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“是…的”構文の多義性と「的」の本質

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

“是…的”構文の多義性と「的」の本質

郭, 楊

http://hdl.handle.net/2324/2235997

出版情報:Kyushu University, 2018, 博士(文学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (2)

(2)

氏 名 :郭楊

論 文 名 : “是…的”構文の多義性と「的」の本質

区 分 :甲

論 文 内 容 の 要 旨

中国語の研究においては、従来、語彙語の歴史的研究や意味的研究が中心であり、機能語の 研究は比較的少ない。そのなかでも、比較的研究されてきた機能語に「的」がある。「的」は、

日本語の格助詞の「の」と似た働きを持つ場合(以下、「Linker的」と呼ぶ)と、Nominalizer

(名詞化辞)としての働きを持つ場合(以下、「Nominal的」)があることがよく知られている。

本博士論文で注目したいのは、「的」がいわゆる判断詞「是」と共起する“是…的”構文と呼ば れる場合についてである。先行研究の主なものはすべて、“是…的”構文という単一の構文があ ると仮定し、その「的」を名詞化辞としての機能に結びつけて説明してきている。しかし、本 博士論文では、「是」と「的」が共起する文は単一の構文ではなく、統語的な特性から見ても、

意味解釈から見ても、3つの異なる構文としてとらえるべきだということを主張する。

2章では、理論背景となる生成文法および上山(2015)の統語意味論の枠組みを紹介した上で、

中国語の文の基本的な文構造の特徴を考察する。中国語では、基本的な語順は英語と同様SVO でありながら、動詞の左に、項ではない名詞句がいくつも生起できる。これは日本語の「先進 国は男性が平均寿命が短い」というような文と同様の特徴である。従来の英語にもとづく理論 では、名詞句は項としてしか構造構築されないため、このような文の構築方法については、明 らかにされてこなかった。ここで求められるのは、項でない名詞句を Subject、述語部分を Predicateとして、その2つの間にPredication関係を打ち立てることである。本博士論文では、

Predication関係を追加していく機能をもつ操作を提案することによって、このような文の構築

方法を明示的に提案した。これにより、たとえば、[先進国は [男性が [平均寿命が短い]]] とい

うように Predication 関係が多重に含まれる文の構築が可能となり、中国語の特徴をうまくと

らえることができる。

3章では、いわゆる“是…的”構文についての先行研究から、いくつか有名なものを取り上 げ、それぞれの問題点を示す。

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4章では、アスペクトとしての働きを持つ「的」(以下、「Aspect 的」)があるということを 主張する。「Aspect 的」は、目的語の状態を変化させるタイプの動詞の直後にのみあらわれる もので、その動詞に完了の特性を与える。さらに、主語もしくは付加詞を焦点(focus)とし、

それ以外の部分を後景(background)とするような意味解釈をもたらす。たとえば、「是小王 抽的烟。」は「王さんがたばこを吸ったのだ。」という解釈になる。この場合、「是」や「的」の

語順が「Nominal的」の場合とは明らかに異なっている点が注目される。

また、「是」や「的」で文をQuestion(疑問)とAnswer(回答)の2つの部分に分けて提示 するという働きを持つ場合がある。5章では、そのような「Answer 的」について論じる。た とえば、「小王是抽烟的。」という文は、いわば「王さんはどうかというと、たばこを吸うのよ。」

という意味であり、語順としても情報構造としても「Aspect 的」とは明らかに異なっている。

また、「Answer的」は語順は一見「Nominal的」と似ているが、意味解釈に違いがあるだけで なく、否定文における「不」の語順がはっきりと異なっている。上で言及した Predication 関 係が、この「Answer 的」の場合の意味解釈を分析するにあたっても重要な働きを持つ。

「Question是」と「Answer 的」は、必ずこのタイプのPredication関係を打ち立てなければ ならない要素であるため、この場合は「是」も「的」もどちらも省略することができない。ま た、これらの要素の統語的特性を具体的に指定することによってQuestionの部分に否定辞が入 れないことや、Answerの部分に疑問詞が入れないことなども、説明できることを示した。

以上、本論文においては、従来の「Linker的」「Nominal的」に加えて、「Aspect的」と

「Answer的」が区別されるべきであるということを主張した。従来は、「是」と「的」が共起

していればすべて“是…的”構文とみなされ、ひとまとめに記述されてきたが、本論文で示し たように、異なる「的」を含めば、その“是…的”構文の特性は大きく異なる。同じ「的」と いう漢字を用いるからといって、同じ語彙項目であるという予断は排さなければならない。従 来、“是…的”構文はとらえどころのない難しい構文であるとみなされることが多かったが、そ の原因は、「的」を適切に区別しないまま分析しようとしたからである。本論文で提案するよう に4種類の「的」を区別した上で“是…的”構文を分析すれば、“是…的”構文の多義性と「的」

の本質がはっきりと見えてくる。

参照

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