• 検索結果がありません。

A of in A of

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "A of in A of"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

文化芸術事業実習の試行的取 り組みについての報告 一 アジア ンワール ド0イ ン・ グランシップの事例一

A report. on trial of a course in practice of the management of art and culture

:

A case of "Asian World in Granship"

西 Junko KoNISHI

(平成 14年10月 7日受理)

は じめに

博物館法施行規則では、学芸員資格の科 目の うち

3単

位分が博物館実習にあて られている。静岡大 学教育学部では、それを2単 位分および1単位分の実習授業科 目を組み合わせ ることにより、取得可能 に している。平成 13年度 まで、前者 については社会教育実習

Iお

よびⅡと美術史調査実習が、後者 に つ いては博物館実習

Iお

よびⅡと楽器博物館実習

Iお

よびⅡが科 日として立て られていた。平成 14 年度 においては、これまで

1〜

2名 程度であった芸術文化課程音楽文化専攻および学校教育教員養成課 程教科教育学専攻音楽教育専修、その他か ら、学生計 13名 が学芸員資格を希望 した。 これを受 けて、

音楽教育講座 として急邊

2単

位分の実習を設 け、受入先を探す必要が生 じた。

音楽 を専攻する学生が将来学芸員にな ったときに高 く要求 されることのひとつに、イヴェント運営 能力があげ られる。 もちろん、収蔵品の展示を主要な事業 とする博物館 において も、特別展覧会等の 計画・実施、普及活動、広報宣伝な どの事業 に際 して、イヴェント運営能力が問われる。 しか し、 「展 示物」 としての音楽の場合、来訪者 と同 じ時間を共有 しつつ生成 されるという性質を もつため、担 当 学芸員には、企画段階では予想 しなか った事態にも対処するだけの能力が求め られる。 この ことか ら、

対象者 には文化芸術事業の運営 に参加するかたちでの実習が望 ま しいと考えた。 また、昨今では博物 館、図書館、美術館など、展示主体の施設 において も音楽イヴェン トや音を使 った展示が盛んである。

そこで、音楽専攻生以外の希望者 にも同 じ機会を提供することに した。

受入先 として即座 に候補 と考え られたのは、

(財)静

岡県文化財団が運営 にあたる静岡県 コンベ ンシ

ョンアーツセ ンター

(愛

称 :グ ランシップ。以下、 グランシップと記す

)で

あった。地理的 に静岡大

学か ら近 いことは もちろん、文化芸術の交流を大 きな柱の 1つ とする施設であることが一番の理由で

あった。 こち ら側の主 旨を伝えた ところ、担当者か らは即座に快諾 され、その場で双方一致 により実

習対象イ ヴェン・ 卜が決定 された。それが、

2002年

8月

11日

か ら9月

1日

までの延べ 21日 間開催 され

た「 ア ジアンワール ド・ イ ン・ グランシップ」であった。本稿は、その実習計画 と成果の概要 につ い

て報告することにより、教育学部生 にとっての文化事業実習の有効性 と、今後の実施 に際 しての課題

について論ず るものである。

(2)

84 小 西 潤 子

1.グ

ランシップの概要 とインターンシップ制度

グランシップは、静岡県が建設費及び土地取得費におおよそ

705億

円をかけて建設 し、

1999年

3月 に開館 された総合的文化芸術施設である。その設置については、昭和

61(1986)年

度東静岡駅周辺整 備調査 に始 ま り、翌年の新都市拠点整備懇話会の提言を受 けて計画が進められた。地域 。国内外にお ける学術、経済、文化及 び芸術の多様な交流の促進 と、新たな文化の創造発信を行 うことを目的 とし、

(財)静

岡県文化財団が管理・ 運営・ 受託を行 っている。36,009耐 の敷地にそびえる建築面積 13,647 ぽの鉄骨鉄筋 コンク リー ト造および鉄骨造建物は、建築家・ 磯崎新の設計によるもので、文化の海を 航海する船を象 る。延べ床面積が60,630ポ の内部は、自然光を採光できる高 さ

58m天

丼か らな り最大 約 4,600人収容可能の多 目的大ホール「海」、木 目を生か し最大約 1,200人収容可能の曲線的 に配列 さ れた客席か らなる舞台公演向けの中ホール「大地」、最大

500人

収容可能で6カ 国語の同時通訳 ブース を備えた会議 ホール「風」、 ライヴ感あふれる設計による静岡芸術劇場のほか、楕円形の交流 ホール、

3室

で構成 され る展示 ギャラリー、最新の

AVを

装備 した映像 ホール、10人 か ら

400人

くらいまでの大 小 19室 の会議室などか ら構成 されている。 また、それを取 り囲んで設 けられた芝生 とイ ンターロッキ ングで仕上 げられた 14,531ぽ の屋外 スペース・ グランシップ広場は、大ホールと一体化 させての利用 が可能である。県内外か らのアクセスも確保 されてお り、

JR東

海道新幹線静岡駅か ら一駅 目の

JR東

海道線東静岡駅か ら徒歩 3分 であ り、

400台

の自動車が収容可能な 1時間 100円 の有料駐車場 も整備 さ れている。利用者の便を最大限図 って、開館時間は午前

9時

か ら午後 10時 まで、休館 日な しとな って いる。 これは、 「 気配 り」 「親切」 「柔軟 に」 という運営側のモ ッ トー

(財

団法人静岡県文化財団

ned。 )

とも連動する。

グランシップの来館者は、開館

3年

目におよそ

300万

人に達 した。利用率

(実

績 日数

/利

用可能 日 数

)は

、平成

H年

度が 62.0%、 平成 12年度が68.1%、 平成 13年度が

71.2%と

なっている。その う ちには、年間35〜

45本

(財)静

岡県文化財団の主催 による自主企画事業 も含まれている。運営事務 局 は、総務課 (9人

)、

企画制作課 (15人

)、

利用サー ビス課 (12人

)の

スタッフか ら構成 されてぃる。

また登録制のサポーター

(ボ

ランティア

)約

180人 が、平常業務、イベ ント業務、撮影業務、託児業 務 にあたっている。以上のようなハー ド

(建

)と

ソフ ト

(人)を

備えた国際的イヴェン トに も対応 で きる総合的な文化施設は、全国的に見て も トップクラスだといえる。

(財)静

岡県文化財団が今後の発展 に向けて、検討課題 としてあげていたことのひとつに、イ ンター ンシップ制度の導入があった。イ ンター ンシップとは、 「学生が在学中に自らの専攻、将来のキ ャリア に関連 した就業体験を行 う制度」であり、文部科学省、経済産業省、厚生労働省、各経済団体が積極 的 に推進 してお り、創造性や 自主性 な どを備えた人材の新たな育成 システムとして注 目されている

(関

東地域イ ンター ンシップ推進協議会

2002)。

イ ンター ンシップは、学生のみな らず大学、企業 にも

メ リッ トがある

(表1)。

今回の実習が受諾 され、双方の連携の もとでスムーズな体制づ くりが行えた

のは、たまたま受 け入れ先側の検討事項 とこちら側の要望が合致 したためで もあった。

(3)

イ ンター ンシ ップの メ リッ ト(関東地域 イ ンター ンシップ推進協議会 2002)

◇大学◇

(1)自主性、独創性のある人材教育ができる

(2)企

業が求める人材の用件が明確になる

(3)地

元産業や自治体とのコミュニケーションの効果

(4)理

論の実践による学習効果の向上

(5)産

業界 とのパイプづ くり

(6)産

業界ニーズ、カ リキュラムの向上

◇学生◇

(1)職

業意識の形成

(2)責

任感、自立 いの向上

(3)適

職の確認

(4)大

学での学習意欲の向上

(5)専

攻、学習分野での知識の向上

(6)企

業、社会からの評価の確認

◇企業◇

(1)人

材 との新 しい出会い

(2)企

業・職種に対する理解や知識を高められる

(3)より多様な学生を採用する為に企業・事業に対する理解を深められる

(4)斬

新なアイデアを吸収できる

(5)求

め られる人材の質の変化に対応できる

(6)社

内の活性化、意識改革のきっかけになる

2.ア

ジアンワール ド・ イ ン・ グランシップの概要 と特徴

アジア ンワール ド ・イ ン。グランシップは、グランシップ開館3周 年記念事業の一環 として行われた

(財)静

岡県文化財団の自主企画事業である。大 きな柱は、

(財)千

里文化財団

(大

阪府吹田市

)が

運 営す る国立民族博物館の所蔵品の受託展示であ り、

2002年

8月

H日

か ら9月

1日

までの延べ 21日 間 開催 された。展示内容 としてアジアに焦点があて られたのは、近年のアジアブームを受 けた ものであ る。書店等で もアジア関係の本が並ぶよ うになったが、 これまで県民が実際にアジアのモノに触れる 機会は限 られていた。 また、国際化社会 における文化交流を考える際に、まず近隣のアジア文化か ら 手がけることが考え られた。 さらに、企画段階ですでに同年 5月 31日 か ら

6月

30日 まで、サ ッカー・

ワール ドカ ップの韓国・ 日本同時開催が決定 されてお り、

20都

市の開催地の

1つ

に県内ノ

lヽ

笠山総合運 動公園内の静岡 スタジアム・ ェコパが含 まれていた ことか ら、県民のアジアヘの関心が高まると見越

された。

共催・受託者 とな った

(財)千

里文化財団は、1983年

H月 1日

大阪北部 の千里地域 に蓄積 された社 会的 0文 化的資源を活用 し、国際交流の場や世界的な文化・学術等 に接する機会を創出するとともに、

その成果を内外に普及する目的で設置 された。常動

54人

、研究員 6名 のスタッフを抱えてお り

(総

研究開発機構

2002)、

豊かな所蔵品を国立民族学博物館における常設

0特

設で展示するのみな らず、館

外での展示 も広 く行 ってきた。すなわち、全国各地での巡回ゼ ミナールや、近畿圏内で展示 。講演・販

売・体験を一体化 した通称「 みんぱ く移動博物館」を関西電力協賛の もとで行 ってきた実績である。 こ

の ノウハ ウを生か し、開催期間中の毎 日出演者入れ替えで行 う音楽や舞踊のコンサー ト、 ヮークショ

(4)

86 小 西 潤 子

ップなど、生の体験を取 り入れることが計画 された。一方、

(財)静

岡県文化財団は同年

3月 16日 (土)

か ら31日

(日)に

かけて、子 ども主役の遊んで学べるイヴェント 「 わんぱ く

2002」

の開催経験があっ た。 その際、静岡デザイ ン専門学校や染葉学園東海文化専門学校、ルネサ ンス・ アカデ ミーオブデザ イ ンの学生 との共同作業を行 っている。今回のイヴェントは、夏休み期間に開催することで、来館者 の多 くを小・ 中学生 に期待できることか ら、従来の資料展示のみならず「遊びなが ら学ぶ」場を提供 することが コンセプ トに取 り入れ られた。 しか し、両財団にとって、 これほど長期間開催する多様な 大規模 なイヴェン ト経験は、初めてであった。

(財)静

岡県文化財団は、平成 12年度 にこの企画を

(財)千

里文化財団に持 ちかけた。以来、両財団 各 2名 の主要担当者を中心に、定期的な打合せが もたれたほか、電話、ファックス、電子 メールなどを 使 って頻繁なや り取 りが行われ、実施 に向けて綿密な計画が立て られていった。そのなかで、問題 と な った ことの 1つ がイヴェン ト運営 にあたるスタッフ確保であった。既述のように、 グランシップに は登録サポーター

(ボ

ランティア

)が

約 180人 いる。 また国立民族学博物館には、全国に在住する「 み んぼ く友の会」会員がお り、その研究・博物館活動や、みんぱ くと民族学の普及への支援活動をお こ な っている。 しか し、展示内容 との兼ねあいによって、 このイヴェントに関 してはこれ らボランティ ア・ スタッフのみな らず、 アジア出身の留学生や在静外国人の協力は欠かせないと考え られた。 こう した ことか ら、静岡市国際交流協会に依頼 し、外国人 スタッフの確保が図 られた。結果 として、静岡 大学教育学部 の実習生は、両財団 スタッフ、異年齢か ら構成 される両財団所属のボランティア

0ス

タ ッフ、外国人 スタッフという多様な経験豊かな運営 メンバーとともに、実習に従事することになった。

両財団 にとって も、 こうした多様な人材 による事業運営は、テス トケースといえるものであ った。

イ ヴェン ト全体は、 アジアの衣 。食・ 住・ 音楽・芸能等の文化について展示、参加体験および関連 の講演等が、グランシップの展示ギャラリー

(写

1)、

交流 ホール、ホヮイエ、映像 ホールを使 って 行われた。

写真

展示ギ ャラ リー :ブ ータン

実習生 は、展示ギ ャラリーにおける衣装 と暮 らしに関する展示 とワークショップ、

る芸能や音楽 に関する展示 とワークショップ、 ステー ジ演奏に関わることにな り、

音楽を専攻す る学生であることか ら、後者 に重点がおかれた。

交流 ホールにおけ

とりわけ大部分が

(5)

展示 とワークショップは期間中常設であるが、ステー ジ演奏はモ ンゴル

(2グ

ループによる楽器 ア ン サ ンブル

)、

イ ン ド

(南

イ ン ド古典舞踊およびシタール演奏の

2種

)、

イ ン ドネシア

(ア

ンクル ン演奏 ワークショップ、影絵劇、現代舞踊、バ リ・ ガムランのワークショップ、 ジャヮ・ ガムランのワー ク ショップの

5グ

ループ、ネパール

(踊

)、

イラン

(サ

ン トゥール演奏

)、

日本

(草

笛、和太鼓の2種類

)、

韓国・ 北朝鮮

(サ

ムルノリと朝鮮舞踊の

2団

)、

中国 (2グ ループによる楽器演奏

)と

多種多様な内 容か らなって いた。 また、出演者の レヴェル も、 プロフェッショナルな演奏家か らアマチュアの留学 生 まで、入 り混 じっていた。 ステー ジの設営等 に関 しては

(財)静

岡県文化財団が行 い、出演者の選 定や演 目等 に関する交渉は、

(財)千

里文化財団および

(財)静

岡県文化財団の依頼を受 けた静岡市国 際交流協会が行 った。

3.実

習の準備

実習計画は、実習生の振 り分 けとイヴェント内容に関す る事前学習方法の策定か ら行 う必要があ っ た。実習生 13人 の うち、12人 の芸術文化課程ない し音楽教育専修の3年 生は、ア ジアの音楽 について これまで学んだ ことがなか った。む しろ、残 り

1名

の数学教育専修の4年生は、個人的に韓国留学体験 やアジア旅行体験があ り、問題がほとん どなか った。 ステー ジ演奏の運営業務 には、観客の導引や ス テー ジ内容に関する質問に答えることも含まれ る。 `

振 り分 けと事前学習 との両面を考慮 した上で、効 率的 に準備を進める必要が生 じた。

実習期間については、他の博物館での実習期間を考慮 して各自

6日

間を必須 としたほか、これ以外の 日に もボランテ ィアとして参加可能に した。実習 日の設定については、イヴェン ト期間中の 6日 間 に 絞込み、全員がその日に従事する方法 も考え られた。 しか し、身近なところで これほどの ヴァラエテ ィに富んだステー ジ公演が行われる機会は極めて希少であるし、実習生個々人が関心 の高 いイヴェン トを選択することによって、より成果を高めることが期待できる。 しか し、

6日

間の実習 日について文 化的に関連性の低 いステー ジを選択 した場合、事前学習の負担が増大 し、十分な成果が得 られない可 能性がある。以上をふまえて、当該の音楽・芸能の伝承 されている地域 とステー ジ開催 日を軸 に、 ス テー ジ内容を こちら側で8通 りにグルー ビングし、実習生各自に関心の高 いグループを選択 させ、ほぼ 均等数 の実習生が配備するよう調整を行 った。

これ と平行 して、事前学習用の一次資料作 り作業 に取 り組んだ。 ステージ内容は、各地域 の音楽芸 能 として日本で もよ く知 られているものであったが、知識のない学生 にとっては学習方法す らわか ら ないと考え られた。 とはいえ、実習中はスタッフとしての最低限の基礎知識が求め られる。 また、各 実習生 の知識 をある程度の基準以上 に してお く必要がある。時間割上組み込 まれていない実習科 目で あることか ら、全員を一時に集合 させ ることは極めて困難であった。そこで、

(財)静

岡県文化財団か ら受 け取 ったイベ ン ト題 目を頼 りに、入門的知識を

A3の

用紙一枚 にまとめた一次資料を作成すること に した。 また実習の注意事項を徹底 させ るために、担当教官である筆者 とそのゼ ミ生3人、筆者の研究 補助を している

2人

の学生 の協力 により、『実習の手引き』を作成することに した

1。

しか し、 こち らか ら資料提供するだけでは自主的な事前学習 とはいえない。 また、資料 に頼 ってい

ては、観客への説明を十分行える力がつかない。そこで、一次資料を各 自が

A4‑枚

に自分の言葉でま

とめなおす ことを事前学習の課題 とした。 このように、オ リジナルの情報を一元化す ることで、ある

程度知識の均衡を図 ったのである。 さらに、提出させた事前学習課題のなかか ら、イヴェン トごとに

1種類 を選択 し『実習の手引き』に綴 じこむ ことで、各人の実習対象以外の ものについて も知識を共有

させた。

(6)

88 小 西 潤 子

4.実

習の記録 と成果

以下は、実習終了後の

9月 18日

(財)静

岡県文化財団側の6名

2と

筆者で行 った実習反省会での報 告、および学生の実習 日誌、実習 レポー トを もとにまとめた ものである。実習は、まずイヴェント開 始前 日の8月

10日 (土)夕

方の事前説明会に参加することか ら始 まった。展示物のセ ッティングが完 了 した この場で、初 めて両財団スタッフ、実習生、ボランティアスタッフ等その他の運営 スタッフが 一同に会 し、展示会場の案内と接客に関する注意事項などが伝達 された。実習生は、見慣れない展示 物 に圧倒 され るところもあったが、財団 スタッフの説明には真貪

1に

聞 き入 っていた

(写

2)。

実習開始後の経緯 については、

(財)静

岡県文化財団スタッフが次のように報告 している。 まず、実 習開始当初は、実習生 には何を した らよいのか という不安や戸惑 いが見 られた。また、自ら仕事を見 つけられなか ったため、一 日が長 く感 じられたようであった。その反面、日頃目にする機会のない珍 しいステー ジに夢中になり、友達 と話す場面 もあった。 ヮークショップも、自分たちが楽器作 りや仮 面作 りの技術を身 につ けた り、それを自分たちが楽 しむのに精一杯であった。 しか し、回数を重ねる につれて製作技術が向上 し、個々人が工夫を加えるようになってきた。たとえば、仮面作 りでは装飾 つ きの仮面が製作 されるようになった

(写

3)。

同時に、観客か らはスタッフの一員 としての動きを要求 されることに気づきはじめ、周囲の気配 り ができるようになっていった。 ヮークショップではカッターナイフを使用 したため、子 どもがケガを する危険 もあったが、誤って子どもが切 り傷を作ったときには財団スタッフに細かい報告 も行ってい た。イヴェントの進行によって休憩時間がずれても、不満の声をもらすものもおらず、実習予定時間 を過 ぎても掃除の手伝いをするなど、積極的に仕事をするようになった。こうした実習生の変化を見 取 った財団スタッフは、ステージの司会進行役やステージ出演、民族衣装を身につけての公演への観 客呼び込みなど、下部の実習生により高い接客技術を要する業務を体験させた。こうして、実習生は 最後には自分から仕事を見つけるようにまでなっていった。

写真 2  事前説明会

(7)

一方、学生の受 け入れによって財団側にもた らされたメ リットもあった。財団 スタッフか らは、 「実 習生の意欲的な取 り組みによって、 『 いまどきの学生』」のマイナスなイメー ジが覆え された」、 「実習 生― スタッフ双方が、実習回数を重ね るうちに提案 し合えるようになった」、 「実習生か らの意見には、

観客 とスタッフ両方の立場を見据えた もの も含 まれていて、新鮮に聞 こえた」、「時間 とともに作 り上 げてい くとい う、イ ヴェン トの本質性を掴んだ意見 も聞かれたことが印象的だ った」などの感想が聞 かれた。 このように、実習は学生の「責任感、 自立心の向上」を促 したのみな らず、財団にとって も

「新 しい出会 い」を もた らし、彼 らか ら「 アイデアを吸収」するとともに、業務への「理解や知識を高 める」機会 となったのである。

学生 の レポー トでは、受 け入れ側のイ ヴェン トにおける対応のよさといった技術的な ものだけでな く、 スタッフの気遣 いやその人格 に対す る賞賛などが日立 った。学生は、実習を通 じてイヴェントに 関わ る学芸員の仕事が、時間 と共に「物を作 り上 げていく仕事」であり、 「人間相手の仕事」であると 知 った。相手 となる人間は、観客のみな らず他のスタッフも含まれる。イヴェントを成功 させ るため には、 スタッフ同士 のコ ミュニケー ションが うまくい くことが必須であ り、そのことが直接観客に与 える影響が大 きい。多様な人々か らなるイヴェントの場において、 コ ミュニケー ションを円滑にする ために、 スタッフはさまざまな気遣 いを している。それができるスタッフのすば らしい人格 に触れた こと自体が大 きな経験であ り、 自分の自分の仕事に対する態度を考えさせ られた、 という意見 もあっ た。

「人間相手の仕事」という点で、 「教育実習に通 じる」実習だと感 じた学生 もいた。学生 にとって、こ のイ ヴェン トは幼児か ら中学生 くらいまでのさまざまな年齢か らなる子 どもと触れ、学校の外でのい ろいろな子 どもの姿を見 る機会 とな った し、実習では経験できない保護者 との接触の場 ともなった。

「 アジアの音楽や文化 について勉強 になった」というイヴェン ト内容に関する感想 もあったが、学生 に とっては、 「 どんな職業 に も通 じる」ようなコ ミュニケー ション能力や、気遣 いので きる人間 となるこ とを目標化で きた ことが、最 も大 きな収穫だ ったのである。

5。

今後の課題

本実習は、音楽を専攻す る学生 にイヴェント運営 にスタッフとして参加する機会を与えることによ

写真 3  ワークショップ :仮面作 リ

(8)

西 潤

り、学芸員 という職業の可能性を示すと共 に、即応性などの能力を芽生えさせ ることを目標 に設定 し た ものであった。 ところが、学生 はそうした表面的な職業上の技術ではな く、それを支えるスタッフ の生 き方 に大 いに触発 され、それが職業 に対する意識を高めるものとなったのである。 このように、

人間同士の コ ミュニケー ションが強 く求 め られ るイヴェン ト運営 に関す る実習は、専攻を問わずすべ ての学生が将来を考えるうえで非常 に大 きな力を与えるものである。 とりわけ、教育現場に立つ こと を目指す学生 にとっては、 この経験が将来直接生かされる可能性がある。実際、教育実習では体験で きない保護者 との接点の場 ともなった。

一方、

(財)静

岡県文化財団は、本実習を「若者 にグランシップの文化事業を理解 して もらうきっか け」とし、その結果が「地域振興」へと結 びつ くよう継続的に行 っていくことに期待をよせている

(青

木義尋 。

(財)静

岡県文化財団参事兼企画制作課長、

2002年

9月

)。

実際、実習生の何人かは、その後 もグランシップ主催のイヴェン トに積極的に参加するようになった。 しか し、 これを持続可能な実習 とするには、実施側 にいくつかの課題がある。ひとつは、学部内での実習サポー ト体制の整備である。

さきに述べたよ うに、本実習は音楽教育講座が開講 し、担当教官の責任によって行 った。 しか し、万 が一の事故が起 こった場合 には、担当教官が責任を負 うにはあまりにも重い。 また、時間割 に組み込 まれていない授業であるため、事前指導・ 事後指導がや りにくい。その うえ、受入先 との交渉や打 ち 合わせすべてを担当教官が授業時間外 に行わねばな らず、その時間的負担 も大 きい。講座 として開講 することの限界 もある。他専攻の学生に もメ リットが大 きい実習であるにもかかわ らず、講座主体で あると目につ きに くく、 また希望者がいたとして も連絡が とりに くい。逆に年度によって希望者数が 減少すれば、開講の見通 しが立たな くなる。 さらに欲をいえば、実習のあり方 も今後改善 していく余 地がある。本年度のように、イヴェントがセ ッ トされたところに実習生を送 り込むのではな く、その 企画段階か ら宣伝 。広報、運営 というイ ヴェン トの生成すべてに関与することにより、イヴェント作 りのむずか しさと喜 びをより深 く味わえる。そのためには、

2年

度 にわたる実習 とするな どのカ リキ ュラム改正 について検討 していく必要がある。

引用文献

財団法人静岡県文化財団『

GRANSⅢP静

岡県 コンベ ンションアーッセ ンター』

(施

設案内パ ンフレッ

)nod。.

関東地域 イ ンター ンシップ推進協議会 『2002年 (平

14年

)KIPCイ ンター ンシップの しお り』

(リ ー フ レッ ト)2002.

総合研究開発機構 「財団法人千里文化財団」

http://呻.n士

a.go.jp/icj/tt― you/1259。

html

2002.

『実習の手引き』作成協力者、渥美佐織 (学校教育教員養成課程3年)、 佐々木勝康 (大学院教育学研究科 1年)、 田織江 (学校教育教員養成課程3年)、 寺崎庸 (芸術文化課程2年)、 長谷部まお り(学校教育教員養成課程3年)

各人には、感謝の意を表 したい。

財団側か らは、青木義尋参事兼企画制作課長、企画制作課の野毛、富田、河日、内山、森各氏が同席 した。

表 1  イ ンター ンシ ップの メ リッ ト (関 東地域 イ ンター ンシップ推進協議会 2002) ◇大学◇ (1)自 主性、独創性のある人材教育ができる (2)企 業が求める人材の用件が明確になる (3)地 元産業や自治体とのコミュニケーションの効果 (4)理 論の実践による学習効果の向上 (5)産 業界 とのパイプづ くり (6)産 業界ニーズ、カ リキュラムの向上 ◇学生◇ (1)職 業意識の形成 (2)責 任感、自立 いの向上 (3)適 職の確認 (4)大 学での学習意欲の向上 (5)専 攻

参照

関連したドキュメント

ず,リ一升−ほ真実性の問題を認識的側面からでほ.なくて評価的側面から取り  

 実習日誌については、2017 年度まで1回の指導時間であったが、2018 年度からは2回とし た。これは、2018

長﨑短期大学では学生の保育士資格取得にあたり 2 年次の夏季休暇期間に 10 日間及び 20

出された実習記録であるが, 「実習日翌朝に提出をするもコメントは 1・2

期間中,そして実習後においても年度間に差が認

これらの実習に、各自実習計画表(表1)を作成し

そして今回の研修の目玉は、ホームステイである。第 1 回目の研修からホームス テイは実施していたが、第 2 回目までのホームステイ期間が 10 日間程度、第 3

しかしこれまでに報告された臨地実習における社会