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墓地の外部性及び墓地規制のあり方について

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Academic year: 2021

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1 1. はじめに

急速な高齢化社会の到来により、墓地に対する 需要は高まっているが、墓地は NIMBY(Not In My Back Yard)施設であり、周辺に及ぼす外部性 を考慮した様々な立地規制が存在する。しかし、

一口に墓地と言っても、従来の寺院型墓地に加え て霊園・公園墓地や屋内墓地(ロッカー式納骨堂)

等、様々なタイプの墓地が存在している。墓地が 持つ外部性の度合いはタイプ別に応じて異なって いるであろうし、立地環境別に見てもその現れ方 に違いが出てくるであろう。それにもかかわらず、

墓地が禁忌施設であり、外部性を有しているとい う理由で多数の地方公共団体が霊園・公園墓地に 対して、従来の寺院型墓地と同様の外部性を想定 した立地規制を実施している。行政による墓地の 過剰な立地規制は、墓地の供給コストを増大させ、

墓地の設置を滞らせる。その結果、墓地の最適な 供給量が実現されず、都市部における墓地不足の 問題は解消されないまま現在に至っているのでは ないか。

2. 墓地及び墓地規制の概要 2.1 墓地の定義及び分類

墓地のタイプ別の分類について、法制度上は明 確に定義付けされてない。しかし、墓地に関する 研究においては便宜上、形態別や性質別に応じて 墓地施設が幾つかのタイプに区分けされているこ とが多い。本研究が想定する「寺院型墓地」、「公 営型墓地」、「事業型墓地」の定義を述べる。「寺院 型墓地」は、「宗教法人法第3条第2号に規定する 境内地内にあって、当該宗教法人が運営管理を行 う墓地であり、主として当該宗教法人の宗派に属 する檀家が使用することを想定するもの」、「事業 型墓地」は「経営主体の宗教法人が運営や管理等

を民間業者に委託し、立地は寺院境内以外の一定 の広さを有する土地に立地し、宗教・宗派を問わ ず不特定多数の人が使用することを想定するも の」、「公営型墓地」は「「運営や管理の主体が地方 公共団体であり、宗教・宗派を問わないが、運営 する地方公共団体の地域の住民が使用することを 想定するもの」である。

2.2 墓地規制の沿革及び現状

墓埋法においては、墓地等の設置条件や構造に 係る基準は特に定められていないが、当時の厚生 省は「墓地の設置場所は、地域の実情に応じて学 校、病院その他の公共施設、住宅、河川等との距 離が一定以上あること等、良好な環境を保ち、利 用者が気持ち良く利用できるよう一定の水準を満 たしている必要がある。」との技術的助言を行った。

各地方公共団体は、厚生省の技術的助言を参考に して、地域の実情等に応じた距離規制を条例によ り独自に定めている。関東圏内の各地方公共団体 が実施してきた距離規定については、100 メート ルが東京都内、埼玉県内、千葉県内、栃木県内、

茨城県内、110 メートルが神奈川県内、120 メー トルが群馬県内となっている。

3. 理論分析 3.1 墓地の外部性

墓地の外部性については、表1の通りである。

1 墓地の外部性

実際には、これらの負の外部性と正の外部性に よるネットの効果が、墓地の周辺環境に影響を及 ぼしているものと考えられる。

3.2 墓地規制が市場に与える影響

下の図は、墓地の立地規制が市場に与える影響

負の外部性 正の外部性

・「穢れ」のイメージ、寒々とした印象 ・公園墓地内の「憩いの場」

・線香の臭い ・日当たりの確保

・墓参りの人達による周辺道路の混雑 ・近隣住民にとっての避難所の役割

・死角化した墓地内における治安の悪化

墓地の外部性及び墓地規制のあり方について

政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU15608 高久 雅和

(2)

2 を図示したものである。

図 墓地規制が市場に与える影響

過剰な規制によってSは上方にシフトする。均

衡価格PはP’に上昇し、最適供給量QはQ’に減

少する。

3.3 仮説 仮説1

墓地の外部性が周辺に与える影響は、墓地のタ イプ別(寺院型墓地、公営型墓地、事業型墓地、

屋内墓地・納骨堂)によって異なる。具体的には、

公営型墓地、事業型墓地、屋内墓地・納骨堂と比 べて、寺院型墓地は負の外部性が強いのではない か。

仮説2

墓地の外部性が周辺に与える影響は、土地の利 用現況別(住宅地系、商業地系)によって異なる。

具体的には、商業地系よりも住宅地系において、

負の外部性が強く出ているのではないか。

仮説3

墓地の外部性が周辺に与える影響は、駅からの 距離に応じて異なる。具体的には、駅から比較的 近い区域よりも遠い区域において、負の外部性が 強く出ているのではないか。

仮説4

墓地の外部性が周辺に与える影響は、用途地域 別によって異なる。具体的には、第一種・二種低 層住居専用地域において、負の外部性が強く出て いるのではないか。

仮説5

墓地の外部性が周辺に与える影響は、都内の地 区別(区部、多摩地区)によって異なる。具体的 には、区部よりも多摩地区において、負の外部性 が強く出ているのではないか。

4. 実証分析 4.1 分析の方法

本研究では、地域における様々な価値が地価に 反映されるという資本化仮説1に基づき、ヘドニッ ク・アプローチを用いて、墓地の外部性が周辺環 境に及ぼす影響を分析する。

分析1において、仮説1と仮説2を検証する。

都内の公示地価ポイント及び都道府県地価調査ポ イント(島嶼部を除く)を基準地別に住宅地系と 商業地系に分けて、最小二乗法により推計を行う。

分析2において、仮説3を検証する。都内の公 示地価ポイント及び都道府県地価調査ポイント

(島嶼部を除く)のうち住宅地系を抽出し、最寄 り駅の「0~500m 圏内」、「500~1000m 圏内」、

「1000m圏外」の3パターンに分けて、最小二乗 法により推計を行う。

分析3において、仮説4を検証する。都内の公 示地価ポイント及び都道府県地価調査ポイント

(島嶼部を除く)のうち住宅地系を抽出し、第一 種低層住居専用地域、第一種・二種低層住居専用 地域、第一種・二種低層住居専用地域外の3パタ ーンに分けて、最小二乗法により推計を行う。

分析4において、仮説5を検証する。都内の公 示地価ポイント及び都道府県地価調査ポイント

(島嶼部を除く)のうち住宅地系を抽出し、都心 5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)、 その他18区、区部全体の23区、多摩地区の4パ ターンに分けて、最小二乗法により推計を行う。

4.2 推計結果と考察

寺院型墓地と比べて公営型墓地や事業型墓地は サンプル数が非常に少なく、仮に負の外部性が観 察されなかった場合でも、実際に負の外部性が無 いことにより有意水準にならなかったのか、サン

1 金本良嗣(1997)

(3)

3 プルが少ないために有意水準にならなかったのか について明らかでないことが課題である。よって、

寺院型墓地と公営型墓地と事業型墓地を併せて

「墓地」と捉え、タイプ別ではなく墓地一般のダ ミーを推計式に入れることにする。

4.2.1 分析1 推計式

P=β01X12X23X3+・・・+β23X23

24X2425X25

2 推計式の説明変数

3 分析1の推計結果

住宅地系では墓地が地価ポイントから「0~50m 圏内」に位置する場合、有意水準 5%で地価が約 17%下がることが観察された。これにより、住宅 地系の墓地から50メートル圏内においては、負の 外部性が働いている可能性が高いと考えられる。

商業地系ではいずれの圏内においても、有意水準 によるプラスの結果もしくはマイナスの結果は示 されなかった。

4.2.2 分析2

4 分析2の推計結果

駅から「0~500m圏内」においては、地価ポイ ントからいずれの圏内においても、有意水準によ るプラスの結果もしくはマイナスの結果は観察さ れなかった。駅から「1000m 圏外」においては、

地価ポイントから「0~50m圏内」で有意水準1%

のマイナスとなり、地価が約47%下がる傾向があ

ることが確認された。

以上の結果から、駅から至近距離にある圏内よ りも遠ざかるほどに墓地の負の外部性が強く働く と考察することができる。また、駅から至近距離 圏内には、墓地が近くに位置していても気になら ないという属性を持つ人々が多く住む傾向がある ものと考えられる。

4.2.3 分析3

5 分析3の推計結果

第一種低層住居専用地域においては、地価ポイ ントから「0~50m圏内」で有意水準1%のマイナ スとなり、地価が約 39%下がることが示された。

第一種・二種低層住居専用地域においても、ほぼ 同様の結果であった。第一種・二種低層住居専用 地域外の用途地域においては、地価ポイントから

「0~50m 圏内」、「50~100m 圏内」で有意水準 のプラスもマイナスも示されなかった一方、地価 ポイントから「100~150m圏内」、「150m~200m 圏内」で有意水準10%のプラスが示された。

以上の結果から、建築可能な建物の用途規制が 比較的緩やかである第一種・二種中高層住居専用 地域、第一種・二種・準住居地域よりも、用途が 限定される第一種・二種低層住居専用地域におい て、負の外部性が強く働くと考察される。第一種・

二種低層住居専用地域外の用途地域では、分析2 と同様、有意水準の負の外部性が存在していない ため、墓地が近くに位置していても気にならない という属性を持つ人々が多く住む傾向があると考 えられる。

4.2.4 分析4

6 分析4の推計結果(都心5区とその他18区)

変数名 内容 単位

被説明変数 ln地価(都内の公示地価及び都道府県地価調査価格) X1~X21 コントロール変数

X22 墓地 0~50m圏内ダミー(有が1、無が0)

X23 墓地 50~100m圏内ダミー(有が1、無が0)

X24 墓地 100~150m圏内ダミー(有が1、無が0)

X25 墓地 150~200m圏内ダミー(有が1、無が0)

ε 誤差項

被説明変数

説明変数 係数 標準誤差 係数 標準誤差

墓地 0~50m圏内ダミー -0.166 ** 0.072 -0.032 0.104

墓地 50~100m圏内ダミー -0.037 0.030 -0.068 0.064

墓地 100~150m圏内ダミー 0.029 0.025 -0.066 0.057

墓地 150~200m圏内ダミー 0.021 0.025 -0.084 0.054

定数項 12.363 *** 0.099 13.145 *** 0.480

観測数 2016 1135

決定係数 0.865 0.793

(注)***,**,*はそれぞれ1%、5%、10%の水準で統計的に有意であることを示す。

ln地価(住宅地系) ln地価(商業地系)

被説明変数

説明変数 係数 標準誤差 係数 標準誤差 係数 標準誤差

墓地 0~50m圏内ダミー -0.104 0.110 0.031 0.172 -0.475 *** 0.117

墓地 50~100m圏内ダミー -0.026 0.070 -0.025 0.043 -0.034 0.045

墓地 100~150m圏内ダミー 0.024 0.048 0.076 ** 0.038 -0.023 0.041

墓地 150~200m圏内ダミー -0.042 0.049 0.133 *** 0.043 -0.031 0.038

定数項 12.575 *** 0.435 12.632 *** 0.222 12.433 *** 0.121

観測数 505 751 760

決定係数 0.798 0.82 0.870

(注)***,**,*はそれぞれ1%、5%、10%の水準で統計的に有意であることを示す。

ln地価(駅から0~500m圏内) ln地価(駅から500~1000m圏内) ln地価(駅から1000m圏外)

被説明変数

説明変数 係数 標準誤差 係数 標準誤差 係数 標準誤差

墓地 0~50m圏内ダミー -0.393 *** 0.136 -0.394 *** 0.136 -0.044 0.089

墓地 50~100m圏内ダミー -0.039 0.043 -0.038 0.043 -0.051 0.042

墓地 100~150m圏内ダミー -0.015 0.034 -0.015 0.034 0.059 * 0.036

墓地 150~200m圏内ダミー -0.006 0.034 -0.015 0.033 0.065 * 0.039

定数項 12.060 *** 0.135 12.076 *** 0.135 12.574 *** 0.149

観測数 1119 1135 881

決定係数 0.87 0.88 0.849

(注)***,**,*はそれぞれ1%、5%、10%の水準で統計的に有意であることを示す。

ln地価(第一種低層住居専用地域)ln地価(第一種・二種低層住居専用地域) ln地価(低層住居専用地域外)

被説明変数

説明変数 係数 標準誤差 係数 標準誤差

墓地 0~50m圏内ダミー -0.010 0.396 0.016 0.071

墓地 50~100m圏内ダミー 0.149 0.268 0.039 0.030

墓地 100~150m圏内ダミー 0.239 * 0.128 0.031 0.027

墓地 150~200m圏内ダミー -0.034 0.135 0.024 0.029

定数項 13.452 *** 0.665 13.404 *** 0.186

観測数 105 832

決定係数 0.423 0.690

(注)***,**,*はそれぞれ1%、5%、10%の水準で統計的に有意であることを示す。

ln地価(都心5区) ln地価(その他18区)

(4)

4

7 分析4の推計結果(区部全体と多摩地区)

都心5区においては、「50~100m圏内」と「150

~200m 圏内」では有意水準のプラスもマイナス も観察されなかったが、「100~150m 圏内」で有

意水準10%のプラスが示された。その他18区に

おいては、いずれの圏内においても、有意水準に よるプラスの結果もしくはマイナスの結果は示さ れなかった。区部全体においては、「0~50m圏内」、

「50~100m圏内」、「150~200m圏内」で有意水 準のプラスもマイナスも観察されなかったが、

「100~150m圏内」で有意水準5%のプラスが示 された。多摩地区においては、「0~50m圏内」で

有意水準1%のマイナスとなり、地価が約40%下

がることが示された。

以上の結果から、多摩地区における墓地の 50 メートル圏内では、負の外部性が強く働いている ことが確認された。分析2や分析3と同様、区部 においては有意水準の負の外部性が存在していな いため、墓地が近くに位置していても気にならな いという属性を持つ人々が多く住む傾向があると 考えられる。

5. まとめ 5.1 政策提言

墓地の外部性についての立地環境別の分析では、

いずれのパターンにおいても有意水準の負の外部 性が観察されたのは地価ポイントから 50 メート ル圏内のみであった。また、商業地系よりも住宅 地系、住宅地系の中で駅から至近距離にある区域 よりも遠い区域、中高層住居専用地域や住居地域 よりも低層住居専用地域、区部よりも多摩地区の 住宅地系において、有意水準の墓地の負の外部性 が観察された。住宅地系の中で駅から至近距離に ある区域、第一種・二種中高層住居専用地域や第 一種・二種・準住居地域、区部の住宅地系におい

ては、墓地が近くに位置していても気にならない という属性を持つ人々が多く住む傾向があること を確認した。以上の分析結果と考察を踏まえて、

次の通り政策提言を行う。

まず、大多数の地方公共団体が現行の条例によ って、「住宅等から墓地までの距離は、おおむね 100メートル以上であること。」という距離規制を 設けているが、「おおむね100メートル以上」につ いては、「50 メートル以上」に緩和するべきであ る。また、墓地の距離規制を行う場合、対象とな る墓地と最寄り駅からの距離、対象の墓地が第一 種・二種低層住居専用地域内に位置しているかど うか、対象の墓地が郊外に位置しているかどうか についても考慮に入れるべきである。

5.2 今後の課題

墓地の外部性について、タイプ別に検証するこ とを試みたが、公営型墓地と事業型墓地について、

信頼性のある分析結果を得られるほどの十分なサ ンプル数を確保することができなかった。また、

様々な立地環境別に分析することにより、どのよ うな状況の時にどの程度の外部性が働いているの か、パターン別の詳細な傾向を把握することを目 指したが、パターンによっては十分なサンプル数 の確保に至らなかったものもあった。さらに、実 証分析において、いかに墓地の外部性以外の考え られ得る要素をコントロールして、墓地の外部性 を測るうえでの、より精度の高い推計式を作るか が今後の課題である。

加えて、土地の有効利用の観点からは、墓地の 距離規制条項を撤廃することが望ましいと考える こともできるが、今回の分析では、少なくとも住 宅地系の墓地から50メートル圏内においては、有 意水準のマイナスが観察されたため、距離規制の 緩和に止めている。分析対象を東京都以外の県内 の墓地にまで広げた場合、東京都以外の墓地の外 部性についての傾向が明らかになり、より汎用性 のある政策提言につなげることができた可能性が あるので、今後の課題としたい。

被説明変数

説明変数 係数 標準誤差 係数 標準誤差

墓地 0~50m圏内ダミー -0.075 0.092 -0.402 *** 0.110

墓地 50~100m圏内ダミー -0.035 0.040 -0.031 0.040

墓地 100~150m圏内ダミー 0.077 ** 0.034 -0.051 0.032

墓地 150~200m圏内ダミー 0.049 0.037 -0.030 0.031

定数項 13.269 *** 0.251 12.504 *** 0.102

観測数 937 1079

決定係数 0.659 0.852

(注)***,**,*はそれぞれ1%、5%、10%の水準で統計的に有意であることを示す。

ln地価(区部全体) ln地価(多摩地区)

参照

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