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河床勾配の影響が考慮された平衡流砂量式に

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(1)水工学論文集,第53巻,2009年2月 水工学論文集,第53巻,2009年2月. 河床勾配の影響が考慮された平衡流砂量式に よるdune河床の再現計算 SIMULATIONS OF BED DEFORMATION BY THE USING EQURIBRIUM SEDIMENT TRANSPORT FOMULA INCORPORATED WITH SLOPE EFFECT. 山口里実1・清水康行2・木村一郎3 Satomi YAMAGUCHI, Yasuyuki SHIMIZU and Ichiro KIMURA 1正会員 工博 学振特別研究員 北海道大学大学院 工学研究科(〒060-8628 札幌市北区北13条西8丁目) 2正会員 工博 教授 北海道大学大学院 工学研究科 (同上) 3正会員 工博 准教授 北海道大学大学院 工学研究科. (同上). It has been known that the effect of bed slope on the sediment transport is important to bed deformation of dune as well as the effect of nonequilibrium on sediment transport process. In order to clarify both effects of bed slope and nonequilibrium, we performed the numerical simulations of bed evolution in the case of using equilibrium bed load transport formula incorporated with bed slope effect and in the case of using nonequilibrium bedload transport formula. It was found that the effect of bed slope and the effect of nonequilibrium are similarity on the wavelength of bed form evolution, however, the features of bed form evolution at the equilibrium stage are quite different between in the case of using bed load formula incorporating with slope effect and in the case of using nonequilibrium bedload formula. Key Words : dunes, sediment transport, effect of bed slope, effect of non-equilibrium, numerical simulation. and Shimizu8)は,流砂量式に中川・辻本3)の用いた確率モ デルを適用することによってdune河床を再現した.さら にGiriら9)は非定常流量下での計算を行い,確率モデルに 河床に見られるduneは,流れと流砂の相互作用によっ おける砂粒のstep lengthを無次元掃流力の関数で表すこ て発生することが知られている.従来,その形成機構に とでdune―平坦床の遷移過程を再現した.確率モデルに 関する多くの研究が行われてきた.特に,古くより盛ん よるこれらの再現計算では,砂粒のstep lengthによる流 1),2) ,3),4) ,5) ,6) に行われた線形安定解析 の成果によって,dune 砂の非平衡性に起因したdune形成過程が合理的に再現さ の発生機構が理論的に明らかにされてきた.中でも,流 れている.また,別の観点から関根10)は土粒子のsaltation 砂の河床勾配の影響に着目した研究は数多く,例えば モデルによってdune形成過程の再現を試みるとともに, 2) 4) Fredsøe や山口・泉 は,いわゆる平衡流砂量式に河床勾 砂粒のstep lengthについても議論している. 配が考慮された式を用いて卓越波長に対する河床勾配の しかしながら,これらのモデルには河床勾配の影響が 影響の重要性を明らかにしている.これに対して,中 考慮されていないため,これらの再現計算では前述のよ 川・辻本3)は流砂の遅れによる非平衡性に着目している. うな流砂の河床勾配の影響が検討されていない.また, 彼らは確率モデルで表される非平衡流砂量式を用い,流 確率モデルにおける粒子のstep lengthは,関根10)による研 砂の非平衡性がduneの発生に重要であることを明らかに 究の他にもいくつかの研究によって明らかにされつつあ 6) している.また,山口・泉 は河床勾配の影響が考慮さ る3),11),12)ものの未だ不確定な部分の多いパラメータであ れた流砂量式および確率モデルをそれぞれ用いて比較し, る.そのため,上述の再現計算ではdune形成に対する流 卓越波長に対する河床勾配の影響と非平衡性の影響が類 砂の非平衡性の影響が詳細には検討されていない. 似していることを示唆している. 本研究では,dune形成に対する流砂の河床勾配の影響 理論的研究と並行して,近年,数値解析によるduneの を明らかにするために,河床勾配の影響が考慮された平 再現計算が行われるようになった.音田・細田7)やGiri 衡流砂量式を用いたduneの再現計算を行う.また,確率. 1.はじめに. - 715 -.

(2) 表-1 Guyら17)による実験データ(1ケースを抜粋) 実験 No. Run35. 実験条件 平均粒径 (mm) 0.93. 実験結果. 平均勾配. 流量 (m2/s). 0.0013. 0.089. 河床形状. 波長 (cm). 波高 (cm). 水深 (cm). Fr. 有効 掃流力. Dune. 88.4. 1.8. 16.2. 0.44. 0.085. モデルによる非平衡流砂量式を用いた再現計算と比較す ることによって,duneの形成過程や平衡形状に対する河 床勾配の影響および非平衡性の影響について検討する.. 表-2 計算条件. 2.鉛直二次元移動床モデル (1) 支配方程式 本研究では,Giri and Shimizu8)やGiriら9)の構築した鉛 直二次元流れにおける移動床モデルを適用する.流れの 支配方程式は次の連続式および運動方程式で表される. ∂𝑢 ∂𝑣 + =0 (1) ∂𝑥 ∂𝑦 ∂𝑢 ∂𝑢 ∂𝑢 +𝑢 +𝑣 ∂𝑡 ∂𝑥 ∂𝑦 (2) 1 ∂𝑝 ∂ −𝑢′ 𝑢′ ∂ −𝑢′ 𝑣 ′ =− + + 𝜌 ∂𝑥 ∂𝑥 ∂𝑦 ∂𝑣 ∂𝑣 ∂𝑣 +𝑢 +𝑣 ∂𝑡 ∂𝑥 ∂𝑦 (3) 1 ∂𝑝 ∂ −𝑢′ 𝑣 ′ ∂ −𝑣 ′ 𝑣 ′ =− + + −𝑔 𝜌 ∂𝑦 ∂𝑥 ∂𝑦 ここで,𝑥および𝑦はそれぞれ鉛直および水平方向の座 標,𝑢および𝑣はそれぞれ鉛直および水平方向の流速,𝑝 は圧力である.また,−𝑢′ 𝑢′ ,−𝑢′ 𝑣 ′ および−𝑣 ′ 𝑣 ′ はレ イノルズテンソルである.上式は水面と底面の境界面に 応じた境界適合座標系に座標変換される.水面では運動 学的条件によって水面変動を計算している.底面ではno slip条件となっている.無次元掃流力の算定には次式の 対数則を適用している. 𝑢𝑝 1 𝑦𝑝 = ln (4) 𝑢∗ 𝜅 𝑦0 ここで,𝑢𝑝 および𝑦𝑝 はそれぞれ底面付近の格子点にお ける流速および河床からの距離,𝑢∗ は底面摩擦速度,𝜅 はカルマン定数であり,𝑦0 = 𝑘𝑠 30 である.ここで𝑘𝑠 は粗度高さであり,粒径の2.5倍の値を用いる.無次元 掃流力𝜏∗ は次式で表される. 𝜏∗ = 𝑢∗ 𝑢∗ 𝑅𝑠 𝑔𝑑 (5) ここで𝑅𝑠 は砂の水中比重,𝑑は砂粒の粒径である.乱流 モデルは木村・細田13)による非線形k-モデルを適用する. Giriら9)は,確率過程モデルによる非平衡流砂量式を用 いている.確率モデルによる河床変動は次式で表される. 𝜕𝑦𝑏 1 𝐴3 = 𝑝 − 𝑝𝑠 𝑑 (6) 𝜕𝑡 1 − 𝜆 𝐴2 𝑑 ここで,𝑦𝑏 は河床高さ,𝜆は砂の空隙率,𝐴2 および𝐴3 は. 計算No.. 流砂量式. 計算条件. Case-a -b -c. 芦田・道上 Kovacs & Parker 〃. 𝜇𝐶 = 0.84 (𝜙 = 40°) 𝜇𝐶 = 0.84 (𝜙 = 40°) 𝜇𝐶 = 0.58 (𝜙 = 30°). 確率モデル 〃 〃. 𝛬 = 5𝑑 𝛬 = 30𝑑 𝛬 = 40𝑑. -d -e -f. それぞれ砂粒の二次元および三次元の形状係数(π 4お よびπ 6), 𝑝𝑠 および𝑝𝑑 はそれぞれ砂のpick-up rateおよ びdeposit rateであり,それぞれ次式で表される. 𝑝𝑠 𝑑 𝑔𝑅𝑠 = 0.03𝜏∗ 1 − 0.035 𝜏∗. 3. (7). 𝑥. 𝑝𝑑 =. 𝑝𝑠 𝑥 − 𝑠 𝑓𝑠 𝑠 d𝑠. 0. (8). ここで,𝑓𝑠 は次のようなstep lengthの確率密度関数である. 1 𝑠 𝑓𝑠 𝑠 = exp − (9) Λ Λ ここで, Λ は砂粒の平均step lengthである.Giriら9)は掃 流砂に加えて浮遊砂による河床変動量を加味しているが, ここでは掃流砂による変動のみを検討する. (2) 河床勾配の影響を考慮した平衡流砂量式 本研究では,流砂量式に河床勾配の影響が考慮された 平衡流砂量式を適用し,duneの再現計算を試みる. Kovacs & Parker14)は芦田・道上15)の平衡流砂量式に対し て物理的に河床勾配の影響を組み込んだ流砂量式を導い ている.本研究では,次式で表される芦田・道上式およ び Kovacs & Parker式を適用する. 芦田・道上式; 𝑎 1 2 𝑞𝐵∗ = 𝜏 − 𝜏∗𝑐 𝜏∗1 2 − 𝜏∗𝑐 (10) 𝜇𝐶 ∗ Kovacs & Parker 式; 𝑞𝐵∗ =. 𝜇𝐶. 𝑎 𝜕𝑦 1 + 𝑏 𝜇𝐶 𝜕𝑥 1 2. × 𝜏∗. 𝜏∗ − 𝜏∗𝑐 1 +. 1 2. − 𝜏∗𝑐. 𝜕𝑦𝑏 𝜇 𝜕𝑥 𝐶. 𝜕𝑦𝑏 1+ 𝜇 𝜕𝑥 𝐶. 1 2. (11). ここで,𝑞𝐵∗ = 𝑞𝐵 𝑅𝑠 𝑔𝑑 3 1 2 であり,𝑞𝐵 は流砂量であ る.また,𝜏∗𝑐 は粒子の無次元限界掃流力であり,ここ では岩垣の式16)により求めている.両式中の係数𝑎は, 河床近傍の流速とせん断力の関係を表す係数であり,本. - 716 -.

(3) 図-1(a) 芦田・道上式による再現結果. 図-1(b) Kovacs and Parker式による再現結果. (Case-a, 𝜇𝐶 = 0.84 (𝜙 = 40°)).. (Case-b, 𝜇𝐶 = 0.84 (𝜙 = 40°)).. 研究では式(4)に対応して次式で表される. 𝑎=. 𝑢𝑝 𝑢∗. 1. 𝑦𝑝. 𝜅. 𝑦0. = ln. (12). 式(10)および(11)中の𝜇𝐶 はクーロン動摩擦係数であり, Kovacs & Parker14)に従い 𝜇𝐶 = tan𝜙で表されるものとす る.ここで𝜙は砂の安息角である.式(11)では 𝜇𝐶 の値が 小さいほど河床勾配の影響が大きく評価されることにな る.また,この河床勾配の項を無視すると,Kovacs & Parker式(11)は芦田・道上式(10)に一致する. (3) 計算条件 本研究では,Guyら17)による実験の再現を行った. Guyらの実験データのうち再現計算を行った実験ケース について表-1に示す.また,計算はCase-a~fまで行い, 各ケースに用いた流砂量式および𝜇𝐶 の値または平均step lengthの値を表-2に示す.計算はいずれも平坦床から開 始し,180分後まで行った.計算初期の平坦床には最大 振幅±0.01mmの乱数によって微小な乱れを与えた.上下 流端は周期境界条件としている.流下方向の格子間隔 は1cmとし,水深方向の格子間隔はGiri & Shimizu8)に従 い底面付近ほど指数的に小さくなるように設定し,最も 底面近傍の格子間隔は水深の0.01倍とした. a)河床勾配の影響を表す𝜇𝐶 の値について 芦田・道上式では𝜇𝐶 の値に関係なく河床勾配の影響は ゼロである.Kovacs & Parker式では,前述したように𝜇𝐶 の値が小さいほど河床勾配の影響が大きく現れる.砂の 安息角が30°~40°程度であることから𝜇𝐶 は0.58~0.84程. 度の値となることが知られており,本研究では表-2に示 したように𝜇𝐶 = 0.84および𝜇𝐶 = 0.58を適用している. Kovacs & Parker式では,流れ方向の河床勾配が安息角 になると流砂量が無限大になるため河床勾配が安息角に ごく近い値まで大きくなると何らかの数値的な処理が必 要となるが,本研究における計算内ではそこまで河床勾 配が増大することはなかった. b)砂粒の平均step lengthについて 中川・辻本3)は,平坦床における砂粒の平均step length は40~250d程度であるとしている.Giriら9)の再現計算で も同様の値が適用されている.これに対してNelsonら11) は,最近の実験結果より,平均step lengthが掃流力(河 床せん断力)と粒子の限界掃流力の関係によって表わさ れることを示している.彼らの実験によると,掃流力が 限界掃流力の2倍の時は15dとなり,3倍の時は30d,4倍 の時は40d~50dとなることが示されている. 表-1に示した実験砂では,岩垣の式16)によって限界掃 流力を求めると0.034となり,実験における有効掃流力 はその3倍程度となっている.Nelsonらの実験結果に従 うと平均step lengthは30d程度の値になると考えられる. 本研究では,表-2に示すように妥当だと考えられる平均 step lengthの値をCase-eに,それよりも小さい値および 大きい値をそれぞれCase-dおよびfに設定している. ここで用いる確率過程モデルでは河床勾配の影響を考 慮していないが,河床勾配が安息角を超えた場合は斜面 崩壊の計算によって安息角となるようにしている.確率 過程モデルを用いたCase-d~fでは安息角を30°とした.. - 717 -.

(4) 図-1(d) 確率モデルによる再現結果. 図-1(c) Kovacs and Parker式による再現結果. (Case-d, 𝛬 = 5𝑑).. (Case-c, 𝜇𝐶 = 0.58 (𝜙 = 30°))).. 3.結果および考察 (1) 平衡流砂量式による再現結果 図-1(a),(b)および(c)にそれぞれCase-a,bおよびc の計算結果を示す.図にはそれぞれ計算開始から30 分,60分,90分,135分および180分後の水面および河床 形状を示した.図-1(a)を見てわかるように,芦田・道 上式を用いた場合には,計算開始直後に現れた細かな擾 乱が減衰することも発達することもなく,単に下流側へ 移動するだけでdune形状の再現はできない.これに対し て図-1(b)および(c)に示したように,Kovacs and Parker 式を用いた場合には擾乱の発達とともに波長が徐々に長 くなりながらdune形状が形成されている.このことから, 平衡流砂量式を用いた場合には河床勾配の影響を考慮し ないとdune形状は再現できないことがわかる. 平坦床においてKovacs and Parker式は芦田・道上式と 一致することからも理解できるように,Case-bおよび Case-cのごく初期においても図-1(a)に見られるような 細かい擾乱が現われている.図-1(b)および(c)では,時 間の経過とともにこれらの細かな擾乱や比較的波長の短 い擾乱が消滅していくのがわかる.このことから,河床 勾配の影響には波長の短い擾乱を減衰させる効果のある ことがわかる.この効果によって,比較的長い波長の duneが発達し得るものと考えられる. また,図-1(b)と(c)を比較すると,𝜇𝐶 の値が小さい (c)の方がより波長の長いduneが現われている.これよ. り河床勾配の影響が大きい(𝜇𝐶 の値が小さい)とduneの 波長が長くなることがわかる.これは,河床勾配の影響 によって波長の短い擾乱が減衰するためと考えられる. 図-1(a)~(c)を見ると,duneの発達していない(a)の 水深が最も大きい.これは,芦田・道上式では河床勾配 の影響が考慮されておらず局所的に勾配が安息角を超え て大きくなり得るために擾乱が小さくても大きな形状抵 抗が生じていると考えられる.また,(c)より(b)の水深 が大きいのも,Kovacs and Parker式において設定した安 息角の違いによって(c)より(b)の方が局所的な勾配が大 きくなり,形状抵抗が大きくなっていると考えられる. (2) 確率モデルによる再現結果 図-1(d),(e)および(f)にそれぞれCase-d,eおよびf の計算結果を示す.図-1(d)を見るとわかるように,平 均step lengthが極端に小さいCase-dの場合は,図-1(a)の 芦田・道上式を用いた場合と同様に細かい擾乱が卓越し て発生することになる.これに対して図-1(e)を見てわ かるように,平均step lengthに適当な値を用いたCase-e では比較的波長の長い擾乱がゆっくりと発生し,この擾 乱が徐々に発達してdune形状が現われている.また,平 均step lengthをCase-eよりも長く40dとすると,図-1(f) に見られるように比較的波長の長い擾乱が時間をかけて ゆっくり発生するものの,計算時間内に平衡形状には至 らなかった.このことから,砂粒のstep lengthに適当な 値を用いなければdune形状は再現できないことがわかる.. - 718 -.

(5) 図-1(e) 確率モデルによる再現結果. 図-1(f) 確率モデルによる再現結果. (Case1-e, 𝛬 = 30𝑑).. (Case1-f, 𝛬 = 40𝑑).. (4) 河床勾配の影響が考慮された平衡流砂量式および確 率モデルによる再現結果の比較 表-3にCase-a~fの計算結果より得られたduneの平均 波長,平均波高,平均水深およびフルード数Frを示す. ここで表に示した値は計算の最終時刻(𝑡 = 180min) における値であり,この時点で平衡状態に達していない ケースは参考値として括弧をつけて示した.表より波長 については,Kovacs and Parker式および確率モデルのど ちらの場合でも𝜇𝐶 や平均step lengthに適当な値を与える と実験結果をある程度良好に再現できることがわかる. しかしながら図-1(a)~(f)に示した河床形状をよく見 ると,発達したdune形状に見られる特徴は,Kovacs and Parker式を用いた場合と確率モデルを用いた場合とで大 きく異なることがわかる.Kovacs and Parker式を用いた 場合には,duneのクレスト部がほぼ平坦な形状であるの が特徴であり,波高も比較的低くなっている.これに対 して確率モデルを用いた場合には,クレストの先端が 尖っているのが特徴であり,波高も比較的高くなってい る.実験で再現されたduneの詳細な形状について不明な ため,どちらの特徴が実際に現れているかは検討できな いが,表-3を見てわかるように水深(またはFr)も大き く異なることから,形状に見られる特徴の違いに対応し て流れの形状抵抗にも違いが現われていることがわかる. Kovacs and Parker式を用いた場合には形状抵抗が小さい ために実験結果より水深が低く(Frは高く),確率モデ ルを用いた場合には形状抵抗が大きいために実験結果よ り水深が高く(Frは低く)計算されていることがわかる.. (5) 流砂の河床勾配の影響および非平衡性の影響 a)発生初期および発達過程に見られる波長の変化 Kovacs and Parker式を用いた場合(図-1(b)~(c))は, 初期に現れた擾乱のうち波長の短い擾乱が重力の影響を 受けて減衰することによって,比較的長い波長のduneが 発達していく.これに対して確率モデルを用いた場合 (図-1(d)~(f))は,step lengthの長さに応じた波長の擾 乱が発生し,この擾乱が成長してdune形状へと発達して いく.このときstep lengthが長いほど発生する波長が長 くなるため,結果として,duneの波長に対する河床勾配 の影響と非平衡性の影響が類似することになる. b)平衡形状 前節で述べたようにKovacs and Parker式を用いた場合 の平衡形状は,duneのクレスト部がほぼ平坦な形状とな り,形状抵抗が確率モデルを用いた場合よりも小さく なっている.これは,河床勾配の影響にduneの発達を抑 制する効果があるためと考えられる.擾乱がある程度発 達して局所勾配の影響が強くなると,それ以降の発達が 抑制されduneの平衡形状が決定される.ここでKovacs and Parker式を用いた場合の形状抵抗が実験よりも小さ くなる要因の一つとして,局所勾配の影響が実際よりも 大きく評価されているためにduneの発達が実際よりも強 く抑制されていることが考えられる.山口・泉6)は, Kovacs and Parker式に圧力勾配の影響を加味した線形安 定解析および弱非線形安定解析を行い,dune河床上では 圧力勾配の影響で局所勾配の影響が低減されることを示 唆している.このことからも実際にはdune背後の剥離が. - 719 -.

(6) 表-3 計算結果 計算結果 計算No.. 実験結果. 波長 (cm). 波高 (cm). 水深 (cm). Fr. ---. ---. 22.9. 0.26. -b. 50. 2.9. 15.9. 0.45. -c. 100. 2.3. 14.8. 0.50. -d. ---. ---. (19.5). (0.33). Case-a. -e. 100. 4.4. 20.3. 0.31. -f. (75). (2.3). (15.6). (0.46). 波長 (cm). 波高 (cm). 水深 (cm). Fr. 88.4. 1.8. 16.2. 0.44. 勾配の影響を低減させている可能性がある. 一方,前述のように確率モデルを用いた場合は波高の 大きいduneが発達し,形状抵抗が実験結果よりも大きく なる.これは,確率モデルで表される非平衡性にはdune 形状を大きく発達させる効果があるためと考えられる. 本研究ではGiriら9)に従い平均step lengthの値を流下方向 に一様に与えている.しかし,関根10)はduneの発達過程 においてstep lengthは空間的にも時間的にも変動するこ とを示唆しており,本来ならば形状の変化に伴う空間的 および時間的なstep lengthの変化を考慮すべきであろう. 前出のように局所的な勾配の影響にduneの発達を抑える 効果があるとすれば,本研究で用いた確率モデルにはそ のような発達を抑制する効果が欠けている可能性がある. また,その逆でKovacs and Parker式を用いた場合には, 確率モデルで表されるような流砂固有の非平衡性の効果 が欠けているために,クレスト部が平坦な形状しか現わ れず形状抵抗が小さくなっているとも考えられる.. 2) Fredsøe, J.: On the development of dunes in erodible channels, J. Fluid Mech., Vol.64, pp.1-16, 1974. 3) 中川博次,辻本哲郎: 砂礫の運動に伴う移動床砂面の擾乱発 生過程,土木学会論文報告集,No.291, pp.53-62, 1979. 4) 山口里実, 泉 典洋: デューン-平坦床遷移過程に見られる亜 臨界分岐現象,土木学会論文集,No.740/II-64, pp.75-94, 2003. 5) Colombini, M.: Revisiting the linear theory of sand dune formation, J. Fluid Mech., Vol.502, pp.1-16, doi:10.1017/ S0022112003007201, 2004. 6) 山口里実, 泉 典洋: デューンの不安定現象に対する流砂の非 平衡性の影響,水工学論文集, Vol.51, pp.1015-1020, 2007. 7) 音田慎一郎, 細田 尚: 水深積分モデルによる小規模河床波の 発生・発達過程と流れの抵抗則の数値解析,水工学論文集, Vol.48, pp.973-978, 2004. 8) Giri, S., Shimizu, Y.: Numerical computation of sand dune migration with free surface flow, Water Resources Research, Vol.42, w10422, doi:10.1029/ 2005WR004588, 2006. 9) Giri, S., Yamaguchi, S., Shimizu, Y., Nelson, J.: Simulating temporal response of bedform characteristics to varying flow, RCEM 2007, pp.939-947, 2007. 10) 関根正人: 土砂粒子の運動の解析を基礎とした河床波の形 4.結論 成過程シミュレーションの試み ,土木学会論文集, No.691/II-57, pp.85-92, 2001. 本研究では,duneの形成過程に対する河床勾配の影響 11) 関根正人,吉川秀夫: 掃流砂の停止機構に関する研究,土 を明らかにするために,河床勾配の影響が考慮された平 木学会論文集,No.399/II-10, pp.105-112, 1988. 衡流砂量式によるduneの再現計算を行った.従来の再現 12) Nelson, J., Shimizu, Y., Giri, S., Shreve, R., McLean, S., Logan, B., Kinzel, P.: Bedform response to Flow Variability, MARID 2008, 計算で用いられた確率モデルによる再現計算と比較した keynote, 2008. 結果,duneの波長や平衡形状に対する河床勾配の影響お 13) Kimura, I., Hosoda, T., : A nonlinear k- model with realizability よび非平衡性の影響について次のことが明らかとなった. for prediction of flows around bluff bodies, Int. J. Num. Meth. Fluids. ・河床勾配の影響が考慮された平衡流砂量式を用いても Vol.42, pp.813-837, 2003. 比較的良好にdune形状が再現される. 14) Kovacs, A., Parker, G.: A new vectorial bedload formulation and ・現れるduneの波長に対する河床勾配の影響と非平衡性 its application to the time evolution of straight river channels, J. の影響は類似している. Fluid Mech., Vol.267, pp.153-183, 1994. ・流砂量式によって平衡形状の特徴が大きく異なる.こ 15) 芦田和男,道上正規: 移動床流れの抵抗と流砂量に関する れは,河床勾配の影響にはduneの発達を抑制する効果 基礎的研究,土木学会論文報告集,No.208, pp.59-69, 1972. があるのに対して,非平衡性の影響にはdune形状を大 16) 岩垣雄一: 限界掃流力の流体力学的研究,土木学会論文集, No.41, pp. 1-21, 1956. きく発達させる効果があるためであると考えられる. 17) Guy, H. P., Simons, D. B., Richardson, E. V.: Summary of alluvial. 参考文献. channel data from flume experiments, 1956~1961, Geological. 1) Engelund, F.: Instability of erodible beds, J. Fluid Mech., Vol.42, pp.225-244, 1970.. Survey Professional Paper, 462-I, 1966.. - 720 -. (2008.9.30受付).

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