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(1)

BAG MODEL を用いた重いハドロンの 質量スペクトル

田中賢基

2018/2/16

(2)

概要

最近になって相次いで発見されているエキゾチックハドロンとは、クオーク モデルからは予想されていなかったクオーク4つ以上で構成されている粒子 であり、重いクオーク

(c,b)

と軽いクオーク

(u,d,s)

どちらも含むもので多く 発見されている。重いクオークをカラーソースとみて、重いクオークと軽い クオークを含むハドロンの質量スペクトルより、重いクオークと軽いクオー クが絡んだ時の軽いクオークのダイナミクスを見ることができる。このよう な目的からバッグモデルを用いて重いハドロンについて研究行った。バッグ モデルは低エネルギーの核子を記述するモデルとして導入され、現在ではハ ドロンを記述するモデルとして用いられている。QCDでは高エネルギーで 摂動的真空が実現し、低エネルギーでは非摂動的真空が実現すると考えられ る。摂動的真空ではクオークは自由に運動し、またカイラル対称性も破れな い。一方、非摂動的真空ではクオークは強く束縛し、カイラル対称性が自発的 に破れている。ハドロンの中では摂動的真空、外では非摂動的真空として扱 い、このエネルギーの違う真空の相の境界を表現するためにハドロンをバッ

(袋)

で表現したのがバッグモデルである。本研究では、バッグモデルに おいて、クオークの運動エネルギー、クオーク間のスピン相互作用、カシミ アエネルギー、バッグエネルギーをもとに重いハドロンの質量スペクトルを 計算した。バッグの中の真空を非摂動的真空に扱っているので、バッグの中 ではカイラル対称性が自発的に破れず、バッグの中のクオークの質量はカレ ントクオークの質量であるはずである。しかし、重いクオークを一つ含むハ ドロン

(Λ c、Σ c、Ξ c、Ω c

など)の質量差を、摂動計算によるクオーク間 のスピン相互作用で説明しようとしたところ、ストレンジクオークの質量が

200MeV

付近で実験をうまく再現したが、カレントクオークの質量

(96MeV)

では実験を再現できなかった。

MIT

バッグモデルでストレンジクオークの質 量が

200MeV

とカレントクオークの質量

96MeV

より倍以上も大きくなって いることを解決するために、

MIT

バッグモデルの拡張である

CLOUDY

バッ グモデルについても計算を行った。MITバッグモデルでは軽いクオークのカ イラル対称性がバッグの表面で破れている。バッグの表面でのカイラル対称 性を回復させるために、バッグの表面でパイオンとクオークのダイナミクス を表現し、カイラル対称性を満たすカイラル場を

MIT

バッグモデルに導入し

たものが

CLOUDY

バッグモデルである。このモデルでは、重いクオークと

軽いクオークが絡んだ時の軽いクオークのダイナミクスにおけるメソンの役 割を明らかにすることができる。今回はクオークとメソンによる相互作用を 摂動として計算したところ

MIT

バッグモデルから導かれたストレンジクオー クの質量を下げるような結果になった。

(3)

目 次

概要

1

1

導入

3

1.1

ハドロンと

QCD

真空

. . . . 3 1.2

カイラル対称性の自発的破れ

. . . . 3 1.3

本論文の構成

. . . . 4

2 BAG MODEL 5

2.1 BAG

とは

. . . . 5 2.2

バッグの安定性

. . . . 5

3 MIT BAG MODEL 7

4 CLOUDY BAG MODEL 11

5

一つの重いクオークを含むハドロンの具体的な計算

15

6

数値計算

20

7

まとめ

25

A

付録

(MIT,CLOUDY BAG MODEL

を用いた

Σ c

12

c

32

c c

12

c

32

,Ω c

12

,Ω c

32 の計算結果)

26

参考文献

33

(4)

1 導入

1.1

ハドロンと

QCD

真空

ハドロンとはクオークとグルーオンの複合粒子であり、強い相互作用で相 互作用する粒子の総称である。クオークとグルーオンの運動はカラーを自由 度とする

QCD

によって記述されていて、ハドロンの運動と強い相互作用の 第一原理は

QCD

によって記述されている。カラーとは電磁気学での電荷に 相当するもので、カラーを持つクオークとグルーオンはそのカラーによって 相互作用する。QCDは低エネルギー領域では結合定数が大きく、エネルギー が高くなるにつれて小さくなる。高エネルギー(短距離)では結合係数が小 さくなりクオークとグルーオンはほとんど相互作用せずに自由に運動するの で、QCDに摂動論が扱える。このように

QCD

に摂動論が機能する真空は 摂動的真空と呼ばれる。また、低エネルギー(遠距離)では結合係数が大き くなりクオークとグルーオンは強く相互作用し、QCDに摂動論が扱えない。

QCD

に摂動論が適用できない真空は非摂動的真空と呼ばれる。低エネルギー

QCD

で起こる非摂動的な真空では、カラーの閉じ込めが起こり、クオー クとグルーオンがカラー的に中性なカラー白色の状態を作る。低エネルギー

QCD

で起こるクオークとグルーオンが強く結合して作るカラー白色の状 態がハドロンである。ハドロンは低エネルギーな

QCD

から導き出される状 態であるが、QCDは複雑で解くのが難しくハドロンの構造も複雑である。ハ ドロンには種類があり、フェルミオンであるバリオンと、ボソンであるメソ ンがある。クオークモデルに従えばバリオンはクオーク3つで出来ていて、

メソンはクオークと反クオークで出来ている。最近4つのクオークと1つの 反クオークで出来ているフェルミオンや2つのクオーク、反クオーク対で出 来ているボソンも発見されていて、これらの4つ以上のクオークで出来てい るハドロンはエキゾチックハドロンと呼ばれる。

1.2

カイラル対称性の自発的破れ

QCD

の第一原理計算である格子

QCD

から

u,d

クオークの質量は数

MeV

であることが知られており、

QCD

の典型的なエネルギースケールの

200MeV

に比べてはるかに小さい。このため

u,d

クオークの質量を近似的にゼロに取 ることができる。QCD

u,d

クオークだけを考え質量をゼロに取るとカイ ラル対称性を満たす。しかし、ハドロンの質量スペクトルからはこの対称性 から導かれる質量スペクトルの縮退が見えない。これはカイラル対称性が自 発的に破れているからである。自発的対称性の破れは非摂動的な現象なので、

低エネルギーの

QCD

ではカイラル対称性が自発的に破れている。一方、高 エネルギーの

QCD

はカイラル対称性が自発的に破れず、カイラル対称性を 満たしている。

(5)

1.3

本論文の構成

本論文ではまず、ハドロンのモデルであるバッグモデルについて説明し、

次にそのバッグモデルの中で最も単純な

MIT BAG MODEL

について説明し た。

MIT BAG MODEL

ではカイラル対称性を満たさないので、カイラル対称 性を満たすように改良した

CHIRAL BAG MODEL

の一つである

CLOUDY BAG MODEL

について説明した。この二つの

MIT BAG MODEL、 CLOUDY BAG MODEL

を用いて重いクオークを一つ含むハドロン

(Λ c、Σ c、Ξ c、

Ω

c)

の質量を計算した。この二つのモデルを比較することで、カイラル対称 性の影響を見た。

(6)

2 BAG MODEL

2.1 BAG

とは

バッグモデルは低エネルギーの核子を記述するモデルとして導入され、現 在はハドロンを記述するモデルとして用いられている。QCDでは高エネル ギーで摂動的真空が実現すると期待され、低エネルギーでは非摂動的真空が 実現する。このことから、このモデルではハドロンの中を摂動的真空、外を 非摂動的真空として扱う。このエネルギーによって違う真空の境界を表現す るのがバッグ

(袋)

であり、そのバッグ

(袋)

の中にクオークを入れることで ハドロンを表現するのがバッグモデルである。バッグの中が摂動的、外が非 摂動的な真空で、その二つの真空を分ける境界がバッグの表面である。バッ グの中の摂動的な真空ではクオークがほとんど相互作用しないで運動してい る。なので、このモデルでは近似としてバッグの中のクオークを自由粒子と して扱う。

2.2

バッグの安定性

バッグの中は摂動的真空で、外は非摂動的真空である。バッグの中と外で の真空の構造が違うので、エネルギーも異なる。低エネルギーな

QCD

で実 現する非摂動的真空よりも高エネルギーな

QCD

で実現する摂動的真空の方 がエネルギーが高い。バッグを作るのは非摂動的真空にエネルギーを与えて 摂動的真空の穴を開けることに相当する。バッグの中の方が外よりもエネル ギーが高いので、エネルギー的に得になるようにバッグの外の非摂動的真空 はバッグの中の摂動的真空を押しつぶそうとする。反対にバッグの中のクオー クは自由に運動しているのでバッグを外側に押す。不確定性関係によりバッ グの領域を狭められるとクオークのエネルギーは高くなり外側への圧力が高 くなる。中と外の単位体積あたりのエネルギーの差

(

非摂動的真空に摂動的

(7)

真空の穴を開けるための単位体積あたりのエネルギー)

B

としてバッグの 中にクオークを入れた場合バッグの大まかなエネルギー

E hadron

E hadron = a R + 4π

3 R 3 B

ここで

R

はバッグの半径、第1項は

(

不確定性関係

p x 1

からくる

)

オークの相対論的運動エネルギーである。この

E hadron

R

で安定するのは

∂E

bag

∂R = 0

が成り立つ時であり、この時の

R

でバッグの中と外の圧力が釣り 合う。このようにしてエネルギー

E hadron

とバッグ

(ハドロン)

の大きさであ る半径

R

が求まる。

(8)

3 MIT BAG MODEL

MIT

バッグモデルのラグランジアンを書くと、

L M IT = ( i

2 ψ ¯

µ γ µ ψ B m ψψ ¯ )

θ(r ¯ R) 1 2

ψψδ(r ¯ R). (1)

ここで、

A

µ B [A∂ µ B (∂ µ A)B], θ(r ¯ R) =

{

1 (r R) 0 (r R) , δ(r R) =

{ (r = R) 0 (r ̸ = R) ,

−∞

dx δ(x) = 1.

m i

はクオークの質量、

B

はバッグエネルギー、Rはバッグ半径、ψはクオーク の場の演算子である。ラグランジアン

L M IT

から得られる基底状態のクオー クの波動関数は

ψ i (⃗ x, t) = N(χ i )

 

( ω

i

+m

i

ω

i

) 1/2

ij 0i r/R)

(

ω

i

mi ω

i

) 1/2

σ i · xj ˆ 1i r/R)

  e

i

t (2)

ˆ x x

r , r = | x |

N(χ i )

は規格化定数、

j i

は球ベッセル関数、

ω i

はクオークのエネルギー、

χ i

はバッグの境界条件から求まる定数でありそれぞれ書き下すと

N(χ i ) =

{ ω ii m i )

R 3 j 0 2i )[2ω ii 1/R) + m i /R]

}

12

j n (x) ( x) n ( 1

x d dx

) n

sin x x

ω i = ω(m i , R)

[ χ 2 i + (m i R) 2 ] 1/2

R (3)

tan χ i = χ i

1 m i R 2 i + (m i R) 2 ] 1/2

(4)

(4)

χ i

に関する方程式は、(2)について境界条件

i⃗ γ · ˆ i = ψ i (5)

から求まる。

上式は、(1)のラグランジアンを

Euler-Lagrange

方程式を用いて求めること

(9)

ができる、バッグ表面でのクオークの運動方程式である。

Euler-Lagrange

方程式

L M IT

ψ ¯ i µ

L M IT

∂(∂ µ ψ ¯ i ) = 0

より、左辺第1項は

L M IT

ψ ¯ i

= ( i

2 µ γ µ ψ i iθ(r R) 1

2 ψ i δ(r R),

第2項は

µ

L M IT

∂(∂ µ ψ ¯ i ) = i 2

{ γ µ (∂ µ ψ iθ(r R) + γ µ ψ i µ θ(r ¯ R) }

= i 2

{

γ µ (∂ µ ψ iθ(r R) + γ · ˆ i δ(r R) }

である。これより

(5)

が求まる。ここでは

γ µ µ θ(r ¯ R) = (γ 0 ∂r

∂x 0 , γ 1 ∂r

∂x 1 , · · · , γ 3 ∂r

∂x 3 ) × θ(r ¯ R)

∂r

= (0, γ 1 x 1

r , · · · , γ 3 x 3

r ) × {− δ(r R) }

= γ · xδ(r ˆ R)

を使った。

この波動関数をもとにバッグの中にクオークが入ることでつくられるハドロ ンのエネルギー

E hadron

を摂動的に求める。E

hadron

を各成分に分けて書き 下すと

E hadoron = E quark + E E + E M + E 0 + E bag (6) E quark , E E , E M , E 0 , E bag

はそれぞれ、クオークのエネルギー,カラー電気エ ネルギー,カラー磁気エネルギー,ゼロポイント

(カシミヤ)

エネルギー,バッ グエネルギーである。(3)

ω i

がクオークのエネルギーなので

E quark = ∑

i

ω i (7)

である。またカラー電気、磁気エネルギーはカラー電場、磁気を用いて古典 的に

E E = 1 2 g 2

a

i,j

bag

d 3 x ⃗ E i a · E j a , (8) E ˆ M = g 2

a

i,j

bag

d 3 x ⃗ B i a · B j a , (9)

g 2 = 4πα (10)

(10)

となり、

E a i , ⃗ B a i

はそれぞれ、i番目のクオークがバッグの中で運動すること によって作られるカラー電場

,

磁場である。

E E

E E = 4α 3 1

R (11)

となる。αはパラメーターである。

B i a

∇× B i a = j i a , (12)

∇· B i a = 0, (13)

ˆ x ×

i

B i a = 0 at r = R, (14)

を満たす。

カレント

j i

(2)

のクオークの波動関数を使うと

j i ψ ¯ i γψ i

= 2

N 2i x × σ i j 0 (χ i r/R)j 1 (χ i r/R)

となるので、磁気モーメントは

µ(m i , R)

bag

d 3 x 1 2

ˆ x × j i

=

bag

d 3 x 1 2

ˆ

x × ( ¯ ψ i γψ i )

= N 2i ) 4π

bag

d 3 x(⃗ x × σ i ) × x j ˆ 0 (χ i r/R)j 1 (χ i r/R)

= N 2i ) 4π

bag

d 3 x { σ i r x( ˆ σ i · x) } j 0 (χ i r/R)j 1 (χ i r/R)

= 2

3 N 2i ) σ i

R 0

drr 3 j 0i r/R)j 1i r/R) (15)

と計算される。ここでは、バッグは球対称なので

bag

d 3 x x i x j = 4πδ ij

R 0

dr r 4 3

を使った。磁化密度を

µ

i

と書くとバッグの中の質量

m i

を持つクオークが作 る磁気モーメント

µ(m i , R)

は以下のようにも書ける。

µ(m i , R) =

R 0

dr µ i (r ).

(15)

を見ると

µ i (r) = 2

3 N 2i )r 3 j 0i r/R)j 1i r/R) (16)

(11)

とわかる。

j i a

j i a ψ ¯ i γλ a i ψ i

= 2

N 2i x × σ i λ a i j 0 (χ i r/R)j 1 (χ i r/R)

なので、(16)

µ i

を使うと、

j i a = 3 4π

ˆ

x × σ i λ a i µ i (r)

r 3 (17)

となる。(12)(13)(14)を満たす

B i a

(17)

を使うと、

B i a (⃗ x) = λ a i σ i

4π (

2M i (r) + µ(m i , R)

R 3 µ(m i , r) r 3

) + 3λ a i

ˆ

x( σ i · x) ˆ µ(m i , r) r 3

(18)

となることがわかる。ここで

M i (r)

M i (r)

R r

dr µ i (r ) r 3

である。この

(18)

B i a

(20)

に代入すると

E ˆ M = 3α ∑

a

i<j

(⃗ σ i λ a i ) · ( σ j λ a j ) µ(m i , R)µ(m j , R)

R 3 I(m i , m j , R) (19) E M = B | E ˆ M | B (20)

となる。この

(19)

がクオーク間のスピン構造によるエネルギー差を生じさせ る。ここで、

B |

はバリオン

B

のスピンアイソスピン波動関数、I(m

i , m j , R)

I(m i , m j , R) = 1 + 2R 3 µ(m i , R)µ(m j , R)

R 0

dr µ(m i , R)µ(m j , R) r 4

である。ゼロポイントエネルギー、バッグエネルギーはそれぞれ

E 0 = Z 0

R (21)

E bag = 4π

3 R 3 B (22)

となる。

Z 0

はパラメーターである。

(12)

4 CLOUDY BAG MODEL

CHIRAL BAG MODEL

とは

MIT BAG MODEL

ではバッグの表面で破 れていた軽いクオークのカイラル対称性を回復させたモデルの総称である。

左巻きクオーク、右巻きクオークをそれぞれ

ψ LR

と書き、それぞれ

ψ L 1 γ 5

2 ψ

P L ψ

ψ R 1 + γ 5 2 ψ

P R ψ

と定義する。すると

ψ L + ψ R = ψ γ 5 ψ L = ψ L

γ 5 ψ R = ψ R

となる。この

ψ

がこのように

ψ L , ψ R

に分けられ、その

ψ L , ψ R

に対して独立 なフレーバー変換

ψ L exp(iϵ a L λ a

2 )ψ L L (23)

ψ R exp(iϵ a R λ a

2 )ψ R R (24)

を考える。このように左巻きクオーク、右巻きクオークを独立にフレイバー 変換をすることはカイラル変換と呼ばれる。

ψψ ¯

ψγ ¯ µ ψ

についてカイラル変換を考える。まず

ψψ ¯

ψψ ¯ = ¯ ψ L ψ L + ¯ ψ L ψ R + ¯ ψ R ψ L + ¯ ψ R ψ R

と書ける。第1、4項は

ψ ¯ L ψ L = (P L ψ) γ 0 P L ψ = ψ γ 0 P R P L ψ = 0

となる

(同様に ψ ¯ R ψ R = 0)。ここでは

γ 5 γ µ = γ µ γ 5 γ 5 = γ 5

を使った。結局、

ψψ ¯ = ¯ ψ L ψ R + ¯ ψ R ψ L (25)

(13)

となる。上式をカイラル変換すると

ψψ ¯ ψ ¯ L L R + ¯ ψ R R L ̸ = ¯ ψψ (26)

となり、

ψψ ¯

はカイラル対称性を満たさない。

次に

ψγ ¯ µ ψ

ψγ ¯ µ ψ = ¯ ψ L γ µ ψ L + ¯ ψ L γ µ ψ R + ¯ ψ R γ µ ψ L + ¯ ψ R γ µ ψ R

と書ける。第2、3項は

ψ ¯ L γ µ ψ R = (P L ψ) γ 0 γ µ P R ψ = ψ γ 0 γ µ P L P R ψ = 0

となる

(同様に ψ ¯ R γ µ ψ L =0)。結局、

ψγ ¯ µ ψ = ¯ ψ L γ µ ψ L + ¯ ψ R γ µ ψ R (27)

となる。上式をカイラル変換すると

ψγ ¯ µ ψ ψ ¯ L L µ ψ L + ¯ ψ R R µ ψ R = ¯ ψ L γ µ ψ L + ¯ ψ R γ µ ψ R

= ¯ ψγ µ ψ (28)

となり、

ψγ ¯ µ ψ

はカイラル対称性を満たす。(1)

m i = 0

としてクオーク場

ψ

に対してカイラル変換をしてみると、(26)(28)より、第1項の

2 i ψ ¯

µ γ µ ψ

はカイラル対称性を満たし、第2項の

1 2 ψψδ(r ¯ R)

がカイラル対称性を 破っている。

δ(r R)

はバッグ表面

(r=R)

でのみ

0

でないので、

MIT BAG

MODEL

ではバッグ表面でカイラル対称性が破れている。

バッグの表面で破れていたクオークの対称性を満たすためにバッグの表面で クオークとメソンの結合を考える。つまり

(1)

でカイラル対称性を破ってい

ψψδ(r ¯ R)

ψψδ(r ¯ R) ψ ¯ exp(i λ a ϕ a f ϕ

a

γ 5 )ψδ(r R) (29)

に置き換える。ここで

f ϕ

aはメソン

ϕ a

の崩壊定数で、λ

a ϕ a

SU(3)

のメソ ン8重項であり、

λ a ϕ a =

 

π 0 + 1

3 η

+ 2K +

π 0 + 1 3 η

2K 0

2K

2 ¯ K 0 2 3 η

 

である。

(29)

exp(iλ a ϕ a γ 5 /f ϕ

a

)

はカイラル場

U = exp(i λ a ϕ a

f ϕ )

(14)

を使って、

exp(i λ a ϕ a f ϕ

a

γ 5 ) = 1 + γ 5

2 U + 1 γ 5 2 U

と書ける。これを使うと、(29)

ψ ¯ exp(i λ a ϕ a f ϕ

a

γ 5 )ψ = ¯ ψ 1 + γ 5

2 U ψ + ¯ ψ 1 γ 5

2 U ψ

= ψ γ 0 1 + γ 5

2 U 1 + γ 5

2 ψ + ψ γ 0 1 γ 5

2 U 1 γ 5

2 ψ

= ψ 1 γ 5

2 γ 0 U 1 + γ 5

2 ψ + ψ 1 + γ 5

2 γ 0 U 1 γ 5

2 ψ

= ¯ ψ L U ψ R + ¯ ψ R U ψ L (30)

と書ける。このカイラル場のカイラル変換は

U (x) LU (x)R

のように変換されるので、(29)のカイラル変換は

(30)

を使うと

ψ ¯ exp(i λ a ϕ a

f ϕ

a

γ 5 )ψ ψ ¯ L L LU R R + ¯ ψ R R RU L L

= ¯ ψ exp(i λ a ϕ a f ϕ

a

γ 5 )ψ

となりカイラル対称性を満たす。これよりカイラル対称性を満たすバッグモ デルである、

CHIRAL BAG MODEL

のラグランジアンは

L CHIRAL = ( i

2 ψ ¯

µ γ µ ψ B m ψψ ¯ )

θ(r ¯ R)

1 2

ψ ¯ exp(i λ a ϕ a f ϕ

a

γ 5 )ψδ(r R) + 1

2 (∂ µ ϕ a ) 2 1

2 m 2 ϕ

a

a ) 2 (31)

となる。また、このラグランジアンの

exp(iλ a ϕ a γ 5 /f ϕ

a

)

を以下のように展 開し、

exp(i λ a ϕ a f ϕ

a

γ 5 ) = 1 + 1 1!

( i λ a ϕ a

f ϕ

a

γ 5

) + 1

2!

( i λ a ϕ a

f ϕ

a

γ 5

) 2

+ · · ·

第2項までを残すと、

L CLOU DY = ( i

2 ψ ¯

µ γ µ ψ B m ψψ ¯ )

θ(r ¯ R)

1 2

ψ ¯ {

1 + (

i λ a ϕ a f ϕ

a

γ 5

)}

ψδ(r R) + 1

2 (∂ µ ϕ a ) 2 1

2 m 2 ϕ

a

a ) 2

(32)

(15)

となる。これが

CLOUDY BAG MODEL

のラグランジアンである。このモ デルではクオークとメソンの結合を摂動として扱うので、クオークとメソン の波動関数は相互作用がない時のものを使う。具体的には、クオークの波動 関数は

(2)

、メソンの波動関数は平面波を使う。

CLOUDY BAG MODEL

の、あるバリオン

B

の質量を

M B

と書くと以下のようになる。

M B = M B (0) + M B (2) . (33)

上式、右辺第1項は

MIT BAG MODELで計算する質量で、第2項が CLOUDY

BAG MODEL

で計算する質量の2次の補正項である。第2項を書き下すと、

M B (2) = ∑

a,k

B | H int | ˜ a k ⟩ ⟨ ˜ a k | H int | B M B (0) ω ϕ

ak

M (0) ˜

B

(34)

となり、

B | H int | ˜ a k

は次のようになる。

B | H int | ˜ a k

= i 2f

√ 1 2ω ϕ

ak

d 3 x e i⃗ k · x δ(r R) B |

∑ 3 i=1

ψ ¯ i (⃗ x, t)γ 5 λ a i ψ i (⃗ x, t) | B ˜

= i 2f

√ 1 2ω ϕ

a

k

N 2i ) √

ω i 2 m 2 i 4πω i

× 2i B |

∑ 3 i=1

λ a i

d 3 x e i⃗ k · x δ(r R) σ i · ˆ xj 0 (χ i r/R)j 1 (χ i r/R) | B ˜

= i 2f

√ 1 2ω ϕ

ak

2(ω i m i ) √

i 2 m 2 i )j 1 (kR) [2ω ii 1/R) + m i /R]kR B |

∑ 3 i=1

λ a i σ i · k | B ˜ . (35)

ここで

ω ϕ

ak

=

k 2 + m 2 ϕ

aである。

上式では

e i⃗ k · x = e ikr cos θ =

(2ℓ + 1)i j (kr)P (cos θ),

P (x) = 1 2 n n!

d n

dx n [(x 2 1) n ], P ( x) = ( 1) P (x),

∫ 1

1

dxP m P n = 2

2n + 1 δ mn

を使った。

(16)

5 一つの重いクオークを含むハドロンの具体的な計 算

この章では

MIT BAG MODEL

CLOUDY BAG MODEL

で一つの重い クオークを含むバリオンの質量を計算する。

まず

MIT BAG MODEL

でエネルギーは以下のようになる。

E M IT H = E l + E h + E E + E M + E 0 + E bag . (36) E l , E h

はそれぞれ軽いクオーク

(u,d,s

クオーク)、重いクオーク

(c,b

クオー

)

のエネルギーで、

E E , E M , E 0 , E BAG

(6)

と同じである。

(6)

E quark

E l + E h

と分けて書かれているのは

E l

は相対論的に扱い、E

h

は非相対論 的に扱うからである。1つ目と2つ目のクオークを軽いクオークとして、3 つ目を重いクオークとすると、

E l

E quark

と同様に

E l = ∑

i=1,2

ω i = ∑

i=1,2

[ χ 2 i + (m i R) 2 ] 1/2

R (37)

となる。また、重いクオークの運動量

p h

は重心系で考えると、

p h = p l

i=1,2 χ

i

R

となり、E

h

E h = ∑

i=1,2

χ 2 i

2m 3 R 2 + m 3 , m 3 = m h (38)

となる。上式第1項は運動エネルギーで第2項は質量である。(36)

(37) (38) (11) (20) (21) (22)

を代入すると

E M IT H = ∑

i=1,2

{[ χ 2 i + (m i R) 2 ] 1/2

R + χ 2 i

2m 3 R 2 + m 3

}

4α 3 1

R

3α ∑

a

i<j

B | ( σ i λ a i ) · ( σ j λ a j ) | B µ(m i , R)µ(m j , R)

R 3 I(m i , m j , R)

Z 0

R + 4π

3 R 3 B. (39)

一つの重いクオークを含むバリオンの質量である

E M IT H

が求まったので、

実際の具体的な粒子に適用してみる。今回は8つのバリオンについて計算 した。8つのバリオンは

Λ c

、Σ

c (2455)、Σ c (2520)、Ξ c

、Ξ

c

、Ξ

c (2645)、Ω c

c (2770)

で、アイソスピンパリティI(J

P )

はそれぞれ

0( 1 2 + )、 1( 1 2 + )、 1( 3 2 + )、

1

2 ( 1 2 + )、 1 2 ( 1 2 + )、0( 1 2 + )、0( 3 2 + )、0( 1 2 + )

である。以下

Σ c (2455)、Σ c (2520)、

Ξ c

、Ξ

c (2645)、Ω c

、Ω

c (2770)

をそれぞれ

Σ c

12、Σ

c

32、Ξ

c

12、Ξ

c

32、Ω

c

12、Ω

c

32 と表 記する。計算で使う8つのバリオンのスピンフレーバー波動関数はこの量子

(17)

数を満たすように作られ、以下のようになった。

| Λ c ↑⟩ = 1

2 { (u d ↓ − u d ) (d u ↓ − d u ) } c , (40)

| Σ

1 2

+ c ↑⟩ =

√ 2 3

√ 1

2 (u d + d u )c

√ 1 3 1

2 (u d + u d + d u + d u )c , (41)

| Σ

3 2

+ c ↑⟩ =

√ 1 3

√ 1

2 (u d + d u )c +

√ 2 3 1

2 (u d + u d + d u + d u )c , (42)

| Ξ + c ↑⟩ = 1

2 { (u s ↓ − u s ) (s u ↓ − s u ) } c , (43)

| Ξ c

12

+ ↑⟩ =

√ 2 3

√ 1

2 (u s + s u )c

√ 1 3 1

2 (u s + u s + s u + s u )c , (44)

| Ξ c

32

+ ↑⟩ =

√ 1 3

√ 1

2 (u s + s u )c +

√ 2 3 1

2 (u s + u s + s u + s u )c , (45)

|c

12

0 ↑⟩ =

√ 2

3 s s c ↓ −

√ 1 3

√ 1

2 (s s + s s )c , (46)

|

3 2

0 c ↑⟩ =

√ 1

3 s s c +

√ 2 3

√ 1

2 (s s + s s )c . (47)

例として

Λ c

について求めてみる。

u,d

クオークの質量を

0

とする

(m u,d = 0)

とすると、

(37)

また、(4)

m i = 0

の条件で解くと

χ i = 2.04

となるので

E lc ) = 2.04 × 2 R , E hc ) = 2.04 2 × 2

2m c R 2 + m c .

ここで

m c

はチャームクオークの質量である。

次に、E

M

の中の

a

i<j B | (⃗ σ i λ a i ) · ( σ j λ a j ) | B

| B

| Λ c ↑⟩

に置き換 えたものを計算する。

(40)

を使うと

Λ c ↑| σ 1 · σ 2 | Λ c ↑⟩ = 3,

Λ c ↑| σ 2 · σ 3 | Λ c ↑⟩ = Λ c ↑| σ 1 · σ 3 | Λ c ↑⟩ = 0.

(18)

またバリオンでは

Λ c ↑|

a

λ a i λ a j | Λ c ↑⟩ = 8 3

である。よって

E Mc ) = 24α µ(0, R)µ(0, R)

R 3 I(0, 0, R).

まとめると、

E M IT Hc ) = 2.04 × 2

R + 2.04 2 × 2

2m c R 2 + m c 4α 3 1

R

24α µ(0, R)µ(0, R)

R 3 I(0, 0, R) Z 0

R + 4π

3 R 3 B (48)

となる。

次に上で

MIT BAG MODEL

を用いて計算した

E M IT Hc )

CLOUDY

BAG MODEL

に拡張することで求めることができる、質量の2次の補正を

計算する。(33)を使うと、

M Λ

c

= M Λ (0)

c

+ M Λ (2)

c

.

ここで

M Λ (0)

c

= E M IT Hc )

である。(34)

M Λ (2)

c

= ∑

a,k

Λ c ↑| H int | Λ ˜ c ϕ a k ⟩ ⟨ Λ ˜ c ϕ a k | H int | Λ c ↑⟩

M Λ (0)

c

ω ϕ

a

k

M (0) ˜

Λ

c

となり、これは

(35)

から計算できる。上式で

Λ c ↑| H int | Λ ˜ c ϕ a k = 0

ではな

| Λ ˜ c ϕ a k

Λ c , ϕ a k

組み合わせは

| Σ c

12

π k , | Σ c

32

π k , | Ξ c

12

K k , | Ξ c

32

K k

である。つ まり、

M Λ (2)

c

= ∑

k

 

 

Λ c ↑| H int | Σ c

12

π k ⟩ ⟨ Σ c

12

π k | H int | Λ c ↑⟩

M Λ (0)

c

ω π

k

M (0)

Σ

12 c

+ Λ c ↑| H int | Σ

3

c

2

π k ⟩ ⟨ Σ

3

c

2

π k | H int | Λ c ↑⟩

M Λ (0)

c

ω π

k

M (0)

Σ

3 c2

+ Λ c ↑| H int | Ξ

1

c

2

K k ⟩ ⟨ Ξ

1

c

2

K k | H int | Λ c ↑⟩

M Λ (0)

c

ω K

k

M (0)

Ξ

1 c2

+ Λ c ↑| H int | Ξ c

32

K k ⟩ ⟨ Ξ c

32

K k | H int | Λ c ↑⟩

M Λ (0)

c

ω K

k

M (0)

Ξ

3 c2

 

 

(19)

である。例として

Λ c ↑| H int | Σ c

12

π k

を計算する。(35)をもとにすると

Λ c ↑| H int | Σ

1 2

+

c π 0 k = i 2f π

1 2ω π

k

ω i j 1 (kR)

i 1/R)kR Λ c ↑|

i=1,2

λ 3 i σ i · k | Σ

1 2

+ c ↑⟩ .

(49) Σ

1 2

+

c

のスピン上のスピンフレーバー波動関数

| Σ

1 2

+ c ↑⟩ =

√ 2 3

√ 1

2 (u d + d u )c

√ 1 3 1

2 (u d + u d + d u + d u )c

k = (0, 0, k)

とすると

i=1,2

λ 3 i σ i 3 k | Σ c

12

+ ↑⟩ =

√ 1

3 (u d ↓ − u d ↑ − d u + d u )c k.

上式を使うと、

Λ c ↑|

i=1,2

λ 3 i σ 3 i k | Σ

1 2

+

c ↑⟩ = 2

3 k.

よって

Λ c ↑| H int | Σ

1 2

+

c π 0 k = i 2f π

1 2ω π

k

ω i j 1 (kR) (ω i 1/R)kR

(

2

3 k )

.

同様に

Λ c ↑| H int | Σ

1 2

++

c π k , Λ c ↑| H int | Σ

1 2

0

c π + k

| Σ c

12

++ ↑⟩ =

√ 2

3 u u c ↓ −

√ 1 3

√ 1

2 (u u + u u )c ,

| Σ

1 2

0 c ↑⟩ =

√ 2

3 d d c ↓ −

√ 1 3

√ 1

2 (d d + d d )c .

を使うと

Λ c ↑|

i=1,2

2 i σ i 3 k | Σ

1 2

++

c ↑⟩ = 2

3 k,

Λ c ↑|

i=1,2

2 i σ i 3 k | Σ

1 2

0

c ↑⟩ = 2

3 k.

よって

k

Λ c ↑| H int | Σ

1

c

2

π k ⟩ ⟨ Σ

1

c

2

π k | H int | Λ c ↑⟩

M Λ (0)

c

ω π

k

M (0)

Σ

1 c2

= ∑

k

( 2 3 ) 2 × 3 2ω π

k

4f π 2

ω i 2 j 2 1 (kR) (ω i 1/R) 2 (kR) 2

k 2 M Λ (0)

c

ω π

k

M (0)

Σ

12 c

.

表 1: MIT バッグ (α = 0.62, Z 0 = − 0.48, m s = 96MeV)) バリオン Exp.(MeV) Cal.(MeV) 差 (Cal. - Exp.)
表 2: MIT バッグ (α = 0.55, Z 0 = − 0.12, m s = 198MeV) バリオン Exp.(MeV) Cal.(MeV) 差 (Cal. - Exp.)
図 4: MIT バッグ (α = 0.55, Z 0 = − 0.12, m s = 198MeV) 表2のように MIT バッグモデルでストレンジクオークの質量をパラメー ターにすると実験値をよく再現する結果が得られた。 MIT バッグモデルではバッグの中が摂動的真空であると仮定しているので、 バッグの中のクオークの質量はカレントクオーク質量のはずである。しかし 得られたのは、バッグの中のストレンジクオークがカレントクオーク質量の 約2倍の値である。この矛盾を解決するために CLOUDY バックモデルに
図 5: CLOUDY バッグ (α = 68, Z 0 = − 0.82, m s = 179MeV) 図 6: CLOUDY バッグ (α = 68, Z 0 = − 0.82, m s = 179MeV) 表2と3を見比べると CLOUDY バッグモデルで得られた m s は MIT バッ グモデルに比べて小さくなった。このことは期待していたようにバッグ表面 でクオークを結合するメソンはクオークの質量を下げるはたらきがあること がわかった。

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