博 士 ( 工 学 ) 冨 岡 克 広 学 位 論 文 題 名
Formation and characterlZat10nofHI − VCOmpound I ●
SenliCOnduCtorone − dimenS10nalnanOStruCtureS
( m ―V 族化合物半導体一次元ナノ構造の形成と評価)
学位論文内容の要旨
近 年 、 ナ ノ メ ー ト ル 領域 の 寸 法 を 有す る 半 導 体 細線 構 造 が 、 化 学合 成 的 な 手 法に よ り 安 価 かつ 大 量 に生 産 可 能 に な りつ っ あ る 。 半導 体 ナ ノ ワ イヤ と 呼 ぱ れ るこ の 一 次 元ナ ノ構 造は、 その電 気的・ 光 学 的 特 性 や 結 晶 構 造 が 評 価さ れ る と 同 時 に、 こ れ を デ バイ ス の 基 本 構成 要 素 と し て用 い た 集 積 デ バ イ スへ の 応 用 が 提 案さ れ る な ど 、と り わ け 欧 米の 研 究 機 関 で盛 ん に 研 究 が 行わ れ 始 め て いる(Gadik‑
sen etal. ,Nature,415,617 (2002))。また 、半導 体の ロード マップ 委員会ITRSにお いても 、MOSFET ス ケ ー リ ン グ 則 の 限 界 以 降の プ レ ー ナ ー 代替 材 料 に 半 導体 ナ ノ ワ イ ヤが 候 補 と し て挙 げ ら れ て い る (http://www.itrs.net/Links/2006Update鳳nalTOPos伽4亅II)S2006Update.pdD。国内においても、ナノフォトニ クス(M.OhtSuctal. IEEEJ.sel.Top.QuantumElec鰤n.,8,839(2002))の概念の中でZn0ナノワイヤが重 要な 構成要素として挙げられている。このように半導体ナノワイヤの研究は、さまざまな応用の可能性を有し ているが黎明期にあり、研究課題は多岐にわたる。
この ような 背景に おい て、本論文では、IH‐V族化合物半導体一次元ナノ構造の形成に関して、有機金属気 相選 択成長 法(SA−MOVPE法)と陽極エッチング法を用いて、その形成機構と光学特性といった基礎物性を評 価す ることを目的とし、集積デバイス応用の観点から、実験的検討を行った。さらに、ここで得られた知見を もと に、SA‐M()VPE法に中心として、化合物半導体ナノワイヤ中のへテロ構造作製によるバンドエンジニア リン グとSi基 板上へ のナ ノワイ ヤアレ イの作 製につ いて 、実験 的検討を行った。本論文は7章から構成され ている。以下に各章の要旨を示す。
第一章では、本研究の背景と目的を述べるとともに各章の概要を記している。
第二 章では 、In−V族化 合物 半導体 ナノワ イヤの作製方法について、SA‐MavPE法と陽極エッチング法につ いて 記して いる。SA‐MOVPE法は 、本研 究室独 自の 結晶成 長技術 であり、半導体基板上に非晶質薄膜を堆積 し、 リソグラフイー技術とエッチング技術により開口部を設け、その開口部にのみ選択的に結晶成長を行うボ トム アップ とトッ プダウ ン技術 を融 合した 独自の技術である。成長は成長速度の遅い面方位で律速するファ セッ ティン グ機構 に従う ため、VLS成長法 のよう な金属 触媒を 必要 とせず、自己組織的にサイズが均一化さ れる 。また、リソグラフイーによって、自在に位置決めを行うことが可能である。この成長法をナノワイヤ作 製に応用すれぱ、ナノワイヤの均一性と位置制御性を克服することができる。
第 三 章 で は 、SA‐MOVPE法 に よるInAsナ ノ ワ イ ヤの 作製と 成長 機構に ついて 述べて いる 。InAsはm‐V 族化 合物半導体の中でも室温における電子の移動度が高く、表面フェルミ準位が伝導帯中にあるため、表面空 乏層 の影響が少なく、ナノ構造の中でもとりわけ表面空乏層の影響を受けやすいナノワイヤに対して最適な材 料と いえる 。本章 では、SA‐MavPE法に よるInAsナノワ イヤ 成長は 、成長温度に大きく依存し、ナノワイヤ に最 適な成長は540‐600度と非常に狭い成長ウィンドウでのみ生じることが分かり、このウィンドウよりも低 温成長の場合は、く−110冫方向(横方向)成長を生じ、均一性が極端に損なわれる一方で、高温成長の場合は、
(111)B面近傍でのAs脱離を生じるために、アスペクト比が極端に小さいロッドが形成されることを明らかに した。
―llol― I
また、InAsナノ ワイヤの長さは、直径の―2乗に比例することが分かった。この関係は、プレーナー基板で 成長し 得るInAsの体積 量が、 マス クを作 製したことによって、マスク開口部の成長に加算されたことを示し ており、In原料のマスクおよび垂直ファセット上の表面拡散がナノワイヤ成長に寄与していることを示してい る。これらの結果から、マスクパターンの開口直径でナノワイヤの長さを制御できることを明らかにした。さ らに、AsH3分圧 により 、長さ 方向 の成長 速度を 制御で きるこ とを 示した 。
次に 、この 方法で 作製 されたInAsナノ ワイヤ の結晶 構造を 透過 型電子 顕微鏡(TEM)で評価 し、結 晶構造 は、閃 亜鉛鉱 型結晶 構造 、ウル ツ鉱型 結晶構造が1〜3原子層(ML)間隔で含まれる多形構造になることを示し た。ま た、こ の多形 構造 は、回 転双晶 が1〜3原子層毎に結晶構造に導入されることにより、生じることを明 らかにした。本章で観察された結晶構造は、これまでに報告例のない、極めて特殊な結晶構造を有している。
第四章 は、 第3章 で明 らかに したInAsナノワ イヤ選 択成長 にっいて、単に同一基板上の成長に限らず、他 のInPGaAs基板 などのIu‐V化合物 半導 体基板 におい ても作 製でき るこ とを示 した。 また、そのヘテロ界面 を断面TEMに より評 価す ること で、InAsナノワ イヤ‐ 基板界 面には、格子不整合に従ったミスフイット転位 が導入 されな いこと を示 し、SA‐MOVPE法にお けるナ ノワイ ヤヘテロエピタキシャル成長は、通常のへテロ エピタ キシャ ル成長 と異 なる成 長様式 をとることを示した。さらに、作製されたInAsナノワイヤの結晶構造 は、InAs基板上 のInAsナ ノワイ ヤの結 晶構造と同じ構造をとること確認し、ラマン散乱測定において、ナノ ワイヤ構造特有の多重フオノンモードを観察した。また、観察されたフオノンスベクトルと電子回折像から、
このInAsナノワ イヤの 格子定 数を 推定し た。
さらに 、こ こで得 られた 、InAsナ ノワイ ヤヘテ ロエ ピタキ シャル成長の知見を応用し、SA‐MOVPE特有の ナノワイヤ成長機構とその利点を積極的に利用した、横方向成長のない縦型量子井戸ナノワイヤの作製プロセ スを 考 案 し 、GaAsナ ノ ワイ ヤ 中 にGaA叩nAs/GaAs縦 型量 子井戸 を作製 した。 発光特 性評 価によ り、1ML のInAs量 子井戸 層に相 当した 非常 に半値 幅の狭い発光を観測し、ナノワイヤ中に量子井戸層が作製されたこ とを示 した。
第五章 では 、これ までに 得られ た知見 を利 用し、Si基板上 に直 径50nmか らなるInAs垂直ナノワイヤアレ イを作 製する ことに 成功 した。 この結 果から、Si基板上にmーV族化合物半導体ナノワイヤを集積するには、
Si基板表 面に おけるV族 原子の 被覆状 態が重 要とな るこ とを明 らかにした。正確に位置制御されたInAsナノ ワイヤ をSi上 に高均 一、高 密度に 作製し た報告例はこれまでになく、本研究で得られたナノワイヤ作製技術 は、集 積デバ イス応 用に 対して 、有効 な技術 であ ること を示し た。
第六章 では 、GaPについて、ボトムアップ技術である陽極エッチング法とポトムアップ技術とトップダウン 技術を 融合し たSA‐MOVPE法 のニつ の作 製技術 につい て、GaPナノ ワイ ヤ作製 につい て実験的検討を行い、
それぞ れの技 術にお ける ナノワ イヤ成 長機構 を評 価した 。そし て、陽 極エッ チン グで作製した直径50nm程 度のGaPナノ ワイヤ から 、ナノ 構造特 有の発光を観察し、SA‐M()VPE法では、GaPナノワイヤを極めて高均 一に位 置制御 性良く 作製 できる ことを 明らか にし た。
第 七 章 で は 、 本 論 文 の 結 論 を 述 べ る と と も に 、 将 来 の 展 望 に っ い て を 記 し た 。 以上、 本研 究は、m‐V化合 物半 導体一 次元ナ ノ構造 の作製 と評 価に関 して、 まずInAsナノワイヤを独自 の技 術であ るSA‐MOVPE法 を用い て作製 し、 その成 長機構 を明ら かにす ると ともに 、Si基板 に代 表され る 格子 不整合 系基板 上のInAsナノワ イヤの 作製 にも成 功した 。次に 、GaPナノ ワイヤ につい ては、 陽極 エツ チン グ法及 びSA―MaVPE法 により 作製し 、そ の光学 特性を 評価す るとと もに 、高集 積化へ の応用 へ向 けて SA‐MOVPE法 に よ る位 置 制御 性の検 討を行 った。 さら に、SA‐MOVPE法の利 点を応 用した 、横方 向成 長の ない完 全な量 子井戸 構造 作製プ ロセス を考案 し、GaA蛆rAs/GaAs量子井戸ナノワイヤの作製と光学的評価を 行った 。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査 教 授 福 井 孝 志 副 査 教 授 本 久 順 一 副 査 教 授 橋 詰 保 副査 准教授 原 真二郎
学 位 論 文 題 名
Formation and characterization of III ―Vcompound semiconductor one ― dimensional nanostructures
( ni ― V 族 化 合 物 半 導 体 一 次 元 ナ ノ 構 造 の 形 成 と 評 価 )
近年、ナノメートル領域の寸法を有する半導体量子細線構造が、化学合成的な手法により安価かつ 大量に生産可能になりつっある。半導体ナノワイヤと呼ばれるこの一次元ナノ構造は、その電気 的・光学的特性や結晶構造が評価されると同時に、これをデバイスの基本構成要素として用いた集 積デバイスヘの応用が提案されるなど、とりわけ欧米の研究機関で盛んに研究が行われ始めている このような背景において、本論文では、m‑v 族化合物半導体一次元ナノ構造の形成に関して、有 機金属気相(MOVPE) 選択成長法と陽極エッチング法を用いて、その形成機構と光学特性といった 基礎物性を評価することを目的とし、集積デバイス応用の観点から、実験的検討を行っている。さ らに、ここで得られた知見をもとに、MOVPE 選択成長法を中心として、化合物半導体ナノワイヤ 中のヘテロ構造作製によるバンドエンジニアリングと Si 基板上へのナノワイヤアレイの作製につ いて、実験的検討を行っている。本論文は7 章から構成されている。
第 ー 章 で は 、 本 研 究 の 背 景 と 目 的 を 述 べ る と と も に 各 章 の 概 要 を 記 し て い る 。 第二章では、III‑v 族化合物半導体ナノワイヤの作製方法について記している。 MOVPE 選択成長 法は、本研究室独自の結晶成長技術であり、半導体基板上に非晶質薄膜を堆積し、リソグラフイー 技術とエッチング技術により開口部を設け、その開口部のみに選択的に結晶成長を行う、ボトム アップとトップダウン技術を融合した独自の技術である。
第三章では、MOVPE 選択 成長法によるIn 舳ナノワイヤの作製と成長機構について述べている。
M0 卵E 選択成長法による mAs ナノワイヤ成長は、その 成長温度に大きく依存し、InAs ナノワイ ヤ成長に最適な成長温度は、 540 ―6000C と、非常に狭い温度範囲でのみ生じることが明らかにさ れた。
次に、この方法で作製された hAs ナノワイヤの結晶構造を透過型電子顕微鏡(TEM )で評価し、結 晶構造は、閃亜鉛鉱型結晶構造、ウルツ鉱型結晶構造が13 原子層@IL )間隔で含まれる多形構造 になることを示している。
第四章は、InAs ナノワイヤ選択成長について、InP ,GaAs 基板などのIu ・V 族化合物半導体基板に
ーll03 ー
おいても作製できることを示した。また、そのへテロ成長界面を断面TEMにより評価することで、
InAs
ナノワイヤ―基板界面には、格子不整合に従ったミスフイット転位ではなく、周期性の無い転 位が導入されていることをしめし、このナノワイヤヘテロエピタキシャル成長では、通常のヘテロ エピタキシャル成長とことなる成長様式をとることを示している。第五章では、これまでに得られた知見をもとに、
Si
基板上に直径50 nm
からなるInAs垂直ナノワ イヤアレイを作製することに成功した。この結果から、Si
基板上にm‑v族化合物半導体を集積す る に は、Si
基 板表面に おけるV
族原 子の被 覆状態が 重要にな ること を明らか にして いる。第六章では、GaPにっいて、ボトムアップ技術である陽極エッチング法と、MO班}E選択成長法の ニつの作製技術について、Gロナノワイヤ作製について、実験的検討を行い、それぞれの作製技術 におけるナノワイヤ成長機構を評価した。そして、陽極エッチング法で作製した、直径50nm程度 の
GaP
ナノワイヤから、ナノ構造特有の発光を観察し、M01
旧.E選択成長法では、GaP
ナノワイ ヤ を 極 め て 高 均 一 に 、 位 置 制 御 性 良 く 作 製 で き る こ と を 明 ら か に し て い る 。 第 七 章 で は 、 本 論 文 の 結 論 を 述 べ る と と も に 、 将 来 の 展 望 につ い て 記し し て いる 。 以上、本研究は、m‐V族化合物半導体一次元ナノ構造の作製と評価に関して、まず、InAsナノワ イヤを独自の技術であるM()VPE選択成長法を用いて作製し、その成長機構を明らかにするとと もに、Si
基板に代表される格子不整合系基板上のhAsナノワイヤの作製、集積化にも成功した。次 に、
GaP
ナノワイヤについては、陽極エッチング法及びMOVPE
選択成長法により作製し、そ の光学特性を評価するとともに、高集積化への応用ヘ向けてSA‐MOVPE
法による位置制御性の検 討を行っている。これを要するに、著者は、III‐V族化合物半導体一次元ナノ構造の形成において、Mぴ′PE選択成長 法を用いた新しい作製方法を確立し、ナノワイヤ選択成長のメカニズムの解明、Ma丱E選択成長 法を用いたナノワイヤの集積化応用に関し、有益ないくっかの新知見を得た。これらの結果は、結 晶工学、半導体工学、光・電子デバイス工学の進歩に対して、幅広く貢献すると考えられる。よっ て 、 著 者 を 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格が あ る もの と 認 める 。
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