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経済研究所 / Institute of Developing

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Academic year: 2022

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(1)

国家の下位アクターに注目し、国際関係論を再検討 する : ポスト「イスラム国」時代のクルド人の活

著者 今井 宏平

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization (IDE‑JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名 IDEニュース

巻 3

ページ 4‑5

発行年 2019‑03

出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL http://doi.org/10.20561/00050739

(2)

研 究究究 紹紹紹 介介介 ――― プププ ロロロ ジジジ ェェェ ク ト ・ リ ー ダ ー に 聞 く ―

研究紹介

――

プロジェクト・リーダーに聞く

――IDE News

4 IDE ニュース No.3(2019.3)

――まず、どうして「クルド人」についての 研究プロジェクトを立てようと思ったのか、

うかがいたいと思います。

 日本の中東研究は、中東のそれぞれの国レ ベルでみると世界的にもかなり盛んだと思う のですが、クルド人は「国がない」というこ ともあって、日本ではそれほど研究が進んで いませんでした。そうした問題意識から4年 前に「クルド研究会」は始まりました。これ まで、研究の蓄積があまりなかったところに、

特に現状分析に比重を置いて、みんなでいろ いろ話し合ってきました。

――今年度から始まった「ポスト『イスラム 国』時代のクルド人の活動」研究会は、クル ド人についての研究プロジェクトという意味 では 4 年目に当たりますね。今年新たにこ のプロジェクトを立ち上げた理由や、最初の

3 年間のクルド研究会との違いは何で しょうか。

 去年、クルド人を巡る問題では、北 イラクで住民投票があったり、「イス ラム国」との戦いの中で北シリアのク ルド人がかなりの領地を占領したりし て、国際政治に非常に大きなインパク トを与えました。そうしたクルド人の 活動を、少し時間がたってから、しっ かり分析する必要があるのではないか と思って、今年のプロジェクトを立ち 上げました。

●既存の国際関係論への挑戦

――最初の 3 年間が「現状」を分析するこ とだったのに対し、今年度からは「過去の事 象」の意味を分析する、ということですね。

分析を始めてみて手ごたえはいかがですか。

 自分の専門である国際関係論は、基本的に 国家が分析の主要な単位になっています。な ので、「国をもたない民族」といわれるクル ド人をどう分析したらよいかというのは、非 常に難しいのです。

 ただ、最近の中東やアフリカの現状を見て いると、国単位で分析することがあまり効果 的ではないところもあると思います。特にシ リアや、イラク、イエメンなど、大きい戦争 を経験していたり、現在していたりするよう な国は、国単位で考えても、なかなか現状が

国家の下位アクターに注目し、国際関係論を再検討する

――ポスト「イスラム国」時代のクルド人の活動――

今井宏平

(地域研究センター)

聞き手:

能勢美紀

(図書館)     

トルコの外交を中心に中東の国際関係を研究している今井宏平氏

(3)

研究紹介

――

プロジェクト・リーダーに聞く

――IDE News

5 IDE ニュース No.3(2019.3)

見えてきません。

 もっと小さな、国家より下位のアクターと いうことで考えると、クルド人の組織はかな りまとまりが強くて、中東の、特にシリアと かイラクにおいて非常に重要な役割を果たし ていると思います。そういう点で、クルド人 の組織は分析していて難しいのですが、面白 いと感じます。主権国家中心の現在の国際関 係論の限界を示す、あるいは修正する、いい 事例分析になっているのではないかと思いま す。

――国家よりももう一つ下位のアクターとし てクルド人の組織はかなりまとまりが強い、

ということですが、個人的には、クルド人は 非常に多様だと感じます。そのような中でど のように分析していくのでしょうか。

 今、おっしゃったように、クルド人は非常 に多様なので、世俗的なクルド人もいれば、

すごく保守的で、イスラムを大切にしている クルド人もいます。「クルド人」というまと まりはイランに住んでいても、シリアに住ん でいても、トルコに住んでいても、イラクに 住んでいても、大切にしますが、一方で、イ ランの、トルコの、シリアの、イラクのクル ド人っていう意識も強いので、現実的に考え て、クルド人で国家を横断してまとまるとい うのは難しいのではないか、とは思います。

 また、各国のクルド人たちの求めているも のもかなり違っていると考えるようになって きました。例えば、北イラクのクルド人は明 確に国家を目指しています。一方で、シリア のクルド人のように、地方自治とか、コミュ ニティごとの自治を重視している人たちもい ます。

 各地域のクルド人が目指す、独立とか、統 治を維持するやり方というのが結構違ってい て、その辺はやはり中東を見るうえでも重要 だと思います。例えば、未承認国家とか非承

認国家という議論だと国家を目指しているの が前提になってしまいますが、そうではない 下位アクターもあるという事例になります。

こうしたクルド人組織の多様な統治形態の模 索は分析に値するのではないか、と考えてい ます。

●クルド人組織の理論的分析を

――既存の国際関係論への挑戦、ということ で研究にあたって、まず取り組みたいことは 何でしょうか。

 挑戦したいことはいくつかありますが、ま ず、クルド人の中でもPKK(クルディスタ ン労働者党)とトルコ政府との対立をもう少 し理論的な部分から分析したいと思っていま す。何でこんなに長く抗争が続いているのか、

何でこんなに解決しないのか、というのを時 系列的に追うだけでなく、それを、例えば国 際関係の紛争や内戦の研究の視点から、理論 的な部分にフォーカスしていきたいと思って います。これを問いとして明らかにしていく 方が、親国家であるトルコ、シリア、イラン、

そしてイラクとの関係も含めて分析しやすい のではないのかと思います。クルド問題に関 しては、これまでそういう試みが日本ではあ まりなされてこなかったと思うので、まず取 り組んでみたいですね。

研究プロジェクトHP

研究会メンバーも多く執筆した『クルド人を知るための 55章』(明石書店)を手に

参照

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