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密教文化 Vol. 1975 No. 111 004栂尾 祥瑞「ユングのマンダラ・シンボル――外国人のみた密教 (一)―― P53-76」

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一 外 国 人 の み た 密 教 ( 一 )

-栂

序 カ ー ル ・ グ ス タ ー フ ・ ユ ン グ

(Garl Gustav Jung)

の 深 層 心 理 学 が 二 十 世 紀 中 葉 の 欧 米 の 東 洋 学 に 関 与 す る 学 者 達 に 与 え た 影 響 は 甚 大 で あ っ た。 彼 か ら 直 接 的 に 影 響 を う け て い な い 学 者 で も、 多 か れ 少 か れ、 ユ ン ギ ァ ン (Jungian) の 深 層 心 理 学 を 関 心 の 対 象 に し な い わ け に は い か な か っ た。 例 え ば、 現 在、 欧 米 の 仏 教 学 プ ロ パ ー の 第 一 人 者 の 一 人 で あ る コ ン ヅ (Conze, Edward) は、 そ の 著 ﹃ 仏 教 一 本 質 と 展 開 一 ﹄ ( 一 九 五 一 年 ) の ﹁ タ ン ト ラ の 行 法 ﹂ の 章 を、 ﹁ 最 近、 ユ ン グ は、 彼 の 患 者 の 或 る 者 が 自 発 的 に 描 く 絵 画 が 仏 教 の マ サ セ ク ル ン ダ ラ に 等 し い も の で あ る こ と を 見 つ け だ し た。 周 円 と 四 角 は、 ユ ン グ に よ る と、 マ ン ダ ラ の 本 質 的 な 要 素 で あ り、 ユ ン グ 自 身 は 仏 教 の 禅 定 法 を 理 解 し て い な い け れ ど も、 タ ン ト ラ 的 伝 承 と 無 意 識 の 心 理 学 と を 統 合 し よ う と す る 彼 の 試 み は、 (1) こ の 分 野 ︹ す な わ ち、 タ ン ト ラ の 行 法 ︺ の 将 来 の 研 究 の た め に は 効 果 の あ る 出 発 点 で あ る ﹂ と 結 ん で い る し、 チ ベ ッ ト 学 の 泰 斗 ト ゥ ッ チ (Tucci, Giuseppe) も、 そ の 薯 [ ﹃ マ ン ダ ヲ の 理 論 と 実 修 ﹄ ( 英 訳 一 九 六 一 年 ) に、 ﹁ 私 は 精 神 分 析 学 者 の 研 究 特 に ユ ン グ の 研 究 を 知 ら な い わ け で は な い。 ユ ン グ の 研 究 は (2) 人 間 の 思 考 に 将 来 な が く 不 滅 の 痕 跡 を 残 す と 思 わ れ る ﹂ と 述 べ て い る。 そ し て、 こ の 書 に は ﹁ 特 に 近 代 の 潜 在 意 識 の 心 理 学 を 参 照 し て ﹂ と 副 題 が つ い て い る こ と に 注 日 す べ き で あ る。 ユ ン グ に は、 彼 の 心 理 学 を 東 洋 の 学 に 関 連 づ け た 著 作 と し て は、 神 智 学 者 エ ヴ ァ ン ス ・ヴ エ ン ツ (Ev-Wen, W.Y.) の ﹃ チ ベ ッ ト の 解 脱 書 ﹄ や ﹃ チ ベ ッ ト の 死 者 の 書 ﹄ に 附 し た ユ ン グ の マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル

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密 教 文 化 心 理 学 的 註 解 や、 鈴 木 大 拙 博 士 の ﹃ 禅 入 門 ﹄、 イ ン ド 学 者 ツ イ ン マ ー (Zimmer, H.) の ﹃ 自 我 へ の 道 ﹄、 シ ナ 学 者 ヴ イ ル ヘ ル ム (Wilhlem, R.) の ﹃ 易 経 ﹄ や ﹃ 金 華 宗 旨 ﹄ の 独 訳 へ の 序 文 と 註 解、 そ し て 他 に ﹁ ヨ ー ガ と 西 洋 ﹂、 ﹁ 東 洋 的 瞑 想 の (3) 心 理 ﹂ な ど の 論 文 が あ る。 ユ ン グ の ヨ ー ガ へ の 深 層 心 理 学 的 ア ブ ロ ー チ は、 ツ イ ン マ ー の イ ン ド 学 の 成 果 に、 又、 彼 の 中 世 錬 金 術 研 究 へ の 志 向 は、 ヴ イ ル ヘ ル ム の 道 教 経 典 ﹃ 金 華 宗 旨 ﹄ の 独 訳 な ど に 多 少 と も 影 響 さ れ た も の で あ る が、 我 々 は 密 教 と 一 番 関 係 の 深 い ユ ン グ の マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル に 特 別 の 考 慮 を は ら う 必 要 が あ る。 特 に 欧 米 の 世 界 に 始 め て 広 く ﹁ マ ン ダ ラ ﹂ の 言 葉 が 知 ら れ る よ う に な っ た の は、 イ ン ド 学、 仏 教 学、 チ ベ ッ ト 学 の 学 者 た ち の み に よ る の で は な く、 む し ろ ユ ン グ や ユ ン ギ ア ン と 呼 ば れ る 人 々 に よ る も の で あ る こ と、 そ し て ユ ン グ の 心 理 学 の 全 体 系 は、 ユ ン グ の 最 も 信 頼 す る 弟 子 の 一 人 で あ る ヤ コ ビ (4) (Jacobi, J.) が い う 如 く、 マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル の 深 い 解 釈 の 上 に 成 り 立 っ て い る と い う こ と を 認 識 し て お く 必 要 が あ る。 ユ ン グ の 多 く の 著 述 や 論 文 の な か で、 特 に マ ン ダ ラ を 取 扱 (5) っ て い る の は ﹃ 心 理 学 と 錬 金 術 ﹄ の な か の ﹁ 個 体 化 過 程 (indivduation process) の 研 究 ﹂ ﹁ マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ リ ズ ム に 関 し て ﹂ ﹁ マ ン ダ ラ ﹂ の 各 章 節 で あ る。 こ の ﹃ 心 理 学 と 錬 金 術 ﹄ の 書 の 日 的 は、 ユ ン グ 自 身 が い う 如 く、 マ ン ダ ラ ・ シ (6) ン ボ リ ズ ム の 呈 示 に 外 な ら な い。 一 九 三 七 年 の エ ー ル 大 学 の (7) テ リ ー 講 演 (Terry Lecturtes) で あ る ﹃ 心 理 学 と 宗 教 ﹄ で は 近 代 的 マ ン ダ ラ と 伝 統 的 マ ン ダ ラ が 比 較 さ れ、 そ れ ら と 宗 教 と の 関 係 が 述 べ ら れ て い る。 一 九 四 三 年 の 三 月 か ら 五 月 に か (8) け て、 ス イ ス 各 地 で な し た 講 演 ﹃ 東 洋 的 瞑 想 の 心 理 ﹄ で は、 ﹁ 観 無 量 寿 経 ﹂ の 観 法 を ヨ ー ガ と し て 掴 え、 そ の 観 法 の 対 象 を マ ン ダ ラ と し て、 そ の 機 能 が 論 じ ら れ て い る。 ヴ イ ル ヘ ル ム の ﹃ 金 華 宗 旨 ﹄ の 註 解 で は、 ﹁ 金 華 ﹂ は 光 で あ り、 道 ( 弓 き ) で あ り、 マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル に 外 な ら ず、 ユ ン グ の こ の 註 解 の 目 的 は、 東 洋 と 西 洋 と の 間 の 心 理 学 的 理 解 の 橋 わ た し を し (9) よ う と す る に あ る。 現 在、 ユ ン グ の マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル の 解 釈 は、 諸 学 者 に よ っ て 全 面 的 に 承 諾 さ れ 許 容 さ れ て い る と は 言 い が た い。 し か し、 そ れ は そ れ と し て、 そ の 解 釈 を た と え 概 括 的 に で も 理 解 し て お く こ と は 大 変 に 必 要 な こ と で あ る し、 密 教 学 の 将 来 へ の 新 し い 志 向 や 眺 望 の た め の ス テ ッ プ 形 成 に 役 立 つ か も 知 れ

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な い。 一 ユ ン グ の マ ン ダ テ ・ シ ン ボ ル を 理 解 す る た め に は 彼 の ﹁ 分 (10) 析 心 理 学 ﹂、 所 謂 ﹁ 深 層 心 理 学 ﹂ の 基 本 的 立 場 や 大 要 を、 或 る 程 度、 鮮 明 に し て お く 必 要 が あ る だ ろ う。 先 ず 注 意 し な け れ ば い け な い こ と は、 ユ ン グ の 言 は、 時 と エ ン ピ リ し て 哲 学 的、 宗 教 的 な 響 き が あ る が、 彼 自 身 は 徹 頭 徹 尾、 経 験 シ ス ト 主 義 者 で あ っ て、 哲 学 者 や 宗 教 学 者 で は な い と い う こ と で あ サ イ カ エ ト リ ス ト る。 彼 の 分 析 心 理 学 は 彼 の 五 十 余 年 に わ た る 精 神 病 医 と し て の 臨 床 経 験 に 基 づ い て お り、 人 間 の 心 理 を 解 明 す る こ と は 種 々 の 心 の 病 い の 治 療 に 役 立 た せ る た め に 外 な ら な い と い う 大 変 に プ ラ グ マ テ ィ ッ ク な 日 的 を 持 っ て い る と い う こ と で あ る。 ユ ン グ の い う ﹁ 心 理(psyche)﹂ は、 我 々 が 並 日 通 に い う ﹁ 魂 (Seele)﹂ や ﹁ 心 (mind)﹂ を 包 括 し、 そ れ よ り も 広 い 意 サ イ キ ツ ク 味 で、 意 識 と 無 意 識 の 両 者 を 含 め た す べ て の 心 理 的 プ ロ セ ス (11) の 全 体 で あ る が、 彼 の 学 は 経 験 的 な 心 理 事 実 と し て の 心 理 現 象 が 対 象 で あ り、 そ の 分 析 が 狙 い で あ っ て、 心 理 現 象 の 背 後 に あ る も の を 探 ぐ っ た り、 心 理 そ の も の を 哲 学 的、 或 は 形 而 上 学 的 に 問 お う と す る も の で は な い。 こ の 意 味 で は ユ ン グ の 立 揚 は ﹁ 現 象 学 的 ﹂ な の で あ る。 つ ま り、 現 象 の み が 問 題 で あ っ て、 現 象 を 生 み だ し た も の、 或 は 現 象 の 背 後 に 存 す る も の は 考 慮 に い れ ず、 価 値 判 断 か ら ﹁ 現 わ れ る も の ﹂ を ﹁ 括 弧 入 れ ﹂ し て、 そ の 事 実 の み を 間 う の で あ る。 こ の 彼 の 現 象 学 的 態 度 は 彼 の 経 験 主 義 的 な 立 場 と 基 を 一 に す る も の で あ っ て、 そ れ は 又、 宗 教 を 取 扱 う 彼 の 基 本 的 立 場 で も あ る。 彼 に と っ て の 宗 教 の 取 扱 い は、 ﹁ ヌ ミ ノ ー ス ム (numinsum)﹂、 す な わ ち 任 意 な 意 志 行 動 に よ っ て 原 因 さ れ (12) な い 動 的 な 作 用 や 効 果 を、 注 意 深 く 綿 密 に 観 察 す る こ と ﹂ で あ る。 こ こ で い う ﹁ ヌ ミ ノ ー ス ム ﹂ は、 オ ッ ト ー (Orto, R.) (13) が い う そ れ と 同 義 で あ っ て、 ﹁ 宗 教 ﹂ の 語 は ﹁ ヌ ミ ノ ー ス ム (14) の 体 験 に よ っ て 変 化 さ れ た 意 識 の 特 別 の 態 度 ﹂ を 指 示 す る も の で あ る。 ﹁ 私 は 経 験 主 義 者 で あ る か ら、 い つ も 現 象 学 的 立 場 そ の も の を 固 執 す る。 ⋮ 宗 教 は 非 常 に 重 大 な 心 理 学 的 局 面 で あ る 限 り に お い て、 私 は そ れ を 純 粋 に 経 験 的 な 見 地 か ら 取 扱 う。 つ ま り 私 自 身 を 現 象 の 観 察 に 制 限 し て、 如 何 な る 形 而 上 学 的、 或 は 哲 学 的 考 慮 を も さ し ひ か え る の で あ る。 ・ ・ 心 理 学 が、 例 え ば 処 女 降 誕 の モ テ ィ ー フ を 語 る 時 に は、 そ の ユ ン グ の マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル

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密 教 文 化 よ う な 理 念 が 存 在 す る と い う 事 実 の み が 考 慮 さ れ る の で あ っ て、 そ の よ う な 理 念 が 如 何 な る 意 味 で 真 実 で あ り、 或 は 虚 偽 (15) で あ る か の 問 題 は 考 慮 さ れ な い の で あ る ﹂ と、 彼 自 身 語 っ て い る よ う に、 ユ ン グ の 立 場 は ﹁ 徹 頭 徹 尾、 現 象 学 的 で あ る。 フ ア ク ト す な わ ち、 で て く る も の、 で き ご と、 体 験、 ご 言 で い え ば 事 実 (16) を 問 題 と す る ﹂ の で あ る。 夢 の 分 析 は ユ ン グ を 含 め る 経 験 心 理 学 (empirical paychology) の 最 重 要 課 題 で あ る が、 夢 は ユ ン グ に お い て は、 フ ロ イ ド (Freud, S.) に お け る 如 く、 そ の 背 後 に 何 か が 注 意 深 く か く さ れ て い る 単 な る 表 面 的 現 わ れ で は な く し て、 夢 は そ れ が あ る ま ま の も の で あ っ て、 そ れ 自 (17) 体 が 解 釈 な の で あ る。 ユ ン グ の 心 理 学 の 対 象 で あ る 心 理 現 象 は、 実 在 の 人 間 の 心 サ イ キ 理 的 事 実 で あ る。 そ し て こ の 心 理 的 事 実、 つ ま り 心 理 は 二 つ の 領 域 よ り 成 立 っ て い る。 そ れ は 意 識 と 無 意 識 で あ っ て、 両 者 は 互 に 相 補 的 で あ り、 特 性 と し て は 相 剋 的 で あ る。 換 言 す る と、 心 理 的 事 実 と は 意 識 と 無 意 識 の 対 立 相 剋 が 動 的 な 緊 張 関 係 に あ り、 し か も 両 者 が 相 補 的 関 連 に あ る も の で あ る。 従 っ て ノ ー マ ル な 心 理 的 生 (psychic, life) と は、 こ の 相 矛 盾 し 対 立 す る 意 識、 無 意 識 の 動 的 相 剋 が 相 補 的 に 働 い て 調 和 を 保 サ イ コ ロ シ ス っ て い る も の で あ り、 そ の 調 和 が 破 れ た の が、 所 謂 精 神 病 や ノ イ ロ ー ゼ で あ る。 我 々 の 自 我 (ego) は、 こ の 意 識 と 無 意 識 の 両 者 に ま た が っ て い る の で あ る が、 意 識 は 無 意 識 の 無 限 の 大 海 の な か に た だ よ う 小 さ な 島 の 如 く で あ っ て、 全 心 理 の ほ ん の 小 さ な 部 分 を エ ゴ (18) 占 め て い る に す ぎ な い。 自 我 は ﹁ 意 識 の 主 体 ﹂ で あ っ て、 そ エ ゴ (19) の ﹁ 自 我 と 心 理 的 内 容 の 関 係 を 保 つ 機 能、 或 は 活 動 ﹂ が 意 識 で あ り、 ﹁自 己 と の 関 係 が、 自 己 に よ っ て、 そ の も の と し て (20) 感 覚 さ れ な い も の ﹂ が 無 意 識 で あ る。 無 意 識 は 意 識 の 深 層 に 横 た わ り、 意 識 よ り 古 い ﹁ 本 源 的 素 材 (primal datum)﹂ で (21) あ っ て、 そ こ か ら 意 識 が 常 に 新 し く 昇 っ て 来 る も の で あ る。 そ の 深 層 に あ る 無 意 識 の、 分 析、 理 解 が、 ユ ン グ の 心 理 学 で は デ ブ ス ・ サ イ コ ロ ジ セ 最 大 課 題 で あ る が 故 に、 ﹁ 深 層 心 理 学 ﹂ の 名 で 一 般 に 呼 称 さ れ る の で あ る が、 こ の 無 意 識 は 更 に 二 層 の 領 域、 す な わ ち 個 人 的 無 意 識(peonal uncuos) と 集 団 的 無 意 識 (coctive uous) に 分 け ら れ る。 個 人 的 無 意 識 の 内 容 は、 そ の 名 の 示 す 如 く、 各 個 人 が 夫 々 の 体 験 に よ っ て 所 得 し た も の、 忘 却 さ れ た も の、 或 は 自 我 に よ っ て 相 容 れ ぬ も の と し て 抑 圧 さ れ た も の 一 例 え ば 不 愉 快 な こ と、 嫌 い な こ と な ど 一 で あ

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る。 我 々 の 意 識 は ほ ん の 少 し の 内 容 し か 一 度 に 取 り 得 な い か ら、 個 人 的 無 意 識 の 内 容 は 意 識 か ら 取 り の け ら れ た も の で あ る が、 又、 何 時 で も 意 識 め な か に 昇 っ て 来 得 る も の で あ る と 共 に、 い ろ い ろ な 理 由 で 意 識 し た く な い が 故 に 無 意 識 下 に 抑 圧 さ れ た も の で も あ る。 意 識 に は 個 人 的 意 識 と 集 団 的 意 識 が あ る。 例 え ば 個 人 的 美 意 識 が あ る と 共 に、 日 本 人 的 美 意 識、 或 は 東 洋 的 美 意 識 が 存 在 す る。 そ の よ う に 無 意 識 に も 個 入 的 無 意 識 と 集 団 的 無 意 識 が 存 在 す る。 無 意 識 の 集 団 的 部 分、 す な わ ち 集 団 的 無 意 識 は 個 人 的 無 意 識 の 深 層 に 在 っ て、 個 人 的 自 我 に 特 有 で あ る と こ ろ の 個 人 的 に 取 得 さ れ た 内 容 は 含 ま な い が、 一 般 的 な 心 理 的 機 能 の 遺 伝 的 可 能 性、 す な わ ち ﹁ 遺 伝 的 頭 脳 構 造 ﹂ よ り 結 果 さ れ た 内 容 を 含 ん で い る。 こ の ﹁ 遺 伝 的 頭 脳 構 造 ﹂ は 肉 体 的 存 在 を 参 照 す る が、 生 理 的 ﹁ 依 存 ﹂ で は な く、 心 理 的 な も の で あ り、 す べ て の 人 類 の み で な く、 す べ て の 動 物 的 世 界 に お い て も 共 通 的 な も の で あ っ て、 あ ら ゆ る 個 人 的 心 理 の 基 盤 を (22) 形 成 す る も の で あ る。 ユ ン グ は 精 神 病 患 者 の 夢 の 分 析、 神 話、 昔 話、 或 は 未 開 人 の 心 理 な ど の 研 究 を 通 じ て、 無 意 識 の 内 容 モ チ ー フ を 観 察 し、 そ こ に 何 時 も 繰 り 返 さ れ て 現 わ れ て 来 る 主 題 が、 時 代、 地 域、 民 族 な ど の 差 異 を 超 え て 類 似 し て お り、 共 通 的 で あ る こ と を 認 め た。 そ し て、 そ れ は 個 人 的 な も の に も 論 理 的 な も の に も、 又、 経 験 的 な も の に も 先 行 す る も の で あ る が 故 に、 そ れ を 内 容 と し て 保 有 す る 無 意 識 の 領 域 を 集 団 的 無 意 識 と 呼 称 し た の で あ る。 こ の 集 団 的 無 意 識 は 個 人 的 無 意 識 が 個 人 的 意 識 と 相 剋、 相 補 的 関 係 に あ る よ う に、 集 団 的 意 識 に 対 立 し、 そ れ と 相 補 的 関 係 に あ る。 こ の 集 団 的 無 意 識 の 内 容、 す な わ ち、 異 っ た 人 々 の 夢 や、 神 話 や、 俗 話 の な か に、 殆 ん ど 同 一 の 形 を 以 て 繰 り 返 し て 現 ア ユ ケ タ イ プ (23) わ れ て 来 る も め は、 ﹁ 神 話 類 型 (archeype)﹂ と 呼 称 さ れ る。 男 性 の 心 理 に み ら れ る 所 謂 ﹁ 女 性 的 な 要 素、 或 は 傾 向 ﹂ は ア ニ マ (Anima) と 呼 ぼ れ、 女 性 の 心 理 に 見 ら れ る 男 性 的 な 要 素、 或 は 傾 向 は ア ニ ム ス (Animus) と 呼 ば れ る の だ が、 ア (24) ニ マ も ア ニ ム ス も 共 に 抑 圧 さ れ 却 け ら れ て 無 意 識 の 領 域 に あ る。 男 性 は 一 応 ア ニ マ 的 な も の は 女 々 し い も の と し て 抑 圧 し、 女 性 は ア ニ ム ス 的 な も の を 女 性 的 で な い も の と し て 却 け る か ら で あ る。 こ の よ う な ア ニ マ、 ア ニ ム ス と い わ れ る 無 意 識 の 要 素、 傾 向 は、 経 験 的 に は 男 性 は そ の 母 親 よ リ ア ニ マ 像 を、 女 性 は そ の 父 親 よ り ア ニ ム ス 像 を う け と る。 と い う の ユ ン グ の マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル

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密 教 文 化 は、 普 通 両 親 は 個 人 の 人 生 体 験 に お け る 最 初 の 異 性 で あ る か ら で あ る。 普 通 に 母 親 に 似 た 妻 と か、 父 親 に 似 た 夫 を 選 ぶ の は、 ア ニ マ、 ア ニ ム ス と い う 無 意 識 の 内 容 を 異 性 の 上 に 投 影 (prohect) す る か ら で あ る。 し か し、 こ の ア ニ マ、 ア ニ ム ス イ メ ー ジ の 像 は、 単 に 個 人 的 経 験 を 通 じ て 得 た も の だ け で な く、 男 性 に は 男 性 全 体 と し て 共 通 す る 女 性 像、 女 性 に は 女 性 全 体 に 共 通 す る 男 性 像 が あ る。 つ ま り、 男 性 に は 時 空 を こ え た 無 数 の 昇 性 の 経 験 よ り 得 ら れ た 集 団 的 な ア ニ マ の 像 が あ り、 女 性 に も 同 様 の 集 団 的 ア ニ ム ス の 像 が あ る。 こ の よ う な 共 通 的、 集 団 的 な も の は、 個 人 の 体 験 を 通 じ て 得 ら れ た も の よ り も 論 理 的 に 先 行 す る し、 そ れ が 体 験 さ れ る 場 合 に は、 よ り 強 烈 な 深 い 感 動 (emotion) を も っ て 体 験 さ れ る。 こ の 集 団 的 ア ニ マ、 ア ニ ム ス の よ う な も の を、 ア ー ケ タ イ プ と 呼 ぶ の で あ る。 従 っ て ア ー ケ タ イ プ は、 哲 学 的 な、 或 は 形 而 上 学 的 な 概 念 で は な く し て、 あ く ま で 心 理 的 現 象 と し て、 時 間 空 間 を 超 え て 経 験 的 に 把 握 さ れ る も の で あ り、 そ れ が 心 理 的 現 象 と し て 体 験 さ れ る 時 に は、 強 い エ モ ー シ ヨ ン を 伴 う も の で あ る。 ヤ コ ビ (Jacobi.J) は 無 意 識 の 領 域 を 五 重 の 同 心 円 と し (25) て 便 宜 上、 こ れ を 図 説 し て い る。 外 側 の 二 重 が 個 人 的 無 意 識、 内 側 の 三 重 が 集 団 的 無 意 識 で、 そ の 個 人 的 無 意 識 の 第 一 重 が デ ド タ ﹁ 記 憶 ﹂、 第 二 重 ﹁ 抑 圧 さ れ た 素 材 ﹂、 集 団 的 無 意 識 の 第 一 重 エ モ ず シ ヨ ン が ﹁ 感 動 ﹂、 第 二 重 が ﹁ 無 意 識 の 最 深 奥 か ら の 侵 入 の 領 域 ﹂ で、 第 三 重、 つ ま り 最 も 内 側 の 円 が ﹁ 決 し て 意 識 に な り 得 な い 無 意 識 の 部 分 ﹂ で あ る。 こ の 図 説 で で も 了 解 で き る よ う に、 集 団 的 無 意 識 の 深 層 か ら 浮 び 上 っ て 来 る ア ー ケ タ イ プ が 強 烈 な 感 動 を も っ て 体 験 さ れ る の は、 そ れ が 集 団 的 無 意 識 の 最 外 に あ る エ モ ー シ ョ ン の 層 を 突 破 (break through) す る か ら で あ っ て、 こ の 強 烈 な 感 動 を も っ て 体 験 さ れ る も の、 換 言 す れ ば、 ダ イ ナ ミ ッ ク な 生 命 に 満 ち た 無 意 識 の 深 奥 か ら 意 識 に も た ら (26) さ れ る も の が、 ユ ン グ の い う ﹁ シ ン ボ ル ﹂ で あ る。 ユ ン グ の シ ン ボ ル に つ い て は 後 述 す る が、 シ ン ボ ル は 人 間 心 理 の 最 深 奥 に 横 た わ っ て い る 無 量 無 尽 の 中 心 的 精 力、 つ ま り 生 命 の 源 泉 を 自 覚 せ し め る も の で あ る と 共 に、 我 々 を そ こ へ 連 れ 戻 す 機 能 を 持 つ も の で あ る。 さ て、 こ の ア ー ケ タ イ プ、 つ ま り シ ン ボ ル の な か で 最 も 重 要 な も の、 中 心 的 な も の、 そ れ が 体 験 さ れ る こ と に よ っ て 文 セ ル フ 字 通 り に ﹁変 身 (transformation)﹂ が な さ れ る も の が ﹁ 大 我 (27) セ ル フ (Self)﹂ で あ る。 ﹁ 大 我 ﹂ は 意 識、 無 意 識 の 相 剋、 相 補 の 調

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サ イ キ 和 で あ る 心 理 の 全 体 で あ る と 同 時 に、 そ の 中 心 で あ る。 換 言 す る と、 意 識、 無 意 識 の 二 元 を 相 互 的 共 通 の 中 心 を 通 じ て、 セ ル フ 綜 合 調 和 に も た ら す ア ー ケ タ イ プ ・ イ メ ー ジ を ﹁ 大 我 ﹂ と 呼 称 す る の で あ る。 ご く 小 さ な 部 分 に 上 か ら ス ポ ッ ト ・ ラ イ ト を あ て た 大 き な 球 体 で 心 理 の 全 体 を た と え る と す る と、 ス ポ ッ ト ・ ラ イ ト の あ た っ た 明 る い 表 面 の 部 分 が 意 識 で あ り、 エ ゴ セ ル フ ﹁ 自 我 ﹂ 億 そ の 中 心 で あ る が、 ﹁ 大 我 ﹂ は 大 き な 球 体 の 中 心 で あ る と 同 時 に、 そ の 全 体 で あ る。 セ ル フ エ ゴ こ の ﹁ 大 我 ﹂ が 意 識 の 中 心 で あ る ﹁ 自 我 ﹂ に と っ て 代 っ て、 人 間 の 心 理 全 体、 心 理 的 生 命 の 中 心 と な る プ ロ セ ス を ﹁ 個 体 化 過 程 (individuation process)﹂ と 呼 称 す る。 換 言 す れ ば ﹁ 個 体 化 過 程 と は、 心 理 全 体(psychie totaality) の 内 容 と 機 能 へ エ ゴ (28) の 漸 次 的 接 近 で あ り、 自 我 が そ の 効 果 を 認 め る こ と で あ る。 ﹂ 個 体 化 (indivdieston) と は 個 体 的 (individual) 存 在 に な る こ と で あ っ て、 そ れ は 自 己 自 身 の 大 我

(one's own Self)

に 成 (29) る こ と に 外 な ら な い。 そ れ は ﹁ 大 我 実 現 (Self-resftgion)﹂ の プ ロ セ ス で あ り、 真 言 密 教 的 に い う な ら ば、 ﹁ 即 身 成 仏 ﹂ ﹁如 実 知 自 心 ﹂、 或 は ﹁ 去 々 と し て 原 初 に 入 る ﹂ 道 で あ る。 そ し て こ の ﹁ 個 体 化 過 程 ﹂ が 達 成 さ れ る 時、 つ ま り 一 番 最 後 の ス テ ー ジ に 到 達 す る 時 に 顕 現 す る シ ン ボ ル が、 ユ ン グ の ﹁ マ ン ダ ラ ﹂ な の で あ る。 換 言 す れ ば ﹁ マ ン ダ ラ ﹂ は、 心 理 の 全 セ ル フ 体、 全 体 の 心 理 の 中 心、 つ ま り ﹁ 大 我 ﹂ そ の も の の シ ン ボ ル な の で あ る。 二 我 々 は い よ い よ ユ ン グ の マ ン ダ ラ そ の も の に つ い て 筆 を す す め る の で あ る が、 そ の 前 に 銘 肝 し て お か ね ば な ら な い 事 が あ る。 そ れ は 以 上 我 々 が 概 説 し て 来 た ユ ン グ 独 特 の 術 語、 ﹁ 個 人 的 無 意 識 ﹂ ﹁ 集 団 的 無 意 識 ﹂ ﹁ ア ー ケ タ イ プ ﹂ ﹁ ア ニ マ ﹂ セ ル フ ﹁ ア ニ ム ス ﹂ ﹁ 大 我 ﹂、 そ し て ﹁ 個 体 化 個 程 ﹂ な ど は、 す べ て 理 性 的 な 概 念 把 握 の 不 可 能 な 無 意 識 の 内 容 を 説 明 す る た め の 一 応 の 仮 説 で あ り、 そ の 仮 説 は ユ ン グ の 五 十 年 余 に わ た る 経 験 に 基 づ い た も の、 つ ま り 経 験 的 仮 説 で あ っ て、 所 謂 ﹁ 科 学 的 事 実 ﹂ で は な い と い う こ と で あ る。 仮 説 は、 あ く ま で も 仮 説 で あ っ て 事 実 そ の も の で は な い。 こ れ は ユ ン グ 自 身、 屡 々 繰 り か え す と こ ろ で あ る。 さ て、 シ ン ボ ル は 多 種 多 様 で あ る か ら、 そ の 意 味 で の マ ン (30) ダ ラ は ﹁ 特 別 の カ テ ゴ リ ー に 属 す る シ ン ボ ル ﹂ で あ る。 シ ン ユ ン グ の マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル

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密 教 文 化 ボ ル は サ イ ン (sign) か ら 区 別 さ れ る。 例 え ば、 単 な る 略 号、 或 は 頭 文 字 の 連 な り や、 商 標、 パ テ ン ト、 薬、 バ ッ ジ、 徴 章 の 名 前 な ど は、 す べ て サ イ ン で あ っ て、 ﹁ そ れ ら は、 そ れ ら (31) が 附 帯 さ れ て い る 対 象 を 指 示 す る 以 外 の 何 も の で も な い ﹂ が、 シ ン ボ ル は サ イ ン が 指 示 す る と こ ろ の 約 定 的 な 明 白 な 意 味 に、 特 別 の 内 容 を 附 帯 す る も の で あ っ て、 妊 婦 の 如 く 内 部 に (32) 豊 か な 意 味 を 含 蓄 す る も の で あ る。 要 す る に シ ン ボ ル は、 そ の 明 白 な 直 接 的 意 味 以 上 に 何 か を 含 蓄 す る も の で あ っ て、 心 理 学 的 に は 正 確 に 定 義 し た り、 十 二 分 に 説 明 し た り す る こ と (33) の で き な い 広 汎 な 無 意 識 の 局 面 を 有 す る も の で あ る。 こ う い っ た シ ン ボ ル に は 二 種 類 が あ る。 一 つ は ﹁ 自 然 的 (natural) シ ン ボ ル ﹂ で あ り、 他 は ﹁ 文 化 的 (cultural) シ ン ボ ル ﹂ で あ る。 前 者 は 心 理 の 無 意 識 の 内 容 か ら 引 き 出 さ れ る も の で あ り、 後 者 は ﹁ 永 遠 の 真 実 ﹂ を 表 現 す る の に 用 い ら れ 来 (34) っ た も の で あ る。 自 然 的 シ ン ボ ル は 自 発 的 に、 す な わ ち 当 事 者 の 知 識 や 承 諾、 そ し て 意 向 に 関 係 な く、 無 意 識 か ら つ く り だ さ れ る も の で あ っ て、 本 質 的 な ア ー ケ タ イ プ 像 の 上 に 多 く の 変 化 を 示 現 す る も の で あ る が、 文 化 シ ン ボ ル と は、 多 様 の 変 形 と 多 少 は 意 識 的 で あ る 展 開 の 長 期 間 の プ ロ セ ス を 通 じ て 文 明 社 会 に 受 け と ら れ て 集 団 的 イ メ ー ジ と な り 来 っ た も の で (35) あ っ て、 多 く の 宗 教 に 用 い ら れ て い る も の で あ る。 マ ン ダ ラ は ﹁ 特 別 の カ テ ゴ リ ー に 属 す る シ ン ボ ル ﹂ で あ り、 シ ン ボ ル に 二 種 類 が あ る か ら、 マ ン ダ ラ も ﹁ 特 別 の カ テ ゴ リ ー に 属 す る 自 然 的 シ ン ボ ル ﹂ と、 ﹁ 特 別 の カ テ ゴ リ ー に 属 す る 文 化 的 シ ン ボ ル ﹂ の 二 種 類 が 存 在 す る こ と に な る。 ユ ン グ は 前 者 を モ ロ ダ ン ﹁ 近 代 的 民 或 は ﹁ 個 人 的 ﹂ マ ン ダ ラ、 そ し て 後 者 を ﹁ 伝 統 的 ﹂、 或 は ﹁ 歴 史 的 ﹂ マ ン ダ ラ と 呼 称 す る。 勿 論、 医 療 心 理 学 者 と し て の ユ ン グ に と っ て の 第 一 義 的 関 心 は 自 然 的 シ ン ボ ル で あ っ て、 普 通 に ユ ン グ が マ ン ダ ラ と い う 揚 合 に は ﹁ 近 代 的 ﹂ マ ン ダ ラ を 参 照 す る。 ユ ン グ の ﹁ 近 代 的 ﹂ マ ン ダ ラ の 解 釈 は、 実 際 上、 彼 の 患 者 が 描 く 夢 の 絵 画 に 基 づ く の で あ る が、 そ れ は ﹁ シ ン ボ ル の 統 合

(Vereinign des Symbol)﹂

で あ り、 ﹁ 夢、 或 は 具 体 的 な 視 覚 印 象 の 形 の な か に、 意 識 状 態 の 矛 盾 と 相 剋 の た め の 最 も 明 (36) 白 な 補 償 (compedrsion) と し て、 屡 々 生 ず る も の で あ る ﹂。 こ こ で い う ﹁ 統 合 (Versdlksen)﹂ は ﹁ 調 停 (recwodklg)﹂ で は な く し て、 相 対 的 な も の を 単 一 の も の に も た ら し 統 合 す (37) る こ と を 意 味 す る も の で あ る。 従 っ て ﹁ シ ン ボ ル の 統 合 ﹂ で

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あ る マ ン ダ ラ は 相 対 的 な る も の を 統 合 す る 機 能 を 持 つ。 ヘ ー ゲ ル 流 に い う と、 そ れ は 止 揚 (auffhedendsbn) の 機 能 を 持 ち、 そ の 機 能 に よ っ て 心 理 の な か の テ ー ゼ、 ア ン チ テ ー ゼ の 異 っ た 相 対 物 が、 よ り 高 次 の ジ ン テ ー ゼ と し て 統 合、 止 揚 さ れ る の で あ る。 無 意 識 の 深 層 か ら の こ の ﹁ シ ン ボ ル の 統 合 ﹂ の 出 現 は 何 時 も 自 発 的 で あ る。 そ れ は、 そ れ 自 体 の 意 志 で 出 没 す る の で あ っ て、 ﹁ 個 体 化 過 程 ﹂ が 終 り に 近 づ く 時 に の み 出 現 す る。 ﹁ 個 体 化 過 程 ﹂ は、 わ か り や す く 表 現 す れ ば、 ﹁ そ れ に よ っ て 個 体 が 彼 自 身 の な か の 完 全 性 に 向 っ て 進 歩 し、 最 も 真 実 (38) の 人 間 に な る プ ロ セ ス ﹂ で あ る か ら、 患 者 の 夢 の な か に 伯 発 的 に 現 わ れ る マ ン ダ ラ は、 そ の 患 者 の 解 脱、 つ ま り 治 癒 と 一 致 す る。 こ の こ と は、 患 者 の 人 格 の 全 体 を お び や か し て い る 無 意 識 の 部 分 が 意 識 に 統 合 さ れ る と い う 意 味 で あ る。 三 さ て こ こ で、 ﹁ 何 故 に ユ ン グ は 彼 の 心 理 学 に マ ン ダ ラ の 言 葉 を 適 用 し た の で あ ろ う か ﹂、 そ し て 更 に ﹁ ユ ン グ の 心 理 学 は 如 何 に し て マ ン ダ ラ の そ の よ う な 解 釈 に 到 達 し た の か ﹂ を 問 う て み よ う。 こ れ ら の 質 問 自 体 は、 外 郭 的 な、 又、 背 景 的 な も の で は あ る が、 こ の 問 い に 答 え る こ と は ユ ン グ の マ ン ダ ラ そ の も の に 対 す る 我 々 の 理 解 を 深 め る で あ ろ う。 既 述 の 如 く、 欧 米 の 世 界 に ﹁ マ ン ダ ラ ﹂ の 言 葉 が 普 及 し た 一 因 は ユ ン グ の 影 響 で あ り、 彼 の 心 理 学 の 全 体 系 は マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル の 深 い 解 釈 よ り 成 立 っ て い る の で あ る が、 ﹁ 何 故 に ユ ン グ は マ ン ダ ラ の 語 を 彼 の 心 理 学 の 上 に 適 用 し た の で あ ろ う か ﹂ の 問 い に 対 し て は、 先 ず 第 一 に 伝 統 的 マ ン ダ ラ の 実 在 が 考 え ら れ る。 こ れ に 関 し て は ユ ン グ 自 身 ﹁ マ ン ダ ラ の 語 が 選 ば れ た の は、 こ の 言 葉 が ラ マ 教 や、 タ ン ト ラ の ヨ ー ガ の な か で、 ヤ ン ト ラ と し て、 或 は 瞑 想 の た す け と し て 用 い ら れ サ ー ク ル る 儀 式 的、 或 は 魔 術 的 周 円 を 指 示 す る か ら で あ り、 儀 式 に 用 い ら れ る 東 洋 の マ ン ダ ラ は 伝 統 に よ っ て 定 形 づ け ら れ た も の で、 そ れ ら は 紙 に 描 か れ た り、 彩 色 さ れ た り、 或 は 特 別 の 儀 (39) 式 の 時 に は 塑 造 的 に 示 現 さ れ る ﹂ と 語 っ て い る し、 又、 彼 の 最 も 信 頼 す る 弟 子 の 一 人 で あ る ヤ コ ビ ー も、 ﹁ 東 洋 は 最 も 美 し く て 芸 術 的 に 完 成 さ れ た マ ン ダ ラ を 持 っ て い る ﹂、 が、 ﹁ マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル は 人 類 の 最 も 古 代 の 宗 教 的 シ ン ボ ル に 属 し、 石 器 時 代 に 於 て さ え も 発 見 さ れ る も の で、 我 々 は そ れ を、 あ ら ゆ る 人 々、 あ ら ゆ る 文 化、 プ エ ブ ロ ・ イ ン デ ィ ア ン (Pueblo ユ ン グ の マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル

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密 教 文 化 Indian) の 砂 絵 の 如 き も の の な か に も 見 出 す ﹂ の で あ り、 又、 西 洋 に お い て も ﹁ お び た だ し い 数 の マ ン ダ ラ が 中 世 か ら 存 在 し、 そ こ で は 普 通 キ リ ス ト が 円 の 中 心 に 描 か れ、 四 福 音 伝 道 者、 或 は 彼 等 の シ ン ボ ル が 四 方 面 に 描 か れ て い る。 ﹂ そ し て ﹁ ユ ン グ は、 そ れ ら の 解 釈 を な す に 先 立 っ て、 実 に 十 四 年 間、 (40) こ れ ら の シ ン ボ ル を 研 究 し た の で あ っ た ﹂ と、 述 べ て い る こ と か ら も 明 白 で あ る。 第 二 の 解 答 は ユ ン グ と ラ マ 僧 と の 出 合 い で あ る。 一 九 三 八 年、 ユ ン グ は ダ ー ジ リ ン の 近 く の 僧 院 を 訪 れ、 そ こ の ラ マ 僧 と マ ン ダ ラ に 関 し て 語 り 合 う 機 会 を 得 た。 そ の ラ マ 僧 の 語 る と こ ろ を 要 約 す る と、 ( a ) マ ン ダ ラ (Dkyil-hkor) は ミ ク・ パ (dmigs-pa)、 す な わ ち ﹁ 精 神 的 イ メ ー ジ ﹂ で あ っ て、 そ れ は 十 二 分 に 修 練 を 積 ん だ ラ マ の 想 像 力 を 通 じ て の み 建 立 さ れ う る も の で あ る。 ( b ) 従 っ て、 他 と 同 一 で あ る と い う マ ン ダ ラ は な く、 一 つ 一 つ す べ て 異 っ た も の で あ る。 ( c ) 僧 院 や 寺 院 で 見 ら れ る マ ン ダ ラ は 特 別 の 意 義 が な い。 そ れ ら は 単 な る 外 面 的 示 現 に す ぎ な い か ら で あ る。 ( b ) 真 正 の マ ン ダ ラ は 何 時 も 内 面 的 イ メ ー ジ で あ っ て、 そ れ は 心 理 的 平 衡 が か き み だ さ れ る 時 や、 或 る 考 え を 見 出 す こ と が で き ず、 そ の 考 え の な か に 神 聖 な 教 義 が 含 ま れ て い な い の で、 そ れ を 探 求 せ ね ば な ら な い 時 な ど に、 生 き 生 き と し た 想 像 を 通 じ て 次 第 々 々 に 建 立 さ れ る も の な の で あ る。 そ し て ( e ) ユ ン グ は ﹁ こ れ ら の 東 洋 の シ ン ボ ル は 夢 や 幻 影 の な か で 創 造 さ れ た も の で あ っ て、 或 る 大 乗 の 教 師 に よ っ て 考 案 さ れ た も の で は な い と い う こ と は 疑 い も な く 明 白 で あ る。 そ れ ど こ ろ か、 こ れ ら の シ ン ボ ル は 最 も 古 い 人 間 の 宗 教 シ ン ボ ル の な か に、 旧 石 器 時 代 に 存 在 し て い た も の の な か に さ え も ( ロ ー デ シ ア ン Rhodesian の 石 絵 を 参 照 ) 存 在 す る も の で あ る ﹂ と 結 論 づ け (41) て い る。 第 三 の 解 答 は ヨ ー ガ の 洞 察 と 近 代 心 理 学 の 研 究 成 果 と の 著 し い 一 致 で あ る。 ユ ン グ に よ る と、 ヨ ー ガ (yoga) の 語 は、 語 源 的 に はyuj く び き ( 軌 を つ け る ) か ら 由 来 し た も の で、 軌 で つ な ぐ こ と で あ り、 サ イ キ 心 理 の 本 能 的 な 力、 サ ン ス ク リ ッ ト で ク レ ー シ ヤ (klesa)、 す な わ ち ﹁ 煩 悩 ﹂ と 呼 ば れ る も の に 乾 を つ け よ う と す る 訓 練 で あ る。 軌 で つ な ぐ こ と は、 人 間 存 在 を 世 界 に 束 縛 し て い る こ れ ら ク レ ー シ ヤ (42) の カ、 す な わ ち 煩 脳 を コ ン ト ロ ー ル す る の を 狙 い と す る ﹂。 ヨ ー ロ ッ パ で 展 開 し た 所 謂 ﹁ 医 療 心 理 学 (medial pchoy)

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ク レ セ シ ヤ は 特 別 に こ の 煩 悩 を 取 扱 い、 そ の コ ン ト ロ ー ル を 狙 い と す る (43) の で あ っ て、 ﹁ 無 意 識 の 心 理 学 ﹂ と も 呼 称 さ れ る。 イ ン ド 人 の 最 も 重 要 な 訓 練 は ヨ ー ガ で あ っ て、 そ れ は ユ ン グ が 無 意 識 の 状 態 と 呼 ぶ と こ ろ へ の 侵 入 で あ る。 ﹁ ヨ ー ガ は イ ン ド 人 の 心 の 最 も 雄 弁 な 表 現 で あ る と 共 に、 こ の 特 別 の 心 的 (44) 態 度 を つ く り だ す た め に 継 続 的 に 用 い ら れ る 道 具 で も あ る ﹂。 ユ ン グ は ﹃ 観 無 量 寿 経 ﹂ の 観 想、 特 に 日 想 観、 水 想 観、 仏 身 観 を ヨ ー ガ と し て 掴 え、 こ れ ら ヨ ー ガ ー の ﹁ 最 高 の 精 神 集 中 は、 感 覚 世 界 の 印 象 や 対 象 に し ば り つ け ら れ た 理 念 か ら の 興 味 を 後 退 さ せ、 そ し て、 そ の は け 口 を つ く る こ と が 極 端 に ま で お し す す め ら れ、 そ れ が 意 識 の 背 景 に 向 け て 適 用 さ れ る 時 に お い て の み 達 成 さ れ う る の で あ っ て、 対 象 に 執 着 を 持 つ 意 エ ゴ 識 世 界 や、 意 識 の 中 心 で あ る 自 我 さ え も 消 滅 し て、 そ の 場 処 に ア ミ ダ の 荘 厳 世 界 が 赫 々 た る 光 明 を も っ て 現 わ れ る の で あ (45) る ﹂。 す な わ ち、 ヨ ー ガ に よ っ て ﹁ 個 人 的 幻 想 や 本 能 の 世 界 の 背 後 に、 或 は そ の 下 に 在 る、 よ り 深 い 無 意 識 の 層 が 見 え る ク レ セ シ ヤ よ う に な り、 そ の 層 は 煩 悩 の 混 沌 た る 無 秩 序 と は 著 し く 異 っ て 最 高 の 秩 序 と 調 和 に よ っ て 充 満 さ れ、 ク レ ー シ ャ の 多 様 性 と 対 照 を な し て、 悟 り の マ ン ダ ラ (bodhi-mandala) の す べ て (46) を 包 容 す る 統 合 を 象 徴 す る ﹂。 こ う い っ た ヨ ー ガ の 体 験 は、 近 代 の 医 療 心 理 学 が 試 み よ う と す る 体 験 で も あ る。 ヤ コ ビ に よ ナ イ キ る と、 医 療 心 理 学 は 心 理 の 最 深 奥 の 基 盤 の 活 性 化 を 体 験 し よ う と す る。 そ れ は シ ン ボ ル の 上 昇 を 促 進 し、 シ ン ボ ル の 創 造 的 な 治 癒 的 効 果 を 獲 得 す る た め に な さ れ る の で あ っ て、 そ の た め に 個 人 を 意 識 的 に 彼 自 身 の 無 意 識 の 深 層 へ と 下 降 せ し め、 客 観 的 に そ れ を 観 察、 考 慮 さ し て、 そ の 深 層 の 内 容 を 認 (47) 知 せ し め、 そ し て そ れ ら の 内 容 を 意 識 と 結 合 さ す の で あ る。 楡 伽 者 は、 超 個 人 的 な 世 界 を 包 含 す る 無 意 識 は 個 人 的 無 意 識 の 闇 が 透 明 に な る 時 に 顕 現 す る と 主 張 す る の で あ る が、 近 代 の 医 療 心 理 学 も 個 人 的 無 意 識 は 唯 た ん な る 表 面 の 層 に す ぎ ず、 そ の 底 に 完 全 に 異 っ た 基 盤、 ﹁ 集 団 的 無 意 識 ﹂ と 呼 ぶ も の が 横 た わ っ て い る こ と を 認 知 し て い る。 ﹁ 集 団 的 無 意 識 ﹂ の 命 名 の 理 由 に つ い て、 ユ ン グ は ﹁ 個 人 的 無 意 識 や、 そ の 純 粋 に 個 人 的 な 内 容 と ち が っ て、 よ り 深 層 の 無 意 識 の な か の イ メ ー ジ は 明 瞭 な 神 話 的 性 格 を も っ て い る と い う 事 情 に よ る の で あ る。 す な わ ち、 形 に お い て も、 又、 内 容 に お い て も、 そ れ ら の イ メ ー ジ は 神 話 の 底 に 横 た わ っ て い る 普 遍 的 原 初 的 な 理 念 と 一 致 す る。 そ れ ら は も は や 個 人 的 な も の で は な く て、 ユ ン グ の マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル

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密 教 文 化 純 粋 に 超 個 人 的 性 格 の も の で あ り、 そ れ 故 に、 す べ て の 人 々 に 共 通 な も の で あ る ﹂ と 語 り、 更 に ﹁ 我 々 の 西 洋 の 心 理 学 は ⋮科 学 的 に 無 意 識 の 深 層 の 統 合 を 確 立 し う る。 神 話 的 モ チ ー フ の 出 現 は、 当 事 者 自 身 の 無 意 識 の 形 の 探 求 に よ っ て 多 種 多 様 に 表 示 さ れ る の で あ る が、 こ れ ら は 遂 に 最 高 潮 に 達 す る と、 集 団 的 無 意 識 の 真 正 の 中 心、 或 は 本 質 を 構 成 す る 集 中 (48) 的 な、 或 は 放 射 状 的 な. 秩 序 と な る ﹂ と い う。 こ れ が マ ン ダ ラ な の で あ る。 要 す る に ヨ ー ガ と 医 療 心 理 学 と は、 そ の 狙 い、 体 験、 無 意 識 の 深 層 の 存 在 の 主 張、 そ し て 無 意 識 の 中 心 の 顕 現 に お い て 一 致 し て い る の で あ る。 四 ﹁ 如 何 に し て ユ ン グ の 心 理 学 が マ ン ダ ラ の そ の よ う な 解 釈 に 到 達 し た の か ﹂ の 問 い に は 二 っ の 解 答 が 考 え ら れ る。 一 つ は 実 験 心 理 学 が 辿 っ て 来 た 道 で あ り、 他 は 歴 史 的 道 (historical path) で あ る。 実 験 心 理 学 の た ど っ て 来 た 道 は、 心 理 の 病 い の 治 療 の た め に 為 さ れ き た っ た 道 で あ っ て、 そ れ に は 先 ず 患 者 の な か の ﹁ 知 ら れ ざ る も の ﹂ を 調 査 す る こ と で あ る。 そ し て、 こ れ に (49) は 四 つ の 方 法 が 存 在 す る と ユ ン グ は い う。 第 一 の 最 も 単 純 な 方 法 は ﹁ 連 想 方 法 (ason method)﹂ で あ る。 こ の 原 理 は、 或 る 選 ば れ た 刺 戟 的 な 質 問 を 発 し て、 連 想 に 基 づ い て そ れ に 答 え る と い う 方 法 に よ っ て、 主 要 な コ ン プ レ ッ ク ス を 見 出 そ う と す る の で あ り、 こ の 方 法 は 精 神 分 析 や、 コ ン フ レ ッ ク ス の 徴 候 学 の 入 門 と し て 初 心 者 の た め に 推 薦 さ れ る も の で あ る。 第 二 の 方 法 は 徴 候 分 析 の 方 法 で あ っ て、 現 在 で は 単 に 歴 史 的 な 価 値 し か 持 っ て い な い も の で あ る が、 こ れ は 催 眠 術 的 な 暗 示 の 手 段 に よ っ て、 患 者 を し て 病 理 学 的 徴 候 の 下 に 横 た わ っ て い る 記 憶 を 再 生 さ そ う と 試 み る も の で あ る。 こ の 方 法 は シ ヨ ッ ク や 心 理 的 外 傷 が ノ イ ロ ー ゼ の 主 要 な 原 因 で あ る よ う な 場 合 に は 極 め て 効 果 が あ り、 フ ロ イ ド が 彼 の 初 期 の ヒ ス テ リ ヤ の 外 傷 理 論 を 見 出 し た の は、 こ の 方 法 で あ る。 第 三 は 回 想 分 析 (anamnestie analusis) の 方 法 で あ り、 こ れ は ﹁ 知 ら れ ざ る も の ﹂ の 調 査 の 方 法 と し て も、 又、 そ の 治 療 の 方 法 と し て も、 極 め て 重 要 で あ る。 こ れ は 注 意 深 い 回 想 に よ っ て ノ イ ロ ー ゼ の 歴 史 的 展 開 の 再 構 成 を な そ う と す る 方

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法 で あ る。 こ の 方 法 は 特 に ノ イ ロ ー ゼ の 子 供 の 治 療 の た め に 役 立 つ。 子 供 に 対 し て は、 夢 の 分 析 を 通 じ て は 巧 く 無 意 識 に 到 達 で き な い か ら で あ っ て、 多 く の 揚 合、 或 る 障 害 を 除 去 す れ ば 十 分 で あ り、 そ れ は あ ま り 技 術 的 分 析 な し で も な し 得 ら れ る。 も し 子 供 の ノ イ ロ ー ゼ が 両 親 の 悪 い 態 度 と 関 連 を も っ て い な け れ ば、 そ れ は た い て い 単 純 な も の で あ る。 第 四 の 方 法 が 無 意 識 の 分 析 で あ る。 こ の 無 意 識 の 分 析 は 以 上 の 三 つ の 方 法 で な さ れ る 如 き 再 生 し う る 材 料 が 全 く 使 い つ く さ れ る 時 に の み 始 め ら れ る 方 法 で あ る。 従 っ て 第 三 の 回 想 分 析 の 方 法 は 事 実 上 こ の 無 意 識 分 析 に よ る 方 法 の 入 門 で あ る と い え る。 無 意 識 分 析 の 方 法 に と っ て 絶 対 的 に 重 要 で あ る こ と は 医 者 と 患 者 と の 個 人 的 霊 交 (personal rapport) で あ る。 個 人 的 霊 交 に よ っ て の み、 患 者 の 無 意 識 を 捕 え る に 安 全 で あ る 基 盤 を 形 成 し う る の で あ る が、 こ う い っ た 霊 交 を 樹 立 す る こ と は 決 し て 単 純 な こ と で は な い。 そ れ は 医 者 自 身 の 意 識 標 準 と 患 者 の そ れ と を 注 意 深 く 比 較 す る こ と な く し て は 達 成 で ア ナ リ ス ト き な い。 精 神 分 析 者 に な る の に は 自 分 の 夢 や 空 想 な ど の 無 意 識 の 所 産 を 材 料 と し て、 専 門 の ア ナ リ ス ト に つ い て 先 ず 自 身 の 無 意 識 の 内 容 を 分 析 し 理 解 す る 必 要 が あ る。 こ れ を 自 己 分 析、 或 は 教 育 分 析 と 呼 ぶ の で あ る が、 こ の よ う な 分 析 を 通 じ て 得 た 自 己 の 深 層 に た い す る 理 解 を 前 提 と し て の み 他 の 人 格 の (50) グ ル 深 層 を も 理 解 し う る。 秘 密 仏 教 的 に い う な ら ば、 自 分 が 師 匠、 ア ー チ ヤ セ リ ヤ 或 は 阿 闊 梨 で あ り う る 時 に お い て の み、 弟 子 の 指 導 が 可 能 な わ け で あ る。 無 意 識 分 析 に よ る 精 神 治 療 の 主 要 な 道 具 は、 ユ ン グ に お い て は 夢 で あ る。 ユ ン グ が 夢 と い う 場 合 に は、 患 者 の 夢 の み な ら ず、 患 者 の 空 想 (fantasies) や 幻 想 (vistons) を も 含 ん で い ア ク セ ス る の で あ る が、 夢 こ そ は 無 意 識 の 内 容 へ の 最 も 容 易 な 近 道 を 許 容 す る 心 理 現 象 で あ っ て、 無 意 識 の 内 面 的 関 係 を 明 白 に し、 且 つ 説 明 す る そ の 補 償 的 機 能 の 故 に 特 に 治 療 に 適 し て い る の で あ る。 ユ ン グ の 夢 の 分 析 の 特 徴 は、 他 の 分 析 学 者 の 方 法 と 異 な っ て、 夢 な ど の 心 理 現 象 の な か に、 個 人 的 相 剋 の 内 容 だ け で は な く て、 そ れ ら を 超 え た 集 団 的 無 意 識 の 示 現、 普 遍 的 人 間 問 題 の 原 初 的 体 験 を み よ う と す る の で あ る。 ユ ン グ に と っ て は、 ノ イ ロ ー ゼ な ど の ﹁ 徴 候 は、 地 面 に 顔 を だ し た 若 芽 の よ う な も の で、 そ の 根 幹 は 地 下 に 根 を は っ た 幹 茎 で あ る。 こ の 根 茎 が ノ イ ロ ー ゼ の 内 容 を 表 示 す る の で あ っ て、 こ れ こ そ コ ン プ ユ ン グ の マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル

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密 教 文 化 レ ッ ク ス の 徴 候 の、 そ し て 夢 の 母 体 で あ る。 我 々 は 夢 こ そ 心 理 の 地 下 の プ ロ セ ス を 正 確 に 反 映 す る も の で あ る と 信 ず る あ ら ゆ る 理 由 を 持 っ て い る。 そ し て、 も し 我 々 が そ の 根 茎 に 到 (51) 達 し た ら、 文 字 通 り に 病 の 根 幹 を 得 る こ と に な る の で あ る。 ﹂ ユ ン グ は 又、 ﹁ 夢 は 意 識 か ら 得 ら れ た 心 理 学 で は 説 明 が で き ゴ ー ル な い。 そ れ は 意 志、 希 望 か ら 独 立 的 で あ り、 最 終 日 的 へ の 意 向 や、 そ の 意 識 的 選 択 か ら も 独 立 し た 決 定 的 な 機 能 で あ る。 そ れ は 自 然 の あ ら ゆ る も の が ハ ッ プ ン す る 如 く に、 無 意 識 的 (52) な ハ ッ プ ニ ン グ で あ る ﹂ と 語 っ て い る。 さ て、 ユ ン グ の 夢 の 分 析 に お い て は 一 般 的 に シ ン ボ ル と 名 づ け ら れ る 心 理 現 象 が 中 心 的 役 目 を 演 ず る。 簡 単 に い え ば、 夢 の 分 析 に 現 わ れ る シ ン ボ ル の 理 解 が 実 際 的 な ユ ン グ 深 層 心 理 学 の ア ル フ ァ ー で あ り オ メ ガ で あ る。 ユ ン グ は、 こ う い っ た シ ン ボ ル を ﹁ リ ビ ド ー の 比 喩 (lobodal parable)﹂ と も 呼 称 す る。 ユ ン グ は リ ビ ド ー を フ ロ イ ド の よ う に 単 に ﹁ 性 的 な も の ﹂ と し て 質 的 に 限 定 せ ず、 す べ て の 人 間 の 生 命 現 象 を 説 明 し う る も の と し て 量 的 な ﹁ 心 理 的 エ ネ ル ギ ー (paychic enerya)﹂ と し て 取 扱 う。 シ ン ボ ル は 比 喩 と し て 機 能 し、 こ の リ ビ ド ー ( 心 理 的 エ ネ ル ギ ー ) を 変 身 (transform) せ し め る も の で あ る。 夢 の な か の 心 理 的 イ メ ー ジ は 直 ち に 心 理 の 原 動 力 の 反 映 で あ り、 本 質 で あ る。 そ し て シ ン ボ ル は 表 現 的 性 格 を 持 つ と 同 時 に 印 象 的 性 格 を も っ て い る。 そ れ は 一 方 に お い て は 内 面 的 ハ ッ プ ニ ン グ を 絵 画 的 に 表 現 し、 他 方 そ の 表 現 し た も の を イ メ ー ジ に 変 形 し、 あ た か も 想 像 的 材 料 の 如 く 具 体 化 し た 後 で、 そ の 意 味 あ る 内 容 を 通 じ ハ ッ プ ニ ン グ に 影 響 を あ た え る。 こ の よ う に し て 心 理 的 プ ロ セ ス の 流 れ が 進 め ら れ る。 つ ま り シ ン ボ ル は、 一 方 に お い て は 夢 を み て い る 人 の 眼 前 に あ り あ り と 絵 画 的 に そ の 意 味 を 表 現 し、 他 方 に お い て、 こ の よ う に そ れ 自 体 を 彼 に 示 す こ と に よ っ て 彼 を 印 象 づ け、 そ し て 彼 の 心 理 的 原 動 力 を 或 る 方 向 に 影 響 づ け る。 こ う い っ た 両 面 の 性 格 を 同 時 的 に も っ た も の が シ ン ボ ル で あ り、 従 っ て シ ン ボ ル は 実 際 的 に ﹁ エ ネ ル ギ ー を 変 身 さ す も の (anergy (54) transformer)﹂ で あ る。 分 析 の 過 程 に は 多 種 多 様 の 絵 画 的 動 因 が 決 定 さ れ、 相 互 に リ ー ド し あ う。 分 析 の 初 期 の 段 階 で は、 そ れ ら は 個 人 的 体 験 に 姿 を 変 え て 現 わ れ、 幼 時 期 に 似 通 っ た 性 格 を も っ て い る。 し か し 分 析 が よ り 深 層 に 及 ぶ と、 そ れ ら は ア ー ケ タ イ プ の 輪 郭 を 常 に よ り 鮮 明 に 示 す よ う に な り、 全 体 は よ り 明 確 に シ ン

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ボ ル の み で 占 め ら れ る に 至 る。 あ ら ゆ る シ ン ボ ル は 自 体 の な か に、 ア ー ケ タ イ プ、 す な わ ち 日 に 見 え な い が、 意 味 の エ ネ ル ギ ー を 積 載 し た 中 心 を 内 含 し て い る か ら で あ る。 こ う い っ た シ ン ボ ル は 決 し て 意 識 的 に 案 出 さ れ た も の で は な く、 何 時 (55) も 無 意 識 か ら 創 り だ さ れ る も の で あ る。 そ し て シ ン ボ ル は 最 も 多 様 な 内 容 を 表 わ し う る も の で あ る が、 そ の 内 容 は 決 し て 理 性 的 に 十 二 分 に 表 現 さ れ 得 な い も の で あ る。 換 言 す る と、 シ ン ボ ル は 何 時 も 言 葉 を 通 じ て、 す な わ ち 理 性 的 手 段 に よ っ て は 表 現 が で き な い も の を 附 加 的 に 含 ん で い る。 ヤ コ ビ ー は シ ン ボ ル を ド イ ツ 語 の (Sinn) と ビ ル ト (bild) の 複 合 名 詞 で あ る ジ ン ビ ル ト (Sinnbild) と し て 掴 え、 ジ ン (sinn 意 味、 セ ン ス ) は 意 識 の 理 性 的 な 領 域 に、 ビ ル ト ( Bild 絵、 像 ) は 無 意 識 の 非 理 性 的 な 領 域 に 属 す る。 つ ま り シ ン ボ ル、 ド イ ツ 語 の ジ ン ビ ル ト (Sinnbid) は 意 識 と 無 意 識、 理 性 的 と 非 理 性 (56) 的 な 二 つ の 領 域 に ま た が っ て 所 属 し て い る と 解 釈 す る。 患 者 の 夢 の セ リ ー ズ の な か に は、 多 く の シ ン ボ ル が 現 出 す る。 し か し 真 正 の シ ン ボ ル は 決 し て 十 二 分 に 説 明 さ れ 得 な い。 我 々 は そ の 理 性 的 成 分 を 意 識 に 知 解 し う る よ う に す る こ と が で き る が、 そ の 非 理 性 的 成 分 は、 た だ 感 性 で の み 掴 え う る も の で あ る。 従 っ て ユ ン グ は、 患 者 に 彼 等 の ﹁ 内 面 的 絵 画 ﹂ を 話 し た り、 文 字 で 書 い た り す る だ け で な く て、 絵 を 描 い て、 そ の 部 分 々 々 に 特 に 患 者 に と っ て 個 人 的 意 義 を も っ て い る そ れ ぞ れ の 色 を 配 し て、 夢 を 見 た と お り の 初 め の 現 わ れ の 形 に 再 生 す る よ う に 特 に 強 く 要 求 す る。 ど の 色 が、 ど う い っ た 機 能 と 一 致 す る か と い う こ と は、 文 化 に よ っ て、 グ ル ー プ に よ っ て、 又、 個 人 の な か に お い て す ら 異 な っ て い る。 し か し 一 般 的 に ( 勿 論、 多 く の 例 外 は あ る が ) ヨ ー ロ ッ ハ 人 の 心 理 学 で は、 青 色、 透 徹 し た 零 囲 気 の 色、 澄 み わ た っ た 大 空 の 色 は ﹁ シ ン キ ン グ (thinking)﹂ を 代 表 し、 黄 色、 は る か に 眺 め ら れ る 太 陽 の 色、 測 り 知 れ な い 暗 黒 の な か か ら 光 を も た ら し、 又、 暗 黒 の な か に 消 え 去 っ て 行 く 太 陽 の 色 は ﹁ イ ン テ ユ イ シ ヨ ン (intuoton)﹂ を 代 表 す る。 ﹁ イ ン テ ユ イ シ ヨ ン ﹂ は イ ル ミ ネ ー シ ヨ ン の 閃 光 の 如 く、 ハ ッ プ ニ ン グ の 起 源 と 傾 向 を 掴 え る 機 能 で あ る。 赤 色、 脈 動 す る 血 の 色、 燃 え さ か る 火 の 色 は、 波 立 ち、 涙 の し た た り 落 ち る ﹁ エ モ ー シ ヨ ン (emotion)﹂ を 代 表 す る。 緑 色、 大 地 の 確 固 た る、 直 ち に 万 物 が 生 育 し つ つ あ る の が 感 覚 さ れ る 色 は ﹁ セ ン セ イ シ ヨ ン (semstion)﹂ (57) を 表 わ す。 ユ ン グ の マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル

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密 教 文 化 こ れ ら 彩 色 の 夢 の 絵 を 描 く こ と を 含 め た 心 理 分 析 の プ ロ セ ス は、 病 い の 根 幹 を つ き と め よ う と す る 治 療 の プ ロ セ ス で あ り、 こ れ は 観 点 を 変 え れ ば、 人 格 の 全 体 性 を め ざ す 自 己 自 身 (one's self) に な る プ ロ セ ス、 大 我 (Self) 実 現 の 道、 す な わ ち ﹁ 個 体 化 過 程 (individuation proecss)﹂ で あ る が、 こ の プ ロ セ ス は 常 に 精 神 病 医 と の 親 密 な 協 力 の も と に 歩 ま ね ば な ら な い。 ﹁ 個 体 化 ﹂ の 道 は 決 し て 平 坦 な も の で は な い し、 又、 危 険 を 持 た な い も の で も な い。 そ れ 故 に、 こ の 道 は 常 に ﹁ 同 (58) 行 ﹂ で 旅 さ れ ね ば な ら な い。 ﹁ 個 体 化 過 程 ﹂ に お け る 精 神 病 グ ル 医 と 患 者 と の 関 係 は、 丁 度、 秘 密 仏 教 に お け る 師 匠 と 弟 子 と の 関 係 に 酷 似 し て い る。 悟 り に 至 る 道 は 遠 く、 且 つ け わ し い。 グ ル そ の 道 を 最 後 ま で 歩 み つ づ け る た め に は 師 匠 の 指 導 が 不 可 欠 グ ル で あ る。 し か し 如 何 に 師 匠 が 偉 大 で あ ろ う と も、 弟 子 自 身 の ク ル 悟 り に 至 ら ん と す る 意 慾 と 精 進 が な い か ぎ り、 師 匠 は 如 何 と も な し 得 な い。 こ れ は 精 神 病 医 と 患 者 と の 間 に も 同 じ く 適 当 す る 関 係 で あ る。 ﹁ も し、 全 体 性 (totality) へ の ゴ ー ル、 す な わ ち、 患 者 の 内 在 的 潜 在 的 人 格 の 自 然 法 爾 的 な 実 現 が 円 熟 さ れ て く る な ら ば、 精 神 病 医 は 彼 の 理 解 の 援 助 を す る こ と が で き る で あ ろ う が、 も し そ の 実 現 が 自 然 に 生 育 し な い な ら ば、 (59) 単 純 に 植 え つ け る こ と が で き な い も の で あ る。 ﹂ つ ま り、 行 者 に 菩 提 を 求 め る 心、 す な わ ち 菩 提 心 が 欠 除 し て い る 場 合 に は、 如 何 な る 阿 闊 梨 と い え ど も 如 何 と も し が た い の で あ る。 さ て 多 種 多 様 の 真 正 の シ ン ボ ル が 患 者 の 夢 の セ リ ー ズ に 現 わ れ る の で あ る が、 そ れ ら の 最 後 に 一 つ の 光 景 が 突 発 的 な 視 覚 印 象 の 形 で 患 者 に 現 前 す る。 こ の 光 景 は 今 ま で 見 た 夢 や 幻 影 の 総 和 で あ り、 患 者 の 内 部 に ﹁ 最 も 荘 厳 な る 調 和 の 印 象 ﹂ (60) を つ く り だ す。 こ の 光 景 は 精 神 病 医 と の 協 力 の も と に 精 神 分 析 治 療 が 成 功 裡 に 進 展 し て、 そ の 終 局 を 迎 え た 時、 換 言 す れ ば ﹁ 個 体 化 過 程 ﹂ が 進 捗 し て 大 我 実 現 (Self-reion) が な さ れ る 時 に 忽 然 と し て 現 出 す る の で あ っ て、 こ れ が マ ン ダ ア セ ケ タ イ バ ル ラ で あ る。 ﹁ 個 体 化 過 程 ﹂ の シ ン ボ ル や 神 話 類 型 的 形 象 は、 す べ て よ り 高 次 の 綜 合 (synthesis) の 心 理 へ と、 異 な っ た 相 対 物 (61) を 統 括 (integrate) さ す ﹁ 止 揚 機 能 (trang fion)﹂ の 荷 い 手 で あ る が、 そ れ ら シ ン ボ ル 分 ﹁ 統 合 (Verien)﹂ で あ る マ ン ダ ラ の 出 現 に よ っ て、 今 ま で と は 明 白 に 区 別 さ れ る ス テ ﹂ ジ が 到 達 さ れ る。 こ れ は ﹁ 個 体 化 ﹂ の 道 が 最 終 点 に 達 し た 時、 換 言 す れ ば、 内 部 の 心 理 的 な も の が、 あ た か も 実 在 の 如 く 最 も 効 果 的 に、 心 理 学 的 に い う と、 ま っ た く 外 部 的

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実 在 の 世 界 の 如 く、 真 実 に 体 験 さ れ る 時 に 現 前 す る。 そ し て、 エ ゴ こ の マ ン ダ ラ 出 現 に よ っ て、 自 我 と 無 意 識 と の 間 の 平 衡 が 確 立 さ れ る の で あ る が、 こ の マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル は 今 ま で の シ ン ボ ル と 大 変 に 異 な っ た 形 で 表 わ さ れ る。 マ ン ダ ラ は 心 理 全 体 の 根 幹 的 イ メ ー ジ の 示 現 で あ る が、 そ れ は 何 時 も 各 部 分 を 対 象 的 に 配 列 し、 そ れ ら を 一 つ の 中 心 点 と 関 係 さ し て い る 多 (62) 少 と も 抽 象 的 な 示 現 の 形 で 展 示 さ れ る の で あ る。 ﹁ 如 何 に し て ユ ン グ の 心 理 学 が マ ン ダ ラ の そ の よ う な 解 釈 に 到 達 し た の か ﹂ の 問 い に た い す る 今 一 つ の 解 答 は ﹁ 歴 史 的 道 (historical)﹂ で あ る。 患 者 の 夢 の な か に 自 発 的 に 現 前 す る マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル の 意 味 を 明 瞭 に す る た め に、 ユ ン グ は 歴 史 の な か に そ の 解 答 を 探 ろ う と す る。 す な わ ち、 具 体 的 に は 歴 史 的 シ ン ボ ル、 特 に 中 世 の シ ン ボ リ ズ ム と の 比 較 方 法 を 採 用 す る の で あ る。 ユ ン グ は ﹁ 我 々 は、 も し 中 世 シ ン ボ リ ズ ム の 宝 庫 が な か っ た な ら ば、 心 理 学 的 相 似 を 発 見 し よ う と す る 我 々 の 試 み を 放 棄 せ ざ (63) る を 得 な い で あ ろ う。 ﹂ ﹁ 例 え ば、 も し 我 々 が 中 世 自 然 哲 学 の 内 観 的 方 法 を 研 究 す る と、 そ こ に は 円 が 繰 り 返 し て 用 い ら れ、 多 く の 場 合、 そ れ は 四 つ の 部 分 に 分 割 さ れ て 中 心 的 原 理 を 象 徴 す る が、 こ の 理 念 は 四 福 音 伝 道 者 や、 極 楽 の 四 河、 四 風 な ど を 伴 う 栄 光 の 王 (Rex glorae) の 数 多 く の 示 現 に 見 ら れ る 如 く、 四 位 一 体 の 聖 職 者 的 比 喩 か ら 借 用 し て い る こ と が 明 (64) 白 で あ る。 ﹂ そ し て ﹁ こ れ ら の 相 似 の す べ て は、 私 の 心 理 学 的 観 察 を、 そ れ ら の 歴 史 的 道 具 立 て の な か に 置 こ う と す る 試 み で あ っ て、 も し 歴 史 約 な 関 連 が な か っ た な ら ば、 そ れ ら は (65) 宙 に ぶ ら さ が り、 単 な る 好 奇 心 に と ど ま る で あ ろ う。 ﹂ 従 っ て ﹁ 私 は、 精 神 病 理 学 の 研 究 を 通 じ て、 こ れ ら の 歴 史 的 シ シ ボ (66) ル や 形 象 を、 そ れ ら の 墳 墓 か ら 掘 り だ さ ざ る を 得 な か っ た ﹂ と 語 る。 ユ ン グ 深 層 心 理 学 の 最 大 の 課 題 は、 患 者 の 夢 の マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル、 す な わ ち 近 代 的 マ ン ダ ラ の 解 釈 で あ る が、 そ の た め に ユ ン グ は、 ヤ コ ビ の 指 摘 す る 如 く、 十 四 年 間 に わ た っ て 歴 史 的 シ ン ボ ル や 形 象 の な か に、 そ れ ら と の 相 似 を 探 ぐ ら ね ば な ら な か っ た の で あ り、 こ こ に 彼 の い う ﹁ 歴 史 的 道 ﹂ が 存 在 す る の で あ る。 ﹁ 歴 史 的 道 ﹂ と し て ユ ン グ は、 東 西 の 歴 史 的 シ ン ボ ル の 研 究 を 通 じ て、 近 代 的 マ ン ダ ラ と の 相 似 を 探 求 し、 そ の 理 解 に 資 せ ん と す る の で あ る が、 特 に 中 世 の ハ ー メ テ ィ ッ ク (hersete) ユ ン グ の マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル

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密 教 文 化 哲 学、 す な わ ち 錬 金 術 の な か に、 す ば ら し い 相 似 を 見 出 す の で あ る。 彼 の 著 ﹃ 心 理 学 と 錬 金 術 ﹄ は、 そ の た め の 書 で あ っ て、 そ こ に は 古 代 の 錬 金 術 の 小 論 か ら 集 め ら れ た 豊 富 な 絵 画 的 資 料 が 詳 細 に 論 述 さ れ、 近 代 的 マ ン ダ ラ と の 著 し い 類 似 が 数 多 く 示 さ れ て い る。 錬 金 術 と ﹁ 個 体 化 過 程 ﹂ と は、 精 神 的 志 向、 時 代 や 環 境 の 条 件 の た め に 異 な っ て は い る が、 両 者 と も 人 間 を 自 己 実 現 へ 導 こ う と 試 み る。 ユ ン グ の い う ﹁ 止 揚 機 能 (transecneding funeciton)﹂ は シ ン ボ ル 形 成 の 過 程 に お い て、 た え ざ る 変 化 を な す 心 理 の す ば ら し い 包 容 力 に 名 づ け た も の で あ る が、 こ れ は 又、 ﹁ よ く 知 ら れ た 錬 金 術 的 シ ン ボ リ ズ ム に 表 示 さ れ る 如 く に、 中 世 哲 学 の 最 も 顕 著 な 対 象 で も あ (67) る ﹂。 従 っ て、 単 純 に 錬 金 術 の 精 神 的 動 向 を、 蒸 溜 器 と 溶 鉱 炉 の 事 柄 に 還 元 し よ う と す る 試 み は 誤 っ た も の で あ る。 ユ ン グ は 錬 金 術 を ﹁ 最 も 近 代 の 心 理 学 に 向 っ て 一 寸 立 ち ど ま っ て い る ス テ ッ プ で あ る ﹂ と も い う が、 た し か に 錬 金 術 は 化 学 的 実 験 の 事 柄 だ け で は な く し て、 ﹁ 擬 似 心 理 学 的 言 葉 で 表 現 し た 心 理 学 的 プ ロ セ ス の よ う な も の ﹂ で あ る。 錬 金 術 で 探 し 求 め ら れ る ﹁ 金 ﹂ は、 普 通 の 鉱 石 の 金 (arutm vulgi) で は な く て、 ﹁ 日 に 見 え な い 石 (lipsis invisivbtais)﹂ で あ り、 ﹁ 解 毒 剤 (alexipharon)﹂ で あ り、 ﹁ 不 老 長 寿 の 薬 (er oe)﹂ で あ る。 こ の ﹁ 金 ﹂ は 東 西 に わ た っ て、 実 に 無 数 の 名 前 で 呼 称 さ れ る の で あ る が、 道 教 で ﹁ 金 華 ﹂、 秘 密 仏 教 で ﹁ 金 剛 身 ﹂ (69) と 呼 ば れ る も の も、 そ の 一 例 で あ る。 い わ ゆ る ﹁ 密 教 ﹂ と 錬 金 術 と は、 非 常 に 密 接 な 関 係 が あ る の で あ っ て、 七 世 紀 中 葉 の 秘 密 仏 教 の 大 阿 闊 梨、 龍 樹 (Nagarujuna) も 錬 金 術 の 達 人 (70) で お っ た と 伝 え ら れ て い る の は 大 変 に 興 味 深 い。 患 者 の 夢 に 自 発 的 に 現 前 す る 近 代 的 マ ン ダ ラ と 歴 史 的 マ ン ダ ラ と の 関 係 は、 ﹁ 直 接、 或 は 間 接 的 伝 承 に よ っ て 打 ち 立 て ら れ る も の で は な く、 ま し て 何 一 つ 確 実 な 証 拠 が な い に も か か わ ら ず、 時 々、 憶 測 さ れ る 如 く、 秘 密 の 伝 承 に よ る も の で (71) も な い ﹂。 ユ ン グ は 彼 の 患 者 を 如 何 に 精 密 に 調 べ て み て も、 彼 等 が 歴 史 的 マ ン ダ ラ に 関 係 の あ る 文 献 を 読 ん で い た と か、 或 は そ れ ら の 観 念 に つ い て 何 か 別 の 方 面 か ら 情 報 を 得 て い た か も 知 れ な い と い う 可 能 性 を 一 度 も 見 出 す こ と が で き な い。 そ れ で 彼 は、 こ の こ と は ﹁ ど う や ら、 彼 等 の 無 意 識 が 最 近 の 二 千 年 間 に 繰 返 し 示 現 さ れ た 思 考 と 同 じ ラ イ ン に 沿 っ て 働 い た よ う に 思 わ れ る。 こ の よ う な 連 続 性 は、 も し 我 々 が 或 る 遺 伝 的 な 先 天 的 要 因 と し て 一 定 の 無 意 識 の 状 態 を 仮 定 す る 時 に

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の み 存 在 し う る も の で あ る が、 こ の こ と は 観 念 の 遺 伝 を 意 味 す る の で は な い。 そ れ は 証 明 す る の は 不 可 能 で は な い と し て も 困 難 な 筈 で あ り、 む し ろ 私 は、 こ の 遺 伝 的 性 質 を 同 一 の、 ヲ オ マ ず ル 或 は よ く 似 通 っ た 理 念 を 繰 り 返 し て つ く り だ す 定 形 的 可 能 性 (72) フ オ マ ニ ル の よ う な 何 か で あ る と 想 定 し て い る ﹂ と い う。 こ の 定 形 的 可 ア モ ケ タ イ ブ 能 性 が ユ ン グ の い う ﹁ 神 話 類 型 ﹂ で あ り、 そ れ は ﹁ な ん ら か サ イ キ の 意 味 で 脳 髄 と 関 係 し て い る 心 理 に 特 有 で あ る 構 造 的 性 質、 (73) 或 は 条 件 ﹂ で あ る が、 こ の ﹁ 神 話 類 型 ﹂ が 近 代 的 マ ン ダ ラ と 歴 史 的 マ ン ダ ラ と の 間 の 相 似、 或 は 連 続 性 の 存 在 理 由 (rason d '①etre) な の で あ る。 要 す る に ユ ン グ の ﹁ 歴 史 的 道 ﹂ は、 多 く の 類 似 現 象 を 観 察 し て、 そ の も ろ も ろ の 心 理 現 象 を 歴 史 的 に 整 理 し よ う と す る (74) 試 み で あ っ て、 伝 統 的 マ ン ダ ラ と 近 代 的 マ ン ダ ラ と の 歴 史 的 相 似 の 光 に 照 ら し て み る と、 ﹁ マ ン ダ ラ は 今 ま で 体 の な か に 隠 さ れ 眠 っ て い た も の が、 引 き だ さ れ て 再 び 生 命 を 与 え ら れ (75) た 神 的 存 在 を 象 徴 す る か、 或 は 人 間 の 神 的 存 在 へ の 変 身 が 行 わ れ る 器、 な い し は 場 所 を 象 徴 す る ﹂。 マ ン ダ ラ に た い す る こ う い っ た 形 式 的 表 現 は、 形 而 上 学 的 思 弁 と ま ぎ ら わ し い の で あ る が、 こ れ ら の 表 現 を も っ て ユ ン グ は 形 而 上 学 的 真 理 を 樹 立 し よ う と す る の で は な く て、 人 間 の 心 理 が、 マ ン ダ ラ の 現 前 に よ っ て ﹁ 荘 厳 な る 調 和 (sublime)﹂ を 感 ず る と い っ た 方 法 で 機 能 す る と い う 事 実 を 示 そ う と す る の で あ る。 五 最 後 に、 で き る だ け 今 迄 と の 重 復 を さ け な が ら、 ユ ン グ の マ ン ダ ラ の 特 徴 や 意 義 を 補 足 的 に 一 瞥 し て お こ う。 ユ ン グ が い う マ ン ダ ラ に は 二 種 類 が あ る。 一 つ は 伝 統 的、 或 は 歴 史 的 マ ン ダ ラ で あ り、 他 は 近 代 的、 或 は 個 人 的 マ ン ダ ラ で あ る。 前 者 は キ リ ス ト 教 的 マ ン ダ ラ や 仏 教 の マ ン ダ ラ を 含 む 歴 史 的 マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル で あ り、 後 者 は 近 代 人 の 夢、 幻 影、 空 想 な ど に 自 発 的 に 現 前 す る も の で あ る。 伝 統 的 マ ン ダ ラ は ﹁ 神 (deoty) の 性 質 を 哲 学 的 に 鮮 明 に す る た め の シ ン ボ ル と し て、 或 は 礼 拝 の 目 的 で 神 の 性 質 を 見 に 見 え る も の と し て 示 現 す る た め の シ ン ボ ル と し て、 或 は 東 洋 に お け る よ う に ヨ ー ガ 修 行 の た め の ヤ ン ト ラ と し て の 役 日 を 果 し た も の で サ ー ク ル あ っ て、 天 国 的 周 囲 の 全 体 性 ( 完 全 性 ) と 四 つ の 原 理、 或 は 元 素、 或 は 心 理 的 性 質 を 結 合 し て い る 大 地 の 正 方 形 は、 完 全 ユ ン グ の マ ン ダ ラ ・ シ ン ボ ル

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密 教 文 化 性 と 結 合 を 表 現 す る。 従 っ て マ ン ダ ラ は " シ ン ボ ル 統 合 " の (76) 状 態 を 持 っ て い る ﹂。 キ リ ス ト 教 的 マ ン ダ ラ と 仏 教 の そ れ と の 間 に は、 微 妙 な が ら 雲 泥 の 差 が 存 在 す る。 そ れ は 二 つ の 宗 教 の 本 質 的 差 異、 現 代 的 に い う な ら ば タ イ プ の 差 異 で あ る。 キ リ ス ト 教 で は、 決 し て ﹁ 私 は キ リ ス ト で あ る ﹂ と は い わ ず、 パ ゥ ロ が な し た 如 く ﹁ 私 が 生 き て い る の で は な い、 キ リ ス ト が 私 の な か に 生 き て い る の で あ る ﹂ と い う。 し か し 仏 教 で は ﹁ 汝 が 仏 で あ る こ と を 悟 る だ ろ う ﹂ と い う。 宗 教 の 根 本 体 験 に お い て は 両 者 は 同 一 的 で あ る が、 そ の 表 現 に お い て は 無 限 の 差 別 が あ る。 キ リ ス ト 教 徒 は キ リ ス ト の な か に 最 終 目 的 を 達 す る の で あ る が、 伝 教 徒 は 自 身 が 仏 で あ る こ と を 悟 る の で エ ゴ あ る。 前 者 は 無 常 の、 自 我 に と ら わ れ た 意 識 世 界 か ら 脱 却 す る の で あ る が、 後 者 は 不 断 に、 神 や 宇 宙 的 実 在 と 同 一 で あ る (77) 自 己 の 内 的 性 質 の 永 遠 の 基 盤 の 上 に 休 ら う の で あ る。 キ リ ス ト 教、 仏 教 を 含 め た 伝 統 的、 或 は 歴 史 的 マ ン ダ ラ は、 も し そ れ ら が 単 に 歴 史 的 意 義 し か 持 た な い も の で あ れ ば、 そ れ ら は 嘗 っ て は 生 き 生 き と し た シ ン ボ ル で あ っ た が、 現 代 に お い て は 死 に た え た シ ン ボ ル に す ぎ な い。 と い う の は、 そ れ (78) ら は 現 代 に お い て、 意 味 の 多 様 性 を 持 た な い か ら で あ る。 こ れ に 対 し て 近 代 的 マ ン ダ ラ は、 近 代 人 が 夢、 幻 影、 空 想 な ど の な か に 見 る 生 き た シ ン ボ ル で あ っ て、 ﹁ 能 動 的 想 像 (aetve (79) imagingtion)﹂ を 通 じ て 展 開 さ れ る。 こ の マ ン ダ ラ は 上 述 の 伝 統 的、 歴 史 的 マ ン ダ ラ と 著 し く 相 似 し て い る が、 完 全 に 同 じ と い う わ け で は な い。 伝 統 的 マ ン ダ ラ で は 中 心 的 形 象 の 重 要 さ を 強 調 す る た め に つ く ら れ 来 っ た と 思 え る 程 に、 す べ て 中 心 を 強 調 し て い る し、 た い で い の 場 合、 中 心 部 は 神 や 仏 で (80) 占 め ら れ て い る。 歴 史 的 類 似 に よ る 先 入 観 を 持 つ 我 々 は、 近 代 的 マ ン ダ ラ の 中 心 に も 神 や 仏 が 鎮 座 し て い る と 考 え が ち で あ る が、 そ こ に 神 や 仏 が い た こ と は 一 度 も な い。 中 心 は 一 般 的 に 強 調 さ れ て い る が、 そ こ に は 神 な ど と は 非 常 に 異 な っ た 意 味 を 持 つ シ ン ボ ル で 占 め ら れ て い る。 例 え ば そ れ は、 星、 太 陽、 一 輪 の 花、 等 辺 十 字 架、 宝 石、 水 や 葡 萄 酒 を 入 れ た 瓶、 (81) と ぐ ろ を ま い た 蛇、 あ る い は 人 間 で あ っ た り す る。 こ れ ら の シ ン ボ ル が、 ど の よ ﹂ な 意 義 を 持 つ も の で あ る か は、 先 ず そ れ ら の マ ン ダ ラ を 見 た 当 人 に、 そ れ ら の シ ン ボ ル を 崇 拝 し て い る か と 聞 い て み る 必 要 が あ る。 彼 等 は そ れ ら が 崇 拝 の 対 象 で あ っ た こ と は 否 定 す る が、 同 時 に、 そ れ ら は 彼 等 自 身 の な か に あ る 一 つ の 中 心 を 象 徴 し て い る の で あ る と 断 言 す る。 そ

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