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中央体制下における スウェーデンの労使関係

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(1)

スウェーデンの労使関係

──本当に集権的であったのか?──

西 村 純

(社会学研究科産業関係学専攻博士課程後期)

は じ め に

本稿の目的は,中央集権的と言われてきたスウェーデンのかつての労使関係 の一体何が集権的であったのかを考察することである。ただ,この目的ではあ まりにも一般的すぎるので,本稿では,その目的を達成するために,労使の上 部団体がどのように個々人の賃金を規定していたのかに注目する。理由は,労 働問題を調べる際の基本は,労働力の支出と反対給付(賃金)のルールを解明 することにあるからである。

上のような視点に基づき,本稿では,スウェーデンが中央集権的と呼ばれる 所以を考察することで,それが中央集権的と呼ぶのに妥当なものであったのか を考えたい。

これまでの研究によると,1956年から1983年までのスウェーデンは,産業 横断的な労使の利益代表であるLO(ブルーカラーの産業横断的な組合)とSAF

(経営者連盟)が労使交渉を行い,協約を締結していた(1)。国内,海外を問わ ず研究者は,その事実を基にスウェーデンを中央集権的な労使関係と特徴づけ てきた(2)。図表1は,スウェーデンの労使関係の流れをごく簡単にまとめたも のである。

紙幅の関係上,この流れの詳細をここで解説することはできない。他日を期

―191 ―

(2)

して論じたい。ここで指摘しておきたいことは,二つある。一つめは,こうし た交渉形態の流れをアクターの動きを中心に解説するのが,スウェーデン労使 関係研究の主流の一つとなっている,ということである(3)。そして,二つめ は,そうした研究からは,スウェーデンの労使関係の特徴として中央集権的な 労使関係が紹介されるものの,個々の労働者の労働条件が中央集権的に決定さ れていたのかは,よく分からないということである(4)。この点に関して,日本 における代表的な研究の一つである稲上・ウィッタカー(1994)を簡単に触れ ておこう。

両氏は,スウェーデンの特徴をスウェーデンモデルとして,次のように定義 づけている。やや長いがそのまま引用すると,「(スウェーデンモデルとは,…

筆者)−強力な社会的パートナーシップ(すなわち高い組織率と強い統率力を もった「包括的」労使頂上団体,それが構築する合意形成重視の柔軟で協調的 な中央集権的労使関係,さらに「経済民主主義」の回避といった諸要素から成

図表1

1906(歴史的妥協) 労働者の配置の決定などの経営の専決事項を労働側が認める

代わりに,労働者の団結権,団体交渉権を経営側が認める。

1938(サルチオバーデン 協約の締結)

上記のことに加えて,第3者に無用の危害をくわえるような 争議行動は行わないことや,紛争解決のための手続き,など を取り決めた基本協約(サルチオバーデン協約)がSAFと LOの間で結ばれる。

1951(レーンメイドナー モデルの誕生)

LOの大会において,レーンメイドナーモデルが提案され る。

1956−1983(安定期) LOとSAFの間で,賃金交渉が行われる(中央集権的労使

関係の時代)

1983−1991(混乱期) 中央レベルで賃金交渉が行われることがあれば,行われない

こともあった時期。

1991−1993(政府の介入) 政府の指導のもと,中央レベルに戻る。(政府の労使関係へ

の直接的介入)

1993−1998(産業レベル) 労使関係が産業レベルへと分権化する。

1998− 1997年に締結された協調協約を通じた,新たな産業横断的

コーディネーションの開始。

出所)Edgren(1973),Olsson(1991),Martin(1995),Visser(1996),Whyman(2003),

各年度のEIRRを参照に筆者作成

―192 ―

(3)

り立っている)に基づいて,一方では政府を巻き込みながら(政府の経済政策 の眼目は「国民経済の均衡」の維持にある)広義の「積極的労働市場政策(5)」 を展開し,他方では「適切な」賃上げパターンセッター(連帯主義的賃金政策 豈(6),賃上げパターンセッターとしての金属産業,生産性向上に準拠した賃上 げ行動,国家の不介入という4要素から成り立っている)によって完全雇用と 安定的な経済成長を達成しようとする理論的・実践的な経済社会モデル−これ がスウェーデンモデルと呼ばれるものにほかならない」(稲上・ウィッタカー

1994 ; 28)。やや長い引用なので,要点をまとめると次のように言えるであろ

う。彼らのいうスウェーデンモデルとは,つまるところ,包括的(7)な労使頂上 団体によって行われる中央集権的労使関係を基盤とした,理論的・実践的な経 済社会モデルのことなのである。

上の文脈と本稿とのかかわりで注目すべき点は二点ある。一つめは,スウェ ーデンが,包括的で中央集権的な労使関係を構築し,それがスウェーデンで行 われきた各政策の基盤となっていたこと。そして,二つめは,そうした中央集 権的な労使関係の下で,経済にとって適切な賃金を決定していこうとしていた ことである。しかし,両氏の表現で気になる箇所がないわけではない。最も気 になるのは,彼らの言う「柔軟で協調的な中央集権的労使関係」とは一体何な のかということである。すなわち,なぜ柔軟と中央集権的という,相対する性 質の事柄が並列して記述され得るのかが,疑問として残るのである。こうした 点を両氏はどのように記述していたのか。中央集権的な賃金交渉について述べ ている箇所を確認してみよう。

まず,彼らはスウェーデンの賃金決定パターンを6つの時期に区分してい る。その区分けは,漓産業別交渉が中心であった1930年代から第二次大戦後 の1956年まで,滷「スウェーデンモデルが大きく花開いた」1957年から65 年までの「黄金時代」,澆頂上交渉の水平的分裂が生じた66年から73年ま で,潺その水平的分裂がさらに進んだ74年から82年,潸垂直的分権化の動き が決定的となった83年から90年まで,そして,澁91年以降の六つである。

このような区分けを行った後,滷から潺までの時期を「中央集権的」交渉の時

―193 ―

(4)

代と彼らは定義づける(稲上・ウィッタカー1994 ; 49−50)。

ところで,彼らの言う賃金決定パターンとは一体何を指しているのか。この 先の議論を進めていく上で明らかにしておかなければならない点であろう。彼 らによると,賃金決定パターンとは次の三つを指している。当該個所をそのま ま引用しよう。「(賃金決定パターンとは…筆者),第1に中央集権的な賃金交 渉であり,第2に連帯主義的賃金政策や賃上げのパターンセッターとしての金 属産業,生産性上昇率に準拠した賃上げ,さらには賃金ドリフトの抑制といっ た一群の賃上げに関する規範であり,第3に国家の賃上げ交渉への不介入とい う原則である」(稲上・ウィッタカー1994 ; 49)。これらの三つが,賃金決定 パターンの指す事柄である。

以上の時期区分と賃金決定のパターンの定義付けに基づいて,彼らの分析 は,上の滷から潺までの時期に,これら三つの特徴がどのように変化したのか に焦点があてられていく。本稿とのかかわりで重要なのは,滷から潺の中央集 権的とされていた時期の記述である。その際に特に目を向けるべき事柄は,滷 の黄金時代がどのような筆致で記述されているかであろう。この点について両 氏はどのような記述を行っていたのか。

彼らは,「黄金時代」と形容される時期の特徴を二つにまとめている。すな わち,第一に,「民間の金属産業が実質上大きな影響力を持った形でLOとSAF による中央賃金交渉のヘゲモニーが確立し,したがってホワイトカラーおよび 公共部門の賃金交渉はそれに先行するLO-SAF中央協定を唯一の準拠枠とし てその後に続くという構造が生まれた」(稲上・ウィッタカー1994 ; 51−52)

こと。そして第二に,そうしたヘゲモニーが確立した一方で,LOやSAF傘 下の産業労使さらには個別企業の労使が「非公認」の上乗せ交渉を行ない,大 幅な賃金ドリフトを発生させていた時期であったこと(稲上・ウィッタカー

1994 ; 52)。このように,両氏は,黄金時代の特徴として,中央交渉の確立と

賃金ドリフトの発生の二つをあげている。先の時期区分とのかかわりで重要な ことは,両氏が,中央交渉がヘゲモニーを確立したことをもって,スウェーデ ンの労使関係を中央集権的と見なしている点である。では,彼らは,中央交渉

―194 ―

(5)

と呼ばれる賃金交渉パターンをどのようなものとして描いていたのか。該当箇 所をさらに詳しく見てみよう。

両氏は,賃金交渉パターンを次のように描いている。「労使頂上団体LOと SAFが他のいかなる組織よりも早く交渉に入る。3月から4月にかけてその交 渉が妥結する。その後すぐにほかの交渉が始まる。LOとSAFの中央協定が

[賃金交渉の]出発点であり,また[賃上げ]規範になる」(稲上・ウィッタカ

ー1994 ; 50−51)。特に解説を加える必要はないであろう。そして,以下のよ

うな記述が続く。「もっとも,中央交渉は,あくまで「アド・ホック」なもの としてスタートした。したがって,その都度LOは傘下組合から「先行交渉」

についての承諾を得なければならなかったし,中央交渉の手続きについてそれ を制度化する意図のないことも併せて明らかにしなければならなかった」(稲 上・ウィッタカー1994 ; 51)。ここまでの記述では,なにが中央集権的なのか 分からない。しかし,次の記述が重要である。「それでもこの先行交渉が度重 なるにつれて,次第にLOとSAFの中央交渉はそれぞれの傘下労使団体に対 する「勧告」という性質を帯びるようになった。民間金属産業の現業労働者の 賃上げ相場というものに準拠した,LOとSAFによる一種の「枠組み協定」

ということになる」(稲上・ウィッタカー1994 ; 51)。このように,アド・ホ ックな先行交渉が勧告にまで昇華したことを通じて両氏は,中央集権的な労使 関係の誕生と見なしたのである。

その一方で次のようにも指摘する。「もう一点見逃せないのが,この「黄金 時代」においてさえ,あの「福音書(8)」が懸念していた大幅な賃金ドリフトが 発生していたことである。それは中央交渉の観点からすれば到底「認めがた い」(中央レベルでの「公式」の賃金協定に対する)上乗せ部分に違いなかっ た」(稲上・ウィッタカー1994 ; 51)。このように,両氏は,中央集権的労使 関係下においても,傘下の団体で独自の賃金交渉が行われていたことを指摘し ている。ただ,先の中央レベルの勧告を「公式」の賃金協定と述べていること からも分かるように,あくまで労使関係の基盤は,中央集権的労使関係にある と見ているのが両氏の態度であろう。

―195 ―

(6)

以上の記述が物語ることは何なのか。重要なことは,両氏が,中央集権的と 表現した際のその根拠は,交渉形態にあるということである。両氏の言う中央 集権的な労使関係とは,必ずしも個々人の労働者の労働条件が中央集権的に決 定していることを意味しているのではないのである。すなわち,中央集権的と いう特徴は,労使の頂上団体が個々人の労働者の賃金を規定しているというこ とを意味しているわけではなく,それゆえ,彼らの記述からは,賃金決定が,

中央集権的に決定していたとは言いきれない部分があるのである。

ただ,両氏も,スウェーデンの雇用を巡るルールの取引が中央集権的に行わ れていたとは必ずしも思っていなかった,と私は見ている。先に指摘した両氏 の「柔軟で協調的な中央集権体制」という表現が彼らの心情を素直に表してい るように思う。このような表現を用いることによって,形式的には硬直性を連 想させる中央集権的労使関係の内実は,中央集権的ではなくもっと下のレベル で重要なことが決定されていた可能性を示そうとしたのではないだろうか。

では,交渉形態だけによる理解の問題点とは何なのか。一番の問題は,労使 関係の実態を明らかにしないままに,賃金格差の縮小を示すデータなどを用い ることで,さもスウェーデンの労使関係は頂上団体によってよく統制されてい た中央集権的労使関係であるというイメージが一般的に出来上がってしまった ことである(9)

したがって,いま必要な作業は,労働力の取引が,中央集権的であったのか を明らかにすることである。もう少し具体的に言うと,1956年から1983年の 間に行われた中央レベルの労使が,個々の労働者の賃金の一体何を規定してい たのか,つまり,個々の事業所の賃金表の何を規定していたのかを明らかにす る必要があるのである。

本稿の構成は次のようになっている。一節では,この後の議論を進めやすく するために,中央体制下のアクター,労使関係と法,スウェーデンモデルの三 つについて簡単に触れる。次に,二節において,集権性を考察するために,上 部団体は,賃金表を作成したのかについて述べる。そして,三節でLOが行っ ていた分配規制を明らかにする。そして最後に,労使関係論的視点(10)で見た場

―196 ―

(7)

合,スウェーデンの労使関係を中央集権的と特徴づけるのは,一定の留保が必 要なことと,そこから必然的に生じる新たな分析枠組の必要性について簡単に 論じる。

1.中央体制下のアクター,労使関係と法,スウェーデンモデル

中央体制とアクター

まず,確認しておかなければならない点は,スウェーデンは,単一構造とな っていることである。スウェーデンでは,事業所レベルの代表は,ドイツのよ うに労使委員会ではなく,ローカル組合である(Katz & Darbishire 2000)(11)。 次に階層について見て行こう。

中央体制と呼ばれるスウェーデンの労使関係は何階層からなるものであった のか。対象としている層を明確にするためにも触れておかなければならない点 である。しかしながら,階層ついては議論の分かれるとこで,賃金決定に絞っ て見た場合,一般的には,中央レベル,産業レベル,企業レベル(事業所レベ ル)(12)の三階層とされている(EIRR 1984)。それとは別に,Olssonのように,

上の三つに出来高給を巡る職場レベルの日々の交渉を加えた四層構造という見 解を示している論者もいる(Olsson 1991)(13)。だた,本稿では,企業や職場な どのローカルレベルは,対象としていないのでこの点についてはこれ以上触れ ることはしない。本稿の目的は,中央レベルが個々人の賃金をどのように規定 していたのかを明らかにすることだからである。階層をごく簡単に示したもの が図表2である。

図表2から分かるように,本稿では,1.中央レベルが主な対象となってお り,2.産業レベルは,必要に応じて触れられている。繰り返すが,問題は,1 と2の階層でどれだけ個々人の賃金が規定されていたのか,ということであ る。

―197 ―

(8)

労使関係と法

本論に入る前に,労使関係が労働条件を決める上でどれだけ重要な役割を与 えられているかを知るために,スウェーデンの労働法と労働協約の関係にも少 しだけ触れておきたい。1970年代に入り雇用法(共同決定法),雇用保護法な ど労働者の権利を保護する法律がいくつか制定された(Kjellberg 1992)(14)。し かしながら,法律のいくつかの規定については,労働協約によって法が定めた 規定を逸脱してよいとの条項(雇用法第4条)が含まれており,よって,法規 制が強まったと言われる1970年代以降も労使自治が損なわれたわけではな い(15)

また,雇用法第27条において,使用者と労働者は,労働協約に違反するよ うな(does not comply with such collective agreement)雇用契約を結んではなら ないとされており,労働協約は法的に認められた雇用契約の方法となってい る。このことは,最低賃金法がないこと(16)や先に述べた特徴と併せて,雇用の ルールを定める上で,労働協約が重要な役割をはたしていることをあらわして いる。

しかしながら,スウェーデンに存在する複数の労働協約(中央協約・産別協 約・ローカル協約)の効力の優劣を規定する箇所は,雇用法を見たところ存在 しておらず,それゆえ,三つの協約の関係が重要になる。この点について,当

図表2

労使関係の階層 交渉当事者

労働側 経営側

1.中央レベル LO SAF

2.産業レベル 産業別組合 産業別経営者連盟

3.ローカルレベル Club 事業所・職場

出所)EIRR 1984,及び筆者のIF-Metall(機械金属労連)国際部の M氏への聞き取り(2008年9月8日)より筆者作成

―198 ―

(9)

事者はどういう解釈を行っているのであろうか。IF-Metall中央交渉部のR氏 とのやり取りは以下の通り(17)

筆者「雇用法27条では,(雇用契約は)does not comply with such collective

agreementと書いているのですが,これでは,ローカル協約は,産別協約

を下回ることも駄目ですし,上回ることも駄目になると思うのですが…」

R氏「うーん。そこのところ(雇用法27条…筆者)とどう関係している のかは分からない。ただ,産別協約には,例えばセクション7にこのよう な文言がある(18)。こうしたことが,ローカルパーティーが,独自の交渉を 行うことを可能にしているのかもしれない。…普通は,(ローカル協約 は,産別…筆者)協約を下回っては駄目だということになっている。うー んだから,私が言えることは,そのところはあまり突っ込むなということ だ(笑)(My recommendation for you is that don’t too much write about it)。

…もちろんセクション7のような文言が産別協約にはある。しかし,それ が根拠となっているのかは定かではない(19)。…我々もよく分かっていない んだ(people normally do not understand what’s going on)。スウェーデンに 特殊なことと言えるかもしれない。デンマークではこうはいかないだろう な。」

以上のように,当事者の間では,ローカル協約は,産別協約の条件を下回っ てはならない,という風に解釈されている。それゆえ,例えば,ローカルレベ ルは,産業別協約で定められた条件を下回るような労働協約を結ぶことはでき ない。ただ,R氏の発言から分かるように,どうして上回って良いのかについ て,法的に明確な根拠があるわけではない。この点については詳細な労働法の 研究を待ちたい。

ともあれ,スウェーデンの労働法と労使関係の関係で重要なのは次の二点で ある。一つめは,下部組織が締結する労働協約は,上部組織が締結した労働協 約の内容を下回ってはならないことである。この点については,先述した通

―199 ―

(10)

り,明確な法規定があるわけではない。しかしながら,当事者は,複数の労働 協約の関係をそのように解釈しているようである。二つめは,労働協約は,法 律上の規定を逸脱できることである。つまり,法律によって労使自治が尊重さ れているのである。第二の点は,日本の労働法の基本的な姿勢と似ていると言 える。では,日本と法規定上の類似点を持つスウェーデンの労使関係は,実際 にどのようなものなのか。ただその前に,準備段階の最後に,スウェーデンモ デルと労働組合について,触れておきたい。必要な寄り道である。

LOとスウェーデンモデル(レーン・メイドナーモデル)

スウェーデンに関する研究において必ずといって良いほど出会う用語が,ス ウェーデンモデルという語句である。しかしながら,スウェーデンモデルに対 する共通の理解は無く,いくつかの解釈が存在している(稲上・ウィッタカー

1994)(20)。様々な解釈があるものの,端的に言えば,スウェーデンモデルと

は,「スウェーデンの特徴的な社会政策と経済政策の組み合わせを表した用 語」(Visser 1996 ; 176)である。ここでは,稲上・ウィッタカー(1994)や宮 本(1999)にならい,戦後のスウェーデンの福祉政策や経済政策の基礎とな り,かつ労働組合の担うべき役割が定義されたレーン・メイドナーモデルをス ウェーデンモデルと見なすことにする(21)。以下でレーン・メイドナーモデルを 概観しよう。

このモデルは,1951年のLO大会において,LOのエコノミストであったレ ーンとメイドナーによって発案されたものである。このモデルが目指したの は,完全雇用と平等である。ただ,ここで重要なことは,その際に生じる障害 を回避した上で,上の二つの目標を達成することが目指されていたところにあ る。つまり,完全雇用を物価の安定性を損なうこと無しに実現し,平等を効率 性を損なうこと無しに実現しようとしたのがレーン・メイドナーモデルであっ た。したがって,「スウェーデンモデル(レーン・メイドナーモデル;筆者)

とは,二つの相反する目標を,どちらかを犠牲にすることなく,同時に達成し ようとする試み」(Meidner 1997 ; 89)のことだったと言える。

―200 ―

(11)

では,レーン・メイドナーモデルは,どのような政策を通じて,上の目標を 達成しようとしたのか。このモデルは,連帯主義的賃金政策,積極的労働市場 政策,抑止的経済政策の三つを軸に,その三つを有効に関連させていくこと で,スウェーデンを発展させていこうとした(宮本1994)。それぞれが難解な 政策であるが,端的に言うと,連帯主義的賃金政策とは,産業横断的な同一労 働同一賃金を実現することであり,積極的労働市場とは,そうした賃金政策に よって生じるであろう失業者(22)を,公的な職業訓練や職業紹介を通じて,労働 需要のある職種に移転させていく公的サービスのことを指している。そして,

最後の抑止的な経済政策とは,政府が低生産性セクターを延命させるために需 要喚起的な政策を行わないことを意味していた(宮本1994 ; 35)。このよう に,連帯主義的賃金政策をモデルの基礎に置き,残りの二つの政策で連帯主義 的賃金政策を補完していくのが,レーン・メイドナーモデルの要点であった。

したがって,連帯主義的賃金政策の成否がこのモデルの鍵を握っていると言え る(23)。そして,その役割を任されていたのが,労働組合であった。次に組合の 果たすべき役割について見て行こう。

レーン・メイドナーモデルの目的を実現するために,労働組合には二つの役 割が課されていた。一つは,連帯主義的賃金政策(24)であり,もう一つは調整さ れた賃金政策である(図表3)。これらの二つは,連帯主義的賃金政策が平等 に,調整された賃金政策が完全雇 用 に そ れ ぞ れ リ ン ク し て い た (Meidner 1997)。

より具体的には,調整された賃金政策は,インフレを伴わない程度に賃上げ を抑えることを組合に要請し,連帯主義的賃金政策は,先に述べたとおり産業 横断的な同一労働同一賃金を実現することを組合に要請している。ここで重要

図表3 目的

行為者

完全雇用

(Full employment)

平等

(Equality)

組合(Unions) 調整された賃金政策

(Coordinated wage policy)

連帯主義的賃金政策

(Wage policy of solidarity)

出所)Meidner(1997)を参考に筆者が作成

―201 ―

(12)

なのは,こうした政策を行おうとすれば,企業を超え,さらには産業を超えた レベルの労使関係が,必要となってくることである。

また,こうした政策は,完全雇用や平等など比較的労働者寄りの目標を実現 することのみならず,効率化を目指す経営側にとっても都合のいいものであっ た。なぜなら,連帯主義的賃金政策とは,賃金決定から企業の支払い能力を排 除するとともに,個々の労働組合の交渉力も排除するものであったからであ る。それゆえ,連帯主義的賃金政策は,高収益セクターや高収益企業は,一層 の利潤を獲得し,さらなる投資に資金を充てることができるようになる,企業 にとっても都合の良い賃金政策だったのである(Visser 1996)(25)

しかし以上の話は,理論上の話である。実際にLOがどの程度産業横断的な 同一労働同一賃金を実現できていたのかが,明らかにされねばならない。その 際のポイントは,LOが,事業所の賃金表をどの程度規定していたのか,であ る。ただ,このように,スウェーデンモデルの実態を知る上でも,労使関係論 的視点が必要となってくることは,ここで強調しておきたい。以下で見て行こ う。

2.産業横断的賃金表

中央レベル

労使関係の集権度合いと連帯主義的賃金政策の実態を知る上でも,最初に明 らかにされねばならないことは,LOが産業横断的な賃金表を作成していたの か,ということである。

この点について,結論を先に述べると,LOは,産業横断的な賃金表を作成 することはなかった。もちろん,LOは,そうした賃金表を作ろうと試みては いた。代表的な活動として,1978年から1984年のLOの統計局による産業横 断的な職務評価基準の設計の試みが,あげられる(Lash 1985)。しかしなが ら,こうした取り組みは,その制度の導入によって賃金が下がる可能性のある 労働者が,そうした職務評価を行うための調査に参加しなかったことによっ

―202 ―

(13)

て,実現することは無かった(Rehn & Viklund 1990)。このように,LOは,

産業横断的な賃金表の作成によって個々人の賃金を規定することには,失敗し たのであった。

産業レベルの賃金表

ところで,LOが失敗したとして,産業レベルには,企業横断的な賃金表 は,あったのか。もし,このレベルで賃金表が存在するならば,国際比較上ス ウェーデンの労使関係は集権的であるとはっきり言えるし,労働組合は,部分 的ながら連帯主義的賃金政策を実現していたことになる。こうした調査を行っ た貴重な研究として日本生産性本部(1965)がある。彼らが明らかにしたとこ ろによると,産業レベルの規定の方式は二つある。一つは,標準賃金方式であ り,もう一つは,最低賃金方式である。標準賃金方式とは,「規定された賃金 が例外なく適用されるべきこと」を意味しており,最低賃金方式は,「規定さ れた最低賃金を超えて支払いうること」を意味している(日本生産性本部 1965 ; 248)。

二つの方式の違いとは何なのか。違いを先に述べると,二つの方式の違い は,産業レベルで規定している賃金額を上回ることが許されるのか否か,とい う点にある。標準賃金方式の下では,「規定された賃金額が例外なく適用され るべき」という定義から分かるように,ローカルレベルは,産業レベルで提示 された金額を上回ることも下回ることも原則として禁止されている。一方で,

最低賃金方式の下では,「規定された最低賃金を超えて支払いうる」という定 義からも分かるように,ローカルレベルは,産業レベルで提示された金額を上 回ることが許されている。このように,最低賃金方式では,ローカルレベルが 産業レベルで規定された賃金額を上回ることを許しているのに対して,標準賃 金方式では,上回ることも許されていないのである。したがって,標準賃金方 式の場合,産業レベルは,事業所の賃金表をかなり厳格に規定していることに なる。それゆえ,標準賃金方式を採用している産業では,産別賃金表が存在し ていたと見なしても良いように思われる。

―203 ―

(14)

各産業で採用されやすい(26)方式があるようで,それをまとめると図表4のよ うになる。

図表4から,標準賃金方式が採用されやすい土木建築業,ガラス工業,紙パ ルプ工業,製材業工業,化学工業では,産別賃金表のようなものがあったと見 なすことができる。しかしながら,産業毎にあるところとないところがあり,

賃金表が産業レベルにはあったと言うには,少し頼りない。参考までに標準賃 金方式を採用している化学工業の賃金表と思われるものを示すと,図表5のよ うになる。

上のような賃金表が,化学産業では作成されていた。ただ,対象は19歳と なっており,それより年齢が上の労働者の規定はここではなされていないよう である(27)

図表4

規定方式 産 業

標準賃金方式の採用が多い 土木建築業・ガラス工業・紙パルプ工業・製材工業・

化学工業

最低賃金方式の採用が多い 機械工業・自動車工業・木工業・印刷業 出所)日本生産性本部(1965)より筆者作成

図表5

地域分類 Aグループ Bグループ Cグループ Dグループ 1963年1月

以前

第5地域 405 422 437 456 第4地域 385 401 415 434 第3地域 366 381 395 413 1963年2月

以降

第5地域 436 448 463 482 第4地域 414 425 440 458 第3地域 392 402 417 433

※地域分類は,第5地域:ストックホルム,第4地域:グーデンブルク・アルビー

・スンズバル・他3都市,第3地域:ランツクローナ・オスカルスムハン・ウェ ステルウィック・他

※対象は,19歳の労働者

※仕事の困難度に応じて各グループに分類される

※単位はore(オーレ)

出所)日本生産性本部(1965);252

―204 ―

(15)

個々人の賃金の規定とのかかわりで考えると,ここで提示されている金額が 一体産業の平均賃金に対して,どの程度の水準のものなのかが,重要となる。

仮にもし,ここで提示されている金額が,産業の平均賃金に近い,もしくはそ れを上回るような水準にあるならば,たとえ19歳の賃金表しかなくとも,産 業全体の労働者の賃金を規定していると言うことができる。しかしながら,残 念なことに1963年時点の化学産業の労働者の平均賃金に関するデータを手元 に持ち合わせていない(28)。それゆえ,賃金額がどの水準にあったのかは,ここ ではわからない。本稿では,標準賃金方式が産別賃金表と呼べるものなのかど うかを考える上で重要な賃金額の問題をいったん脇に置くしかない。

とはいえ,額の水準が分からないとしても,次の事実は重要である。その事 実とは,当時の化学工業の労働者が,自分達は最低賃金方式を採用していると 主張していたことである(29)。このように,制度上は,産業レベルで提示されて いた厳格な賃金表というかたち(標準賃金方式)になっていても,労働者に は,最低水準の額を設定したもの,すなわち,最低賃金(最低賃金方式)と見 なされていたこともあったようである。こうした事実が物語ることは,先に述 べた二つの方式が,労働者の解釈でいかようにも変更できるものであったとい うことである。

小活

以上,横断的賃金表の存在について見てきたが,ここで重要なことは次の点 である。すなわち,

(イ)中央レベルは,産業横断的な賃金表を作成していなかった。

(ロ)産業レベルでは,標準賃金方式を採用している産業では,賃金表のよ うなものがあったと言える。

(ハ)しかしながら,自身の産業が標準賃金方式なのか最低賃金方式なのか は,化学工業の例を見ればわかるように,労働者の解釈でいかようにもな るようなものであったようである。

以上の事実からすると,横断的賃金表は,中央レベルにおいても産業レベル

―205 ―

(16)

においても,厳密な制度として構築されていなかったと見るのが,妥当である と思われる。こうした状況の中で,中央レベルが個々人の賃金に影響を及ぼそ うとするならば,賃上げの分配規制に頼るしかない。次節で見ていこう。

3.分 配 規 制

これまでに確認したように,中央レベルには産業横断的な賃金表はなかった し,産業レベルでも,きちんと確立された制度と言うには心許ない「標準賃金 方式」があるだけであった。それゆえ,上部団体が労働者個々人の賃金を規定 する方法は,分配規制による方法しか,有効な手立てはないように思われる。

上部団体による分配規制はどのようになっていたのであろうか。

まず,中央協約の中の賃金協約を見ると,賃上げ原資は大きく四つの項目に 分けられて分配されていたことが分かる。その四つとは,漓賃上げ原資(Gen- eral scope),滷産業毎に自由に使うことができる賃上げ原資(Industrial negotia- tion kitties),澆低賃金者のための補頡(Low wage increment),潺賃金ドリフト 保障(earning trend guarantee)の四つである。それらの特徴をまとめると,図 表6のようになる。

これらの項目が,中央レベルから産業レベル,及び産業レベルからローカル レベルへどのように分配されていたのかを示すと以下のようになる(図表7)。

このように,協約で定められた原資は分配されていく。図表7から分かるよ うに,漓賃上げ原資(General scope)と滷産業毎に自由に使うことができる賃 上げ原資(Industrial negotiation kitties)の違いは,漓が,主に労働者の基本給 の賃上げに充てられていたのに対して,滷は,基本給の賃上げに加えて付加給 付の賃上げにも充てられていた点にある。

ただし,分配方法に関しては,留意点がいくつかある。まず,最も重要な点 として,上部団体の協約は,賃上げの下限を定めているのみで,下部団体で合 意できれば,定められた原資にいくらでも上乗せしてもよいことになってい る。次に,各項目をどのように分配するのかも,下部団体で合意できれば,自

―206 ―

(17)

Wage pool(general scope)

Wage pool

(industrial negotiation kitty)

Special pool for low wages (low wage increment)

Wage rises Minimum wage increases Wage rises Fringe benefit Working time reduction

Special pool for low wages (guarantee of wage drift)

Special pool for low wages (low wage increment)

Special pool for low wages (guarantee of wage drift)

LO-SAF Level Industry Level Workplace Level

Wage rises Minimum wage increases

Fringe benefit

Working time reduction

Special pool for low wage

Special pool for not having wage drift

図表6 漓 賃上げ原資

これは,産別以下において,主に基本給や最低賃金の賃上げに使われていた原資 であり,中央協約では,25オーレ,75オーレという風に,実額で表記されてい た。後で説明するが,実額で表記することで,傘下の組合間の賃金格差を是正す る狙いがあった。

滷 産業毎に自由に使うことができる賃上げ原資

これは産業レベルで自由に使い道を決めてもよい原資のことである。具体的に は,上の賃上げ原資が主に基本給や最低賃金の賃上げに使われていたのに対し て,この原資は,上記の目的に加えて,付加給付にも使われていたようである。

澆 低賃金者への補頡

これは,低賃者に対して与えられる特別な賃上げ原資のことである。どのように 原資を分配するのかは,産業レベル以下の交渉によって決められる。中央協約で は原資の算出方法に関する勧告が行われていた。

潺 賃金ドリフト保障

これは,賃金ドリフトを享受していない層への特別の賃上げ原資のことである。

賃金ドリフトとは,協約で定められた賃上げ以上の賃上げのことを言い,原資の 分配は,産業レベル以下の交渉によって決められる。低賃金者への補頡と同様 に,中央協約では,原資の算出方法に関する勧告が行われていた。

出所)EIRR(1977, 1978 c, 1980 b, 1981 a, 1981 b)より筆者が作成 図表7

※Wage pool(general scope)・Wage rises=賃上げ原資 Wage pool(industrial negotia- tion kitty)=産業毎に自由に使うことができる賃上げ原資 Special pool for low wages(low wage increment)=低賃金者への補頡 Special pool for low wages(guar- antee of wage drift)=賃金ドリフト保障 Minimum wage increases=最低賃金にあ てられる賃上げ原資 Fringe benefit=付加給付にあてられる賃上げ原資 Work- ing time reduction=労働時間の短縮

出所)IF-Metall中央交渉部R氏への聞き取りより筆者作成。(2008年9月10日)

―207 ―

(18)

General scope

Wage rises Working time reduction Pension or other fringe benefit

Industry level Work place level

由に分配してもよいことになっている。これはどういうことかと言うと,一般 に付加給付や労働時間の短縮には,滷「産業毎に自由に使うことができる賃上 げ原資」が用いられることになっていたが,労使で合意できれば,漓「賃上げ 原資(General scope)」をそれに充ててもよいことになっている。したがっ て,産業レベルで定められた「賃上げ原資」をローカルレベルで,図表8のよ うに分配しても問題はない(30)。また,後述する低賃金者への補頡や賃金ドリフ ト保障についても,原資を事業所の賃金表にどう分配するのかは,事業所レベ ルの交渉に任されているようである(31)

このように,分配方法はローカルレベルでかなり自由に決めることができた のである。よって,上部団体の分配規制は,それほど強くないと結論付けるの が妥当だと思われる。この点については,後でもう一度考えたい。

こうした事実の中で,それでも中央レベルが行ってきた分配規制をあげると すれば,(ア)賃上げの実額表記と(イ)低賃金者への補頡と賃金ドリフト保 障による低賃金者への特別の賃上げ原資の二点をあげることができよう。以下 で見て行こう。

賃上げの実額表記

まず,中央協約で目につく点として,賃上げが率ではなく,実額で表記され ている点があげられる。やや込み入った事柄なので,(1)賃上げの表記方法,

(2)事業所における原資の算出方法,(3)実額表記の持つ機能の順に説明して 図表8

※Wage pool(general scope)・Wage rises=賃上げ原資 Working time reduction=労働時間の短縮 Pension or other fringe benefit=企業年 金や付加給付にあてられる賃上げ原資

出所)図表7に同じ。

―208 ―

(19)

いきたい。

(1)賃上げの表記方法

スウェーデンの労働協約には,大きく次の三つの表記方法がある。その三つ とは,(ア)賃上げ額を表記する方法,(イ)平均賃金の何%を賃上げするとい う表記方法,(ウ)事業所の賃金の何%を賃上げするという表記方法の三つで ある。

(ア)賃上げ額を表記する方法

これは中央協約で用いられていた方法である。例えば,1977年の中央協約 では,賃上げ原資は以下のような記述となっていた。

「全ての産業の労働者の平均賃金(The average earnings per hour worked for adult workers in the agreement sector)は1977年の5月15日から50 ore増 加しなければならない。各傘下の産業において,この原資の配分に関して 合意しなければならない。」(32)

このように,中央協約では,労働者の平均賃金を何オーレ上げるという記述 になっており,この記述は,1977年から1981年の最後の中央協約まで変わっ ていない(33)

(イ)平均賃金の何%を賃上げするという表記方法(34)

これは,80年代に金属産業の産別協約の中で見られた方法である(35)。この 場合,賃上げ額は,統計で示された平均賃金に賃上げ率を掛け合わせて算出さ れる。例えば,産業全体の労働者の平均賃金が,40クローナ(36)で,賃上げ率

が2% の場合,80オーレが賃上げ額となる。ここで押さえておかなければな

らないことは,この表記方法を用いた場合,後述する事業所における原資の算 出方法は,(ア)賃上げ額を表記する方法と同じになる。

ただ,分配規制とのかかわりで気をつけておかなければならないことは,ど のレベルの平均賃金を対象としているかによって,分配規制の機能に大きな差 が生じることである。もう少し具体的に言うと,スウェーデンでは,産業全体

―209 ―

(20)

と産業毎の二つ平均賃金があるので,どのレベルの平均賃金を対象とするのか によって,後に触れる格差是正機能は大きく異なることになる。この点につい ては,(3)実額表記の機能のところで後述する。

(ウ)事業所の賃金を何%賃上げするという表記方法

これは,近年の金属産業でよく見られる表記方法である。例えば,2007年 の産別協約では,以下のような記述になっている。

「もし,ローカルの労使が合意できなければ,その工場にいる労働者の月 例賃金を一年目は2,8%,二年目は2,5%,三年目は2,8% を,それぞれ上 げるだけの賃上げ原資(wage pool)が,生み出される」(37)

先の二つとの違いは,労働者の平均賃金ではなく,工場の月例賃金となって いる点である。後述するように,この表記方法の場合,原資の算出方法は,先 の二つとは異なるものになる。

では,事業所レベルの賃上げ原資は,どのようにして算出されるのか。以下 で見て行こう。

(2)事業所における原資の算出方法(38)

まず,(ア)賃上げ額を表記する方法と(イ)平均賃金の何%を賃上げする という表記方法の二つは,ほぼ同じ方法で算出されるのでまとめて説明する。

この場合,事業所に与えられる賃上げ原資の総額は,協約で示された賃上げ原 資に当該事業所にいる人数を掛け合わしたものの総額となる(39)。よって,例え ば1977年協約で,ある事業所Xに400人の労働者がおり,かつ,中央協約の 規定通りに賃上げ額が決定したとすると,20000オーレ(50 ore×400人)が その事業所に与えられる賃上げ原資となる。そして,この20000オーレを事業 所の賃金にどのように分配するのかは,事業所レベルの交渉に任されており,

中央協約で具体的な分配方法を定めていたわけではない。

では,(ア)と(イ)の違いは何なのか。違いは,(イ)平均賃金の何%を賃 上げするという表記方法の場合,賃上げ額を出すための計算が,(ア)賃上げ

―210 ―

(21)

額を表記する方法に加わるだけである。例えば,産業全体の平均賃金が40ク ローナで賃上げ率が1.25% の場合,事業所Xにおける原資の算出方法は以下 のような手順となる。

漓4000オーレ(産業全体の労働者の平均賃金)×0.0125(賃上げ率)=50オーレ 滷50オーレ×400人(事業所Xの人数)=20000オーレ

このように,事業所における原資の算出方法は,(ア)の場合滷から始まる のに対して,(イ)の場合は,その前に漓が行われる。違いはその点だけであ る。それゆえ,事業所における原資の算出方法は,(ア)の表記方法の場合も

(イ)の表記方法の場合も同じである。したがて,(ア)と(イ)は,共に実額 表記と見なしてよいと思われる(40)。ただ,留意点として,先に述べたとおり,

産業全体の労働者の平均賃金を対象とするのか,それとも産業毎の労働者の平 均賃金を対象とするのかで,実額表記の持つ機能は,異なるものとなる。

次に,(ウ)事業所の賃金を何%賃上げするという表記方法の場合を説明し よう。この表記方法は,事業所の賃金等級が考慮に入れられるところに,先の

(ア)と(イ)の二つの方法とは大きく異なる点がある。例えば,先に用いた 事業所Xには,賃金等級が2グレードあり,グレード1の時給が50クロー ナ,グレード2の時給が55クローナ,そしてグレード1に200人,グレード 2に200人ずつそれぞれいるとしよう。そして,賃上げ率は,1.25% とする。

この場合,事業所Xの賃上げ原資の総額は以下のような手順で算出される。

なお,その総額を事業所の賃金表にどのように分配するのかは,事業所レベル の交渉に任されており,この点は(ア),(イ),(ウ)の三つとも同じである(41)

漓5000オーレ(グレード1の時給)×1.25%×200(グレード1にいる労働者の 数)=12500オーレ

滷5500オーレ(グレード2の時給)×1.25%×200(グレード2にいる労働者の 数)=13750オーレ

澆事業所Xの賃上げ原資の総額=12500+13750=26250オーレ

―211 ―

(22)

このように,(ウ)の表記方法の場合,当該事業所の賃金等級を考慮入れた 上で,事業所における賃上げ原資の総額が算出される。それゆえ,同じ%によ る表記であっても,(イ)の平均賃金の何%を賃上げするという表記方法と

(ウ)の事業所の賃金を何%賃上げするという表記方法は,全く異なるもので あると言える。以上の記述をまとめたものが図表9である。

(3)実額表記の持つ機能

以上で述べてきたように,賃上げの表記方法がいくつかある中で,なぜ,中 央レベルは,実額表記を行なっていたのか。端的に言うと,賃金格差の是正が 狙いであった。例えば事業所A, B, Cがあり,それぞれの平均賃金が40, 50, 60 クローナとする。この三つの事業所に対して3クローナの賃上げを行ったとす ると,事業所Aの賃上げ率は7.5%,事業所Bの賃上げ率は6%,そして事業 所Cの賃上げ率は5% となる(図表10)。このように,実額表記にすること によって,平均賃金の低い事業所は,平均賃金の高い事業所よりも高い賃上げ 率を享受することになり,よって,理論上は賃金格差が是正されていることに なる。これが,(ウ)事業所の賃金を何%賃上げするという表記方法のように

図表9 事業所における原資の算出方法

表記方法 算出方法 表記の

実質

原資の総額の賃金 表への分配方法

(ア)賃上げ額を表 記する方法

事業所の人数×協約で示された賃上げ

額=賃上げ原資の総額 実額 事業所レベルの交 渉による。

(イ)−1 産業全体 の労働者の平均賃金 の何%を賃上げする という表記方法

漓産業全体の労働者の平均賃金×協約 で示された賃上げ率=賃上げ額 滷事業所の人数×漓=賃上げ原資の総 額

実額 事業所レベルの交 渉による。

(イ)−2 産業毎の 労働者の平均賃金の 何%を賃上げすると いう表記方法

漓産業毎の労働者の平均賃金×協約で 示された賃上げ率=賃上げ額 滷事業所の人数×漓=賃上げ原資の総 額

実額 事業所レベルの交 渉による。

(ウ)事業所の賃金 を何%賃上げすると いう表記方法

漓事業所の賃金等級×協約で示された 賃上げ率×その等級にいる事業所の労 働者の人数=賃上げ原資

滷各賃金等級の賃上げ原資を漓の手順 で算出し、それを合計した額=賃上げ 原資の総額

パーセ ント

事業所レベルの交 渉による。

―212 ―

(23)

事業所A

事業所B

事業所C

事業所Aの賃上げ率=3÷40=7.5%

Bの賃上げ率=3÷50=6%

Cの賃上げ率=3÷60=5%

40クローナ (事業所A平均賃金) 50クローナ (事業所B平均賃金) 60クローナ (事業所C平均賃金)

W

40クローナ (事業所A平均賃金) 50クローナ (事業所B平均賃金) 60クローナ (事業所C平均賃金)

W

事業所Aの賃上げ額=40×5%=2クローナ

Bの賃上げ額=50×5%=2.5クローナ

事業所A

事業所B

事業所C Cの賃上げ額=60×5%=3クローナ

率による表記だと,平均賃金が高い事業所ほど多くの賃上げ額を享受すること になり,理論上は賃金格差が拡大することになる(図表11)(42)。賃上げ表記方 法とここでの記述をまとめたものが図表12である。

このように,中央協約は,実額表記によって,各産業間や事業所間の賃金格 図表10

出所)図表7に同じ。

図表11

出所)図表7に同じ

―213 ―

(24)

差の是正を行っていこうとしたのである。こうした方法は,先の産業横断的な 賃金表作成の失敗とのかかわりで見たとき,LOの苦しさとして表れている。

というのも,横断的賃金表による産業横断的な同一労働同一賃金の実現が不可 能であるなか,それでも産業横断的に賃金格差を是正していこうとすれば,低 賃金の産業や事業所の賃金を高めていく一方で,高賃金の産業や事業所の賃金 の上昇を抑えていく他に道はない。こうした実額表記は,事業所の賃金表に直 接的な影響を与えることができないLOの苦肉の策とも見ることができる。換 言すれば,中央集権的と呼ばれていたLOの力の限界が,この点に見え隠れし ていると言える(43)

低賃金者への特別の賃上げ原資のルール

LOが行っていたその他の分配規制として,(1)低賃金者への補頡と(2)

賃金ドリフト保障がある。この補頡と保障によって,産業によってLOから与 えられる賃上げ原資に相違が生じることになる。まず,低賃金者への補頡を見 てみよう(44)

(1)低賃金者への補頡

これもやや込み入った内容なので,(ア)低賃金者への補頡の分配,(イ)低 賃金者補頡の決め方という順で述べていくことにする。

(ア)低賃者への補頡の分配

まず,このルールがいつ頃から始まったのかは,定かではない(45)。ただ,少 図表12 表記方法と格差是正機能

表記方法 格差是正機能

(ア)賃上げ額を表記する方法 産業横断的に格差を是正

(イ)−1 産業全体の労働者の平均賃 金の何%を賃上げするという表記方法

産業横断的に格差を是正

(イ)−2 産業毎の労働者の平均賃金 の何%を賃上げするという表記方法

産業内の格差を是正。ただし,産業間 の格差は,拡大する。

(ウ)事業所の賃金を何%賃上げする という表記方法

是正機能なし。格差は拡大する。

―214 ―

(25)

なくとも1971年にはあったので(46), LOが行っていた分配規制の一つに数えて よいと思われる。それよりもここでおさえておかなければならないことは,次 の二点である。一つめは,中央協約では,各産業に与える原資のフロアー(下 限)を算出していただけであり,実際の原資の額やその具体的な分配方法は,

産業レベル以下に任されていたことである(47)。したがって,後述する決め方の 箇所で,「上限」や「対象となる層」などのあたかも分配すべき層を規定して いたかのような表現を用いることがあるが,それは,あくまで原資の算出にの み影響を及ぼしていたものである。二つめは,その原資の分配は,主に事業所 レベルで決められていたのではないか,ということである。これらの点につい

てのIF-Metall中央交渉部のR氏とのやり取りは以下の通り(48)

筆者「確認ですが,低賃金者への補頡や賃金ドリフト保障(の原資)を誰 に分配するのかは,産業レベルやローカルレベルで決定されると言うこと でよろしいでしょうか?」R氏「そうだ。」筆者「ところで,これらの賃 上げは,別の目的に使われることは,なかったのでしょうか?」R氏「そ うだ。なかった,,,いやいや違う。通常は,これらの特別な賃上げ原資

(低賃金者への補頡と賃金ドリフト保障…筆者)をそれ以外の目的に使う ことはできなかった(No, Normally could not)」筆者「通常?」R氏「そ うそう。誰がこれらの特別の賃上げを受け取るかは,事業所レベルの低賃 金者に応じて決まるからね(Who have special pools for low wages,,, It was decided to the low wages people at workplace level.)。」

発言の細かなところは気にせずに,ここでは,R氏の最後の発言に注目した い。低賃金者は事業所で決まる,という旨の発言が重要である。こうした発言 から読み取れることは,低賃金者の補頡や後述する賃金ドリフト保障の原資を 個々の労働者にどのように分配するのかについての交渉が,主にローカルレベ ルで行われていた,ということである。

―215 ―

(26)

式:1977 年の低賃金補填=(2780−a)×0.1 a=2780ore 以下の労働者の平均賃金 W

対象になる層

対象にならない層

この差額 ×10%→賃上げ額 2780ore

2780ore 以下の労働者の 平均賃金

産業

(イ)低賃金者への補頡の決め方

低賃金者への補頡の原資の算出方法は,中央協約ではSAFとLOが共同で 作成していた統計表を用いて行うことになっていた。初期の計算方法は,あら かじめ対象となる層の上限を定め,その上限とその上限以下の労働者の平均賃 金との差額に決められた係数を掛けたものが,補頡のための原資として充てら れていた。例えば1977年協約では,上限の額は2780オーレと定められてお り,2780オーレに満たない労働者の平均賃金と2780オーレの差額に労使が定 めた係数を掛けたものが原資となっていた(図表13)。算出方法見れば分かる ように,この方法では,2780オーレ以下の労働者の平均賃金が与えられる原 資の額に影響を及ぼすことになる。それゆえ,高賃金セクターほど与えられる 原資の額は,少なくなる。

この他の算出方法として,基準を産業毎の平均賃金の何パーセントという方 法で決める方法がある。図示すると図表14のようになる。この方法と図表13 の方法の大きな違いは,算出する際の上限が,産業毎に決められている点であ る。これによって,高賃金セクターでも低賃金セクターと同じだけの賃上げ原

図表13

出所)EIRR(1977)より筆者が作成

―216 ―

(27)

式:1979 年の低賃金補填=(産業別平均賃金の 115%−a)×0.1 a=115%以下の労働者の平均賃金

W

この差額 ×10%→産業 A の賃上げ額 115%(産業 A)

115%以下の労働者の平均賃金(産業 A)

産業 B の平均賃金の 115%

産業 B の平均賃金の 115%以下の 労働者の平均賃金

産業 対象になる層

対象にならない層 産業 A

この差額 ×10%→産業 B の賃上げ額 産業 A

資を得られる可能性があるものに変化している。

1977年から1982年までの低賃金者への補頡の算出方法をまとめたものが,

図表15である。決め方の変化をまとめると以下の二点が指摘できよう。すな わち,まず,一つめは,基準となる水準が平均賃金の200% という高い水準に まで上昇する一方で,その掛け率は減少していることである。そして,二つめ は,基準が,産業横断的に決められていたものから,産業毎に決めるものに変 化していることである。これらの変化は,低賃金者への補頡が,格差是正のた めの一つの手段というよりは,むしろ,労働者の賃金をあげる一つの賃上げの 手段となっていたことを連想させる。

また,基準が産業毎の平均賃金の115% から200% へと短期間で上昇したこ とは,産業レベル以下の強い組合の交渉力を連想させる。というのも,先に述 べたように,基準自体は産業レベル以下で独自に決めることができたので,産 業レベル以下の組合の交渉力が強ければ,中央レベルが設定した基準は,変更

図表14

出所)EIRR(1978 c)より筆者作成

―217 ―

(28)

可能なものであったと考えられる。こうした基準の変更可能性と,中央レベル が短期間で大きく基準を上げた(115% から200%)という事実を併せて考え ると,次のような労使関係が浮かんでくる(49)。すなわち,

(イ)年々の産業レベル以下の交渉によって,中央レベルの基準が大幅に改 定されていた。

(ロ)産業レベル以下で行われる大幅な改定を受けて,次年度の中央交渉で は,予め基準を高めに設定した(1979年の115% から1980年の140% へ の基準の変更)。

(ハ)中央レベルは,中央協約の勧告を傘下の組織に遵守させるために,最

終的に200% という高い水準を設定した。

(ニ)中央レベルの労使は,水準を上昇させることで労働組合側の納得を得 ようとした一方で,掛け率を低くすることで経営側の合意をとろうとした。

以上のことから連想されることは,強い産業レベル,もしくはローカルレベ ルの組合の存在と,傘下の組織を調整することに手をやいていた中央レベルの 姿である。あくまで,個人的な推察である。次に賃金ドリフト保障を見てみよ う。

(2)賃金ドリフト保障のルール

この賃上げは,1966年から行われている(Olsson 1991)。賃金ドリフトとは 図表15

基準(方式) 基準

(額or%)

基準

(産業横断性) 掛け率 産業横断的賃金 格差是正の効果 1977年 絶対額方式 2780 ore 横断的基準 10% ○ 1978年 絶対額方式 2902 ore 横断的基準 ? ○ 1979年 パーセント方式 115% 産業毎 10% △ 1980年 パーセント方式 140% 産業毎 4.5% △ 1981年 パーセント方式 200% 産業毎 3% △ 1982年 パーセント方式 200% 産業毎 2.3% △ 出所)EIRR(1977, 1978 b, 1978 c, 1980 a, 1980 b, 1981 a, 1981 b)より作成

―218 ―

(29)

協約で定められた賃上げ以上の賃上げのことを指しているのであるが,中央協 約では賃金ドリフトを享受できていない労働者に対して特別の賃上げ原資を与 えることを定めていた。原資の算出方法は,基本的にまず賃上げの対象となる 労働者の基準を定め,その基準と対象となる層の平均賃金の差額を原資とする というものであった(Edgren 1973)。基準の決定方法には,定められた計算式 を用いる(ア)比較価格方式(comparative figure)と,(イ)直接実額を提示 する実額方式がある。なお,計算に使われるデータは低賃金者への補頡の時と 同様に,SAFとLOが共同で作成している統計表が用いられる。以下で決定 方式を見て行こう。

(ア)比較価格方式(50)

まず,賃金ドリフト保障は以下のような式によって算出される。

賃金ドリフト保障=α−比較価格

α=協約で定められた賃上げ額以上の賃上げ額の平均(統計上示される賃金ド リフト)

次に比較価格は,以下のような式によって算出される。

比較価格={(A−B)−β}×0.8

A=1978 年第二四半期の産業毎の平均賃金

B=1977年第二四半期の産業毎の平均賃金

β=協約で定められた賃上げ額 0.8=協約で定められた係数

このように,産業毎に定められた期間でどれだけの協約賃上げ以上の賃上げ が実際に行われていたのかを計算し,それに係数(0.8)を掛けたものが比較 価格となる。比較価格による賃金ドリフト保障の算出方法を図示すると以下の ようになる(図表16)。

図表16のように比較価格方式の特徴は,比較価格が産業毎に算出されてい ることである。実際の賃金ドリフトを享受していない産業ほど比較価格は低く なるので(図表16における産業X),受け取る賃金ドリフト保障の額も高く

―219 ―

(30)

W

=産業 Y の保障

+ =産業 X の保障 協約以上の賃上げ額

の平均

比較価格(産業 Y)

産業 X の ドリフト保障 比較価格(産業 X)

協約で定められた 賃上げ額 協約以上の賃上げ額

産業 Y の ドリフト保障

なる。それゆえ,中央協約の規定通りに原資が算出されていたとすれば,格差 是正機能は非常に高かったと言える。

(イ)実額方式(51)

実額方式では,比較価格のような計算式はなく,そのまま基準となる額が提 示される。例えば,1980年の協約では,基準が60オーレと定められており,

原資は,実際の賃上げ額から60オーレを差し引いた額がとなる。式にすると 以下のようになる。

賃金ドリフト保障=A(統計上示される賃金ドリフト)−60 ore

A(統計上示される賃金ドリフト)=1979年第四四半期の産業全体の労働者の平

均賃金−1979年第一四半期の産業全体の労働者の平均賃金−協約で定められた 賃上げ額

実額方式による原資の算出を図示すると以下のようになる(図表17)。 図表16

出所)EIRR(1978 b)より作成

―220 ―

(31)

W

協約以上の 賃上げ額 の平均

補償額=協約以上の賃上げ額の平均−60ore

協約で 定められた 賃上げ額 協約以上の賃上げ

60ore     

図表17が示すように,実額方式の特徴は,比較価格方式と違い,原資が産 業毎ではなく,産業横断的に決まることである。したがって,比較価格方式の 下では,賃上げ額がより少なかった産業は,より多くの原資を得ることができ たが,実額方式ではそうした差は加味されなくなる。実額方式の場合,図表16 では与えられる賃上げ原資に相違が生じていた産業Xと産業Yに与えられる 原資は,同じになる。それゆえ,産業横断的格差是正機能は弱いと言える。1977

図表17

出所)EIRR(1980 b)より作成

図表18

パターン 基準(産業毎or 産業全体)

産業横断的賃金格差 是正の効果

1977年 比較価格 産業毎 ○

1978年 比較価格 産業毎 ○

1979年 比較価格 産業毎 ○

1980年(1) 実額 産業全体 △

1980年(2) 比較価格 産業毎 ○

1981年 実額 産業全体 △

1982年 実額 産業全体 △

出所)図表15に同じ

―221 ―

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