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性的マイノリティの人権

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Academic year: 2021

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(1)

1 ねらい

  教職員が性的マイノリティを正しく理解するとともに、その支援について考える。

2 進め方

 (1) ワーク 1 について

   チェックリストを使って、自分の言動に差別や偏見がなかったかをふりかえる。

 (2) ワーク 2 について

① 性的マイノリティについて正しく理解するために<資料>を読む。(進行役が資料の説明 を行う。)

② 自分のセクシュアリティを、性の 3 つの指標(「体の性」「心の性」「性的指向」)に沿っ て考えていくことで、その人固有のセクシュアリティがあることを実感する。

 (3) ワーク 3 について

 自分が担任する生徒から性同一性障害であることをカミングアウト(※「3 解説(3)」参照)

されたら、担任として、また、学校全体としてどのようなことに取り組まなければならないか を考える。さらに、学校の環境面、制度面などで課題になることを考え、解決策や手立てにつ いてグループで話し合う。

 (4) ワーク 4 について

   セクシュアリティについて考えたこと、気づいたことをふりかえり、グループで話し合う。

3 解説

 性的マイノリティであることに悩む子どもたちが孤立して「自分はおかしいに違いない。」と 思い詰めたり、差別やいじめにあったりするようなことは避けなくてはなりません。悩みや迷い にすぐに結論が出ないとしても、毎日安心した生活を送ることができる雰囲気と場づくりが求め られています。そのためには、自分と他者との違いを認め、互いを尊重し合いながら、一人ひと りの尊厳が損なわれることのないような人権教育のあり方を探っていくことが必要です。

 (1) ワーク 1 について

 チェックリストをチェックすることで、自分の言動に差別や偏見がなかったかをじっくりと ふりかえります。

 「異性愛があたり前。」「世の中には異性愛しかない。」という趣旨の発言をしないように配慮 することや、「女性的な男子」「男性的な女子」を「矯正」しようとしない姿勢が必要です。

 セクシュアリティのあり方は多様であるという認識に立ち、個々のセクシュアリティのあり 方を尊重する態度で、子どもたちと日々接してください。

 (2) ワーク 2 について

 自分自身のセクシュアリティを考えることで、他人の多様性を認め、相手の立場を想像し、

思いやることにつながる気づきを促します。

5

性的マイノリティの人権

性的マイノリティについて考える

(2)

教 職 員 用 人間一人ひとりの人格に不可欠な要素である。セクシュアリティがじゅうぶんに発達するため

には、ふれあうことへの欲求、親密さ、情緒的表現、喜び、優しさ、愛など、人間にとって基 本的なニーズが満たされる必要がある。セクシュアリティは、個人と社会構造の相互作用をと おして築かれる。セクシュアリティの完全なる発達は、個人の、対人関係の、そして社会生活 上の幸福に必要不可欠なものである。」と定義されています。わたしたち、そして子どもたちは、

学校・家庭・地域の中で、様々な人たちとつながりながら生きており、セクシュアリティに関 することも、他者との関係性の中で築かれていきます。そのことが人の幸福と密接にかかわっ てくることを、人権尊重の立場からも認識する必要があります。

 (3) ワーク 3 について

 「カミングアウト」とは、性的マイノリティの活動の中で生まれた言葉です。自分の性指向 をいえずにいる状態を押入れ(クローゼット)にいる状態と見なして、そこから出てくること を「Coming out of the closet」といい、これを短縮して「カミングアウト」というようになり ました。性的マイノリティの多くは、自分がどういう人間であるかを家族や友人など身近な人 にさえ伝えることができない状態に陥っています。そして、1 人で殻に閉じこもり、自傷や自 殺に駆り立てられる人たちも多いのです。そういったことを防ぐ意味でも、彼らが自らのセク シュアリティに気づく思春期に正しい情報を得られ、身近に相談できる人がいるようにするこ とは非常に大切なことです。

 ワーク 3 は、自分のクラスの生徒が性同一性障害であることをカミングアウトしてきたら、

どのような対応をとるかを広い視点をもって考えるワークです。

 本人への支援はもちろんのこと、まわりの生徒に対する支援、保護者に対する支援、外部機 関との連携などをどのように行っていくのか、学校全体で共通理解をどのように図っていくか など、具体的なイメージをもつことが必要です。

 また、学校の環境面(トイレ、更衣室、座席など)や制度面(制服、健康診断、行事など)

の課題をどのように改善していくかは、当事者が安心して学校生活を送っていくうえでとても 大切な視点となります。

 (4) ワーク 4 について

 ワーク 1 ~ 3 をとおして、考えたこと、気づいたことは、多様なセクシュアリティを認め、

互いを尊重し合う視点につながります。

 性的マイノリティであることに悩み、自己否定にさいなまれている児童・生徒が必ずいると いう前提に立って、日ごろから配慮できること、環境づくりなどを意識していくことが重要で す。

<参考資料など>

・「親と教師のためのセクシュアル・マイノリティ入門ハンドブック」

 “ 共生社会をつくる ” セクシュアル・マイノリティ支援全国ネットワーク(平成 23 年)

・「人権学習ワークシート集(下)」岡山県教育庁人権・同和教育課(平成 21 年)

・「人権学習シリーズ vol.8 わたしを生きる―アイデンティティと尊厳―」

 大阪府府民文化部人権室(平成 24 年)

・「平成 24 年度全県人権教育研究校発表会 講義資料」早稲田大学公認学生団体 Re:Bit(平成 24 年)

・「GID 児童・生徒の現状と対応」(平成 24 年度全県人権教育研究校発表会 講演資料)

 早稲田大学公認学生団体 Re:Bit(平成 24 年)

(3)

 次のような言動をしたことはありませんか。あてはまるものにチェックをし てみましょう。また、チェックを終えて、感じたこと、思ったことを書き、グルー プで話し合ってみましょう。

 □ 児童・生徒に対し、「女らしく/男らしくしなさい。」「あなたは、女/男みたいだね。」など の発言をしたことがある。

 □ 児童・生徒に対し、「彼氏/彼女はいるの。」「そんなんじゃ、男/女にモテないぞ。」などの 発言をしたことがある。

 □ 女子児童・生徒をさんづけ、男子児童・生徒をくんづけで呼んでいる。

 □ 言動が女性的な男子児童・生徒に対して、「ゲイ/ホモ/オカマか。」などのように、茶化し たことがある。

 □ 歴史上の人物を例にあげ、「この人、ホモ/レズなんだよ。」とネタにするなど、授業におい てセクシュアリティを茶化したことがある。

 □ 異性間の性愛を『普通』と捉え、同性間の性愛をないものとして扱ったことがある。

 □ 「男なら我慢できるだろう。」「女なら家庭科はできなければ。」など、男/女のあり方を決め つけるような発言をしたことがある。

 <感じたこと、思ったこと>

1 性的マイノリティについて正しく理解するために、<資料>を読んでみましょう。

2 自分のセクシュアリティ(人間の性にかかわるすべてのことがら)を考えるために、性の 3 つ の指標に、心の中で○をつけてみましょう。書いたり、話し合ったりする必要はありません。

        【性の 3 つの指標】

ワーク 1

ワーク 2

性的マイノリティについて考える

性的指向

あなたは3つの指標のどこに○をつ けましたか。

そこに○をつけたのはなぜですか。

心の中でふりかえってみましょう。

2 -⑤

(4)

教 職 員 用  次の文章は平成16 年度女子フェンシング日本代表であった杉山文野さんが、

性同一性障害であることをカミングアウトした『ダブルハッピネス』から抜粋し たものです。

Q  杉山さんは、結局、自分が性同一性障害であることをカミングアウトしました。もしも杉山 さんが自分のクラスの生徒で、このことを担任であるあなたにカミングアウトしてきたら、どの ような対応をしますか。

  「担任として対応すること」、「学校全体で対応すること」に分けて考え、グループで話し合っ てみましょう。

Q  カミングアウトした杉山さんが安心して学校生活を送るために、学校の環境面、制度面など で課題になることは何ですか。また、その課題に対する解決策や手立てを考え、グループで話し 合ってみましょう。

 ワーク 1 ~ 3 を終えて、セクシュアリティについて考えたこと、気づいたこ とをふりかえり、グループで話し合ってみましょう。

ワーク 3

ワーク 4

 誰にも打ち明けられない悩みをかかえたまま、僕は中学生になった。胸も少しずつ膨らみ 始め、それまで感じていた心と体の「違和感」は、確信に変わっていく。自分に対する激し い「嫌悪感」を持つようになったのもこの頃である。

 小学校までは目白の校舎で家からも近く、学校に行けばすぐに体操服に着替えることがで きたのでまだよかったが、中学から校舎が神奈川県の生田に変わった。新宿から小田急線で 約 40 分電車に乗って、読売ランド前駅から校舎まで約 15 分歩くのだ。その間ずっと僕は他 人の視線を気にしていた。誰も僕のことなんて見ていないのはわかっている。それでも誰か にセーラー服姿を笑われているような気がしてならなかった。学ランを着ている他校の男子 生徒を見るたびに、「僕もあれを着ているはずなのに…」と思ったものだ。

 朝家を出てから帰宅するまで「女装」を強いられることになった僕は、片時も苦しさから 解放されることがなかった。授業中はもちろん、休み時間も弁当の時間も放課後のひと時も…。

 杉山文野 著『ダブルハッピネス』(講談社)より

担任として対応すること

課題

学校全体で対応すること

解決策・手立て

(5)

◆性的マイノリティと性の 3 つの指標について

 性的マイノリティとは、性分化疾患、トランスジェンダー(性別移行(性同一性障害を含む))、

同性愛者、両性愛者などの性的少数者のことです。

 性の 3 つの指標は、「体の性」「心の性」「性的指向」(どんな性に魅力を感じるか)という 3 つの観点で、自分の性についての認識を深めるとともに、自分なりの性的指向をとらえるもので す。

 次に性的マイノリティの分類ごとにその概要と「性の3つの指標」との関係を述べます。

●性分化疾患(DSD)Disorders of Sex Development

 外性器・内性器・内分泌系・性染色体など身体的な特徴が、男女に判別しづらい人の状態です。

医療的対応が必要な場合もあります。当事者が知らない・知らされていない場合も少なくありま せん。「インターセックス(半陰陽)」「性発達障害」「性分化障害」ともいわれてきましたが、平 成 21 年に日本小児内分泌学会は総称を「性分化疾患」と統一しました。性分化疾患の人が「体の性」

に○をつけるなら真ん中あたりですが、だからといって次の「心の性」も真ん中に○をつけると は限りません。当事者は、自分のことを「女性」あるいは「男性」とゆるぎない自覚をもってい る場合がほとんどです。

●性同一性障害(GID) Gender Identity Disorder

 医学的な診断名で、身体的な性別に不快感、違和感などをもち、体をかえ、反対の性で生きる ことを強く望みます。性同一性障害の診断を受けた人は、本人の希望があれば性転換手術などを 受けることができます。なお、特定の要件を満たす人は、戸籍の性別を変更することが可能です。  

 また、持病があるなどの健康的理由、高額な医療費が負担できないなどの経済的な理由から性 転換手術などをしたくてもできない当事者もいます。

資 料

体 体

体 体

心 心

心 心

性的指向 性的指向

女 女

女 女

男 男

男 男

*体は男だけれど女として生きたくて、女

<例 1:体は男性で、異性愛者>

<例 1 >

<例 2:体は男性で、同性愛者>

<例 2 >

*体は男だけれど女として生きたくて、女

(6)

教 職 員 用

●トランスジェンダー(TG) Transgender

 「体の性」と「心の性」が異なる人たちの総称。性同一性障害(GID)もトランスジェンダーですが、

トランスジェンダーのほうがより広い概念です。

 望む性別で、常時生活する人もいるし、プライベートな時間や職業的な場面に限定する人もい ます。また、体と心の性別に違和感・不一致感をもつ人を総称する言葉として使われることも少 なくありません。

 トランスジェンダーの人が○をつけるなら、「体の性」と「心の性」は違う場所につけること になります。典型的なのは、一方の端と逆の端に○をつけるパターン(FtM(Female to Male)、

MtF(Male to Female))ですが、現実にはもっと多様な当事者がいます。例えば、FtX(Female to X)、MtX (Male to X)といって、女性/男性として生まれ、どちらでもない性別として生きる・

生きたい人などです。

●同性愛

 平成 2 年、WHO(世界保健機関)の精神疾患リストから同性愛が外されました。つまり、同 性愛は病気ではありません。同性愛は「女として(女のまま)女が好き =レズビアン(女性同 性愛者)」・「男として(男のまま)男が好き =ゲイ(男性同性愛者)」ということです。例えば、

男が好きだからといって女になりたいわけではありません。よく性同一性障害と間違えられます が、全く違うものです。指標で示してみると理解しやすいと思います。

 ゲイ(男性同性愛者)の場合は「心の性」が男に○。「性的指向」も男に○。男として、男が好き、

ということです。一方、性同一性障害(体は男)の場合、「体の性」は男に○。「心の性」は女に

○。「性的指向」は人によって○の場所が違います。女に○の人もいれば、男に○の人もいれば、

男女両方に○の人もいます。

 同性愛というのは「心の性」と「性的指向」の場所が同じ人のことです。好きになる対象の問 題です。性同一性障害は「体の性」と「心の性」の○の位置が違う人のことです。心と体の不一 致の問題です。ですから、性同一性障害で、かつ、同性愛者ということもあります。

心 体

心 体

性的指向 心

性的指向 心

女 女

女 女

男 男

男 男

<男性同性愛者>

< F t M の典型例>

< F t X の一例>

<女性同性愛者>

< M t F の典型例>

< M t X の一例>

(7)

●両性愛(バイセクシュアル)

 恋愛の要件に相手の性別が第 1 とならない(優先順位が低い)こと。

 例えば、女か男かということより背が高いかどうかの方が、恋人を選ぶ場合の優先順位が高い、

ということです。また、相手の性別にこだわらないということは、性的指向が女や男に限らず、

そのどちらでもない人や、どちらでもある人も対象となる場合も多い、ということでもあります。

 3 つの指標の中では「性的指向」だけに関係があり、その人自身の「体の性」や「心の性」が どこに位置しているかは関係ありません。

●Aセクシュアル(無性愛)

 同性にも異性にも恋愛感情を抱かないこと。「アセクシュアル」、あるいは、「エイセクシュアル」

と読みます。

 3 つの指標の中では「性的指向」だけに関係があり、その人自身の「体の性」や「心の性」が どこに位置しているかは関係ありません。

◆性的マイノリティについて考えることが必要な理由とは?

●日本のゲイ / バイセクシュアル男性の現状

*自殺を考えたことがある人  → 65.9% ※1(異性愛者の約 6 倍※2

*自殺未遂をしたことがある人 → 14.0% ※3

 (主に中学~高校時が自殺率、自殺企図率の第 1 ピーク)

*自傷行為、うつ病などの精神疾患の割合が高い。

●性的マイノリティが抱える悩み

*家族や友だちとの人間関係構築の難しさ

*将来への不安(進路、結婚、就職など)

*自尊心の低下

●性的マイノリティを理解することで…

*いじめや差別の防止

*当事者の孤立感・疎外感の軽減、自尊感情の高揚

*他者を尊重する心の育成

*安心して生活できる環境の整備

※ 1・3 出典:Hidaka Y, Operario D(2006)

Attempted suicide, psychological health and exposure to harassment among Japanese homosexual, bisexual or other men questioning their sexual orientation recruited via the Internet.

Journal of Epidemiology and Community Health, 60, 962 - 967

※2出典:Hidaka Y, Operario D, Takenaka M, Omori S, Ichikawa S and Shirasaka T(2008)

Attempted suicide and associated risk factors among youth in urban Japan.

S o c i a l P s y c h i a t r y a n d P s y c h i a t r i c Epidemiology, 43, 752 - 757

性的指向

性的指向

性的指向 女

女 男

どこにも○がつかない。

<例 1 > <例 2 >

参照

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