「組み体操」における
事故防止の指導上留意点
三重県教育委員会事務局保健体育課
- 1 - はじめに 本留意点では、「組み体操」の事故件数の多い 4 種目を中心に、事故が発生する状況、 県内で発生した骨折事例について示しています。 しかし、全ての事故が発生する状況や全ての事故対策を示したものではありません。 本留意点をもとに、各地域、各学校での児童生徒の実態、それぞれの種目や状況に応 じてどのような事故が起きやすいか、「ヒヤリ・ハット」事例などを共有し、補助をする 教員等の配置、マット等の場の設定及び器具等の整備等に配慮して、指導計画を作成す ることが必要です。 また、「組み体操」だけでなく、体育・体育的活動における「事故」も多く発生して います。運動することの楽しさを「事故」によって奪うことがないよう、体育・体育的 活動における起こりうる「事故」のリスクを知り、リスクを除く努力をし、子どもたち が元気いっぱい活動できるよう取り組んでいきましょう。 Ⅰ 平成 26・27 年度において県内で発生した「組み体操」における事故について 平成 26・27 年度において県内で発生した「組み体操」における事故については、県 内市町等教育委員会が所管する学校から当該教育委員会に提出された独立行政法人日 本スポーツ振興センター災害給付金の申請を行う際の「災害報告書」及び「医療等の状 況」に基づいて、集計を行いました。(県内公立小中学校を対象とした調査) 平成 27 年度に「組み体操」を実施した学校の割合は、小学校 83.7%(全 375 校のう ち 314 校)、中学校 8.2%(全 158 校のうち 13 校)であり、小学校の多くで実施されて います。 「組み体操」における事故は、平成 26 年度は 195 件、平成 27 年度は 175 件、2 年間 では 370 件発生しています。(「死亡・後遺障害」等は 0 件) 表1は、平成 26 年度及び平成 27 年度における事故発生場所別の件 数です。60%を超える事故が「体育 館等」で発生しており、「組み体操」 の練習前半期に多くの事故が発生していることがうかがえます。 表 2 は、事故の発生状況等について、「ピラミッド」「タワー」「肩車・サボテン」「倒 立」等の種目別に分類したものです。この 4 種目の事故は、2 年間で 300 件発生してお り、全体の 80%を超えています。 表1 事故の発生場所 (件) 体育館等 運動場等 その他 計 111 75 9 195 116 53 6 175 227 128 15 370 平成27年度 2年間 平成26年度 表2 事故の発生状況等について (件) ピラ ミッド タワー 肩車 サボテン 倒立 飛行機 隊形 移動中 その他 計 41 41 43 37 6 5 22 195 40 32 42 24 11 5 21 175 81 73 85 61 17 10 43 370 平成26年度 平成27年度 2年間
- 2 - 表 3 は、骨折事例の発生状況等について種目別に分類したもので、2 年間で 114 件発 生しており、事故全体の 30%程度を占めています。上記 4 種目において、92 件の骨折 事例があり、骨折事例全体の 80%程度を占めています。 表 4 は、骨折の部位別の発生状況等を見たもので、骨折の部位では手首が 34 件と最も 多く、次に足の指・甲の 31 件となっています。 「ピラミッド」では、崩れる、落下する、おりるときに手をつく、足を踏まれるなど による骨折事例が多く、「タワー」では、崩れる、落下するときに手をつく、肘を打つこ とによる骨折する事例が多いです。 「肩車・サボテン」では、転倒したときに手をつくことによる骨折事例が多く、「倒立」 では、転倒したとき、着地したときに、足を打ちつけることによる骨折事例が多いです。 これらの事故件数は、災害給付金の申請を行った数であり、「組み体操」を行ってい る際に、崩れたとき、落下したときなど、ヒヤリとしたりハッとしたりした場面は、こ の何倍もあると考えます。 「ハインリッヒの法則」では、「同じ人間が起こした 330 件の災害のうち、1件は重 い災害があったとすると、29 回の軽傷、傷害のない事故を 300 回起こしている。」とい うもので、300 回の事故の背後には数千の不安全行動や不安全状態があることも指摘し ています。(厚生労働省ホームページ ≫ 職場のあんぜんサイト≫ 安全衛生キーワードより) 事故を減らすために、子どもたちの実態や発達段階を理解するとともに、まず「ヒヤ リ・ハット」の事例を減らすことが重要です。 表4 骨折の部位と「組み体操」の種目の状況等について (件) 顔・首 胸・腰 背中 臀部 肩 肘 腕 手首 手指 甲 膝 足首 踵 足指 甲 計 ピラミッド 2 0 0 1 2 0 6 2 0 1 9 23 タワー 0 1 1 3 6 3 7 0 2 2 1 26 肩車・サボテン 0 3 2 3 2 1 9 0 1 0 1 22 倒立 0 1 0 0 1 0 4 2 0 1 12 21 その他 0 2 1 0 0 1 8 1 1 0 8 22 計 2 7 4 7 11 5 34 5 4 4 31 114 組 み 体 操 の 種 目 骨 折 の 部 位 表3 骨折事例の発生状況等について (件) ピラ ミッド タワー 肩車 サボテン 倒立 飛行機 隊形 移動中 その他 計 12 14 11 16 0 2 7 62 11 12 11 5 6 1 6 52 23 26 22 21 6 3 13 114 平成27年度 2年間 平成26年度
- 3 - Ⅲ 事故発生を防ぐために 1 「組み体操」の実施計画の作成にあたって (1)事故防止と実施への理解の観点からの計画 (2)事前のリスク想定による対応 (3)安全面を重視した補助者の配置、器具等の活用 (4)危機管理体制の確認
P19
はじめに Ⅰ 平成 26・27 年度において県内で発生した「組み体操」 における事故についてP1
Ⅱ 事故が発生する状況と骨折した事例について 1 「ピラミッド」の場面で 2 「タワー」の場面で 3 「肩車・サボテン」の場面で 4 「倒立」の場面で 5 その他「組み体操」をしている場面でP5
2 「組み体操」の実技指導にあたって (1)低学年から経験させたい感覚つくり (2)「ピラミッド」での事故を防ぐために (3)「タワー」での事故を防ぐために (4)「肩車・サボテン」での事故を防ぐために (5)「倒立」での事故を防ぐために (6)その他「組み体操」での事故を防ぐためにP20
平成 28 年 3 月 25 日付け 「組み体操」における事故防止についてP4
- 4 - 平成28年3月25日 三重県教育委員会事務局 保健体育課
「組み体操」における事故防止について
下記事項及び『「組み体操」における事故防止の指導上留意点』を基に、各市町、学校 や児童生徒の実態に即した事故防止対策を十分図り、児童生徒や保護者、地域等の理解の もと実施すること。 記 1 児童生徒の実態に即し、安全確保、事故防止の観点から、学校全体で段階的な指導 計画及び実施内容の確認を行うとともに、事前に校内研修を実施するなど、事故防止 に努める。 2 数週間の練習期間だけでなく、各学年の発達段階に合った指導の積み重ねの必要性 を確認し、年間を通して体育・体育的活動の充実を図る。 3 実施にあたっては、過度に高さ等※1を求めることなく、実施困難と思われる場合は、 「中止する」「技を変更する」など、児童生徒の実態に合わせて対応する。 4 事故が発生しやすい状況を全教職員で共通理解し、教職員による補助者の配置やマ ット等の必要な用具の活用を適切に行う。 5 事故発生時における応急手当等の学校体制の確立を図るとともに、事故発生の原因 を検証し、再発防止に取り組む。 ※1 「過度に高さ等」は、ピラミッド等については5段相当を超える高さ、 タワー等については3段相当を超える高さを過度の目安とする。- 5 - Ⅱ 事故が発生する状況と骨折した事例について 1 「ピラミッド」の場面で (1)事故が発生する状況 ① 崩れるとき ○ 時間が経過して支えきれなくなる。 ○ 上の子の手の位置がずれて、下の子に痛み等が加わり、支えきれなくなる。 ○ 上の子の膝の位置が背中にずれて、下の子に痛み等が加わり、支えきれなく なる。 ○ 下の子に乗っている二人の膝の位置がずれて、ずれた子が支えきれなくなる。 ○ 上がる子の勢いによって一時的に体の一部に体重がかかり、一人の子又は複 数の子が傾く。 ○ おりる子の勢いによって、一時的に体の一部に体重がかかり、一人の子又は 複数の子が傾く。 ② 落下したとき ○ 下の子が崩れたときに、内側に落ちる。 ○ 下の子が崩れたときに、後方または外側に落ちる。 ○ 上がろうとして上がれず、後方に体重がかかって落ちる。 ○ 上がる子が落ちるときに、体をつかまれて落ちる。 ○ 落下した子が、体に当たる。 ○ 落下した子に踏まれる。
支えきれなくなる
時間が長くて 上の子の 手の位置が 足の位置が ずれて痛くて 膝を置く位置がずれて 上がったり、おりたり 一時的な加重に 耐えられなくて落下する
崩れた時に 内側に 後方に 外側に 前方に 上がれずに 後方、側方へ 1人で つかんだ子とともに 落ちてきた子に ぶつかられる 乗られる、踏まれる- 6 - ③ おりるとき ○ おりる足場がなくなり、跳びおりる。 ○ おりるタイミングがとれず、つかんだ子の体の一部を引っ張ってしまう。 ○ おりたときに、下の子の足を踏みつけてしまう。 ④ その他 ○ 同じ姿勢が続くことにより、肩、腰、手首、膝等を痛める。 (2)骨折した事例(★手首の骨折 ■足指・甲の骨折 ○その他) ① 崩れた時の事例 ★ 一番下の児童の背中に手をついた際、バランスが崩れた。 (右橈骨遠位端骨折、右橈骨尺骨骨折) ★ ピラミッドが崩れ、一番下にいた被災児童の左腕に、上にいた児童が乗り、 左腕を痛めた。(左橈骨遠位端骨折) ★ 全体のバランスが崩れて、被災児童(一番下)の上に乗っていた児童の足が、 右手首の上に落ちた。(右橈骨骨端線損傷) ★ 崩れたため、手の上に乗られ損傷した。 (被災児童は一番下、橈骨遠位端骨折・スミス骨折の疑い) ■ 4段ピラミッドでバランスを崩し、地面に左足をついた際に、小指を強打し た。(左第5中足骨骨折) ■ 崩れた際に左第5趾を打った。(左第5趾中足骨骨折) ■ ピラミッドが崩れた際、他の児童の足が、被災児童の右足小指に当たった。 (右第5趾基節骨骨折) ■ ピラミッドが崩れた際に、他の児童が被災児童の足の上に落ちてきて、右拇 趾を負傷した。(右拇趾基節骨骨折) ○ ピラミッドが崩れたとき、下の段の児童の頭で鼻部を強打した。(鼻骨骨折) ○ 4段ピラミッドが崩れた際、両手を地面につき、右肘に痛みを感じた。 (被災児童は上から 2 段目、右肘尺骨骨折の疑い) ○ 一番下の児童の背中に手をついた際、バランスが崩れた。(左小指骨折) ○ 崩れた際、右手を捻った。(被災児童は一番下、右第5中手骨骨折の疑い)
おりるとき
跳んでしまう 着地で強打 下の子を 踏んでしまう つかんだ子を引っ張ってしまう- 7 - ② 落下したときの事例 ★ 上から転落して、床に右手を打ち付けて捻った。(右橈骨遠位端骨折) ★ 1 段目がバランスを崩したため落下して、腕をついたときに、骨折した。 (左手首骨折) ○ 上の児童が足を滑らせ転落した際、足が一番下にいた被災児童の頭部に当た った。(頚椎骨折の疑い) ○ 4段ピラミッドの一番上から落下し、右上腕を地面で打った。 (右肩上腕骨若木骨折、右肘上腕骨骨端線損傷) ○ 上の児童がバランスを崩し、2段目にいた被災児童の右腕に落下した。 (右肘関節骨折の疑い) ③ おりるときの事例 ■ 4段ピラミッドからうまくおりられず、4段目から跳びおり、その際、左足 甲に痛みが走った。(左第 2、3、4 中足骨骨端線損傷) ■ 上に乗る児童が上がり直そうと体育館の床におりた際、足を踏まれた。 (左第 2 趾 PIP 関節脱臼骨折) ■ ピラミッドの上からおりてきた児童に左足親指を踏まれた。 (左母趾末節骨骨端線損傷) ■ 上にのっていた児童がおりる時にバランスを崩し、一番下の被災児童の右小 指を踏んだ。(右小趾基節骨不全骨折) ■ 上の児童がおりるときに、右足を踏まれた。(右第 2 趾基節骨折) ④ その他の事例 ○ ピラミッドの一番下で練習をするうち、痛みが増していった。 (左腓骨外果骨端線損傷)
- 8 - 2 「タワー」の場面で 想定:下から1段目(6人)、2段目(3人)、3段目(1人・一番上) (1)事故が発生する状況 ① しゃがんで3段を組むとき ○ しゃがんでいる1段目の上に2段目が乗り、しゃがむときにバランスを崩し て、2段目が内側に崩れる。 ○ しゃがんでいる1段目の上に2段目が乗り、しゃがむときにバランスを崩し て、2段目が外側に落ちる。 ○ 一番上の児童が、しゃがんでいる1段目に足をかけ、2段目に上がるときに、 バランスを崩し、後方に落下するとともに、2段目が崩れる。 ② 1段目が立ち上がるとき ○ しゃがんでいる1段目の子の一人が立ち上がれずに、2段目が傾き、2段目 の子と一番上の子が落下する。 ○ しゃがんでいる1段目が立ち上がるときに6人がそろわず、片方に傾き、2 段目と一番上が崩れ落ちる。 ○ しゃがんでいる1段目が立ち上がったあとに、1段目の子の一人が足の位置 を整え直したため、2段目が揺れて一番上の子が落下する。 ③ 2段目が立ち上がるとき ○ 一番上を乗せている子の一人が立ち上がれずに、2段目が傾き、一番上の子 が落下する。 ○ 誰も乗せていない子が立ち上がれず、一番上の子が前のめりになり、2段目 の子とともに落下する。 ○ 2段目が立ち上がろうとしているときに、1段目の子が体勢を整え直したた め、2段目の子がバランスを崩し、一番上の子が落下する。
しゃがんで
組むとき
上がろうとする子が バランスをくずす しゃがむときに バランスをくずす 2段目に乗るときに、 1段目の子に一時的に加重がかかり 1段目の子がバランスを崩し、 2段目から崩れる 2段目に乗るときに、 2段目の子に一時的に加重がかかり 2段目の子がバランスを崩し、 2段目から崩れる- 9 - ④ 一番上の子が立ち上がるとき ○ 一番上の子がバランスを崩し、一番上の子が落下する。 ○ 一番上の子がバランスを崩し、立て直そうとしたため2段目の子のバランス が崩れ、一番上の子が落下する。 ⑤ 一番上の子がしゃがむとき ○ 一番上の子がバランスを崩し、足がすべるように傾き、落下する。 ○ 2段目の子の顔や髪の毛など想定外の場所をつかんでしまったので、2段目 のバランスが崩れ、落下する。 ⑥ 1・2段目がしゃがむとき ○ 間違えて2段目の子の一人が早くしゃがんでしまったため、2段目が傾き、 一番上の子と2段目が落下する。 ○ 2段目がしゃがむときに、一番上の子がバランスをくずし、2段目の子をつ かんでしまい、一番上の子と2段目の子が落下する。 ○ 1段目がしゃがむときに、一人の体勢が前のめりになり、2段目が傾き、一 番上の子と2段目が落下する。 誰か一人が 立ち上がれないと バランスが崩れ 上の段が崩れる
立ち上がるとき
6人・3人が そろわないと バランスが崩れる 勢いよく立つと 上の段が揺れて崩れる バランスを崩し、 立て直そうとすると 一時的に加重がかかり 下の段が崩れるおわりに
しゃがむときに
上の子がバランスを崩す 足がすべる 下の子をつかむ 誰かが速いと バランスが崩れる 姿勢が変わって崩れる 足の位置がずれて 負荷の位置が変わって 下の子の姿勢が変わると バランスが崩れる 上の子の足の位置が変わる 下の子にかかる負荷の位置が変わる- 10 - (2)骨折した事例(◆肘の骨折 ★手首の骨折 ○その他) ① しゃがんで組むときの事例 ★ 3人タワーの上に乗る時にバランスを崩して、着地する時に右手を地面に強 くついた。(右橈骨遠位端骨折) ○ タワーの上に上る途中、バランスを崩し、腕から地面に落ちた。(左橈骨骨折) ○ タワーの上に上る途中、崩れたため、上から跳びおりたところ、右足踵を地 面で強打した。(右踵骨不全骨折) ②~④ 立ち上がるときの事例 ◆ 3段中の2段目から立ち上がるときに落下した。(左上腕骨内上顆骨折) ◆ 3段中の2段目から立ち上がるときに落下した。(左上腕骨近位部骨折) ◆ 3段中の3段目で立ち上がる時に落下した。(右橈骨頭部不全骨折) ★ 1 段目から立ち上がるときに落下した。 (右橈骨遠位端骨折、右尺骨遠位端骨折、右尺骨茎状突起骨折) ★ 上段で立ち上がろうとバランスを崩して落下した。(左橈骨遠位端骨折) ★ タワーの1段目の児童がバランスを崩し、上にいた被災児童が落下し、左手 を床に強くついた。(左橈骨遠位端骨折) ★ 3人タワーの一番上で、立ち上がろうとした時にバランスを崩して後ろに落 下し、腰と左腕を床に打ちつけた。(左橈骨遠位若木骨折、腰部椎間板損傷) ★ 3人タワーの上からバランスを崩し、右手から落下した。(右手舟状骨骨折) ★ 2段タワーの上から落下した。(左橈骨遠位端骨折・右手舟状骨骨折) ○ 2段のタワー上段で立ち上がったとき、バランスを崩し落下した。 (右橈骨骨折) ○ 3人やぐらの上で、バランスを崩し、肩から落下した。(右鎖骨骨折) ○ 三人技で児童2人の背中に乗り、下の2人が立ち上がろうとした際バランス を崩して落ち、左顔面と左膝を強打した。(左膝蓋骨骨折の疑い) ⑤~⑥ おわりにしゃがむときに骨折した事例 ◆ おりるときに、下の児童が早く動いたため、足のバランスを崩し、地面に落 下したときに、左肘を強く打った。(左肘頭骨折) ○ 3段タワーの1番上からおりている際にお尻から落ちた。(尾骨不全骨折) ○ 3段タワーの2段目からおりる際に1段目の児童がバランスを崩し、左腕を 踏まれた。(左橈骨若木骨折)
- 11 - ⑦ その他(状況が特定できず、崩れた・落下した場合等) ◆ 上の児童がバランスを崩して落下し、被災児童の腕に当たった。 (右上腕骨顆上骨折) ◆ 10人タワーが崩れ、右上腕を痛めた。(右上腕骨果上骨折) ○ 9人の3段タワーの練習中、上の児童がバランスを崩し、土台になっていた 被災児童の右足親指に落下し、負傷した。(右母趾基節骨骨端線損傷) ○ 崩れた際に、上段の子の踵がぶつかった。 (右第2肋骨不全骨折、左鎖骨骨挫傷、右上腕骨近位骨端線損傷) ○ 2m弱の高さから落下し、右足を床で打った。(左腓骨頭若木骨折) ○ 4段中の2段目が崩れて、一番上から落下した。(右足首骨折) ○ 全体のバランスが悪くなり、上に乗っていた児童と一緒に転倒してしまい、 右側の肩と腕と太ももを強く打った。 (被災児童は一番下、右上腕骨近位骨端線損傷) ○ 支える練習を続けるうちに背中を痛めた。(第5胸椎椎体圧迫骨折)
- 12 - 3 「肩車・サボテン」の場面で (1)事故が発生する状況 ① 肩車で立つとき ○ 下の子が立ち上がるとき、上の子が、前方へ落下する。 ○ 下の子が立ち上がるとき、下の子が、後方へ転倒する。 ○ 下の子が立ち上がるとき、首、腰、背中、足指先等を痛める。 ② 肩車で立った後 ○ 下の子がバランスを崩し、上の子が前方へ落下する。 ○ 上の子がバランスを崩し揺れたため、下の子もバランスをくずし、転倒する。 ③ 肩車からサボテンへ ○ 下の子が、上の子を太ももの上にのせ、頭を抜くときにバランスを崩し、上 の子が前方に転倒する。 ○ 上の子が下の子の太ももの上にうまく乗れず、上の子が側方に転倒する。 ④ サボテンをしているとき ○ 下の子と上の子のバランスがとれず、前方へ転倒する。 ⑤ 着地するとき ○ ジャンプして着地しようとして、バランスを崩し、前方へ転倒する。 ○ 着地するときにバランスを崩し、手をつく。
肩車
倒れる
上げられず 首、腰等を 痛める 立ち上がるときに 前方へ倒れる 後方へ倒れる 立ち上がったあとに 下の子や上の子が バランスを崩す 前方へ倒れる 後方へ倒れるサボテン
バランスを崩す
太ももの上に 乗せるとき 乗せたあと 下の子が 頭を抜くとき 上の子の膝が曲がる 下の子の肘が曲がる 力で支え続ける 着地のときに- 13 - (2)骨折した事例(★手首の骨折 ○その他) ①~②肩車をしたとき ★ 肩車で上に乗っていたところ、後方に転落し、左手を地面についた。 (左橈骨遠位端骨折) ★ 肩車で支えていた子がふらつき、前のめりになって倒れたため、上にいた被 災児童が床に手をついた。(左橈骨遠位骨端線損傷) ★ 肩車の練習中、上から落下し、左手を床に強くついた。 (左橈骨遠位骨端線損傷) ★ 肩車からおりるとき、手をついた。(左橈骨遠位端骨折) ○ 持ち上げる際に背中を痛めた。(左第2肋骨不全骨折) ○ 肩車する際に、胸と首に痛みを感じた。(胸椎圧迫骨折) ○ 肩車をしようと持ち上げるときに、右足の親指を下向きに曲げたまま、体重 をかけてしまった。(右第1趾末節骨骨折、右第1趾爪剥離) ○ 肩車された児童が後方へ体をそらせる時、被災児童の右肩がペアの児童の足 で強力に挟まれるような格好になった。(右上腕骨近位骨端線損傷の疑い) ○ 下の児童が持ち上げるときにバランスを崩し、被災児童が手から落下した。 (左尺骨骨折) ○ 肩車をしようとしたところ、バランスを崩して転倒し、尻もちをついて尾骨 を痛めた。(尾骨不全骨折) ○ 肩車で上に乗っていたところ、転落し、右肘、右上腕、胸部を地面に打ちつ けた。(右上腕骨頚部骨折) ○ 被災児童は肩車の上の役で、下の児童がバランスを崩し揺れた時に、地面へ 左腕から落ちた。(左上腕骨頸部骨折) ○ ペアの児童を肩車していておろそうとした際、上の児童が滑り落ちそうにな り、被災児童も体が前のめりになった。(胸骨骨折) ③~⑤サボテンをしたとき ★ サボテンに移行するときにバランスを崩して手から落ちた。 (右橈骨遠位端若木骨折)(同記述別部位、左橈骨骨幹部若木骨折) ★ サボテンで下の生徒が足を支えきれず、左手より落下した。 (手舟状骨不全骨折、左橈骨遠位端不全骨折) ★ 土台からジャンプして着地した際、両腕を床で強打した。 (右橈骨頭骨端線骨折、左橈骨頭骨端線骨折、右橈骨遠位部不全骨折) ★ 上からおりた時、バランスを崩し、手から落ちた。(右手舟状骨骨折) ○ ペアの児童の膝の上から前のめりに落下し、左肘と右膝を強打した。 (右膝膝蓋骨骨折)
- 14 - ○ 持ち上げていた児童がおりた時にバランスを崩し、しりもちをついた。 (仙骨骨折) <その他> ★ 2人ペアの技で上に持ち上げられたとき、足が滑り転倒。その際に、左手を 床にうちつけ負傷した。(左橈骨遠位骨端線損傷、左橈骨遠位骨幹部若木骨折) ○ 体を起こした際に、勢い余って地面に落下した。(右橈骨頸部骨折)
- 15 - 4 「倒立」の場面で (1)事故が発生する状況 ① 支えることができない(倒立・補助) ○ 崩れた倒立前転のようになり、胸部に負担がかかる。 ○ 倒立しようとしている子、倒立した子が転倒する。 ○ 支持しようとする子の顔面に倒立した子の足があたる。 ② 着地がうまくできない ○ つま先を地面(床)に強く打ちつける。 ○ 体勢を崩し、足を捻る。 (2)骨折した事例(■足指・甲の骨折 ○その他) ①-1 支えることができない(倒立する子) ■ バランスを崩し倒れた時に床にぶつけた。(左母趾骨折) ■ 補助倒立で、相手がうまく支えることができず、右足から転倒した。 (右母趾基節骨骨折) ○ 倒立からバランスを崩し、無理な前転の姿勢になり、胸部に体重がかかった。 (胸骨骨折) ○ 補助つき倒立の際、体を支えきれず、左肘の力が抜けてしまい、左肘を地面 で強打した。(左上腕骨顆上骨折の疑い) ○ 倒立をしていてバランスを崩し、前方に倒れた際に右手指を痛めた。 (右手舟状骨不全骨折) ○ 倒立をしたときバランスを崩し、左手をひねった状態で転倒した。 (左橈骨末端骨折) ○ 倒立をした時にバランスを崩し左手をひねった。(右橈骨末端骨折) ①-2 支えることができない(補助する子) ■ 倒立をした際に、ペアになっている児童が受け止められず倒れ、床で左足を 強打した。(左第5指中足骨骨折) ■ 倒立でペアを組んでいた児童が被災児童の足をつかみ損ね、つま先を地面に 打ちつけ、左足人差し指を痛めた。(左第2趾基節骨骨折)
転倒、足を打つ
足がバタバタして 補助ができずに 転倒 顔、体に当たる 支持ができなくて バランスを崩す 着地で打つ 膝、足の甲 補助者とタイミングが合わない 転倒- 16 - ■ バランスを崩して、倒立する児童を支えられず、体が足にあたった。 (左第5中足骨骨折) ② 着地がうまくできずに骨折した事例 ■ 倒立で着地した際、右足の指を捻った。(右第2、3中足骨頭骨折) ■ 倒立で着地の際に、床に右足小指を打ちつけ痛めた。(右第5中足骨頭骨折) ■ 倒立をしていて、着地の際、右足の第 5 指付近を痛めた。 (右第 5 中足骨骨折) ■ 倒立からの着地に失敗して捻った。(左足中足骨骨折) ■ 倒立をして、足をおろした際に、右足を強く地面に打ちつけた。 (右第5中足骨骨折) ■ 倒立をしようとしたが、足が上がらずそのまま床に両足を打った。 (両第3趾中足骨骨端線損傷) ■ 倒立をした際に勢いで前転し、マットに左足親指を強く打ちつけた。 (右拇趾末節骨骨折) ○ 倒立をしてバランスを崩してしまい、地面に足をおろした際に痛めた。 (右足関節外果骨折) ③ その他(状況がわからないもの、倒立等に含めたもの) ○ 倒立したときに、指を痛めた。(右手環指基節骨骨折) ○ 側転の練習をしていたときに、左腕を捻った。(左橈骨遠位骨端線損傷) ○ 両手を床につけ足を持ち上げてもらうとき、床についていた手を痛めた。 (左環指基節骨不全骨折)
- 17 - 5 その他「組み体操」をしている場面で (1)事故が発生する状況 ① 背中に乗った際、バランスを崩して転倒する。 ② 2人で1人を持ち上げる際に、持ち上げることができず、上の子が膝や足から 落下する。 ③ 2人で1人を持ち上げたときに、支持している者同士が離れすぎてしまい、上 の子が落下する。 ④ 2人で1人を持ち上げた後、しゃがむときに、タイミングが合わず上の子が落 下する。 ⑤ 複数で行う技等で、バランスを崩す。 ⑥ 走っていたり、転倒したりして、足を捻る、踏まれる。 ⑦ 石やガラスを踏む。 ⑧ 教室等で練習している際に、机などで打つ。 ⑨ 休憩時や待機中に遊んでいてけがをする。 (2)骨折をした事例(★手首の骨折 ■足指・甲の骨折 ○その他) ① 高さのある場所からの転倒、落下 ★ 二人技「木」で、下になる児童の背中からバランスを崩し落下し、左手をつ いた。(左橈骨遠位端骨折、左尺骨若木骨折) ★ 上の児童がバランスを崩して右手から落ちた。(右橈骨遠位若木骨折) ★ バランスを崩して落下した。(右手舟状骨不全骨折、右橈骨遠位部不全骨折) ■ 1段目の児童の上に登ろうとしてバランスを崩し打った。 (左第5趾基節骨骨折) ○ 上の児童がバランスを崩して、落下した。(尾骨骨折)
「組み体操」
をする
自分が バランスを崩して 転倒 落下 他の児童との タイミング、距離が 合わずに 落下、転倒 グループのタイミングと 自分のタイミングが 合わないと バランスを崩す 裸足で行う 不慣れな歩き方、走り方 地面の温度・異物 踏まれる 個別・グループ指導 待っている時間- 18 - ○ 「木」という技で他の児童の背中に乗っていたが床に落ち、顎と腰も打撲し た。(左腸骨不全骨折) ②~④児童同士で持ち上げる等 ★ 支える2人の持ち上げるタイミングが合わず、上げられる被災児童が、斜め に手から落下した。(右手関節橈骨遠位端骨端線損傷) ○ 三人技の飛行機で、支える2人がしゃがむタイミングが合わず、上にいた被 災児童が、両膝から床に落ちた。(右膝蓋骨不全骨折) ○ 3人組の技で持ち上げられた時にバランスを崩し、左体側を下にして落下し た際、咄嗟に左手を伸ばした。(左橈骨・尺骨骨折) ⑤ 複数で行う技等でバランスを崩す ★ 五人技でバランスを崩し地面に手をついた。(右橈骨遠位端骨折) ■ 「グライダー」の練習をしていて、バランスを崩して前に回転して落ち、右 足親指を強く打った。(両側足関節捻挫、右母趾骨折) ■ 二人技の練習時、上の児童がおりたときに被災児童の左足の上に乗り、痛み が続いた。(骨折の疑い) ○ 背中合わせで腕を組み、被災児童が相手の背中に乗り、回転する技で失敗し、 顎で胸骨を打った。(胸骨骨折) ○ 10人で行う技で、かがんでいる児童の上からおりるときにバランスを崩し、 着地した際に、腕を捻った。(左橈骨骨折) ⑥ 走る、足を捻る、踏まれる ■ 隊形移動中に走っていて、左足首を捻った。(左足薬指骨折) ■ 運動場を走っていて、右足を捻った。 (右母趾末節骨骨端線損傷) ■ 次の演技の移動のために走っているときに、誰かに右足を踏まれた。 (右第 3 趾末節骨不全骨折の疑い) ⑦での骨折事例はなし ⑧ 教室等での練習 ★ 教室内で組体操の補習をしていたところ、木製の台に両手をぶつけた。 (左橈骨遠位端骨折) ○ 他の児童と手をつないだまま手を下ろしたとき、床でぶつけた。 (左第5指若木骨折) ⑨ 休憩、待機中でのけが ★ 待機中に、マットへジャンプをしたところ、バランスを崩して右腕から倒れ て打った。(右尺骨遠位骨幹部骨折) ■ 休憩時、足を踏まれた。(右第 3 趾基節骨骨折) ■ 待機中に、左足小指を踏まれた。(左足小指骨折)
- 19 - Ⅲ 事故発生を防ぐために 1 「組み体操」の実施計画の作成にあたって (1)事故防止と実施への理解の観点からの計画 学校全体で、「組み体操」を実施する意義やねらい、事故防止の観点とともに、児 童生徒・保護者、地域からの理解等の観点を加え、指導体制、練習計画を検討しま す。 (例)学校・学年だより PTA役員会・学校運営協議会等 各種懇談会等 (2)事前のリスク想定による対応 <例1> 地域、学校の実態に基づいた「ヒヤリ・ハット」事例集を作成する。 <例2>「去年の子ども達はできた」は参考になっても、「児童生徒の実態に基づい たことにはならない」という観点で、今年の児童生徒に合った準備・計 画を行う。 <例3>「雨が続いて練習が予定通りに進まない…」を想定して、変更案を複数作 成する。 数週間の練習期間で行うのではなく、各学年の発達段階に合った指導の積み重ね の必要性を確認し、体育・体育的活動の指導・実施計画を再確認する。 (3)安全面を重視した補助者の配置、器具等の活用 ① 校内研修等において、県内での事故事例について共有し、学年等では補助者が 不足する場面を想定して、応援体制を含めた計画を行う。 ② マット等をはじめ器具・用具等の整備を行う。 (4)危機管理体制の確認 子どもの骨の数と大人の骨の数は、異なります。複数の骨がくっついて大人の骨 になっていくので、骨が小さかったり、柔らかったりします。前ページまでにある 「骨端線損傷」や「若木骨折」は子ども特有の骨折と言われています。 また、成長期であるので、自己治癒力も高い反面、骨折等を放置してしまうと曲 がったままになることもあります。 事故発生時に適切な対応ができるよう、医療機関への搬送体制をはじめ、事故発 生に備えた体制を確認します。
学校
児童生徒
保護者
地域
安全に 配慮した計画 こわいなあ 身に付け させたい力 配慮した計画 させたい力 こわいなあ共通理解
- 20 - 2 「組み体操」の実技指導にあたって (1)低学年から経験させたい感覚つくり ① 足指の運動 裸足で「組み体操」を行う場合が多いですが、運動場等で「裸足になること」に 慣れていない児童もいます。足の裏の一部しかつけない歩き方や走り方をする、足 の指を上手く使えない児童もいます。 <例1>足指でタオルつかみ <例2>足指じゃんけん <例3>椅子に座った状態で、足指歩き <例4>椅子や机等を使って、両手で支えながら足指歩き <例5>立った状態で、片足ずつ交互に足指歩き いきなり両足揃えて足指歩きをすると、足指の捻挫や骨端線損傷等になる ことも考えられますので、少しずつ段階をあげて経験させる必要があります。 ② 肩車 「肩車」をされた経験が少ないと、「怖い」という意識が強く働き、体に余分な 力が入ってしまうことがあります。「高さ」が変わって、見える景色も変わる楽し さをはじめ、地面に足がついてない中でのバランス感覚などを楽しみながら経験 できるよう、お家の方にお願いする方法もありますし、できる教員等がする方法 もあります。 <例1>「親子エクササイズ」のような家庭への宿題や紹介 <例2>ジャングルジムや肋木などにつかまって、友達に肩車してもらう また、同じ体重でも「重く」感じる子、「軽く」感じる子もいます。体重や身長 を考慮して、組み合わせても上手くいかないときは、実際に指導者が子どもたち を肩車して、体感の重さを知ることも大切です。 ③ 支持する運動 (ア)「組み体操」における事故防止を直接の目的として行うのではなく、楽しく運 動しながら体の基本的な動きを身に付けることが重要であることを前提に、体 育の授業における、低・中学年での体ほぐし・多様な動きをつくる運動(遊び)、 「多様な動きをつくる運動(遊び)」のQ&A Q.1 なぜ小学校低学年からが規定されたのですか? A 現代の子どもたちは、かつて日常の生活や遊びの中で身に付けていた動きが身に 付いていないという指摘があります。将来的にスポーツの技能や体力を高めるため には、この時期に様々な体の基本となる動きを身に付けることが必要です。そのた め「体つくり運動」の内容として「多様な動きを作る運動(遊び)」が加えられま した。 「多様な動きをつくる運動(遊び) 文部科学省」パンフレットより
- 21 - 【多様な動きをつくる運動(遊び)パンフレット】 器械・器具を使った運動遊びや器械運動で 子どもに身に付けさせたい動きや力は何か を再度確認する必要があります。 例えば、「這う、歩く、走る」などの体を 移動する運動(遊び)において、進む方向 に目線を向けることや手の着き方、腕の使 い方が動きのポイントになります。這うと いう動きなどを、いろいろな動物になって 歩いたり、友達とペアになり相手が変化を つけて移動していくのをまねしたりするな ど、楽しい運動遊びを行いながら、自分の 体を支持する動きを身に付けさせることが 大切となります。 (イ)以下の資料等を参考に学習内容等を再度確認する。 ・「小学校学習指導要領解説 体育編」文部科学省 ・「多様な動きをつくる運動(遊び)パンフレット」文部科学省 ・「小学校体育(運動領域)まるわかりハンドブック」文部科学省 ・「学校体育実技指導資料 第7集 体つくり運動」文部科学省 ・「学校体育実技指導資料 第 10 集 器械運動指導の手引き」文部科学省 (ウ)「解説」に例示されている運動 ・「小学校体育(運動領域)まるわかりハンドブック」低学年より 【固定施設を使った運動遊び】 【マットを使った運動遊び】 支持する感覚つくり
- 22 - 【多様な動きをつくる運動(遊び)パンフレット】 【跳び箱を使った運動遊び】 またいで支持して体を浮かせる感覚、腕を支点に体重を移動させる感覚 手をついて跳び乗る感覚 ・「小学校体育(運動領域)まるわかりハンドブック」中学年より 【器械運動】肋木を使った倒立→壁倒立⇒(発展)補助倒立 中学年での、「多様な動きをつくる運動 (エ)力試しの運動」では、人を運ぶ、支える 動きなどで構成される運動が例示されてい ます。 力の入れ具合を調整しながら自分の体を コントロールして人を押したり引いたり、 物を引いたり持ち運んだり、人や物、自分 の体を支えたりする動きを身に付ける運動 です。力を入れたり抜いたりするなど、多 様な状況に応じて力の入れ具合を加減する ことができるようにします。
- 23 - 【多様な動きをつくる運動(遊び)パンフレット】 ④ 二人組やそれ以上の複数でする運動 (ア)「組み体操」における事故防止を直接の目的として行うのではなく、いろいろ な手軽な運動や律動的な運動を行い、体を動かす楽しさや心地よさを味わうこ とによって、 自分や仲間の体の状態に気付き、 体の調子を整えたり、 仲間と 交流したりする運動として体ほぐしの運動があります。 また、多様な動きをつくる運動遊 びの学習を行う場合、体ほぐしの運 動で取り上げている運動と同じよう な運動遊びを取り上げることがあり ますが、多様な動きをつくる運動遊 びには「動きを身に付ける」という ねらいがあります。相手の体に関心 をもつ、相談しながらタイミングを 合わせる、相手の力に合わせてバラ ンスをとるな どの意識も身に付け させていきたいです。 (イ)「解説」に例示されている運動 ・「小学校体育(運動領域)まるわかりハンドブック」低学年より ・「小学校体育(運動領域)まるわかりハンドブック」 低学年より 中学年より (ウ)「子どもに経験させたい運動の世界20」を活用する。
- 24 - (2)「ピラミッド」での事故を防ぐために ① リスクの整理 ○ 支えきれなくなって、崩れる。 ○ 落下する、踏まれる。 ★手首の骨折、■足指・甲の骨折が多い。 ② 崩れる前に中断する (崩れたときに、上の子に乗られる、足を打つ、手をつく、踏まれる) 腕の力だけではなく、バランスよく支え合っているときは、安定感がありま す。手首と肩の位置関係、お尻と膝の位置関係などを見取りながら、安定感を 求める必要があります。 「大丈夫かな?完成までがんばれ!」ではなく、「大丈夫かな?」はリスクを発 見したときです。中断させて、安定しない要因を見つけることが大切です。 安定した形になるよう「右手を1cm横にずらしたらどう?」「膝を3cm下 げてみて」「指先に力が入っているから手の平全体で支えてみたらどう?」「2 人の交差している腕の前後を変えてみたらどう?」など指導者が声かけをし、 児童生徒同士で互いに声かけができるようにすることも必要です。 (ア)あと何秒支え続けられるかの見通しをもつ。 ・「今」から「完成」「おりる」まで残りどれくらいの時間がかかるのかを指 導者と児童生徒が意識するようにする。 ・表情、手の震え、体の揺れを見取り、完成が近くても中断させる。 ・「もうだめ!」と崩れるのではなく、崩さないように、子どもたち同士で伝 え合ってやり直せる手順等を提示する。 (イ)手や膝の置く位置を見取る、意思疎通を図る。 ・「痛み」が強くては、支えることができないので、初めの段階で下の子にと って「痛くない場所」、上の子にとって「支えやすい場所」を互いに見つけ 合う時間を設定する。 ③ 上がるときは、バランスが崩れやすいという意識をもつ 乗る子にだけでなく、反対側にいる子にもわかるように声をかけることで、 一人ひとりが、バランスが崩れることに備えたり、どの段階まできているの か知ることができ、終わりまであとどれくらいなのか考えることができます。 無意識に上がるときは、上げやすい方の足から上げることが多いと思いま す。二歩目はどちらかというと上げにくい足になるので、1段目から2段目 に上がるときに上手く上がれないときは、左右の足を変えてみる方法もあり ます。 足の力は下方向に働きかけることが多いですが、手の力は横方向、特に上 がる子側にかかるときがあります。横方向に揺れるということはバランスを
- 25 - 崩すことになるので、できるだけ足で上がるように、手を使うときも引っ張 らないような意識を持たせることも必要です。 (ア)「上がるよ」「おりるよ」の声かけを行う。 ・上がる子も、支える子も互いに声をかけあい、次にかかる負荷に備える。 ・足を乗せる場所、手を置く場所を互いに確認し合い、上がりやすく、支え やすい場所を見つける時間をもつ。 (イ)「上りやすい」「おりやすい」向き、足運びで行う。 ・上げた足に体重をかけて上がる子、軸足に体重を残して上がる子などがい るので、それぞれの体重がかかるポイントに、支えられる子を配置する。 ・乗りやすい姿勢になるように上がるための足の運び方、乗った姿勢からお りやすい足の運び方、右側から上がりやすい、左側から上がりやすいなど を試す、見つけるなどの活動を行う。 ④ おりるときも、バランスが崩れることを意識する (ア)後ろ向きにおりるときも、下の子の足の位置を確かめる。 (イ)安定したピラミッドをつくり、おりる練習をしっかり行う。
- 26 - (3)「タワー」での事故を防ぐために ① リスクの整理 ○ しゃがんだ姿勢から立ち上がるときにバランスが崩れる。 ○ 立った姿勢からしゃがむときにバランスが崩れる。 ○ 後方に落下することが多い。 ★手首の骨折、◆肘の骨折が多い。 ② 安定するまで一つ一つ繰り返す (ア)上に乗せて立った状態をイメージしながら組んでからしゃがみ、立つ。 ・かけ声をそろえて、立つ、しゃがむときの速さをそろえる。 (イ)1段目の上に2段目を乗せて立ち、しゃがむ。 ・かけ声をそろえて、立つ、しゃがむときの速さをそろえる。 ・1段目が立ち上がるときに、2段目の子が落下しないように補助する。 ・1段目が立ち上がったあと、2段目の子の足の位置を調整する。 (ウ)1段目の上に2段目を乗せて立ち、2段目が立ち、しゃがむ。 ・2段目が立った後、一番上の子が立ち上がり、しゃがむまでの時間をイメ ージし、かかる時間を体感する。 ・2段目がしゃがみ、1段目がしゃがむ。 (エ)1段目なしで、2段目の子たちが、上に乗せて立った状態をイメージしな がら組んでからしゃがむ、立つ。 ・かけ声をそろえて、乗せる子と乗せない子の速さを調整する。 (オ)1段目なしで、2段目の子たちの上に3段目の子を乗せて立ち、しゃがむ。 ・かけ声をそろえて、立つ、しゃがむときの速さを調整する ・2段目の子たちが立ち上がるときに、3段目の子が落下しないように補助 する ・2段目の子たちが立ち上がったあと、3段目の子の足の位置を調整する (カ)2段目の子たちは、1段目に乗っている状態の足の位置で、(エ)(オ)を 行う。 ・より実際に近い状況で(エ)(オ)を行う。 (キ)1段目、2段目、3段目としゃがんで組む。 ・2段目や3段目が落ちないように補助する。 ・3段目が上がるとき、おりるときの足の位置、手の位置を確認して組む。 ・かけ声をそろえて、1段目が少しだけ立ち上がる動きを行い、2段目や3 段目の子たちのバランスが崩れないか確認する。 ・3段目がおり、2段目がおりる。
- 27 - (ク)1段目、2段目、3段目としゃがんで組み、1段目が立ち上がり、しゃが む。 ・1段目が立ち上がる、しゃがむときに、2段目・3段目が落下しないよう に補助する。 ・かけ声をそろえて、1段目が立ち上がったあと、1段目の子たちの膝・腰・ 背中、腕の組み方などの状態を確認し、調整する。 ・1段目が立っている時間を少しずつ長くして、2段目より上は立たずに、 1段目がしゃがむ(「はい、2段目がたつよ。かかる体重がかわるよ。」な ど上の状態を想像させながら長くしていく。 ・かけ声をそろえて、1段目がしゃがみ、3段目がおり、2段目がおりる (ケ)1段目、2段目、3段目としゃがんで組み、1段目が立ち上がり、2段 目が立ち上がり、安定していたら3段目も立ち上がり、順にしゃがむ。 ・2段目、3段目が落下しないよう補助する。 ・2段目が立ち上がったときに、安定していなかったら、3段目を立ち上げ させない。(運動会当日も) ・無理に全体の指示(笛、太鼓、音楽等)に合わさせず、個々のタワーのペ ースを尊重する。 ・2段目の子がおり、1段目の子が立ち上がるまで、組んでいる子たちも、 補助者も油断をしない。(拍手をしていると万が一のときの動作が遅れる) ③ 「組み体操」の中の順番を配慮する ・1段目の子たちにかかる負担を考慮して、前後の種目を組む。 ・ピラミッドの一番下をする子とタワーの一番をする子が同じ場合に、連続 して行うと負担が大きくなることを考慮する。
- 28 - (4)「肩車・サボテン」での事故を防ぐために ① リスクの整理 ○ 上げられず、腰等を痛める、上の子が前に倒れる。 ○ 立ち上がるとき、肩車になったときに、バランスを崩して転倒する。 ○ サボテンの形になるときに、下の子が頭を抜けずにバランスを崩し、転倒 する。 ○ サボテンをしているとき、バランスを崩し、転倒する。 ★手首の骨折が多い。 ② 肩車からサボテンは易しくないという意識をもって指導する ③ 上にいる子が傾きにくい姿勢であげるよう指導する (ア)片膝をついて上方へあげる。 (イ)両足をそろえて、手で自分の膝を押すように上げる子には、時間をかけて 上方へ上げることに慣れさせる。 ・上げる子を軽くする。 ・上がる子が前方に倒れないように、肋木やジャングルジムなどにつかまら せる、補助者が支持する状態で練習する。 ④ 床で前方・後方に支え合う ・膝より上をもつ。 ・下の子が後方に傾いてから上の子が前方に 傾く、上の子が前方に少し傾いてから下の 子が後方に傾いてから互いにバランスを取 るなど、やりやすい方法を試す。 ・上の子が元の姿勢にもどるときと、下の子 が肘を曲げるタイミングをつかむ。 ⑤ グループ等で前方、後方に補助者をつけて練習する (ア)安定してできるようになるまで、補助者をつけて行う。 (イ)どちらに倒れるか分からない状態のときは、前後に補助者を配置し、後方 に倒れないようにする。 (ウ)前方に倒れる要因が、②(イ)のような上げ方にある場合は時間をかけて 慣れさせるか、上げる子を軽くする。 (エ)上の子が怖がっている場合は、安定して持ち上げることができる指導者等 が下になり、余分な力が入らないようにする。 (オ)肩車の姿勢から(サボテンに移行せず)安定してしゃがむことができるよ うになるよう、補助をする。 (カ)補助をしながら上の子が下の子に足をかけるタイミング、外すタイミング をつかませる。
- 29 - (キ)肩車からサボテンに移行するときに、下の子が頭を抜きやすくできるよう 上の子が立てるように補助する。 (ク)サボテンに移行できたら、補助をつけながら、 下の子が上の子を支えるように、安定した着地が できるようにする。 (ヶ)着地ができるようになったら、補助をつけながら、 下の子が肘を伸ばしながら後傾する。 (コ)上の子は無理に前方に倒れようとせず、下の子は、肘を伸ばしたまま体を 起こさないように気を付ける。 ⑥ 個別練習をする場の工夫 (ア)前後にセーフティマットを置く。 (イ)後方にマットを積み重ねて、後方に倒れる恐怖感をなくす。
- 30 - (5)「倒立」での事故を防ぐために ① リスクの整理 ○ 補助倒立ができない、倒立した子を支えられない。 ○ 着地するときに足をうつ。 ■足指・甲の骨折が多い。 ② 低学年からの指導内容を確認し、児童の発達段階に合わせて適切に指導する (ア)「学校体育実技指導資料第 10 集 器械運動指導の手引き」活用する。 ・第3章 技の指導の要点 第1節 マット運動(P130~131)
- 31 - ・第2章 実践編 第1節 小学校の実践例(P66) ・第2章 実践編 第1節 小学校の実践例(P68) ○壁登り倒立 ○両手・目線の目印 ③蹴った足でおりるよう指導する 補助倒立ができない子は、脚をバ タバタさせる、両膝から落ちてしま うことがあります。脚をバタバタさ せていると補助する側も受け止めにくくなります。 (ア)どちらが振り上げ足か確かめ、左図のように両手を ついて、振り上げ足を少し浮かせ、踏み切り足を 5cmあげて、振り上げ足はそのままで、踏み切り足 で着地する。 (イ)片足でトントンとするイメージで5cm、10cm と少しずつ踏み切り足を高くしていき、自分の体重が手首に乗る感覚、肩が 少し前になるイメージなどをつかむことができるように繰り返します。
- 32 - ④ 支持をする感覚つくり運動を十分に経験させる 前掲P20~22参照 ⑤ 片脚ずつ引き上げるように補助する (ア)踏み切り脚をほとんど使わずに、振り上げ脚を引き上げて(前ページ参照)、 もらい、踏み切り脚をそろえ、補助倒立し、踏み切り脚を曲げて、振り上げ 足を支えてもらいながら、踏み切り脚から先に静かに着地する。 (イ)片足でトントンしているときに、タイミングよく振り上げ脚の膝を引き上 げる。 (ウ)補助で脚を上げてもらったあと、片足ずつ着地するようにする。 ⑥ 壁倒立の指導を行う(前ページ参照) (ア)自分の体が支持できない子、片足トントンでお尻が上がりにくい子は壁に ぶつかっていく可能性があるので、習熟段階を把握したうえで、挑戦させる。 (イ)壁倒立ができるようになってきたら、支えてもらいやすいように、壁に当 たる音が小さくなるように意識させる。 ⑦ 支持する、支持してもらう (ア)足をバタバタさせてしまう子は、指導者が補助をする。 ・ マット等を使い安全に配慮する。 ・ 踏み切り足で着地できない児童が床からマットに向かって倒立すると、 着地のときに床で足を打ちつけることになるので児童の実態に合わせてマ ットを配置する。 (イ)どちらの足が振り上げ脚なのか確認する。 (ウ)振り上げ脚を支えてもらう部位を確認する。 ・足首を持とうとする顔を蹴られることがあり、また、足首をつかまれると、 膝が曲がり、えび反りのような形になることがあります。 ・倒立の習熟度が低い場合は、膝から太ももをささえてもらう。 (エ)踏み切って、振り上げ脚を支持してもらい、踏み切り脚を振り上げ脚にそ ろえ、やや顔を上げ補助倒立の形になり、踏み切り脚を曲げて、踏み切り足 から先に着地する。 (オ)ペアの実態にあわせ、横から支持して、又は、ななめ45度での支持して 回り込む、正対して支持するなど適切に選択しているか確認する。 (カ)回転方向に支えてもらう、両足をくっつけるように支えてもらうなど、支 えてもらいやすい方法を試す。
- 33 - (6)その他「組み体操」での事故を防ぐために ① リスクの整理 ○ 慣れない裸足。 ○ バランスを崩して転倒、落下。 ○ ペア等で、距離感、タイミングが合わない。 ★手首、■足指・甲の骨折が多い。 ② 裸足で歩く、走る、足指の動きを高めるなど経験をさせる P20「(1)低学年から経験させたい感覚つくり」 ③ 熱中症対策、地面の温度にも配慮し、足の裏のやけど等の対策をする ④ 自分の体のどこを支えてもらいたいかを伝える、ペア等の子のどこを支える といいか考えるよう指導する (ア)互いのちょうどいいところを確かめ合う。 ・左図のように、手押し車をするときに足首に近 い方を持って進むと、下の子は、足首だけが上 になり、膝から落ちてしまうことがあります。 膝に近い方、膝より上の方を持つと、下の子が 進みやすいやすい ことがあります。反 対に、足を持つ側の 子は、膝より上にい くと、持ちにくくな ります。ペアのバランスが大切です。 ⑤ それぞれの種目において、自分の動きと相手の動きの関係を理解しているか、 補助をしながら、確認する <例:三人組の飛行機> (ア)上の子が、肘を伸ばすときと脚を支える子のあ げるときのタイミングを確かめる。 ・肘を伸ばすと同時に脚を上げる。 ・肘を伸ばしてから脚を上げる。 ・脚を上げてから肘を伸ばす。
- 34 - (イ)下の2人が立ち上がるとき、支えているとき、しゃがむときに、互いの 距離が、上の子がバラスよく支持できるような距離感を補助しながらつか ませる。 ・下で支えている子同士が離れすぎて、上の子の手の位置が肩より前方に なり、体が伸びて落ちないように、上の子や下の子を補助する。 ⇒⇒⇒ ・下で支えている子同士が近づきすぎて、上の子の手の位置が肩より後方に なり、手で支えられなくなり、前の子におおいかぶさることがないように、 上の子や下の子を補助する。 ⇒⇒⇒ 小学校低学年からの体育の授業での系統だった指導、身に付けさせたい力を明らかにし た体育の授業実践、児童生徒の実態に即した体力向上の目標設定・学校全体での取組等、 児童生徒の体力等を踏まえた計画的な指導が必要です。 今までに児童生徒がどのような運動経験をしてきたか把握し、一人ひとりの体力の違い をどう組み合わせるか、どのような補助をすると効果的かなど、児童生徒の活動内容に応 じた安全対策を講じることが求められます。 各学校で、一人ひとりが取り組んできた実践を交流し、指導資料等を活用し、「組み体操」 で取り組む種目の一つ一つの動きを丁寧に見直し、運動会等の当日、練習でけがをして見 学する児童生徒をなくしていきましょう。 地道な指導の積み重ねが、きっと、子どもたちの笑顔につながります。