シリコン超階段接合の降伏電圧の厳密解
輿水確 矢崎義秀 清水東(昭和57年8月31日受理)
Exact Solution of Avalanche Breakdown Voltage of
Silicon Hyperabrupt Junctions
TashikaKOSHIMIZU YoshihideYAZAKI AzumaSHIMIZU
Abstract The avalanche breakdown voltage of a silicon hyperabrupt junction diode is calculated by using unequal ionization rates for electrons and holes, and shown graphically as a function of L。 for different values of」Vo and Nb. These parameters characterize the impurity profile in the diode. As the characterstic length Le increases, the breakdown voltage decreases abruptly at the critical point Lc, and the L, varies with the impurity concentration No at x=・O. The breakdown voltages of diodes with Le extremely shorter or longer than Lc, can be estimated from breakdown voltages of abrupt junctions. 1. まえがき 超階段接合可変容量ダイオード1)・2)は電圧容量変化 率がきわめて高く,また,容量変化比も大きくとれる など何ものにも替え難い特徴をもっている。このた め,マイクロ波中継器のFM変調用素子,ラジオ・テ レビの電子同調用・AFC用素子として広く使われて いる。しかし,この素子は,不純物濃度の高い部分で 接合容量が,不純物濃度の低い部分で直列抵抗が決め られるため,しゃ断周波数が高く取れないという欠点 がある。近年ますます高まる高周波化の要求に答える ためには,耐圧の許す限り不純物濃度を全体的に高め る必要がある。したがって,この素子の不純物分布と 降伏電圧との関係を正確に知ることは,素子を設計す る上で大切なことである。 先に筆者らはGeとSiの超階段接合の降伏電圧に ついて近似解を得てきたが3)・4},最近,GaAsのそれ について厳密解を得るプログラムを開発した5}。現在 のところ,GaAsの素子よりもSiの素子の方が大量に 作られ実用上重要であるので,Si超階段接合の降伏電 圧の厳密解を同じプログラムで求めて資料として提供 する。 2.Siのイオン化率 Si超階段接合の電子なだれ降伏電圧を計算するため には,Si中の電子と正孔のイオソ化率の正確な値を知 る必要がある。イオン化率としては,古くはLeeら6) の値が使われていたが,最近,イソパットダイオード の解析のためにイオソ化率を正確に求める研究が行わ れ,現在ではOverstraetenら7)のデータとGrant8) のデータが信頼されている。これらを図一1に示す。
これからOverstraetenらのデータ(OD)とGrant
のそれはかなり近く,後者は前者の約1.・5倍になって いることが分かる。また,電界依存性も極めて近いも のとなっている。 上記のイオン化率は,電界のかなり広い範囲で次の ように表される。 *現在諏訪精工舎7
§ こ ご 105 104 103 102 1 2 3 4 5 1/E(10−6cm/V) 図一1シリコソ中での電子と正孔のイオソ化率 Fig. 1 10niZatiOn rateS in SiliCon. 〔Overstraetenらのデータ〕 α=7.03×105exp(−1.231×106/E) cm−1(1) (1.75×105≦E≦6.0×105V/cm)(電子) β=1. 582×106exp(−2.036×106/E) cm−1(2) (1.75×105≦E≦4.0×105V/cm)(正孔) 〔Grantのデータ〕 Grant Grant 、 、Lee 。心 \’・、 、 α A × (electr・nS) 、 、 β (h・les)’ @ 、 @ 、 @ 、 @ 、 @ 、 @ Lee、 \ 、A\
、 、 、 、 、、 、 、 、 、_’
、 、 、 、 α=6,2×105exp(−1.08×106/E) cm−1 (2.4×105<E<5.3×105V/cm)(電子) β=2.0×106exp(−1.97×106/E) cm−1 (2.0×IOs<E<5.3×105V/cm)(正孔) (3) (4) OverstraetenらとGrantのデータを使って後述の 方法でSi超階段接合の降伏電圧を計算した例を図一2 に示す。これから,不純物分布の大部分の領域で両者 の降伏電圧の差は15%程度と小さいことが分かる。 Grantのデータの方がイオソ化率が高いので降伏電圧 は低くなっている。降伏電圧はその素子が電圧何ボル トまで使えるかという目安を与えるものであり,ま た,上に示したように両者の計算値の差が小さいこと から,本論文では,安全性を見込んで低い降伏電圧を 与えるGrantのイオン化率のデータ(式(3),(4))を 採用する。 3. 電子なだれ降伏電圧の計算 超階段接合の不純物分布を次式で表されると仮定す る。 N(x)=1VPoexp(−x/Le)十Nb (0:≦x≦Wo) (5) N(x)=N.>No十Nb (x<0, x>Wo) (6) 103 ε ⊆IO2 101 N。=1×1017cm−3 @ハら=1×1015cm−3OD
Grant 10−5 10一4 Le(cm) 図一2異なるイオン化率による降伏電圧の計算例 Fig.2 Breakdown voltage of hyperabrupt junctions calculated from different iOnizatiOn rateS. 工 一一 @一一一一一 一一 一一一一__ 品十」協 凡exp(一x/Le)+花 、 、 ( 、 さ 、 之 、\ 貝 旭甘 、 黶Q__A__________ み 7γo § Distanceエ3
N。。 図一3超階段接合の不純物分布 Fig.3 1mpurity distribution of hyperabrupt junction ここに,xはp−n境界からの距離であり,2Voはx=+0 における不純物濃度,2Vbは母材の不純物濃度, N.。 は高濃度領域の不純物濃度である。Woはエピタキシ ャル層の厚さ,Leは不純物濃度が1/eに減少するま での距離である。この不純物分布を図一3に示す。 室温でこれらの不純物は完全にイオン化していると 仮定し,ボアソソの方程式に式(5)および(6)の不純物分 布を代入して解くと,電界分布E(x)および電位分 布V(x)が求められる。パンチスルーしていない(空 乏層幅がWoよりも小さい)場合にはEω一一
XN・Le{・xp(一去)一・xp(一芸)一凡繕)} (・)
yω一:N・L・2{1−・xp(Le)一去・xp(一芸)
」芸芸)} (・)
となる。ここに,qは電子の電荷,εはSiの誘電率, Wは空乏層幅である。 p+−n接合の電子なだれ降伏の条件は ∫ごβ・xp{∫∴(α一β) d・’] d・一・ (・) で与えられる。ここに,VV.は降伏時における空乏層 幅である(n+−p接合の降伏条件も同様な式で与えら れるが,降伏電圧の結果はほとんど同じであことが示 されているし5),また,p+−n接合のほうが実用上大 切であるので,ここではp+−n接合の解析だけを行 う)。 降伏電圧を求める手順を示そう。まず,式(7)を式(3) および(4)に代入する。つぎに,これらの式を式(9)に代 入して,降伏条件を満たす,すなわち,左辺の積分が 1に等しくなるような空乏層幅W.を求める。この積 分は二重積分になっているし,被積分関数も複雑であ るので電子計算機で数値積分を行う。このようにして 求められたVV.を式(8)のxとWに代入すると,電子な だれ降伏電圧V.が求まる。すなわち, V・一ON・Le・・−1+㌘)・xp(vv.Le) となる。 2Vb 十 2」Vo{(
(vv.Le)2} 4. 結果および討論 ao) 上述の方法で計算したシリコン超階段接合の降伏電 圧の結果を図一4に示す。実用的な不純物分布の全領 ε 104 103 102 ハら=1×1013cm−3 2×1013 ハ%=1×1016颯一3 5×1013 一 1×1014 2×1014 5×1014 1×1015 10−4 (a) Le(cm) 10−3 ε 104 103 102 10−5 10二4 L。(cm) (b) 10−3 ε ⊆ 103 102 101 10−5 P×1014 2×1014 T×1014 P×1015 Q×1015 5×1015 Le(cm) (c) 10 4 103 ε 〉’ 102 101 凡(cm−3) 1×1014 N。=1×1017cm 3 2×1014 5×1014 1×1015 2×1015 5×1015 1×1016 一一A c 1 10−5 Lm IO−4 L,(cm) (d) ε 103 102 101 Nb(cm−3) 2×1014 T×1014 P×1015 Q×1015 N。=2×1017cm−3 5×1015 P×1016 Q×1016 10−5 10−4 (e) Le(cm) ε ∫ 103 102 101 Nb(cm−3) N。=5×1017cm−3 5×1014 1×1015 2×1015 5×1015 1×1016 2×1016 5×1016 10−6 (f) 10−5 Le(cm) 10−4103 Nゐ(cm−3) P×1015 N。=1×1018cm−3 2×1015 5×1015 1×1016 2×1016 T×1016 1×1017 表一1超階段接合と階段接合の比較 超階段接合
階段接合
102 ε ⊆ loi恥勧L・(μm)N。L.(・m−2)V。(V)W。(μm)1臓¢め
1×1016 2×1016 5×1016 1×1017 2×lou 5×1017 1×1018 2.6 1.5 0.68 0.40 0.23 0.12 0.07 2.6×1012 3.0×1012 3.4×1012 4.0×1012 4.6×1012 6.0×1012 7.0×1012 50 30 18 12 8.5 5.5 4.5 2.6 1.4 0.70 0.41 0.24 0.13 0.08 2.6×1012 2.8×1012 3.5×1012 4.1×IOt2 4.8×1012 6.5×10i2 8.0×1012 10−6 10−5 Le(cm) (9) 図一4 シリコン超階段接合の降伏電圧 Fig.4 Avalanche breakdown voltage of silicon hyperabrupt junctions. 域をカバーするようにNo ・= IOi6∼1018cm−3の範囲を 7段階に分け,また,2VoL,=5×1011∼2×10i3cm’2, N,〃V。=0.1∼0.001の範囲で計算してある。筆者ら が以前から指摘しているように3) ’−5),2Voと2Vbを固定 してLeを変化させると, Leのある限界値(これをLc と表す)で降伏電圧が急激に低下していることが分か る。Leがこの限界値Lcよりも十分に大きいときに は,降伏電圧はほとんど2V。だけで決められ,不純物濃 度が」Voの階段接合の降伏電圧とほぼ等しい。また, 逆にL,がL。よりも十分に小さいときには,降伏電圧 はほとんどN,だけで決められ,不純物濃度が2Vbの 階段接合の降伏電圧にほぼ等しくなっている。 L,についてもう少し考察してみよう。いま,図一4 で降伏電圧が最も急激に低下している点(ここのLe の値がL,)で曲線に接線を引き,L,が大きいときの降 伏電圧の値に外挿したときのL,の値をLmとしよう。 このLmは降伏電圧が下がり切った点のLeの値と考 えられる。限界値LcはLb/」V。の比によって多少変化 するがLmの70∼90%となっている。2V。値が決まる と,LmはN,/2Voの比によってはほとんど変化しな い一定値となる。N。によるLmの変化の様子を表一1 に示す。2VoとLmの積は表の第3列目に示すが,2Vo が2桁変化しても3倍程度しか変化しない。 一方,不純物濃度が2Voの階段接合を考えてみよ う。降伏電圧γBを表一1の第4列に,降伏時の空乏層 幅VV.を第5列に示す。このW.とLmはかなりよい 一致を示している。したがって,IV,WBと2VoLmの 値もよく一致している。このことの意味を考えてみよ ∧元o 、 、 、 、 、 、 0 L仇 No 0 wδ (a)超階段接合 (b)階段接合 図一5超階段接合と階段接合の比較 Fig.5 Comparison between hyperabrupt and abrupt junctionS. う。ノV。Lmは,図一5(a)に斜線で示す部分の全不純物量 を表しており,拡散などで添加した量である。また, 2V。W.は図一5(b)に示すように降伏時の空間電荷の量 を示している。これらが等しいということは降伏時の 最大電界が等しいことを意味する。高濃度領域がW五 よりも狭いリード形イソパットダイオードを考えたと き,不純物濃度が2Voの階段接合の降伏電圧よりも上 昇してくるが,これは,超階段接合のLeがLmより も小さくなると降伏電圧が上昇することに対応する。 5. ま と め シリコソ超段階接合の降伏電圧が,不純物分布を示 すパラメータ(2V。,2Vb, Le)を実用上大切な範囲で 変化させて計算され,図に示されている。2Voが決ま るとLeのある値で急激に降伏電圧が変化することが 示されている。ここに得られた結果は,超階段形可変 容量ダイオードの設計ぼかりではなく,リードダイオ ードやトランジスタのエミッタ接合の設計にも役立つ ものと考えられる。参考文献
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