第 589 号 平成二十九年一月一日発行(毎月一回一日発行)五八九号(第五十一巻一号)
第
589
号
平成 29 年1月1日発行(毎月1回発行) ISSN 1343−6074太平洋クロマグロの小型魚漁獲
半減に向けた取組について
(第1部)
神 谷 崇
漁場資源課長
水産庁
竹 越 攻 征
課長補佐
管理課広域資源管理推進班
◇ … 政 界 人 と 経 済 人 は 人 間 の 資 質 に 違 い が あ る の か も 知 れ な い。 或 い は 資 質 と い う よ り 日 常 の 仕 事 が そ う さ せ る の か も 知 れ な い。 経 済 の 仲 間 は 友 人 に 対 し 寛 容 で あ れ と い う。 な る べ く 自 己 主 張 を ひ か え、 寛 容 な 態 度 で 接 し よ う と 努 め る。 こ れ に 対 し 政 治 家 は 相 手 の 欠 点 を あ ば い た り、 と が め た り、 と き に は プ ラ イ ベ ー ト の 面 ま で 平 気 で 表 沙 汰 に す る。 政 治 家 と い う の は 必 ず し も 一 色 で は な い。 主 義 主 張 が 違 う し、 そ れ ら の 同 志 と 一 緒 に 起 居 を と も に し て い る。 そ れ に 選 挙 も あ る。 同 一 選 挙 区 で 生 死 を か け た 戦 い も せ ざ る を得ない。 ◇ … し か し、 経 済 人 も 商 行 為 で は し ば し ば 強 食・ 弱 肉 の 激 し い 噛 み 合 い を 強 い ら れ る。 政 治 家 と 違 い、 食 う か 食 わ れ る か の 壮 絶 な 戦 い が ひ か え て い る。 孔 子 の よ う に「 心 の 欲 す る 所 に 従 え ど も 矩 のり を 踰 こ え ず 」 と 鷹 揚 に 構 え て い る 訳 に は い か な い。 何 し ろ 一 族 郎 党 の 生 活 を み な く て は い け な い。 と は 言 え、 論 語 に は「 躬 み 自 ら 厚 く し て、 薄 く 人 を 責 む る と き は、 則 ち 怨 うら み に 遠 ざ か る 」 と あ る。 人 間 の 基本関係は大事にしないといけない。 ◇ … 東 洋 で は 常 に 儒 家 と 仏 家 の 違 い を 問 わ れ る。 儒 家 は「 具 体 的 な 事 物 か ら 遊 離 せ ず、 た だ 天 則 の 自 然 に 従 う の み で あ る 」 と い う。 こ れ に 対 し 仏 家 は 逆 に あ ら ゆ る 事 物 か ら た ち 切 ろ う と す る。 だ か ら 天 下 を 治 め る こ と が で き な い と い う。 中 国、 戦 国 時 代 に 有 名 な 蘇 秦、 張 儀 は「 合 がっ 従 しょうれんこう 連 衡」 と い う 外 交 戦 略 を あ み 出 し、 古 代 中 国 を 舞 台 に 大 あ ば れ し た 政 治 家 で あ る。 ◇ … 蘇 秦、 張 儀 と い っ た 連 中 が 多 く 出 現 し た た め、 人 心 は 荒 廃 を 極 め た。 富 強 の た め の 理 論 を 求 め、 謀 略 の 研 究 を 進 め、 相 手 を や っ つ け る た め の 謀 略 が 巾 を 利 か し、 人 々 は 闘 争 強 奪 に あ け く れ る よ う に な っ た。 こ う し た 覇 道 が 人 心 の 荒 廃 を 招 き、 結 局 行 き 詰 ま り を み せ た。 日 本 の 政 治 も こ の 道 を 進 ん で は な る ま い。 自 民 党 ト ッ プ の 采 配 次 第 で あ り、 今 後 の 日 本 の 政 道 が ど う 進 む か、 極 め て 注 目 さ れる。 ( K ) 築 地 市 場 の 初 競 り 価 格 が 新 年 の 定 番 ニュースとなるほど、 多くの日本人にと っ て ク ロ マ グ ロ は 大 変 話 題 性 の 高 い 魚 です。近年では養殖生産も増え、 買いや すくもなってきています。しかし、 国際 的には資源状況の悪化が懸念され、 主要 漁 業 国 で あ る わ が 国 で も 資 源 管 理 の 対 策が進められてきました。 本号と次号で は、 太平洋クロマグロの小型魚漁獲の半 減に向けた取組について、 背景事情を含 めて詳述いただきました。 両著者に深く 感謝致します。 「水産振興」 第五八九号 平成二十九年一月一日発行 (非 売 品) 井 上 恒 夫 編集兼 発行人 発行所 〒 東京都中央区豊海町五番一号 豊海センタービル七階 一般財団法人 東京水産振興会 印刷所 ㈱連合印刷センター 電 話 ( 03) 三 五 三 三 ︱ 八 一 一 一 F A X ( 03) 三 五 三 三 ︱ 八 一 一 六 (本稿記事の無断転載を禁じます) ご意見・ご感想をホームページよりお寄せ下さい。 URL http://www.suisan-shinkou.or.jp/ 「水産振興」発刊の趣旨 日 本 漁 業 は、 沿 岸、 沖 合、 そ し て 遠 洋 の 漁 業 と い わ れ る が、 わ れ わ れ は、 そ れ ぞ れ が 調 和 の と れ た 振 興 が あ る こ と を 期 待 し て お る の で、 そ の 為 に は、 そ れ ぞ れ の 個 別 的 分 析、 乃 至 振 興 施 策 の 必 要 性 を、 痛 感 す る も の で あ る。 坊 間 に は、 あ ま り に も そ れ ぞ れ を 代 表 す る、 い わ ゆ る 利 益 代 表 的 見 解 が 横 行 し す ぎ る 嫌 い が あ る の で あ る。 わ れ わ れ は、 わ が 国 民 経 済 の な か に お け る 日 本 漁 業 を、 近 代 産 業 と し て、 よ り 発 展 振 興 さ せ る こ と が 要 請 さ れ て い る と 信 ず るものである。 こ こ に、 わ れ わ れ は、 日 本 水 産 業 の 個 別 的 分 析 の 徹 底 に つ と め る と と も に そ の 総 合 的 視 点 か ら の 研 究、 さ ら に、 世 界 経 済 と と も に 発 展 振 興 す る 方 策 の 樹 立 に 一 層 精 進 を 加 え る こ と を 考 え た ものである。 こ の 様 な 努 力 目 標 に む か っ て わ れ わ れ の 調 査 研 究 事 業 を 発 足 さ せ た 次 第 で 冊 子 の 生 れ た 処 以、 ま た こ れ へ の 奉 仕 の、ささやかな表 わ れである。 昭和四十二年七月 財団法人 東京水産振興会 ( 題 字 は 井 野 碩 哉 元 会 長 ) 104-0055
時事余聞
目 次 太 平 洋 ク ロ マ グ ロ の 小 型 魚 漁 獲 半 減 に 向 け た 取 組 に つ い て ( 第 一 部 ) 第五八九号 まえがき……… 1 第一部 太平洋クロマグロの国際管理体制の 誕生から小型魚漁獲半減措置の決定まで… 2 は じ めに.太平洋クロマグロの特徴と利用状況 ― 管理の複雑さ、難しさ………… 2 1 . W C PF C 条約加盟前後の動き (~二〇〇六 (平成十八) 年) ……… 6 2 .二〇〇七(平成十九)年の動き……… 12 3 .二〇〇八(平成二十)年の動き……… 15 4 .二〇〇九(平成二十一)年の動き……… 19 5 .二〇一〇(平成二十二)年の動き……… 25 6 .二〇一一(平成二十三)年の動き……… 35 7 .二〇一二(平成二十四)年の動き……… 41 8 .二〇一三(平成二十五)年の動き……… 49 9 .二〇一四(平成二十六)年の動き……… 58 10.二〇一五(平成二十七)年の動き……… 78 11.二〇一六(平成二十八)年の動き……… 83 12.六回の資源評価から学ぶこと……… 88 終 わ りに.……… 93 太平洋クロマグロ年鑑……… 97 時 事 余 聞 編 集 後 記神
こう谷
や崇
たかし 略歴 ▽ 昭 和 三 十 七 年 生 ま れ。 六 十 年 九 州 大 学 農 学 部 水 産 学 科 卒 業、 同 年 水 産 庁 入 庁、 平 成 十 七 年 石 川 県 水 産 課 長、 二 十 年 水 産 庁 国 際 課 漁 業 交 渉 官、 二 十 四 年 同 漁 業 調 整 課 首 席 漁 業 調 整 官、 二 十 六 年 同 資 源 管 理 部 参 事 官、 二 十八年同漁場資源課長。竹
たけ越
こし攻
こう征
せい 略歴 ▽ 昭 和 五 十 三 年 生 ま れ。 平 成 十 三 年 東 京 水 産 大 学 卒 業、 十 五 年 水 産 庁 入 庁、 十 七 年 鹿 児 島 県 庁 出 向、 十 九 年 水 産 庁 栽 培 養 殖 課 内 水 面 班 係 長、 二 十 三 年 同 国 際 課 捕 鯨 情 報 企 画 官、 二 十 五 年 同 漁 業 調 整 課 か つ お・ ま ぐ ろ 漁 業 企 画 官、 二 十 七 年 同 管 理 課 課 長 補 佐( 広 域 資 源 管 理 推進班担当) 。ま
え
が
き
日 本 は 、 中 西 部 太 平 洋 ま ぐ ろ 類 委 員 会 ( 以 下 「 W C P F C 」) の 決 定 に 基 づ き 、 二 〇 一 五 ( 平 成 二 十 七 ) 年 か ら 太 平 洋 ク ロ マ グ ロ の 三 〇 キ ロ グ ラ ム 未 満 の 小 型 魚 の 総 漁 獲 量 を 四 ,〇 〇 七 ト ン に 制 限 す る 措 置 ( 二 〇 〇 二 ~ 二 〇 〇 四 年 平 均 水 準 か ら の 半 減 。太
平
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(第一部)
神
谷
崇
竹
越
攻
征
水
産
庁
課長補佐
管
理
課
広
域
資
源
管
理
推
進
班
漁場資源課長
年 に よ っ て 変 動 が あ る が、 漁 獲 の 七 割 前 後 は 日 本 が 占 め て お り、 こ れ に メキ シ コ、 韓 国、 台 湾が続いている 長 。 三 歳 か ら 一 部 ( 二 〇 % 程 度 ) は 産 卵 を 開 始 す る が 、全 個 体 が 産 卵 す る の は 五 歳 ( 約 一 六 〇 セ ン チ 、 八 五 キ ロ グ ラ ム ) と い わ れ て い る 。 寿 命 は 二 〇 歳 以 上 で 二 メ ー ト ル ・ 二 〇 〇 キ ロ グ ラ ム 以 上 ま で 成 長 す る 。 そ の 一 部 は 成 長 の 過 程 で 、 太 平 洋 を 横 断 し メ キ シ コ か ら カ リ フ ォ ル ニ ア 沖 で 数 年 を 過 ご し 日 本 に 戻 っ て く る が 、 多 く は 日 本 周 辺 で 成 長 ・ 成 熟 す る ( 図 1 、2 )。 高 度 回 遊 性 魚 種 と い え ど も 、 メ バ チ や キ ハ ダ と い っ た 公 海 域 に 分 布 の 主 体 が あ る 種 と 比 べ れ ば 、 沿 岸 性 の 強 い 魚 種 で あ り 、 公 海 域 で は 殆 ど 漁 獲 さ れ て い な い 。 年 に よ っ て 変 動 が あ る が 、 漁 獲 の 七 割 前 後 は 日 本 が 占 め て お り 、 こ れ に メ キ シ コ 、 韓 国 、 台 湾 が 続 い て い る 。 こ れ ら の 国 の 漁 獲 物 も 大 半 は 日 本 へ 輸 出 さ れ る ( 台 湾 は 全 て 国 内 消 費 ) た め 、 日 本 は 太 平 洋 ク ロ マ グ ロ の 最 大 の 漁 獲 国 で あ り 消 費 国 で あ る 。 日 本 国 内 で は 、 全 国 で 様 々 な 漁 業 に よ り 漁 獲 さ れ て い る が 、 主 要 な 漁 獲 形 態 は 、 西 日 本 の 曳 縄 で 小 型 魚 が 、 東 日 本 の 定 置 で 小 型 ~ 中 型 魚 が 、 三 陸 沖 及 び 日 本 海 の ま き 網 で 中 型 魚 が 、 太 平 洋 側 の は え 縄 で 大 型 魚 が 漁 獲 さ れ 、 こ れ に 加 え て 九 〇 年 代 か ら は 西 日 本 の ま き 網 で 小 型 魚 が 大 量 に 漁 獲 さ れ る よ う に な っ た ( 図 3 、4 )。 太 平 洋 ク ロ マ グ ロ の 資 源 管 理 を 複 雑 に し て い る 背 景 は 、 ま ず 類 似 の 大 西 洋 ク ロ マ グ ロ の 存 在 が あ げ ら れ る 。 大 西 洋 ク ロ マ グ ロ は 地 中 海 で 漁 獲 ・ 蓄 養 さ れ 日 本 に 輸 出 さ れ る 。 二 〇 〇 〇 年 代 後 半 の 資 源 管 理 強 化 が 日 本 へ の 輸 出 急 減 と な り 、 こ れ を 補 う た め 太 平 洋 ク ロ マ グ ロ を 対 象 と し た 日 本 国 内 と メ キ シ コ の 養 殖 を 増 大 さ せ た 。 こ れ ら ク ロ マ 通 称 「 半 減 措 置 」) を 実 施 し て い る 。 こ れ は 、 定 置 網 も 含 め 全 て の 漁 業 の 総 漁 獲 量 を 規 制 す る 前 例 の な い 措 置 で あ る 。本 書 で は 、ど の よ う に し て こ の 措 置 を 導 入 す る に 至 っ た か の 経 緯 と 対 応 を 時 系 列 的 に 記 述 し た 。 二 〇 一 四 ( 平 成 二 十 六 ) 年 の W C P F C に お け る 半 減 措 置 決 定 ま で の 国 際 的 ・ 国 内 的 な 対 応 を 第 一 部 ( 但 し 国 際 的 対 応 に 関 し て は 二 〇 一 六 年 四 月 ま で 記 載 )、 半 減 措 置 決 定 以 降 の 国 内 対 応 を 第 二 部 と し 、 第 一 部 は 神 谷 が 本 号 に お い て 取 り ま と め 、 第 二 部 は 竹 越 が 次 号 に お い て 取 り ま と め る 。 両 号 と も 公 表 資 料 を ベ ー ス に 事 実 の 解 説 を 基 本 に 個 人 の 立 場 で 執 筆 し た 。 用 い た 公 表 資 料 は 発 表 年 月 日 と 題 名 を 記 し た 。
第
一
部
太
平
洋
ク
ロ
マ
グ
ロ
の
国
際
管
理
体
制
の
誕
生
か
ら
小
型
魚
漁
獲
半
減
措
置
の
決
定
ま
で
は
じ
め
に
.
太
平
洋
ク
ロ
マ
グ
ロ
の
特
徴
と
利
用
状
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―
管
理
の
複
雑
さ
、
難
し
さ
太 平 洋 ク ロ マ グ ロ は 高 度 回 遊 性 魚 種 で あ り 、 日 本 近 海 で 孵 化 ・ 成 長 す る 。 現 在 知 ら れ て い る 産 卵 場 は 日 本 海 と 南 西 諸 島 周 辺 で 、 四 ~ 七 月 に 生 ま れ た 稚 魚 は 、 一 年 で 約 六 〇 セ ン チ ・ 四 キ ロ グ ラ ム に 成 長 し 、 三 歳 で 約 一 二 〇 セ ン チ ・ 三 五 キ ロ グ ラ ム ま で 成 本 書 で は、 ど の よ う に し て「 半 減 措 置 」 を 導 入 す る に 至 っ た か の経緯と対応を時系列的に記述図1 太平洋クロマグロの分布・生態について
図2 太平洋クロマグロの成長について 図3 太平洋クロマグロの国別・漁法別漁獲状況
科 学 的 な 議 論 が 開 始 さ れ た 当 初 か ら、 漁 獲 の 主 体 が 小 型 魚 で あ る こ と が 問 題 だ と さ れ て い た こ とは留意されるべき 複 雑 な 関 係 の 全 体 像 を 把 握 し て 事 に 当 た っ て い か ね ば な ら な い のがクロマグロ管理 Pacific 。 以 下 「 I S C 」) が 設 立 さ れ 、一 九 九 六 ( 平 成 八 ) 年 に 第 一 回 会 合 が 開 催 さ れ た 。 ク ロ マ グ ロ の 資 源 状 況 に つ い て も こ の 時 初 め て 議 論 さ れ 、 若 齢 魚 の 多 獲 が 全 体 の 生 産 性 を 下 げ て い る こ と が 指 摘 さ れ た 。 さ ら に 、 以 降 の ク ロ マ グ ロ の 科 学 的 な 議 論 の 詳 細 は ク ロ マ グ ロ 作 業 部 会 で 行 い 、 そ の 結 果 を 基 に 本 会 議 で 最 終 的 な 判 断 を す る こ と も 合 意 さ れ た 。 科 学 的 な 議 論 が 開 始 さ れ た 当 初 か ら 、 漁 獲 の 主 体 が 小 型 魚 で あ る こ と が 問 題 だ と さ れ て い た こ と は 留 意 さ れ る べ き で あ る 。 以 降 I S C 会 合 の 度 に 小 型 魚 の 漁 獲 圧 力 削 減 の 必 要 性 が 指 摘 さ れ て いく *1 : 。 二 〇 〇 〇 ( 平 成 十 二 ) 年 に I S C 第 一 回 ク ロ マ グ ロ 作 業 部 会 が 開 催 さ れ 、 初 め て 各 国 の 年 別 漁 獲 実 績 が 取 り ま と め ら れ る と と も に 、 資 源 量 推 定 も 試 み ら れ た 。 が 、 こ の 試 算 結 果 は 不 確 実 性 が 大 き く 管 理 の 基 礎 と す べ き で な い と さ れ 、 資 源 評 価 の 精 度 向 上 に 向 け 、 各 国 が 取 り 組 む べ き デ ー タ 収 集 や 評 価 手 法 の 改 善 方 法 に つ い て 勧 告 が な さ れ た 。 【 コ ラ ム 1 : I S C と W C P F C と の 関 係 】 ○ I S C と W C P F C は 別 個 の 組 織 で あ る 。 I S C は 北 太 平 洋 に 分 布 の 主 体 が グ ロ 類 の 養 殖 に は 多 く の 日 本 の 企 業 が 関 係 し て い る 。 さ ら に 同 じ 太 平 洋 で も 、 中 西 部 太 平 洋 と 東 部 太 平 洋 で 異 な る 二 つ の 管 理 機 関 が 管 理 し て お り 、 両 機 関 の 間 の 調 整 が 容 易 で は な い 。 中 西 部 太 平 洋 の 管 理 で も 、 日 本 と 韓 国 と の 漁 獲 競 合 が あ る 。 ま た 、 米 国 の よ う に W C P F C 水 域 で は ク ロ マ グ ロ を 漁 獲 し て い な い も の の 環 境 団 体 の 圧 力 を 受 け 管 理 強 化 を 強 く 主 張 す る 国 が 存 在 す る 。 最 後 に 日 本 国 内 で も 、 前 述 の よ う な 全 国 の 多 数 の 漁 業 種 類 ・ 漁 業 者 が 漁 獲 し て お り 、 漁 業 種 類 や 漁 業 者 間 の 利 害 関 係 が 単 純 で は な い 。 付 け 加 え れ ば 、WC P F C で 多 数 派 の 島 嶼 国 ( 以 下 「 F FA 諸 国 」) は 案 件 に よ っ て は 日 本 と 利 害 が 対 立 す る が 、 日 本 の ク ロ マ グ ロ 管 理 を 攻 撃 し て お け ば 他 の 案 件 で 日 本 の 譲 歩 を 引 き 出 せ る と 認 識 し て い る 節 が あ り 、 こ の た め ク ロ マ グ ロ に 直 接 的 な 利 害 が な く て も 色 々 と 意 見 を 言 う 。 こ の よ う な 複 雑 な 関 係 の 全 体 像 を 把 握 し て 事 に 当 た っ て い か ね ば な ら な い の が ク ロ マ グ ロ 管 理 で あ る 。 本 書 で は こ の 複 雑 な 関 係 の 中 で ど の よ う に 日 本 が 一 歩 一 歩 管 理 を 進 め て い っ た か を 解 説 し て い き た い 。
1
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W
C
P
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C
条
約
加
盟
前
後
の
動
き
( ~ 二 〇 〇 六 ( 平 成 十 八 ) 年 ) 1 ― 1 . I S C に よ る 太 平 洋 ク ロ マ グ ロ の 国 際 的 な 資 源 評 価 の 始 ま り 北 太 平 洋 の マ グ ロ 類 の 資 源 評 価 を 行 う た め に 北 太 平 洋 ま ぐ ろ 類 国 際 科 学 委 員 会 ( International Scientific Committee for Tuna and Tuna-Like Species in the North * 1 : 資 源 管 理 の 観 点 か ら、 乱 獲 に は、 ① 未 成 魚 へ の 漁 獲 圧 が 高 す ぎ 親 魚 ま で 成 長 す る 量 が 減 少 す る「 成 長 乱 獲 」 と ② 成 熟 す る 前 に 強 い 漁 獲 が 働 き 次 世 代 の 資 源 が 確 保 さ れ な い「 加 入 乱 獲 」 の 二 種 類 が あ る。 I S C の 指 摘 は、 太 平洋クロマグロは 「成長乱獲」 が問題であることが当初より指摘されていたことを意味する (コラム 5 参照) 。以降、 水産庁による太平洋クロマグロの資源管理は「成長乱獲」をいかにして止めるかの取組となる。ク ロ マ グ ロ の 資 源 管 理 が 日 本 で も 大 き な 問 題 と し て 認 識 さ れ た き っ か け は 一 九 九 〇 年 代 後 半 よ り 本 格 化 し た W C P F C 条 約 設 立交渉 二 〇 〇 三( 平 成 十 五 ) 年 九 月 に ク ッ ク 諸 島 で 開 催 さ れ た 第 五 回 準 備 会 合 で、 手 続 き 規 則 案 が 合 意 さ れ、 ク ロ マ グ ロ 等 の 北 資 源 に 関 し、 本 会 議 に お い て 一 方 的 に 規 制 措 置 が か け ら れ る 懸 念 は ほぼ解消された る 条 約 は W C P F C が 初 め て で あ っ た 。 当 然 、 ク ロ マ グ ロ も W C P F C に よ る 国 際 的 な 管 理 の 対 象 と な り 、 た と え 資 源 状 況 が 悪 く な く て も 、 交 渉 の 駆 け 引 き の 結 果 、 島 嶼 国 の 多 数 決 で 一 方 的 に 日 本 沿 岸 の ク ロ マ グ ロ 漁 業 が 規 制 さ れ る の で な い か と の 懸 念 が 生 じ て き た 。 も し そ の 懸 念 が 現 実 の も の と な れ ば 、 国 内 の 沿 岸 漁 業 に 与 え る 影 響 は 計 り 知 れ な い 。 日 本 側 交 渉 団 は 北 緯 二 〇 度 以 北 の 水 域 の 管 理 は W C P F C の 中 に 別 途 の 小 委 員 会 ( い わ ゆ る 「 北 小 委 員 会 」) を 設 け 管 理 す る と い う 枠 組 み 作 成 ま で は こ ぎ つ け た も の の 、 こ の 懸 念 は 払 拭 し き れ ず 、 国 内 で は W C P F C 加 盟 反 対 の 動 き が 盛 り 上 が っ て い く 。 そ の よ う な 動 き も あ り 、 日 本 は W C P F C 条 約 設 立 準 備 会 合 を 欠 席 す る 等 波 乱 が 生 じ た が 、 二 〇 〇 三 ( 平 成 十 五 ) 年 九 月 に ク ッ ク 諸 島 で 開 催 さ れ た 第 五 回 準 備 会 合 で 、 ① 主 と し て 北 緯 二 〇 度 以 北 に 生 息 す る 魚 種 ( ク ロ マ グ ロ 、 ビ ン ナ ガ 及 び メ カ ジ キ : 通 称 「 北 資 源 」) の 保 存 管 理 措 置 は 、 北 小 委 員 会 が コ ン セ ン サ ス で 採 択 し た 勧 告 に 基 づ き 作 成 さ れ 、 ② 委 員 会 は 、 北 小 委 員 会 か ら の 勧 告 な し に 、 北 資 源 に 関 す る 決 定 を 行 わ な い 、 ③ 一 方 、 委 員 会 は ( 北 小 委 員 会 の 勧 告 が 適 切 で な い と み な し た 際 は ) 北 小 委 員 会 に 対 し 、 期 限 を 切 っ た 上 で 、 勧 告 案 の 作 り 直 し を 命 ず る こ と が で き る 、 と の 手 続 き 規 則 案 が 合 意 さ れ た 。 こ れ に よ り 、 ク ロ マ グ ロ 等 の 北 資 源 に 関 し 、 本 会 議 に お い て 一 方 的 に 規 制 措 置 が か け ら れ る 懸 念 は ほ ぼ 解 消 さ れ た 。 沿 岸 漁 業 者 の W C P F C 加 盟 へ の 警 戒 感 は 強 く 残 っ て い た が 、 二 〇 〇 四 ( 平 成 存 在 す る マ グ ロ 類 の 資 源 研 究 を 推 進 す る た め 、 一 九 九 二( 平 成 四 )年 に 日 米 間 で 交 換 さ れ た 日 米 漁 業 協 議 委 員 会 設 立 に 関 す る 口 上 書 か ら 発 展 し た も の で あ る 。 ○ W C P F C の 設 立 に 伴 い 、 条 約 水 域 内 の マ グ ロ 類 の 資 源 評 価 は W C P F C の 下 部 機 関 で あ る 科 学 小 委 員 会 が 実 施 し て い る が 、 北 太 平 洋 の ク ロ マ グ ロ 、 ビ ン ナ ガ 、 メ カ ジ キ ( 通 称 「 北 資 源 」) の 資 源 評 価 は WC P F C と I S C と の 間 で 結 ば れ た 覚 書 に 基 づ き 、 I S C が 実 施 し て い る 。 ○ な お 、 日 本 が 後 述 の W C P F C 条 約 設 立 準 備 会 合 に 不 参 加 の 間 も 、 I S C で の 議 論 は 行 わ れ て い た 。 1 ― 2 . 日 本 の W C P F C 加 盟 ( 二 〇 〇 五 ( 平 成 十 七 ) 年 ) ク ロ マ グ ロ の 資 源 管 理 が 日 本 で も 大 き な 問 題 と し て 認 識 さ れ た き っ か け は 一 九 九 〇 年 代 後 半 よ り 本 格 化 し た W C P F C 条 約 設 立 交 渉 で あ る 。 当 初 は 、 メ バ チ ・ キ ハ ダ ・ カ ツ オ と い っ た 熱 帯 水 域 で の マ グ ロ 類 の 保 存 管 理 を 対 象 と す る 前 提 で 交 渉 が 行 わ れ て お り 、 熱 帯 水 域 の 管 理 手 法 を 巡 り 、 豪 州 や N Z に 主 導 さ れ た 島 嶼 国 ( F FA 一 六 諸 国 ) と 日 本 や 米 国 を 中 心 と す る 漁 業 国 と の 間 で 激 し い 応 酬 が 行 わ れ て い た 。 交 渉 の 過 程 で 対 象 水 域 を 日 本 沿 岸 を 含 む 高 緯 度 海 域 ま で 拡 大 す る こ と と な っ た 。 日 本 は こ れ ま で 多 数 の 漁 業 管 理 条 約 に 参 加 し て い た が 、 い ず れ も 日 本 か ら 遠 く 離 れ た 遠 洋 漁 業 の 管 理 に 関 す る も の で あ り 、 日 本 の 周 辺 水 域 と 日 本 の 沿 岸 漁 業 も 対 象 と な り 得
日 本 は 、 資 源 が じ わ じ わ と 悪 化 し て い く 可 能 性 と 、 資 源 管 理 の た め の 新 た な 規 制 導 入 に 対 す る 国 内 的 な 警 戒 感 の 間 で ど う 対 処 し て い く か 難 し い 状 況 に 置 か れ ていた 二 〇 〇 五( 平 成 十 七 ) 年 七 月 に 日本は WCPFC に加盟 資 源 は 変 動 を 繰 り 返 し 、 六 〇 年 代 、 八 〇 年 代 、 九 〇 年 代 と 三 回 資 源 増 大 の ピ ー ク が 来 て 、 そ れ 以 降 資 源 は 減 少 傾 向 に あ る 」 と 、 現 在 の 資 源 評 価 に 近 い 資 源 動 向 を 推 定 し た 上 で 、 加 入 が 良 く 資 源 状 況 も 悪 く な っ て い な い 今 の う ち に 、 こ れ 以 上 漁 獲 圧 力 を 増 大 さ せ な い よ う に す べ き で あ る と し た 。 し か し な が ら 、 日 本 に と っ て は 、 W C P F C 条 約 加 盟 ま で の い き さ つ か ら 、 日 本 沿 岸 の ク ロ マ グ ロ の 漁 獲 規 制 は 国 内 的 に 受 け 入 れ ら れ る 状 況 で は な か っ た 。 一 方 で 国 際 的 に は W C P F C に 加 盟 し た 以 上 、 ク ロ マ グ ロ の 管 理 は W C P F C 及 び 加 盟 国 の 責 務 で あ り 、 日 本 は 、 資 源 が じ わ じ わ と 悪 化 し て い く 可 能 性 と 、 資 源 管 理 の た め の 新 た な 規 制導入に対する国内的な警戒感の間でどう対処していくか難しい状況に置かれていた。 1 ― 4 .W C P F C北 小 委 員 会 に よ る 資 源 管 理 の 始 ま り( W C P F C第 二 回 北 小 委 員 会 ) 二 〇 〇 六 ( 平 成 十 八 ) 年 九 月 一 一 ~ 一 三 日 に 開 催 さ れ た W C P F C 第 二 回 北 小 委 員 会 で 、 ① ク ロ マ グ ロ の 資 源 管 理 の た め に は デ ー タ 収 集 が 重 要 で あ る こ と が 強 調 さ れ 、 ② 北 小 委 員 会 は I S C に 対 し 、 二 〇 〇 七 ( 平 成 十 九 ) 年 に 暫 定 的 な 資 源 状 況 の 報 告 と 二 〇 〇 八 年 に 資 源 評 価 の 実 施 を 要 請 す る こ と 、 さ ら に 、 ③ 各 国 は 自 国 が ク ロ マ グ ロ に 対 し 行 っ て い る 措 置 を 次 回 の 第 三 回 北 委 員 会 で 報 告 す る こ と が 合 意 さ れ た 。 十 六 ) 年 四 月 六 日 の 自 民 党 水 産 部 会 ・ 水 産 総 合 調 査 会 合 同 会 合 に お い て 、 漁 業 団 体 か ら 出 さ れ た 「 国 際 的 な 反 漁 業 圧 力 に よ り 、 将 来 不 合 理 な 規 制 が 日 本 二 〇 〇 海 里 内 に か け ら れ る の で は な い か と い う 懸 念 が あ り 、 条 約 に 加 盟 す る 場 合 は 、 将 来 に わ た り 安 定 的 に 沿 岸 漁 業 の 操 業 を 継 続 で き る よ う 、二 〇 〇 海 里 内 に つ い て は 、我 が 国 が 責 任 を 持 っ て 管 理 す る も の で あ る こ と を 明 確 に し 、 国 が 責 任 を 持 っ て 対 処 す る よ う に 」 と の 要 望 に 水 産 庁 が 適 切 に 対 応 す る こ と を 条 件 に 、 W C P F C へ の 加 盟 の 方 向 性 が 了 承 さ れ 、 国 会 承 認 等 の 国 内 手 続 き を 経 て 、 二 〇 〇 五 ( 平 成 十 七 ) 年 七 月 に 日 本 は W C P F C に 加 盟 し た 。 1 ― 3 . 資 源 研 究 の 進 展 と 国 内 事 情 日 本 国 内 が W C P F C 加 盟 問 題 で も め て い る 間 に も I S C の 資 源 研 究 は 進 み 、 二 〇 〇 四 ( 平 成 十 六 ) 年 の I S C 第 四 回 年 次 会 合 で は 、 ① ク ロ マ グ ロ は 近 年 の 高 加 入 に も 拘 わ ら ず 親 魚 資 源 量 は 少 し ず つ 減 少 し て お り 、 現 状 の 漁 獲 を 続 け て い る と 資 源 は 更 に 減 少 す る 、 ② 特 に 〇 ~ 一 歳 魚 の 高 い 漁 獲 割 合 が 懸 念 さ れ 、 ③ こ れ 以 上 漁 獲 死 亡 を 増 大 さ せ る べ き で な い 、 と の 資 源 評 価 が 合 意 さ れ た 。 こ の 当 時 は 、 国 別 ・ 漁 業 種 類 別 の 体 長 別 漁 獲 デ ー タ 、 年 齢 と 体 長 の 関 係 を 示 す 成 長 式 、 さ ら に は 自 然 死 亡 係 数 と い っ た 資 源 評 価 の 基 本 と な る デ ー タ や パ ラ メ ー タ が ま だ 揃 っ て お ら ず 、 現 在 I S C で 行 わ れ て い る 統 合 モ デ ル に よ る 本 格 的 な 資 源 評 価 *2 : は 出 来 な か っ た 。 そ れ で も 「 ク ロ マ グ ロ * 2 :本格的な資源評価が初めて実施されるのは二〇〇八(平成二十)年