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水産物の流通拠点である漁港における      衛 生 管 理 に 関 す る 研 究

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Academic year: 2021

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     博士(水産科学)横山    純 学位論文題名

水産物の流通拠点である漁港における      衛 生 管 理 に 関 す る 研 究

学位論文内容の要旨

我 が国 は、魚 介類 を生で食する習慣があり、刺身や寿司など多くの非加熱食品が流通 し ている。このため、漁獲から消費者に届くまでの流れにおいて、時間の経過とともに品 質 が劣 化す る可能性が高く、生物学的危害を中心に、慎重な対応が求められている。一般 に、 水産 物の 流れ は、 [漁場]→[漁港]→[産地卸売市場]→[加工場]→[消費地卸 売市 場] →[ 小売 店] →[消費者]であり、このフードチェーンにそった危害分析に基づ く1jスク 管理 が必 要で ある。この中で、加工場から消費者に届くまでの食品分野では、食 品衛 生法 に基 づき 体系 的に衛生管理対策が行われているが、漁獲から加工場に入るまでの 分野 を担 う漁 港、 産地 卸売市場は本来漁港内に立地されることが多く漁場での漁獲後から 加工 場へ 搬送 され るま での活動の場を広義の意味で「漁港」と定義されるにあっては、水 産物 の衛 生管 理は 、こ れまでそのほとんどが生産者による個々の判断で取組まれてきた。

そこ で、 本研 究で は漁 港の衛生管理対策を確実かつ統一的に進めていくため、漁港の現状 把握 によ る課 題の 整理 と対策の検討を行い、漁港の衛生管理基準を体系化して、衛生基準 の達 成に 向け た現 場の 適応 性に ついて 考察 した 。

  

ま ず第 一章 では 、漁 港における衛生管理対策の方向性についてアンケート結果をもとに 解析 を行 った 。水 産物 の衛生管理は、消費者に安全・安心な水産物を供給することを目的 に、 科学 的評 価に 基づ くりスク管理を行うと同時に、消費者に十分な理解が得られるよう 取り 組ん でい く必 要が あることから、消費者二ーズと漁港管理者の施策との間の乖離状況

    

―966 ‑

(2)

を確認した。その結果、消費者の意識は、「水産物を扱う場所を清潔に保っための対策」

が必要と考える人の割合が高く、個別項目としては、「水産物の温度管理の徹底」や「作 業終了後に床面や機器類を殺菌処理水を使用して洗浄」などの項目に意識が高い一方で、

漁港整備の取り組み状況は、水産物への温度管理に対しては13.3%、排水のスクリーン処 理 等 に あ っ て は

46.7

% と い ず れ の 対 策 も 低 レ ベ ル に あ る こ と が 判 明 し た 。

  

第二章では、漁港環境の細菌学的実態を把握するために、全国の漁港の中から代表的な

6

漁港を選定し、漁港内の細菌の分布状況の調査を行った。その結果、水質項目のうち溶 存酸素量

(DO)

や全窒素量

(T‑N)

は港口と港奥で値が異なる傾向が示される一方、

pH

や 塩分濃度(SAL)では大きな違いは見られないことが判明した。また大腸菌や大腸菌群はほ ぽ全ての漁港から分離され、一地点を除き、大腸菌群数で2〜9,200 MPN/lOOmL、大腸菌 数で1.8以下〜330 MPN/lOOmLとなった。腸炎ピブリオ菌は海水温によって影響されるが、

高水温の場合には

240 MPN/lOOmL

を示す地点があるなど、分離される可能性が高いこと が判明した。

  

第三章では、前章で大腸菌および大腸菌群が全ての漁港で検出されたことから、第一節 では北海道海域で分布の実態把握を行った。その結果、調査対象海域全てで大腸菌および 大腸菌群が分離され、河川が付近にある漁港では高い値を示す傾向が見られた。第二節で は北海道十勝沖および道南の上磯漁港周辺海域を対象に大腸菌および大腸菌群数の分布状 況を観察した。その結果、漁港内で分離される大腸菌および大腸菌群の数は河川水の拡散 と密接に関連し、その流入と因果関係があることが判明した。また、道南の漁港を対象に 漁港の入ルロと河川の位置との関係を中心に漁港内での大腸菌および大腸菌群の分布数の 違いを調査したところ、漁港の入ルロが河川のある方向を向いている場合に、分離菌数が 多くなる傾向が示された。

  

第四章では、漁港の衛生管理対策のあり方について考察した。漁港は河川の近くに建設 されている場合が多く、特に港内に大腸菌や大腸菌群が多く存在する可能性が高しゝことか

(3)

ら、海水の殺菌処理と殺菌海水を用いた作業場等の洗浄処理に的を絞り、実際の漁港での 利用効果を調査した。海水の殺菌効果につしゝては6漁港で調査を行い、殺菌海水を用いた 作業 場等 の洗 浄効 果に つい ては

4

漁港 で調 査を行った。その結果、紫外線殺菌は殺菌率で

91.2

〜99.99%以上と効果が期待される一方で、海水電解殺菌や塩素殺菌は残留塩素濃度の 違いにより殺菌率で39.9〜99.9%以上と効果にパラツキが生じることが判明した。しかし、

紫外 線殺 菌は 設備投 資や 電気代に多大なコストがかかることから、海水電解殺菌がコスト 的に 有利 であ り、安 定し て有効塩素濃度が確保できるよう調整することができれば最も有 効で ある と考 えられ た。 また除菌効果については、作業性やコスト面等を考慮し殺菌海水 によ る15秒間 の流水 洗浄 方法を採用して調査を行ったところ、長靴洗浄において除菌率が 概ね

70

% 以上 を示す など 一定の効果が期待されるものの、洗浄物の材質により効果に変化 が見 られ るこ とが判 明し た。

  

第 五章 では 、これ まで の調査・検証結果をもとに、漁港の衛生管理基準について提案を 行っ た。 現実 的な基 準と なるよう、漁港での作業ライン毎の評価基準とするとともに、達 成状 況が 分か るよう

3

段 階の 基準 設定 を提 案した 。ま た、全国への普及に向けての留意事 項に つい て整 理した 。具 体的には、一度に大量の漁獲物を扱う場合に、漁港港内へのトラ ック の進 入は 不可欠 との 意見が多く、トラックのタイヤ面に付着した細菌が港内に混入す る危 険性 を認 めつっ も、 ◎夕イヤ洗浄、◎必要に応じ車体洗浄、◎排気ガス対策、@車両 の進 入管 理等 の対策 を総 合的に講じることでトラックの進入を許容した。また、漁港内で の使 用海 水に おいて 直接 的に魚体に触れる場合と、漁具洗浄など間接的に触れる場合とで 基準 を変 える など、 管理 コストの縮減に配慮する基準とした。将来展望として、海水の殺 菌方 法に は海 水電解 殺菌 処理が経済的に有利とするとともに、フードチェーンアプ口ーチ の考 えに 基づ く一次 生産 から消費までの総合的な管理体制の構築に向けて各段階をっなぐ 流通 企業 の認 証(CoC認証 :Chain of Custodyや トレ ーサ ピリ ティ の導 入の必 要性 につい て考 察し た。

    

−968―

(4)

提示する漁港の衛生管理基準は、水産庁において各漁港管理者あてに通知がなされ、既に 各漁港で取り組みが進められている。通知に先だち、基準の適用可能性を各漁港管理者に 意見聴取した結果、達成レベルを3段階に分類することは妥当とする一方で、漁港として 最低限講ずべき対策の基準としたレベル1のうち、水産基準の項目内の化学的酸素要求量

(COD)

や浮遊物質量(SS)は、漁港内に限らず周辺海域も含めて既に基準を満たさない実 態が多くあるとの意見もあった。この基準値は水産物の漁場環境としての基準である水産 用水基準から準用したため、今後は更に実態解明を行い、漁港を考慮した新基準値を設定 していく必要があると考える。

(5)

学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教 授 教 授 教 授 特 任 准教授 助 教

吉水 川合 長野 古屋 笠井

学 位 論 文 題 名

     祐史

    章(はこだて未来大学)

温 美 ( 水 産 科 学 研 究 院 ) 久会

水産物 の流通 拠点であ る漁港における      衛 生管理 に関する 研究

  我が国は、魚介類を生で食する習慣があり、刺身や寿司など多くの非加熱食品が流通している。この ため、漁獲から消費者に届くまでの流れにおいて、時間の経過とともに品質が劣化する可能性が高く、

生物学的危害を中心に、慎重な対応が求められている。一般に、水産物の流れは、[漁場]→[漁港]

→[産地卸売市場]→[加工場]→[消費地卸売市場]→[小売店]→[消費者]であり、このフード チェーンにそった危害分析に基づくりスク管理が必要である。この中で、加工場から消費者に届くまで の食品分野では、食品衛生法に基づき体系的に衛生管理対策が行われているが、漁獲から加工場に入る までの分野を担う漁港にあっては、衛生管理対策はそのほとんどが生産者による個カの判断で取組まれ てきた。そこで、本論文では漁港の衛生管理対策を確実かつ統一的に進めていくため、漁港の現状把握 による課題の整理と対策の検討を行い、漁港の衛生管理基準を体系化して、衛生基準の達成に向けた現 場 の 適 応 性 に っ い て 考 察 し 、 提 言 を 行 っ た 。 本 論 文 の 審 査 概 要 は 以 下 の と お り で あ る 。 1.ま ず、漁港における衛生管理対策の方向性にっいて整理すべく、消費者ニーズと漁港管理者の施策   との間の乖離状況をアンケート調査した結果、消費者の意識は、「水産物の温度管理の徹底」や「作   業終了後に床面や機器類を殺菌処理水を使用して洗浄」などの項目に意識が高い一方で、漁港整備の   状況は、水産物への温度管理に対しては1313%、排水のスクリーン処理等にあっては46.7%といずれ   の対策も低レベルにあることを 明らかにした。

2.現状の漁港環境の細菌学的実態 を把握するために、全国から6漁港を選定し、漁港内の細菌の分布   状況の調査を行った結果、溶存 酸素量(DO)や全窒素量(TN)は港口と港奥で値が異なる傾向が示   さ れた ほ か、 大腸 菌等はほば全ての漁港か ら分離され、一地点を除き、大腸菌数で1.8以下〜330   MPN/lOOmLと なり 、腸 炎ビプリオ菌は、240 MPN/lOOmLを示す地点があるなど、高水温の場合に分

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(6)

離される可能性が高いことを明らかにした。

3.大腸菌および大腸菌群が全ての漁港で検出されたことから、北海道海域で大腸菌等の分布の実態把 握を行った結果、調査対象海域全てで大腸菌およぴ大腸菌群が分離され、漁港内で分離される大腸菌 および大 腸菌群 の数は河 川水の 拡散と密 接に関 連し、その流入と因果関係があることを明らかにし た。また、道南の漁港を対象に漁港の入り口と河川の位置との関係を中心に漁港内での大腸菌および   大腸菌群の分布数の違いを調査し、漁港の入り口が河川のある方向を向いている場合に、分離菌数が   多くなる傾向があることを示した。

4.漁港の衛生管理対策のうち、海水の殺菌処理と殺菌海水を用いた作業場等の洗浄処理に的を絞り、

実際の漁港での利用効果を調査した結果、紫外線殺菌は殺菌率で91.2〜99.99%以上と効果が期待され   る一方で、海水電解殺菌や塩素殺菌は残留塩素濃度の違いにより39.9〜  99.9%以上と効果にバラツキ   が生じることを示した。しかし、紫外線殺菌は設備投資や電気代に多大なコストがかかることから、

海水電解殺菌がコスト的に有利であり、安定して有効塩素濃度が確保できるよう調整することができ   れぱ最も有効であることを明らかにした。また洗浄効果にっいては、作業性やコスト面等を考慮し殺 菌海水に よる15秒 問の流水 洗浄方 法にて調 査を行 い、長靴洗浄の除菌率が概ね70%以上を示すなど   一 定 の効 果 が 期待 さ れ る もの の 、 洗浄 物 の 材質 に よ り効 果 に変化 が見ら れること を示し た。

5.以上の調査・検証結果をもとに、漁港の衛生管理基準について提案を行った。現実的な基準となる   よう、漁港での作業ライン毎の評価基準とするとともに、3段階の基準設定を提案した。また、漁港   内での使用海水に船いて直接的に魚体に触れる場合と、漁具洗浄ぬど間接的に触れる場合とで基準を   変えるなど、管理コストの縮減に配慮する基準となっている。将来展望として、フードチェーンアプ   ローチに基づくー次生産から消費までの総合的な管理体制の構築に向けて各段階をっなぐ流通企業   の 認 証(CoC認 証 :Chain of Custody)や ト レ ー サ ビ リ テ ィの 導 入 の必 要 性 を提 言 し た・ 。     提示した漁港の衛生管理基準は、水産庁において各漁港管理者あての通知とともに、既に各漁港で   取り組みが進められている。通知に先だち、基準の適用可能性を各漁港管理者に意見聴取したところ、

  漁港の 最低限講 ずべき対 策の基 準とした レベル1において、水質基準の化学的酸素要求量(COD)   浮遊物質量(SS)は、漁港内に限らず周辺海域も含めて既に基準を満たさない実態が多くあるとの意   見 が あり 、 今 後は 更 に 実 態解 明 を 行い 、 新 基準 値 を 設定 し ていく 必要が あること を示し た。

  以上、本研究の成果は、漁港環境の細菌学的実態を明らかにし、それを踏まえて漁港の衛生管理基準 を体系化したものであり,これらの成果は水産科学に寄与するところ大と考え、審査員一同は申請者が 博士(水産科学)の学位を授与される資格のあるものと判定した。

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参照

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