• 検索結果がありません。

ヴァリュー・アット・リスクの導入と最適ポートフォリオ修正の含意-香川大学学術情報リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ヴァリュー・アット・リスクの導入と最適ポートフォリオ修正の含意-香川大学学術情報リポジトリ"

Copied!
28
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

香 川 大 学 経 済 論 叢 第68巻 第2・3号 1995年11月 447-474

ヴァリュー・アット・リスクの導入と

最適ポートフォリオ修正の含意

1. 序論 (1)デリヴァティブの発展と銀行経営 (2)規制当局の対応 (3)本論文の位置づけ

2

.

リスク概念の再検討 (1)投資のリスク (2)目標リターンと効率フロンティア

3

.

ヴアリュー・アツト・リスクの導入 (I)VaR算出の基本手順 (2)VaRの理論的考察

4

.

結論,及び最適ポートブォリオ修正の合意 1.序論 (1)デリヴァティブの発展と銀行経営

鈴 木 智 弘

土 地 明 徳

リスクをへツジするために生まれた金融商品の技術進歩が,企業の財務的手 法に影響を与えたばかりではなく,いま,金融機関の経営のあり方をも大きく 変えようとしている。 1980年代以降のデリヴァティブ市場の拡大は目覚まし (I) J二地明徳:AJGインベストメント東京駐在員事務所,クウォンツ運用本部長 香 川 大 学 経 済 論 叢 第68巻 第 2・3号 1995年11月 447-474

ヴァリュー・アット・リスクの導入と

最適ポートフォリオ修正の含意

1. 序論 (1)デリヴァティブの発展と銀行経営 (2)規制当局の対応 (3)本論文の位置づけ

2

.

リスク概念の再検討 (1)投資のリスク (2)目標リターンと効率フロンティア

3

.

ヴァリュー・アット・リスクの導入 (I)VaR算出の基本手順 (2)VaRの理論的考察 4. 結論,及び最適ポートフォリオ修正の合意 1.序論 (1)デリヴァティブの発展と銀行経営

鈴 木 智 弘

上 地 明 徳

リスクをへッジするために生まれた金融商品の技術進歩が,企業の財務的手 法に影響を与えたばかりではなく,いま,金融機関の経営のあり方をも大きく 変えようとしている。 1980年代以降のデリヴァティブ市場の拡大は目覚まし (1) 上地明徳:AJGインベストメント東京駐在員事務所,クウォンツ運用本部長

(2)

448ー 香川大学経済論叢 く,金融市場におけるデリヴァティプの意義と役割は計りしれないほどに大き い。デリヴァティブ技術の進展は,リスクの分解を可能にするとともにリスク の管理コストの低下をもたらし,金融市場を効率的に機能させ,結果的に社会 的厚生を高めたといってもよいだろう。しかしながら反面,次々と高度なリス ク構造を有する新金融商品を生み出し,そのためにリスク管理の失敗から経営 破綻に直面する企業が続出し,なかには地方自治体政府が財政危機に陥るとい コた事態にまで見舞われた。 金融機関のデリヴァテイプ利用度も 90年代に入って加速度的に増え続け, いまではデリヴァティブの残高が総資産をはるかに上回っている。米銀を例に 説明すると(表

1-

1),パンカース・トラスト,

JP

モ/レガンに代表されるよ うに収益力の高い銀行ほどデリヴアティブの依存度が高いように思われる。最 近発表されたニューヨーク連邦準備銀行のレポート「伝統的銀行業務の衰退」 表 1ー1 米銀のデリヴァティプ想定元本残高 < 1993年 6月 末 > (出戸万)American Banker 単位:億ドル 残 r,ニヰ司 総資産に対する倍率 1.ケミカル 21,140 19.1 2.パンカース 18,023 28.2 3.シティノてンク 17,893 10.6 4. JPモルガン 15,375 14.9 5.チエース 10,261 12.8 6.ノfンカメリカ 8,935 6.7 7. F⑩シカゴ 4,574 13.4 8.コンチネンタノレ 1,699

u

9.リパブリック NY 1,677 5.9 10.パンクオブ NY 922 2.6 (2 ) 英国ベアリングス社,米関オレンジ郡の2例はあまりに有名。いずれの場合も破綻の 原因はリスク管理の失敗にあるのであって,デリヴアティブそのものに原因があるとす る一部の意見は明らかに間違っている。 448ー 香川大学経済論叢 644 く,金融市場におけるデリヴァティプの意義と役割は計りしれないほどに大き い。デリヴァティブ技術の進展は,リスクの分解を可能にするとともにリスク の管理コストの低下をもたらし,金融市場を効率的に機能させ,結果的に社会 的厚生を高めたといってもよいだろう。しかしながら反面,次々と高度なリス ク構造を有する新金融商品を生み出し,そのためにリスク管理の失敗から経営 破綻に直面する企業が続出し,なかには地方自治体政府が財政危機に陥るとい った事態にまで見舞われた。 金融機関のデリヴァティプ利用度も 90年代に入って加速度的に増え続け, いまではデリヴァティブの残高が総資産をはるかに上回っている。米銀を例に 説明すると(表

1-

1),パンカース・トラスト,

JP

モ/レガンに代表されるよ うに収益力の高い銀行ほどデリヴァティブの依存度が高いように思われる。最 近発表されたニューヨーク連邦準備銀行のレポート「伝統的銀行業務の衰退」 表 1ー1 米銀のデリヴァティプ想定元本残高 ぐ1993年 6月 末 > (出所)American Banker 単位:億ドル 残 r,ニヰ司 総資産に対する倍率 1.ケミカル 21,140 19.1 2.パンカース 18,023 28.2 3.シティノてンク 17,893 10.6 4. JPモルガン 15,375 14.9 5.チエース 10,261 12.8 6.ノfンカメリカ 8,935 6.7 7. F⑩シカゴ 4,574 13.4 8.コンチネンタノレ 1,699

u

9.リパブリック N Y 1,677 5.9 10.ノTンクオブ。 N Y 922 2.6 (2 ) 英国ベアリングス社,米関オレンジ郡の2例はあまりに有名。いずれの場合も破綻の 原因はリスク管理の失敗にあるのであって,デリヴアティブそのものに原因があるとす る一部の意見は明らかに間違っている。

(3)

645 ヴアリュー・アy卜・リスクの導入と最適ポートブォリオ修正の含意 ~449 ー によれば,①米国の貸出総額に占める商業銀行のシェアが74年の35%から現 在までは22%に低下し,採算も悪化してきていることを検証し,②コマーシ ャノレペーパーの急増など金融自由化や直接金融へのシフトが伝統的な銀行業務 である融資業務の衰退を招き,結果としてオフバランスのデリヴァティブ取引 に活路を見出したこと。そうしたうえで,③野放しにしておくと金融システム の安定性を損なう可能性があることから,金融行政も新たな対応が必要である と提言している。 このように今や米銀のデリヴァティブ残高は,オンバランス資産に比べて数 十倍の大きさに膨れあがっており,米銀においては銀行の中核業務になってい る。とりわけ総資産に対するオフバランスの割合が大きいパンカースと

J

P

モ lレガンは, リスク軽減のための管理手法の開発に力を入れ,市場リスクのみな らず企業の格付けや信用リスクに応じて融資の利率や限度額を計量的に決める 手法を開発しており,市場リスクと信用リスクの一元管理がなされている。資 産の効率的な配分の決定,つまり戦略的なポートプォリオの決定こそが,

1

9

8

0

年代における量重視の時代から

1

9

9

0

年代後半の質重視の時代に向けての銀行 経営の重要なファクターとなるであろう。 日本の銀行のリスク管理システム技術もアメリカの後を追っており,市場リ スク対策としてはヴァリューアットリスクを利用した銀行による自前のリスク 管理モデルが完成しつつある。特にディーリング管理システムについては進ん でおり,運用元本の上限を定めた従来の持ち高制限を廃止し,毎朝担当役員レ ベルによる会合においてその日の運用において被る可能性のある予想最大損失 額をヴアリューアットリスクに基づいて算出し,その結果を担当部門に伝達す るといったリスク即応型の管理システムが一部の銀行に採用されはじめてい る。しかし信用リスクを計量化した融資管理システムについては,日本独特の メインパンク制,継続的取引関係,担保主義等の要因によって融資の条件が決 定されることから,十分なリスク管理システムのもとに意志決定がなされてい ないのが実情、である。一部の大手銀行に取引先のデフォノレト確率を計算して銀 行全体の最大損失額を予測する手法を取り入れる動きが見られるが,もし,こ 645 ヴアリュー・アy卜・リスクの導入と最適ポートブォリオ修正の含意 ~449 ー によれば,①米国の貸出総額に占める商業銀行のシェアが74年の35%から現 在までは22%に低下し,採算も悪化してきていることを検証し,②コマーシ ャノレペーパーの急増など金融自由化や直接金融へのシフトが伝統的な銀行業務 である融資業務の衰退を招き,結果としてオフバランスのデリヴァティブ取引 に活路を見出したこと。そうしたうえで,③野放しにしておくと金融システム の安定性を損なう可能性があることから,金融行政も新たな対応が必要である と提言している。 このように今や米銀のデリヴァティブ残高は,オンバランス資産に比べて数 十倍の大きさに膨れあがっており,米銀においては銀行の中核業務になってい る。とりわけ総資産に対するオフバランスの割合が大きいパンカースと

J

P

モ lレガンは, リスク軽減のための管理手法の開発に力を入れ,市場リスクのみな らず企業の格付けや信用リスクに応じて融資の利率や限度額を計量的に決める 手法を開発しており,市場リスクと信用リスクの一元管理がなされている。資 産の効率的な配分の決定,つまり戦略的なポートプォリオの決定こそが,

1

9

8

0

年代における量重視の時代から

1

9

9

0

年代後半の質重視の時代に向けての銀行 経営の重要なファクターとなるであろう。 日本の銀行のリスク管理システム技術もアメリカの後を追っており,市場リ スク対策としてはヴァリューアットリスクを利用した銀行による自前のリスク 管理モデルが完成しつつある。特にディーリング管理システムについては進ん でおり,運用元本の上限を定めた従来の持ち高制限を廃止し,毎朝担当役員レ ベルによる会合においてその日の運用において被る可能性のある予想最大損失 額をヴアリューアットリスクに基づいて算出し,その結果を担当部門に伝達す るといったリスク即応型の管理システムが一部の銀行に採用されはじめてい る。しかし信用リスクを計量化した融資管理システムについては,日本独特の メインパンク制,継続的取引関係,担保主義等の要因によって融資の条件が決 定されることから,十分なリスク管理システムのもとに意志決定がなされてい ないのが実情、である。一部の大手銀行に取引先のデフォノレト確率を計算して銀 行全体の最大損失額を予測する手法を取り入れる動きが見られるが,もし,こ

(4)

450 香川大学経済論議 646 のように米銀並みの信用管理システムが確立されてくるならば,従来の銀行と 企業との聞の市場原理からかけ離れた日本的な関係にも大きな変容をもたらす 可能性が大いにあるといえるだろう。 本節においてはリスク管理システムの発展の要因をデリヴァティブの成長を 軸に説明してきたが,実は規制当局の果たした役割もまた大きい。次の節では 規制当局によるデリヴァティブ規制法案とそれに対する金融機関ならびに民間 研究機関の対応を中心にして現在までの動向をアメリカを中心に簡単にサーベ イすることにする。

(

2

)規制当局の対応 デリヴァティブ取引に関する規制論議は, 1992年 1月の NY連銀総裁コリ ガンによるニューヨーク州銀行協会でのスピーチから始まった。彼はそのスピ ーチのなかで,前節で述べたようなオフバランス取引の拡大に懸念を表明し, その対策として規制当局が何らかの形で監督をする必要性を訴えたのである。 これに対するユーザー側の立場である銀行側の反応は極めてすばやいものがあ った。

J

P

モルガンの会長であるデニス・ウェザーストーンを中心に金融機 関,連銀OBから構成されるクゃループ・オブ・サーティー(G30)が, 'Deriva -tives Practices and PrinciplesJと題するレポートのなかでデリヴアティブ の金融市場での必要不可欠な役割を力説した後に,大切なのは規制ではなくユ ーザー自身による管理システムの構築であると説き,見事な皇室制球をコリガン に投じたのである。さらにそのなかでリスク管理の一手段としてのヴァリュー アットリスクという具体的手法がユーザー側に示され,今後のリスク管理のあ るべき姿を示した。 ところが例年に入るとデリヴァティブ取引の失敗による経営破綻が続出し たことから,規制当局も何らかの対応を採らざるをえない事態になってきた。 (3) 94年は特に,へッジファンドの破綻が相次ぎ,議会ではデリヴアティブのみならずへ アジアアンドの活躍を資金面から支えていた銀行,証券会社の過剰な与信行為が問題と なった。さらにプロクター・アンド・ギャンブルによるスワップ取引の失敗,カリブオ ルニア州オレンジ郡の破綻,ベアリングス事件などが続いた。 450 香川大学経済論議 646 のように米銀並みの信用管理システムが確立されてくるならば,従来の銀行と 企業との聞の市場原理からかけ離れた日本的な関係にも大きな変容をもたらす 可能性が大いにあるといえるだろう。 本節においてはリスク管理システムの発展の要因をデリヴァティブの成長を 軸に説明してきたが,実は規制当局の果たした役割もまた大きい。次の節では 規制当局によるデリヴアティブ規制法案とそれに対する金融機関ならびに民間 研究機関の対応を中心にして現在まごの動向をアメリカを中心に簡単にサーベ イすることにする。

(

2

)規制当局の対応 デリヴァティブ取引に関する規制論議は, 1992年 1月の NY連銀総裁コリ ガンによるニューヨーク州銀行協会でのスピーチから始まった。彼はそのスピ ーチのなかで,前節で述べたようなオフバランス取引の拡大に懸念を表明し, その対策として規制当局が何らかの形で監督をする必要性を訴えたのである。 これに対するユーザー側の立場て、ある銀行側の反応は極めてすばやいものがあ った。

T

P

モルガンの会長であるデニス・ウェザーストーンを中心に金融機 関,連銀OBから構成されるグループ・オブ・サーティー(G30)が, 'Deriva -tives Practices and PrinciplesJと題するレポートのなかでデリヴアティブ の金融市場での必要不可欠な役割を力説した後に,大切なのは規制ではなくユ ーザー自身による管理システムの構築であると説き,見事な皇室制球をコリガン に投じたのである。さらにそのなかでリスク管理の一手段としてのヴァリュー アットリスクという具体的手法がユーザー側に示され,今後のリスク管理のあ るべき姿を示した。 ところが例年に入るとデリヴァティブ取引の失敗による経営破綻が続出し たことから,規制当局も何らかの対応を採らざるをえない事態になってきた。 (3) 94年は特に,へッジファンドの破綻が相次ぎ,議会ではデリヴァティブのみならずへ アジアアンドの活躍を資金面から支えていた銀行,証券会社の過剰な与信行為が問題と なった。さらにプロクター・アンド・ギャンブルによるスワップ取引の失敗,カリフオ ルニア州オレンジ郡の破綻,ベアリングス事件などが続いた。

(5)

647 ヴァリュー・アット・リスクの導入と最適ポートフォリオ修正の含意 -451 議会では数々の公聴会が聞かれ,いくつかのデリヴアティブ規制法案が提出さ れる。内容は金融機関にたいして自己勘定部門のデリヴアテイブ取引を禁止す る過激なものもあったが,大枠としては規制当局の権限強化と取引制限を主眼 とするものであった。しかし,こうした議会の動きにたいして業界はもとより 規制当局も法的規制に反対にまわったことは注目に値する。その後に BIS(国 際決済銀行)によって提出された「デリヴ、アティブ取引に関するリスク管理ガ イドライン」や「金融仲介機関によるマーケット・リスクのパブリック・ディ スクロージャーに関する討議用ペーパー」等』こ目を通すと,ある程度今後の方 向性を探ることができるので,そのなかで重要な点をいくつか抜粋すると, ①リスク管理のための規則の明文化,取締役会による承認 ②独立したリスク管理部門の設置と専門スタッフの配置 ③デリヴ、アティブ取引に伴うリスクに対する十分な自己資本の保持 ④ストレステスト(最悪シナリオ)を考慮したリスクの計量化 ⑤リスク許容度の設定 ⑥内部監査の充実によるリスク管理業務のチェック ⑦VaRによる毎日の市場リスクの測定 ⑧流動性リスクのチェック ⑨マージンコーノレの際の資金調達力のチェック ⑩法的リスク管理体制のチェック 以上のように,金融機関自身の内部リスク管理能力を高めることによって市 場の健全な発展を促そうという方向づけを与えるとともに,さらに後者のレポ ート(いわゆるブイツシャーレポート)においては,上の十分なリスク管理体 制のもとで金融機関はリスクヱクスポージャーに関する情報を継続的にディス クローズすることが奨励されるようになっていった。つまり全体的な方向とし ては, ・デリヴァティブ取引に関しては,規制よりも金融機関自身による内部リス ク管理システムの整備をする。 (4 ) 詳細は“RiskManagement Guidelines for Derivatives" (BIS), 1994 647 ヴァリュー・アット・リスクの導入と最適ポートフォリオ修正の含意 451 議会では数々の公聴会が聞かれ,いくつかのデリヴァティブ規制法案が提出さ れる。内容は金融機関にたいして自己勘定部門のデリヴアティブ取引を禁止す る過激なものもあったが,大枠としては規制当局の権限強化と取引制限を主眼 とするものであった。しかし,こうした議会の動きにたいして業界はもとより 規制当局も法的規制に反対にまわったことは注目に値する。その後に BIS(国 際決済銀行)によって提出された「デリヴアティブ取引に関するリスク管理ガ イドライン」や「金融仲介機関によるマーケット・リスクのパブリック・ディ スクロージャーに関する討議用ペーパー」等に目を通すと,ある程度今後の方 向性を探ることができるので,そのなかで重要な点をいくつか抜粋すると, ①リスク管理のための規則の明文化,取締役会による承認 ②独立したリスク管理部門の設置と専門スタッフの配置 ③デリヴ、アティブ取引に伴うリスクに対する十分な自己資本の保持 ④ストレステスト(最悪シナリオ)を考慮したリスクの計量化 ⑤リスク許容度の設定 ⑥内部監査の充実によるリスク管理業務のチェック ⑦VaRによる毎日の市場リスクの測定 ⑧流動性リスクのチェック ⑨マージンコーノレの際の資金調達力のチェック ⑩法的リスク管理体制のチェック 以上のように,金融機関自身の内部リスク管理能力を高めることによって市 場の健全な発展を促そうという方向づけを与えるとともに,さらに後者のレポ ート(いわゆるブイツシャーレポート)においては,上の十分なリスク管理体 制のもとで金融機関はリスクエクスポージャーに関する情報を継続的にディス クローズすることが奨励されるようになっていった。つまり全体的な方向とし ては, ・デリヴァティブ取引に関しては,規制よりも金融機関自身による内部リス ク管理システムの整備をする。 (4 ) 詳細は“RiskManagement Guidelines for Derivatives" (BIS), 1994

(6)

-452- 香川大学経済論首長 648 -リスク計量化のためのツールとしてのVaRの推奨(市場リスクの管理)0 ・貸付企業のリスクを倒産確率として把握する(信用リスクの管理)。 ・市場リスクと信用リスクの一元的な管理体制の確立。 ・以上のリスクエクスポージャーを市場および規制当局にたいしてディスク ローズすること。 等が挙げられ,アメリカにおけるリスク規制の流れは以上のようにその要点を 把握できるであろう。日本においてもその方向性は大筋において同じで,当局 による規制ではなく,自らのリスク管理を開示することによって市場に評価を 委ねるという健全な方向ヘリスク管理システムのインフラ整備が進んでいると いってよいだろう。

(

3

)本論文の位置づけ 今まで見てきたように銀行の収益力にとってリスク・マネジメント能力の有 無が,高水準のオフバランス比率という環境のもとでは決定的に重要であるこ とがわかった。通常,銀行のリスク・マネジメントを論じる場合,銀行財務に おける資産と負債の両面からの総合管理的アプローチ(ALM)によって戦略的 リスク・マネジメント論を展開していくが,本論文においては銀行の資産が安 全資産と危険資産との聞にどのようにアロケーションされるかを新しいリスク 管理システム,つまりヴァリュー・アツト・リスク導入の仮定のもとで独自の 理論的考察を試みようとするもので、ぁ

2

。本論文における安全資産及び、危険資 産の概念は狭義の概念であり,銀行のトレーディング勘定における「債・券」か 「株式」か, という意味で使われている。デフォノレトリスク概念を融資に関す る意志決定にモデル化して取りいれることができればバンキング勘定をも視野 に入れて,.貸出」か「有価証券」かという最適資産構成論まで発展させるこ とができるであろう。この問題は今後の研究課題にするとして,本論文にて論 じられるのは,ヴアリュー・アット・リスクなるリスク管理システムが銀行に (5) ALM分析にシミュレーション診断システムを導入したものに,浜口・上地・大塚 [1]がある。 -452- 香川大学経済論首長 648 -リスク計量化のためのツールとしてのVaRの推奨(市場リスクの管理)0 ・貸付企業のリスクを倒産確率として把握する(信用リスクの管理)。 -市場リスクと信用リスクの←元的な管理体制の確立。 ・以上のリスクエクスポージャーを市場および規制当局にたいしてディスク ローズすること。 等が挙げられ,アメリカにおけるリスク規制の流れは以上のようにその要点を 把握できるであろう。日本においてもその方向性は大筋において同じで,当局 による規制ではなく,自らのリスク管理を開示することによって市場に=荊面を 委ねるという健全な方向ヘリスク管理システムのインフラ整備が進んでいると いってよいだろう。

(

3

)本論文の位置づけ 今まで見てきたように銀行の収益力にとってリスク・マネジメント能力の有 無が,高水準のオフバランス比率という環境のもとでは決定的に重要であるこ とがわかった。通常,銀行のリスク・マネジメントを論じる場合,銀行財務に おける資産と負債の両面からの総合管理的アプローチ (ALM)によって戦略的 リスク・マネジメント論を展開していくが,本論文においては銀行の資産が安 全資産と危険資産との聞にどのようにアロケーションされるかを新しいリスク 管理システム,つまりヴァリュー・アツト・リスク導入の仮定のもとで独自の 理論的考察を試みようとするもので、ぁ

2

。本論文における安全資産及び危険資 産の概念は狭義の概念であり,銀行のトレーディング勘定における「債・券」か 「株式」か, という意味で使われている。デフォノレトリスク概念を融資に関す る意志決定にモデル化して取りいれることができればバンキング勘定をも視野 に入れて,.貸出」か「有価証券」かという最適資産構成論まで発展させるこ とができるであろう。この問題は今後の研究課題にするとして,本論文にて論 じられるのは,ヴァリュー・アット・リスクなるリスク管理システムが銀行に (5) ALM分析にシミュレーション診断システムを導入したものに,浜口・上地・大塚 [1]がある。

(7)

649 ヴァリュー・ア yト・リスクの導入と最適ポートフォリオ修正の合意 453ー 導入されると銀行のポートフォリオにいかなる影響を与えることになるのかと いう問題である。リスクセンシティブな管理体制のもとで,危険回避的で合理 的な投資家は果たして投資に関する意志決定行動をどのように修正を加えるだ ろうか。 そこで予想される一つの結果は,管理システムがセンシティブであればある ほど意志決定者の行動は

R

i

s

k

-

a

v

e

r

s

e

になりそうである。果たしてそうであ るのか,実務レベルの例を挙げて説明したい。例えば債券ディーリング部門の 評価システムにヴアリューアットリスクが導入されたとする。

VaR

で評価し た最大損失額が

1

0

億円の

A

氏と

5

0

億円の

B

氏がいて,かりに

A

氏が

5

億 円の利益をあげ,

B

氏が

1

0

億円の利益をあげた場合,新しい

VaR

による評 価システムのもとでは利益額の多い

B

氏よりも利益額の少ない

A

氏の方が高 い評価を受けてしまうことになる。融資についても同じことで,倒産確率の高 いプロジェクトで高収益を得てもそれは高い評価にはつながらない事になる。 ファンドマネージャー,ディーラー,融資担当者などの意志決定主体の行動は, 合理的であればあるほど危険回避的になり安全資産への選好を強めるかたちで ポートブォリオに修正を加えそうである。ところが本論文の結論は,管理シス テムにおけるセンシティビティーの度合によっては,実はかえってリスキーな 投資行動を彼らにとらせてしまう危険性があることを明らかにした点にある。 そのために次のような順序で議論を進めることにする。 本論文では,まずリスク概念の再検討から始まる。通常の最適ポートフォリ オを論じる場合,そのアプローチとしてマーコヴイツツ流の「平均・分散接近 法」が用いられる。ところが分散とはポ)トフォリオの収益分布の平均からの ばらつきの度合を意味するものであって,マネー・マネージャーの立場からす れば平均を上回る収益については大歓迎である。彼らにとってのリスクとは, ある一定の目標リターンをアンダーパフォームすることなのである。そこで新 しいリスク測度であるダウンサイドリスク概念を包括する「平均下方部積率モ デル」の適用を試みた。そのなかで,投資家が目標リターンをどのように設定 するかによってポートフォリオの内容が変わりうる様子が説明されている。そ 649 ヴァリュー・ア yト・リスクの導入と最適ポートフォリオ修正の合意 453ー 導入されると銀行のポートフォリオにいかなる影響を与えることになるのかと いう問題である。リスクセンシティブな管理体制のもとで,危険回避的で合理 的な投資家は果たして投資に関する意志決定行動をどのように修正を加えるだ ろうか。 そこで予想される一つの結果は,管理システムがセンシティブであればある ほど意志決定者の行動は

R

i

s

k

-

a

v

e

r

s

e

になりそうである。果たしてそうであ るのか,実務レベノレの例を挙げて説明したい。例えば債券ディーリング部門の 評価システムにヴアリューアットリスクが導入されたとする。

VaR

で評価し た最大損失額が

1

0

億円のA氏と

5

0

億円のB氏がいて,かりにA氏が

5

億 円の利益をあげ,

B

氏が

1

0

億円の利益をあげた場合,新しい

VaR

による評 価システムのもとでは利益額の多いB氏よりも利益額の少ないA氏の方が高 い評価を受けてしまうことになる。融資についても同じことで,倒産確率の高 いプロジェクトで高収益を得てもそれは高い評価にはつながらない事になる。 ファンドマネージャー,ディーラー,融資担当者などの意志決定主体の行動は, 合理的であればあるほど危険回避的になり安全資産への選好を強めるかたちで ポートブォリオに修正を加えそうである。ところが本論文の結論は,管理シス テムにおけるセンシティビティーの度合によっては,実はかえってリスキーな 投資行動を彼らにとらせてしまう危険性があることを明らかにした点にある。 そのために次のような順序で議論を進めることにする。 本論文では,まずリスク概念の再検討から始まる。通常の最適ポートフォリ オを論じる場合,そのアプローチとしてマーコヴイツツ流の「平均・分散接近 法」が用いられる。ところが分散とはポ)トブォリオの収益分布の平均からの ばらつきの度合を意味するものであって,マネー・マネージャーの立場からす れば平均を上回る収益については大歓迎である。彼らにとってのリスクとは, ある一定の目標リターンをアンダーパフォームすることなのである。そこで新 しいリスク測度であるダウンサイドリスク概念を包括する「平均下方部積率モ デル」の適用を試みた。そのなかで,投資家が目標リターンをどのように設定 するかによってポートフォリオの内容が変わりうる様子が説明されている。そ

(8)

-454ー 香川大学経済論叢 650 してヴァリュー・アット・リスクについての説明がその算出過程から始まっ て,導入後のポートフォリオ修正の含意を考えていくことになる。 このようなヴァリュー・アット・リスクをポートプォリオ理論の立場から論 じたものは,恐らく本論文が初めてであろう。銀行の資産保有規制について論 じたものは幾っか見られるが,それらは規制と銀行倒産との関係について論じ たものがほとんどである。ヴァリュー・アット・リスクの考え方自体が最近の ものであることからして仕方ないことであるが, リスク管理システムの優劣が 金融機関の収益に決定的な差異をつけるものであるとするならば,今後のより 一層の研究がこの分野に注がれるべきであろう。実際最近の傾向であるが,先 端的なデリヴアティブ技術を有する人達の多くは, トレーデイングセクション や商品開発部からリスク管理部門へと人材移動が起こっているような気がす る。また,これまでは有価証券保有規制,融資規制,業際規制などの政府規制 の存在が銀行の競争を阻害し,独自に効率的なポートフォリオを動的に構築し ていく必要性はなかったのかもしれない。パブノレ期においては,ただひたすら 量的拡大をめざしつつそれに伴い収益も比例的に増大していったが,一転パブ ノレ崩壊後は極端にリスクをとることを避け続けてきた。銀行経営において銀行 独自のリスク判断と戦略的なリスク管理という発想が生まれなかったのも当然 といえよう。もちろん筆者たちは規制を悪玉としてつるし上げるものではな い。銀行の破綻時における負の外部性から規制が社会的厚生を高める可能性も 無視できないからだ。本論文においても最後に指摘されるが,ヴ、アリュー・ア ツト・リスクの導入に異議を申し立てるのではなく,リスク値の決定に'慎重に なるべきであると説いている。 また,この分野の内容はインターディシプリナリーなもので,必要とされる 領域も銀行論,オプション理論,組織論,金融実務などきわめて幅が広く,横 断的な知識と理解が必要とされる。したがって本論文も専門分野の異なる二人 の共著という形をとり 2人による繁雑な討議の結果完稿されるに至った。内 容的にはヴアリューアットリスクの導入が銀行の最適資産構成に影響を与える のではないかという問題提起と若干のオリジナルな展望が試みられており,各 -454ー 香川大学経済論叢 650 してヴァリュー・アット・リスクについての説明がその算出過程から始まっ て,導入後のポートフォリオ修正の含意を考えていくことになる。 このようなヴァリュー・アット・リスクをポートプォリオ理論の立場から論 じたものは,恐らく本論文が初めてであろう。銀行の資産保有規制について論 じたものは幾っか見られるが,それらは規制と銀行倒産との関係について論じ たものがほとんどである。ヴァリュー・アット・リスクの考え方自体が最近の ものであることからして仕方ないことであるが, リスク管理システムの優劣が 金融機関の収益に決定的な差異をつけるものであるとするならば,今後のより 一層の研究がこの分野に注がれるべきであろう。実際最近の傾向であるが,先 端的なデリヴアティブ技術を有する人達の多くは, トレーデイングセクション や商品開発部からリスク管理部門へと人材移動が起こっているような気がす る。また,これまでは有価証券保有規制,融資規制,業際規制などの政府規制 の存在が銀行の競争を阻害し,独自に効率的なポートフォリオを動的に構築し ていく必要性はなかったのかもしれない。パブノレ期においては,ただひたすら 量的拡大をめざしつつそれに伴い収益も比例的に増大していったが,一転パブ ノレ崩壊後は極端にリスクをとることを避け続けてきた。銀行経営において銀行 独自のリスク判断と戦略的なリスク管理という発想が生まれなかったのも当然 といえよう。もちろん筆者たちは規制を悪玉としてつるし上げるものではな い。銀行の破綻時における負の外部性から規制が社会的厚生を高める可能性も 無視できないからだ。本論文においても最後に指摘されるが,ヴ、アリュー・ア ツト・リスクの導入に異議を申し立てるのではなく,リスク値の決定に'慎重に なるべきであると説いている。 また,この分野の内容はインターディシプリナリーなもので,必要とされる 領域も銀行論,オプション理論,組織論,金融実務などきわめて幅が広く,横 断的な知識と理解が必要とされる。したがって本論文も専門分野の異なる二人 の共著という形をとり 2人による繁雑な討議の結果完稿されるに至った。内 容的にはヴアリューアットリスクの導入が銀行の最適資産構成に影響を与える のではないかという問題提起と若干のオリジナルな展望が試みられており,各

(9)

651 ヴアリュー・アット・リスクの導入と最適ポートブォリオ修正の合意 -455 方面からの御叱責,コメント等を頂ければ幸いである。

2

.

リスク概念の再検討

(

1

)投資のリスク 証券投資の意志決定をリターン(期待収益率)とリスク(分散)の2つのパ ラメーターで説明しようとするマーコヴイツツの考え方は,投資家の行動を理 論的に規定できるという意味で画期的であり,確かにファイナンス論の発展に なくてはならない理論的基礎を与えてくれた。しかしながら資金運用の実務を 行っている筆者らの立場からすると, リスク,つまり分散をリターンの期待値 からの上下両方向へのばらつきの度合で測るという理論と実際の運用者が抱え るリスクとの聞に大きな隔たりが存在していたことに少なからず一種のもどか しさを感じていた。資金運用者とは,その資金の性格に応じて要求される個別 のリスクを抱え,それら制約条件のなかでリターンを最大化すべく行動する。 例えば,インデックス型プアンドの運用者であれば

TOPIX

の収益率をアンダ ーパフォームすることがリスクであり,また,安全利子率

+α%(

リスクプ レミアム)を下回ることをリスクと考える自己ポジションのディーラーもいる かもしれない。あるいは企業年金の運用者は, ALMの観点、に立った「サープ ラスJ (運用資産から将来の給付金額である負債を差し引いた剰余金という概 念)が枯渇することをリスクと考えている。このように立場の違いによるリス ク概念の相違は,必ずや投資の意志決定に影響を及ぼしているはずである。し たがってヴアリューアットリスクの資金運用部門への導入や倒産確率の融資決 定条件への適用は,前述したように必ずや彼らの合理的行動に修正を迫るはず である。 そこでリスク概念を再検討するにあたって新しいリスク測度として「ダウン サイドリスク」を導入する。ダウンサイドリスクはきわめて幅の広い包括的な 概念で,分散をはじめとして実際の投資家の認識するリスクである「目標を下 回るリスク」をもその一部として定式化できるほど汎用性が広い。そればかり ( 6 ) H. M Markowitzは実際のところ,分散以外のリスク測度についても研究し,理論 651 ヴァリュー・アット・リスクの導入と最適ポートブォリオ修正の合意 -455 方面からの御叱責,コメント等を頂ければ幸いである。

2

.

リスク概念の再検討 (1)投資のリスク 証券投資の意志決定をリターン(期待収益率)とリスク(分散)の2つのパ ラメーターで説明しようとするマーコヴイツツの考え方は,投資家の行動を理 論的に規定できるという意味で画期的であり,確かにファイナンス論の発展に なくてはならない理論的基礎を与えてくれた。しかしながら資金運用の実務を 行っている筆者らの立場からすると, リスク,つまり分散をリターンの期待値 からの上下両方向へのばらつきの度合で測るという理論と実際の運用者が抱え るリスクとの聞に大きな隔たりが存在していたことに少なからず一種のもどか しさを感じていた。資金運用者とは,その資金の性格に応じて要求される個別 のリスクを抱え,それら制約条件のなかでリターンを最大化すべく行動する。 例えば,インデックス型ファンドの運用者であれば

TOPIX

の収益率をアンダ ーパフォームすることがリスクであり,また,安全利子率

+α%(

リスクプ レミアム)を下回ることをリスクと考える自己ポジションのディーラーもいる かもしれない。あるいは企業年金の運用者は, ALMの観点に立った「サープ ラスJ (運用資産から将来の給付金額である負債を差し引いた剰余金という概 念)が枯渇することをリスクと考えている。このように立場の違いによるリス ク概念の相違は,必ずや投資の意志決定に影響を及ぼしているはずである。し たがってヴァリューアットリスクの資金運用部門への導入や倒産確率の融資決 定条件への適用は,前述したように必ずや彼らの合理的行動に修正を迫るはず である。 そこでリスク概念を再検討するにあたって新しいリスク測度として「ダウン サイドリスク」を導入する。ダウンサイドリスクはきわめて幅の広い包括的な 概念で,分散をはじめとして実際の投資家の認識するリスクである「目標を下 回るリスク」をもその一部として定式化できるほど汎用性が広い。そればかり ( 6 ) H. M Markowitzは実際のところ,分散以外のリスク測度についても研究し,理論

(10)

-456- 香川大学経済論叢 652

か平均・分散アプローチにおいては2つの条件,つまり,①投資家が 2次の効 用関数を持つこと,②投資収益率の分布が正規分布に従うこと,等を満たす必 要があるのに対し、て,ダウンサイドリスク概念を代表する平均下方部積率モデ ル (MeanLower Partial Moment Model, 以下, MLPMモデノレ) では, 期待効用理論に整合的であるし,また収益分布に正規性の仮定を必要としない という点でアセットアロケーションのより一般的なア、プローチを与えることに なる。 LPMの定義式は次のように表現される。 LPMn三 == (1) R 胎,=∞ Rpはポートブォリオのリターン, τは投資家の最低許容限度を示す必要リタ ーン,例えば先程の例でいうところのTOPIXやLIBOR十

α%

を意味するも のと考えればよい。 PpはリターンRrの生起確率,そしてnは積率(モーメン ト)のタイプを示している。この場合, Rpの確率分布は離散型であるが連続 型の場合は次のようになる。 L

(

2

)

しかしながら確率密度関数を連続型で扱う場合,多変数の確率密度関数自体の 推定の困難さからその資産選択問題を現実的には解くことが難ししここでは 離散型のケースで議論することにする。 積率母関数のモーメントである次数nは, τとともに様々なリスクの測度に 関する有益な情報を与えてくれる。 a) n= 0のとき:リスク測度は O次の積率となり, LPMoは単なる目標リグ 的に最も頑健な測度は半分散(目標リターンからの負の偏差の 2乗の期待値)と考え ていた。しかし半分散の計算を電算機で行う際の技術上の問題から,以後分散がリスク 測度として利用されてきた。 ( 7) MLPM Modelについては, W. V Harlow andR K S. Rao [1], E..Lindenberg [2]に負うところが大きい。 -456- 香川大学経済論叢 652 か平均・分散アプローチにおいては2つの条件,つまり,①投資家が 2次の効 用関数を持つこと,②投資収益率の分布が正規分布に従うこと,等を満たす必 要があるのに対して,ダウンサイドリスク概念を代表する平均下方部積率モデ ル (MeanLower Partial Moment Model, 以下, MLPMモデノレ) では, 期待効用理論に整合的であるし,また収益分布に正規性の仮定を必要としない という点でアセットアロケーションのより一般的なア、プローチを与えることに なる。 LPMの定義式は次のように表現される。 LPMn=

Pp(τRp)" Rr=ー∞

(

1

)

Rpはポートブォリオのリターン, τは投資家の最低許容限度を示す必要リタ ーン,例えば先程の例でいうところのTOPIXやLIBOR十

α%

を意味するも のと考えればよい。 PpはリターンRrの生起確率,そしてnは積率(モーメン ト)のタイプを示している。この場合, Rpの確率分布は離散型であるが連続 型の場合は次のようになる。 LPMn= )'(r-R)n dF( (2) しかしながら確率密度関数を連続型で扱う場合,多変数の確率密度関数自体の 推定の困難さからその資産選択問題を現実的には解くことが難ししここでは 離散型のケースで議論することにする。 積率母関数のモーメントである次数nは, τとともに様々なリスクの測度に 関する有益な情報を与えてくれる。 a) n= 0のとき:リスク測度は O次の積率となり, LPMoは単なる目標リグ 的に最も頑健な測度は半分散(目標リターンからの負の偏差の 2乗の期待値)と考え ていた。しかし半分散の計算を電算機で行う際の技術上の問題から,以後分散がリスク 測度として利用されてきた。 ( 7) MLPM Modelについては, W. V Harlow andR.K S. Rao [1], V.Bawa and E..Lindenberg [2]に負うところが大きい。

(11)

653 ヴァリュー・アット・リスクの導入と最適ポートフォリオ修正の合意 -457-ーンを下回る確率となる。さらに, r= 0とすればリターンがOを下回る確率, つまりロス確率を表している。 b)

n=

1のとき;LPM1

=E [

1τ-E

(R)

1

]となり目標を下回るリターンの 偏差の期待値で表すことができ,これは平均・絶対偏差モデルといわれるもの であ

2

。平均・絶対偏差モデ川投資家のリスク指標として収益の分散を用い るかわりに絶対偏差を採用し,つぎのような最適化問題を解けばよい。 minimize LPM1

s

.

t

.

E (Rp)

=

τ

P;=1, P;孟0,i = 1, 2, ...,n

(

3

)

次に平均・分散モデルと積率が1である平均平方部積率モデル(平均・絶対 偏差モデル)の理論的関係について示す。 ポートフォリオのリターンRpの流列が n次元のベクトノレ(Rh ..., Rn)に従 い,平均ベクトル人分散共分散行列 Q

=

(列)の多次元正規分布N(r, Q)に 従うものとすると, R141R1は1次元正規分布N(

I;P;, 泣1山

J

に従う。これより,

T

4

I

1

L

d

=

E

E

m

μ

すると, LP肌M此1 -

7

1

y一r"

1

匂孟πσpもO 乙σ p“

=

t

z

l

zexP

E

t

f

ず 与

4 (4) よって, V [RpJ

(LPMu2が示され,ポートフォリオのリターンの分布 に多次元正規性を仮定すれば,平均・絶対偏差モデルが平均・分散モデノレと理 論的に等価であることが示されたことになる。 ( 8) H Konno [3

J

参照 (9 ) 今 野 浩 [2

J

参照 653 ヴァリュー・アット・リスクの導入と最適ポートフォリオ修正の合意 -457-ーンを下回る確率となる。さらに, r= 0とすればリターンがOを下回る確率, つまりロス確率を表している。 b)

n=

1のとき;LPM1

=E [

1τ-E

(R)

1

]となり目標を下回るリターンの 偏差の期待値で表すことができ,これは平均・絶対偏差モデルといわれるもの であ

2

。平均・絶対偏差モデ川投資家のリスク指標として収益の分散を用い るかわりに絶対偏差を採用し,つぎのような最適化問題を解けばよい。 minimize LPM1

s

.

t

.

E (Rp)

=

τ

P;=1, P;孟0,i = 1, 2, ...,n

(

3

)

次に平均・分散モデルと積率が1である平均平方部積率モデル(平均・絶対 偏差モデル)の理論的関係について示す。 ポートフォリオのリターンRpの流列が n次元のベクトノレ(Rh ..., Rn)に従 い,平均ベクトル人分散共分散行列 Q

=

(列)の多次元正規分布N(r, Q)に 従うものとすると, R141R1は1次元正規分布N(

I;P;, 泣1山

J

に従う。これより,

T

4

I

1

L

d

=

E

E

m

μ

すると, LP肌M此1 -

7

1

y一r"

1

匂孟πσpもO 乙σ p“

=

t

z

l

zexP

E

t

f

ず 与

4 (4) よって, V [RpJ

(LPMu2が示され,ポートフォリオのリターンの分布 に多次元正規性を仮定すれば,平均・絶対偏差モデルが平均・分散モデノレと理 論的に等価であることが示されたことになる。 ( 8) H Konno [3

J

参照 (9 ) 今 野 浩 [2

J

参照

(12)

-458ー 香川大学経済論叢 654 c) n= 2のとき;LPM2=E [{ (τ-Rp )ド]となり,白木票リターンからの負 の偏差の2乗の期待値で表されている。しかしここで, τ=E [Rp],つまり目 標リターンが収益分布の平均値に等しいと仮定すれば, LPMzは半分散に等し いことは明らかである。さらに積分区聞を変えてやれば,LPM2は分散と一致 する。 このように ,LPMモデルはnおよびτという 2つのパラメーターを設定す ることによって実に多彩なリスク尺度が与えられることがわかる。 LPMモデ ル適用の合理性はこのようなリスク概念理論の汎用性という点のみならず,オ プションに代表される金融派生商品のぺイオフ構造という点からも説明が可能 である。例えばオプション(コーノレ・オプションの場合)という商品が開発さ れた前提にある理論は,期待収益が投資家の設定するフロアーを下回ることを 回避しつつ,同時に上昇期待も追求するという非対称的なペイオフ構造が前提 になっている。したがってオプションなどの非対称的なリスク構造を有するデ リヴァティブ商品を組み入れたポートフォリオの収益分布が対称性を持つとは 考えにくい。つまりデリヴァティブの残高が原資産残高をはるかに上回る現状 を鑑みれば,リスク測度を対称的に捉える平均・分散アプローチによる分析に は無理があるように思われる。マーコヴイツツの時代とは異なり,現在では最 適化手法の理論的研究や計算技術は飛躍的に進んでいるので手法上の制約はか つてほどなく,今後の実務上での応用がより期待されるところである。 ( 2 )目標リターンと効率フロンティア それではリスクを期待収益分布の分散と想定した場合とある一定の目標リタ ーンを下回ることがリスクと考える場合の最適ポートフォリオの相違について の検討を行う。その際の有効な方法は実証分析を行うことであるが,ここでは Harlowによる分析結果をサーベイすることによって次章以降の理論的展開 仰 の礎としたい。 (10) Harlow以外にもいくつかの実証結果が示されているが,いずれの分析においても同 様の結果が導かれている。日本では,竹原[3 ]が多資産のアッセyトアロケーション -458ー 香川大学経済論叢 654 c) n= 2のとき;LPM2=E [{ (τ-Rp )ド]となり,目標リターンからの負 の偏差の2乗の期待値で表されている。しかしここで, τ=E [Rp],つまり目 標リターンが収益分布の平均値に等しいと仮定すれば, LPMzは半分散に等し いことは明らか句である。さらに積分区聞を変えてやれば,LPM2は分散と一致 する。 このように ,LPMモデルはnおよびτという 2つのパラメーターを設定す ることによって実に多彩なリスク尺度が与えられることがわかる。 LPMモデ ル適用の合理性はこのようなリスク概念理論の汎用性という点のみならず,オ プションに代表される金融派生商品のぺイオフ構造という点からも説明が可能 である。例えばオプション(コーノレ・オプションの場合)という商品が開発さ れた前提にある理論は,期待収益が投資家の設定するフロアーを下回ることを 回避しつつ,同時に上昇期待も追求するという非対称的なペイオフ構造が前提 になっている。したがってオプションなどの非対称的なリスク構造を有するデ リヴァティブ商品を組み入れたポートフォリオの収益分布が対称性を持つとは 考えにくい。つまりデリヴァティブの残高が原資産残高をはるかに上回る現状 を鑑みれば,リスク測度を対称的に捉える平均・分散アプローチによる分析に は無理があるように思われる。マーコヴイツツの時代とは異なり,現在では最 適化手法の理論的研究や計算技術は飛躍的に進んでいるので手法上の制約はか つてほどなく,今後の実務上での応用がより期待されるところである。 ( 2 )目標リターンと効率フロンティア それではリスクを期待収益分布の分散と想定した場合とある一定の目標リタ ーンを下回ることがリスクと考える場合の最適ポートフォリオの相違について の検討を行う。その際の有効な方法は実証分析を行うことであるが,ここでは Harlowによる分析結果をサーベイすることによって次章以降の理論的展開 の礎としたい。 (10) Harlow以外にもいくつかの実証結果が示されているが,いずれの分析においても同 様の結果が導かれている。日本では,竹原[3 ]が多資産のアッセyトアロケーション

(13)

655 ヴ、アリュー・アット・リスクの導入と最適ポートフォリオ修正の合意 459ー 彼は 11ヶ国にわたるグローパル・アツセット・アロケーシヨンの適用を試 みた。データはアメリヵ,イギリス,西ドイツ,日本,スイス,ホンコン,オ ーストラリア,カナダ,オランダ,スウェーデンにおける為替リスクをフリー にした株式および債券の収益率の

1

0

年間

(

1

9

8

0

1

月から

1

9

9

0

1

2

月)の ヒストリカノレ・データを用い,以下の最適化問題を解いた。 mmrmrze

s

t

.

w

h

e

r

e

n= 1

, 2

LPM" (1';X)

名正了

(τ-Rp)"

X;E(R;)= R

1:

X;=1

(

5

)

これらの最適化問題を解くことによって得られる平均一LPMn効率的フォロ ンティアと従来型の平均一分散効率的フロンティアを比較することによって, 最適ポートフォリオの合意を検討することがこの節の目的である。まず,LPM2 リスク測度と分散をリスク測度とした場合の効率的フロンティアの比較を行 い,その後にLPM2とLPM1との比較を行うことにする。これは,LPM2リ スク測度が分散と同じ様にリターンからの偏差を

2

乗するという

2

次のリスク 測度であるために比較の公平性を期すために

Harlow

が考えたものと思われ る。以下,実証結果の要約を示す。 期 待 リ タ ー ン ( % ) 図A) a)平均・ LPM2効 率 的 15

• • • アロンティアと平均・分 散効率的フロンティア 左図(図 A) は,目標 リターン τ =

0%

,つま り投資家が投資元本を割 り込むことをリスクと考 目標半偏差、標準偏差 えた場合の両効率的フロ にLPMリスク測度を適用させている。 655 ヴァリュー・アツト・リスクの導入と最適ポートフォリオ修正の合意 459ー 彼は 11ヶ国にわたるグローパル・アッセット・アロケーションの適用を試 みた。データはアメリカ,イギリス,西ドイツ,日本,スイス,ホンコン,オ ーストラリア,カナダ,オランダ,スウェーデンにおける為替リスクをフリー にした株式および債券の収益率の

1

0

年間

(

1

9

8

0

1

月から

1

9

9

0

1

2

月)の ヒストリカノレ・データを用い,以下の最適化問題を解いた。 s..

t

.

山 1"

川 是 正 了 日

p)n

吉川)

= R

l

'

*

X;=1

X;> 0

(

5

)

mlmmlze where n=

1

2

これらの最適化問題を解くことによって得られる平均一LPMn効率的フォロ ンティアと従来型の平均づ撒効率的フロンティアを比較することによって, 最適ポートフォリオの合意を検討することがこの節の目的である。まず,LPM2 リスク測度と分散をリスク測度とした場合の効率的フロンティアの比較を行 い,その後にLPM2とLPM1との比較を行うことにする。これは,LPM2リ スク測度が分散と同じ様にリターンからの偏差を

2

乗するという

2

次のリスク 測度であるために比較の公平性を期すために Harlowが考えたものと思われ る。以下,実証結果の要約を示す。 期 待 リ タ ー ン ( % ) 図A) a)平均・LPM2効 率 的 • • • アロンティアと平均・分 散効率的フロンティア 15

左図(図 A) は,目標 リターン τ =

0%

,つま り投資家が投資元本を割 り込むことをリスクと考 目標半偏差、標準偏差 えた場合の両効率的フロ にLPMリスク測度を適用させている。

(14)

~460 香川大学経済論叢 656 ンティア曲線が描かれている。点Aを通る外側の実線がLPM2をリスク測度 にした効率フロンティア曲線,点Bを通る内側の破線が分散をリスク測度に した効率フロンティア曲線である。横軸については両リスク尺度を整合的に比 較できるように,それぞれのリスク測度の平方根をリスクの単位として用いて いる。この表から結論として次のことが言える。 • LPM2をリスク測度とする効率フロンティアが分散をリスク測度とするフロ ンティアの外側に常に位置するということは,LPMzアプローチはあらゆる 期待リターンの水準においてリスク量が小さく,平均・分散アプローチを凌 いでいることがわかる。つまり期待リターンが同ーであれば,平均・分散ポ ートフォリオよりも LPM2ポートブォリオの方がダウンサイド・リスクの 小さいことがわかる。特に実証分析の結果,期待リターンが 10~17% の範 囲でその差が大きくなっている。 • LPM2をリスク測度とする最適ポートフォリオは,分散をリスク測度とする 場合に比べて安全資産(債券)のポジション比率が危険資産(株式)の比率 に比べて高くなることがわかった。図Aに示された点Aと点Bは,期待リ ターンが

15%

のときのダウンサイド・リスクの差が示されているが,最適 ポートフォリオの内訳を見ると,点

A(

株 式 ;

32.83%/

債 券 ;

6

7

.

1

7

%

,) 点

B

(株式;

40.53%/

債券;

5

9

.

4

7

%

)

となっており,リスク測度を変える ことによって最適ポートフォリオの内容が変わってしまうことがわかる。 b)平均・LPM1効率的フロンティアと平均・LPMヮ効率的フロンティア 図Bは

(

5

)

式において,

T=60

(過去

6

0

ヶ月)のヒストリカ/レ・データから LPM1リスク測度と期待リターンを求めることによって得られた効率的フロン ティアである。ただしここでは, τ

=

0%

,つまり元本を下回ることをリスク と考えているケースを想定している。図Cでは同様にして, LPM2効率フロ ンティアが描かれている。 ~460 香川大学経済論叢 656 ンティア曲線が描かれている。点Aを通る外側の実線がLPM2をリスク測度 にした効率フロンティア曲線,点Bを通る内側の破線が分散をリスク測度に した効率フロンティア曲線である。横軸については両リスク尺度を整合的に比 較できるように,それぞれのリスク測度の平方根をリスクの単位として用いて いる。この表から結論として次のことが言える。 • LPM2をリスク測度とする効率フロンティアが分散をリスク測度とするフロ ンティアの外側に常に位置するということは,LPMzアプローチはあらゆる 期待リターンの水準においてリスク量が小さく,平均・分散アプローチを凌 いでいることがわかる。つまり期待リターンが同ーであれば,平均・分散ポ ートフォリオよりも LPM2ポートフォリオの方が夕、ウンサイド・リスクの 小さいことがわかる。特に実証分析の結果,期待リターンが 10~17% の範 囲でその差が大きくなっている。 • LPM2をリスク測度とする最適ポートブォリオは,分散をリスク測度とする 場合に比べて安全資産(債券)のポジション比率が危険資産(株式)の比率 に比べて高くなることがわかった。図Aに示された点Aと点Bは,期待リ ターンが15%のときのダウンサイド・リスクの差が示されているが,最適 ポートフォリオの内訳を見ると,点A (株 式 ;32.83%/債 券 ;67.17%), 点

B

(株式;40.53%/債券;59.47%)となっており,リスク測度を変える ことによって最適ポートフォリオの内容が変わってしまうことがわかる。 b)平均・LPM1効率的フロンティアと平均・LPM2効率的フロンティア 図Bは(5)式において, T=60 (過去60ヶ月)のヒストリカ/レ・データから LPM1リスク測度と期待リターンを求めることによって得られた効率的フロン ティアである。ただしここでは, τ

=

0%,つまり元本を下回ることをリスク と考えているケースを想定している。図Cでは同様にして, LPM2効率フロ ンティアが描かれている。

(15)

657 E(R) 15 13、5切 10 ヴァリュー・アット・リスクの導入と最適ポートフォリオ修正の合意 461 A B 回 (図 B) 両 図 と も に 点

B

で 示 されているのは,市場の 時価総額でウェイト付け さ れ た 株 式60%,債券 40%の 比 率 で 構 成 さ れ るペンチマーク・ポート フォリオの期待リターン F U

0

・ 5・

1

0

.

L

P

M

l

の平方根が, 13.5%で あ る と き のそれぞれのリスク測度との関係が示されている。例えば図Bにおいて,ベ ンチマーク・ポートフォリオの期待リターンは13.5%であり, LPM. をリス ク測度とする期待損失が9.07%となっている。ところが同じベンチマーク・ ポートブオリオであるにもかかわらず,図Cでは期待損失が23.2% と圧倒的 に高いリスク値になっている。 期待リターンが13.5%である効率フロンティア上の点Aについて両者を比 E(R) 較すると,それぞれの期待損失の /'/ノ/'〆F〆〆〆 大きさは図Bで4.53%,図C、c -15 13、 5~ A

B図 12.4%と大きな差異を示してい る。このように期待リターンが同 10 ーであれば, LPM2よりもLPM1 (図 C) の方カヨリスクカヨイ¥さくなることカ宝 5

~

¥T'

z

J

LPM2の平方根 わかった。 以上の場合,目標リターンを 0 %(τ 0)という前提で議論を進めてきた が,我々が最も興味のある分析は目標リターンが変化したときにそれに応じて 効率フロンティアがどのように変わりうるかである。そのことを示すために, τ = 0%,τ = 8 %,τ二 16%の3つのケースを取りあげてそれぞれの効率フ ロ ン テ ィ ア を描いてみたのが図以図Eの2つのグラフである。グラフから して明らかなように τの値に応じて効率フロンティアが右側にシフトしてい る。これは,目標リターンが大きくなることによりリターン分布のうち目標リ 657 E(R) 15 13、5訴 10 F U ヴァリュー・アット・リスクの導入と最適ポートフォリオ修正の合意 -461 A B 回 (図

B

)

両 図 と も に 点

B

で 示 されているのは,市場の 時価総額でウェイト付け さ れ た 株 式60%,債券 40%の 比 率 で 構 成 さ れ るペンチマーク・ポート フォリオの期待リターン

0

・ 5・

1

0

.

L

P

M

l

の平方根が, 13.5%で あ る と き のそれぞれのリスク測度との関係が示されている。例えば図Bにおいて,ベ ンチマーク・ポートフォリオの期待リターンは13.5%であり, LPM.をリス ク測度とする期待損失が9.07%となっている。ところが同じベンチマーク・ ポートブォリオであるにもかかわらず,図Cでは期待損失が23.2%と圧倒的 に高いリスク値

1

になっている。 期待リターンが13.5%である効率アロンティア上の点Aについて両者を比 E(R)戸 一 一 15 13、 5~ -〆 較すると,それぞれの期待損失の A

/

L

J

大きさは図Bで4.53%,図C、ご 12.4%と大きな差異を示してい る。このように期待リターンが同 10 ーであれば, LPM2よりもLPM. (図C) の方カまリスクカヨイ¥さくなることカ宝 5 01

1

d

z

d

LP胞の平方根 わかった。 以上の場合,目標リターンを 0 %(τニ 0)という前提で議論を進めてきた が,我々が最も興味のある分析は目標リターンが変化したときにそれに応じて 効率フロンティアがどのように変わりうるかである。そのことを示すために, τ = 0%,τ = 8 %,τ二 16%の3つのケースを取りあげてそれぞれの効率フ ロンティアを描いてみたのが図

D

,図

E

2

つのグラフである。グラフから して明らかなように τの値に応じて効率フロンティアが右側にシフトしてい る。これは,目標リターンが大きくなることによりリターン分布のうち目標リ

(16)

462- 香川大学経済論叢 658 ターンを下回る部分が大きくなるため,リスク測度の値が大きくなるからであ る。また,平均・分散モデルではτ=平均リターンであり,モデルの内部から 与えられていることを考えれば当然のことといえよう。むしろ驚くべきは以下 の点である。 つまり目標リターンが変化するに応じて LPMjとLPM2のリスク測度にも とづく最適資産構成の内容が劇的に異なっていることである。 E(R) 15 10 5

5 10' LPMlの平方根 例えばD,E両図において,株式 ・債券比率を点A,B, Cのそれぞ れについて示すと, LPMj :: A (42.87%

57.13%) B (43.72%

56.28%)

C

(46.41%

53.59%) LPM2 ::

A

(32.83%

61.17%)

B

(35.01%

64.99%) C (36.73%

63.27%) E(R) となっており,両者ともに τの値が大きくなるに連れ 15 τ=0九 10

5

O LP胞の平方根 て,株式の保有比率が高ま るとともに債券の保有比率 が

f

i&下している。このこと は,要求される期待利回り が大きくなればなるほど株 式の投資比率を高めざるを 得 な い こ と を 物 語 っ て お り, τの値がポートブォリ オの資産構成に決定的に重 462- 香川大学経済論議‘ 658 ターンを下回る部分が大きくなるため,リスク測度の値が大きくなるからであ る。また,平均・分散モデルではτ=平均リターンであり,モデルの内部から 与えられていることを考えれば当然のことといえよう。むしろ驚くべきは以下 の点である。 つまり目標リターンが変化するに応じて

LPM

jと

LPM

2のリスク測度にも とづく最適資産構成の内容が劇的に異なっていることである。 例えばD,E両図において,株式

/ /

/1

-債券比率を点A,B, Cのそれぞ れについて示すと, 15

LPM

j :: A (42.87%, 57.13%) 10

.

J

/ / /

B (43.72%, 56.28%) C (46.41%, 53.59%)

l

LPM

2 ::

10' LPMlの平方根 A (32.83%, 61.17%) B (35.01%, 64.99%) C (36.73%, 63.27%) となっており,両者ともに E(R)l / / 〆J τの値が大きくなるに連れ て,株式の保有比率が高ま 15 ---J 日 .w'イ~y~イー るとともに債券の保有比率 が低下している。このこと 10

/

/ /

は,要求される期待利回り が大きくなればなるほど株 式の投資比率を高めざるを 5 ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ に 一 円 得 な い こ と を 物 語 っ て お LP胞の平方根 り, τの値がポートブォリ オの資産構成に決定的に重

参照

関連したドキュメント

ハンブルク大学の Harunaga Isaacson 教授も,ポスドク研究員としてオックスフォード

  中川翔太 (経済学科 4 年生) ・昼間雅貴 (経済学科 4 年生) ・鈴木友香 (経済 学科 4 年生) ・野口佳純 (経済学科 4 年生)

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

[r]

ダブルディグリー留学とは、関西学院大学国際学部(SIS)に在籍しながら、海外の大学に留学し、それぞれの大学で修得し

続いて川崎医療福祉大学の田並尚恵准教授が2000 年の