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小麦フスマ高含有ビスケットの排便状況に及ぼす影 響

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(1)

小麦フスマ高含有ビスケットの排便状況に及ぼす影

著者名(日) 金子  誠治, 松岡  翼, 中川  裕子, 中尾  玲子

雑誌名 山梨学院短期大学研究紀要

巻 31

ページ 1‑6

発行年 2011

URL http://id.nii.ac.jp/1188/00000083/

(2)

1.緒言

日本人の食物繊維摂取量は2 0歳以上で1日当り 平均1 4. 9g であり

1)

,その摂取不足が生活習慣病 の発病に関連するという報告から,1 8歳以上の男 女の1日の食事摂取基準をそ れ ぞ れ1 9及 び1 7g 以上と定めている

2)

。食物繊維の生体へ及ぼす影 響として血糖値の低下作用

3)

,血清コレステロー ル価の低下作用

4)

,便通改善効果

5)

などが報告され ている。

小麦フスマは小麦の製粉時に約3 0%発生する副 産物である。小麦玄穀に含まれる食物繊維量は約 1 1%で,そのほとんどがフスマに含まれているも のの,その食味や加工適性などから食品への利用 は少なく,現状では主に飼料などに使用されてい る。しかし,フスマなどの穀粒の外皮は食物繊維 の簡便な供給源として考えられており,アメリカ 人のための食生活指針2 0 0 5年版では子供たちの食

事に3品以上の全粒の穀物を利用した食事を与え ることを推奨し,積極的に摂取されている

6)

。小 麦フスマに含まれる食物繊維の特徴は不溶性食物 繊維が非常に多く含まれていることにあり,排便 習慣の改善に効果が認められることなどが報告さ れている

7)

。今回,筆者らは微粉に調整した小麦 フスマを主原料とした,食味,食感及び加工適性 を改善した食物繊維高含有のビスケットを作製し た。そこで,2 0歳前後の女子学生を被験者とし,

このビスケットの整腸作用,即ち排便回数や排便 量などに及ぼす影響を調査した。

2.実験方法

1)被験者の選定及び調査時期

2 0 1 0年1 1月に,Y 短期大学の女子学生を対象に 調査の主旨及び内容を説明し,便秘の自覚症状が あり,調査の同意が得られた4 0名を調査対象とし た。2 0 1 0年1 1月下旬から1 2月中旬までの間に調査

小麦フスマ高含有ビスケットの 排便状況に及ぼす影響

Effect of the high wheat bran biscuit on defecation habit

金 子 誠 治

*1

,松 岡 翼

*1

,中 川 裕 子,仲 尾 玲 子

*2

Seiji KANEKO, Tsubasa MATSUOKA, Yuko NAKAGAWA, Reiko NAKAO

小麦フスマ高含有のビスケットの排便改善効果を検討した。小麦フスマ高含有ビスケットを 2 0歳前後の女子学生3 8名に1日当たり4 2g(食物繊維量で7. 5g)摂食させ,排便状況に及ぼ す影響について検討した。試験方法は摂食期間前の1週間から排便状況に関するアンケートを 毎日記入させ,被験食は2週間摂取させた。小麦フスマ高含有ビスケットの小麦フスマ配合量 は4 7%,食物繊維含量1 7. 8%であった。その結果,排便日数,排便量共に摂食1週目から有意 に 上 昇 し(P<0. 0 5) ,2週 目 に は 排 便 量 が 摂 食 期 間 前1週 間 の2倍 以 上 に な っ た(P<

0. 0 1) 。層別解析を行った結果,排便日数は摂食1週目から有意に上昇し(P<0. 0 1) ,排便量 も摂食2週目には事前と比べて有意差を認めた(P<0. 0 1) 。

一般論文

*1 株式会社はくばく研究開発センター,山梨県南巨摩郡 富士川町青柳町3492

*2 山梨学院大学健康栄養学部

(3)

を実施した。調査協力を求める際に,対象学生に 対し,被験食を食べてもらい,調査の内容ならび に個人情報の保護について,また,調査開始後で あっても,任意で調査を取りやめることができる ことを充分に説明し,同意を得た上で実施した。

2)試験日程及び食事管理

調査は全3週間行い,第1週は被験食を食べず に記録日誌の記述のみを行った。2週目及び3週 目は1日の中で被験食を食べて記録日誌の記述を 行った。被験食は1日に1パック,時間及び食べ 方については自由に摂取してもらった。試験期間 中には便秘薬の使用を控えるよう指導し,必要な 場合には被験者の判断で使用し,その旨をアン ケート用紙に記入してもらった。また,食物繊維 を強化した食品の摂取(サプリメント・特定保健 用食品など)を避けてもらった。

3)被験食

被験食として,1食あたり4 7%の小麦外皮を配 合したビスケットを作製した。すなわち,1パッ ク4 2g あたりで7g 以上の食物繊維が得られるよ うに配合を行った。本被験食は小麦外皮,マーガ リン,小麦粉,上白糖,加工でん粉,膨張剤及び 香料で構成され,ロータリーモルダーでビスケッ ト1枚 あ た り3. 5g と な る よ う に 成 形 し た(写 真) 。こ の ビ ス ケ ッ ト1 2本 を1日 分 と し 包 装 し た。被験食の栄養成分組成を表1に示した。被験 食は微生物検査を行い,異味異臭,異物混入がな いことを確認した上で試験を実施した。

4)調査項目

試験内容は中嶋ら

5)

の方法を参考に以下の通り に一部変更して調査した。調査内容は排便日数,

排便量,食事摂取の有無,被験食の摂食時間及び 腹部などの体調の変化をアンケート形式で毎日記 載させた。排便は1週間あたりの合計日数で解析 し た。排 便 量 は 鶏 卵 M サ イ ズ の 大 き さ を 目 安 に,卵の個数として目視で測定させ1週間あたり で解析した。体調などの変化については,各項目 で自覚症状が認められた場合に記録用紙に丸をつ ける形で被験者に記録してもらった。記録項目は 排便後の爽快感,便の軟化,お腹が鳴る,腹部の

膨満感,放屁の増加,ゲップの増加,腹痛,食欲 不振,吐き気,生理中の自覚症状がある場合に記 録を行った。

5)解析対象者及び統計解析方法

1 3 7名の女子学生に試験の協力依頼をし,有効 回答の5 2. 7%に当たる6 9名が便秘の自覚症状を 持っていた。本調査は便秘の自覚症状を持ってい る6 9名の中から試験協力に同意をした学生4 0名と した。また,事前の1週間の排便日数が4日以下 だった被験者を便秘傾向の高い被験者とし,層別 解析を行った。試験結果は平均値と標準偏差を算 出した。統計解析には Statcel 2を 用 い た。測 定 値の差異については,Tukey-Kramer 法により多 重比較検定を行い,有意水準を5%以下とし,有

表1 小麦フスマ高含有ビスケットの栄養成分組成

栄養成分 可食部100g 当たり 1食42g 当たり エネルギー 512kcal 215kcal たんぱく質 9.5g 4.0g 脂質 23.4g 9.8g 炭水化物 64.0g 26.9g 食物繊維 17.8g 7.5g

写真 小麦フスマ高含有ビスケット 小麦フスマ高含有ビスケットの排便状況に及ぼす影響

2

(4)

排便の日数(日/週)

意 差 が 認 め ら れ た 場 合 に は

P

<0. 0 5(*) ,P < 0. 0 1(**)と示した。ただし,次の事項に該当す る被験者は統計解析の対象から除外することとし た。即ち,試験期間中の試験食摂食率が7 5%以 下,便秘薬を週3回以上服用,その他,試験担当 者が合理的理由により不適当と判断した場合とし た。

3.結果

1)被験者

本試験に参加した4 0名のうち便秘薬を常用的に 使用していた1名,摂取期間2週間で5日以上食

べることができなかった1名の計2名のデータを 解析対象から除外し,残りの3 8名のデータをもっ て有効性(有効回答率9 5%)を評価した。

2)排便日数及び排便量

排便日数及び排便量について被験食摂取前1週 間と摂食1週目及び摂食2週目の結果を図1及び 表2に示した。排便日数,排便量は共に摂食1週 目から有意に上昇し(P <0. 0 5) ,2週目には排 便量が事前の2倍以上になり,非常に大きな変化 を示した(P <0. 0 1) 。また層別解析結果を行っ た結果,排便日数は摂食1週目から有意に上昇し

表2 小麦フスマ高含有ビスケット摂取による被験者38名の排便状況及び腸管への影響 単位1) 事前1週間 摂食1週目 摂食2週目 排便日数 日/週 4.16±1.48b 5.05±1.27a 5.16±1.76a 排便量 個(卵)/週 5.52±4.04b 9.57±6.56a 11.45±8.58a スッキリした ○の数/週 0.7±1.42b 1.9±1.98a 2.5±2.43a 便が柔らかくなった ○の数/週 0.6±1.14b 2.1±2.08a 2.9±1.76a お腹が鳴る ○の数/週 1.0±1.65 1.1±1.94 1.3±1.76 腹部に膨満感 ○の数/週 1.7±2.30 2.0±2.38 1.4±2.28 放屁増加 ○の数/週 0.4±1.02b 1.4±2.01ab 1.7±2.46a ゲップの増加 ○の数/週 0.1±0.55 0.1±0.38 0.2±0.72 1)1週間あたりの排便日数,鶏卵 M サイズに換算した排便量,調査票に記入した○の数を

表す。

平均値±標準偏差(n=38)で表示。

異なるアルファベット間に Tukey-Kramer 法による有意な差がある(P<0.05)。

図1 小麦フスマ高含有ビスケット摂取による被験者38名の排便日数及び鶏卵 M サイズに換算した排便量の 変化.(*P<0.05,**P<0.01,Tukey-Kramer 法)

(5)

排便の日数(日/週)

(P <0. 0 1) ,排 便 量 も 有 意 差 は な か っ た も の の,平均値が摂食期間前1週間と比べて2倍以上 になり,摂食2週目には摂食期間前と比べて

P

<0. 0 1の有意差が認められた(図2,表3) 。

3)体調などの変化

体調などの変化については,1週当りの丸の数 として表2及び表3に示した。被験者に比較的多 く見られた症状としては「排便後に爽快感があっ た」 「便が柔らかくなった」などであり,被験者 3 8名の自覚症状がある場合に記録した丸の数は事

前の1週に対して,摂食1週目,2週目共に有意 に 増 加 し た(P <0. 0 5) 。ま た, 「お 腹 が 鳴 る」

「放屁の増加」なども摂食1週目,2週目と週毎 に増加する傾向が見られたが, 「腹部の膨満感」

は摂食1週目に増加し,2週目には元に戻った。

試験期間中,一部の被験者に風邪が原因と考えら れる体調不良や風邪薬等の服用が認められたが,

いずれも短期間であり,考慮はしなかった。

4.考察

今回の試験の結果,便秘の自覚症状がある被験

表3 小麦フスマ高含有ビスケット摂取による事前1週間の排便日数が週4日以下だった24名

の排便状況及び腸管への影響

単位1) 事前1週間 摂食1週目 摂食2週目 排便日数 日/週 3.25±0.90b 4.67±1.20a 5.00±1.47a 排便量 個(卵)/週 4.51±4.13b 9.38±7.48ab 11.79±9.91a スッキリした ○の数/週 0.46±0.93b 1.54±1.91ab 2.38±2.46a 便が柔らかくなった ○の数/週 0.29±0.62b 1.92±1.63 2.63±1.47a お腹が鳴る ○の数/週 0.88±1.54 0.96±1.63 1.00±1.47 腹部に膨満感 ○の数/週 1.50±2.17 1.88±2.44 1.29±2.18 放屁増加 ○の数/週 0.46±1.14 0.96±1.83 1.54±2.48 ゲップの増加 ○の数/週 0.13±0.61 0.04±0.20 0.17±0.82 1)1週間あたりの排便日数,鶏卵 M サイズに換算した排便量,調査票に記入した○の数を

表す。

平均値±標準偏差(n=24)で表示。

異なるアルファベット間に Tukey-Kramer 法による有意な差がある(P<0.05)。

図2 小麦フスマ高含有ビスケット摂取による事前1週間の排便日数が週4日以下だった24名の排便日数及び 鶏卵 M サイズに換算した排便量の変化(**P<0.01,Tukey-Kramer 法)

小麦フスマ高含有ビスケットの排便状況に及ぼす影響 4

(6)

者3 8名に対して,小麦フスマを使用した被験食が 排便状況改善に効果があることが示され,その効 果は被験食摂食1週目から有意に排便日数及び排 便量の増加が認められた(P <0. 0 5) 。また,試 験を行うに当り,より明確に排便状況の改善が確 認できるよう,排便日数が4日以下だった被験者 の対象に層別解析を行った結果,排便日数及び排 便量については,有意水準が

P

<0. 0 1となり,

より強く排便状況の変化が認められたが,排便量 については摂食後1週目で排便量の有意な増加が 認められなかった。この結果から,層別解析の有 無に関わらず,便秘の自覚症状がある被験者に対 しては被験食の摂食による排便状況の改善が期待 できるものと考えられた。

これまでにも排便状況の改善を目的とした食品 の開発は多く進められており,整腸作用を謳った 特定保健用食品も多く存在する。食物繊維の高付 加食品としては難消化性デキストリンを添加した 飲料などの報告例がある

8,9)

。また,排便状況改善 の食品として乳酸菌飲料やヨーグルトなども一般 的であるが,ビフィズス菌及び乳酸菌を配合した カプセルの摂食による,排便状況改善報告もあ る

0)

。本被験食はこれらの素材と同様に排便状況 の改善効果が期待できる食品と考えられる。難消 化性デキストリンなどの水溶性食物繊維やビフィ ズス菌,乳酸菌などの腸内細菌叢による整腸効果 は腸内発酵で生成される短鎖脂肪酸が増加し,そ の作用によって腸の蠕動運動を盛んにすることに より排便を促進させていると考えられる

1)

。一 方,小麦フスマに含まれる食物繊維はほとんどが 不溶性食物繊維であるため,保水性などの物理的 性質により,便の水分量を増加させ,便を柔らか くし,便量を増すことが報告されている

2)

。本試 験においても同様に小麦フスマの物理的性質によ り,摂食後1週間の短期間で排便状況の改善が見 られたのではないかと推測している。

平成2 1年国民健康・栄養調査によると2 0代,3 0 代女性の1日当りの食物繊維摂取量は平均1 1. 8及 び1 1. 4g であった

1)

。本被験食の食物繊維含量は 約7g であり,本被験食4 2g を摂食することによ り1日当りの食物繊維量が約1 9g となることが 推測され,厚生労働省の推奨する目標量1 7g 以 上が摂取できる

2)

。このことから,本被験食の摂

食により容易に不足分の食物繊維を摂取でき,さ らに1週間以上継続摂食することで,排便状況の 改善が期待できる。また本被験食は小麦フスマの 粉砕粒度を微細に調整したことで,食味,食感及 び加工適性を改善した。小麦フスマの栄養素,特 に食物繊維量については,認知は増えているもの の,機能性だけではなく,食味,食感の改善をし なければ,継続的に摂取することができず,結果 として,その機能性を体感することもできない。

微粉に調製した小麦フスマを使用した本被験食は 1週間の継続摂取により,2 0歳前後の便秘女性の 排便状況を改善することが期待される。

参考文献

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27

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小麦フスマ高含有ビスケットの排便状況に及ぼす影響 6

参照

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