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第 35 回米国核 医学会総会報告
油野 民雄 松田 博史 滝 淳一 横山 邦彦 利波 紀久
第
3 5
回米 国核 医学会 総 会 は1 9 8 8
年6
月1 4
日か ら1 7
日 ま で の4
日 間,サ ン フ ラ ン シ ス コ 市 のGe or ge
R.Mos co ne Conve nt i on Ce nt e r
で,B Le o nar dHol man
会長 の もとに開催 され た。今年 の発表 は, 口述発 表 が4 9 5
題, ポスター発 表 が5 0 5
題 の計1, 0 0 0
題で あ り, その うちわが国か らの発表 は, 口述32題, ポス ター4 0
題 の計72題 (全 体 の7 %)
で あった。われわれ の教室 か ら も,海外 留学 先 での研究成果 の発表2
題 を含 めて計9
題 の演題が 採択 され,久 田教授以下9
名が出席 し,幸 い各 自異 なった領域 を拝聴 したので,池野,松 田,滝,横 山 の諸氏 に, それ ぞれ見聞 しえたなかで興味深か った 発表 について簡 略 に記 して もらった (利波)0中枢神経系
今 回の
SNM
のne ur ol o gy
に関す る口述発表 は1 2
セ ッシ ョンの多 きに至 り,核 医学 での この分野 の躍進ぶ りを示 していた。 その うちSPECT
に関す る ものが4
セ ッシ ョン,他 はPET
で あった。SPECT
で最 も注 目を浴 びたの は,新 しい9 9 m Tc
標識脳血流 シンチ グラフィ用剤で ある9 9 m Tc‑ L,L‑
e t hylc ys t e i na t edi me r( ECD)
で ある。本剤 はDu Pont
社 で開発 された ものであ り, 同種 の薬剤 であ る9 9 m Tc ‑ HM‑ PAO
と比較 す る と次 の ような利点 を 有 す る。 1)
標識 率 が高 く, しか も標識 後安定 で あ る。2)脳対周囲軟部組織比 が高い。3)灰 白質対 白 質比 が高 い。4 )2 4
時 間で7 5 %
以 上 が尿 中 に排滑 され,被曝線量が少 ない。唯一の欠点 としては (た だ し臨床上 は殆 ん ど問題 ない と思 われ るが),脳 よ りの洗 い 出 しの半 減 期 が1 7
時 間 と,9 9 m Tc‑HM‑
PAO
の半減期 の7
1時間 に比 べ短 い ことである。本 剤 は脳 内でただ ちに酵素 によ り脱 エステル化 され水 溶 性 代 謝 物 とな り脳 内 に と ど ま る と報 告 さ れ た。9 9 m Tc ‑ HM‑ PAO
の欠点 の一 つ に,高血流域で の初期 の洗 い出 しが大 き く,結果 として病変部 と健 常部 の コン トラス ト差が低下す る ことが挙 げ られ る が,9 9 m Tc ‑ ECD
は この現象 に も乏 しい と考 え られ, 現時点で は最 も理想 的な脳血流 シンチグラフィ用剤 である。SPECT
での神 経受容体 イメー ジング も着実 に進 行 してお り,ペ ンシルバ ニア大学 のKung
らは ドー パ ミンDl,お よびD2に選択 的 なア ンタゴニ ス トで あるI BGP
お よびI BGM
を123Ⅰで標識 し,サル脳 に お けるそれぞれの像 を示 した。 またオース トリアのDaut h
らは123Ⅰ標識Ro1 6 ‑ 01 5 4
を もちいて ヒ ト脳 でのベ ンゾダイ アゼ ピン受容体 のイメー ジを示 し, い よい よSPECT
による神経受容体 イメー ジングが 本格 的 に着手 された と言 える。SPECT
装置 もFWHM 7mm
級 の ものが市販 さ れ るようにな り, さらにSPECT
脳核医学が発展す る もの と思 われ る。PET
の分野 で も受容体 イメー ジングの臨床 が非 常 に盛 ん になってお り,PET
か らSPECT
への還元 によ り一般病院で も受容体 イメ ー ジが得 られ る日はそ う遠 くないで あろう (松 田)0心 臓
今年 の
SNM
での心臓 の分野 で個人 的 に注意 を引 いた もの として,1 )VEST
(持続心機能モニ ター) を用 いての心機能評価,2 )
心筋vi a bi t i t y
の評価,3 )Ant i myo s i n
による急性心筋壊死 の評価,4 )
各Re po r to f3 5 t hannualme e t i ngofSNM i n1 9 8 8
Abur a noTami o,Ma t s udaHi r o s hi ,TakiJ uni c hi ,Yokoya maKuni hi koandTo na miNor i hi s a De p a r t me n to fNu c l e a rMe d i c i n e , S c h o o lo fMe d i c i n e , Ka n a z a waUn i v e r s i t y
金沢大学医学部核医学科
〒9 2 0
金沢市宝町1 3 ‑ 1
種疾患 における
MI BG
による心筋 の病態評価,5 ) FFA
による心筋脂肪酸代謝の評価,6 )I s o ni t r i l
に よる心筋血流の評価, な どがあった。ve s t
は,今年 は演題数が大幅 に増 えて一 つのセ ッションを形成す るに至 り, ようや く普及 しつつあ る といった印象 を受 けた。内容的 には,非常 に基礎 的な ものか ら臨床応用 にまで踏 み込 んだ もの まで さ まざまであった。得 られ るEF
値 は,ガ ンマカメラ と比較 して安静時 お よび運動負荷時 において もよ く 一致 し,十分 に臨床応用可能であった との基礎的検 討報告や,虚血性心疾患 においてその重症度や病態 解明 に有用 であった との臨床的報告がなされ,今後 の臨床応用が ます ます期待 され る。心筋
Vi a bi l i t y
の評価 は,臨床 的に もっ とも興味 のある ところであ り, また重要な問題 で もあ る。現 在の ところ,T1 ‑ 2
01の再分布の有無 によ りVi a bi l ‑ i t y
を評価 しているが,再分布 のない欠損部や集積 低下部 においてはすべてが梗塞 を意味する ものでな く,虚血で も同様 の所見 を呈する ことが以前か ら問 題点 として指摘 されていた。T
lでf i xe dde f e c t
を 示 した部位 に,PET
でFDG
の集積 を認 める例が かな りある との報 告が い くつかの施 設 に よ りな さ れ,f i xe dde f e c
tは必ず しも心筋 の繊維化 を意味す るものでない ことが示 された。 しか しPET
は限 ら れた施設 に しか な く, よ り簡単 な評価 法 が望 まし い。 その点で興味 をもたれた方法 は,運動負荷心筋 シンチグラフィにおけるde l aye di ma ge
を2 4
時間 後 に とるか, また は3
時間のイメー ジング時 にTl
を追加投与 す るかである。 この方法 によれば,通常 の方法でf i xe dde f e c t
を示 した部位 にかな りの頻度 で再分布が み られた とが報告 された。PET
を もた ない施設では,poo rme n' sme t hod
として,vi a bi 1 ‑ i t y
を診断す る有用 な方法 と思われ る。ト1 2 3MI BG
は心筋のadr e ne r gi cne ur onde ns i t y
の分布 をイメージング化す るものであるが,虚血時 ではT
lよ りMI BG
の方が よ り鋭敏 に異常 を示 し,MI BG
のwas hout
の程度 はr e pe r f us i o n
によ り生じる
ar r hyt hmi a
の発現頻度 に良 く相関す るとの動 物実験報告や,心不全で集積が低下する との臨床報 告等,T
lとの併用 な どで今後益々興味深 いデータ が期待 され る もの と思われる。 さらにい くつかの新 しい心筋血 流や代謝 イメー ジング用 剤 の報 告 もあ り,今後 の発喪が期待 された (滝)。核医学画像診断 Vol . 3No . 21 9 8 8 .1 0 . ‑ 8 1‑
腫癌 (
MoAb)
モ ノクローナル抗体
( Mo Ab)
を用いた腰痛核医 学 の 一 般 演 題 数 は,前 年 度 よ り さ ら に増 加 し,MoAb
と題 されたセ ッシ ョンだけで も1 4
にのぼっ た。本年度 は,1 )r a di oi mmuno t he r apy( RI T)
の 臨 床 的 検 討,2)human ant i mous e ant i body
( HAMA)
の問題 と解決法の検討,3 )1 1 1 I n
標識抗 体 の肝摂取機序 の解明,4)9 9 m Tc
標識抗体 の臨床 応用が特筆 され るべ き傾向であった と思われ る。まず
,1 )RI T
に関 してであるが,昨年お よび一 昨年 と比 べ て,RI T
関連 の演題 数が著増 した。 こ れ は,動物実験や前臨床段階の可能性 を模索 してい た頃か ら一歩前進 し,徐々 に,臨床応用 さらに実用 段 階 へ と移 行 しつ つ あ る。 と りわ けEar l y
とBadge r
らは小数例 なが ら, はじめて完全寛解 を報 告 した。DeNar do
らのグル ープ と同様 に,放射線 感受性の高いB細胞 リンパ腫 を標 的 とした ことが好 結果 につなが った と思われ る。ただ し, うち1
例 は 骨髄移植 を必要 とした ことよ り,現状 で は殺細胞効 果 を期 待 し う る 吸 収 線 量 は,同 時 にmar r ow oxi c i t y
の域 を こえる投与量 によっては じめて実現 され るとい う二律背反 を解消 していない。 よ り腫癌 への選択性の高い抗体 の開発が望 まれ るが,姑息的 解決策 としては, この ような骨髄移植やイ ンター ロ イキ ンI( I L‑
I)の併用が検討 されている02 ) HAMA
の免疫応答 は, ヒ ト型 のモノクロー ナル( b‑ Mo Ab)
を用いることで軽減 され ることが 予 想 さ れ て き た (本 誌2
号,1 9 8 7
年)。 そ の 際,ant i i di o t ypi c
また はa nt i al l ot ypi cr e s pons e
が どの 程 度 の弊 害 をお よぼす か が,鍵 とされ た。今 回,Car r as qui l l o
によって,h‑ Mo Ab
の投与 を うけた1 6
例 でhumanant i humana nt i body( HAHA)
の生 成が一例 もみ られなか った との成績がだ された。 ほ ぼ同一の発表が本年2
月のSanDi e go
の シンポジ ウムで報告 されているためイ ンパ ク トは若干弱 い も の の,非常 に大 きな朗 報 で あ る こ とに変 りな く,MoAb
の人体応用への道標 が確 立 した とい って も 過言で はない。本学会 で注 目されたひ とつ に
,1 1 1 I n
標識抗体 の 肝摂取機構 に関す る演題 だけで1つのセ ッションが 設 け られた ことがあげ られ る。 この間題 に対す る関 心 の高 ま りを示す もの とい えるが,1 1 1 I n
の高 い肝 摂取 と肝での停滞 の機序が不明であった ものの,絹 谷 らの リソゾ‑ムへのt r a ns c he l at i o n
を示 した報‑ 8 2‑
告 は注 目された
。4) 9 9 の Tc
標識抗体 の成否 は,人 体内で至適の腫癌対非腫癌の放射能 コン トラス トを 達 成 し得 るか に依 って い た (本 誌2
号,1 9 8 6
年) が,Fr i t z be r g
らのN2 S
2化合物 ばか りで な く,Sc hwa r z
の方法で も,臨床 レベルで良好 な腫癌 の 描画 を呈示 していた。それぞれに非特異的集積 (前 者 は甲状腺,腎,後者 は肝)が み られ る もの,9 9 m Tc
標識MoAb
が実用段階へ移行 しつつあることを 実感 させた。抗体が第二世代 に入 ってきてお り,そ の標識のためのl i nke rt e c hnol ogy
も既存の諸問題 を解決 しつつあ り, また種々のBRM
との組 み合せ やb‑ Mo Ab
の使用 により副作用の低減 もはかって いることより,今回のSNM
を通 じて, この領域の 是否 はここ数年で結著 しそうな, そんな "煮つ まっ た''印象 を大いにうけた。 また とくに治療の方面で は,c l i ni c alt r i al
による成績 と実績の積 み重ね もさ ることなが ら,理論的裏付 けが急務であるが,その 努力( mi c r odos i me t r y)
が着実に見 られていることは喜 ばしい限 りである (横 山)0
消化器,泌尿器,その他
私が従来 より主 として関心のあるのは,腫癌核医 学,消化器核医学,泌尿器核医学であるが,腫癌核 医学 に関 しては横 山が述べたので消化器核医学,泌 尿器核医学 に関 して記す ことにす る。
消化器核 医学 で は,第
3
日目の早朝 にr e vi e w c o ur s e
として最近注 目されている消化管 の運動機 能 に関する評価法が, トピックとして取 りあげ られ た。食道通過時間,胃食道逆流,胃排出時間,十二 指腸 胃逆流,小腸通過時間,大腸通過時間の各検査 方法の実際,お よび臨床 的意義 に関 し紹介 された が, この分野 は最近我々の施設で も消化器内科およ び外科 よりの依頼が増加 しているだ けに,非常 に興味深い ものであった。周知の如 く,上記消化管運動 機能の各検査方法では,使用する放射性医薬品およ びデータの測定条件が各検査法で異 なるだけに,核 医学専門家 を標傍す るもの としては,各検査法の詳 細 を熟知 してお く必要性 を感 じた (詳細 は紙面の都 合上省略)。一般演題では,肝移植後拒絶反応の評 価 に
,de c o nvol ut i o na nal ys i s
法でbol us
注入補正 を行 なった後,ガ ンマ関数 により一回循環か ら全肝 血流量 に対する門脈血流量比 を求 める方法が報告 さ れた。従来,生検以外 には,肝移植後の合併症 とし て,拒絶反応 とウイルス感染 による肝細胞機能低下 との鑑別 は困難であるとされて きただけに,拒絶反 応 に特異的に減少す るとの報告 は特記すべきもので あった。泌尿器核医学で は,腎動脈狭窄 を評価する手段 と して,アンジオテンシン変換酵素抑制薬であるカプ トプ リルを投与 した報告や
,de c onvol ut i o n a nal y‑
s i s
法 によりRI
の腎実質通過時間 を求 める報告が 今年 もい くつかみ られた。 この中で注 目すべ きは, カプ トプ リル投与後のGFR
低下が,腎機能低下 を 伴 う腎動脈狭窄以外の腎疾患で も認 め られるとの報 告である。腎血管性高血圧の診断や,PTA
治療 の 腎動脈狭窄の改善度 を評価す る手段 としてのカプ ト プ リル投与9 9 m Tc‑ DTPA
レノグラフイの有用性 は 低下 しない ものの,腎血管性高血圧 に対す る診断的 特異性 を考慮す る場合 には,注意 を要するもの と思 われる。その他の分野では,炎症巣の検 出にモノクローナ ル抗体 を用いた研究発表がい くつかみ られた。その 中で