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指導主事による児童生徒・保護者への学力向上支援事業「学力向上キャラバン」の可能性について 利用統計を見る

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指導主事による児童生徒・保護者への学力向上支援事業

「学力向上キャラバン」の可能性について

A Study on the Effectiveness and Potentiality of “The Caravan for Improving Students’ Academic Abilities in School” as a Support Project of Learner’s Academic Ability for Pupils/Students

and their Parents by the Supervisors of School Education 饗 場   宏* AIBA Hiroshi 要約:山梨県教育委員会義務教育課では,「学力向上総合対策事業」の一つとして,平 成 29 年度より「学力向上キャラバン」を推進している。この事業は,主に同課の指導 主事が要請のあった県下の公立小中学校を訪問し児童生徒や保護者に対面して講演等 を行うことにより,各校の学力向上への取組を支援するものである。指導主事等によ るこうした活動は,校内研究会等において教職員に対して指導等を行う従来のものと は対象等が異なっており,本事業の特色の一つといえる。平成 30 年度の「学力向上 キャラバン」実施校で行った児童生徒・保護者対象のアンケートでは,本事業への肯 定的意見が約 99%を占めた。アンケート回答内容と指導主事等の支援内容の分析を試 みたところ,指導主事等から受けた講演等により,児童生徒による日頃の学力向上へ の取組の有効性や重要性について再認識がなされ,努力してきたことへの自信や学校 への信頼がさらに深められたという状況が認められた。 キーワード:学力向上 指導主事 大学教員・附属校園教員による学校訪問

Ⅰ はじめに

 平成 30 年度,山梨県教育委員会(以下「県教委」)義務教育課では,各校の学力向上活動への支 援,育成指標に基づく教員研修,客観的な学力把握等をとおして,全県を視野に入れた学力の向上 を目指す「学力向上総合対策事業」を展開した。本稿では,この「学力向上総合対策事業」の具体 策の一つである「学力向上キャラバン」に焦点を当て,実績記録等を整理しながら,その成果につ いて分析を試みる。そこで,事後アンケートに表出された児童生徒や保護者等の気付きや学びが, 指導主事等のどの活動や説明等と関連があったのかを洗い出し,どのような支援が有効であるかと いった可能性について考察を行う。この課題は,平成 30 年度に県教委義務教育課初等教育担当課長 補佐として勤務した筆者の経験からその所在に気付いたものであり,この分析が,今後の学力向上 推進事業ならびに今後さらに拡大するであろう大学教員や附属校園教員による学校訪問に際して, 少しでも資することを願うものである。なお,掲載した資料は,「学力向上キャラバン」で指導主事 等により実際に提示されたものや県教委主催の教職員研修会・指導主事研究会等において配付され たもの,山梨県総合教育センターホームページなどで公表されたものであることを申し添える。 * 教育実践創成講座

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Ⅱ 問題の所在

 平成 30 年度に展開した「学力向上キャラバン」実施 後の児童生徒アンケート及び保護者アンケートでは, すべての学校において,肯定的な回答が非常に多く寄 せられた(図1)。保護者にあっては,肯定的な回答の 割合は 100%となっている(表1)。  県教委から来校した指導主事等が講師とはいえ,児 童生徒・保護者が忖度して回答するような対象ではな いことから,肯定的な回答が多く寄せられた理由は, 指導主事等の活動内容に求められると考える。  そこで,まずは「学力向上キャラバン」の概要を共 有し,次に指導主事等が行った支援内容とアンケート 回答内容の関連について分析を試みる。 表1 学力向上キャラバン実施後の行った児童生徒及び保護者アンケート回答状況 ※空欄は該当なし No 学校 児童生徒の回答 保護者の回答 回答数 肯定的 回答数 肯定的 回答割合 回答数 肯定的 回答数 肯定的 回答割合 1 A小学校 123 123 100%       2 B小学校 50 50 100%       3 C小学校 38 38 100%       4 D小学校 31 31 100% 17 17 100% 5 E小学校4年 31 31 100% 2 2 100% 6 F小学校5年 32 30 94%       7 G小学校6年 35 35 100%       8 H小学校 22 21 95% 3 3 100% 9 I小学校 56 53 95% 7 7 100% 10 J中学校 129 129 100% 3 3 100% 11 K中学校 98 98 100% 10 10 100% 12 L中学校 98 98 100%       13 M中学校 170 165 97% 2 2 100% 14 N中学校 26 26 100%       15 O中学校 227 223 98% 18 18 100% 16 P中学校 100 100 100% 5 5 100% 17 Q中学校 9 9 100% 7 7 100% 合 計 1275 1260 98.8% 74 74 100% 県教委主催平成 30 年度指導主事研修会資料より学校名等を変更して掲載 図1 学力向上キャラバン児童生徒アンケート結果

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 下のアンケート(図2)への回答のうち,「①」及び「②」に○を付した回答を本稿では「肯定的 な回答」と表現した。

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Ⅲ 状況の共有 

(「学力向上キャラバン」の概要) 1 「学力向上キャラバン」が位置づく「学力向上総合対策事業」の目的と背景   「学力向上キャラバン」は,県教委義務教育課が推進する「学力向上総合対策事業」の一環とし て取り組まれている(図3)。この「学力向上総合対策事業」は,市町村(組合)教育委員会や大学 等と連携し,時代の変化やニーズに応じた学習方法や学習環境を整え,学校教育の中心的役割であ る学力向上に向けた教育課程や授業の改善,教員の資質向上,家庭・地域との連携等を充実させる ことを目的に,「授業改善」,「教員の資質向上」,「家庭・地域との連携」の3本柱のもと,全県を視 野に入れた学力の向上を目的とした事業(表2)である。  この事業が立ち上げられた背景には,新学習指導要領の完全実施を見据えて,その趣旨の周知や 実現を図るための取組が求められている状況があることをはじめ,全国学力・学習状況調査結果等 から見られた課題を改善していくことへの期待がある。この課題について県教委は,山梨県総合教 育センターのホームページにおいて,平成 29 年度「全国学力・学習状況調査」における「教科に関 する調査」結果として,「本県は,中学校を中心に全体的に改善の傾向が見られるものの,小学校で は,全ての教科で全国平均正答率を下回っている」という点や「『知識』に関するA問題よりも『活 用』に関するB問題の方が,平均正答率で見ると低い」等といった点を挙げている。また,「生活習 慣や学習環境等に関する調査(児童生徒質問紙)」からは,「『自己肯定感が高く,夢や目標を持って 生活している児童生徒の割合が高い』ものの,『学校の授業時間以外に,普段勉強すること』につい ては,全国平均を下回っている」といった内容を紹介している。  (https://www.pref.yamanashi.jp/gimukyo/zenkokugakuryoku/documents/h29zenkoku_gaiyou.pdf) 図3 平成 30 年度第1回管理職研修校長等研修会 説明資料

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表2  「学力向上総合対策事業」として実施する各事業と主な内容 Ⅰ授業改善 学力向上推進事業 「学力向上対策会議」を設置し,学力向上に関する事業内容及び実施 効果並びに改善の方向性について,学識経験者による学力向上アドバ イザーから助言を得ることで「学力向上総合対策事業」の充実を図る, など。 学びのサイクル改善 事業 小5~6年児童に対し,思考力・記述力が求められる問題を実施し, 達成度を踏まえて効果的な対策を明らかにして授業改善を行う。年間 を通し継続的に行う事により,授業改善のサイクルを確立する。 主体的・対話的で深 い学び推進事業 本県における学力向上に関する課題の改善及びこれからの時代に求め られる資質・能力を育成する観点から,主体的・対話的で深い学びの 実現に向けて学習内容や指導方法の改善を推進するとともに,新学習 指導要領への円滑な移行に向けて全県的な対応を促し,確かな学力の 向上と教育課程の充実を図る。 学力向上支援スタッ フ配置事業 教員の本来業務である授業等に注力する時間を確保するために学習支 援を行うスタッフを配置する市町村への助成制度を設け,教員の担う べき業務に専念できる環境を整え,児童生徒の学力の向上を図る。ま た,教員の多忙化改善を図る。 中学生英語力向上サ ポート事業 市町村等が実施する英語検定支援事業に対し助成及び英語教師の授業 改善の指導を行い,中学生の英語力の水準や英語学習に対する意識・ 意欲の向上を図る。 読解力・記述力向上 推進事業 新聞記事に関する読解,記述の設問から構成される「新聞ワークブッ ク」を作成し,児童生徒に様々なテキストから情報を正確に読みとり, 自分の知識や体験と関係付けて,場面や状況に応じて適切に記述する ことができる言語能力の育成を図る。 山梨県学力把握調査 事業 県内の全小3,小5,中2児童生徒の学習定着状況を把握し,定着が 不十分な状況の解消を目指すなど,きめ細かな指導の充実に役立てる。 また,授業における指導方法や学校,家庭,地域における学習環境の 改善に役立てる。 Ⅱ◇ 家庭学習習慣化促進 事業 ◇=家庭・地域との 連携 家庭学習に取り組む際のポイントを掲載したクリアファイルを,県下 の児童に配付し,児童がファイルを活用することを通して,学校・児 童 ・ 保護者の連携を強化するとともに,児童の家庭学習を推進し,主 体的に学ぶ態度の育成を図る。 同時に,「学力向上キャラバン」をと おし,学校などで推進している家庭学習習慣定着等の取組について, 保護者への理解を図る。 Ⅲ教員の資質向上 授業力養成事業 具体的な授業を通して,文部科学省教科調査官や実践研究者(大学教 授等)から優れた授業実践について学ぶ「授業力養成講座」を実施し, 教員の実践的な授業力の向上を図る。 ミドルリーダー研修 事業 他県の公開研究会やフォーラム等に中堅教員を派遣し,座学ではな く,学力先進県の優れた実践に触れる体験的な研修を行うことにより, 学校におけるミドルリーダーとしての誇りや責任の自覚を促すととも に,教員としての更なるスキルアップを図る。 若手教員グローアッ プ事業 退職教員の経験及び知識・技能を生かし,若手の教員に,専門的かつ 継続的な指導を行うことにより,若手教員の資質向上を図る。 出典:平成 30 年度第1回管理職研修校長等研修会説明資料

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2  「学力向上キャラバン」の「学力向上推進事業」における位置づけ   「学力向上キャラバン」は,「Ⅰ授業改善」の柱の一つ「学力向上推進事業」に位置づいている。  この「学力向上推進事業」は,次の3つの取組により推進される。  「学力向上推進事業」のうち,「学力向上対策会議」が学識経験者によるアドバイザーからの指導 助言を得て「学力向上総合対策事業」全体の充実を図るという役割を有すこと,また「学力向上 フォーラム」が当該年度に実施した学力に関する3調査(「全国学力・学習状況調査」「山梨県学力 把握調査」「山梨県教育課程実施状況調査」)の結果の公表や調査結果に基づく授業改善のポイント を全小中学校に示す重要な役割を有すことから,両事業が「学力向上推進事業」に位置づけられた ことは妥当であるといえる。  では,「学力向上キャラバン」が,「学力向上推進事業」に位置づけられる理由は何か,それは,「目 的」からうかがうことができる。各事業を進めるにあたり,不可欠なものが事業の目的である。「学 力向上キャラバン」においても,十分審議され,「開催要項」の中に,次のように示された。  この「目的」の中で注目すべきは,「支援」する対象と示された「各小・中学校が取り組んでいる 学力向上の取組」が,「学力向上推進事業」の「学力向上フォーラム」で説明される「授業改善ポイ ント等」を参考にして学校ごと設定されることが多いという点である。ここに,「学力向上キャラバ ン」が,「学力向上フォーラム」の成果を補完しつつ推進されているという関係性が見えてくる。  また,「学力向上キャラバン」の目的はもちろん,内容等について「学力向上対策会議」でのアド バイスを生かしながら推進されていることから,この2事業の関係性は明白である。  つまり,「学力向上キャラバン」は,「学力向上対策会議」の成果を得ながら,さらに「学力向上 フォーラム」の成果を各校に浸透させつつ推進しており,「学力向上推進事業」の重要なファクトと なっているのである。見方を変えると,学力向上について,「学力向上対策会議」において県教委内 で見通しが共有され,「学力向上フォーラム」で教職員に共有され,「学力向上キャラバン」で児童・ 生徒及び保護者と共有されるという流れであるといえる。  なお,「学力向上キャラバン」は,「学力向上総合対策事業」の3本柱のうちの「Ⅱ家庭・地域と の連携」においても取組内容の一つと位置付けられており(前掲ポンチ絵参照),保護者への支援を とおし,家庭学習のさらなる推進等による学力向上といった使命を担っていることも確認したい。 (1) 学力向上対策会議:学力向上アドバイザーから指導助言を得ることで,学力向上総合対策事 業の円滑で効果的な推進を図る。 (2) 学力向上フォーラム:県内児童生徒の学力実態に応じた講義やシンポジウム等を実施し,授 業改善ポイント等の普及に努める。 (3) 学力向上キャラバン:希望する学校における児童生徒及び保護者を対象とした集会等に指導 主事を派遣し,各校の学力向上活動を支援する。 1 目的  県教育委員会指導主事等が県内公立小・中学校を訪問する「学力向上キャラバン」を実施し, 各小・中学校が取り組んでいる学力向上の取組への支援となるよう,児童生徒や保護者の学習に 対する悩みの改善や児童生徒の学びに向かう力の育成を目指す。

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3  「学力向上キャラバン」の展開   「開催要項」に示された「目的」以降の内容は,次のとおりである。 2 会場・日時・対象   ・会場  山梨県内公立小中学校   ・日時  会場となる小中学校の希望による。   ・対象  対象校小中学生,参観を希望する保護者      (全校児童生徒でなく,学年単位でもよい。学級単位は公平性の観点から実施しない。) 3 期間,実施回数   ・平成 30 年度は,6月~2月の間で実施する。    4 内容  ・県教育委員会指導主事等が,市町村教育委員会の要請に応じて小中学校現場を訪問し,学力 向上に資する集会活動等に参加し,講話や相談会を実施する。  ・事前に保護者にも案内を配付し,参観希望のある方は参加可能とする。保護者への通知は, 対象校が作成,配付する。  ・事務局を県教育庁義務教育課内に置き,事業の運営を行う。目的や日程等に係る学校現場と の調整は,教育事務所が行う。予算の範囲内で指導主事以外の講師を招聘することも可能で あり,調整の中で希望等申請することができる。  ・希望の照会を行い,従来から学びに向かう資質・能力の向上に取り組んでいる学校の中で訪 問を希望するところから,訪問対象校を選定する。  ・実施する集会の内容は,学校の希望によるが,学力向上に資するもので,対象校で進められ ている取組の後押しになるものとする。  ・年度当初から計画されていた集会等に参加するなど,教育課程実施や準備等で,対象校の先 生方,児童生徒,保護者等の過負担とならないように配慮する。  ・実施内容について,事前に対象校と打合せ,目的にかなうよう準備を行う。 5 申込み方法  ・活用を希望する小中学校は,別紙「学力向上キャラバン希望申請書」により,指定された期 日までに,所管の教育事務所(甲府市にあっては甲府市教育委員会)にFAXを送信する。  ・各教育事務所,甲府市教育委員会は,希望を集約し,日程を調整する。 6 実施方法 (1)日程   ・平日に実施する。      ※ 原則として,「きずなの日」の放課後は実施しない。   ・活動全体で,30 分から 50 分の時間で実施する。   ・次第については,対象校の計画による。「講演」「ワークショップ」「集会での助言」「悩み相談」 「質問への応答」等だが,当該校との相談の中で,児童生徒の実態に応じてこれらを組み合 わせ,参加する児童生徒にとって有意義なものになるように工夫する。

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(2)準備   ・担当指導主事,管轄教育事務所(甲府市にあっては甲府市教育委員会)担当者が,事前に 当該校を訪問するなどし,当日の運営等について打合せを行う。   ・保護者が参観できるよう,対象校から事前に案内を配付する。受付は不要とし,負担軽減 のため当日の対応も最低限のものでお願いする。(上履き持参,保護者証着用,徒歩・公共 交通機関利用等)   ・会場準備のうち,マイク,演台,インターネット接続,プロジェクター,スクリーン等の 機器機材については,会場校に依頼する。データを持ち込む場合は,訪問する指導主事が CDかUSB,もしくはPCを持ち込む。   ・講演やワークショップで使用する紙資料等は,保護者分も含め県教委が準備する。 (3)事後   ・先生方,児童生徒にアンケートを行い,どの程度満足できたか評価していただく。  この中で確認すべきは,「学力向上キャラバン」の設定に関わり,「年度当初から計画されていた 集会等に参加する」としていること,及び「原則として,『きずなの日』(※1)の放課後は実施し ない。」としていることある。つまり,「学力向上キャラバン」の実施が,学校の多忙化改善の取組 と相反しないように配慮がなされている点である。このことにより,教職員はもちろん,児童生徒 や保護者が,多忙感や負担感をあまり感じることがなく参加できたことが推測でき,肯定的な回答 の多さへの一因となったと考えられる。一方で,これら2つの要件を満たさなかった学校について は,「学力向上キャラバン」への申込みを制限させてしまったであろうという課題が想定できるが, その検証は別に譲る。  また,「各教育事務所,甲府市教育委員会は,希望を集約し,日程を調整」とあるように,各校に とって身近な存在の各地域の4つの教育事務所及び甲府市教育委員会所属の指導主事や地域学力向 上推進幹が事業の窓口として調整等の役割を果たしていたことから,各校においてもその要望を伝 えやすい状況であり,かつ有効な助言を得ながら申込等ができた状況であろうことがうかがえる。  さらに,「担当指導主事,管轄教育事務所(甲府市にあっては甲府市教育委員会)担当者が,事前 に当該校を訪問するなどし,当日の運営等について打合せを行う。」とあるように,実施校との事前 打合せに義務教育課指導主事のみが参加するのでなく,地域や各校の課題をより深く把握した教育 事務所等の指導主事等も参加したことにより,各校の実情に沿った内容,児童生徒や保護者が納得 できるような内容や方法へと精緻化したと考えられる。つまり,肯定的な回答の多かった要因の一 つとして,「各教育事務所,甲府市教育委員会」が果たした役割の大きさが挙げられるのである。 「きずなの日」の新設  県教育委員会では,(中略)放課後に部活動や会議等を実施せず,児童生徒と向き合う時間の確 保に努めることは,教員の多忙化改善の視点からも重要であることから,(中略)児童生徒と教員 の「きずな」がさらに深まることを目的とした「きずなの日」を新たに設置することとする。(中 略)平成 30 年度からは,毎月2回,原則第一月曜日と第三月曜日に「きずなの日」を設置する。 「きずなの日」には,放課後,教員が児童生徒と向き合う時間を創出するとともに,定時以降早め に退校することを管理職が職員に促すことなどを徹底する。 ※1 「きずなの日」 『教員の多忙化改善に向けた取組方針』(平成 29 年3月山梨県教育委員会)

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4  「学力向上キャラバン」の実際   「学力向上キャラバン」の実施に際し,各校から寄せられた希望は次のとおりである。 親子による学力向上に向けた取組,家庭学習の意欲向上に向けて家庭でできること等について 苦手な学習に対して関心を高めたり,日頃の学習が日常生活に役に立っていることを感じさせた りする等の内容,また,家庭学習への意欲向上や家庭学習の取組方法に関する内容について 20 年後の社会はどのように変化していくと考えられているのかを学ぶことで,これから大人にな るために必要となる力とは何かを生徒自身に考えさせ,話し合わせたい 家庭学習や自主学習において,自らの目標を設定し集中して取り組む姿勢の大切さについて 家庭学習・自主学習の仕方について 高校入試を目前にしながらも入試のための学習ではなく,今,学習することが生涯学習し続ける ために大切なこと等について 学力の低い現状を踏まえ,学力向上へ向けての勉強方法や,楽しく学び定着に結びつける方法, 家庭での学習等について 全校生徒を異年齢グループに分けて行う「異年齢集団における自主学習交換会」における自主学 習の取り組み方等について 自ら目標や課題・学習内容を設定し,家庭学習に取り組むことの大切さを実感させたい 家庭学習の取組の評価として「家庭学習力アンケート」を実施している。その中で自己マネジメ ント力(自分の振り返りをしてよりよくする力)に課題がある。そこで,家庭学習において,自 己省察するための取組例や,やる気が高まり,より良いPDCA サイクルを構築できた例,自己有 用感が高まった例等を踏まえた講話をいただきたい 「主体的・対話的で深い学び」について,生徒・保護者・教職員を交えて意見交換を行い,目指す 深い学びについて意識を高めるための内容 外国語科に対する学習意欲の伸長を目指し,外国語を学ぶ意義や楽しさについて 来年度県学力把握調査を実施する学年の児童・保護者を対象に,学ぶことの意味・意義・意欲的 に学ぶとは何か等を(小学校)2年生に分かる言葉で伝えていただきたい 適切な学習集団として良好な友だち関係をつくっていくための心構え,ワークショップなど 進学や進級に向けて,新しい人間関係をつくっていくには,どうしたらいいか,心構えやスキル について 家庭学習の動機付けと定着を図り,学力向上につなげていく契機としたい  最も目を引くのは「家庭学習」というワードである。多くの学校が,学力向上に向けた努力点・ 課題として家庭学習習慣の定着を挙げており,それは,前年度(29 年度)の全国学力・学習状況調 査児童生徒質問紙調査から県全体の課題として指摘されているものである(表3)。  また,「これから大人になるために必要となる力とは何か」といった学びの必要性・必然性に迫る 内容や「良好な友だち関係をつくっていくため」といった適切な学習集団づくりの重要性に気付か せる内容など,「学力向上キャラバン」に寄せる各校の期待は多岐にわたっていることがわかる。

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表3 平成 29 年度 全国学力・学習状況調査児童生徒質問紙調査 結果  なお,上掲資料とは別の「質問番号(16)学校の授業時間以外に,普段(月曜日から金曜日),1 日当たりどれくらいの時間,勉強をしますか(学習塾で勉強している時間や家庭教師に教わってい る時間も含む)」についての結果においても,山梨県(公立)は,全国(公立)より勉強時間が少な い傾向であることが報告された。 児童質問紙 生徒質問紙 出典:国立教育政策研究所のホームページより http://www.nier.go.jp/17chousakekkahoukoku/factsheet/17prefecture-City/19_yamanashi/19p_17ag.pdf 出典:国立教育政策研究所のホームページより http://www.nier.go.jp/17chousakekkahoukoku/factsheet/17prefecture-City/19_yamanashi/19m_17ag.pdf

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Ⅳ 考察

 さて,各校から「学力向上キャラバン」に対して寄せられたこれらの希望に対し,担当した指導 主事等は,前述した打合せ等をとおし,適切な支援内容を検討し,実施することとなる。  すべての支援内容を詳述することは不可能であるが,大まかなくくりを設定し,児童生徒・保護 者のアンケート回答とともに主な提示資料等から,考察を図っていく。 (1)学ぶことへの姿勢や考え方を見つめ直す支援の可能性 ※枠内はアンケート回答より(以下同じ)   「集中」「やる気」「繰り返し」「自分のため」といったワードは,これまでにも,学習内容や学習 習慣の定着等を意図した様々な指導の中で,教師や保護者によって多く用いられてきたものであろ う。一方,ここで着目したいのは,「勉強はカッコイイ」というワードに多くの児童生徒が共感をし ている点である。このワードは,次の資料(図4・5)とともに,指導主事による講演の中で伝え られた。   「勉強」「家庭学習」等というワードに後ろ向きな印象をもつ傾向は,多くの児童生徒に共通して いることといえよう。その印象を乗り越え「勉強」に取り組んでもらいたいという大人の願いは, 時として,お仕着せ的な叱咤激励の文脈や修行的な要素を想起させるワードを伴って伝えられては ○勉強はカッコイイを意識してがんばりたいです。(小5) ○ぼくは「ながら」勉強をしていたので集中してやろうと思いました。(小5) ○自分のやる気スイッチは自分で入れなきゃと思いました。勉強することはカッコイイから,が んばろうと思いました。(小6) ○家庭学習は「目に見える達成感」がいいと思った。なぜなら,事前にやることを積んでおくこ とで,「今日はこれくらいやるんだな」と思ったから。(中1) ○学習は一人だけで行うものではないということ。今後のことで悩んでいたり,また,学習の不 明点があったりした場合には,自分だけで考えず,周りの大人や先輩に力を借りることの大切さ に気付いた。この互いに助け合うことを意識していきたい。(中2) ○学ぶことはカッコイイなどの言葉がとてもよいと感じました。自分でスイッチを押せるように がんばりたいです。(中3) ○集中することや反応することにより,すっきり効果があるというように,どのように取り組む ことができると,どのようなよいことがあるのかというのが,わかりやすく勉強になった。また, 具体的なお話の中で,詳しく説明していただいたので,自分も試すことができると思った。現在 の自分の学習のよい点・悪い点を見つけることができるよい機会となった。(中3) 図4 提示資料1 図5 提示資料2

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いないだろうか。そもそも勉強を,「カッコイイ」「カッコワルイ」という判断でとらえたりする経 験は,およそ日常の生活の中ではもち得ないものであろう。しかし,日常では出会うことがない指 導主事により「カッコイイ」というワードで,児童生徒の価値観をくすぐることができた本事例は, 児童生徒に伝えるワードによって,大きく効果が異なってくるという状況を証明している。   対面する児童生徒の実態や発達段階を考慮すること,また児童生徒の琴線に触れるワードなどを 用意し効果的に伝えることなどにより,担任ではない招聘講師であっても,高い教育効果を生み出 す可能性を示しているといえる。  上は,講演の中で示されたエビングハウスの忘却曲線(図6)に触れたアンケート回答の一部で ある。この話題においては,忘却曲線という客観的な根拠を取り上げ,その解説をしながら「復習」 の大切さに気付かせることを主なねらいとしている。 「せっかく勉強したのに,忘れてしまうのはもっ たいない。」「もったいないから,復習をして忘れ ないようにしよう。」といった思いを,小学生の回 答からうかがうことができる。  中学生の回答からは,教師や保護者が口に出しが ちな「集中」「繰り返し」というワードを自ら使って, その大切さを表出していることがわかる。保護者か らも,十分納得をいただいた旨の感想を得ている。  このことから,児童生徒は,科学的・客観的な 情報であっても十分にその趣旨を理解したうえで, 自分なりの解釈を得ることができるということが 明らかになった。しかも,講師があえて使わなくても,指導の中に込められがちなワード(「集中」 「やる気」「繰り返し」「自分のため」などを紹介)を自ら見出し,自己の思いとして表すことができ るということも明らかになった。前述の「カッコイイ」とはまた異なるアプローチである。   「『美しい』という言葉を使わないで,美しい情景が相手に伝わるように詩を書いてみよう」とい う学習課題を耳にしたことがあるが,この事例は,まさに「指導者がその言葉をつかわないで,児 童生徒に自ら気付かせよう」という支援内容に置き換えられるものであろう。  学ぶ意欲の向上を期した指導において,日頃児童生徒と接している担任や保護者は,往々にして わかりやすいたとえ話や訓話といった直観的・具体的な話題を取り入れがちであると思われること から,この事例のように,指導主事等は,担任等とは違った視点,異なる角度で教材を準備するこ とが有効であるという可能性を示している。 ○ 20 分で 40%の物事を忘れるという事がとてもびっくりしました。(小6) ○エビングハウスの忘却曲線で,忘れてしまうことを知ったから,復習をしっかりしようと思っ た。(小6) ○忘却曲線の図で,集中して,繰り返してやれば,たくさん記憶に残るなんて,すごくいいこと を教わった。(中1) ○ちょうどタイムリーな話でした。集中力がなく,英語の単語など覚えられない!俺はできない と子どもが落ち込んでいるところだったので,エビングハウスの忘却曲線の話を親子でうかがっ て,やっぱり繰り返しだよねということを胸に落とすことができました。こうすればこんな力が つくという具体的なお話が多かったので,参考にして実践したいと思います。(保護者) 図6 提示資料3

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 近未来について考え,自己実現にむけた意欲を高めることを意図した内容も展開された。この支 援にかかわるアンケート回答の答は次のとおりである。  この事例は,次のような資料(図7・8)を提示しながら中学生を対象に展開された。 さらに,数年後の未来にかかわって, ○ 新学習指導要領が,将来について「予測困難な時代」という認識のもとつくられていること ○ 新学習指導要領において,高等学校では「総合的な探究の時間」「古典探究」「理数探究」な どと名付けられた教科・科目がつくられ「探究」という学びが重視されることになること ○ 新大学入試制度として,記述問題が設けられたり,英語については検定等の活用が検討され たりしていること などを紹介し,適時,グループで意見交換の時間を設けながら展開した。  アンケート回答からは,この支援内容が,高校入試やキャリア教育として行われる職業体験活動 に臨む中学生にとって,自身の将来や就業について切実に考えたい,考えなければならない環境に あるという需要にマッチしたものであったことがうかがえる。 〇自分の将来のことを考えて,それに向けて学習をするなど,自分のための学習をするにはどう したらいいのか学ぶことができた。(中1) ○人とのコミュニケーションを大切にしていき,将来に備え,機械にはできないことを得意にし ていきたいと思いました。(中1) ○高校でのポイントとなる「探究」という言葉や,大学入試では英語の話す技能が求められるよ うになることを知り,これからも勉強を頑張りたいと思います。(中 1) ○私たち一人一人が未来を創っていくので,できることを見つけ行動していきたい。(中2) ○ 10 年後や 20 年後の未来のために,今,自分ができることを探すことができたのでとてもよかっ たです。コミュニケーションや思いやり,もちろん勉強もしっかりとして,将来に向けて頑張っ ていけたらいいなと思いました。(中2) ○今「やれない」理由は,本当に「やれない」理由なのか?と問われ,考えることができた。将 来を見て,今までの生活を改善していこうと思えた。(中2) ○勉強ができない理由を考えるのではなく,できる理由を考えようと思う。それで,自ら問いを もって勉強に取り組みたい。(中3) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1364310.htm ほか 図7 提示資料4 図8 提示資料5

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 前頁の各回答からは,将来を考えて今すべきことに思いを寄せ,コミュニケーションの大切さや 学習への取り組み方,行動の在り方にまで思考を広げている状況を読み取ることができる。  この支援に関わり,教員からも次のような声が寄せられた。   「良い機会になった」という声からは,この支援が,児童生徒の学習意欲の向上や学校の学力向 上への取組のさらなる推進への「きっかけ」となったことを読み取ることができる。他校において も,教員から同様の声が多く寄せられている。この「学力向上キャラバン」事業はもちろん,大学 教員・附属校園教員による学校訪問においても,児童生徒への支援が「良い機会」や「きっかけ」 となることこそ重要であり,自説を強要したり,各校の取組や学習指導要領を否定したりすること はあってはならない。とりわけ公立学校での支援の際には強く注意が求められるものである。  また,支援活動の展開として最も有効と考えるものは,回答にもあるとおり,「生徒自身がその必 要性を感じるような話の流れ」ではなかろうか。この事例においても,客観的な事象を紹介しつつ, それらに対して生徒に意見交換をする機会を設けたり,考えや気付きを発表したりする場面を設け たりするなどして,指導主事による一方的な話題提供にならないように工夫がなされていた。  教えられたこと・伝えられたことよりも,そのように導く意図はあるものの,児童生徒は自身で 気付いた・伝えることができた印象で学びを実感できることの方が効果は高いはずである。生徒の アンケート回答にもあった「自分のための学習」「コミュニケーションや思いやり」「今までの生活 を改善」などは,生徒自身が紡ぎだした学びであった。  ここで,保護者からのアンケート回答(下)を紹介し,学ぶことへの姿勢や考え方を見つめ直す 支援の可能性についてのまとめにかえる。  これらから,「学力向上キャラバン」は,「家庭・地域との連携」という側面において,学力向上 の必要性に関する保護者からの理解を得らやすいという可能性を見い出せるとともに,保護者自身 に対しても何かしらの気付きを感じていただける可能性をもつ支援であることが認められた。 ○ 10 年後,20 年後の社会が,今とは確実に違うことが生徒に伝わったことが受け取られた。また, そのために今,何をすべきかを考える良い機会になったと思う。(教員) ○単に「勉強をしよう」とか,「コミュニケーションは大切だ」と伝えるのではなく,生徒自身が その必要性を感じるような話の流れが良かった。(教員) ○子どもの勉強方法だけでなく,自分自身の仕事の方法などについても参考になりました。 ○「さしすせそ」でほめてあげたいと思います。楽しい時間をありがとうございました。 ○復習することが大事ということがわかりました。人は思っている以上に,忘れてしまうのです ね。家でも,しっかり復習して,今後の勉強に役立ててもらいたいです。 〇なぜ学校で学ぶのか,一人ではなくなぜ大人数で学ぶ必要があるのか,あまり考えてこなかっ たし,子供に伝えることもしていなかったなと思いました。改めて「そうか」と気付かされたよ うな気がします。 ○子供たちにわかりやすく,また大人になり社会人として生きていくうえでも参考になるもの (観察力,洞察力,考える力,行動する力,相手を思いやる心)でした。 ○講師の方には,成長したこの子達をまたいつか見に来ていただける日を楽しみにしています。

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(2)日常生活や生き方を見つめ直す支援の可能性   「2007 年にiPhoneが登場」(総務省「平成29年度版情報通信白書」)して,わずか12~13年。この 間に,スマートフォンが急速に普及したことは周知の事実である。  この時間は,まさに児童生徒の成長期間と重なり,それがない時代を生きてきた大人との意識の 違いは,大きなものであるに違いない。しかし,「ママのスマホになりたい」(のぶみ WAVE出 版 2016 年8月)という絵本が話題に なったように,「使い過ぎ」等とい うスマートフォンに関わる様々な問 題提起は,児童生徒のみならず,社 会全体に対して発せられている状況 である。児童生徒にとっても,社会 に巣立つ前に考えておくべき重要な テーマであるといえる。  左のスマートフォンの使用時間と 学力の関係を示したグラフ(図9) は,スマートフォンの使い方を糸口 に,自らの生活を振り返るきっかけ とすることを意図して提示されたも のである。  こうした児童生徒の回答内容からは,「自ら気付いた」という思いでアンケートに記入しいている 情景を思い描くことができよう。確かに,資料の提示にあたっては,「~しなさい(~しましょう)」 「~してはだめ(~しないようにしましょう)」といった訓示は一切行っていない。資料の提示とそ のグラフの解説をするだけであるが,これまでに家庭や学校で注意されてきたことが,切実感を もって,また裏付けを得た納得となって児童生徒の心情に触れることができたという成果を読み取 れる。 データ:「学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト」仙台市ほかより ○インターネットの時間を決めて,しっかり守ろうと思った。(小5) ○勉強を2時間しているけど,スマホを4時間やった場合と 30 分しか勉強していない人では,後 の方の成績がいいことにすごくビックリしたし,自分もやばいと感じた。(小6) ○ 30 分勉強してテレビという生活なので,少しでもテレビを減らそうと思った。(小6) ○自分のテストの点数が悪いのは,ゲームやテレビを長い時間しているからという原因が分かっ てよかった。(小6) ○問題などをしながら,勉強のやり方を知ることができて,とても楽しく学ぶことができた。ス マホの使用時間で成績が落ちてしまうこと,だから,使用時間を決めることが大事ということが わかった。(中1) ○勉強を2時間しても,ゲームを4時間したらダメということ。1日ごとに記憶はうすくなるこ と。これを参考にしたいです。(中1) ○携帯を使わずに 30 分未満勉強するのと,携帯を使いながら2時間以上勉強するのではほとんど 同じ点数しか取れないことにびっくりしました。これからも何かをしながら勉強することはなく していきたいです。(中1) 図9 提示資料6

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 日常生活について振り返るきっかけとするため,参加者同士で意見交流する機会を設ける支援も 実施された。意見交流のテーマとして,「睡眠」「目標」「未来のため今すべきこと」「努力と運」等 が展開されている。  例えば,「睡眠」は,睡眠がもたらす効果や睡眠不足で起こるリスクなどについての考えを寄せ合 い,適切な睡眠を阻害している要素を想起したり,睡眠不足によってマイナスな状況に陥ることが あったかといった経験を振り返ったりした。  また,「目標」については,大村智先生の経歴や著書の一節を紹介し,偉業を成し遂げた人はどん な生き方を求めていたのかという問いをもち,意見交流を行った。  日常生活や生き方に関わる意見交換での学びが記されたアンケート回答は,次のとおりである。  意見交流においては,適時,シンキング ツール(一例は図 10)も活用された。学校 によっては,児童生徒が日頃から使ってい る「自主学習ノート」等を会場に持参し活 用することもあり,実施校との事前打合せ においてそれらは確認された。事前打合せ では,使用機器等の確認はもちろん,対象 者の実態を聞き取り,意見交流の有効性や シンキングツールへの習熟状況等について も確認が行わた。 ○行動が変われば心も変わるということ,目標を決めることの大切さを学んだ。(小5) 〇何かができないときにただ練習するのではなく,どこが悪いのか,どのように改善すればよい のかを考えてから,練習をした方がいいということがわかりました。(小5) ○勉強を集中してできる方法ややる気を出す方法がわかった。(中2) ○大村智さんの生き方を知れてとても参考になった。人の真似をしないこと,人との縁を大事に すること忘れずにしたいと思う。また,私は夢がないので,今までは夢を見つけたときに少しで も有利になるようにと学習を頑張っていたが,やはり,目標がないとやる気も厳しかった。だが, 今回の活動で学習は人のためにもなると知り,今まで以上にやる気がでたと思う。夢も見つけて いきたい。(中3) ○最初は高校入試のためだけに学ぶといった目の前のことしか考えてなかったけど,今日の話を 聞いて大人になったらこうなりたいから学んでいるという考えに変わった。私も大村さんのよう な人のために何か役立てる仕事に就きたいと思っているので,そのために日々努力して粘り強く 勉強したいと思う。上機嫌な受検生になりたいと思う。(中3) ○努力していたら必ずチャンスがくる。努力をすればするとともに自分で運を運べる力をつけら れているのかと思った。自ら努力をするから「運」もそれにこたえてくれる。とても自分に自信 がついた。勉強は苦手ですが,テストの点が上がると嬉しい。私の勉強方や努力は正解だったと 思うこともある。それは,努力をすることにより自分で運を運べていたのかと今ではそう思える。 (中3) 〇子供たちにわかりやすく,また大人になり社会人として生きていくうえでも参考になるもの (観察力・洞察力・考える力・行動する力・相手を思いやる心)でした。(保護者) 図 10 提示資料7

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(3)児童生徒自身や自校による取組の有効性や重要性についての再認識を促す可能性  県教委が推進する「学力向上総合対策事業」や各市町村(組合)教委が推進する学力向上施策を 踏まえ,各校において児童生徒や地域の実態等に応じた学力向上への様々な取組が推進されている。  学校により名称は異なるが,家庭学習習慣のさらなる定着を図るための「自主学習ノート」や 「家庭学習ノート」「家庭学習スタンバイ」といった取組,または疑問点やアドバイスを得たい学習 内容等について指導や相談を受けることができる「放課後学習会」等の開設などがある。  こうした形ある取組以外にも,担任や保護者によって,学力向上にむけたアドバイスや激励等も 盛んに行われていることはいうまでもない。  そこで,指導主事等は,「学力向上 キャラバン」を実施するにあたって は,事前打合せ等において,こうした 各校での取組や日常で図られている指 導についての状況を聞き取り,それら の有効性や価値についての解説的な内 容,翻訳的な内容を支援の中に組み入 れていく。打合せの結果から,右(図 11)のように,学校の取組を明示して 支援する場合もあった。  自分自身や自校による取組の有効性 や重要性について再認識されたと読み取れるアンケート回答は,次のとおりである。 枠内の「※」は,各校での取組を示す ○この集会で学んだことは,分からないことは人に聞くこと,「自主学習ノート※」は自分のため にやるものなど,これからに生かしたいと思った。(小6) ○自分は自分だけで考えることが多かったけれど,そうすると一つの見方しか見つからなくて, 他の方法がわからないけれど,今回の集会を通して,他の人の意見が聞けて良かった。だから, これからは,「家庭学習※」は見開きでやって,片方は今まで通りで,もう片方は集会で参考に なったことをやるようにしたい。(中1) ○「家庭学習ノート※」をこれからも続けたり,「放課後学習会※」に積極的に参加したりして, たくさん勉強していきたいです。(中1) ○いつも行っている「家庭学習スタンバイ※」をどのようにしたらもっと内容の深い「家庭学習 スタンバイ※」になるのか考えることができた。(中1) 〇先生たちもいろいろ工夫をして授業をしてくれていることが分かった。この集会で「家庭学習 スタンバイ※」の目的が改めて確認できた。自分の将来のために,分からないことがあれば積極 的に聞くなど,自分のために自主学習をする。(中2) ○「家庭学習スタンバイ※」は,やらされているではなく,自分のためになる勉強ということが 改めて分かった。(中2) ○学校での取組の良さをあらためて感じた。勉強をするうえで,大切なこと,注意することを再 確認でき,自分の家庭学習を見直したいと思った。実際に,クイズや絵を書いて,楽しくわかり やすく学べた。(中2) ○「まなBOOK ※」などは,ふだん使っていたが,このような効果があるとは知らなかった。こ れからも有効活用していきたい。(中2) 図 11 提示資料8

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 児童生徒からのアンケート回答からは,「この取り組みは本当に効果があるのだろうか」「学ぶこ とって本当に価値があることなのだろうか」「まちがった学習をしていないだろうか」などといった 不安や疑問が,減少したり和らいだりしている心情をうかがうことができる。これは,ほとんどの 回答内容についてもいえることである。  ここで,教員から寄せられた声を紹介し,日常生活や生き方を見つめ直す支援の可能性について のまとめにかえる。「学力向上キャラバン」により,日頃の指導の裏付けや価値づけを得られた実感 が記されている。 枠内の「※」は,各校での取組を示す

Ⅴ おわりに

 教師と児童生徒あるいは保護者と児童生徒という直接かかわる二者同士で展開される様々な学び の営みのうち,生活習慣の改善や家庭学習習慣の定着等といった取組や指導は,長期的なスパンで 成果を見とる必要があることや,適時測定が可能な客観的指標等がないことから,「おそらく」「多分」 「きっと」などという曖昧な期待に支えられて展開されていることであろう。  今回,「学力向上キャラバン」での学びについて,児童生徒及び保護者アンケートの回答内容と指 導主事等による支援内容をもとに,その支援がもち得た価値について考察を試みた。  その結果,「曖昧な期待」であったものが,指導主事等という第三者から,自らの取組について自 ら肯定的に評価できる情報や学びを得られたことにより,児童生徒にとって,教員にとって,おそ らく保護者にとっても「より確かな期待」に変容していった状況を紹介することができた。  学校は様々な課題への対応が求められており,また「社会に開かれた教育課程」の趣旨からも, 指導主事や大学教員・附属校園教員に対する支援の期待値はますます高まっていくことであろう。 拙稿が,そうした支援の際の参考となれば幸いである。 引用文献 ・文部科学省(2018)平成 29・30 年改訂 学習指導要領 周知・広報ツ-ル リーフレット ・文部科学省(2018)「新しい学習指導要領の考え方」(新教育課程説明会における説明資料) ・平成 30 年度山梨県教育委員会義務教育課指導主事(池川穂波,植松聖人,小尾綾,桑畑秀子,小 池孝二,小林知子,櫻井順矢,佐藤雄二,鷹野薫,塚原英樹,深沢裕也,藤原祐喜)作成の資料・ 記録 ※提示資料の固有名詞部分は変更して掲載 ○「家庭学習ノート※」や「放課後学習会※」など,学校の取組を後押ししてくださるお話があ り,生徒の意欲を高めることができた。 ○似たようなことは担任も話していると思うが,立場の違う方からの話は子どもたちにとって新 鮮であり,納得感のある話となった。また,私たちの日頃の指導をあと押しするような話もして いただきありがたかった。 〇ペアを作る活動,インタビューの活動などを通して,子どもたちの新たな一面を見ることがで きた。今後の活動に活かしていきたい。学級担任としても,子どもたちや自らの活動を見直す機 会となった。事前に打ち合わせをしたことで,学級の実態を理解していただいた上で指導してい ただいたのがよかった。 〇保護者も交える中で実施できたことは成果であった。

参照

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