基調講演「第12回 FD フォ-ラム」
新しい授業改善の試み
「教育・学生支援機構の取組み~教育企画室を中心として~」
秦 敬治
追手門学院大学副学長、基盤教育機構教授、教育開発機構長
※
1 .授業改善の必要性と DP・CP
皆さんこんにちは。愛媛大学の秦です。本日 のお題は、「新しい授業改善の試み」というこ とですので、他の大学で行っていないようなこ とや、効果があることなどを中心にお話しさせ ていただきます。まず、授業改善というものは 皆さんからすると、最も大切なところだと思わ れると思いますが、私からすると様々な教育改 善の中でも最後の方に来る部類となります。私 は、教育経営学が専門で、その観点から見ると、
まず大学というのが先にあり、その大学の理念 や目的、各学部学科の方針があります。いわゆ る、 ディプロマポリシーやカリキュラムポリ シーです。それらに合うような教員を採用し て、その教員が各学部学科大学の方針に見合う
内容と方法での授業をやっているかということ になります。つまり、先に組織的な取り組み方 が確立されなければ、授業の中身は作りようが ないのです。
このことを、スポーツに例えると非常に分か りやすい話になります。私はサッカー部の監督 を28年間やっています。我がチーム、愛媛大学 のサッカー部は、「全国大会で勝てるチームに なる」ということを 学 生・OB・私 たちスタッ フでの共通のコンセプトとして活動しており、
そのため日曜日でも土曜日でも平日でも、朝 6 時から練習します。もちろん、我々教職員も朝
6 時から練習に参加しています。実は、今日も 飛行機の時間が 7 時半でしたので、30分ほどグ ラウンドに出て、そのあとこちらに来ました。
なぜそこまでしてやるかというと、「全 国 大 会 で勝てるチームになる」というコンセプトがあ るからであり、それに応じてトレーニングの内 容が決まっていくからです。
もしこれが、「楽 しくサッカーができればよ い」というコンセプトであれば、朝 6 時から走 る必要もありませんし、我々スタッフも毎日出 ていく必要もありません。まず、そこが決まら ないと今日のトレーニングの内容も決まりませ ん。「全国で勝ちたい」なら、雨が降っても練 習するのは当たり前になります。しかし、「楽
日時:2014年 7 月26日
場所:創価大学大教育棟 S201教室
※講演当時は愛媛大学 教育・学生支援機構教育企画室副室長、教授
たりが皆さんの参考となればと思っております。
私の今の肩書は「教育企画室の副室長」であ り、いわゆる大学教育改革担当の教員ですが、
もともとは経営情報分析室の教員でした。です から、学部の建物にはいないで、学長や副学長 と同じ本部の建物にいる唯一の専任教員として 着任いたしました。愛媛大学における IR の立 ち上げ、スタート期のスタッフの 1 人でもあり ます。しかしながら私の中では、「IR をやらな ければならない」という 自 分 と「IR なんてい らないだろう」という 2 つの自分がいます。私 はいつもこのジレンマと戦っています。
なぜそんなことを言うかというと、これまで の大学の歴史が関係しています。愛媛大学の学 長は私も尊敬する立派な方で、教育者・研究 者・経営者としても素晴らしい方です。学長が 大学の学生として在学していた頃、ちょうど大 学紛争中だったので、大学が授業をやっていな かったそうです。学長は、ボート部だったので、
大学が閉鎖している間ずっと琵琶湖でボートを 漕いでいたそうです。そして、卒業証書だけも らって卒業しましたが、このまま社会に出てい いのか、やはりきちんと勉強しようと思って、
大学院に行った結果、今のような大学教員に なったということです。大学での授業を受けて いなかった方たちが、優秀ではないのかという とそうは思いません。私は非常に優秀だと思っ ています。むしろ少なくとも私達の世代より今 の65歳位の大学教員の方々は非常に優秀で、民 間人の方でも、団塊の世代の方達というのは、
相当の成果をあげられて、日本を支えてきたの ではないかと思います。
そうすると、そういった方達が行ってきた大 学 教 育 を 否 定 するのか、ということになりま す。少なくともその方々達より私達の方が出来 が悪く、私から見て今の学生の方がもっと出来 が 悪 いのではないかと 思ったときに、「これは 昔に戻した方がいいんじゃないかな」と思うこ ともあります。この 時 に、昔 は IR なんてやっ ていなかったとか、IR の「あ」の 字 も 無 かっ しくサッカーをやりたい」のなら雨に濡れてま
ではしたくないので、「やめましょう。飲 みに 行きましょう」となるのが通例です。そのあた りのことを先に決めないで、状況の改善をやれ と 言 われても、そこに 来 ている 学 生 たちとの ギャップが 出 てくることになり、現 場 のサッ カーコーチはいいトレーニングメニューや方法 といったものは組めなくなってしまします。
大学としては、「日本一の大学教育をやりた い、それは、こういう目的で…」と言っていて も、実際に来ている学生にそういう気持ちがな い。サッカー部の例でいえば、全国で勝ちたい とまで思っていない部員がいるのに、毎日10キ ロ走らせようとしても彼らは走りません。むし ろ不満分子となって、トレーニング自体が成り 立たなくなり、チームとして成立しません。つ まり、大学でいえば授業が成り立たないという ことになります。「私は君たちにこんな風に学 んでほしい、大学もそう言っていて、そのため にこの学部があって、そこに君たちが来たんで しょ!」と大学側が言っても、そういった気持 ちのない学生がいることによって、必死にやろ うと思っている学生が、どれだけマイナス面を こうむっているか。そういうところも踏まえな がら、そのマイナスな行為を実際に引っ張り出 して、学生同士で考えさせる取り組みなども 行っていますので、今日はそのあたりを紹介し たいと思います。
今日初めてお目にかかる方も多いと思います が、私はもともと福岡の西南学院大学の職員と して、20年間大学職員をやっていました。私立 大学の大学職員から国立大学の教員になりまし たので、私学のことも国立のこともだいたいわ かりますし、職員のことも教員のことも、何と なくはわかります。それともう 1 つは、直接的 な学生との関与もそうですが、経営側に入りマ ネジメントの分野も担当していますので、そう いう意味では現場と幹部との架け橋のような仕 事が中心となっています。それぞれの立場も十 分に理解していなければならないので、そのあ
2 .教育改善を推進するための組織・制度
先ほど申しました通り、授業の話からはじめ ていきたいところですが、いきなり授業の話に 行くのは難しい面があります。私も長年、FD をやってきましたが、FD のなかで 最 もやりに くいのが「授業改善」、いわゆる「個々の教員 に焦点を当てた取り組み」です。あなたがこう 悪い、あなたはこう変わるべきだと強制される というのは、 プライドを 持って、 プロフェッ ショナルとしてやられている大学の先生方から すると、納得のいかないところはかなりあると 思 います。反 対 に 一 番 うまくいくのは、カリ キュラムレベルの FD で「我が学科をどうする か」とか「学生を」とか、自分以外のところに 焦点を当てる活動は、非常にうまくいきやすい です。「自分がどう変わるか」というのはなか なかできませんが「人をどうするのか」という 話になると、自然と先生方も議論に加わってき ます。ですから、まずはそのレベルの FD を着 実にやっていくことが大切だと思います。
これがミドルレベルの取り組みのひとつでし て、愛 媛 大 学 では「教 育 コーディネーター制 度」というものがあります。この制度が非常に よく機能していることで、教育改革がやりやす い環境になっています。私達が直接的に FD を 担 当 しているように 思 われるかもしれません が、そうではなく「プランニング」と「情報の 提供」と「ノウハウの提供」をやっています。
頼まれもしないのに我々がのこのこと出て行っ て、やりたくもない方に無理に FD をやるとい うようなことは一切致しません。「無駄な労力 は 使 わずにやりたい」、というのがありますの で、私達を求めている方のところには出ていき ますけれども、求められていないところには出 ていかない、ということです。「じゃあそれで FD が 進 むのですか?」といわれれば、「みな さんには、仲間がいるではないですか」と言っ ています。私達は皆さんの仲間の方を刺激する た、と考えると今、本当に必要な IR は何なの
かというところを究極的に考えないといけない のではないかと思います。否定ではなく、どの ようなスタイルが一番いいのかについては、か なり考えなくてはいけないのではないかと思う ところを枕に、話を進めていきます。
今日お話しするのは 1 から 5 番目の内容で す。 6 番目は時間があればお話しいたします。
今回のタイトルが「授業改善・新しい授業改善 の試み」ですから、そもそも授業改善はなぜ行 わなければならないのか、という点からお話を させていただきました。授業改善をする必要が あるとするならば、そもそも学生や社会に対し て約束をしている「こういう学生を世の中に輩 出しますよ」というところがきちんとできてい るのかどうか、改善しなければならないところ があったら、改善をしようとしているのかとい うのが、本来の筋ではないでしょうか。そのた めに我々が何をやっていけばいいのでしょか。
授業アンケートなど、皆さんもいろいろな努力 をされていると思います。高等教育に関する多 くの学会・セミナーで扱われていますが、授業 評価アンケートを効果的に機能させている大学 を私は知りません。そういうところがあれば是 非教えていただきたいと思います。実は、愛媛 大学では授業評価アンケートをやめようかとい うところまで来ております。なぜアンケートを やめられるのかについても、この後話していき たいと思います。
2
本 日 の 内 容
1.授業改善の必要性とDP・CP 2.教育改善を推進するための
組織・制度 3.愛媛大学のFDの定義 4.授業改善事前準備 5. 授業準備のための試み
(授業コンサルテーション)
6. 授業改善のための
基礎的FD事例
松山城
道後温泉本館
矢面になってくださるので、我々がそれを助け にいく、というような形で進めているようなと ころがあります。ここの教育コーディネーター を使って、カリキュラムレベルの FD をやって おかないと、授業レベルの FD、いわゆる個人 の教員に対する FD はなかなかできません。
これが今お話ししたような形で、「教育学生 支援会議」というのが左側にありますが、ここ が、入試から卒業までの学生に関するすべての ことを決定する機関です。もちろん卒業判定な どは学部学科が権限を握っていますが、入試の 日程などの最終決定はこの 1 つの会議だけで決 まります。学 部 からは 統 括 教 育 コーディネー ターが 1 人出ているだけで、その方が、責任を 持って対応するということになっています。教 育学生支援会議で決まった事を教育コーディ ネーターに話をして、意見を聞いたりもします が、原則頑張ってやっていただくということに なっています。そして、やってもらうことが決 まったら、先ほど申しましたノウハウや情報、
意図などは我々教育企画室の教員がお手伝いし ますし、「来 い」といわれれば 喜 んでどこでも 出ていくという話をしています。なので、ここ 数年はキャンパスを歩いていたら学部の先生方 に 呼 び 止 められて、「次 これやりたいから 手 伝ってほしい」と頼まれているのが現状です。
ので、その仲間の方からいろいろなサポートを 受 けてくださいね、というのが 教 育 コーディ ネーター制度の核にある考え方です。
愛媛大学にはこの教育コーディネーターが70 名弱います。この制度で他大学と違うところ は、学部長が推薦して学長が任命するという流 れなのですが、学 長 が 推 薦 者 を「だめだ」と 思ったら変えることができるところです。うち の学長は、元々教育担当理事等をご経験され、
誰がその役職にむいているのかというのがわか りますので、ただ単に順番で回すことができま せん。そして、 2 年任期を 2 回担当することに なっています。「 4 年 任 期 でいいではないか」
と思われるかも知れませんが、これでは継続的 に機能させることが難しくなってしまします。
参議院と一緒で、半分が 2 年後に終わる人で構 成することで、半分辞めても次の 2 年間でもう 半分が補充されてきますから、常に半分の方 は、前任から引き継いでいる方です。今この 方々の中には「一生私は教育コーディネーター やるよ」という方もかなりおられます。面白く なってきた、ということですね。ですから当番 制で FD を担当するようなことは、原則的にな いようになっています。
それと教育改革に関しましては、全学的な教 育改革については学部の教授会の承認を得なく てよいというルールになっています。何かをや りたいときに、「全 学 でやります」といえば、
個々の教員の意見を聞かなくてよいことになっ ています。いろいろな意見があるとは思います が、その部分が各学部、もしくは自分達で、別 の取り組みを行ってもらい、そこを補ってもら うことにしています。反感を買うことはないの かと聞かれますが、教育コーディネーター制度 があることで潤滑油になってくれる方々がおら れるので、私達の気持ち、意図、さらには効果 をきちんと説明してくださいます。さらにノウ ハウもお 渡 しすることによって、我々の「同 志」になってくださる方がいます。ですから、
教育コーディネーターの方々が、前面に立って
教育改革を推進するための組織・制度
学 長 役員会
愛媛大学教育・学生支援機構 機構長・副機構長
(機構長は理事(教育担当)が兼任)
教育企画室 教育学生支援会議
共通教育センター 英語教育センター アドミッションセンター 学生支援センター
各学部 教育コーディネーター
(主要構成員)
機構長,副機構長,各センター長 各学部の統括教育コーディネーター
全学的な教育課題を審議 全学と学部の連携1
全学と学部との連携
ずいりません。花もいりません。一方で、式典 になるとこれらの要素が大事になります。この 教卓があることによって、僕の身体の上半身し か見えないので、皆さんからは本当の私を見て もらえていません。足の動かし方とかそういう
1 つ 1 つの動作も含めてです。
昨今話題となった白熱教室と言われる授業で は何もおいていないことが多いです。そういっ た状態でやった方が私は効果があると思いま す。次にスクリーンです。なぜかというと、こ のスクリーンは 両 サイドにあることで、スク リーンを見ながら話者である私を見ることがで きないからです。スクリーンか私かのどちらか しか見られない状況になっているうえに、レー ザーポインターを使うと、指し示した反対側の 人は遠くを見ないといけないという状況とな り、非常に使いにくい環境になっています。で すから、入学式・卒業式等の式典を行うには最 高ですが、授業をするには適していないので、
非常に申し訳ないですが、私はこの教室を使い たくありません。
ここまでで 何 を 言 いたいかというと、こう いった環境に適しているかということなどを考 えるのがマクロレベルの FD だということで す。同じ授業をするのに施設によって効果が変 わるのであれば、こんなにありがたいことはあ りません。そういう意味で、ラーニングコモン ズがあるということは創価大学の強みになると 思います。学生たちがずっとキャンパスにいた くなる要素を作っているからです。授業に来て いかに楽しませるかという意味で、その教室が 本当に良いのかどうかをやはり上層部が考えて いかないといけません。その上層部にこういっ た進言をするのが、FD 担当の方や、FD を担 当している職員の方の役割なのではないかと思 います。そのようなところが、マクロレベルの FD だということです。
愛媛大学では、これまで、このような IR に 近いことも含めて教育改善を行ってまいりまし た。
3 .愛媛大学の FD の定義
先 ほどミドルレベルというお 話 をしました が、愛媛大学で私たちが教育改革をやるときに 決めたのは、「愛媛大学で我々が行う FD の定 義を決めよう」ということです。これに関して は、中教審にも載ったり他大学でも出されたり していますが、愛媛大学で示している FD と、
四国地区の大学教職員能力開発ネットワーク
「SPOD」も同じ定義を使っており、一番広い 意味を持つと思います。教育に関することなら 何でも入っているというのが愛媛大学の FD の 定義です。今日お話しする授業の改善レベルの ところと、先ほどのミドルレベルのカリキュラ ム単位でどうしていくか、というところも含ま れます。マクロレベルの FD というのは大学当 局・経営陣に対して行う FD です。ですから、
今日は学部レベルでなく、全学レベルの FD な ので、このような企画等をしていくことは、マ クロレベルになるのではないかと思います。こ うした企画等はソフト面に相当します。
では、ハード面ですが、実はこの教室に入っ た瞬間から、ずっと気になっていることがあり ます。来るときに立て看板を見て、今日はホー ルじゃなくて教室だから多くても20~30人くら いかな、と思って入って来ました。最初に来た ときは 2 人 くらいでしたが、ランチを 食 べて 戻ってきたらかなり増えていましたね。私はこ ういうところに来ると会場のセッティングが非 常に気になります。先ほども創価大学の素晴ら しいラーニングコモンズの 話 をしていました が、「ここは、本当に授業に適している場所な のか?」と思っています。
式典を行うにはいいと思いますが、私にとっ ては、今ここでお話しさせていただいている環 境というのは、非常に心地が良くありません。
私が今日、卒業式のような式典の中で話すので あればここは心地いいでしょう。しかし、授業 をここでやれと言われたら、このテーブルはま
の中身が悪いのか、悪いとしたらどう改善する のかを、学 部 で 考 えてもらって、来 年 度 また チェックするということを行っています。そう することによって、初めて「授業の中身が悪い のかもしれない」という話を教員とできるよう になると思いますので、まず、大きな話を先に させていただきました。
4 .授業改善事前準備
4 - 1 .第 1 段階(シラバスの重要性)
では、ここからは授業改善の内容に入ってい きます。私達は一部の教育コーディネーターの 先生や、法学・工学関係の先生から「それは言 いすぎだ」と言われることもありますが、「ディ プロマポリシーは学生との契約」だと言ってい ます。そのうえでシラバスは「学 生 との 契 約 書」だから、きちんと作ろうということもよく 言います。ですから、授業改善に入る前に、ま ずはシラバスがきちんと作られているかが一番 大事になります。シラバスにおける最低基準を 全教員が満たしているか、本当にきちんとやっ ているかどうかを、創価大学ではされているの ではないかと思いますが、愛媛大学も全教員の シラバスチェックを行っています。
シラバスチェックの 基 準 を 決 めているのは 我々ですが、私の授業シラバスが差し戻しにな る時もあります。これは、差し戻しのチェック をしているのが私ではなくて、センターの人た ちや 職 員 がきちんとチェックしているので、
「はい、秦先生、あなたはここがうまくできて いませんので、入力し直してください」と戻っ てきます。例えば授業時間外学習の確保が非常 にアバウトなのでわかりにくいです、という具 合です。その他の事例としては、言葉の使い方 について、「主語が学生ではないような言葉の 使い方になっていませんか」、「主語が教員主体 の言葉になっていませんか」ということで返す こともあります。シラバスのルールや基準、書 き方を明確にして、そしてチェックはきちんと 上段のゾーンには、皆さんがされていること
もかなりあると思いますが、日本で愛媛大学だ けしか行っていないだろう、ということがあり ます。通常は、カリキュラムツリーやカリキュ ラムチェックリストの作成、各学科のディプロ マポリシーと、それに 対 して 授 業 が 並 んでい て、どのディプロマポリシーがどの授業で補わ れているのかということを 行っていますが、
我々が行っているのは、ディプロマポリシーや カリキュラムポリシーがどこまで達成されてい るかというアセスメントです。
たとえば、ディプロマポリシーが 4 つあった ら、この 4 つのポリシーが何の指標によってど こまで 達 成 されているかをチェックしていま す。そして、そのチェックに対して、例えば私 が教育学部の教員だったら、教育学部以外の教 員たちに、「これらのエビデンスを踏まえ提示 して、ディプロマポリシーの達成度のチェック をかけています」、と説明します。すると他学 部の教員たちが「たったこれだけのことをやっ て、ディプロマポリシーが達成したとなぜ言え るんだ」ということをどんどんつついていきま す。「ここは教育学部のチェックが合っていま す」とか、「ここはこの部分は合っているとい いにくい」というように大学院と学部のディプ ロマポリシー、カリキュラムポリシーがどこま で達成されているかのチェックを行い、相互評 価をしていきます。そのための採点表も作成し ました。それを行ったうえで、アセスメントの 方法が悪いのか、それとも授業やカリキュラム
・教育コーディネーター会議
・各学部・学科へのデータの提供
・カリキュラムマップ,カリキュラム チェックリスト,CP,DPの策定
・カリキュラム・アセスメントの検討
・授業改善
・FD
・カリキュラム改革
・カリキュラム評価 など
・授業評価アンケート
・新入生アンケート
・卒業予定者アンケート
・学生生活状況調査
・授業コンサルタント
・カリキュラム・アセスメント
アンケート等の 情報収集・分析 対応策
教育改善・改革 フィードバック
愛媛大学の現在の教育改善・改革のサイクル
さらなる改善・改革を行うための情報収集や分析は適切か?
アンケート等のデータ収集のための改革を行い 今までより厳密なエビデンスを収集することが必要
「アンケート等改革プロジェクト」
①教育改善・改革サイクルに おけるアンケートの課題
②教育改善・改革サイクルに おけるアンケート改善の方 向性
③教育改善・改革サイクルに おけるアンケート改善のた めのチーム
教育改善への示唆、アンケート の連動性、学生情報やプログ ラム間の関連性、学生の追跡 調査等を求めるのが困難
様々な学生情報とリンク、
パネル調査、一貫したアン ケート設問、各学部・学科 等の取組と学生の成長の 関連性の評価 これまでの各種アンケートを整 理し、明確な目的のもと教育改 革・改善に向けた新たな情報収 集・分析方法の提示 さらなる
改善へ
ことを教える別の先生を選べばいいのであっ て、学生たちは、「規律のところもきちんとやっ て数学も教えてくれるこっちの先生を選ぼうか な」というような形で、シラバスを充実させて いくことにつながっています。私はこの佐賀大 学のやり方に対して非常に強く賛同していて、
愛媛大学の皆さんにもそれをわかってもらいた いということで、佐賀大の学長と教育担当の先 生を推薦して、来ていただくようにしました。
また、シラバスを読んで授業15回のシナリオ がきちんとできているか、ドラマになっている か、ということも重要です。テレビドラマでは、
1 回 1 回が50分くらいのドラマで、それなりに 完結します。それなりに完結するけれど、全部 見ていくと、最終回の最後は全部をまとめたド ラマとして完結します。こういうシナリオで授 業が組み込まれているかということです。です から大体の場合、授業をドラマに置き換える と、つかみの部分が面白くなります。最初はつ かむけれど、途中でもやもやさせるという流れ が生まれて来ます。映画やドラマでももやもや するように、「大 丈 夫 なの、これ?このままう まくいくのか?」とか「なんや、離婚しそうや なあ」とか「殺し合いになるんかなあ」とか、
でも 最 後 は、「おおー!ああすっきりしたな」
でという流れで終わります。授業も同じことが いえると思います。波があるのが当然で、15回 全部がずっと楽しい授業などなかなかないと思 います。しかし、節目がしっかりとしていて、
「なんかこの90分よかった」というのを、授業 の終わりで思わせられるようなストーリー性に なっていて、そういう匂いをシラバスの中でさ せているかというところが非常に大事になって くると思います。
そして何よりも、この授業はディプロマポリ シーのどれが身につくのかということを明確に しているかが大事となります。愛媛大学が、そ れぞれの授業でディプロマポリシーのどれが身 につくか、というチェックを始めたのは 4 年位 前だと思います。ある先生が自分の授業はこの 我々が行い、必要に応じて差し戻しもする、と
いう体制をまずしっかりと整える必要があるの ではないかと思います。
愛媛大学では佐賀大学の学長と教育改革を担 当されている教員の方に来ていただいて、教育 コーディネーター全員で研修を受けるというこ とを企画しています。なぜ佐賀大学にターゲッ トを当てたかというと、佐賀大学は全国で初め てティーチング・ポートフォリオを全教員に義 務 化 しているからです。もちろん、フルバー ジョンとなると、佐賀大学も何百人もの教員が いるから無理だということで、フルバージョン を作る方と簡易版を作る方に分けています。そ のなかで絶対に全員が書かなくてはいけないの が、教員個人の教育者としての教育の理念を書 くことです。そして、その教育の理念を、シラ バスに載せるようにしています。これが非常に 大切なことなのです。
教育の理念とはどういうことか。例えば、あ る教員は「私は数学の教員であるが、私の授業 では規律を重んじます」と書いています。本来、
数学と規律は全く関係ないように思えるので、
なぜそんなことを書くのかをその先生に聞いて みました。すると、その先生は、剣道をやって いるから規律を重んじない人は嫌いだと言うの です。しかし、数学を受講する学生からすると、
なんで数学を習いに来ているのにこの先生は規 律のことばかり言うのか、面倒くさい、となり ます。ですから、自分がなぜ規律を大事にして いるかというと、社会に出て云々ということが シラバスの一番上に書いてあります。そのうえ で、数学を通じて君たちと学問を追求したいと 思っている、 というストーリーになっていま す。加 えて、その 次 の 項 目 のディプロマポリ シーのチェックをするところに、「社会に出て、
他者と協調することができる」という項目に、
数学の授業なのにチェックが入っています。こ れらの内容をシラバスに書いて、初めて学生た ちは納得します。こうすることで、規律云々な ど言わない数学の授業を受けたいのなら、同じ
だったら選手はやってもいいことになります。
しかし、ルールがなければ何でもありなので、
罰しようがありません。ですから、ルールをき ちんと作るということが非常に大切です。
4 - 2 .第 2 段階(授業評価アンケート)
続いて第 2 段階です。これは過去の授業評価 アンケートですが、なぜこれを出したかという と、図表 4 に、平成16年度の前期68とか75とか 書いてあるのですが、ここからアンケートを始 めたり、授業改善、FD 等をどんどん導入して いったりしたところ、多少右肩上がりになって いきました。
実は、こうした改善と同時に退学率と休学率 も激減しました。ただ、これが本当に FD のお かげかどうかはわかりません。しかし、減った という事実は間違いありませんし、満足度が上 がったということも間違いありませんが、なん となく右肩上がりにはなりましたが、結局横ば いになっています。これは80%位のところにく ると、だいたい落ち着いてしまうのではないか と思います。極端な話、100%になってしまう とそれ以上、上はありません。上がないのに数 字をとる意味があるのか、ということになりま す。
私達がアンケートを取っていて一番残念なの は、改善のしようがないコメントがあるという ことです。学生たちが様々なコメントを書いて くれていますが、一 番 ひどいものでは、「うざ 4 つのディプロマポリシーのうち、身につくの
は 2 番であるとチェックしていたとします。学 生のアンケートでは、この先生の板書の仕方な どもチェックしてもらいますが、我々として一 番大事なのは、ディプロマポリシーが身につい たかということなので、この先生は 2 番に印を つけているけれども、学生はどう思うかという ことを聞きます。そうすると、「 2 番も身につ きますが、 4 番がもっと身につきます」という 学生が半分以上いますよということもあり、こ れらの結果をフィードバックします。「 4 番も 身についているということは、こっちも印つけ ていいですかね?」 という 話 になるので、
チェックを追加してもらいます。しかし、それ が本当にどの程度合っているかというのは、実 はアンケートではわかりません。わからないの で、実際に行う手法を後程、紹介させていただ きます。
その他にも到達目標は明確かどうか。測定可 能な内容かどうか。授業方法、評価方法は明確 かどうか。授 業 のルールが 明 確 かどうかなど 様々あります。以前、工学部の先生から授業中 に勝手な行動を取る学生が多くて困っていると いう相談を受けました。愛媛大学では毎年、ク ラスルーム・ コントロールについても FD を 行っています。しかし、ダメなものを先生が決 めていないから学生をコントロールできないこ とになります。例えば、授業中に携帯を見ては いけないとか、言ってないから見てしまうこと になります。一方で、話をするなと言ったら、
ディスカッションの時も話をしなくなることも あります。ですから、話をしていい時を決める 工夫が必要です。どういうことが良くてどうい うことが悪いかを、明確に示さないと、学生を コントロールすることはできません。
スポーツにはルールがあり、そのルール以外 のことはやってもいいことになっています。
サッカーだと、ファウルになるのはどういうと きか決まっています。何をしたら退場になるか というのも決まっているので、それ以外のこと
授業改善事前準備第2段階 授業評価アンケート
改善度も満足度も右肩上がりで良くなったが、一定ライン まで到達すると停滞しだす。そのため、数値的な改善から質 的な改善への転換が求められだした。(教育企画室では授 業評価アンケート廃止の議論も行っている=本質的な改善 につながらない)
になっている事はどういうことですか」という ようなことも聞きます。
それらを聞いた状態で教室に僕らが入ってい きます。大体 5 回目くらいの授業の時が多いで す。教室に入っていってどうするかというと、
授業の途中で、授業を担当する先生には出て 行ってもらいます。そして、「私は教育企画室 の人間で、何しに来たかというと、今日担当の
○○先生が自分の授業を良くしたいと言われて いて、先生自身が自分の授業を良くしたいから 我々コンサルタントに協力をお願いしているの で、まずその気持ちをわかってほしい、そして 協力してほしい」ということを話します。そし て、学生からコメントを集め、学生の意見をま とめていきます。その 結 果 を 先 生 にフィード バックをすることで、フォローアップをしてい くという流れになっており、結構手間がかかり ます。
この時、教室では、「スチューデント・フィー ドバックシート」を配布し、「あなたの学びが この授業で深まった点を挙げてください」とい う質問に箇条書きで答えてもらいます。次は、
「あなたの学びを深めるために必要だと思う点 を挙げてください」という質問です。この質問 は、実は「先生に改善してほしいこと」を意味 しています。最初は個人で書きますので、「学 びを深めるために必要だと思う点」の方には
「うざい」とか書く学生もいます。次に 2 人で 話 をさせます。そうすると A 君 が「うざい」
と書いていたのに対し、「何がうざいのか」と その内容を B 君が質問します。「近くに寄って 来て、先生の声のでかいのがうざい」「ああ俺 もそう思う」というような話になり、理由や状 況 が 足 されていきます。そして、「ここのテー ブルで、 4 人がそうだと思うことはどんなこと ですか」と聞くと「先生が近くに来て大きな声 で耳元で話すのがちょっと気になります」とい う意見が出ます。 4 人がそう思っていることが 確認できたら、教室全体にも問いかけます。人 数が多いときはクリッカー等を使います。全体 い」というような理由のわからないコメントが
あります。そこには何がうざいのかが書かれて いないので、改 善 のしようがありません。「板 書が見づらい」というコメントのも、実際には 改善のしようがありません。何が見づらいかわ からないからです。「資料が見にくい」という ことも、何が見にくいかわかりません。結局の ところ、コメントをもらっても改善のしようが ないし、点数をもらっても、「なんとなく右方 上がりだけど、まあ大体いいところで落ち着い たね」と満足し、それをもって認証評価に対応 する。実際のところ、何を評価しているのだろ うかと思います。そういったことよりも具体的 なものが欲しいと思います。そういう意味も込 めて、今、愛媛大学では、もうアンケートは労 力に見合う成果が上がっていないというふうに 見ています。むしろ、アンケートからコンサル ティングに変えていこうという流れになってき ていますので、それを今日は皆さんにお話しし たいと思います。
5 .授業改善のための試み(授業コンサル テーション)
今日はミクロレベルの FD しか紹介できませ んが、ミクロレベルでいろいろ 行っている 中 の、「中 間 期 の 振 り 返 り」を 紹 介 します。
「Midterm Student Feedback」と 呼 ばれる 手 法で、我々教育企画室の教員が、教室に入り込 んで、コンサルティングを行っています。具体 的には、授業を担当している先生と 2 人で面談 をすることから始めます。「どんな授業をされ ているんですか」「どういうことを 目 指 されて いるんですか」「シラバスを見せてください」「こ の通りに進めていますか」ということ中心に話 をします。そして、「先生の授業の学生たちは どうですか」と聞きます。たとえば真面目に受 けてくれているとか、途中で寝たり騒いだり出 て行ったりする学生がいるとか、欠席が多いと か、いろいろ聞きます。加えて、「先生自身が 今 までどんな 教 育 をされてきましたか」「今 気
「現状維持」「変更する」「変更不可」の欄に印 をつけて学生たちに見せるようにしています。
そうすると、学生達にもいろいろ変化が出てき ます。「先生が授業に対してコンサルティング まで入れて、良くしようと思って、熱意や真剣 な思いを感じたので、私はあれ以来一度も授業 を休まないし遅刻や途中退室もしなかったで す。まじめに受けました。先生がそう思ってい るのなら私もそうしようと思った」というのを 見て先生が、「泣きそうです」と言われたこと もあります。先生のことを学生達はしっかりと 見ており、いい授業を作ろうとしている意欲を 見せるというのが非常に大事になります。
担当教員に起こった変化としては、「力が湧 いてきた」「シラバスはやはり本当に大事なの だということがわかった」などがあります。そ の他にも「明らかに授業評価アンケートの点数 が今までよりぐっと上がった」とか、「授業で 何を大切にするかということを明確に伝えるこ とによってそこを意識できるようになった」な どのコメントがもらえています。
愛媛大学においてこれがどれくらい活用され ているかというと、始めて 5 年間くらいは、約 800人いる教員のうち、このコンサルティング を受けている人は10人くらいでした。その10人 もほとんどがリピーターという状況で、これで 本当にいいのかと言っていたら、いつの間にか
「うちの学部は教授会で全員が受けるようにな りました。150人行きます。」となりました。 1 に問いかけることで全体の意見なのか個別の意
見なのかが分かります。
実際にある 4 人組が思っていることを聞いて みたら、教室全体の40%しかいなかったという こともあります。こうした場合には、「先生良 かったですね、うざいと思っているのは、実は 4 人しかいませんよ、うざくないですよ、本当 は」と伝えます。コメントだけだと 1 人がうざ いと 書 くと、全 員 にうざいと 思 われていると 思ってしまうことが多いものです。
「資料が見づらい」という意見が出てきた場 合を事例として考えてみましょう。改善につな げるために、どのように見づらいのか話をしま す。例えば、「文字が小さいと思う人?」と聞 き、手を挙げたりボタンを押してもらったりす ると70%だったとします。この 結 果 をもとに
「 7 割の学生が文字の大きさが小さいと思って いますが、先生どうされますか」と伝えます。
このようなことを話していき、改善点等を全部 まとめて一覧表を作成します。 9 割強の教員 は、学生達から見て「学びが深まった点」の方 が多く、改善点が圧倒的に少ないという傾向が あります。その改善点の方に対して、「このま まいかせてもらう」「改 善 したいけれどできな い」「改 善 する」という 3 つに 分 けて 学 生 に フィードバックをお願いしています。例えば、
教室の配置上の制限で改善ができないことがあ ります。今日の会場のように「先生が喋ってい るけれど、画面と先生がバラバラで見づらい」
という場合は、「これは改善できないから、申 し訳ない。でも資料の字が小さくて見づらいと いう点は今日から変えているけど、見えるか」
と示します。こうした対応をすることで学生達 が納得し、改善できたとなります。こちらが今 紹介した一覧表のサンプルです。
コメントシート
あなたの学習 意欲を高めた 教員の言動
あなたの学習 意欲を低下さ せた教員の
言動
るので、その時に我々が「そうするのであれば こういうやり方がありますよ」というノウハウ の提供を行っていきます。
アンケートとか、数 字 だけが IR と 思ってい るかもしれませんが、そもそも IR はツールで あって、完 全 でなければ 意 味 がないと 思 いま す。そうすると、私達が今、行っているコンサ ルティングは IR のひとつだと 思っています。
数字ではなくて、改善に結び付けるための情報 を、いかに本当の情報を収集するかが重要で す。授業評価アンケート、卒業予定者アンケー トで「この 4 年間の学びはあなたにとって云々 ですか」という 質 問 に、学 生 が「はい」「とて もよかった」とつけたら、本当にそれで「とて もよい」のでしょうか。その意味を考えること が非常に重要です。
今日皆さんにアンケートをお願いしています が、うちの大学は私がこうやってよそで研修を すると勝手にアンケートを送りつけて、私の評 価についてお聞きします。是非よかったと書い てもらいたいところですが、本当にそれがどこ まで役に立つのでしょうか。今日のアンケート は、実は私達が統計をずっと出しているのです が、「とてもよかった」「よかった」を合わせて 90%を超えなければ失敗なので、改善をかけま しょうということになっています。資 料 が 悪 かったのか、話し方が悪かったのか、僕よりも 別の先生が行った方がよかったのか、なども考 えます。
それと、「とてもよかった」と「よかった」
を総合してみると90%以上でないとダメなので すが、我々が一番見ているのは「とてもよかっ た」です。「とてもよかった」が50%を 超 えて いないと失格になります。ですから「とてもよ かった」で90%を超えると、相当よかったのだ と判断します。「あまりよくなかった」「全くよ くなかった」は、100人 中 5 人 くらいはいても 全然問題ありません。むしろ100人いて 1 人も
「よくなかった」という人がいないということ もあり得えないのではないかと思います。先ほ 人に対して何日間も対応しなければいけないの
で、今、大変な状態です。
さらに、愛媛大学では、助教や講師で採用さ れた方には、テニュアトラック制度が適用され るようになっています。このテニュアトラック 制度は、あくまでもテニュアの枠の分でテニュ アトラックを行っているので、普通にいけば、
全員専任教員になれます。しかし、専任教員に なるためには、 3 年間で100時間の FD を受け ないといけません。これは大変だと思われるか もしれませんが、学長の思いは「 3 年間で100 時 間 の FD を 受 ける 環 境 をプレゼントしてい る」ということです。その中の選択必修として、
この授業コンサルティングを受けるようになっ ていますので、テニュア教員のほとんどがこの 授業コンサルティングを受けています。さらに 100時間の FD を受けたら、なんと 3 年間で300 万円の研究費がもらえることになっています。
1 時間 3 万円、そういうお金も研修の場もプレ ゼントしているという形で行っています。
実はこのスタイルを授業だけではなく、カリ キュラムレベルでも行っています。 4 年生の 1 月末くらいに卒業予定の学生たちに集まっても らって、手を挙げた学科には、私達が行って、
ジュースとお菓子を用意して、 4 年間この学科 で 学 んで「非 常 によかった」というところと
「ちょっとここは変えた方がいい」というとこ ろをカリキュラムレベルで書いて、話をしても らい、最後に我々に話してもらうと、同じよう なことが出てきます。「○○論Aと○論BはA が先でBが後に受けるようになっているが、明 らかに順番が逆である」とか。「先生同士が打 ち合わせをしていないから、後でやる方が基礎 的なことになっている」などが出てきます。そ ういうのを学生達がどんどん出してくるので、
我々の方でまとめて担当の教育コーディネー ターの方にお渡しします。この時、我々はどう 改善しろとは言いません。「これが現状です。」
とお伝えします。そうすれば学部学科の方で
「こうしたい、ああしたい」というのが出てく
ばいいか」のところまでやってあげないという 視点から行っています。学生等からのコメント だけでは改善のしようがないので、ここでやっ ていこうとあたりとつけるということです。例 えば、コメントの活用方法として、愛媛大学の 授業評価アンケートや、コンサルティングでも らったコメントを集約して、短冊にしてありま す。それを先生方で、「授業の良かったところ」
と「改善したいところ」を色分けしてあり、さ らにグルーピング化してもらって、「学生が何 を気にかけているのか」というのを、見ていく ようにしています。
特徴的なのは、教員個人に全然関係がないの に学生が不満を持っていることがあります。例 えば、「私の前に座っている人の私語が多いの でやっていられない。」「私 の 前 の 人 が 携 帯 を 扱って画面がちらちらしているのに、なぜ先生 が注意しないのか。集中力が途切れる。」とか、
学生間の問題も結構あります。それは教員が注 意すればいいのですが、それを注意するという ルールがないから注意していないわけです。そ ういうことがどんどん出てくるので、まずは学 生の現状を聞いてみることから始めます。学生 の思いはもっとグループワークがしたいとか、
その逆かもしれません。愛媛大学では、最近は その逆の傾向が強いですね。アクティブラーニ ングが多いので、「もっと先生の深い知識を紹 介してほしい」というようなことがかなり出て きます。
その現状をみたうえで、自分の授業をどう改 善していこうかというようなことで、先ほどお 話 ししたように、「ドラマティックにどうやっ ていけばいいのか」とか、私達は「自分の教室 は我が家だと思ってください」ということを話 したりしています。自分の家にお客さんが来る ときに、家のドアを勝手に開けといて、好き勝 手に出入りさせますか、と。お客さんが来ると なれば、家で待っていて玄関まで迎えに行っ て、「ようこそいらっしゃいました」、帰るとき には「また 来 てくださいね」とやりませんか どお話ししたように、数名の方がガツンと突き
刺 すようなコメントを 書 いても、95%が「OK と言っているならいいじゃないか」という形で 捉えるようにしているので、我々が数字で使う のはそこだけです。だから 内 容 がどこまで 悪 かったかというのは自分でもっと考えるように と若手のスタッフたちにも言います。例えば、
合わせて60%の満足度で、「とてもよかった」
が30%しかなかったら、「よく 考 えてごらん、
自分でビデオを見てみて、もし必要だったら僕 らと一緒に見よう」と、そういうことで本質的 な質の改善に入っていくようにしています。
6 .基礎的な授業改善のための FD 事例
ここからはおまけですが、授業改善が必要に なってきて、授業コンサルを受けて、何がいい かがわかっても、やり方がわからない人がたく さんいます。愛媛大学や SPOD では、今年で いくと、199もの FD が展開されていると思い ます。四国のどこかで199回行われています。
多分そのうち 3 分の 1 は愛媛大学で行われてい ると思いますので、自分に合うプログラムを見 つけられるようになっています。毎年 4 月の下 旬に、 1 年間の四国中の FD が「どこで」「い つ」「何を」行うのかというのを、到達目標ま で全部まとめて配布しています。これは四国中 のみんなで、「 1 年前にスケジュールを決めよ う」と決めたからです。そうしないと先生方の 時間が埋まってしまうので、先に日程を抑えて もらおうということで 1 年 前 にすべてのメ ニューを決めるようにしています。
6 - 1 .より良い授業を行うためのクラスルー ム・コントロール
その中の 1 つ、私がよく呼ばれるのはクラス のコントロールです。「居眠りさせない」「私語 をさせない」「モチベーションを 上 げるために どうすればいいか」ということを、授業改善の コメントをもらったのだから、「次 はどうすれ