所 に戻 つて くるか思た ら ,ち りぢ りば. 戦争の 時は ,も う何年 も ,そ の ,空 襲の跡 があ つ. ねは ります。「あほやか ら,考 えて しまへ ん」言 う. た か らね 。 これ は年 代 の 違 い か な あ と思 い ま す け. てますけど。. ど。若 い人 はど う思て はるか ,知 りません けどね。. 親の しつけで しょうかね。小さい時から,母 親で も ,九 九を覚えへ んか つた ら ,戸 の ところに貼 つ. 私 は ,ま じま じと ,あ の空襲見て ます しね。人 が怪 や つぱ り青春時代の思 い 出が ,き つい わ。昭和十九. て ,台 所で天 ぶ ら揚げなが ら,私 に九九を教えて。 その 「くそ負けるか」いうのをい つつも ………喧嘩で. 年 ,二 十年 にあ つたか ら。昭和十九年 い うた ら ,私. も ,喧 嘩 して帰 つてきて ,泣 いて帰 つた ら ,親 父. が十七 で しょ ,昭 和 三 年生 まねやか ら。その 時の記. が ,す こく怒 りま した。「なんで泣 いて帰 つて く. 憶 やか ら ,な かなか去 ら しませんね。だか ら戦争 は. る。負けた ら ,や り返 してか ら帰 つて こい」言 う. してほ しくない。イラ ンやイラ クの人の こと ,考 え. て ,追 い出さねま した しね。成績悪か つた ら,次 が. ますねん ,地 震 よ りも。「かわいそ うやな あ」。人 間. んばつた らええねんけど ,「 ええよ」 つてお母さん. の力でできるもんが。今の政治 にも不満やけど。だ. もそ う言わはるんですけどね ,親 父 は違 うんです. か ら ,今 度生 まれる時は ,や つぱ し ,戦 争 のない国. よ。「がんばる ,と か ,そ んなこと言 うてた らあか. の政治 を した り ,老 人 をも っと大 事 に してほ しい. ん。今す ぐ,が んばね」。何や ,訳 の分か らん こと. 我 したの見 てるか ら。地震 とど つち と言わねた ら. ,. ,. と思います (笑 )。. 言われて ,い つぺ んは私 ,小 学校六年生の時 ,通 信 簿もうた ら,だ いたい九か十やないと ,お 父さん. 話 は,彼 女 自身 の こ とに移 ってい った。. 駄 目言わはるんですよ。それが七やつたんですよ. ,. ,. 算数が。ほな怒 らねますやん。表に放 り出されるん 今 ,お 世 話 にな つて る病 院 の 先 生 が ,「 あ ん た. ですよ ,い つもね。こねは困つたと思て ,お 母さん. を ,お れ は絶対 ,手 本 にする」 言 うか ら ,「 何 を見. の財布から,紙 のお札やなかつた ,な んぼ掴んだん.
(7) 一 人旅. か知 らん け ど ,財 布 か ら ,丸 い お金 ば っか り掴 ん. 「ノヽ ノヽ 八 ,何 か甘 えたみた いな 喋 り方 す る ,言 わ. で ,お 母 さんのおばあち ゃんの家 ,行 きま した ,和. ね るん で ,い つぺ ん 自分 で や つた こ とあ る ん で す よ。声 がね ,は つき り しゃべ れ へ んい うのが・……や. 歌山 へ ,一 人で。 どない して行 つたか ,分 か らへ ん のですよ ,ま. ,い つ もお母さんが連れて行 つて くれ. つぱ し入れ歯のせ いで しょうかね」 「八 八 八 ,そ うか な … … 。 ぼ く ,今 日 ,は じめ. るか ら。 とにか く人 に負 けるな ,負 けた らあかんい う ,そ ねが親父の ……喧嘩でも ,家 で トランプ してても. ,. お父 さん に負 けた ら ,怒 られ るん です。「な ん で も. に ,間 違 うて 『八十九 やな くて ,七 十九』 つて 言 い ま した けど …… 」 「八 十 九 で ,私 こん な ん や つた ら ,大 喝 采 │で. つと頭 ,使 わんか ,な んで親父 に負 けん とこ思わ ヘ. も ,う ちのおばさん ,九 十 五やけど ,う ち よ りは. んのや」言 う。そねが ,今 まで来てるかも しねない. 雛 な い し ,肉 食 べ る ,魚 食 べ る ,何 で も 。 そ い で. です。. 今 ,九 十五で ,車 押 してますわ ,入 院 してる息子の. ,. 小学校六年の時 ,弟 が三年や つたかな ,喧 嘩に負. 車椅子 ,五 十五キ ロ あ りますねん。私 ,二 日間 ,車. けて ,校 庭でや らねてた ,私 ,等 持 つてね ,部 屋掃. 押 した ら ,肩 が痛 うて ,た ま りません。ボケてない. く等 ,学 校でですよ ,そ の男の子のところに日 口きに. しね。九十五歳 で。『息子の ため』言 うて。息子 は. 行きま した。で ,有 名にな りま した ,そ ねこそ全校. 息子で 『お母 はん ,長 生きささんなんか ら ,わ し. で有名にな りま した。口 口きにいつて ,あ のお姉さん. こないな つてん ,長 生 き しよんで一。わ し,お かん. ,. こわい ,い うて有名になつた ら,お 父さん喜びま し. のた め に ,車 椅子 の つたん てん ねんで一 』。 お母 さ. た。「弟が泣かされた ら,ロ ロいてこい ,そ れが普通. んも 『息子のため にな ,な ん ぼ歳 い つても息 子 は息. や」言 うて。. うて ,や つて ます。私 は 『ええなあ ,あ んた 子 』 しヽ ら二 人。私なんか病気 しても誰 も来て くねは らへ ん. 最後 に,こ んなや りと りになった。 「林さんには ,び しっと一本 ,真 つ直 ぐな線があ. けど』言 うて …… 」 昭和 二 年 (一 九 二七 年 )生 まれの ひ と りの女性 の話 であ る。 七九歳 の彼 女 は,二 〇〇六年 の現在 ,自 分 ら. りますよね」 「 こ う して ,セ ンセが言 うて くれ はる よ うに ,一. しく暮 ら して い る。 一 九九五年 の地震 で避難所 に居 た. 本で筋の通 つた 道 を行 けた とい うの は ,み んな周 囲. 独居老人 とい う枠 に該 当す るけれ ど,そ う した枠 とい. の人 の お か げで ね 。そ う良 い性 格 で も な い ね ん け. う ものが ,彼 女 を理 解 す る手 がか りに はな らない , と. ど ,み んなか ら何 とな く優 しう してもろて」. 改 めて思 う。. 「十年ぶりとは思えない ,何 というか…… 」. まわ りの 人 たち を冷静 にみ つつ ,自 分 な りに判 断 し. 「明るいですか」 「明るいというか ,お 元気そ うな感 じが します. か ら子 どもの 頃 の こ とまで , しっか りと判 断 して淡 々. ね。もちろん ,体 力的なところは分か りませんけ. と語 って くれ る こ とに感謝 しつつ ,ぼ くは 自分 が彼 女. ど」. を尊敬 して い る とい う こ とに気 が つ く。強靭 な姿勢 と. 「体力的には ,足 も……センセが一歩 ,歩 くとこ ろを,う ちは二歩ぐらい必要やろなぁ」 「昨日,電 話では ,ち ょつと話すのがゆつくりか. て暮 らす。簡単 で は あ る けれ ど,こ う して現在 の こ と. い う表現 は適切 で ない か もしれ ない が ,淡 々 と語 る彼 女 の なか に,戦 後 の世 の 中に対 す る毅然 とした姿勢 と い うもの まで感 じられ る。 イ ン ター ネ ッ トで情 報 収 集 を して ,一 人 で 旅 をす. なあと思たけど,今 日こうや つて話を聞いてて ,電 話のイメージほどは………。そんなに変わつた気はな. る。 中学生 ,高 校 生 とプ リクラのお 店 で会話 をす る。. いでしよ,こ 自身で」. サ ス ペ ンス ものや 数独 の本 を読 む 。携 帯 電 話 も持 っ. 「いや一 ,今 ち ょつと歯があかんのかな。そね と,私 は,だ いたい ,は っきりと喋らへんほうです. た。 そ して ,前 々 か ら続 け て い る作詞 も,詩 のボ クシ. ね。甘えたみたいな喋り方するいうて ,よ う言わね. い にま とめ ,出 来 ればそ こにイラス トを加 えた い と考. るですよ」. えて い る。. ……そうかな ,ぼ くは非常にはつき 「その発音が・ りとしていると思いますけど. (笑 )」. ングに出場 した り, 自分 でパ ソ コンに入 力 して , きれ. 「 普 通 の 人 よ りもわ た しは恵 まれ て い る と思 い ま す」。十年前 の彼 女 の 言葉 が ,思 い 出 され る。地震 か.
(8) 甲南女子大学研究紀 要第 43号. 人間科学編 (2007年 3月. ). ら十一 年 が過 ぎた とい って も,彼 女 の生 活 は,彼 女 の. 彼女 にすれば「ひとに言 うて も, しゃあない しね」 と. ペ ース で続 い て い る。そ れは,彼 女 の 人生 の なかで. い う単純 なことなのだろ う。 しか し,彼 女 はそ うした. ,. す べ て連 続 して い る こ となので あ る 。 便 利 が 悪 い の. 生 き方 をこの二十年間にわたって実践 してい るのであ. で ,仮 設 か ら市営住宅 に移 った ら, よ リー 層 ,不 便 に. る。. な った。 それ で も「暗 くな らへ ん」 ので あ る。 それ は. (2006年 12月 27日. 未完 ).
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