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人間科学研究 Vol. 28, Supplement(2015)
修士論文要旨
【問題と目的】
ネットいじめの課題解決として,思春期にあたる中高生 の子どもを対象にネットいじめの被害に遭った時の対処に ついて検討することが考えられる。
本間(2006)は現実場面のいじめに対する有効な対処法 を検討し,能動的対処と回避的対処,間接的な対処を明ら かにした。
一方で,ネットいじめは匿名性が高く対処が困難になっ ている(安藤,2009)。また,桂川ら(2010)は実際にネッ トいじめを体験した子どもたちがその体験をどのように捉 え,どういった対処を行っているのか,という点について は十分な検討がなされていないと指摘している。
そこで本研究では,思春期・青年期に焦点を置いてネッ トいじめの対処プロセスの質的検討を行う。
【方法】
研究Ⅰ
調査対象 関東圏の大学に通う大学生265名。(男性139名,
女性126名,平均年齢20.83歳)。
調査方法 研究実施者が作成した自由記述回答式の質問紙 を配布し,研究実施者の依頼に応じて回答した。
分析方法 記述統計量の算出及びKJ法(川喜田,1967)を援 用したカテゴリー分類と集約を行った。
研究Ⅱ
調査対象 ネットいじめ被害経験のある関東圏の大学に通 う大学生4名(男性2名,女性2名,平均21.0歳)。
調査方法 個別の半構造化面接方式によるインタビューを 各1回実施した。インタビューでは主にネットいじめの内 容(ネットいじめの開始~終結に至るまで),対処レパート リーを聴取した。
分析方法 質的データ分析法(佐藤,2008)を援用し事例・
コードマトリックスの機能を有したコード・カテゴリー
(ネットいじめ状況マトリックスコード・カテゴリーとネッ トいじめ認知マトリックスコード・カテゴリー)を作成した。
【結果と考察】
研究Ⅰ
対処のカテゴリー分類 認知的対処,行動的対処,直接的 対処,間接的対処という4つのカテゴリーに分類される。こ の結果から,主に認知面と行動面(行動的対処・直接的対
処・間接的対処)において対処の質が異なることが考えら れる。
研究Ⅱ
状況面における共通性や差異 1点目はネットを介した対 処において他者を通して行われた対処が行われなかったこ とから,本人のネット環境を通して他者からのサポートを 実行することが難しいことが示唆される。2点目はネット を介さない対処における他者を通して行われた対処として 先生など学校を通して間接的対処が行われた。しかし,そ の対処の内容に焦点を当てると親から学校へ介入・先生が 介入するなど学校を利用した対処法が各々異なるという点 で差異が見られる。
認知面における共通性や差異 1点目は全事例を通して怒 りの感情を抱いているが怒り以外の感情も抱くケースがあ ることから1つの物事における被害者への心理的影響は大 きいことが示唆される。2点目は全事例とも現在のつらさ の程度が0であったことから,時間による現象の風化も含 めネットいじめに対処した経験によってインタビューが可 能である程度の心理的安定をもたらしていることが考えら れる。3点目はネットいじめが経過した後の学校生活への 影響において全事例とも学校に登校し適応的な生活を送っ ていることが考えられるが,事例によっては学校内の様々 な背景からネガティブな感情を抱くという点で差異が見ら れる。
【総合考察】
対処のプロセスの特徴として,1点目は自分が行った対 処を行った後他者のサポートを通して行われたという点が 挙げられる。このことから,自発的に対処を経験したこと によって,改めて適切な対処法として他者のサポートに委 ねて,被害者自身がそのサポートを味方につけるという安 心感から被害者の後押しとなることが考えられる。2点目 は徐々にネットから回避するという点が挙げられる。段階 的な対処を行うことで周囲と適切な距離を保持し,その結 果ネットいじめをエスカレートさせないための効果をもた らしていることが示唆される。
全体の対処プロセスを通して,被害者とサポート源との 関係性やネット利用における被害者の技量によって,ネッ トいじめの解決の度合い差が生まれることが示唆される。