• 検索結果がありません。

傾斜農地の災害防止のための降雨流出と

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "傾斜農地の災害防止のための降雨流出と"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 農 学 ) 太 田 弘 毅

学 位 論 文 題 名

傾斜農地の災害防止のための降雨流出と      斜面安定に関する研究

学位論文内容の要旨

  本 論 文 は , 図68, 表66,146ぺ ー ジ から な る和 文 で, 別 に18編の 参考 論文が添えられている。

  我 が 国の 北 海道 以 外に 存 在す る畑 地は 傾斜地が多く ,しかも1区画 の面 積 が狭小で ある。しかし ,この傾斜農 地は地域の環境 保全や水資源 の涵養 に重要 な役割を果たしている。最近,農作業機械の効率的利用を図るため,

ニ の傾斜農 地の圃場区画 を大きくする 傾向にある。狭 小な傾斜農地 の圃場 区 画を拡大 するためには ,大規模な工 事を必要とし, そのため降雨 による 土 壌侵食や 崩壊などの農 地災害防止に 留意する必要が ある。本論文 は傾斜 農地の災害防止のため,「傾斜地における降雨流出と災害」および「傾斜地に おける斜面安定」の研究を行ったものである。

  1.「傾斜地における降雨流出と災害」の研究において,「(1)傾斜小流域に おける降雨流出の解析と予測モデル」,および「(2)降雨流出災害の解析と予測 モデル」の2項目の検討を行った。

  (1)「傾斜小流域における降雨流出の解析と予測モデル」の研究では,傾斜 地における降雨災害を防止するため,四国農業試験場構内において安山岩土壌 を主体とする傾斜地24.5haを対象に解析を行った。この研究では降雨,植生,

地形ならびに土壌要因と流出の関係を調査し,さらに流出量の予測法について 按討し た。その結果 ,直接流出量は ,総雨量R,初勢J流量Qi,降雨強度rな どを用いた重回帰式で表された。また,直接流出量に及ぼす影響の大きさは,

総 雨量R冫 初期 流 量Qi>降 雨強 度rの順 で,降 雨強度の影響は 極めて少なか った。流出量を解析した結果は,中間流出量>表面流出量冫基底流出量の順で 大きかった。表面流出量は流域の傾斜度に影響を受け,傾斜度が大きい流域が 多かった。また,降雨,植生,地形,ならびに土壌要因と流出の関係が把握で き る よ う に , 前 提 条 件 や そ れ に 適 合 し た デ ー タ 抽 出 法 を 明 示 し た 。

(2)

    さらに,植生,地形,土壌要因ならびに逓減係数等から得られたデータを基   に,表面流出,中間流出,基底流出に相当する直列貯留型のタンクモデルを構 築した。また,日洪水流出量,月洪水流出量を予測するプログラムを作成し,

計算開始タンク定数を仮定する手法を開発した。このモデルを用いて流出量の 予測を行い,良好な結果を得た。このモデルは傾斜度,植生の降雨遮断壁なら び に 土 壌 の 透 水 性 が 既 知 の 他 流 域 へ 応 用 で き る 利 点 が あ る 。     (2)「降雨流出災害の解析と予測モデル」の研究では,降雨流出災害として 昭和57年長崎災害を事例として解析し,さらに被害の予測モデルを作成した。

こ の 災害 の降雨 は,長崎市に 関しては日雨量 ,時間雨量と も100〜900年に1 回以上の雨であり,諌早市については50〜  100年に1回の雨に相当しており,

昭和32年諌早豪雨災害 以来の雨であ った。降雨量 ,平均谷密度,畑の平均傾 斜度,市町村の平均傾斜度を説明変数として,目的変数である農地の被害面積 率,農業用施設の被害密度を予測する重回帰モデルを作成し,検証した結果お おむね良好な結果が得られた。

    このモデルにおいて降雨量以外の説明変数は,既存の土地分類図や地力保全 基本調査総合成績書に掲載されている変数を使用している。したがって,市町 村単位で種々の時間単位に対応した確率雨量を算定し,豪雨後の迅速な被害額 を概算できる。さらに,確率豪雨水準に対応した防災対策立案に必要な情報を 構築できることに特徴がある。

    2.「傾斜地における斜面安定」の研究において,「(1)九州における主要な 特殊土の斜面安定に影響する理工学的性質」,「(2)池敷シラス斜面の緑化によ る斜面安定機能」,および「(3)放牧草地におけるネザサ根の斜面安定機能」の 3項目の検討を行った。

(1)「九州における主要な特殊土の斜面安定に影響する理工学的性質」の研究 では,九州における傾斜畑の斜面安定に関する基礎的知見を得るために,主要 な畑土壌である花崗岩風化マサ土,黒ボク,赤ボク,シラスの理工学的性質を 解明した。重回帰分析法によって,乾燥密度と含水比が粘着カならびに剪断抵 抗角に及ぼす影響を解析した。その結果,粘着カに及ばす影響は乾燥密度が含 水比よりも大きく,含水比の増加はシラスを除いて粘着カを低下させることを 明らかにした。また,剪断抵抗角に及ばす影響は,含水比の方が乾燥密度より も大きかった。さらに,土壌が飽和すると,シラス以外の粘着カは非飽和時の 40%か ら90%に低下し, 特にマサ土に おいて低下が著しかった。剪断抵抗角 は, いずれの土壌 においても飽 和すると非飽和 時の20%から80%に低下して おり,この場合もマサ土において低下が著しかった。

  (2)「池敷シラス斜面の緑化による斜面安定機能」の研究では,池敷シラス     ー224 ‑

(3)

斜面 の緑化のため,19種類の草生について耐冠水性,乾燥性ならびに種子の 発芽率などの観点から実験を行った。その結果,夏型草はバヒアグラス,口ー ズグラス,ツクシオオガヤツリ,冬型草はレッドトップが有効であることが判 1引した。また,これら草の生育に適した土層改良目標として,乾燥密度は約 l.9g/ c1113以 下 に す る こ と が 適 当 で あ る こ と が 判 明 し た 。   さらに,これら草生による斜面安定機能の研究結栗,植生根の土壌緊縛カに よっ て,剪断抵抗カは約5割の強度増加が認められた。特に,垂直荷重が0.5 kg/cmzの場合 に剪断抵抗カの増加が顕著であり,平均で約2倍の大きさを示 した。このことは土かぶり圧が小さい斜面表層の崩壊や侵食防止に対して緑化 工の有効性を示している。

  以上のように,乾燥`,多湿,冠水の厳しい3条件に適合した池敷斜面の緑化 箪手重,緑化工の斜面安定機能の検討は,植生根の土壌緊縛にともなう剪断抵抗

・´Jの増加に起因することを工学的に明らかにした極めて少ない研究事例のーつ である。また,緑化草の生育に適した土壌の乾燥密度を示し,池敷シラス斜面 の緑化工に有用な知見を提供した。

  (3)「放牧草地におけるネザサ根の斜面安定機能」の研究では,ネザサ根に よる放牧草地の斜面安定機能を研究した。その結果,ネザサが生えていない牧 草地の裸地率は,牧草とネザサが共存する混在草地の5倍強となっていた。ネ ザサ根重は野草地冫混在草地冫牧草地の順で多かった。牛道の崩壊箇所数や崩 壊面積はともに牧草地が多く,混在草地は極めて少なかった。ネザサ根は深さ 40cm位 まで 網 目状 に分 布 して い るが , 牧草 根は表 層5cm位に多く存在 して いる。そのため,牧草地は過湿時の牛の通行によって損傷され易い。一方,ネ ザサ根は土壌の緊縛作用に優れており,混在草地の剪断抵抗カは牧草地よりも 約4割大きいことを明らかにした。

  さらに,草地造成法の違いがネザサ根の分布に差異をもたらしており,この ことにより根群の土壌緊縛カに相違を生じさせている。したがって,ネザサを 估死させて牧草のみとするよりも,ネザサを残した混在草地は家畜の蹄傷ひい て は 侵 食 , 荒 廃 か ら 放 牧 地 を 保 全 す る 上 で 有 利 と い え る 。   以上のように,この研究は土質工学と草地生態学の境界領域を対象とし,ネ ザサ根が有する土壌緊縛カによる剪断抵抗カの増強を活用した保全型の混在草 地造成法の有効性を明らかにしたものである。

225―

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

傾斜農地の災害防止のための降雨流出と      斜面安定に関する研究

  本 論 文 は , 図68, 表66146ぺ ー ジ か ら な る 和 文 で , 別 に18編 の 参 考 論 文 が 添 え られ てい る。

  我 が 国 の 北 海 道 以 外 に 存 在 す る 畑 地は 傾 斜 地 が 多 く , し か も1区画 の 面 積 が 狭 小 で あ る 。 最 近 , 農 作 業 機 械 の 効 率 的 利 用 を 図 る た め , こ の 傾 斜 農 地 の 圃 場 区 画 を 大 き く す る 傾 向 に あ る 。 狭 小 な 傾 斜 農地 の 区 画 を 拡 大する ため には ,大 規模 な工 事 を 必要 とし ,降 雨によ る土 壌侵 食や 崩壊 など の農 地災 害防 止に 留意 する 必要がある。

本 論文 は傾 斜農 地の災 害防 止の ため ,「 傾斜 地に おけ る降 雨流 出と 災害 」および「傾 斜 地に おけ る斜 面安定 」の 研究 を行 った もの であ る。

  1.「 傾斜 地に おける降雨流出と災害」の研究において,「(1)傾斜小流域における 降 雨流 出の 解析 と予測 モデ ル」 ,お よび 「(2)降雨 流出 災害 の解 析と 予測 モデル」の2 項 目の 検討 を行 った。

  (1) 「傾 斜小 流域 にお ける 降雨 流出 の解 析と予測モデル」の研究では,傾斜地にお け る降 雨災 害を 防止す るた め, 降雨 ,植 生, 地形 なら びに 土壌 要因 と流 出の関係を調 査 し. さら に流 出量の 予測 法に つい て検 討し た。その結果,直接流出量は,総雨量R 初 期 流 量Qi, 降 雨 強 度rな ど を 用 い た 重 回 帰 式 で 表 さ れ た 。 ま た ,直 接 流 出 量 に 及 ぼ す 影 響 の 大 き さ は , 総 雨 量R冫 初 期 流 量Qi冫 降 雨 強度rの 順 で あ っ た 。 さ ら に , こ れら によ る直 列貯留 型の タン クモ デル を構 築し た。 また ,洪 水流 出量 を予測するプ 口 グラ ムを 作成 し,計 算開 始タ ンク 定数 を仮 定す る手 法を 開発 した 。こ のモデルは傾 斜 度, 植生 の降 雨遮断量および土壌の透水性が既知の他流域へ応用できる利点がある。

  (2) 「降 雨流 出災 害の 解析 と予 測モ デル 」の研究では,降雨流出災害として昭和57 年 長崎 災害 を事 例とし て解 析し ,さ らに 被害 予測 モデ ルを 構築 した 。こ の災害の降雨 は , 長 崎 市 に 関 し て は 日 雨 量 , 時 間 雨量 と も100200年 に1回 以 上の 雨 に 相 当 し て

‑ 226

夫豊 明 郁   徹 口田 澤 堀松 長 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(5)

いた。降雨量,平均谷密度,畑の平均傾斜度,市町村の平均傾斜度を説明変数として,

目的変数である農地の被害面積率,農業用施設の被害密度を予測する重回帰モデルを 作成し,検証した結果おおむね良好な結果が得られた。このモデルは市町村単位で確 率雨量を算定し,豪雨後の迅速な被害額を概算できるのみならず,防災対策立案に必 要な情報を構築できることに特徴がある。

  2.「傾斜地における斜面安定」の研究において,「(1)九州における主要な特殊土 の斜面安定に影響する理工学的性質」,「(2)池敷シラス斜面の緑化による斜面安定機 能」,および「(3)放牧草地におけるネザサ根の斜面安定機能」の3項目の検討を行っ た。

  (1)「九州における主要な特殊土の斜面安定に影響する理工学的性質」の研究では,

九州における傾斜畑の斜面安定に関する基礎的知見を得るために,主要な畑土壌であ る花崗岩風化マサ土,黒ボク,赤ボク,シラスの理工学的性質を解明した。重回帰分 析法によって,乾燥密度と含水比が粘着カならびに剪断抵抗角に及ばす影響を解析し た。その結果,粘着カに及ぼす影響は乾燥密度が含水比よりも大きく,含水比の増加 はシラス以外の粘着カを低下させることを明らかにした。また,剪断抵抗角に及ぼす 影響は,乾燥密度より含水比が大きかった。

  2)「池敷シラス斜面の緑化による斜面安定機能」の研究では,池敷シラス斜面の 緑化 のため,19種類の草生について耐冠水性,乾燥性ならびに種子の発芽率などの 観点から実験を行った。その結果,夏型草はバヒアグラス,ローズグラスなど,冬型 草はレッドトップが有効であることを示した。また,これら草の生育に適した乾燥密 度は 約l.2g/cm3以下にすることが適当であると結諭した。さらに,これら草生によ る斜面安定機能の研究結果,植生根の土壌緊縛カによって,剪断抵抗カは約5割の強 度増加が認められた。

  3)「放牧草地におけるネザサ根の斜面安定機能」の研究では,ネザサ根による放 牧草地の斜面安定機能を研究した。その結果,ネザサがない牧草地の裸地率は,ネザ サと 牧草が共存 する混在草 地の5倍 強となっていた。ネザサ根は深さ40cm位まで網 目状 に分布しているが,牧草根は表層5 cm位に多く存在する。そのため牧草地は過 湿時の牛の通行によって損傷され易い。一方,ネザサ根は土壌の緊縛作用に優れてお り,混在草地の剪断抵抗カは牧草地よりも約4割大きいことを明らかにした。したが って,ネザサを枯死させて牧草のみとするよりも,ネザサを残した混在草地は家畜の 蹄 傷 ひ い て は 侵 食 , 荒 廃 か ら 放 牧 地 を 保全 す る上 で 有利 で ある と 結 諭し た 。   以上のように,本論文は傾斜農地について災害防止のための降雨流出と斜面安定に 関する研究である。この成果は学術的・実用的に高く評価される。よって審査員一同 は, 太田弘毅が博士(農学)の学位をうけるに十分な資格を有するものと認めた。

参照

関連したドキュメント

防災 “災害を未然に防⽌し、災害が発⽣した場合における 被害の拡⼤を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをい う”

これまで社会状況に合わせて実態把握の対象を見直しており、東京都公害防止条例(以下「公 害防止条例」という。 )では、

歴史的にはニュージーランドの災害対応は自然災害から軍事目的のための Civil Defence 要素を含めたものに転換され、さらに自然災害対策に再度転換がなされるといった背景が

●大気汚染防止対策の推 進、大気汚染状況の監視測 定 ●悪臭、騒音・振動防止対 策の推進 ●土壌・地下水汚染防止対 策の推進

資源回収やリサイクル活動 公園の草取りや花壇づくりなどの活動 地域の交通安全や防災・防犯の活動

条文の規定 第98条

雨地域であるが、河川の勾配 が急で短いため、降雨がすぐ に海に流れ出すなど、水資源 の利用が困難な自然条件下に

・また、熱波や干ばつ、降雨量の増加といった地球規模の気候変動の影響が極めて深刻なものであること を明確にし、今後 20 年から