平 成 2 5 年 度 東 京 農 業 大 学 博 士 論 文
マ ン グ ロ ー ブ 葉 生 成 タ ン ニ ン の 生 態 系 内 動 態
と 溶 存 鉄 供 給 に か か わ る 役 割
農 学 研 究 科 環 境 共 生 学 専 攻
松 谷 達 馬
主 査 濱 野 周 泰
副 査 牛 久 保 明 邦
中 西 康 博
マ ン グ ロ ー ブ 葉 生 成 タ ン ニ ン の 生 態 系 内 動 態 と 溶 存 鉄 供 給 に か か わ る 役 割
目 次
第 1 章 緒 言 ... 1 第 2 章 タ ン ニ ン 溶 液 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 ... 8 2 . 1 . 材 料 と 方 法 . .... ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... ... 8 2 . 1 . 1 . 供 試 土 壌 の 採 取 及 び 分 析 方 法 ... .... ... ... ... .... ... ... .... ... . .... ... 8 2 . 1 . 2 . 試 薬 タ ン ニ ン 酸 溶 液 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 . ... .... ... . .... ... 9 2 . 1 . 3 . 塩 分 濃 度 の 異 な る 試 薬 タ ン ニ ン 酸 溶 液 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 ... 10 2 . 1 . 4 . 試 薬 タ ン ニ ン 酸 溶 液 湛 水 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 .... ... . .... . 1 0 2 . 1 . 5 . 供 試 樹 種 葉 の 採 取 及 び 葉 中 タ ン ニ ン 含 有 率 の 分 析 方 法 .... ... . .... . 1 0 2 . 1 . 6 . 樹 種 葉 抽 出 液 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 .. .... ... ... .... ... . .... . 1 2 2 . 1 . 7 . 統 計 解 析 .... .... ... ... .... ... ... .... ... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 1 2 2 . 2 . 結 果 . ... ... .... ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 1 2 2 . 2 . 1 . 供 試 土 壌 の 化 学 特 性 .. .... ... ... .... ... ... .... ... ... ... .... ... . .... . 1 2 2 . 2 . 2 . 試 薬 タ ン ニ ン 酸 溶 液 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 . ... .... ... . .... . 1 3 2 . 2 . 3 . 塩 分 濃 度 の 異 な る 試 薬 タ ン ニ ン 酸 溶 液 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 ... 15 2 . 2 . 4 . 試 薬 タ ン ニ ン 酸 溶 液 湛 水 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 .... ... . .... . 1 6 2 . 2 . 5 . 供 試 樹 種 葉 中 の タ ン ニ ン 含 有 率 ... ... ... .... ... ... ... .... ... . .... . 1 6 2 . 2 . 6 . 樹 種 葉 抽 出 液 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 .. .... ... ... .... ... . .... . 1 7 2 . 3 . 考 察 . ... ... .... ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 1 8 2 . 4 . ま と め ... ... .... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... ... ... .... ... . .... . 2 0 第 3 章 マ ン グ ロ ー ブ リ タ ー 量 に 占 め る 植 食 性 カ ニ に よ る リ タ ー 持 去 り 量 の 比 率 ... 22 3 . 1 . 材 料 と 方 法 . .... ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 2 3 3 . 1 . 1 . 調 査 地 概 要 ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 2 3 3 . 1 . 2 . リ タ ー 量 , 林 床 土 壌 へ の リ タ ー 現 存 量 , 海 域 へ の リ タ ー 流 出 量 及 び 植 食 性 カ ニ に よ る リ タ ー 持 去 り 量 の 通 年 調 査 ... 24 3 . 1 . 3 . 年 間 リ タ ー 量 . ... ... .... ... ... .... ... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 2 53 . 1 . 4 . 林 床 へ の リ タ ー の 現 存 量 .... ... .... ... ... .... ... ... ... .... ... . .... . 2 6 3 . 1 . 5 . 海 域 へ の リ タ ー 流 出 量 .. ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 2 6 3 . 1 . 6 . カ ニ に よ る リ タ ー 持 去 り 量 . ... .... ... ... .... ... ... ... .... ... . .... . 2 6 3 . 1 . 7 . 統 計 解 析 .... .... ... ... .... ... ... .... ... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 2 7 3 . 2 . 結 果 . ... ... .... ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 2 8 3 . 2 . 1 . リ タ ー 量 , 林 床 土 壌 へ の リ タ ー 現 存 量 , 海 域 へ の リ タ ー 流 出 量 及 び 植 食 性 カ ニ に よ る リ タ ー 持 去 り 量 ... 28 3 . 2 . 2 . 季 節 変 動 .... .... ... ... .... ... ... .... ... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 3 0 3 . 3 . 考 察 . ... ... .... ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 3 1 3 . 3 . 1 . 島 尻 林 帯 の 年 間 リ タ ー 量 と カ ニ に よ る 持 去 り 量 の 他 地 域 と の 比 較 ... 31 3 . 3 . 2 . 島 尻 林 帯 に お け る 落 葉 由 来 タ ン ニ ン の 年 間 供 給 量 . ... .... ... . .... . 3 2 3 . 3 . 3 . 樹 種 の 違 い に よ る 植 食 性 カ ニ に よ る 葉 持 去 り 率 ... ... .... ... . .... . 3 2 3 . 4 . ま と め ... ... .... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... ... ... .... ... . .... . 3 3 第 4 章 植 食 性 カ ニ の 樹 種 葉 摂 食 性 向 と そ の 葉 中 タ ン ニ ン の 動 向 ... 35 4 . 1 . 材 料 と 方 法 . .... ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 3 6 4 . 1 . 1 . N e o s a r m a t i u m s m i t h i の 樹 種 葉 摂 食 性 向 .... ... .... ... ... .... ... . .... . 3 6 4 . 1 . 2 . カ ニ 糞 及 び 巣 穴 土 壌 中 タ ン ニ ン 含 有 率 .... ... .... ... ... .... ... . .... . 3 8 4 . 1 . 3 . カ ニ 糞 水 抽 出 液 の 添 加 に よ る 溶 存 鉄 の 土 壌 溶 出 量 . ... .... ... . .... . 3 9 4 . 1 . 4 . 統 計 解 析 .... .... ... ... .... ... ... .... ... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 3 9 4 . 2 . 結 果 . ... ... .... ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 3 9 4 . 2 . 1 . N e o s a r m a t i u m s m i t h i の 樹 種 葉 摂 食 性 向 .... ... .... ... ... .... ... . .... . 3 9 4 . 2 . 2 . カ ニ 糞 及 び 巣 穴 土 壌 中 タ ン ニ ン 含 有 率 .... ... .... ... ... .... ... . .... . 4 0 4 . 2 . 3 . カ ニ 糞 水 抽 出 液 の 添 加 に よ る 溶 存 鉄 の 土 壌 溶 出 量 . ... .... ... . .... . 4 1 4 . 3 . 考 察 . ... ... .... ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 4 1 4 . 3 . 1 . 植 食 性 カ ニ の 葉 摂 食 性 向 に お け る 葉 中 タ ン ニ ン の 影 響 .... ... . .... . 4 1 4 . 3 . 2 . マ ン グ ロ ー ブ に お け る 葉 中 タ ン ニ ン の 動 態 .. .... ... ... .... ... . .... . 4 2 4 . 4 . ま と め ... ... .... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... ... ... .... ... . .... . 4 3 第 5 章 マ ン グ ロ ー ブ 植 生 内 表 流 水 中 の タ ン ニ ン 含 有 率 と 溶 存 鉄 含 有 率 と の 関 係 ... 45 5 . 1 . 材 料 と 方 法 . .... ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 4 5 5 . 1 . 1 . 調 査 地 概 要 ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 4 5
5 . 1 . 2 . 供 試 水 の 採 取 及 び 水 質 の 分 析 ... .... ... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 4 8 5 . 2 . 結 果 . ... ... .... ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 4 8 5 . 3 . 考 察 . ... ... .... ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 5 2 5 . 4 . ま と め ... ... .... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... ... ... .... ... . .... . 5 4 第 6 章 タ ン ニ ン が 植 物 プ ラ ン ク ト ン の 鉄 吸 収 に 及 ぼ す 影 響 ... 55 6 . 1 . 材 料 と 方 法 . .... ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 5 6 6 . 1 . 1 . タ ン ニ ン 錯 体 鉄 添 加 に よ る 植 物 プ ラ ン ク ト ン の 培 養 試 験 . . .... ... . 5 6 6 . 1 . 2 . タ ン ニ ン 錯 体 鉄 の 溶 存 率 に 関 す る 基 礎 化 学 実 験 ... ... .... ... . .... . 6 1 6 . 2 . 結 果 . ... ... .... ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 6 3 6 . 2 . 1 . タ ン ニ ン の 添 加 が 植 物 プ ラ ン ク ト ン の 鉄 吸 収 に 及 ぼ す 影 響 .. ... . 6 3 6 . 2 . 2 . タ ン ニ ン 錯 体 鉄 の 溶 存 率 に 関 す る 基 礎 化 学 実 験 ... ... .... ... . .... . 6 8 6 . 3 . 考 察 . ... ... .... ... ... .... ... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 7 0 6 . 4 . ま と め ... ... .... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... ... ... .... ... . .... . 7 2 第 7 章 総 合 考 察 ... 74 第 8 章 摘 要 ... 77 S u m m a r y .... ... ... ... .... ... ... .... ... ... .... ... ... ... .... ... ... .... ... . .... . 8 2 謝 辞 ... 87 引 用 ・ 参 考 文 献 ... 89 付 図 表 ... 95
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第 1 章 緒 言
昨 今 ,人 間 活 動 に よ る 破 壊 が 著 し い 自 然 環 境 の1つ に マ ン グ ロ ー ブ 生 態 系 が 挙 げ ら れ る .マ ン グ ロ ー ブ は ,世 界123か 国 の 沿 岸 域 152,000 km2 を 覆 っ て お り(Spalding et al., 2010),陸 と 海 の イ ン タ ー フ ェ ー ス と し て , ま た 沿 岸 域 へ の 栄 養 供 給 源 と し て 非 常 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る . マ ン グ ロ ー ブ 生 態 系 は , マ ン グ ロ ー ブ の リ タ ー を 主 な 始 原 と す る 豊 富 な 栄 養 や ,樹 根 や 干 潟 な ど 多 様 な 生 息 場 所 を 生 物 に 提 供 す る と 共 に , 多 く の 生 態 系 サ ー ビ ス も 人 間 に 提 供 し て い る(表 1-1). 熱 帯 ・ 亜 熱 帯 沿 岸 域 を 生 活 の 場 と し て き た 住 民 は , 古 く か ら マ ン グ ロ ー ブ の 恩 恵 を 意 識 し , 沿 岸 水 産 資 源 の 保 護 に , ま た 防 潮 ・ 防 風 林 と し て マ ン グ ロ ー ブ の 伐 採 を 極 力 抑 え , そ の 保 全 に 努 め て き た(中 村 ら , 1993). し か し ,経 済 発 展 に 伴 い ,こ の 豊 か な マ ン グ ロ ー ブ も1970年 か ら 2000 年 の 間 に ,無 秩 序 な 伐 採 や エ ビ 養 殖 池 へ の 転 化 に よ り ,約30%が 消 失 し て い る(図 1-1)(Spalding et al, 2010). マ ン グ ロ ー ブ の エ ビ 養 殖 池 へ の 転 化 は , 短 期 的 に は 大 き な 経 済 利 益 を 住 民 に も た ら す が , 集 約 的 な 養 殖 を 行 う と5年 も 経 た ず に 養 殖 池 は 再 生 不 能 に な る ケ ー ス も あ る .そ の 反 省 か ら こ れ ま で 様 々 な 植 林 活 動 が な さ れ , マ ン グ ロ ー ブ の 保 全 が 叫 ば 用途 燃 料 燃料、木炭、アルコール採取用など 染 料 漁網、衣類、帆布の染色 飼 料 ヤギ、ラクダの飼料 用 材 建築用材、家具材、船材、パルプ材、足場材、枕木、マッチ用材など 食 用 蜂蜜生産、野菜、果物、ジュース、酒の製造、薬剤(下痢止め)、調味料など その他 屋根葺き材、壁葺き材、巻タバコの紙の代用、家畜の寝ワラ、魚毒(魚採り用)、 塩の生産、皮なめしなど 機能 資源生産 森林資源の生産、製塩(製塩場所の提供と製塩) 水産資源の酒養 水産資源(カニ、エビ、稚魚、貝など)の生育の場と餌場の提供 災害防止機能 防風、防潮、飛砂防備、海岸侵食防止、土壌侵食防止、水路の保全、 土壌の堆積促進 森林風致機能 観光、レクリエーションの場の提供 地球環境 沿岸生態系の保全、気候緩和 その他 野生動物の棲息の場の提供、渡り鳥の休息の場の提供、動物・植物の ジーンプール(遺伝子源)の提供 表 1-1 マ ン グ ロ ー ブ の 主 な 用 途 と 機 能 馬 場(1993)2 れ て き つ つ あ る も の の , マ ン グ ロ ー ブ の 分 布 面 積 は 依 然 と し て 減 少 傾 向 で あ る . マ ン グ ロ ー ブ の 保 全 を 促 進 す る た め に は , 当 生 態 系 の 機 能 と 価 値 を 正 し く 理 解 す る こ と が 肝 要 で あ り , 特 に 森 林 が 存 在 す る こ と に よ っ て 及 ぼ さ れ る 周 辺 海 洋 生 産 性 へ の 影 響 , す な わ ち 森 と 海 を 繋 ぐ 科 学 的 な 根 拠 を 積 み 重 ね る こ と も 重 要 に な る と 考 え ら れ る . 近 年 こ の よ う な 視 点 の 研 究 は 増 え つ つ あ り , 例 え ばMumby et al. (2004)は ,サ ン ゴ 礁 に 棲 む 数 種 の 魚 類 は ,生 息 域 が マ ン グ ロ ー ブ と 接 し た 場 合 ,そ の バ イ オ マ ス が2倍 に な る こ と ,ま た Dittmar et al. (2006)は , マ ン グ ロ ー ブ 域 が 沿 岸 海 域 へ の 溶 存 有 機 物 の 重 要 な ソ ー ス で あ る と 報 告 し て い る . 他 方 , 昨 今 海 洋 科 学 の 分 野 に お い て , 陸 域 由 来 栄 養 と 海 域 生 産 性 を 繋 ぐ 科 学 的 な 裏 付 け と し て , 森 林 腐 植 由 来 の フ ル ボ 酸 鉄 を 介 し た 河 川 と 海 洋 生 態 系 の 繋 が り を 提 唱 し た 学 説 「 松 永 仮 説 」 が 有 名 で あ る (Igarashi et al., 1982; Kuma et al., 1996, 2000; Matsunaga et al., 1982, 1991, 1998, 1999, 松 永 , 1993).
鉄 は 植 物 プ ラ ン ク ト ン の 呼 吸 や 光 合 成 に 不 可 欠 な 元 素 の1 つ で あ る (Geider and Roche, 1994).一 般 的 に 海 水 中 に お い て 鉄 は 熱 力 学 的 に 安 定 図 1-1 世 界 の マ ン グ ロ ー ブ の 分 布 と 1980 年 ~ 2005 年 の 間 の 減 少 割 合
3 なFe3 +が 難 溶 性 の 水 酸 化 物 を 形 成 し て 沈 殿 除 去 さ れ る た め ,海 水 中 に お け る 鉄 の 溶 解 度 は10- 1 0M以 下 と 極 め て 小 さ い (武 田 , 2007). そ の た め 海 水 中 の 溶 存 鉄 量 は 非 常 に 微 量 で あ り , 海 水 中 に お い て 鉄 は 植 物 プ ラ ン ク ト ン の 生 育 制 限 因 子 と な り や す い . と こ ろ が 高 分 子 有 機 化 合 物 と 錯 結 合 し た 鉄 は , 海 水 中 で も 比 較 的 安 定 し て 溶 存 す る こ と が 知 ら れ て お り ,海 水 に お け る 溶 存 鉄 の99%は 有 機 錯 体 鉄 で あ る と み ら れ て い る(Van den Berg, 1995). 「 松 永 説 」 で 言 及 さ れ て い る 土 壌 腐 植 中 の フ ル ボ 酸 も , 鉄 と 錯 体 を 形 成 し 得 る 有 機 化 合 物 で あ る . 土 壌 中 で 鉄 と 錯 化 し た フ ル ボ 酸 錯 体 鉄 が 河 川 に よ っ て 沿 岸 域 に 流 れ 込 む こ と も , 河 口 域 周 辺 の 高 生 産 性 に 寄 与 し て い る と 考 え ら れ て い る . こ の 説 を 根 拠 と し て 白 岩 ら(2011)は ,オ ホ ー ツ ク 海 と 親 潮 で み ら れ る 高 い 基 礎 生 産 性 を 支 え る 主 要 な 要 因 が , ア ム ー ル 川 流 域 に 起 源 を も つ 溶 存 鉄 で あ る と い う 仮 説 に 基 づ き , 大 規 模 な ス ケ ー ル で 大 陸 と 外 洋 を つ な ぐ 物 質 輸 送 と そ れ に 立 脚 す る 生 態 シ ス テ ム を 明 ら か に し た (http://www.chikyu.ac.jp/AMORE/). 一 方 , 上 述 し た マ ン グ ロ ー ブ が 生 育 す る 熱 帯 ・ 亜 熱 帯 沿 岸 域 に お い て , 陸 域 由 来 溶 存 鉄 と 沿 岸 海 洋 生 産 性 の 関 係 に 関 す る 研 究 は ほ と ん ど 行 わ れ て い な い . マ ン グ ロ ー ブ は , 熱 帯 ・ 亜 熱 帯 沿 岸 域152,000 km2の 陸 と 海 の イ ン タ ー フ ェ ー ス と し て 非 常 に 重 要 で あ る . 仮 に 上 述 し た よ う な , 溶 存 鉄 に よ る 陸 域 森 林 と 海 洋 生 産 性 の 関 係 が 明 ら か に な れ ば , 破 壊 著 し い マ ン グ ロ ー ブ の 保 全 根 拠 と し て も 有 効 で あ る . そ こ で 本 論 文 で は , 熱 帯 ・ 亜 熱 帯 沿 岸 域 に お け る 陸 域 由 来 栄 養 と 海 洋 生 産 性 の 繋 が り を 科 学 的 に 解 明 す る 研 究 の 一 環 と し て , マ ン グ ロ ー ブ 沿 岸 域 に お け る 陸 域 由 来 溶 存 鉄 の 動 態 と 機 能 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 す る 一 連 研 究 を 行 う こ と と し た . そ の 中 で ま ず 我 々 は , マ ン グ ロ ー ブ 生 態 系 に お い て 鉄 と 錯 体 を 形 成 し 得 る 有 機 化 合 物 と し て , タ ン ニ ン に 着 目 し た . そ の 理 由 と し て , マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 の 多 く は , そ の 樹 皮 や 葉 中 に 比 較 的 多 量 の タ ン ニ ン を 含 む(Hernes and Hedges, 2004)こ と が 従 来 知 ら れ て お り , そ の タ ン ニ ン は 表1-2 に 示 す よ う に 人 間 生 活 に お い て 多 面 的 に 利 用 さ れ て き て い た . 例 え ばBasak et al. (1999)は 9種 の マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 葉 の タ ン ニ ン 含 有 率
4 伝統的利用 皮なめし剤(a) 植物染料(b) 漆器の下塗り(a) 渋紙(a) 漁網の補強(a) 生薬(整腸、止血など)(a,c) 最新の作用 抗蟻性(b) 抗菌・消臭作用(b) 気中アルデヒドの吸着能(d) メラニン生成抑制能(d) 抗腫瘍(c) 発がん抑制(c) 抗酸化作用(c) は14.56–40.11% (乾 物 )で あ る と 報 告 し て い る . タ ン ニ ン は 水 溶 性 で 高 い 反 応 性 が あ る た め , 森 林 生 態 系 に お け る 様 々 な 機 能 は 広 く 知 ら れ て い る(Kuiters, 1990; Kraus et al., 2003). タ ン ニ ン は 植 物 由 来 有 機 化 合 物 と し て 土 壌 腐 食 に 組 み 込 ま れ や す く , 腐 植 の 水 溶 性 画 分 で あ る フ ル ボ 酸 の 一 種 で も あ り , そ の 性 質 は 類 似 す る . 例 え ば , 森 林 に お い て リ タ ー か ら 溶 出 し た タ ン ニ ン は 鉄 や マ ン ガ ン な ど の 土 壌 中 の 金 属 と 錯 体 結 合 を 形 成 し , フ ル ボ 酸 錯 体 鉄 の よ う に そ れ ら を 水 溶 化 さ せ る こ と が 知 ら れ て い る(Levanidov, 1957; Arakawa et al., 1993). さ ら に , マ ン グ ロ ー ブ の 年 間 リ タ ー 量 は1000 g m- 2 yr- 1前 後(930g m- 2 yr- 1, Duke et al ., 1982; 886 g m- 2 yr- 1, Gong et al., 1984; 1131 g m- 2 yr- 1,
表 1-2 人 間 生 活 に お け る タ ン ニ ン の 利 用 基 本 作 用 (a)タ ン パ ク 質 と 難 溶 性 結 合 (b)金 属 イ オ ン と の 錯 体 結 合 (c)ポ リ フ ェ ノ ー ル に よ る 作 用 (d)メ カ ニ ズ ム 不 明 の 作 用 (相 互 作 用 ) 西 岡(1986), 奥 田 (1995), 田 中 ら (1999), 秋 久 ら (2002), 大 原 (2005)
5 Bunt, 1982)と き わ め て 高 く , 上 記 の よ う な 落 葉 由 来 タ ン ニ ン に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 メ カ ニ ズ ム が マ ン グ ロ ー ブ に お い て も 生 じ る 場 合 , マ ン グ ロ ー ブ 落 葉 由 来 タ ン ニ ン に よ っ て 林 床 か ら 溶 存 し た 鉄 は , 周 辺 に 生 息 す る 植 物 プ ラ ン ク ト ン へ の 重 要 な 鉄 供 給 源 と な っ て い る 可 能 性 が あ る . し か し な が ら , マ ン グ ロ ー ブ が 豊 か な リ タ ー を 林 床 に 供 給 し , こ れ に 含 ま れ る タ ン ニ ン が 林 床 土 壌 中 の 鉄 を 可 溶 化 さ せ る と し て も , そ の リ タ ー は 河 川 や 潮 流 に よ り , 速 や か に 海 へ 流 出 し て し ま う の な ら ば , マ ン グ ロ ー ブ 由 来 タ ン ニ ン と 林 床 土 壌 中 の 鉄 と の 接 触 機 会 は 乏 し く 制 限 さ れ て し ま う . と こ ろ が , マ ン グ ロ ー ブ 生 態 系 に 生 息 す る 動 物 の 中 に は , マ ン グ ロ ー ブ 葉 を 摂 食 す る も の が い る こ と が 知 ら れ て お り , そ の 内 の 一 つ が 植 食 性 の カ ニ で あ る . こ れ に 関 し , マ ン グ ロ ー ブ に 生 息 す る 植 食 性 カ ニ に よ る 落 葉 の 摂 食 は , 同 生 態 系 の 重 要 な 物 質 循 環 経 路 で あ る と の 研 究 が 多 数 報 告 さ れ て い る(Micheli, 1993; Ashton, 2002; Kristensen, 2008; Chen et al., 2008).
例 え ばRobertson and Daniel (1989)は オ ー ス ト ラ リ ア 北 東 部 の マ ン グ ロ ー ブ に お い て , Ceriops tagel, Bruguiera exaristata 及 び Avicennia
marina の 各 マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 の 年 間 落 葉 量 の 71 ,79 及 び 32% が 植 食 性 カ ニ に よ り 巣 穴 に 持 ち 運 ば れ た こ と を 報 告 し て い る .Slim et al. (1997) も ま た 東 ア フ リ カ の マ ン グ ロ ー ブ に お い て , Rhizophora mucronataの 年 間 落 葉 量 の40.3%が , Lee (1989) は 中 国 南 東 部 の マ ン グ ロ ー ブ に お い て , Kandelia candel の 年 間 落 葉 量 の 57% が 植 食 性 の カ ニ に よ り 持 去 ら れ た こ と を そ れ ぞ れ 報 告 し て い る . こ の よ う に , マ ン グ ロ ー ブ に お け る 落 葉 の 大 部 分 は , 植 食 性 の カ ニ に よ り 巣 穴 に 運 ば れ る 可 能 性 が 高 い と 言 え る . そ の 場 合 , マ ン グ ロ ー ブ に お け る 葉 中 タ ン ニ ン と 土 壌 中 の 鉄 と の 接 触/反 応 過 程 に お い て , 植 食 性 カ ニ の 存 在 は 無 視 で き な い と 考 え ら れ る . 以 上 の 背 景 に 基 づ き , 本 論 文 で は , マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 葉 中 タ ン ニ ン の 動 態 と 溶 存 鉄 の 土 壌 溶 出 機 能 及 び , こ れ ら と 沿 岸 海 洋 生 産 性 と の 関 係 を 理 解 す る 上 で , 以 下 の よ う な 仮 説 を 立 て て 研 究 を 進 め る こ と と し た .
6 す な わ ち , 「 マ ン グ ロ ー ブ に 生 息 す る 植 食 性 の カ ニ が 樹 種 葉 と 林 床 土 壌 と の 接 触 機 会 を 増 加 さ せ る 結 果 , そ の 葉 中 タ ン ニ ン が 林 床 土 壌 中 の 鉄 を 溶 存 化 さ せ , こ の 溶 存 鉄 が 植 物 プ ラ ン ク ト ン の 増 殖 に 寄 与 し て い る 」 仮 に 上 記 の よ う な , マ ン グ ロ ー ブ 沿 岸 域 に お け る 陸 と 海 を 繋 ぐ 科 学 的 な メ カ ニ ズ ム が 証 明 さ れ れ ば , マ ン グ ロ ー ブ は 周 辺 の 海 洋 生 産 性 に 貢 献 し て い る の み な ら ず , 全 球 的 な 物 質 循 環 や 生 物 生 産 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 可 能 性 が あ り , こ の メ カ ニ ズ ム が 破 壊 著 し い マ ン グ ロ ー ブ の 保 全 根 拠 と し て も 非 常 に 有 効 に な る こ と が 期 待 さ れ る . そ こ で 本 論 文 で は , 上 記 の 一 連 仮 説 を 立 証 す る た め , 沖 縄 県 宮 古 島 の 島 尻 林 帯 を メ イ ン フ ィ ー ル ド と し , 葉 中 タ ン ニ ン の 動 態 か ら 溶 存 鉄 の 役 割 ま で5つ の 課 題 を 設 け ,第 2章 か ら 第 6章 ま で の 各 章 に お い て ,そ れ ぞ れ の 課 題 の 仮 説 を 検 証 し た . 以 下 , 各 章 の 仮 説 を 述 べ る . 第2章「 マ ン グ ロ ー ブ 林 床 土 壌 に タ ン ニ ン 溶 液 を 添 加 す る と 溶 存 鉄 の 土 壌 溶 出 は 促 進 さ れ る 」 図 1-2 本 研 究 に お け る 仮 説 の 概 念 図
7 第3章 「 マ ン グ ロ ー ブ 落 葉 の 50%以 上 は 植 食 性 の カ ニ に よ り 巣 穴 に 運 ば れ る 」 第4章「 (1)植 食 性 の カ ニ は タ ン ニ ン 含 有 率 の 高 い 樹 種 葉 を 選 択 的 に 摂 食 し ,(2)葉 中 タ ン ニ ン の 一 部 は カ ニ 糞 中 に 残 存 し 巣 穴 に 蓄 積 さ れ る . (3)林 床 土 壌 と カ ニ 糞 中 の タ ン ニ ン の 反 応 に よ り 溶 存 鉄 溶 出 が 促 進 さ れ る 」 第5章「 マ ン グ ロ ー ブ 水 域 中 の 溶 存 鉄 含 有 率 と タ ン ニ ン 含 有 率 は 共 に 高 く , 両 者 の 間 に は 正 の 相 関 関 係 が あ る 」 第6 章 「 タ ン ニ ン と 結 合 し た 鉄 は 海 水 条 件 に お い て も 溶 存 率 が 高 く , 植 物 プ ラ ン ク ト ン に 吸 収 利 用 可 能 で あ る 」 こ れ ら の 結 果 を 踏 ま え , 第7章 で は 上 記 一 連 仮 説 の 可 能 性 を 議 論 し た . な お ,主 な 調 査 地 で あ る 島 尻 林 帯 は ,1)沖 縄 県 に よ り 保 護 さ れ て お り 人 為 的 な か く 乱 が 少 な い こ と ,2)我 々 の 研 究 拠 点 で あ る 東 京 農 業 大 学 宮 古 亜 熱 帯 農 場 か ら の 利 便 性 も 良 い こ と か ら ,調 査 地 と し て 選 定 し た .
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第 2 章 タ ン ニ ン 溶 液 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出
本 章 で は , マ ン グ ロ ー ブ 落 葉 由 来 タ ン ニ ン に よ る 溶 存 鉄 の 土 壌 溶 出 が , 沿 岸 海 洋 生 産 性 に 寄 与 し て い る , と の 説 を 提 唱 す る た め の 一 連 研 究 の 端 緒 と し て , タ ン ニ ン 溶 液 に よ る 溶 存 鉄 の 土 壌 溶 出 促 進 効 果 を 室 内 実 験 に よ り 検 証 し た . 本 章 の 仮 説 は 以 下 の 通 り で あ る . 「 マ ン グ ロ ー ブ 林 床 土 壌 に タ ン ニ ン 溶 液 を 添 加 す る と 溶 存 鉄 の 土 壌 溶 出 は 促 進 さ れ る 」 本 章 で は 上 記 仮 説 を 検 証 す る た め , 具 体 的 に 以 下 の よ う な 手 法 で 研 究 を 進 め た .す な わ ち ,沖 縄 に 生 育 す る6種 の マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 と 16種 の 非 マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 の 葉 を 用 い て , そ の 水 抽 出 液 を 宮 古 島 の 島 尻 マ ン グ ロ ー ブ 上 流 域 の 土 壌 と ,そ の 対 照 と し て 暗 赤 色 土 及 び 黒 ボ ク 土 の3 種 の 土 壌 に 添 加 し た 際 に , 土 壌 か ら 溶 出 す る 溶 存 鉄 量 を 検 証 し た . こ こ で , 特 殊 環 境 で あ る マ ン グ ロ ー ブ 林 床 下 を 考 慮 す る た め , 湛 水 日 数 及 び 塩 分 濃 度 の 異 な る 条 件 下 に お け る , タ ン ニ ン 溶 液 に よ る 溶 存 鉄 の 土 壌 溶 出 特 性 も 併 せ て 検 討 し た .2.1. 材 料 と 方 法
2 .1 .1 . 供 試 土 壌 の 採 取 及 び 分 析 方 法 土 壌 試 料 は 島 尻 地 区 河 口 域 林 帯 に お い て2010年 11 月 に 採 取 し た . 当 林 帯 は 主 に マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 を 含 む 以 下5種 の 混 成 林 で あ る .す な わ ち 樹 種 数 の 多 い 順 に Rhizophora stylosa , Bruguiera gymnorrhiza , Derristrifol iata , A v i cen n i a m ar i na 及 び K a n del i a ca n d el で あ る . 樹 高 2m以 上 の R. stylosa の 樹 木 密 度 は 11 ,7 00 ± 2,46 5 tree s ha- 1で あ る .Spalding et al.
(2010) の 分 類 に よ る と , D.trifoliata以 外 は マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 で あ る . 島 尻 地 区 林 床 の 表 層0~ 10cmの 土 壌 (以 下 マ ン グ ロ ー ブ 土 )を 無 作 為 に 1kgず つ 3試 料 採 取 し た . そ の 対 照 と し て , 暗 赤 色 土 と 黒 ボ ク 土 を そ れ ぞ れ , 島 尻 林 帯 畑 地 と 東 京(35°38’N,139°37’E)の 畑 地 の 心 土 (表 層 50~ 60cm)か ら ,無 作 為 に 1kgず つ を 3試 料 採 取 し た .な お ,こ の う ち 暗 赤 色 土 は , 島 尻 地 区 河 口 域 林 帯 の 母 材 土 壌 と 推 定 さ れ る . こ れ ら の 土 壌 試
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料 は 室 温(25±5℃ )で 風 乾 後 ,湿 り が 残 っ た マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 の み 通 風 乾 燥 機(DKN602, YAMATO)に よ り 60℃ 2日 間 乾 燥 し た . こ れ ら 乾 燥 後 の 試 料 は 大 き な 根 や 石 な ど を 取 り 除 き , メ ノ ウ の す り 鉢 で 粉 砕 後2mmメ ッ シ ュ の 篩 に か け , 供 試 し た .
土 壌 pH(Potential Hydrogen, 水 素 イ オ ン 濃 度 指 数 ) と EC(Electric Conductivity, 電 気 伝 導 度 ) は , 土 壌 : 蒸 留 水 を 1:5(W/V)で 混 合 し 1 時 間 振 と う 後 ,pH計 (F-21, Horiba)と EC計 (DS-e14, Horiba)に よ り 測 定 し た . 土 壌 中 の 全 炭 素(T-C)と 全 窒 素 (T-N)は , 試 料 を 105℃ に 設 定 し た 通 風 乾 燥 機 を 用 い て2時 間 乾 燥 後 ,CN analyzer (NC-900, Sumigraph)に よ り 測 定 し た .熱 硝 酸 溶 存 性 鉄 は ,土 壌:濃 硝 酸 を1:100 (W/V)の 割 合 で 混 合 し , 220℃ の ホ ッ ト プ レ ー ト に よ り 1時 間 熱 し た 後 ,1.7μmの ガ ラ ス 繊 維 フ ィ ル タ ー(GF/A, Whatman) に よ り ろ 過 し た ろ 液 を フ レ ー ム 原 子 吸 光 光 度 計 に よ り 測 定 し た .全 て の 実 験 は3連 土 壌 試 料 に よ り 行 い ,平 均 と 標 準 誤 差 は こ の 値 を 用 い て 算 出 し た . 土 壌 試 料 の 粒 径 分 布 は , 砂 画 分 は 篩 法 に よ り , シ ル ト 画 分 と 粘 土 画 分 は ピ ペ ッ ト 法 に よ り 決 定 し た (Indorante et al., 1990). 2 .1 .2 . 試 薬 タ ン ニ ン 酸 溶 液 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 試 薬 は 関 東 化 学 の タ ン ニ ン 酸(Chinese gallotannin, 分 子 量 1701.2) を 用 い ,各 種 濃 度 の タ ン ニ ン 酸 溶 液(1, 5, 10, 20, 40, 60, 80, 100, 150, 及 び 200 mM)を 調 整 し た . こ れ ら の 溶 液 40mlを 上 記 3土 壌 (マ ン グ ロ ー ブ 土 , 暗 赤 色 土 と 黒 ボ ク 土)4gに 添 加 し ,1時 間 振 と う 後 ,孔 径 0.2μmの メ ン ブ レ ン フ ィ ル タ ー に 通 過 後 の ろ 液 に ,10Mギ 酸 - 2.4Mギ 酸 ア ン モ ニ ウ ム 溶 液(Nishioka and Takeda, 2000)を 0.25ml/50mlの 割 合 で 混 合 さ せ pH3.2 に 調 整 し , 溶 液 中 の 鉄 を 溶 解 し た 後 , フ レ ー ム 原 子 吸 光 光 度 計 に よ り 溶 液 中 の 鉄 含 有 率 を 測 定 し た .
Nishioka and Takeda (2000)に よ る と ,孔 径 0.2μmの ろ 紙 で ろ 過 後 ,10M ギ 酸 -2.4Mギ 酸 ア ン モ ニ ウ ム 溶 液 を 添 加 し pH3.2で 溶 解 す る 鉄 に は ,植 物 プ ラ ン ク ト ン に 利 用 可 能 な 溶 存 鉄 種 が 含 ま れ る と さ れ て い る .
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2 .1 .3 . 塩 分 濃 度 の 異 な る 試 薬 タ ン ニ ン 酸 溶 液 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出
人 口 海 水(Instant Ocean; http://www.instantocean.com/)を 用 い て , 塩 分 濃 度 の 異 な る10mMタ ン ニ ン 酸 溶 液 (0, 5, 15及 び 35‰)を 作 成 し た . こ の 溶 液40 mLを 土 壌 4gに 混 合 し ,2.1.2と 同 様 の 方 法 で 土 壌 か ら 溶 出 す る 溶 存 鉄 を 測 定 し た . 2 .1 .4 . 試 薬 タ ン ニ ン 酸 溶 液 湛 水 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 タ ン ニ ン 酸 溶 液 湛 水 土 壌 か ら 溶 出 す る 溶 存 鉄 量 は 原 子 吸 光 法 で 測 定 し た .50mlの 蓋 付 き ガ ラ ス ビ ン に 土 壌 4gを 投 入 し ,10mMタ ン ニ ン 溶 液 に よ り 満 水 に し , パ ラ フ ィ ル ム (LMS Co., Ltd)を 用 い て 密 閉 後 蓋 を し , イ ン キ ュ ベ ー タ ー(CR-32LS, HITACHI: 25℃ , dark)に 静 置 後 , 1, 2, 5, 10, 20日 後 の 上 澄 み 液 中 の 溶 存 鉄 を 2.1.2と 同 様 の 方 法 で 測 定 し た . 2 .1 .5 . 供 試 樹 種 葉 の 採 取 及 び 葉 中 タ ン ニ ン 含 有 率 の 分 析 方 法 供 試 葉 と し て マ ン グ ロ ー ブ 樹 種(n=6; Spalding et al., 2010)は 沖 縄 島 の 億 首 川 河 口 域 林 帯 (26°27’N, 127°56’E) 及 び 宮 古 島 の 島 尻 地 区 (24°52’N, 125°17’E)と 川 満 地 区 (24°45’N, 125°17’E)河 口 域 林 帯 に お い て , 2010 年 の 8 月 と 9 月 に 採 取 し た ( 図 2-1) . そ の 際 , 非 マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 (n=16)も マ ン グ ロ ー ブ 河 口 域 林 帯 近 く で 採 取 し た .各 樹 種 名 と 採 取 地 点 は 表2-1に 示 し た . 各 樹 種 に お い て 樹 高 が 同 程 度 の 個 体5本 を 選 択 し , 緑 色 の 第 2, 3葉 を 10 枚 ず つ 各 個 体 か ら 採 取 し た . 試 料 は 60 ℃ に 設 定 し た 通 風 乾 燥 機 (DKN602, YAMATO) に よ り 24 時 間 乾 燥 後 , 粉 砕 機 (WB-1, OSAKA CHEMICAL)を 用 い て 粉 砕 し た . 試 料100mgに 10mlの ア セ ト ン 溶 液 (7:3 v/v; Yi et al. 2007)を 加 え 1時 間 振 と う 後 , 孔 径1.7μmの ガ ラ ス 繊 維 フ ィ ル タ ー (GF/A, Whatman)に よ り ろ 過 し た .こ の 抽 出 操 作 を3回 繰 り 返 し ,こ の 値 を 基 に 平 均 と 標 準 誤 差 を 作 成 し た . タ ン ニ ン 含 有 率 と し て , 全 フ ェ ノ ー ル 含 有 率 を フ ォ ー リ ン チ オ カ ル ト 法(Julkunen-Tiitto, 1985)に よ り 測 定 し た .す な わ ち ,上 述 過 程 で 得 ら れ た ろ 過 試 料1mlに フ ォ ー リ ン チ オ カ ル ト 試 薬 (関 東 化 学 )1mlを 加 え , 3
11 学名 場所‡ マングローブ樹種† 1 Rhizophora stylosa S 2 K 3 O 4 Excoecaria agallocha K 5 Kandelia candel S 6 K 7 O 8 Lumnitzera racemosa O 9 Bruguiera gymnorrhiza S 10 K 11 O 12 Avicennia marina S 非マングローブ木本植物 13 Elaecarpus decipiens O 14 Terminalis catappa K 15 Casuarina equisetifolia S 16 Leucaena leucocephala O 17 Calophyllum inophyllum K 18 Diospyros egbert S 19 Machilus thunbergii O 20 Veitchia merrillii K 21 Garcinia subelliptica S 22 Hibiscus tiliaceus S 23 Scaevola frutescens S 24 Ficus retusa K 25 Pandanus odoratissimus S 26 Ficus viragata O 27 Derris trifoliata S 28 Pongamia pinnata K † マングローブ樹種の分類はSpalding et al. (2010)に準じた. ‡ S、K及びOはそれぞれ島尻地区、川満地区 及び億首川河口域の略語である. 前者2地域 は宮古島、後者は沖縄島に属する. 分 放 置 後 ,炭 酸 ナ ト リ ウ ム(2:8 w/v)1mlを 加 え ,室 内 (25±5℃ )に お い て 1 時 間 放 置 し た .放 置 後 ,標 準 試 薬 と し て タ ン ニ ン 酸(Chinese gallotannin, 分 子 量1701.2 , 関 東 化 学 ) を 用 い , 分 光 光 度 計 (U-5100, 日 立 )を 用 い て 波 長700nmの 試 料 吸 光 度 を 測 定 し た .こ の よ う な 方 法 で 試 料 を 測 定 し た タ ン ニ ン の 分 析 値 を 本 研 究 で は タ ン ニ ン 含 有 率 と 定 義 し た . 表 2-1 供 試 樹 種 名 と そ の 採 取 場 所 図 2-1 供 試 葉 の 採 取 場 所
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2 .1 .6 . 樹 種 葉 抽 出 液 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出
葉 抽 出 液 は 島 尻 河 口 域 林 帯 の マ ン グ ロ ー ブ 樹 種4 種 (R.stylosa, K.
ca n del, B. gymnorrh iza 及 び A. mar ina )を , ま た 2 .1 .5 . に お い て 葉 中 タ ン ニ
ン 含 有 率 を 測 定 し た22 種 の 樹 種 葉 の う ち , タ ン ニ ン 含 有 率 の 高 低 に よ り 分 類 し た 宮 古 島 の 非 マ ン グ ロ ー ブ 樹 種6種 (T. catappa, E. decipiens, G.
subelliptica, C. inophyllum, D. trifolia te 及 び P . pin n a t a)を 供 試 し た .
そ れ ぞ れ の 葉 試 料 は 粉 末 状 に し , 蒸 留 水 と1:100(W/V) の 割 合 で 混 合 し ,1時 間 振 と う 後 , 孔 径 1.7μmの ガ ラ ス 繊 維 ろ 紙 (Whatman, GF/A)で ろ 過 し て 供 試 し た . そ れ ぞ れ の 抽 出 液40mlを 4gの マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 に 添 加 し ,1時 間 振 と う 後 ,2.1.2と 同 様 の 方 法 で 土 壌 か ら 溶 出 す る 溶 存 鉄 量 を 評 価 し た . 2 .1 .7 . 統 計 解 析 本 章 の 実 験 に お け る 平 均 と 標 準 誤 差 は3 連 の 分 析 試 料 か ら 求 め た . 2 .1 .2 . と 2 .1 .6 . は タ ン ニ ン 溶 液 の 濃 度 の 違 い を 要 因 と し て ,2 .1 . 4 . は 湛 水 期 間 の 違 い を 要 因 と し て , 2.1.3. は 塩 分 濃 度 の 違 い を 要 因 と し て ANOVA解 析 を 行 い , Tukey - Kramer法 を 用 い , エ ク セ ル 統 計 2010(SSRI 2010 for Windows)を 使 用 し て 有 意 差 検 定 を 行 っ た .
2.2. 結 果
2 .2 .1 . 供 試 土 壌 の 化 学 特 性
供 試 土 壌 の 物 理 化 学 性 を 表2-2に 示 し た . 国 際 土 壌 学 会 法 に よ る 土 性 分 類 に よ る と ,Clay, Silt及 び Sandの 割 合 か ら , 暗 赤 色 土 と 黒 ボ ク 土 は 重 埴 土 , マ ン グ ロ ー ブ 土 は 軽 埴 土 に 分 類 さ れ る . 暗 赤 色 土 , 黒 ボ ク 土 及 び マ ン グ ロ ー ブ 土 のpH は そ れ ぞ れ 7.62 , 6.31 及 び6.70 で あ り , EC は そ れ ぞ れ 0.09 , 0.05 及 び 2.59dSm- 1で あ っ た . 母 材 が 琉 球 石 灰 岩 で あ る 暗 赤 色 土 は 他 土 壌 よ りpHが 高 く , 海 水 の 影 響 を 受 け て い る マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 は 他 土 壌 よ り 際 立 っ てECが 高 か っ た . 暗 赤 色 土 , 黒 ボ ク 土 及 び マ ン グ ロ ー ブ 土 のT-Cは そ れ ぞ れ 13.7, 40.0 及 び59.3mgg- 1で あ り ,マ ン グ ロ ー ブ 林 床 土 壌 のT-Cが 他 土 壌 よ り 高 か っ た . 暗 赤 色 土 , 黒 ボ ク 土 及 び マ ン グ ロ ー ブ 土 の 熱 硝 酸 抽 出 性 鉄 量 は そ れ
13 ぞ れ63.5, 46.8 及 び 34.8mgg- 1で あ り , 暗 赤 色 土 は マ ン グ ロ ー ブ 土 の1.8 倍 高 か っ た . 2 .2 .2 . 試 薬 タ ン ニ ン 酸 溶 液 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 図2-2 に 示 し た よ う に , マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 量 ( ~ 20 μgg- 1) は , タ ン ニ ン 酸 溶 液 濃 度 を 高 め る ( ~ 100mM)と と も に 増 加 し た . し か し , 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 量 は , 添 加 し た タ ン ニ ン 酸 溶 液 の 濃 度 を100mM以 上 増 加 さ せ て も 大 き く 変 わ ら な か っ た . 図2-3 に 3 種 の 土 壌 試 料 に 濃 度 の 異 な る タ ン ニ ン 酸 溶 液 を 添 加 し た 際 に 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 量 の 違 い を 示 し た . こ れ に よ る と 溶 液 中 の タ ン ニ ン 酸 濃 度 が 高 く な る ほ ど , そ れ ぞ れ の 土 壌 か ら 溶 出 す る 溶 存 鉄 量 は 有 意 に 増 加 し た .特 に ,マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら 溶 出 す る 溶 存 鉄 量 は , そ の 他2種 の 土 壌 よ り 極 め て 多 か っ た .100mMタ ン ニ ン 酸 溶 液 を 添 加 し た 際 に マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 は そ の 母 材 土 壌 で あ る 暗 赤 色 土 よ り5.51 倍 高 か っ た . し か し , そ れ ぞ れ の 土 壌 か ら 溶 出 す る 溶 存 鉄 量 の 比 率 は 同 様 の 傾 向 を 示 し た .
pH EC Clay Silt Sand
H2O dSm-1 % % % 暗赤色土 7.62 0.09 13.7 ±0.5 1.7 ±0.1 8.2 63.5 ±0.8 66.8 22.2 11.0 黒ボク土 6.31 0.05 40.0 ±0.7 3.2 ±0.4 12.4 46.8 ±1.6 55.3 10.5 34.2 マングローブ土 6.70 2.59 59.3 ±0.4 2.6 ±0.2 23.0 34.8 ±1.3 39.1 16.4 44.5 † データは平均(n=3)と標準誤差を示す. ‡ 熱硝酸抽出. mgg-1 T-C† T-N† C/N mgg-1 mgg-1 Fe†‡ 表 2-2 供 試 土 壌 の 物 理 化 学 特 性
14 図 2-2 マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 に 添 加 し た タ ン ニ ン 酸 溶 液 の 濃 度 と 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 と の 関 係 図 2-3 各 土 壌 試 料 に 添 加 し た タ ン ニ ン 酸 溶 液 の 濃 度 と 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 と の 関 係. ***, **, と *は そ れ ぞ れ P < 0 . 001, 0 . 01, と 0. 0 5 で 2 区 間 の 差 が 有 意 で あ る こ と を 示 す .
15 2 .2.3. 塩 分 濃 度 の 異 な る 試 薬 タ ン ニ ン 酸 溶 液 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 図2-4 に 塩 分 濃 度 の 異 な る 10mM タ ン ニ ン 酸 溶 液 を 土 壌 に 添 加 し た 際 の 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 量 を 示 し た . そ の 結 果 に お い て , マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 量 は ,同 塩 分 濃 度 の 溶 液 を 添 加 し た 他 の2種 の 土 壌 よ り 多 か っ た . 全 て の 土 壌 試 料 に お い て , 塩 分 濃 度 が 増 加 す る に つ れ て 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 は 減 少 し た が , 塩 分 濃 度35‰ の タ ン ニ ン 酸 溶 液 添 加 時 に お い て も , マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 は , 同 濃 度 の 暗 赤 色 土 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 よ り6.1倍 高 か っ た . 図 2-4 タ ン ニ ン 酸 溶 液 (10mM)中 の 塩 分 濃 度 と 土 壌 か ら 溶 出 す る 溶 存 鉄 量 の 関 係. ***, **, 及 び *は そ れ ぞ れ P < 0 . 001, 0 . 01, 及 び 0.05 の 水 準 で 有 意 で あ る こ と を 示 す .
16 2 .2.4. 試 薬 タ ン ニ ン 酸 溶 液 湛 水 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 図2-5は 蒸 留 水 も し く は タ ン ニ ン 酸 溶 液 を 土 壌 に 湛 水 さ せ た 際 に 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 を 湛 水 日 数 毎 に 示 し た . 蒸 留 水 添 加 区 で は , 湛 水 後2日 目 以 降 , マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら の み 溶 存 鉄 溶 出 量 が 増 加 し た . 他 方 で ,10mMタ ン ニ ン 酸 溶 液 添 加 区 で は 湛 水 日 数 の 経 過 に 伴 い ,そ れ ぞ れ の 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 は 増 加 し , 特 に マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 は 他 の2種 の 土 壌 よ り 多 か っ た . 2 .2.5. 供 試 樹 種 葉 中 の タ ン ニ ン 含 有 率 沖 縄 に 生 育 す る マ ン グ ロ ー ブ6 種 及 び 非 マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 16 種 の 葉 中 タ ン ニ ン 含 有 率 を 測 定 し た 結 果 を 図2-6に 示 し た .供 試 し た マ ン グ ロ ー ブ 樹 種6種 の 平 均 タ ン ニ ン 含 有 率 (±SE)は 99±16 mgg- 1で あ り , 非 マ ン グ ロ ー ブ 樹 種16種 の 平 均 タ ン ニ ン 含 有 率 は 76±19 mgg- 1で あ っ た . 供 試 し た マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 の 中 で タ ン ニ ン 含 有 率 が 最 も 高 い も の と 低 い も の は そ れ ぞ れ R.stylosa (mean±SE, 156±6 mgg- 1)と A.marina (45±6 mgg- 1)で あ っ た .一 方 供 試 し た 非 マ ン グ ロ ー ブ 陸 上 樹 種 16種 の 中 で タ ン ニ ン 含 有 率 が 最 も 高 い も の と , 低 い も の は そ れ ぞ れ E. decipiens (265±8
図 2-5 蒸 留 水 (a)及 び 10mM タ ン ニ ン 酸 溶 液 (b)を 土 壌 に 湛 水 し た 際 に 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 の 経 時 変 化. ***, ** , 及 び *は そ れ ぞ れ
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mgg- 1)と P. pinnata (11±1 mgg- 1)で あ っ た .
2 .2.6. 樹 種 葉 抽 出 液 に よ る 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出
図2-7に 樹 種 葉 水 抽 出 液 を マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 に 添 加 し た 際 に 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 を 示 し た .供 試 樹 種 葉 で あ る T. catappa,E. decipiens,
R. s tylosa, K . ca n de l , B. gymnorrhiza , G. subellipti ca , C . i n o p hy l l u m , A. marina , D . tri foliate , 及 び P. pinnata の 水 抽 出 液 中 の タ ン ニ ン 濃 度 は
そ れ ぞ れ0.52, 0.41, 0.25, 0.24, 0.24, 0.12, 0.11, 0.07, 0.07, 及 び 0.02mMで あ っ た . マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 及 び 非 マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 に 関 係 な く , 葉 抽 出 液 中 の タ ン ニ ン 含 有 率 の 高 い 順 に , マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 は 増 加 し た . そ れ ぞ れ の 樹 種 葉 添 加 区 は 蒸 留 水 添 加 区 に 比 べ マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら 有 意 に 多 く 溶 存 鉄 が 溶 出 し た (0.12±0.01μgg- 1; mean±SE).特 に R. stylosa添 加 区 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 は 1.16±0.13μgg- 1 と , 蒸 留 水 添 加 区 の9.7倍 で あ っ た . 図 2-6 沖 縄 に 生 育 す る マ ン グ ロ ー ブ 及 び 非 マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 の 葉 中 タ ン ニ ン 含 有 率 供 試 樹 種 名 は 表 2-1 に 同 じ 樹 種 番 号 で 示 し た .エ ラ ー バ ー は 標 準 誤 差 (n= 3)を 示 し て い る .
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2.3. 考 察
本 章 で は 沖 縄 に 生 育 す る6 種 の マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 と 16 種 の 非 マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 の 葉 を 用 い て , そ の 水 抽 出 液 を 宮 古 島 の 島 尻 マ ン グ ロ ー ブ 上 流 域 の 土 壌 ,そ の 母 材 土 壌 と 想 定 さ れ る 暗 赤 色 土 及 び 黒 ボ ク 土 の3種 の 土 壌 に 添 加 し た 際 に 土 壌 か ら 溶 出 す る 溶 存 鉄 量 を 検 証 し た . ま ず 酸 化 条 件 下 で 行 っ た 実 験 結 果 に つ い て 述 べ る .図2-3に 示 し た よ う に , マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 は 添 加 し た タ ン ニ ン 溶 液 の 濃 度 と と も に 増 加 す る こ と を 確 認 し た . さ ら に ,100mMタ ン ニ ン 酸 溶 液 を3種 の 土 壌 に 添 加 し た 際 ,マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 は 暗 赤 色 土 の そ れ に 比 べ5.51倍 多 か っ た (図 2-3).こ れ ら の 結 果 は , タ ン ニ ン に よ り マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら 溶 存 化 さ れ た 鉄 は , 酸 化 条 件 下 に お い て も 安 定 な 錯 体 結 合 を 形 成 し て い る こ と を 示 唆 し て い る . 図 2-7 葉 抽 出 液 中 タ ン ニ ン 濃 度 と そ の 抽 出 液 添 加 マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 量 と の 関 係. 図 中 の 黒 丸 は マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 を 示 す(Spalding et al., 2010). **は 相 関 関 係 の 有 意 差(P < 0.01)を 示 す .Ⅰ. Avicennia marina Ⅱ . Brugu iera gymnorrhiza Ⅲ . Kandelia candel Ⅳ. Rhizophora stylosa
0. Distilled water 1. Pongamia pinnata 2. Derris trifoliata 3. Garcinia subelliptica 4. Calophyllum inophyllum 5. Terminalis catappa 6. Elaecarpus decipiens
19 さ ら に 図2-7に 示 し た よ う に ,樹 種 葉 抽 出 液 を マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 に 添 加 し た 際 , マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 及 び 非 マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 に 関 わ ら ず , 葉 抽 出 液 中 タ ン ニ ン 含 有 率 の 高 い ほ う が 土 壌 か ら 溶 存 鉄 溶 出 を 促 進 し た . こ れ ら の 結 果 は マ ン グ ロ ー ブ 林 床 土 壌 に お い て , 落 葉 中 の タ ン ニ ン に よ り 土 壌 か ら 溶 存 鉄 が 溶 出 す る 可 能 性 が あ る こ と を 示 し て お り , 本 章 の 仮 説 はin vitroに お い て 実 証 さ れ た と 言 え る . 他 方 , 一 般 的 に , 非 溶 存 性 の3 価 の Feイ オ ン (Fe3 +)は 還 元 状 態 の 土 壌 に お い て2価 の Feイ オ ン (Fe2 +)に 還 元 さ れ る . 図 2-5(a)に 示 し た よ う に , 蒸 留 水 湛 水 区 土 壌 に お い て , マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら の み 溶 出 し た 溶 存 鉄 はFe2 +で あ る と 想 定 さ れ る . し か し ,10mMタ ン ニ ン 酸 溶 液 湛 水 区 に お い て20日 目 に マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 は , 同 湛 水 期 間 の 蒸 留 水 区 よ り5.0倍 高 か っ た . こ の こ と は , タ ン ニ ン 溶 液 は 還 元 状 態 の 土 壌 に お い て も マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら の 溶 存 鉄 溶 出 を 促 進 す る こ と が 示 さ れ た . し か し , 土 壌 湛 水2日 目 以 降 の マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 と 黒 ボ ク 土 と か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 は 大 き く 違 わ な か っ た . そ れ ゆ え , こ の 土 壌 湛 水 初 期 に 溶 出 し た 溶 存 鉄 の 多 く は , タ ン ニ ン に よ る 錯 体 鉄 の 一 部 で あ り , 一 方 湛 水 中 期 以 降 に 溶 出 し た 溶 存 鉄 は ,Fe3 +がFe2 +に 還 元 さ れ て 溶 出 し た 溶 存 鉄 で あ る と 考 え ら れ る . 先 行 研 究 に お い て タ ン ニ ン がFe3 +やAl3 + と 錯 体 結 合 す る こ と(Sungur and Uzar, 2008)や , タ ン ニ ン が Cr6 +をCr3 + に 還 元 す る(Noro and Komatsu, 2003)こ と が 知 ら れ て い る .
他 方 , 溶 液 中 の 鉄 の 溶 存 性 は 塩 分 濃 度 に 大 き く 影 響 す る . 図2-4に 示 し た よ う に , 土 壌 か ら 溶 出 す る 溶 存 鉄 量 は 塩 分 濃 度 の 増 加 と 共 に 減 少 し た . 鉄 は 酸 化 海 水 に お い て 速 や か に 酸 化 し , 粒 子 状 の 水 酸 化 鉄 コ ロ イ ド と し て 凝 集 沈 殿 す る こ と が 知 ら れ て い る(Waite, 2001).そ れ に も か か わ ら ず 有 機 錯 体 鉄 は 海 水 で も 比 較 的 安 定 で あ る(Matsunaga et al., 1998).こ の こ と は 図 2-4に も 示 さ れ て い る よ う に ,塩 分 濃 度 35‰を 含 む 10mM タ ン ニ ン 酸 溶 液 を マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 に 混 合 し た 際 に 残 存 し て い た 溶 存 鉄 量 の 多 く は 錯 体 鉄 で あ る と 想 定 さ れ る . こ の 結 果 は , タ ン ニ ン に よ っ て 土 壌 溶 出 し た 溶 存 鉄 は , 海 水 条 件 下 で も 完 全 に 凝 集 沈 殿 せ ず , い く ら か は 溶 存 す る こ と を 示 し て い る . 最 後 に マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 葉 中 の タ ン ニ ン 含 有 率 に つ い て 述 べ る . こ
20 れ ま で 多 く の 研 究 に お い て マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 葉 中 に は タ ン ニ ン が 豊 富 に 含 ま れ て い る と 報 告 さ れ て い る . 例 え ばBasak et al. (1999)が 分 析 し た イ ン ド に 生 育 す る9 種 の マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 の う ち 6 種 の 葉 中 タ ン ニ ン 含 有 率 は20 %(乾 物 )以 上 で あ っ た . し か し 図 2-6を 見 る と , 沖 縄 に 生 育 す る6 種 の マ ン グ ロ ー ブ の 葉 中 タ ン ニ ン 含 有 率 は そ の 周 辺 に 生 育 す る 16種 の 非 マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 よ り 比 較 的 高 い こ と が 示 唆 さ れ た が , 際 立 っ て 高 い わ け で は な か っ た . し か し な が ら , マ ン グ ロ ー ブ マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 は 陸 と 海 の 潮 間 帯 の 位 置 に 生 息 し て お り , そ の 林 床 に お い て リ タ ー 由 来 の タ ン ニ ン に よ っ て 溶 存 性 の 錯 体 鉄 が 生 産 さ れ て い る と い う こ と が , 海 洋 生 態 系 に 及 ぼ す 役 割 は 内 陸 域 の 森 林 よ り 大 き い と い え る .
2.4. ま と め
マ ン グ ロ ー ブ 落 葉 由 来 タ ン ニ ン に よ る 溶 存 鉄 の 土 壌 溶 出 が , 沿 岸 海 洋 生 産 性 に 寄 与 し て い る , と の 説 を 提 唱 す る た め の 一 連 研 究 の 端 緒 と し て , 本 章 で は タ ン ニ ン 溶 液 に よ る 溶 存 鉄 の 土 壌 溶 出 促 進 効 果 を 室 内 実 験 に よ り 検 証 し た . 得 ら れ た 結 果 は 以 下 の 通 り で あ る . 1)タ ン ニ ン 酸 溶 液 濃 度 を 高 め る (~ 100mM)と ,マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量(~ 20 μgg- 1)も 増 加 し た . 2) マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 に 100mM タ ン ニ ン 酸 溶 液 を 添 加 し た 際 に 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 は , 暗 赤 色 土 の そ れ よ り も5.5倍 高 か っ た . 3)10mMタ ン ニ ン 酸 溶 液 湛 水 1 日 目 の マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 は ,暗 赤 色 土 の そ れ よ り 高 か っ た が ,湛 水2日 目 以 降 の そ れ ら の 増 加 度 合 に 違 い は な か っ た . 4)10mMタ ン ニ ン 酸 溶 液 中 の 塩 分 濃 度 を 高 め る と , 土 壌 か ら 溶 出 す る 溶 存 鉄 量 は 有 意 に 減 少 し た が , 塩 分 濃 度35‰の 同 溶 液 添 加 時 に マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 は , 同 条 件 の 暗 赤 色 土 か ら 溶 出 し た そ れ よ り6.1倍 多 か っ た . 5) 供 試 し た マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 (n=6) 及 び 非 マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 (n=16) 葉 中 の タ ン ニ ン 含 有 率(mean ± SE) は , そ れ ぞ れ 99±16 mgg- 1及 び76±19 mgg- 1で あ っ た . 6)マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら 溶 出 し た 溶 存 鉄 量 は ,添 加 し た 供 試 葉 抽 出 液21 中 の タ ン ニ ン 含 有 率 と 有 意 な 正 の 相 関 関 係 が み ら れ た . こ れ ら の 結 果 は , マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 葉 中 の タ ン ニ ン が 塩 水 条 件 下 に お い て も , マ ン グ ロ ー ブ 土 壌 か ら 溶 存 鉄 溶 出 を 促 進 す る 可 能 性 が あ る こ と を 示 し て い る . な お こ れ ら の 成 果 は , 本 章 の 仮 説 「 マ ン グ ロ ー ブ 林 床 土 壌 に タ ン ニ ン 溶 液 を 添 加 す る と 溶 存 鉄 の 土 壌 溶 出 は 促 進 さ れ る 」 をin vitroに お い て 支 持 す る も の で あ る .
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第 3 章 マ ン グ ロ ー ブ リ タ ー 量 に 占 め る 植 食 性 カ ニ に よ る リ
タ ー 持 去 り 量 の 比 率
前 章 に お い て , マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 葉 中 タ ン ニ ン に よ り , そ の 林 床 土 壌 か ら 溶 存 鉄 溶 出 が 促 進 さ れ る こ と を 確 認 し た . し か し , 実 際 マ ン グ ロ ー ブ は 潮 間 帯 の 位 置 に 生 育 し て お り , そ の 落 葉 は 干 満 に よ り 海 へ 持 去 ら れ る 可 能 性 が あ る . マ ン グ ロ ー ブ に お け る 樹 種 葉 中 タ ン ニ ン と 土 壌 中 の 鉄 と の 接 触 /反 応 を 検 証 し て い く に は ,落 葉 の 動 態 を 把 握 す る 必 要 が あ る . マ ン グ ロ ー ブ の 落 葉 の 多 く は , 第1章 で も 述 べ た よ う に , 植 食 性 の カ ニ に よ っ て 巣 穴 に 持 ち 運 ば れ る こ と が 知 ら れ て い る(Micheli, 1993; Ashton, 2002; Kristensen, 2008; Chen et al., 2008). 植 食 性 の カ ニ が マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 葉 を 巣 穴 に 持 去 る 行 為 は , 葉 中 タ ン ニ ン と 土 壌 と の 接 触 機 会 の 増 加 を 意 味 す る .し か し , 世 界 各 地 の マ ン グ ロ ー ブ に お け る 植 食 性 カ ニ に よ る 落 葉 持 去 り 量 の 研 究 結 果 は , 樹 種 , 底 生 動 物 の 種 類 , 気 温 , 潮 汐 の 大 き さ に よ っ て 大 き く 異 な る . ま た , 沖 縄 で は 既 往 研 究 に お い て リ タ ー 量 の 調 査(Mokolensang and Tokuyama, 1998; Mfilinge et al., 2005)や 植 食 性 カ ニ に よ る 短 期 間 の リ タ ー 持 去 り 評 価(Mfilinge and Tsuchiya, 2008)は 行 わ れ て い る が , そ の 両 方 を 通 年 評 価 し た 例 は な く , 宮 古 島 島 尻 林 帯 で の 調 査 例 も な い . そ こ で 本 章 で は , 宮 古 島 の 島 尻 林 帯 に お い て も , そ の 年 間 落 葉 量 と 植 食 性 カ ニ に よ る 持 去 り 量 を 把 握 し , 林 床 土 壌 へ の 落 葉 由 来 タ ン ニ ン の 供 給 量 を 検 証 し た . 本 章 の 仮 説 は 以 下 の 通 り で あ る . 「 マ ン グ ロ ー ブ 落 葉 の50%以 上 は 植 食 性 カ ニ に よ り 巣 穴 に 運 ば れ る 」 本 章 で は 上 記 仮 説 を 検 証 す る た め , 具 体 的 に 以 下 の よ う な 手 法 で 研 究 を 進 め た . す な わ ち , 前 章 の 供 試 土 壌 を 採 取 し た 島 尻 林 帯 上 流 域 を 対 象 と し て ,中 空 リ タ ー キ ャ ッ チ ャ ー と 地 面 リ タ ー キ ャ ッ チ ャ ー 用 い , リ タ ー 量 , カ ニ に よ る リ タ ー 持 去 り 量 , 潮 汐 に よ る リ タ ー 持 去 り 量 及 び , 林 床 へ の リ タ ー 現 存 量 を 通 年 調 査 し , 最 後 に 林 床 土 壌 へ の 落 葉 由 来 タ ン ニ ン 供 給 量 を 算 出 し た .
23
3.1. 材 料 と 方 法
3 .1 .1 . 調 査 地 概 要 植 食 性 カ ニ に よ る リ タ ー 持 去 り 量 の 定 量 は , 沖 縄 県 宮 古 島 の 島 尻 河 口 域 林 帯(図 2-1)に お い て 行 っ た . 当 林 帯 は , 1)沖 縄 県 に よ り 保 護 さ れ て お り , 人 為 的 な か く 乱 が 少 な い こ と ,2)我 々 の 研 究 拠 点 で あ る 東 京 農 業 大 学 宮 古 亜 熱 帯 農 場(24°76’N, 125°39’E)か ら 15kmと 近 い こ と に よ り , 試 験 地 に 選 定 し た . 亜 熱 帯 域 に 位 置 す る 当 地 域 の 年 間 降 水 量 と 年 平 均 気 温 は そ れ ぞ れ2,034mmと 23.6℃ で あ る .ま た ,当 地 域 の 周 囲 300km 以 内 に は 年 平 均3.8 個 の 台 風 が 襲 来 す る (1981-2010, 沖 縄 地 方 気 象 台 ) . 年 間 の 最 高 潮 位 差 は2.3mで あ る . 試 験 期 間 で あ る2011年 4 月 か ら 2012 年 3 月 ま で の 間 , 最 高 及 び 最 低 月 平 均 気 温 は そ れ ぞ れ ,7月 (28.8℃ )と 1月 (18.3℃ )で あ っ た . 最 高 月 間 降 水 量 は 巨 大 台 風 が 襲 来 し た5月 (530mm)で あ っ た (表 3-1). 6月 と 8月 に も そ れ ぞ れ 台 風 が あ っ た . 最 低 月 間 降 水 量 は7月 (38mm)で あ っ た . 当 林 帯 は 主 に マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 を 含 む 以 下5種 の 混 成 林 で あ る .す な わ ち 樹 種 数 の 多 い 順 に Rhizophora stylosa,Bruguiera gymnorrhiza,Derristrifol iata , A v i cen n i a m ar i na 及 び K a n del i a ca n d el で あ る . 樹 高 2m以 上 の R. stylosa の 樹 木 密 度 は 11 ,7 00 ± 2,46 5 tree s ha- 1で あ る .Spalding et al.
(2010) の 分 類 に よ る と , D.trifoliata以 外 は マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 で あ る . 当 林 帯 は 川 岸 か ら の 林 幅 は2mか ら 20m程 度 で あ り , 河 口 か ら 上 流 ま で お よ そ500mで あ る . 当 林 帯 に 生 息 す る 植 食 性 の カ ニ は 生 息 数 が 多 い 順 に ,主 に Neosarmatium smithi(図 3-1(1)),Helice leachi及 び Perisesarma
b i d ens で あ る .
Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec Jan Feb Mar
Temperature (℃) Average 2001-2010 22.5 25.1 27.4 28.9 28.7 27.7 25.6 22.9 19.8 18.2 19.1 19.9 23.8 2011 21.2 24.5 27.9 28.8 28.6 27.8 25.6 24.2 19.4 16.1 18.7 17.9 23.4 Rainfall (mm) Total 2001-2010 133.0 145.7 227.6 156.3 252.7 272.9 174.2 156.1 117.5 110.6 122.7 139.8 2008.8 2011 150.0 529.5 188.0 38.0 173.5 86.5 336.0 215.0 139.0 216.0 105.0 39.0 2215.5 Data source: Japan Meterological Agency.
表 3-1 宮 古 島 の 2011 年 か ら 2012 年 の 月 別 平 均 気 温 と 降 水 量 と 過 去 10 年 と の 比 較
24 3 .1.2. リ タ ー 量 , 林 床 土 壌 へ の リ タ ー 現 存 量 , 海 域 へ の リ タ ー 流 出 量 及 び 植 食 性 カ ニ に よ る リ タ ー 持 去 り 量 の 通 年 調 査 リ タ ー の モ ニ タ リ ン グ 調 査 は 島 尻 河 口 域 林 帯 上 流 に て ,10m×10m の コ ド ラ ー ト を 用 い , そ の 中 を 対 象 と し て 行 っ た . 当 地 点 を 選 定 し た 理 由 は , 1) 大 潮 の 最 満 潮 時 に の み 冠 水 す る こ と , 2)R. stylosa , B.
g ymn o rrh i z a 及 び D . trifol iata の 生 育 密 度 が 同 程 度 で ,そ の 樹 高 が 4m以 上
の も の が 多 い こ と に よ る .
当 コ ド ラ ー ト 内 の 植 生 及 び 植 食 性 カ ニ の 特 徴 を 表3-2に 示 し た . 樹 種 数 は R. stylosa, B. gymnorrhiza及 び D. trifoliata が そ れ ぞ れ 54, 44及 び 32本 で あ り , 底 生 動 物 は N. smithiが 優 占 し , 経 口 25mm以 上 の カ ニ 穴 が 456 個 , 24mm以 下 の カ ニ 穴 が 786 個 確 認 さ れ た ( 表 3-2, 図 3-1(2)) . こ の 野 外 実 験 の 手 法 の 多 く はRobertson and Daniel (1989) 及 び Chen et al. (2008)を 参 考 に し た . 木本性 Rhizophora stylosa 54 樹種 Bruguiera gymnorrhiza 44 Derris trifoliata 32 植食性 Neosarmatium smithi 420 カニ Helice leachi 250 Perisesarma bidens 160 カニの diameter ≧25mm 1822 巣穴 <25mm 3144 No. 表 3-2 試 験 コ ド ラ ー ト 内 の 植 生 と 植 食 性 カ ニ の 生 息 状 況 (100 m2). 図 3-1 (1) N eosarmatium sm it hi と (2) そ の 巣 穴
25 3 .1 .3 . 年 間 リ タ ー 量 図3-2に 示 し た よ う に ,コ ド ラ ー ト 内 に 5つ の 中 空 リ タ ー キ ャ ッ チ ャ ー (1 m×1 m PVCフ レ ー ム に 2mmメ ッ シ ュ の ナ イ ロ ン 寒 冷 紗 を 水 糸 で 縫 い 合 わ せ , 林 床 か ら の 高 さ1.2mに 位 置 に 吊 下 げ た . 図 3-3(1))を 設 置 し , リ タ ー 量 を 定 量 し た . 中 空 キ ャ ッ チ ャ ー 内 の リ タ ー は 大 潮 の 満 潮 期 間 の 前 日 , す な わ ち 概 ね 月2回 採 取 し た .試 料 は 樹 種 別 に 葉 ,実 ,托 葉 ご と に 分 類 し ,60℃ ,1週 間 通 風 乾 燥 機 に よ り 乾 燥 し ,そ の 乾 燥 重 量 を 測 定 し た . こ の 葉 , 実 , 托 葉 の 総 量 を リ タ ー 量 と 定 義 し た . し か し な が ら , 托 葉 は ど の 樹 種 の も の か 判 別 が 難 し か っ た た め , そ の 総 量 の み を 評 価 の 対 象 と し た . A1 G1
10 m
10 m
海側
A2 A5 A3 A4 G2 G3 G4 G5 図 3-2 コ ド ラ ー ト 内 の リ タ ー キ ャ ッ チ ャ ー (1m ×1 m)の 位 置 四 角 く 囲 ん だ 線 と 点 線 は そ れ ぞ れ 中 空 リ タ ー キ ャ ッ チ ャ ー(A)と 地 面 リ タ ー キ ャ ッ チ ャ ー(B)を 示 し て い る . コ ド ラ ー ト 内 の Rhizophora stylosa, B r u g u i e r a g y m n o r rh i z a 及 び D e r r i s t r i f o l i a t a の 本 数 は そ れ ぞ れ 54 , 4 4 及 び 32 本 で あ る .26 3 .1.4. 林 床 へ の リ タ ー の 現 存 量 コ ド ラ ー ト 内 の5 つ の リ タ ー キ ャ ッ チ ャ ー の 近 く に , 5 つ の 地 面 リ タ ー キ ャ ッ チ ャ ー 区(1m×1m, 図 3-3(2))を 設 置 し た (図 3-2). 地 面 リ タ ー キ ャ ッ チ ャ ー 内 の リ タ ー は 中 空 リ タ ー キ ャ ッ チ ャ ー と 同 日 に リ タ ー を 採 取 し , 上 記 同 様 の 処 理 を 行 っ た . こ の 地 面 キ ャ ッ チ ャ ー に 残 存 し た リ タ ー 量 を , 林 床 へ の リ タ ー 現 存 量 と 定 義 し た . 3 .1.5. 海 域 へ の リ タ ー 流 出 量 年 間 の リ タ ー 持 去 り 量 は , 試 験 期 間(355日 )の 全 リ タ ー 量 の う ち , 大 潮 の 全 期 間(72日 )に 落 下 し た も の と 仮 定 し ,中 空 リ タ ー キ ャ ッ チ ャ ー に 落 下 し た リ タ ー 量 に 大 潮 期 間 /試 験 期 間 と し て 算 出 し た . 3 .1.6. カ ニ に よ る リ タ ー 持 去 り 量 カ ニ に よ る リ タ ー 持 去 り 量 は 以 下 の 式(1)に よ り 算 出 し た : C = L – (S + T) --- (1) こ こ で ,Cは カ ニ に よ る リ タ ー 持 去 り 量 ,Lは リ タ ー 総 量 (中 空 キ ャ ッ チ ャ ー に 捕 集 さ れ た リ タ ー 量), Sは リ タ ー の 林 床 土 壌 へ の 現 存 量 (地 面 リ タ ー キ ャ ッ チ ャ ー に 捕 集 さ れ た リ タ ー 量), そ し て Tは 潮 汐 に よ る 海 域 へ の リ タ ー 持 去 り 量 で あ る . 島 尻 河 口 域 林 帯 上 流 に お い て 大 潮 満 潮 時 以 外 に 落 下 し た リ タ ー が カ ニ に よ っ て 持 去 ら れ て い る こ と を 確 認 す る た め , 以 下 の よ う な 予 備 試 験 を2011年 4月 に 行 っ た .す な わ ち ,コ ド ラ ー ト の 近 く に 杭 を 打 ち ,そ 図 3-3 (1)中 空 リ タ ー キ ャ ッ チ ャ ー と (2)地 面 リ タ ー キ ャ ッ チ ャ ー
27 の 杭 に 長 さ1mの 水 糸 10本 を 括 り , そ の 水 糸 の 先 端 に マ ン グ ロ ー ブ 葉 10 枚 の 葉 柄 に 結 び , ビ デ オ カ メ ラ(FV M200 KIT, Canon)を セ ッ ト し , 1時 間 放 置 し , そ の 様 子 を 観 察 し た . こ の 試 験 は R. stylosaと B. gymnorrhiza の 葉 で そ れ ぞ れ5 回 ず つ 計 10 回 お こ な っ た . そ の 結 果 , 全 て の 葉 は N. smithi に よ っ て そ の 巣 穴 に 60 分 以 内 に 持 去 ら れ て い た ( 図 3-4). 3 .1.7. 統 計 解 析 リ タ ー 量 , リ タ ー 現 存 量 , 潮 汐 に よ る リ タ ー 持 去 り 量 , 及 び カ ニ に よ る リ タ ー 持 去 り 量 の 樹 種 間 の 違 い を 分 散 分 析(ANOVA) に よ っ て SSRI 2010 for Windows を 用 い て 解 析 し , 各 2 樹 種 間 の 有 意 差 は The Kruskal-Wallis testに よ っ て 検 定 し た .平 均 と 標 準 誤 差 は 5つ の リ タ ー キ ャ ッ チ ャ ー の デ ー タ か ら 求 め た .
図 3-4 島 尻 地 区 林 床 に 設 置 し た マ ン グ ロ ー ブ 落 葉 と そ れ ら が N. smithi の 巣 穴 に 運 ば れ た 様 子
28
3.2. 結 果
3 .2 .1 . リ タ ー 量 , 林 床 土 壌 へ の リ タ ー 現 存 量 , 海 域 へ の リ タ ー 流 出 量 及 び 植 食 性 カ ニ に よ る リ タ ー 持 去 り 量 リ タ ー 総 量 は1221±63gm- 2y- 1で あ っ た .そ の う ち カ ニ に よ る リ タ ー 持 去 り 量 , 潮 汐 に よ る リ タ ー 持 去 り 量 及 び 林 床 へ の リ タ ー 現 存 量 は そ れ ぞ れ839(68.8%), 261(21.4%) 及 び 120(9.8%)gm- 2y- 1と 見 積 も ら れ た( 表 3-3). ま た 各 樹 種 の リ タ ー 量 は そ れ ぞ れ B. gymnorrhiza, R. stylosa及 び D. t rifolia ta は 594(6 1.4%), 3 01(31.1%)及 び 72 (7 .5%)g m- 2y- 1で , カ ニ に よ る 各 樹 種 の リ タ ー 持 去 り 量 は そ れ ぞ れ432(72.8%) , 209(69.3%) 及 び 26(35.7%)gm- 2y- 1で あ っ た . カ ニ に よ る マ ン グ ロ ー ブ 樹 種 2 種 (B. g ymn o rr hi z a と R. stylosa ) の リ タ ー 持 去 り 率 は 非 マ ン グ ロ ー ブ 陸 上 樹 種 で あ る D. trifoliataの お よ そ 2倍 で あ っ た (図 3-5).総 リ タ ー と カ ニ に よ っ て 持 去 ら れ た リ タ ー 中 に 含 ま れ る タ ン ニ ン 含 量 は そ れ ぞ れ92.6 と 65.1gm- 2y- 1で あ っ た(表 3-4). (gm-2y-1; mean ± SE) % % % % リター量 葉 593 ± 60 - 301 ± 55 - 72 ± 20 - 967 ± 52 種 112 ± 56 - 28 ± 5 - 3 ± 0 - 144 ± 57 たく葉 110 ± 11 合計 706 ± 98 a - 329 ± 55 b - 75 ± 20 c - 1221 ± 63 -カニによるリター持去り量 葉 432 ± 44 72.8 209 ± 41 69.3 26 ± 14 35.7 666 ± 48 68.9 種 66 ± 30 59.2 21 ± 5 73.0 1 ± 0 28.6 88 ± 32 61.3 たく葉 85 ± 8 76.9 合計 499 ± 75 a 70.6 a 229 ± 29 b 69.6 a 27 ± 13 c 35.4 b 839 ± 63 68.8 林床への現存量 葉 34 ± 14 5.8 28 ± 16 9.2 31 ± 6 42.9 93 ± 35 9.6 種 21 ± 16 19.4 2 ± 2 5.7 2 ± 0 50.0 25 ± 18 17.4 たく葉 2 ± 0 1.7 合計 56 ± 25 a 7.9 a 29 ± 17 a 8.9 a 32 ± 6 a 43.2 b 120 ± 45 9.8 潮汐による持去り量 葉 127 ± 13 21.4 65 ± 12 21.4 15 ± 3 21.4 207 ± 7 21.4 種 24 ± 12 21.4 6 ± 1 21.4 1 ± 0 21.4 31 ± 12 21.4 たく葉 24 ± 2 21.4 合計 151 ± 21 a 21.4 71 ± 12 b 21.4 16 ± 3 c 21.4 261 ± 14 21.4 - - -- - -- - -- - -(gm-2y-1) (gm-2y-1) (gm-2y-1)Bruguiera gymnorrhiza Rhizophora stylosa Derris trifoliata Total 表 3-3 沖 縄 県 宮 古 島 の 島 尻 河 口 林 帯 上 流 域 に お け る リ タ ー 量 , リ タ ー の カ ニ に よ る 持 去 り 量 , リ タ ー の 林 床 へ の 現 存 量 及 び 潮 汐 に よ る リ タ ー 持 去 り 量(2011 年 4 月 ~ 2012 年 3 月 )
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図 3-5 樹 種 別 の リ タ ー 落 下 後 の 動 き と そ の 月 別 変 化 (宮 古 島 , 島 尻 : 2 011 年 4 月 ~ 2012 年 3 月 ).
30 3 .2.2. 季 節 変 動 月 別 の リ タ ー 量 の 変 動 と そ の 内 訳 を 図3-3 と 図 3-4 に 示 し た . 図 3-3 に 示 し た よ う に , B. gymnorrhizaと R. stylosa の カ ニ に よ る リ タ ー 持 去 り 率 は 年 間 を 通 し て70%を 超 え て お り , 特 に 夏 場 (8月 か ら 10月 )林 床 へ の リ タ ー 現 存 量 は ほ と ん ど な か っ た . 一 方 で , D. trifoliataの カ ニ に よ る リ タ ー 持 去 り 率 は8月 か ら 12月 を 除 き ,年 間 を 通 し て 50%以 下 で あ っ た . 図3-6に 示 し た よ う に ,試 験 期 間 中 2012年 5月 に 強 烈 な 台 風 が 宮 古 島 に 襲 来 し , 年 間 リ タ ー 量 の35%の リ タ ー が そ の 月 に 落 下 し た . そ の 結 果 , 台 風 が 襲 来 し た5 月 6 月 及 び 8 月 に 落 下 し た 総 リ タ ー 量 は 654gm- 2y- 1で あ り , 年 間 リ タ ー 量 の54%に あ た る . 木本 性樹 落葉 カニ 持去 カニ持去 りタンニ gm-2y-1 mgg-1 gm-2y-1 % gm-2y-1 B. g. 594 100 59.4 73 43.4 R. s. 301 157 47.3 69 32.6 D. t. 72 13 0.9 36 0.3 Total 967 107.6 76.3 落葉中タンニ ン †
B. g.: Bruguiera gymnorrhiza, R. s.: Rhizophora stylosa, D. t.: Derris trifoliata
表 3-4 植 食 性 の カ ニ に よ る 落 葉 由 来 タ ン ニ ン の 巣 穴 へ の 持 去 り 量 の 推 定 図 3-6 樹 種 別 リ タ ー 量 の 月 別 変 化 (宮 古 島 , 島 尻 : 2011 年 4 月 ~ 2012 年 3 月 ) 矢 印 は 宮 古 島 に 襲 来 し た 台 風 の 時 期 を 示 し て い る. 最 大 平 均 風 速 は そ れ ぞ れ 45.9 (5 月 ), 32.2 (6 月 ) 及 び 29.9 (8 月 ) ms- 1で あ っ た.